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ファイナルファンタジーIII ORIGINAL SOUND VERSION
ジャケット
 ファミコン版「ファイナルファンタジーIII」の楽曲を、オリジナルのファミコン音源で収録したサントラ。アレンジバージョンなどは収録されておらず、純粋なゲーム音源のみ。以後オリジナル盤とアレンジ盤は分けてリリースされるのが通例となってゆく。

ポリスター
PSCN 5013  
1991年  
JASRAC表記:なし


ファイナルファンタジーIII オリジナル・サウンド・ヴァージョン
ゲーム紹介

 もはや、ファミコンRPGと言えば「FF」と「ドラクエ」を指す−。かつてのライバルと双璧を成す時代だった90年、ファミリーコンピューターソフトとしては結果的に最後の「FF」となった「ファイナルファンタジーIII」。シリーズとして初めて「ジョブ」の概念を採用し、以後それは「アビリティ」「マテリア」と形を変えてシリーズに受け継がれ、システムに幅を生み出すことに成功している。このあたりが、レベルアップすれば勝手に強くなる一般のRPGとは一線を画する所以だ。また、「ドラクエ」とはなにかと比較して語られることの多い「FF」。「ドラクエ」も「III」で職業の概念を採用したものの、システムの奥の深さでは「FF」の方が一枚上手だったのは誰もが認めるところだろう。発売本数もついに100万を突破、およそ140万本を売り上げたという。「FF」はこの頃から「大作」の地位を不動のものにしていく。
 
 音楽は前作から引き続き、植松伸夫氏が担当。シナリオの幅に比例して自然と曲数も増加した。ファミコン音源で楽曲に使用できるのは基本的には3音のみだが、「III」では通常効果音に使われるノイズ音源も利用することで、積極的にドラムス音色を採用。ここまでは他の作曲家もわりと行っていたことであるが、植松氏は「その真似をただしたくなかった」とさらに踏み込み、音色とノイズを組み合わせることで音階のあるタムを作成した。当時のポップスシーンで頻繁に耳にすることができた、デジタルドラムのような音色は「FF」においても特異ではあったが、明らかに「ドラクエ」とは異なるサウンドを提示することに成功した。しかし、ソフト発売から1年経過してもサントラ発売のめどがたたず、あやうく見送られるところであったが、ファンからのリクエストが決定打となって採算度外視で発売にこぎつけた。ゲームファン、そしてゲーム音楽ファンの力がこの作品を世に送り出すこととなった好例。植松氏もいまだに「感謝している」と語っている。なお、この「III」のサントラが発売されたのは「IV」のサントラよりも後だった、ということも補則として付け加えておく。
 
 ファミコンタイトルとしては高い完成度である−と前おきしつつ、サントラ全体の印象を述べよう。筆者としては、進化するグラフィックやシステム、ストーリーに対して音楽が付いていけていない面を否めない。これは楽曲そのものの良し悪しではなく、ファミコン音源の表現力の限界のことだ。ファミコン音源には制約も多く、特に演出におけるプレイヤーの感情の高まりが何より重視される「FF」には、そもそも向いていなかったのではないだろうか(もしくは、「FF」が表現しようとしていることが、ファミコンのスペックを超えていた?)。ドラムの音色の軽さが、時として製作者の意図しないコミカルさ、稚拙さ、軽さを生んでいる場面も見られる。一人のファンとして音源のグレードアップを強く望む一方で、誰よりも次世代機での表現力向上を望んだのは、他でもない、製作者たちではないだろうか。また、ファンの間で交わされる「FFのどの曲が好き?」という会話の中で、客観的に見て「III」の楽曲を推す者が比較的少数派となっている理由も、そんなところにあるのかもしれない。こういった不満は、スーパーファミコンの表現力を得て一気に解消されていくことになる。さらに「FFIII」そのものも2006年にNINTENDO DSでリメイクされた。

ファミコン版からの正統進化、DS版FFIII オリジナル・サウンドトラックもあわせてお手元に。
01 プレリュード より美しくなったプレリュード。ファミコン音源としては出色です。ハードの解析ってものは当時から行なわれていたんでしょうね。プログラマのスキル上昇も貢献し、同じファミコンなのに明らかに「I」「II」とは別物の音がしてます。「I」「II」よりもテンポがゆったりめで、それも「美しい」と思わせるのに一役買っているのでしょう。もちろんタイトル画面で流れ、その後の名前入力画面でも流れ続けます。

