GAMERS EDEN ゲーム音楽 ゲームサントラ レビュー ファイナルファンタジー
THE BLACK MAGES II 「The Skies Above」
パッケージ画像  「ファイナルファンタジー」シリーズでおなじみの楽曲を、主にバトル音楽中心にロックアレンジしてユーザーに届けることを目的とした「THE BLACK MAGES」。好評を博した第一弾に続いて、2枚目のアルバムが登場。本作は全パート生演奏、ゲストを迎えてのボーカル曲もアリと、前作にも増してファンを楽しませるものに仕上がっている。アレンジャーの個性が前面に出た、よりロックとしての完成度を高めた10曲+1、拳を振り上げて聴け!

ユニバーサルジャパン
UPCH-1377
2004年
JASRAC表記:
あり

amazonでこのCDを購入
 「FF」音楽ファンが渇望していたもの……。それが、ロック色溢れるアレンジアルバム。ファンによるMIDIやバンド活動など、それらしいものはひっそりと作られ、時にはWebサイトで公開されることもありました。が、オフィシャルな音源ということではなかなかリリースされずにいたのです。ファンであれば植松氏がロック畑出身であることは既知の事実ですし、PS以降ますますロック寄りになるゲーム本編の音楽に、「なぜ出ない?」とヤキモキさせられました。決定的だったのは、「FFX」における「Otherworld」。ゲームでハードロックができるなら、CDでできないわけがない!ということで、期待はますます高まったのです。

 植松氏としても、ロックによるFF音楽のアレンジ盤は頭になかったわけではありません。が、やはり忙しかったのでしょう。ゲーム本編の作曲も含めてやらなければならないことが山積み、なかなか手をつけられなかったことは想像に難くありません。さらに、自身がロック畑であることから「ロックに関してはヘタなものは出したくない」との想いもあり、安易に作ることができなかったというのも理由のひとつ。そんなおり、スクウェアのコンポーザー関戸剛氏と福井健一郎氏が、個人的に「FFバトル音楽のアレンジバージョン」を製作していたものを植松氏のもとに届けました。これこそが「THE BLACK MAGES」の原型だったのです。それを聴いて「これはぜひアルバムとして完成させたい」と強く思った植松氏は監修として携わり、選曲やアレンジの方向性について指示したと言います。それに基づいてアレンジ・録音を進めた関戸氏と福井氏。そうしてリリースされたのが1stアルバムでした。「やっと来たよコレが!」とファンの間でもそうとうな話題となりました。

 好評を博した、と言っても良いのですが、一部、普段ロックをよく聴いている人から「音が軽い」と評されることもしばしば。それもそのはず、ギターとキーボードはアレンジ両氏による演奏でしたが、ベースやドラムスは打ち込みだったのです。DTMを趣味にする人にとっては手本とすべき巧みな打ち込みではありましたが、やはり完全バンド演奏のダイナミックさにはかないません。しかし、その問題はほどなく解決されます。植松氏らはさっそく「THE BLACK MAGES」のライブを画策、スクウェア・エニックス内部でメンバーを集めたのです。「FF」を多数担当し、シンセサイザプログラマーとしてファンには名を知られる河盛慶次氏がベース、宣伝担当である岡宮道生氏がもう一人のギター、同じく宣伝の羽入田新氏がドラムスとして加わりました。その際、岡宮氏らから条件として提示されたのが「植松さんもやるなら」。ということで、植松氏自身もオルガン担当としてステージに立つこととなったのです。そしてライブは行われて大成功。同時に、このメンバーによる「バンド演奏アルバム」への期待が高まりました。

