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ファイナルファンタジーIII 〜悠久の風伝説〜
ジャケット画像  諸事情から、オリジナルサントラよりも早く発売されていた「ファイナルファンタジーIII」のコンセプトアルバム。単なる音楽のアレンジに留まらず、独特な詩の朗読が加えられている点が斬新だ。事実上、このアルバムが「III」のアレンジ盤として認識されている。

ポリスター
PSCR-5252  
1990年  
JASRAC表記:
あり

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 FFの音楽アルバムとしては、異色の存在ともいえる「悠久の風伝説」。基本的にはゲーム中の音楽のアレンジバージョンを、ゲームのシナリオ展開に合わせて収めたコンセプトアルバムである。が、その最たる特異性は単なる楽曲のアレンジに留まらず、初期FFシリーズと深く関わっている脚本家・寺田憲史氏による詩の朗読が英語で挿入されていることだろう。音楽を楽しみたいリスナーとしては、この詩を邪魔と思うかどうかでアルバムの評価が大きく変わるところだろう。また、すべての楽曲が組曲形式となっているのも大きな特徴。シチュエーション・テーマ別に、それに類する楽曲がメドレーアレンジで収められているのである。また、一部には過去の「I」「II」も顔を出している。

 そしてさらにこのCDの特異性を上げるなら、ゲームオリジナル音源のいわゆる「サントラ」よりも早くリリースされている点。「FFIII」のサントラは発売タイミングを逃し、ファンのリクエストによって発売にこぎつけた経緯もあったが(詳細はレビュー参照)、そこにはこのCDの存在も大きな理由としてあったのではないかと思われる。録音最中に数々の機材トラブルがあったり、明らかに怪しいノイズの混入、さらに録音した覚えのない声が入っていたりと、制作過程において様々なトラブルがあったことも、このCDの存在をいっそう特異なものにしていると言えよう。

 2曲のボーカル曲で歌唱を担当したのはdido(ボーカルはおおたか静流。didoは加藤みちあきとのユニット名)。朗読はJEFF LEVYによる。作曲はもちろんのこと、すべてのアレンジも植松伸夫氏が担当した。スペシャルサンクスには坂口博信氏や時田貴司氏のほか、伊藤賢治氏の名前も見受けられる。 



01
THE EVIL POWER OF THE UNDERWORLD
邪悪の胎動 ドーン、と広がりのある重々しいSEから始まり、朗読が入る。まずはハープ系音色による「プレリュード」から。コーラスが加わると絶対的な神々しさを醸しだす。それはファミコン音源では到底表現できない神々しさだ。しかし、ユーザーは個々に楽曲を補完してプレイしていたはず。あとは、このアレンジがアナタのイメージと合うか否か。もしもイメージ通りなら、決して手放すことのできない愛聴盤となるだろう。

2分42秒からは一転して緊迫感のある楽曲に変化。ゲーム中に該当曲がないので、おそらくこのアルバムのためのオリジナル曲と思われる(聞いたことあるような気がするんだけど……)。そして「クリスタルのある洞窟」へと繋がっていく。これはもう純然たるアレンジというか、もし「FFIII」がスーファミやPSに移植されたらこうなるだろうな、というかんじで期待を裏切らない。多少原曲よりも勇壮さ、緊迫感が増しているものの、おそらくファンの頭の中で鳴っているのはこういう音だろう。

シメは再度、前半で聞いた緊迫音楽に戻って終わる(ホントにこの曲、なんだろうな)。クロージングが「VIII」の「Liberi Fatari」に通じるものがあるかな?ちなみにナレーションは楽曲に被ってはいないので、編集を施して朗読をカットするのも容易いはず。

02
FOLLOWING THE WIND
風の啓示 冒頭の朗読の後、始まるのは「故郷の街ウル」。原曲にも増して癒し感があり、和ませてくれる。エレピのバッキングに、メロがフルートで奏でられている。予想に違わぬというか、ファンが思い描いている通りのアレンジと言え、安心して聴けるはずだ。もっとも、植松氏自身がアレンジしているわけだから、ヘタなものになるわけがないのだが。

4分34秒からはお待ちかね、「悠久の風」。こちらもイメージ通り!オーボエメロとストリングスセクションの掛け合い、そしてコーラス系音色がなんとも美しく、駆け抜ける「風」を感じるほどに気持ちの良いアレンジだ。移植版のフィールドでそのまま使用されても違和感はないだろう(と、いうより使ってほしい)。

7分04秒からは突然リズムが鳴り響き、「バトル1」に突入。ロックテイストでありながらだいぶ荘厳に感じるのは、ブ厚いオルガンのせいだろうか。当時、自分で耳コピして打ち込んだものにそっくりだったのが、やはりイメージ通りのアレンジだということかな。後半は「最後の死闘」や、「FFIIのバトル2(!)」のフレーズを散りばめながら、コーダはおそらく「ファンファーレ」のアレンジで締めくくるあたり、ツボを心得ている。

03
MONTAGE
彷徨の旅路 朗読で始まるのは同じ。その後に始まるボーカル曲は「Roaming Sheep」。今回の企画のために植松氏が書き下ろした曲である。植松氏として初めての「民族音楽テイストへの挑戦」だったという。ゲーム内では流れない曲なのだが、後に「FFVI」のテレビCMで使われるなど、FF音楽として確実に認知されている名曲。歌うはdidoとクレジットされているが、おおたか静流氏。didoは「FFI・II」のサントラでアレンジバージョンを製作した加藤みちあき氏とのユニット名である。民族色の強い楽曲だが、言語は英語詩である。原作詞は脚本を執筆している寺田憲史氏だ。この曲、「III」がリメイクされることがあるなら、ぜひ作品中で流してほしい……。きっと泣くだろうな。

2分34秒からはおなじみの「チョコボ」と「4人組じいさんのテーマ」を。これはやはりはずせないところだろう。この2曲をミックスしたアレンジはお見事。このミョーにコミカルなパートは箸休めだろうか?

