クロノ・トリガー オフィシャル・サウンドトラック
ジャケット画像 TOKYO POP
TPCD 0209-2
2001年
JASRAC表記:
もちろんなし
ゲーム紹介

 「クロノ・トリガー」は、スクウェアが1995年にスーパーファミコン用ソフトとしてリリースしたロールプレイングゲームです。当時のスクウェアファンなら必須というほどのタイトルでしたし、以前から「ファイナルファンタジー」をプレイしてきたユーザーも思わず本作を手に取ったことでしょう。しかし、このタイトルはまた、「ドラゴンクエスト」のファンにとっても無視できない作品でした。というのは、実は当時、「FF」と「ドラクエ」を両方プレイしていたゲーマーは少なく、言わば「FF派」「ドラクエ派」といった感じで、どちらか一方をプレイするのが一般的だったのです(両方プレイしていたのは、かなりコアなゲーマーでしょう)。そこで、この「クロノ・トリガー」の出現です。スクウェアの作品であり、世界観やシステムなどに「FF」のテイストが色濃く反映された本作は間違いなく「FFファン向け」なのですが、なんとシナリオ(プロット)は「ドラクエ」の堀井雄二氏が担当。そしてキャラクターデザインも、「ドラクエ陣営」の漫画家・鳥山明氏が担当したのです。まさに「FF」と「ドラクエ」の、夢の融合。それが、「クロノ・トリガー」なのです。

 後に1999年、日本ではプレイステーションに移植され、同時期に発売された続編(というのもやや語弊がありますが)、「クロノクロス」とともにヒットしました。そして海外では、「FINAL FANTASY CHRONICLES(ファイナルファンタジークロニクル)」と銘打ち、PS版「FFIV」と「クロノ・トリガー」をカップリング。この2作品をCD-ROM2枚組のプレイステーションソフトとして発売したのです(もちろん日本では入手できません)。しっかりとこの2作品をまとめた攻略本も存在しています(海外にも攻略本があるんですね)。まあ「FFIV」と「クロノ」というカップリングも「謎」な組合わせではあります。というか、なぜにクロノが「FINAL FANTASY」?

 となれば、当然音楽CDも存在することになります。それがこの「CHRONO TRIGGER Official Soundtrack」です。全25曲・73分のボリュームになってます。オリジナル版のサントラを持っているファンにしてみれば、「あれ?曲数少なくない?」と思われることでしょうが、海外盤のサントラは、日本のプレイステーション版サントラに準じています(曲の並びも基本的には同じです)。ただし、PS版のアレンジBGMはだいぶ割愛され、そのかわりにボーナストラックとしてアレンジ盤「THE BRINK OF TIME」から一曲、メインテーマのアレンジを収録しています。

 言ってみればこのCDは、「クロノサウンドおいしいとこ取りベスト盤」。クロノ音楽の入門盤として、初心者に優しいわかりやすい内容と言えるでしょう。オリジナルサントラは3枚組ですが、よほどのコアユーザーでもない限り、そのうち何曲を覚えているか?という疑問もあります。その点でこのCDは、耳に馴染みのある印象的な楽曲を中心にセレクトすることで、あらゆるユーザーが理解できる構成になっているのです。ただし、このCD限定の音源は一切ありませんので、コレクターズアイテムとでも申しましょうか。日本国内のレコード店では入手しにくいと思われますが、アマゾンなどの通信販売でまだ購入できると思います。

 レビューは基本的に、オリジナルバージョンアレンジバージョン及びPS版のレビューをコピー、改変して掲載することをご了承下さい。

文中、特に注釈の無いものについてはすべて光田康典氏の作曲・アレンジ。


01 A Premonition このトラック1からトラック21までは、スーファミ音源によるオリジナルサウンドで構成されています。そしてその1曲目は、コツ……コツ……コツ……。「時」をテーマにした「クロノ・トリガー」らしい導入曲です。原題は「予感」。アルペジオとボーカリーズから成る、まさに予感めいたものを感じさせる短い楽曲で、電源投入後のタイトル画面で流れたものです。スーファミのグラフィック(ドット絵)で振り子が揺れてたインパクト、当時はかなり驚かされました。

さらに、リアルタイムでSFC版をプレイした人にとっては、PS版での久々のプレイそのものがタイムトリップのような感覚になってしまうことでしょう。音楽が人間の記憶・心理に与える影響とは、なんとも不思議なものです。
02 Chrono Trigger 言うまでもなく、本作のメイン・テーマです。形を変えて様々な楽曲に、このモチーフが使用されることになります。印象付けということでは、FFなみにできている本作。きっと若い頃から映画音楽にも興味のあった、光田氏だからこそできたのではないでしょうか?