「III」プレリュードの特徴としては、「I」「II」にはなかった表現としてリタルダンド(徐々に遅く)やアッチェレランド(徐々に早く)が加えられていること、そして「I」「II」では効果としてディレイがかけられていたのに対してそれを使わず、エコーでの広がりに変えられたことがあります。
02 クリスタルのある洞窟 頭の落下音で、ゲームの冒頭を思い出すプレイヤーもいるでしょう。プロローグでちょっとした導入のテキストがあった後、何の前ぶれもなくいきなり放り出されたのには驚かされたものです。これはその「祭壇の洞窟」内で流れていた、プレリュード的なアルペジオが印象的な楽曲。もちろんクリスタルのイメージを反映したものでしょう。楽曲そのものは非常にカッコイイ、個人的なお気に入りです。ただ美しいだけでなく、どこか力強くて、おどろおどろしくて、だけどはかなげ……いろいろな表情を見せる楽曲。タイトルにもあるクリスタルのある洞窟(炎の洞窟、水の洞窟、古代の民の迷宮)のほか、ゴールドルの館などへ流用もされてます。
03 バトル1〜ファンファーレ おなじみのイントロ「ダダダダダダドド」から始まり、ドラムが打ち付けて強いリズムを感じさせる、通常戦闘曲。ここまでビート感が強調された戦闘曲っていうのも、後のFFにすら無いんでは?CDでは最後にファンファーレへと続くのも、ニクい構成じゃありませんか。

個人的には、キックとスネアはいいとして、イントロのタムがねえ……なんか間抜けな感じがしてしまいますわ。ノイズと音色を組み合わせて作った苦労の末のタムですが、独特ではあってもチープ感は否めません。それもファミコン音源の良さであることは理解してますし、植松氏の挑戦意欲もわかるのですが、無理矢理使わなくてもね……という気もするんですよ。おなじみのベースが緊迫感を出しているのに、それを打ち消すようなタム。メロが展開するまでは待っても良かったのでは。
04 クリスタルルーム プレリュードをちょっと暗くアレンジした感じ。印象付けが上手です。そういえば「IX」にもこんな感じの曲、ありましたよね?どことなく、「FFX」におけるシーモアのテーマとの共通点も……ある?クリスタルのある部屋で使われる曲で、初出は封印の洞窟内「風のクリスタル」。あとは順当に炎の洞窟内の「火のクリスタル」、水の神殿「水のクリスタル」、古代の民の迷宮の「土のクリスタル」と使われていきます。闇の世界の、各ダーククリスタルがあるマップ(中ボス戦があるマップ)でも流れます。

それ以外のイベントでは、ジンを封じ込めた後でサラ姫がサスーンの城内にある泉に指輪を投げ込むシーンでも使われていました。
05 オープニング・テーマ ゲーム開始後、最初のイベント一連をこなしてランドタートルを倒し、「かぜのクリスタル」から啓示を受けると、「III」のオープニングとなります。こういったタイミングでオープニングとなるのも、「FF」を「I」からプレイしている人にしてみればおなじみの演出ですね。音楽も「I」同様で、この曲はそんなオープニングで流れるものです。イントロからはわかりにくいですが、まごうことなき「FFのテーマ」です。すでにファンの間では、当時からしっかり「FFのテーマ」として定着していたはず。初プレイ時に、「あれっ、この曲なんだっけ?」と思った人も多いことでしょう。テーマ曲としてバッチリな印象を持っている名曲です。
06 故郷の街ウル その名の通りウルで流れてくる、ほっとする和み系の曲ですネ。これはぜひアルバム「悠久の風伝説」で楽曲本来の良さを味わってほしいところ。思わずウルッときてしまうことウケアイで……ダジャレですんません。

奥の倉庫にケアルがあるぞと言われて取りに行ってみれば、町の中だというのに突然ウェアウルフに襲われ……ああ、古き良きファミコンRPGよ……。なお、曲名はウルになっていますが、カナーンでも使われています。この曲、カナーンでも使ってみようかなーん。……ほんとうにすいません。
07 悠久の風 これを「FFIII」の代表曲!とする人も多いでしょう。フィールドでかかる「III」のメインテーマです。この曲がFFでいちばん好き!と公言するファンもいるほど。私も好きですが、やっぱり「悠久の風伝説」のアレンジに軍配が上がりますね。なんて言うかファミコン版は、音源のミックスバランスがイマイチな気がするんですよ。もっとメロが立ってた方が良いかと。なんかベースとアルペジオに埋もれてしまってもったいないです。

植松氏いわく、「II」の頃から行っていた「ファミコンの音源でスクウェア独自の響き方を出そうとした実験」がこの曲に活かされているとのこと。具体的には「エフェクト(効果)用のトラックを作る」ことで、残響やディレイなどを楽曲にもたらすもので、「II」で作った下地をそのまま使っているそうです。浮遊感か透明感か……言葉では表しにくい独特の雰囲気があるのはそのため。
08 ジンの呪い 各シリーズには必ず一曲、このテの奇怪音楽があります(笑)。呪いを受けていると、城や町がこうなっちゃいます。初出はカズスの村でした。いったい、呪いとは?ジンとは?この曲をバックにゲームを続けるのはけっこう鬱になります……。しかし、やっぱりファミコンのベースは秀逸だなあ。これだけでご飯が3杯はイケル。