 2004年、いよいよ「THE BLACK MAGES」の2ndアルバム「The Skies Above」が発売。ファンが望んだ通り、ライブに参加したメンバーによるオールバンド録音によるそれは、よりロックとしての完成度を高めていました。音楽演奏を本業としていない人たちでもここまでのアルバムができるんだ、という驚きもありますが、ゲストボーカルを迎えて「えっ、あの曲が?!」というサプライズも用意。ここまでやってしまっては、2008年3月に出ると言われている3rdアルバムはもっと凄いことをやらなくてはならないかも?!それでは2ndの仕上がりを聴いてみましょう。なお、レコーディングとミキシングのすべてを福井健一郎氏自らが行っていることにも注目。

01 The Rocking Grounds
(Final Fantasy III)
静かにフェードインしてくるような期待感溢れるイントロに導かれ、アルバムのオープニングを飾るのは「FFIII」の通常バトル曲、「バトル1」。ベースとドラムが人の手による演奏になり、1stアルバムと比べてダイナミックさ、ラウド感、パワフルさが格段に増しているのがわかるでしょうか?とは言っても実はまだまだこれは「THE BLACK MAGES」の全力ではありません。ミッチーがいないのです。アレンジ担当は関戸氏で、ギターはすべて彼の手によるもの。

1分までは長いイントロといったところで、そこからおなじみのフレーズが主役となります。ギターとオルガンが入れ替わり、おっ、植松サン頑張ってるな!という感じです。2分15秒からは主旋律を崩しつつ保ちつつのギターソロ、福井氏のシンセストリングスもその後を追いかけます。あっという間の4分弱です。もとがファミコン音色でまさに「ピコピコ」していたものだけに、PS以降の曲に比べてもロックアレンジには感慨もひとしおですね。DS版でのオケアレンジとの比較もまた面白いと思います。同じ人間がアレンジを手掛けても、ロックとオケではこんなに変わるぞ、みたいな。あえて言えば、おなじみのバトルイントロ「デデデデデデドド」を河盛氏のベースで再現してほしかった。初期FFのバトル曲がロックアレンジされる際、いつもそれがなくなっちゃってるんですよね。
02 Zeromus
(Final Fantasy IV)
福井氏アレンジの「FFIV」、「最後の闘い」。ラスボス・ゼロムスとの戦闘を彩った曲です。ゆったりめの幕開けではギターが唸り、地を這うような低音のオルガンも威圧的。すぐにテンポ感が上がると、36秒からは原曲に忠実な懐かしいフレーズが。以後も楽器そのものは置き換わっているものの、オリジナルにあるメロディを忠実に再現しながら進行します。やっぱりもともとの匂いは残っていた方が、ファンは嬉しいですからね。1分47秒からは原曲でも印象的だったいかにも「プログレ」なパートも顔を出し、オリジナルのファンも納得でしょう。原曲(のゲーム音源)はオケ寄りの音でしたが、骨格はやっぱりロック寄りだったんだなあと再確認。

個々のスケジュールの都合がいろいろとあったのでしょう、ミッチーはまだ不参加で、さらにこの曲ではオルガンの植松氏もおらず、代わりに福井氏がシンセともども担当しています。
03 Vamo' Alla Flamenco
(Final Fantasy IX)
「FFIX」の同題曲を、関戸氏がアレンジ。渋い!この曲を持ってくるとはね。まだ「FF」にはバトル曲が多数ありますから、まさか2ndでこういうのをやってしまうとは予想してませんでした。まあ、3枚目のためにもネタを温存しておかないといけませんからね。で、この曲ですが、原曲はアコースティックギターを前面に押し出したものでした。今回もイントロはその雰囲気を色濃く残しつつ、すぐにエレキにバトンタッチ(28秒〜)。49秒からのオルガンは植松氏ですね。やはりロックはオルガンが欠かせないよね〜。カッコイー!最近のロックは何か物足りないな、なんて場合は、たいていオルガンがないんですよ。植松世代のロックにはオルガンはマストなのです。