3分57秒からは「潜水艦ノーチラス」で、包み込むようなリバーブ感のある幻想的なベースをバックに、ピアノとオーボエによる流れるような美しいアレンジで、海中をイメージするのに何ら苦労しないだろう。そしてピアノによる「ノアのリュート」をはさみ、6分24秒から始まるシメの楽曲は「水の巫女エリア」。ゲーム中ではあまり耳にすることはないが、この曲は植松氏の私的なお気に入りだそうで、アレンジにも力が入るというものだろう。フルートとハープによる、よりしっとりと暖かい雰囲気に。

04
THEIR SPIRITUAL LEADER
その大いなる導き 朗読に続いて始まるのは混声合唱「The spiritual leader」。ライナーノーツによると古代エジプト語とヘブライ語で構成され、「神を讃えん云々……」と歌ってているらしい。もちろんゲーム本編には存在しない曲である。この録音においては様々なトラブル(怪現象?)が起こったらしいが……。くわしくはCDを買ってライナーを読むべし。ちなみに歌われている歌詞は以下。

定番な酢を食うら 定番な酢を食うら
よそご、よそご、よそげばよそげ 急ご、急ご、よそげば良さげ
よそご、よそご、よそげば良さげ、急げ、急げ、やせても値下げ
ふーおーんー(不穏) ふーおーんー
うーそーをやめよう うーそーを良さげ
うーそーをやめよう うーそーを良さげ
パルコイ・パルコイ ソース送ーる
ボルグー・ボルグー 永遠の値下げ
(アタマから繰り返し)
通ー報ー ズーボン GOOー

うそ。

3分12秒からは「ドーガとウネの館」。ベルとチェンバロのような音色で、荘厳かつ幻想的なアレンジになっている(「グランドフィナーレ」テイスト?)。後半はピアノだけのシンプルな編曲になり、個人的にはここがお気に入り。

5分59秒からは書き下ろしのボーカル曲「The Breeze」。原詩は寺田憲史氏、歌うは「Roaming Sheep」と同じくおおたか静流(ここではdido名義)。今にして思えば「EYES ON ME」や「Melodies of Life」などに見られる植松氏の音楽的根幹がここに見えているような気もする。このアルバムを製作するにあたって、プロデューサーから「何をやってもいい」と言われた植松氏が、ここぞとばかりに作った曲だと言う。そこには「女声バラードが書きたい」という植松氏の願いが長くあったようだ。昨今のFFではそれが如実に現われていると言っていいだろう。

05
EBB AND FLOW
陰と陽の攻防 朗読の後、「巨大戦艦インビンシブル」から始まるトラック。原曲に増して疾走感、爽快感のあるゴキゲンなアレンジになっている。こういうアレンジになると、やはり後のFFに連綿と流れるものになっているなあ、と感じて興味深い。コーダにちらっと「I」の「マトーヤの洞窟」のモチーフが混ざっているんですが、わざと?それとも、つい?「しまった!あれ、何かひっかかってたと思ったらマトーヤじゃん」って。まさかね。

2分24秒からは「ハインの城」。ややひと昔前のリズムマシンの音色が(今になって聞くと)気になるといえばアレなんだが、アレンジとしては嫌いではないスタイル。というか定番で、耳コピしてこういうドラムを入れた人も少なくないでしょ?こういうテンポの曲はこうしたくなるもんです。ファミコン音源とはまた違った味わいになってます。

06
THE DARK CLOUD
凶々しき渇望 朗読がなく、「闇のクリスタル」から始まる。わりと植松氏のルーツっていうか、本音(プログレ魂)が出たアレンジになっているのでは?と思える。私としてはよくぞやってくれた!という感じ。ディストーションはもっと前面に出してくれても良かったのに。ちょっと遠慮してしまったのだろうか。「プロレスの入場曲みたい」とか言うなー!

2分36秒からは「最後の死闘」。このアレンジの進化系(より今風なアレンジ)が聴きたい人は、「チョコボレーシング」のサントラを聴いてみてほしい。イトケン氏による絶妙なアレンジは必聴でしょ!また、DSリメイク版における本編バージョン及びTBMによるロックアレンジもぜひぜひチェックすべし。

07
REBIRTH
新たなる世界 朗読の途中から楽曲がフェードインしてくる。曲のラインナップは基本的には、ゲームのエンディングと同じ進行と思っていいだろう。まずは「悠久の風」だ。1分59秒からは5トラック目とはまた異なる感じ、フルートメロの「巨大戦艦インビンシブル」。4分34秒からは「プレリュード」に続いてマーチが現われるところも、ゲーム版のエンディングとまったく同じ構成。6分43秒からは「ファイナルファンタジー」の正統派な、弦楽器主体のオーケストラ風アレンジ。この曲はわりと早い段階から完成されていると言える。

とにかく、「III」をクリアできた人には絶対にオススメ!浸れます。

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