カズスに続いてサスーン城でも使われています。また、バイキングのアジトでは、ジンの呪いとは関係ありませんが流用されています。この場合は、ネプト竜に困らされているという意味合いでしょうね。ネプト神殿をクリアしてアジトに戻ると、BGが「勇者の帰還」に変化します。言わばこの曲は「困ってる人たちのテーマ」。そして「勇者の帰還」が、「問題解決のテーマ」なのです。同じような状況に、兵士の略奪に困り果てるトックルの村、人気のないアーガス城、つのを盗まれて困っているドワーフの洞窟などがあります。RPGというジャンルにおいて、「困っている弱者をプレイヤーが助けて回る」というのはお約束というか、もはや王道です。
09 ダンジョン いわゆる汎用ダンジョンBGです。少ない音数で不安をうまく演出してます。ちょっとリタルダントして、「ウネウネウネウネ」とくるところなんか……かなりイヤな感じです……。「II」に引き続き、オバケ系。タイミング的に最も早く使われているのはカズス内のミスリル鉱山ですが、攻略順で初出となるのは「封印の洞窟」ですね。ダンジョンに専用BGが多い本作ですが、地底湖、アムルの下水道、魔方陣の洞窟、古代遺跡、バハムートの洞窟など、けっこうな数のダンジョンで耳にすることができます。
10 勇者の帰還 呪いを解くことによって平和になったお城や町でかかる曲。ジンの呪いを解いた後、サスーン城で初めて耳にすることになるでしょう。おなじくジンに呪われていたカズスの村でも流れます。ブラスを連想させる、勇壮な楽曲です。オーケストラで聴いてみたくなりますね。しかし、アレンジが存在しないのが残念です。

他に、ネプト神殿クリア後のバイキングのアジトや、炎の洞窟クリア後のドワーフの洞窟、ハインの城クリア時、ハインから解放されたトックル、人々が戻って来たアーガス城、ギガメスを倒した後のサロニア城などで聴くことができます。変わったところでは、サロニアの地下迷路の最深部・オーディンのいるフロアで使われています。もっともこれはこのエリアがサロニア城の地下という扱いだからなんですが……。「このマップに入った時にはこの曲に切り換える」という、プログラムの仕様ゆえです。

その後はしばらく聴く機会がありませんが、ゲーム終盤、窮地に陥った主人公たちを救うべく、ドーガが各地を巡ってかつての戦友たちを集めるシーンでも耳にできます。とは言ってもこれもサスーンのサラ、サロニアのアルスを訪ねた場面のみ。つまりイベントのBGではなく、あくまでサスーン及びサロニアのBGとしてなんですね。一瞬でも「気の利いた選曲だなあ」なんて思ったのですが、そうではないもよう。
11 山頂への道 カナーンの南、バハムートの巣へと続く「山頂に続く道」を指すものと思われるタイトルが付けられた楽曲です。こういったシーンでもわりと立つメロディが与えられているのは、ファミコンの表現力に起因しています。グラフィックの表現力をメロディで補う必要があったわけです。次第にグラフィックが実写さながらのものになり、キャラクターがフルボイスへと進化していくにつれ、こういうシーンは背景描写的な薄い音楽が当てられていくようになります。

この曲は前述の通り山道のほか、なぜか飛空艇内部(インビンシブル含む)でも流れます(ちなみに初出は「西の砂漠」で飛空艇に乗り込んだ時)。どうしてなんでしょう?教えて植松さん!
12 小人の村トーザス 楽しげな曲。ある意味、ファミコン音源の良さが出ています。古き良きゲーム音楽、という感じ。アレンジアルバム「Love Will Grow」に、かわいらしいボーカルバージョンがありますのでぜひ聴いてみて下さいね。ゲーム内で流れる場所は、曲タイトルの通りです。チビキャラたちがチョコマカと動き回る姿はなんとも微笑ましいですね。トーザスの抜け道でも引き続いて流れます。敵が出現するマップでもこの曲が流れていると、妙に怖くないもんです。
13 ネプト神殿 ミニマム状態で進まなければならない、ハンデの大きいネプト神殿のBG。ゆえに曲の印象も、厳しいダンジョンだったなあ、という想い出に溢れています。ネプト神殿では戦士系ジョブは役立たず。魔法系ジョブでパーティを構成できるかどうかがカギでした。「III」では、こういったその場の状況に応じた転職が重要でしたね。この曲、やたらと低音が効いてマス。ファミコン音源って、ベース音源としては出色だよね。TBやムーグに負けてないっていつも思うし。
14 エンタープライズ海を行く エンタープライズが海を航行している際のまっとうな「海」BGで、特にこれといっては……。船っぽくないのは、やっぱりエンタープライズだからですね。快適なテンポで、スイスイとゲームを進めたくなってきます。こころウキウキ、という感じでしょうか。曲としてはごくフツーですが……。ちなみにイントロは、「FFVIII」の「Dance with the Balamb-fish」に受け継がれています(ウソウソ)。
15 生きている森 妙に怪しげな曲です。い、生きてるよぉ……ってとこでしょうか。3拍子なので、これ一応ワルツですね。「FFには毎回必ず、1曲はワルツを入れる」とおっしゃっている植松氏、公約を守られております!