1分52秒からはまた情熱的なアコースティックギターが前に躍り出ます。エレキが弾けても、アコースティックをきれいに聞かせるのはまた別のテクニックが必要なんだよなー。さすがです。ライブではおそらく、これを関戸氏が担当するのでしょうね。そしてエレキは岡宮氏で。そういえばこの曲でもまだ不参戦のミッチー、どうした!?アルバム終わってしまうぞ。本業が忙しかったのでしょうか?
04 Hunter's Chance
(Final Fantasy IX)
続いても「FFIX」より、「ハンターチャンス」。アレンジは同じく関戸氏です。ほとんど原曲そのまんまと言っても過言ではない、イントロからの展開。あらためて原曲を聴いてみると、音色はオケものでもそのフレーズ、構成はなんともプログレしていることを再認識。誤解を恐れず言ってしまえば「ドラクエでは絶対に聴けない曲」です。45秒からのシンセはフレーズ、音色ともに原曲重視です。違和感ないですね。3分28秒からはスッと静かになり、福井氏の憂いのあるピアノが入ってきます。コーダに向けては再びもとの勢いを取り戻して終了。アルバム中、最も原曲に近いトラックと言えます。

というか、ミッチーはまだか?!
05 Otherworld
(Final Fantasy X)
というわけで、呼ばれて飛び出たミッチーこと岡宮氏。「FFX」のオープニングでユーザーのド肝を抜いたデスメタル「Otherworld」を引っさげ、ギターで参戦です!なんとアレンジ&プログラミングまで手掛けています(珍しく、関戸氏が不参加)。植松氏によると「かつてプロのスタジオワークも手掛けていた」岡宮氏なので、それも朝メシ前?1stのライブを見て、「なんでこんなに弾ける人が宣伝社員なんだ!?」と思いましたが、そんな人がプロミュージシャンを(本業としては)やっていないのですから、プロって人たちはどんだけ凄いのかと。

原曲が原曲ですからロックになったことでの驚きはありませんが、原曲はもっとズシズシとくる重さと吐き捨てボーカルで「メタル」だったものが、今回はかなり正統派な「ロック」に。最大の変化は、女性ボーカルになったことでしょう。ゲストボーカルはKAZCO。FFファンにとっては「誰?」という感じですが、ライブで我々の前に登場。それでも「誰?」でしたが(失礼)、調べてみればソロはもちろん、いろいろなアーティストのCDやツアーに参加する、知る人ぞ知るアーティストさんでした。しかしオフィシャルサイトを見ても、どこにもTBMの記述がないのは……まあいいか。

歌詞は原曲と変わりません。作詞はFF音楽ファンの間ではおなじみ、英語担当のアレックス(愛称。知らない人はファン失格ですので調べて下さい)。KAZCOの歌唱は、誰が聴いても一発で「日本人!」とわかる、日本語発音の英語。聴き取り易くわかり易いのですが、普段から洋楽に接している人には違和感があるかも(正直、最初は筆者も「あれ?」と思いました)。ただしご本人のルーツはゴスペルらしいので、あえてこういう歌い方をしているのかもしれません。オリジナルにおける間奏のラジオボイスはアレックスが担当していましたが、今回はKAZCOがこちらも担当。そういえば、どういう経緯で彼女にオーダーがいったんでしょ?そこも気になります。

ミッチーらしいノリノリアレンジでグイグイ引っ張っていきます。1分13秒あたりで聴ける繋ぎのループも「個性」でしょうし、直後の早弾きギターソロはいかにもミッチーで、ライブでの姿が目に浮かぶかのようです。学生の頃とかにがむしゃらにギター練習した、いわゆる「ギター小僧」だったんだろうな。さて、皆さんは原曲とTBMバージョン、どちらが好きですか?
06 Matoya's Cave
(Final Fantasy I)
「FFI」の代表曲、「マトーヤの洞窟」です。この曲は1stアルバム発売後のライブで既に演奏されていました。今回はそのスタジオ録音版、といったところで、アレンジはライブほぼそのまま(アレンジは関戸氏)。アコースティックギターはもちろん関戸氏が、しんみりと演奏します。曲調がガラッと変わってけだるくなる、2分5秒からのロックテイスト全開のオルガンはもちろんノビヨ。怒涛の早弾きで「若いもんにはまだまだ負けん!」ですね。

