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ザ・ベスト・オブ・ファイナルファンタジー 1987-1994
うまく取り込めなかった。スイマセン。  スクウェアの人気RPGシリーズ「ファイナルファンタジー」は次々と続編を重ね、それに応じて作品内で使われる楽曲も多岐に渡るようになってきた。各作品のサントラはもちろんのこと、作曲・植松伸夫氏は実に意欲的にアレンジアルバムの製作にもとりかかってきたのはご存知の通り。作品ごとに色合いの異なる良質なアレンジを作り上げてきたわけだが、そこでこのアルバムの登場だ。このアルバムはそんなアレンジバージョンの中から特に突出した個性を持つ楽曲を抜き出し、ベスト盤として位置付けたCDである。曲の並びを見る限り、セレクションにはかなり植松氏の意思が反映されているように思える。

 初期のFFから「VI」まで、ファミコン〜スーパーファミコン時代の楽曲を集めているとはいえ、こうして並べてしまうと一枚のコンセプトアルバムとして立派に成立しているのが不思議でもあり、そんな許容力・包容力を持つということもFFの、FF音楽の魅力ではないだろうか。過去のアルバムには未収録のアウトテイクも含まれており、全曲に植松氏自身の解説がある。FF音楽を語るうえで絶対に外せないアルバムに仕上がっていると言えるだろう。当時のシナリオやキャラクター、そしてプレイしていた自分を回想しながら、ゆっくりと味わいたい一枚。ぜひ、ご賞味あれ。
ポリスター
PSCN-5011
1994年
JASRAC表記:
なし

01 SCENE III 1989年のFFコンサートのために、服部克久氏がアレンジした曲。おなじみのシリーズテーマ「ファイナルファンタジー」から始まり、そして「町」「マトーヤの洞窟」へと続いていく組曲形式のアレンジで、フルオーケストラによる演奏は圧巻のひとこと。ちなみに植松氏はこのアルバムの解説で「FFコンサートはいつか必ずまたやります」と語っている。ゲーム音楽コンサートなどは何度かあったものの、実はFF単独のコンサートは実はこれっきりだった。植松氏のその想いは2002年に現実のものとなったのはファンならご存知の通り。これを機会に、「ドラクエ」のようにシリーズ化して開催してほしいもの。

オリジナル盤は「交響組曲ファイナルファンタジー」。
02 Roaming Sheep ゲーム中では使用されていないものの、FF音楽ファンならもちろん知っている名曲。実は「VI」のCMで使用されていたものだ。もともとは「III」のアレンジ盤「悠久の風伝説」に収録されていた書き下ろし曲である。歌っているのはおおたか静流というのも有名な話。植松氏の民族音楽への興味が色濃く現われている曲で、後の「IV」、「V」のアレンジアルバムの原点となっていると言っても過言ではないだろう。
03 Theme of Love 「IV」の中でもファン人気が高い曲。原題は「愛のテーマ」である。全体がケルティックで統一されていた「IV」のアレンジアルバム「ケルティック・ムーン」の中でも出色のアレンジだ。あまり民族色を出しすぎず、しかしただのアレンジに終始していないところはさすがの出来映え。アレンジャーはケルティックでは有名なマイナ・ブラナクで、自ら演奏も担当している。