初出はバハムートの巣から脱出した後に辿り着く、カナーン東に位置する「回復の森」でした。
16 古代人の村 やはりファミコン音色だと特徴付けは難しいですよね。音色による印象付けができないわけで、あくまでメロによる差別化しかないと。当時の曲にメロのない曲がほとんどないのも、そういった理由があるわけで。そもそも植松氏みずから「メロのない、構成だけで聴かせる曲を作るのは苦手」と言っておられますから。

何が言いたいかと言うと、これ、楽曲単体ではどこも「古代人」という匂いはしないわけです。こんな感じの、「村っぽい曲」なら何でも良いのでしょうか。ゲームでは気にならなくても、サントラで聞いてるとそろそろ、辛くないですか?この辺がファミコン音源の限界なのかも。「I」「II」ぐらいの曲数ならともかく、「III」ぐらいの曲数だと……。「ゲーム音楽は単体で聴くものじゃない」のか、「サントラを出す以上は独立した楽曲」なのか……。もっとも、「機械に頼らず、大いなる意志にもとづいて生きる」という主張をする彼らの雰囲気はじゅうぶんに出しているとは思いますが。

グルガン族の谷でも流用されています。
17 チョコボのテーマ 前作に続けてチョコボが登場!もちろんチョコボ搭乗時に聞くことができます。後半のパートが付くことによって、現在のバージョンに近付きつつありますね。なお、チョコボの森内部ではメロディは現われず、イントロの2小節をループしたものが流されています。

「III」で初めて後半部分が付いた「チョコボ」ですが、もしかするとこれが植松氏の予定していた「本来のチョコボ」なのかもしれません。ではなぜ「II」の頃(チョコボは「II」で初登場)はやらなかったの?ということについては、意外な理由がありました。植松氏によれば、「I」「II」で開発に関わっていた外国人プログラマー(おそらくナーシャ・ジベリ)が「あまり音楽に興味がなくて」、音の自由度を持たせてくれなかったのだとか。使う音符はそのプログラマーが用意している中から選ぶという、非常に制限のキツい環境だったそうです。植松氏が「この音が使いたいんだけど」と申し出ても、「そんなの用意してない」と……。昔のゲーム開発においてはサウンドプログラムもメインプログラマーが兼任することがほとんどで(というか今のように分離していなかった)、つまりプログラマーの音楽的感性の有無が、作曲作業に大きく影響したんですね。「III」からは音楽専門のプログラマーと作業したため、やりたいことができた、と植松氏は述懐してます。

さてさて、「チョコボのテーマ」の話に戻りましょうか。この曲はちょっとしたイベントでの使用もされており、レプリトの村で召喚士見習いがチョコボを呼び出してしまう……なんていうお遊びがありました。一方、ダスターの村ではこの曲の歌詞が「チョッコボー チョコボ チョッコッボー チョッコボ チョッコボー チョッコボ チョッコボー はい!」だということがわかります。これ、ぜひボーカル化してCD出して下さい。
18 でぶチョコボあらわる 以後の作品でも使用される「でぶチョコボのテーマ」は「III」で初登場しました。チョコボの森の中心に生えている木に向かってギサールの野菜を使えば、でぶチョコボ登場!アイテムを預ってくれるでぶチョコボですが、後の作品で聴くことのできるアレンジでは、その体躯からくるイメージでティンパニの音色が定番になっています。もちろん「III」ではティンパニはありません。ファミコン音源ではさすがにティンパニは無理でしょう……。

ちなみにこの曲、一部で「もともと田中弘道氏のテーマだった」という噂がありますが、植松氏によると「確かに田中のテーマとか坂口のテーマとか遊びで作った覚えはあるけど、でぶチョコボの曲とは別の曲。似てるけど」とのことです。つーか坂口氏のテーマ、聴いてみたい……。
19 オーエンの塔 タイトル通り、オーエンの塔で流れる曲です。機械仕掛けの塔といった雰囲気がよく表現されていると思います。ダンジョンそのものはそれほど仕掛けはなかったですけどね……歯車のところぐらいか?