こういうファミコン時代の楽曲は音色の定義が明確でないぶん(今はPS版、GBA版とかPSP版の音がありますが)、アレンジされた時の楽しみが大きいですよね。そして、そのアレンジバージョンの中にふと、3分41秒で聴けるような「ファミコンふうサウンド」が出てきてしまうと、ついついホロリとさせられてしまいます。
07 The Man with
  the Machine Gun
(Final Fantasy VIII)
「FFVIII」の人気曲、ラグナ編バトル音楽の「The Man with the Machine Gun」です。人気はありますが、筆者個人的にはあんまり好きな曲ではありません(「VIII」は通常バトルの方が良い!)。しかしこのアレンジはお気に入りです。原曲で気になっていた「当時流行っていたチープな歌謡曲っぽさを取り入れてみました」感が、スパッと抜けているからです。ロックになると、聴ける。きっとメロではなく、アレンジが好きではなかったんですね、筆者は。

ギターは、バッキングと最初のソロ(1分24秒〜)は関戸氏。アルバムクレジットにもあるセカンドソロ(1分45秒〜)は岡宮氏です。キャー、ミッチー!という個性炸裂のギターソロで、両指を小刻みに動かすピロピロピロピロや、ネックの表・裏を手がグルグルと行き来する「魅せる」プレイ。ライブDVDでお楽しみ下さい。

福井氏のアレンジらしく、というか原曲を意識した結果でもあるのでしょうが、シンセ系がかなり目立っています。アナログ系シンセによるメロディ、2分25秒からのシンフォニックメタル調なアンセムなど、キーボーディストの見せ場がてんこ盛りです。終盤での主旋律における、キーボードとギターのハモりも気持ちいいですね。打ち込みの、オリジナルにもあったシーケンスがより速度を高め、高揚感を与えています。
08 Maybe I'm a Lion
(Final Fantasy VIII)
岡宮氏アレンジによる「FFVIII」の同名曲。ラスボス戦で聴くことのできる曲です。ギターは後半になるにつれ早弾きフレーズが増していき、ミッチーの独壇場という感じで、ライブでの見栄えも考えたうえでアレンジされています。もちろんノビヨの見せ場も用意されており、2分30秒からのパープルイズムが炸裂したオルガンソロは圧巻!「キャー、ノビヨー!もうどうにでもしてー!」という感じでシビれますな。イントロのボイス「メィビアマライオンヌ」はアレックスによるもの。

原曲も確かにロックだったのですが、和太鼓+ギター+オルガンという編成であり、かつわかりやすいメロがあまりない曲だったので、このアレンジもどちらかというとアレンジの妙、テクニック博覧会という感じになっております。「音楽に聞き惚れる」というよりは「演奏を楽しむ」「技巧に酔う」というところでしょうか。ライブには必要な曲です。最後にドワーンと鳴り響くのはハニーによるドラ。ライブではドラムセットの背後に(この一曲のためだけに)ドでかいドラを置き、引っぱたくのです。
09 Battle with the
     Four Fiends
(Final Fantasy IV)
「FFIV」から「ゴルベーザ四天王とのバトル」を関戸アレンジでお届け。イントロから「きたきたきたーっ!」という感じの原曲テイスト出しまくり。基本的にはオリジナルに沿った進行+ソロの追加という、TBMではオーソドックスなスタイルなため驚きはありませんが、安定した演奏による聴き応えはアルバムでも指折り。植松氏のオルガンソロもたっぷり盛り込まれています。もともと変拍子の多いこの曲はロックアレンジにうってつけですね。今でも思いますが、ほんと「IV」は全体的に楽曲の質が高いなあ、と。
10 The Skies Above
(Final Fantasy X)
アルバム最大のサプライズにしてトリ(あと一曲ありますが、「FF」的にはオマケなので)を飾るのがこのトラック、「FFX」の「ザナルカンドにて」です。曲名がまるで変わっているのですが、曲が始まった瞬間に「あ、あれね」とわかると思います。なにせ「イマージュ」にも収録された、「X」の代表曲ですから。原曲そのままに、しかしより憂いを込めて奏でられるピアノはもちろん、福井氏によるもの。ん……でもこれ、TBMでしょ?この後、ロックになるんだよね?

