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ファイナルファンタジー ヴォーカルコレクションズ I PRAY −祈り−
ジャケット画像  植松氏の音楽的欲求が、このアルバムを生んだのではないだろうか?時代の主流はスーパーファミコンがメインであり、当然ボーカル曲などというのはアレンジアルバムだけの話。「女声バラードが作りたい」、そんな植松氏の欲求がFF音楽と融合した。FFのために作られた楽曲をボーカルアレンジしたこのアルバムは、これまでのどのアレンジアルバムとも異なる世界を作り出している。

 「祈り」と題されたこのアルバムに収録されている楽曲は、いずれもがどこか神々しい。そのボーカルを担当しているのは大木理紗。ヒットチャートを賑わす類のボーカリストではないが、その確かな歌唱力と美しい声はこのアルバムを聴いてもらえばわかるだろう。「プレリュード」においてはアレンジャーとしてもその才能を発揮。ファンにしてみれば思わずゾクッときてしまう、これまでにない「プレリュード」を披露してくれている。

 これが「サウンドトラック」なのか?という声も確かに正論。ゲームで流れることはない。だが、FFの根底に流れる「何か」を表現するうえで、このような形態のアルバムも存在するべきなのかもしれない。ここにはきっと、植松氏のファンに対する何らかの訴えがあるはずだ。ゲームとは切り離し、独立した形で行なわれる植松氏の表現活動の場なのだ。


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ポリスター
PSCN-5006
1994年
JASRAC表記:なし

01 Prelude 多重録音によるコーラス、スキャットとハープが奏でる「プレリュード」。特に歌詞があるわけではなく、ひたすら透明感のある声をメインとしたアレンジは幻想的で清々しい。このような形になっても、ファンは「クリスタル」のイメージを抱くはずだろう。元来の「プレリュード」に新たな解釈を付加した感じか。
02 The Promised Land オケはシンセだが、フルートのみは本物。英語詞によるボーカルものとなった「FFII」のメインテーマである。全体的にオケ・ボーカルともにリバーブ感が強く、幻想的な雰囲気を醸し出している。ゲーム音源の原曲はどこか寂しい雰囲気の楽曲だったが、それを踏襲しつつもどこか決意めいたボーカルが乗せられているのが興味深い。
03 Mon P'tit Chat
(僕の子猫)
3拍子に乗った、フランス語による歌詞のボーカル曲。アコーディオンも加えられており、シャンソンかフレンチポップスの雰囲気になっているが、原曲は「FFV」の「想い出のオルゴール」。アレンジによってこうも変わるか、という良い例だろう。
04 時の放浪者 聴けばすぐにわかるだろうが、「FFVI」の「ティナのテーマ」である。日本語のボーカルが乗せられた形となっているが、メインメロとは別のメロディラインになっているのが面白い。歌詞の内容もどことなくゲームにシンクロしているように感じるはず。弦とフルート、ハープは生演奏。
05 光の中へ 楽器編成は「時の放浪者」とほぼ同じ、日本語詞の加えられたFFIV「愛のテーマ」。単にゲーム音楽に歌詞を付けた、という雰囲気はみじんもなく、最初からこの形を想定していたかのような正統・植松節バラードとなっている。ピアノが前面に出た間奏部分は原曲のイメージが大だ。
06 Esperanca Do Amor
(愛の希望)
どこか南の島の匂いがする、ジャズテイストのFFV「親愛なる友へ」。ギターとフルート、ビブラフォンとパーカッションのみのシンプルな編成が気持ちいい。ブラシドラムこそないが、その役割はパーカッション群が補っているようだ。ジャズ系コンピに入っていても違和感はなさそう。
07 Voyage 歌詞の意味合いは、まんま原曲のイメージ。FFIII「果てしなき大海原」の日本語ボーカルバージョン。冒頭から「ああ遥かなる海原よ」と歌いあげている。オケがストリングスグループのみなのも原曲のイメージ重視か。もちろん生演。
08 Au Palais De Verre
(硝子の宮殿)
シンセ音源中心のアレンジにより、かなり原曲の雰囲気のある「FFI」の「マトーヤの洞窟」。間奏から挿入されるリコーダーのみ本物による演奏だ。2コーラス目から重ねられる多重なユニゾンボーカルが曲に厚みを与えている。シンセと生楽器をうまく融合させている好アレンジ。「マトーヤの洞窟」にはいろいろなアレンジがあるが、個人的にはこれはかなりイメージに近いと思う。
09 Once You Meet Her 植松氏の大のお気に入り、FFIII「水の巫女エリア」。英語詞ボーカルとなっている。ゲーム内ではあまり耳にすることのない楽曲だが、あらゆるアレンジアルバムに顔を出しているところを見ると、植松氏の思い入れはかなりのものだと想像できる。
10 Pray ある意味、とても貴重な「ファイナルファンタジー」の日本語ボーカルアレンジ。この楽曲に「Pray」という曲名が与えられているのが興味深い。シンセオケとアコギ、サビではディストーションギターも力強く鳴っている。このままゲーム中のエンディングで鳴っても違和感はなさそう。
11 Nao Chora Menina
(泣かないで少女よ)
ギターの弾き語りテイストの、シンプルなFFVI「街角の子供達」。アルバムの最後を締めくくる、静かで暖かな、優しいアレンジ。ギターのみをバックに曲として成立しており、あらためて人声の持つ説得力というものには驚嘆させられる。ある意味で人声は、もっとも多くの表現力を持った楽器であると言えるだろう。もっともその表現は、優れた資質を持ったボーカリストのみが為し得るものであるが、「楽しく歌う」ということについては万人が平等。心の底から楽しんで歌った時、技量に関係なくそれはひとつの表現になるはずだ。

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