え〜、曲の話に戻りまして、これ、一部にチョコボのモチーフが入ってますよね?人に言っても「ない」って言われるんですが、えーと、CDで言うと30秒のあたり。ね、これチョコボでしょ?でも、チョコボである必然性もないですしね。なんたってこの塔はカエルですから。やっぱり気のせいかなあ。
20 ギサールの野菜 ギサールの村で使われている曲。こちらは特にチョコボ色はないですね。チョコボっぽい雰囲気の曲ではありますが、チョコボのモチーフはないです。強いて言えば、「VIII」の「おでかけチョコボ」の雰囲気に近いかな。ちなみにこの野菜の名前も、後のFFシリーズではおなじみのものとなっていきます。最近のFFファンにしてみれば「で、ギサールってなに?」とか。
21 ハインの城 うまく個性の出ている楽曲です。後半部分の拍子が絶妙な味を出しています。ハインの城ほかで耳にすることになる、不安とも焦燥ともとれる曲。通常のダンジョンBGよりも、個人的にはこちらの方がより「洞窟を進め」的な感じがして好みです。ゲームに没入し易いっていうか。

出番の少ない専用BGかなーと思いきや、ゲーム後半に訪れる「暗黒の洞窟」で流用されています。
22 バトル2 中ボス戦用のバトル曲なんですが、なんかコミカルな感じもする……。特に、やっぱりタムの音色になじめない。間が抜けすぎじゃないですか?正直、リズムセットはなくてもいいなあ……。ファミコンでリズムを表現しようとする姿勢は買いたいんだけど、それが楽曲的に良いか悪いかはまったく別で。もうちょっと音色、なんとかならなかったのかと……。個人的には「バトル1」の方が、リズムも曲そのものも好きです。

最初に聞けるのは「かぜのクリスタル」におけるランドタートル戦でした。その後はジン、おおねずみ、メデューサ、グツコー、サラマンダー、ハイン、クラーケン、ゴールドル、ガルーダ、リバイアサン、バハムート、ヘカトンケイル、ドーガ、ウネ、ティターン、アモン、くのいち、ジェネラル、ガーディアン、スキュラ、そしてまおうザンデ……、ああ、疲れた。中ボスめちゃくちゃ多いじゃん!

例外としてはバハムートやネプト竜。倒すことのできないこれらの魔物相手の戦闘でもこの曲が使用されています。ネプト竜は倒せたりもしますが……。かなり裏技的なことをやらないと普通はムリ。
23 レクイエム パーティが全滅すると流れます。繰り返しの短いBGですが、暗すぎず、悲しすぎず、どちらかというと美しい、はかない感じ。またゲームオーバー時のみならず、デッシュがオーエンの塔で我が身を犠牲にするイベントや、サロニア王が死亡するイベント、やむを得ずドーガとウネを倒した後などで聞くことができます。むしろそういったイベントにおける印象の方が強いかもしれませんね。

ただ、さすがに終盤はゲームオーバーも多くなることと思いますので(笑)、この曲がトラウマになっているプレイヤーも少なくないと予想されます。なんたって終盤の厳しさは、今なお語り継がれる伝説ですからね。「グルガン族の男は語った……ラストダンジョンは厳しすぎると……」。
24 エンタープライズ空を飛ぶ 初めて、爽快でカッコよさげな飛空艇BGがきた!という感じがします。後のシリーズに比べると物足りない感はありますが、スピード感があってなかなかグーな曲だと思います。アレンジが聴きたいなあ。

なお、物語序盤でかなり早い段階からシドの飛空艇に乗ることができるのですが、その搭乗中にもこの曲が流れてます。エンタープライズではないんだけどね。
25 果てしなき大海原 「いざ、新たな世界へ!」と意気込んだものの、アレですよ。ただただ広がる海……。「今まで旅してきた大陸って、こんなちっぽけなものだったんだ」……ボーゼンとするプレイヤーに追い討ちをかける、この曲。状況とベストマッチしてましたね。さ・び・し・い……町は、人々はどこに?ひたすらさまようプレイヤーに対する心理的効果はバッチリでしょう。そのためか「III」でも人気の高い曲です。おっと、「大海原」と聞いて、ワルツだと思ってはいけませんよ。

ちょっと「II」のメインテーマっぽくはありますが、良いものは良い!
26 水の巫女エリア 難破船で聞くことになるBGですが、難破船というよりもエリアのテーマなんですな。短い繰り返しの曲なのであまり長くは聴けませんが、実はこの曲、植松氏がかなりお気に入りだそうで。主メロ音色の表現がかなり上手いです。アレンジ版(悠久の風)ではフルートになっていますが、そう思って聴くとフルートに聞こえてくるから不思議です。