ジャカジャジャカジャジャー、ジャカジャジャカジャジャー……きたきた、きたよーギターが(1分40秒〜)。ギターやシンセが高らかにザナルカンドメロディを……と思いきや、歌!血管ブチ切れそうな男声ボーカル!シンフォニックロックではよくあるんですが、そっち系の歌唱ではないな……。もっとこう、オペラ的な……。mr.goo、ナニモノ?!ライブでも思いっきり「ミスター・グー!」とかって呼び込まれてるし。で、そのライブを見た人なら彼の風貌でピンときたでしょう。ヘタすれば笑ってしまうメイクをしてはいますが、正体はなんと、あの渡邊澄晃氏なんです。ピンときませんか?「VOICES」などでのオペラ「マリアとドラクゥ」で、テノール(ドラクゥ)を演じておられる方ですよ。そっちが本職です。植松氏と仲良くなって「ロックなんだけど、一曲お願いできるかなあ」ということでしょう。いや、こりゃ驚きました。ちなみにライブでは、KAZCOがコーラスを担当します。歌詞はおなじみ、アレックス。いやしかし、ゲーム「FFX」の中でもしコレが流れてきたら……驚くよなあやっぱり。

ということで、全曲バンド演奏されたTBMの2ndアルバムは、筆者的にはかなり満足な仕上がりでした。ムリとわかっていても、このメンバーで録音し直した1stアルバムが欲しいな、なんてことを思いつつ、いつかは出るであろう(2枚組みで1枚はFFアレンジ、もう一枚は俳句?みたいなことをどこかでノビヨが言っていたような)3rdアルバムを、首を長くして待ちたいと思います。3rdではノビヨもアレンジをやってほしいなあ。
11 Blue Blast
- Winning the Rainbow
「オレは(アタシは)FF全部やってるけど、こんな曲は知らん!」とか言わないこと。この曲は「FF」とは関係ありません。CDには書いてないのに植松氏がライブではっきり「ボーナストラック」と言ってしまった可哀相な曲です。格闘家・村浜武洋選手の入場曲として作られ、TBMで演奏したもの。格闘・プロレスも好きな植松氏、何かの縁で村浜サイドから依頼されたのでしょう。筆者はそっち方面サッパリわからないので、村浜選手のこともまったく存じ上げません、すみません。そのうえでこの曲を語る無礼を、お許し下さいますか?

作曲はもちろん植松氏で、アレンジは福井氏。演奏面については、CDでは植松氏と岡宮氏が不参加(ライブではもちろん演奏してます)。かわりに、イントロのギターを福井氏が担当しています(福井氏はライブDVDでも、ふとしたところでギターを持ってたりするんですよね)。最初に聴いた時の印象は「グランツ○リスモ?」とか思ってしまいました。本当にすみません。さらに、選手入場テーマとしては使いにくいだろうなこの曲……とも思ってしまいました。重ね重ねすみません。