アイルランドで録音した「ケルティック・ムーン」だが、現地ミュージシャンが最も感情移入したのがこの曲だとか。納得である。
04 大森林の伝説
(REMIX)
「REMIX」とあるが単なる混ぜ直しではなく、原アレンジではサーミで朗読していた詩を、日本語で録音し直している。もとは「V」のアレンジアルバム「ディア・フレンズ」に収録されていたもの。原詩はゲームディレクターの伊藤裕之氏による。「ディア・フレンズ」がフィンランドで録音・ミックスしたものであるのに対し、今回のこのミックスは日本で行なわれているようだ。残念ながら朗読の声の主は不明。
05 水の巫女エリア 「III」の中でも植松氏のお気に入りな曲。もとは「悠久の風伝説」に収録されていたアレンジだ。ゲームの中ではそれほどフィーチャーされていた楽曲ではないものの、この曲には植松氏の思い入れが大きいようで、ボーカルバージョンなども存在するほど(ヴォーカルコレクションズ「PRAY−祈り−」に収録)。
06 Welcome to Our Town! 「IV」の「街のテーマ」アレンジ。もちろんケルト風味で味付けされており、癒し感いっぱいの前半部と、お祭りのような後半部の組み合わせが面白い。あまりに心地よすぎて、あっという間の3分間だ。初出は「ケルティック・ムーン」。
07 モーグリのテーマ ディア・フレンズ」からモーグリのテーマのアレンジバージョン。植松氏が言うには、氏の音楽的趣味がごちゃまぜになっているのだとか……。とにかく構成している楽器のセレクションが面白すぎ!テケテケ風のギター、ラグピアノ、しまいにはサンプリングでイヌネコが鳴く。そして「はっはっは〜」。脳ミソがぐちゃぐちゃになることウケアイです。
08 The Breeze こちらも「Roaming Sheep」と同じく、「III」の「悠久の風伝説」のために植松氏が書き下ろしたボーカル曲で、やはりおおたか静流が歌っている。「女声バラードを書きたい」と思っていた植松氏が、プロデューサーから「何をやってもいい」と言われて作ったとのこと。今でこそ植松氏が女声バラードを得意としているのは有名だが、ここが「FF」における女声バラードの原点であり、今日のFFテーマ曲に通じるものであることは疑いようがない。
09 Troian Beauty ケルティック・ムーン」から、「IV」の「トロイア国」のアレンジバージョン。FFでは「毎回必ずワルツが入っている」のは有名な話だが、なんでも植松氏は幼少の頃、姉の部屋から流れてくるヨハン・シュトラウスを毎日のように聴いていたらしい……。そんな体験もFFサウンドには活かされているのだろうか?実はファン人気の高い楽曲であるらしい。しかし、ケルティックなワルツっていうのも気持ちいいなあ。
10 はるかなる故郷 「V」の同名曲を、アンゲリン・トゥトット(グループ)による英語・サーミ語を用いたボーカルでアレンジしたバージョン。フィンランドに伝わる歌唱法「ヨイク」を用いている。「ディア・フレンズ」からの収録。

ちなみにアンゲリン・トゥトットのメンバーは一人も譜面が読めず、植松氏がピアノで一音ずつ弾いて覚えさせたという逸話が・・・・・・。たぶんレコーディングは丸1日以上かかっただろう。
11 親愛なる友へ 「V」の「ピアノコレクションズ」から。ある意味での「V」の表題曲を、優しく静かなピアノの演奏にアレンジ。音に隙間のある構成が、心地良い安らぎの時間へとリスナーを導くはず。
12 Aria Di Mezzo Carattere
(REMIX)
「VI」の名場面、オペラシーンをこれ以上なく盛り上げた、シリーズ屈指の名曲を斉藤恒芳がアレンジしたもの。「VI」のアレンジアルバム「グランド・フィナーレ」に収録。フルオーケストラと本物のオペラコーラスによる演奏は、知らない人が聴いたらゲーム音楽とはとうてい思えないクオリティ。もっとも当時のスーパーファミコンでオペラを再現しようとしたゲーム製作チームもたいしたものである。その演出を見事に音で支えた(というか、ここではほとんど音が主役!)植松氏は、「ドラクエ」とは完全に異なるゲームの音世界を構築したと言っていいだろう。無論、専門的な音楽を修得している斉藤氏によるアレンジも秀逸のひとこと。とにかく聴いて!
13 Rydia 「IV」の「少女リディア」のアレンジバージョン。原曲の雰囲気をさらに発展させた、暖かいアレンジが聴く者を和ませる。植松氏的には、よりリディアのイメージが明確になったアレンジであるとのこと。途中から挿入されるコーラスも良い雰囲気を生み出している。「ケルティック・ムーン」収録。
14 SCENE VII 「SCENE III」同様、89年のFFコンサートから。アレンジは服部隆之氏が担当。「FFI」の「反乱軍のテーマ」をフルオーケストラと混声合唱で壮大に聴かせる。この時のコンサートを聴いた植松氏は、いつの日か自分でオーケストラアレンジをやろうと決意したらしいが……その後のエピソードはライナーノーツを参照のこと。曲は「交響組曲ファイナルファンタジー」から。
15 ソンゴ de チョコボ この曲は未収録曲で、ここが初出となる。もともと「ディア・フレンズ」に収録される予定だったらしいが、アルバムのトータルな雰囲気を崩すとの判断から見送られたようだ(私は個人的には、その判断は正解だと思う)。「ディア・フレンズ」とは別レコーディングで(シングル「マンボdeチョコボ」との同時レコーディング)、一度きりのバンド「セニョール植松とマンボ・パンチョス」の演奏による。なにやら超一流のミュージシャンたちらしいが、詳細なメンバーは不明。
16 ファイナルファンタジー
(PIANO VERSION)
こちらも未収録。「V」のピアノコレクション録音時に録られたもので、演奏はもちろん森俊之氏。意外と「ファイナルファンタジー」というタイトルでの単独なピアノソロはなかなかないので、ファンには嬉しい。もしここに収録されなければ、日の目を見ることはなかったのだから(でも、「ポーション」あたりに収録されそうだが)。アルバムのラストを飾るにふさわしい名演奏だ。

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