難破船のほか、クラーケンの呪いの矢に貫かれたエリアが死んでしまうシーンでも印象的に使われています。プレイヤーとしても、ここでこの曲を「難破船の曲じゃなくてエリアのテーマか」とはっきり認識する場面です。それにしてもデッシュといいエリアといい、FFにおいて自己犠牲はもはや定番。それはファミコン時代から不変なのです。
27 アムルの街 ウル同様、癒し系のあったか音楽。使用場所は曲タイトルの通りです。地震が起こり、わけもわからずベッドで目を覚ますパーティ……。エリアの犠牲とともに、世界には大陸が復活した。そんな状況が初出となるためか、どこか哀愁漂う雰囲気もあり、個人的にはかなり好きな曲。エリアのモチーフを散りばめても良かったかな?と思います。

なお、ドーガの村で流用されています。
28 ピアノのおけいこ1 大爆笑。初めてピアノに触る人の演奏を見事に再現!原曲はもちろん、誰もが知っているベートーヴェンの「エリーゼのために」です。筆者もピアノ経験ナシの友達に弾かせてみたことがあるのですが、ホントにこんなだったよ!と思っていたら、実はコレ、開発に参加していた伊藤裕之氏の演奏なんだとか。植松氏が伊藤氏に「ちょっと弾いてみて」と言って録音したデータをそのまま使っているので、伊藤氏が間違えた通りになっているそうです。ホントは弾ける人がそれっぽくワザとハズした……のではなく、ホントに弾けない人に弾かせたものを使ってるんですね。
29 ピアノのおけいこ2 「猫ふんじゃった」。ピアノのおけいこは後の作品でも登場しますが、PSになってからはなくなってしまいました……。あ、「VII」のティファの家があったか!おけいこじゃないけど。
30 スイフト・ツイスト そりゃあもうツイストでしょう。こういう曲が出てくるところもFFの魅力。さあさあ、みんなで飲んで歌って踊ろう!の曲。アムルの街でピアノを弾くと聴くことができます。その場に居合わせた客も踊り出すというもんです。
31 4人組じいさんのテーマ アムルの街にいる、自分たちを勇者だと思っている「4人組じいさん」のテーマ曲。「チョコボレーシング」にも登場する曲です。「アムルの街」との落差ときたら、「いえーい」ってな感じですか。初登場時以外でも、主人公たちよりも先回りして下水道に向かう4人組、そして下水道で魔物に囲まれ身動きがとれない4人組、主人公がデリラからふゆうそうのくつを受け取るところに現われる4人組など、とにかくじいさんが絡むシーンで何度も流れます。
32 隠れ村ファルガバード まあこれなんかも、次世代機の「FF」ならばもっと薄い曲とか、曲を鳴らさずに環境音(ベースノイズ)だけでもいけるところなのかも。ファミコンゆえに、こういう短い曲(かつメロディアスな曲)も多く必要だったわけです。この頃のFFが好きであればあるほど、「最近のFFの音楽はメロがなくてつまらない」と感じてしまうようですね。良し悪しですが、そんなに単純な問題じゃないでしょ?メロがない曲には、そうするべき理由があるんです。

ファルガバードほか数ヶ所(ダスターの村、レプリトの村)で耳にするはず。まあ、この世界(大陸復活後)での「村のテーマ」という感じです。浮遊大陸における「故郷の街ウル」と同列の扱いですね。
33 巨大都市サロニア スネアは入ってませんが、マーチ(行進曲)を感じさせる曲調。もしもリメイクされるなら、間違いなくマーチになることでしょう(後のDSリメイクで、本当にマーチになりました)。実は植松さん、こういう曲もわりと得意ですよね。キャッチーだし、かっこいい、ツボをおさえた作りと言いましょうか。

その名の通り、サロニアで聞けます。また、サロニア2の中にある「ドラゴンの塔」でも、引き続きこの曲がBGとして使用されます。
34 潜水艦ノーチラス ノーチラスがドーガの助けを借りて潜水仕様になれば、海底を探索することが可能になります。これはそんな、ノーチラスの海底航行時に流れるBGです。良くも悪くもイメージ通りですね。ゲーム中ではこの曲といっしょに、ソナーのような効果音も鳴らされます。FC音源も雰囲気ありますが、この曲はもう、圧倒的にアレンジバージョンの方が好きだなあ。それはそうと、「III」はけっこうリタルダントのある曲が多いですね。プログラム的に可能になったからなのでしょうか?「I」「II」にはなかったですよねえ。あ、ナーシャがそんな音楽的表現に興味がなかったからか。メインプログラムとサウンドを分業にした効果がこんなところにも。