格闘家やプロレス選手の入場テーマって、アタッキーなフレーズでガツーンと入るんですよね、ふつう。さらに音屋さん(現場で音楽を流す人)が、爆発音や金属音を足したりして、とにかくアタマのインパクトを重視します。が、この曲のイントロはコレでしょう。じゃあわかりやすい主メロから使おうか、となりますが、1分5秒のところではアタックとして弱い。もっと言えばプロレスなんかの場合、決着がついた際には勝利選手のテーマをもう一度ドカーンと流したりしますが、その場合を考えても「弱い」ですね。これは推測ですけど、「これが村浜選手の新しいテーマでーす」と受け取ったはいいものの、音屋さんはけっこう困ったんじゃないかと。「どこから使えっちゅーんだよ!」ってね。会場でこの曲がどんなふうに流れていたのか、聴いてみたいところです。

ところで、Webで村浜選手とこの曲について検索しても、悲しいぐらい記述がないのはナゼ?Wikiにも、ファンサイトにすら書いていない。プロレスファンってけっこうテーマ曲にはうるさく、選手テーマのデータをまとめたサイトがあったり、団体やテレビ局に曲を問い合わせてはその情報をファンで共有しているらしいのですが、それにしてはこの曲に関する記述が見られません。まるで「そんな曲知らんよ、認めてないよ」と言わんばかりに……。不人気だったんでしょうかねえ。わざわざオリジナルで作ったのに。もしくは、「大阪プロレスの村浜選手」のテーマとして作られたこの曲ですが、当の本人は2004年に大阪プロレスを辞めちゃってるんですよね……。その後はメタルバンド・RATTの「DANCE」を入場曲としてわりと長いこと使ってるようです。ということで、「TBMが村浜選手のテーマをやってるんだよ!」と言ったところで、世間的にはあまり認知されてないようです……。

「黒魔道士」のバンド編成
 「THE BLACK MAGES」は1stアルバム発売後にバンド「黒魔道士」へと発展、ライブ演奏を行いました。ここでご紹介しました2ndアルバムは、そのメンバーが全員参加してレコーディングされたものです。バンドメンバーはすべてスクウェアエニックスの社員で構成され、いわく「サラリーマンバンド」。ライブやレコーディングが休日ならそれはもちろん休日出勤……。植松伸夫氏は今ではスクウェアエニックスの人間ではなくなったとは言え、バンドにはしっかり在籍していますのでご安心を。ライブは植松氏のファンクラブ「のびよのしっぽ」会員なら優先予約ができます。しょっちゅう開催されるものではないのでなかなか見る機会はありませんが、ファンクラブ会員にはライブ映像を収めたDVDが送られる特典もありますし、新作アルバムも継続して製作されるもようです。いまさらですがここで基礎知識として、TBMのメンバーを紹介しておきましょう。

ギター:関戸PTA剛
もとコナミ出身で、スクウェアには1995年入社。以後「BRAVE FENCER 武蔵伝」「チョコボの不思議なダンジョン2」「オールスタープロレスリング」などの作曲を担当し、その傍ら「クロノ・トリガー」「ファイナルファンタジーI・II」のプレステ移植版のアレンジなどもこなしている。スクウェアファンにはギタリストとしてもおなじみで、数々の作品のサントラにギターで参加している。言うまでもなく、「THE BLACK MAGES」のメインアレンジャー。

ギター:岡宮ミッチー道生
かつてプロのスタジオワークをしていたこともあるという、スクエニのプロダクションマネージャー(当時)。普段は広報・宣伝関連の業務に携わり、メディアへの露出も多い。ギターが数パートに渡る「THE BLACK MAGES」の楽曲において、ライブではオーバーアクションな「魅せる」ギタープレイで会場を沸かせる。関戸氏を「静」のプレイスタイルとするなら、ミッチーは「動」だ。スクエニ作品ではビジネスマネージャーとして「半熟英雄対3D」「FFCC」、Coプロデューサーとして「FFタクティクス」、プロデューサーとして「FFX」「ロマンシングサ・ガ3」などなどを担当。「半熟〜」ではボーカル曲のアレンジも担当した。現在はスクエニを退社して別会社に籍を置くが、TBMからの脱退はしていないのでご安心を。

キーボード:福井フクイ健一郎
関戸氏と同じくコナミ出身。やはり1995年にスクウェアに入社し、関戸とともに「オールスタープロレスリング」シリーズを担当する。ソロではシューティングゲーム「アインハンダー」を担当し、テクノスタイルを押し出したキーボーディストならではのサントラが好評。フュージョン好きなところもあって、多彩なジャンルを操る。関戸氏とともに「THE BLACK MAGES」でアレンジを担当し、「FFVIIAC」のサウンドトラック製作では通常の楽曲製作のほかにコーラスアレンジ、指揮、ドラムプレイにと大活躍。「FFXII」主題歌「Kiss Me Good-Bye」のアレンジも務めた。ステージではオルガン以外のシンセやピアノを縦横無尽に操る。

ベース:河盛ニコラス慶次
スクウェアサウンズファンには、シンセサイザープログラマとしておなじみ。FFシリーズを初めとして多くの作品を担当、我々の耳に届いている楽曲たちの音色セレクトは彼によるところが大きい。幾多のシンセを操る姿からは想像し難いが、力強く安定したベースでTBMの楽曲を支える。

ドラム:羽入田ハニー新
宣伝関係の社員(最近では「FFX」や「FFXI」の宣伝を担当)ということもあり、最も謎(?)に包まれた人材。おそらくミッチーとは旧知の仲であろう。「THE BLACK MAGES」を通じて、我々ファンにとってはすっかりおなじみの人となった。パワフルなドラムプレイは愛・平和・神のタマモノ?!

オルガン:植松ノビヨ伸夫
言わずと知れた、我らがFF音楽の父。1stアルバム製作時は監修という形での関わり方だったが、ライブ及び2ndアルバムから本格参加。自ら作ったプログレ風フレーズに手を焼きつつも「まさか自分が弾くことになるとは」と笑ってみせるが、若かりし頃に培ったバンド経験がその体内で沸沸と温度を上げているはずだ。2004年10月にスクウェアエニックスを退職したが、TBMの活動には今後ももちろん継続して参加する。

”THE BLACK MAGES” LIVE "above the sky"
  CLUB CITTA, January 22&23rd / Namba Hatch, January 28th, 2005
DVDパッケージ  植松伸夫氏のファンクラブ「ノビヨのしっぽ」会員特典として、2006年6月頭に全会員に配布された非売品のライブDVD。CDではもちろん拝むことのできないメンバーの姿、演奏を90分あまりに渡って楽しむことができる。収録楽曲は14曲、ゲストボーカリストも登場しての白熱のライブ映像は、FF音楽ファン及び植松伸夫ファン、そしてTBMファン必見!

SQUARE ENIX
型番なし(非売品)
2006年
JASRAC表記:
あり
 CDは購入してすり切れるほど聴きこんでいるが、仕事の都合で……地理的な問題で……ライブには行けない!でも行きたい!TBMの演奏が見たい!という人にありがたいアイテム、ライブDVD。1stアルバム発売後のライブは映像としてDVDに収められ、ファンクラブ会員特典という形で配布されました。非常に嬉しいプレゼントだったわけですが、2ndアルバムのライブでもやってくれました!全14曲収録、ボリュームたっぷりのDVDです。

 メンバー紹介を除くMCがほとんど収録されていなかったり、2箇所のライブ映像をソースとしているため一部で絵が繋がっていないところがある……などの些細な不満点はありますが、ライブに行けない人がそれを疑似体験するにはじゅうぶんな内容です。ミッチーのフィンガーテクにカメラがついていけておらず、「撮影してるヤツは曲を知らないのでは?」とか細かいことを言い出すとキリがないのですが、そこはほら、売り物じゃないので。サービスですから。音響面では、ミキシングは1stの時より格段に向上しています。観客のリアクションもよく伝わってくるし、前回最大の不満だったオルガンのバランスもまずまず。関戸氏のギターがやや左、岡宮氏はやや右にパンニングされ、「いまどちらがどのフレーズを弾いているか」がわかりやすいのが嬉しいですね。曲間の繋ぎもだいぶ良くなっています。前回のDVDについて掲載したレビューを読んで改善してくれたのなら嬉しいな……ってのは自意識過剰すぎ?!でもそう思ってしまうぐらい、指摘した不満点がなくなっているのです。