個人的にはノーチラスと言ったらベルヌ、っていうか「ふしぎの海のナディア」ですが…。意味不明ですいません。ちなみに「ドラクエ」で初めて海底を探索できたのはスーファミの「VI」ですから、FFはかなり先を行っていたわけですね。「ドラクエ」のフォロワーとして生まれたFFが、逆に「ドラクエ」に影響を与えていったのかもしれませんね。
35 海底神殿 こういう曲は好きですねえ。ファミコン音源に向いてるし、それを考慮して作られていそうだし。ステレオ音場ならばもっと遊べそうですね。タイトルのまま、海底の「時の神殿」で使用されていますが、三角島の「海底洞窟」やサロニアの「地下の迷路」、「ドールの湖」への流用もあります。つまり、海底ダンジョンのテーマという扱いですね。
36 ドーガとウネの館 チャンチャンチャンチャン……」イントロが妙に印象に残る曲です。ディレイっぽく聞こえるものは徐々にベロシティを弱めて入力したものでしょうか。「III」は全体的に音色や表現方法でいろいろな実験がなされていて、興味深い作品になっています。この曲はもちろん、ドーガの館内部で流れるもの。魔方陣の洞窟の最深部や、ウネのほこら、そしてドーガの洞窟でも流れます。

これもアルバム「悠久の風」でアレンジされていますが、「FFIX」でもちらっと登場しますよ。ファンサービスですね。
37 ノアのリュート タイトル通りの、短いMEと言えるでしょう。時の神殿でノアのリュートを入手した際に流れます。不思議と妙に「リュート」してるんですよ。もちろん本物のリュートはギターのような弦楽器であり、リアルかと言えばそうではないんですが、テンポが小刻みに変化するなど芸の細かさで補おうという努力を買いたいですね。「ドラクエ」のイベントMEに負けていないと思いますヨ。この曲はもちろん、ウネのほこらでノアのリュートを使ってウネを目覚めさせる時にも聴くことになります。

また、ダスターの村やサロニア城などで「わたしのうたをおききなさい……」と語るNPCに話しかけた際にも流れます。このようなイベントでは、例えばバハムートについての話など、神秘的かつゲームのヒントとなるような話を聞くことができます。そこに流れるリュートはなんとも言えない雰囲気。
38 ウネの体操 イントロだけでもう笑えます。早回しのラジオ体操風味。後半はドリフテイストと言いますか、仲本○事が現われそうな。ノアのリュートを使ってウネを目覚めさせると、突然流れるノーテンキな曲です。この曲にのせて、ウネは目覚めの体操を……。こんなちょっとしたイベントのために1曲作ってしまうんだから、植松氏も遊び好きと言うかノリがイイと言うか。もしかすると坂口(博信・当時ディレクター)氏に「ここ1曲追加ね」とか言われたのかもしれませんが。
39 巨大戦艦インビンシブル 実に爽快!快適な空の旅をお楽しみ下さい!という曲なのですが、実際のインビンシブルときたら……。おいおい、曲が良すぎやしねーか?!というシロモノでありまして、正直もったいないです!ノロノロ。

これはアルバム「悠久の風」もぜひ聴いてほしいですねえ。
40 禁断の地エウレカ これは個人的にはすごく好きな曲。なんかとても「古き良き懐かしきゲーム音楽」の印象が強くて。ですが、シナリオ的に「エウレカ」は必須でないのが残念。強力な武器やジョブがあるので、ぜひ立ち寄ってね!ということで、「エウレカ」は「ファイナルファンタジータクティクス」にもちらっと登場します。名前だけね。
41 クリスタルタワー 言うまでもなく、クリスタルタワーで流れるBG。今や伝説ともなっている、長〜い長〜い……ダンジョン。構造上、「古代の民の迷宮」と連続で通過せねばならず、ラスダンがあまりに厳しすぎる!と、ゲーム雑誌のレビューで酷評されていたのも、古き良き思い出?曲にはクリスタルの匂いは感じられませんが、人によっては「III」で最も記憶に刻み込まれた(忌むべき?)曲なのかもしれませんね。

余談ですが、開発中は(というか発売直前までは)一連のラストダンジョンの途中にセーブポイントが用意されていました。しかし、あるデバッガー(もしくはテストプレイヤー)が「楽勝なラスダンっスね」とか言ってしまったため、怒った開発側がそのセーブポイントを消してしまったようです。結果、あんなに厳しいモノになりました……。とりあえず、もしもそのデバッガーが私の前に現れたら、無言で一発ぶん殴ります!
42 闇のクリスタル まおうザンデ撃破後の真の最終ダンジョン、「闇の世界」のBGです。前半は悲壮感漂うカッコよさがあるにも関わらず、後半の展開は音色のせいで損をしているという感じ。曲は良いんですが、音の軽さに足を引っ張られてしまっているような気がします。さらに言うなら、ちょっとでもクリスタル(プレリュード的アルペジオ)のモチーフを入れてほしかったところ。
43 最後の死闘 対ラスボス「くらやみのくも」戦を彩ったバトル音楽。実際のゲームでは別々に流れますが、このように組曲風に紡がれると、イントロからの意表をついた展開は実に見事!ただ、やっぱりドラムの軽さがちと残念です。FC音源ではこれでいっぱいいっぱいかな。ワンダースワン版で良いアレンジとなることに期待してましたが、アナウンスされつつも結局発売されませんでした……(後にDSでリメイク実現)。しかし時間が経つと、このドラムなしでは成立しないと感じるようになるのですから面白いものです。

実際のところ、「くらやみのくも」相手に音楽をじっくり聞く余裕はなかったハズ。サントラならゆっくり聴くことができますヨ!しかし、140万人中いったい何人が、ここまで辿り着けたのか……。ファミコン音源はイマイチ物足りないという人、「チョコボレーシング」でカバーされているので聴いてみて!さらに、DSリメイク版のサントラには、THE BLACK MAGESによるアレンジが入ってます。こちらも必聴。
44 エンディング・テーマ さきざまな楽曲が顔を出して場面を盛り上げる、今後のFFでおなじみとなっていく手法を持った組曲形式のエンディング。1分18秒からはインビンシブルも顔を出して、いったんフェードアウト。そして「プレリュード」がマーチングスネアを引き連れてフェードインしてきます。一瞬「オープニング・テーマ」が演奏されるのも、今にして思えばここが原点ですね。キツ〜いラスダン、厳しいボス戦を乗り越えてやっと迎えたエンディング、この曲は苦難を乗り越えたプレイヤーに対する最大限の賞賛でしょう。FFシリーズでも格別の充実感があります。

最後に、植松氏が語った「III」エンディング作曲時のお話を。「FFIIIはPSG音源の制約で3音しか使えませんでしたから、この曲(エンディング・テーマ)では3音だけでいかにシンフォニックな音楽ができるかということに挑戦しました。ですから、かなり悩んで、会社を休んで1週間ぐらい海辺のホテルにシンセサイザーを持ち込んで、その1曲のためだけに時間を費やしました」。苦悩と意気込みが伝わってくる逸話ですが、後にリメイク「DS版III」発売にあたっての当時を振り返ってのインタビューでは、「できるまで帰ってこない!とタンカ切ってホテルにこもったんですが、2日ぐらいでできちゃって、ノコノコ会社に戻った時は恥ずかしかった」……どっちが真実?

さらに、音楽に興味のなかったプログラマー(ナーシャ)が関わっていた「I」「II」ではあり得ない長大な楽曲を本作で実現できたのは、音楽専門のプログラマーを投入した効果でしょうね。

サントラ未収録曲一覧
・酒場で踊り子が踊り出す時の短い曲(バレエ音楽風)
・情報/重要アイテム獲得ファンファーレ
・休息時のME
・NPCが仲間に加わった時のME
・汎用焦らし音楽
 (ジンをミスリルの指輪で封じ込めようとするも、効果がないといったイベント、
  バハムートの巣で、バハムートに襲われるイベント、
  デッシュがオーエンの塔で、我が身を犠牲にせんとするイベント、
  ドワーフの洞窟で、グツコーがまんまと2本の「氷のつの」を奪うイベント
  グツコーが火のクリスタルから力を奪い、パワーアップして襲いかかってくる場面
  トックルでハインの兵士たちにつかまってしまう主人公たち
  おまえらに取られるぐらいなら……と、クリスタルを破壊するゴールドル
  サロニア城で、寝ている王子に王が襲いかかる〜主人公とギガメスが対峙するイベント
  ドーガの館に入るなり、「だれじゃ!」と言われるイベント
  クリスタルの塔最上階で石像の罠にはまる主人公たち
・仲間と別れる時のME
・危機的なループ音楽
 (水のクリスタルで、エリアが主人公をかばって矢に貫かれるイベント、
  サロニア1の酒場で、王子がゴロツキにからまれているイベント
・アルス王子が父の意志を継いでサロニア王になる時のファンファーレ
・魔方陣の洞窟でドーガが、エウレカの鍵を取りに異次元へと消える時のME
当初予定されていたワンダースワンへの移植が頓挫したままの状態だった「III」。PSやGBAで「I」「II」が発売されたことで、「III」のリメイクへの期待もますます高まりましたが、結局発売されず。このまま「III」だけが記憶の彼方に消えてゆくのか……と思われたものの、2006年にNINTENDO DSでの完全リメイク版が発売!3Dで生まれ変わった「III」の音楽がどのように変貌したのかというあたりも我々としてはもちろん気になりますが、なんと嬉しいサントラも発売!DS版をプレイしていない人も、アレンジバージョンとして楽しめるものになってます。ボーナストラックとしてTHE BLACK MAGESによる「最後の死闘」や、muZikの「悠久の風」テクノもCDで初お披露目!オールドファンも買いっす。


あえて今、FC版! FC版サントラ

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