 ライブを演るまでは謎に包まれていたKAZCO、mr.gooもバッチリ登場。非売品なので入手は困難ですが、持っていない人はぜひ、FF音楽ファンのお友達を作って、見せてもらいましょう。オークションとかに出ているかもしれませんが、しっかりコピーして手元に残したうえで高額で売ろうとしてる人、ダメですよ!

収録楽曲
01.The Rocking Grounds (FINAL FANTASY III バトル1)
02.Zeromus (FINAL FANTASY IV 最後の闘い)
03.Hunter's Chance (FINAL FANTASY IX ハンターチャンス)
04.Battle Theme (FINAL FANTASY VI 戦闘)
05.Battle with the Four Fiends (FINAL FANTASY IV ゴルベーザ四天王とのバトル)
06.Vamo' Alla Flamenco (FINAL FANTASY IX)
07.Maybe I'm a Lion (FINAL FANTASY VIII)
08.Those Who Fight Further (FINAL FANTASY VII 更に闘う者達)
09.The Man with the Machine Gun (FINAL FANTASY VIII)
10.Clash on the Big Bridge (FINAL FANTASY V ビックブリッヂの死闘)
11.Otherworld (FINAL FANTASY X)
12.The Skies Abive (FINAL FANTASY X ザナルカンドにて)
13.Matoya's Cave (FINAL FANTASY I マトーヤの洞窟)
14.Blue Blast - Winning the Rainbow (格闘家 村浜武洋選手 入場テーマ曲)

15.特典映像 (ライブ後のメンバーへのインタビュー)

関連CD
初回盤パッケージ 「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」
オリジナル・サウンドトラック


スクウェア・エニックス
SQEX-10051〜2
2005年9月28日発売

JASRAC表記:
あり
「FFVII」の「その後」を描いた映像作品「FFVII AC」のサントラ盤。植松氏を中心に福井氏、関戸氏、河盛氏らTBMの中核メンバーがアレンジを手掛けています。楽曲には「VII」のアレンジも多く投入され、TBMでアレンジ済みの「更に闘う者達」や「J・E・N・O・V・A」のニューバージョン、そしてもはやTBMの代表曲になりつつある「再臨・片翼の天使」はここで初登場。岡宮氏と羽入田氏が参加していないものの、植松氏いわく「実質的なTBMの3rdアルバム」ということで、これもチェックしていなければ黒魔導士は語れない!詳細なレビューはこちら
ジャケット画像 DS版「FINAL FANTASY III」
オリジナル・サウンドトラック


スクウェア・エニックス
SQEX-10076〜7
2006年9月20日発売
JASRAC表記:あり
2ndアルバムは出た、「AC」のサントラも堪能した……。「ところでTBMの3枚目はまだ?」とファンが思い出した絶妙のタイミングでリリースされた、DS版「FFIII」のサントラ。ゲーム本編のアレンジを関戸氏と河盛氏が担当。特に、河盛氏がプログラマーではなくアレンジャーとなっていることに注目。これは「AC」での功績によって任されたものでしょう。しかし、それだけではこのCDをTBMの関連CDとする根拠にはなりません。実はこのCD、ボーナストラックとして「最後の死闘 THE BLACK MAGES Ver.」を収録しているのです。このためだけにCD買っちゃった人もけっこういるはず……。どんな仕上がりかはCDを購入して確認を!3rdアルバムへの収録はあるのでしょうか?→されました

ゲーマーズエデン トップへ サントラレビュー メニューへ
2008 GAMERS EDEN