それにしても、文句無くカッコいい曲だと思いません?パートも多く、スーファミとは思えない厚みがありますよね。ティンパニとスネアによって構成されるリズム隊がテンポを形成し、ストリングスが緊張感を、そしてメインのトランペットによるメロディが勇ましさを感じさせます。後に「クロノ・クロス」でもカバーされており、海外でも非常に人気のある曲です。
03 Peaceful Days 原題は「やすらぎの日々」。その名の通り、なんとも癒される曲です。構成楽器のすべてが暖かい、というか、優しいんですよね。ずぅ〜っと聴いていてもまったく苦にならないです。ゲーム冒頭、母に起こされたクロノが目を覚ますシーンで演奏されます。以後、リーネ広場に入るまで、トルース町のワールドマップ及び屋内で流れつづけます。また、この段階でパレポリまで徒歩で行くことも可能ですが、パレポリ町内でもこの曲が流れます。
04 Guardis's
  Millennial Fair
光田氏お得意の、という感じのお祭り音楽。原題は「ガルディア王国千年祭」です。けっこう長い曲なんですよ。アコーディオンやフルートの音色がいかにも楽しげ。町の片隅で、数人の楽団が演奏しているような雰囲気。周りで聴いている人も思わず手拍子、みたいな。そういう、手拍子とか「ハッ!」という人声のサンプリングが、曲にアクセントを加えていますね。うまいです。曲で「祭り」の賑やかさを、存分に演出していると思います。実際、広場の中にはキャラクターってたいしていないんですが、賑やかな感じがするでしょ?ちなみに6/8拍子です。
05 Yearnings of the Wind ワールドマップBG、「風の憧憬」です。マールを追ってクロノがやってきた、中世のトルース村で初めて流れます。ピチカートが孤独感を強調していますね。うう……寂しい。中盤は高音のストリングス中心にまとめられ、寂寥感がありつつも楽曲としては美しさを感じさせるものになっています。もちろん、後々チョラス村も含め、中世のワールドマップにはこれが流れます。
06 Secret of the Forest 原題は「樹海の神秘」……まんまな英訳ですな。え〜、ガルディアの森におけるフィールドBGです。スローテンポな楽曲で、低くて重いベース音とアルペジオが、深くて暗い(イメージの)森の不気味さを醸し出しています。いつどこから、何が襲いかかってくるかわからない……。フクロウの声のようなSEも混ぜられていて、いっそう不安にさせるあたり芸が細かい!後半のピアノとベースのみのパートはゲーム中ではなかなか聴かないかもしれませんが、一周2分13秒という、けっこう長い曲なのです。ちなみに、中世「お化けカエルの森」でも使用されています。言ってみれば、森のテーマということです。
07 Frog's Theme もちろん「カエルのテーマ」。とても勇壮なマーチ曲です。プレイヤーは、カエルという外見の奇妙なキャラクターと、このカッコイイ曲のギャップに戸惑うわけです(うそうそ)。カエルの過去、目的が徐々に語られていくことによって、この曲の重みが次第に増してくることになります。カエルがらみのイベントで頻繁に流れますが、やっぱりグランドリオンの場面がいちばんゾクっときましたね〜。ファン人気もとても高い楽曲です。
08 The Trial 現代に戻ると、なぜか誘拐犯となっていたクロノ……初プレイのプレイヤーも「なんで?なんで?」だったことでしょう。曲名の原題は「王国裁判」。そう、裁判所における大臣からの審問シーンでかかる曲です。グラフィッカー入魂のステンドグラス(実は「FF」の野村哲也氏!)とともに、雰囲気を作り出していましたね。コミカルに聞こえてしまうのは、大臣のキャラゆえでしょうか?
09 Lavos's Theme すべての災いの元凶、そして最終的なラスボスとなるラヴォスのテーマ曲です。オルガンが強烈な印象を残すこの曲、これ以上ないほどに悲劇的な感じがします。かと思うと、途中でオルゴールのような音色で奏でられる悲しげな部分もあり、一筋縄ではいかない楽曲です。いわゆるゲームのボスキャラのテーマ曲、というものは数あれど、これはなかなか無いのでは?邪推すれば、これはただのボスキャラのテーマ、というだけの曲ではなく、そのために絶望的な生活を強いられる人々、そして世界をも内包したものなのではないでしょうか。そうでなければ、中盤以降のフレーズはまず入らないでしょう。そこまで考えて作曲しているんじゃないですかね。だとしたら、デビュー作にもかかわらず、すでに光田氏はタダモノではなかった!と言えます。

イベント音楽としてはラヴォスがらみのシーンで幾度となく使われていますが、ラヴォス外殻との戦闘ではバトルBGとして流れ続けます。この戦闘、けっこう時間かかるんだよなあ。曲のおかげで焦らされることはないんですが。
10 Johnny of the
  Robo Gang
原題は「暴走ロボ軍団ジョニー」。32号廃墟に進入すると、いきなりロボットが来襲!すわ戦闘か?と思うと、ジャジーなこの曲とともにジョニーが現われます。それにしても、何故にロボットが意思を持って「走り」に情熱を燃やすのか?そして彼を「アニキ」と呼んで心酔する子分たち……絶望的な未来の世界において、唯一ホッとできるひとコマですね。ロボットにしてみればラヴォスとか、世界の破滅なんて関係ねーよ、という感じなのでしょうか?
11 Robo's Theme まんま、ロボのテーマ。プロメテドームにおいて、ルッカの手によって作動したロボが、一行に挨拶するシーンで初めて使われます(工場クリア後、ルッカが修理して見事再起動したシーンでも使用)。インダストリアルな雰囲気のあるリズムと、細かく刻むベースとギター、そして明るいメロディから成り、なにかと暗い未来の世界において一服の清涼剤となっています。
12 At the End of Time 「クロノ」で「End of Time」と言われると、もっと深刻な「世界の破滅」系の楽曲を想像してしまいますが、「End of Time」というのは要するに「時の最果て」のことなんですね。原題は「時の最果て」、英語的には「時の最果てにて」といったところでしょうか。

ハープをひっかいたような音が印象的です。ベル系の音色とピチカートが神秘的な雰囲気を作り、メインのメロディはピアノが担当しています。少ない音数でも強い印象を残すことの出来る、良いお手本ですね。
13 Jolly Ol' Spekkio 原題「愉快なスペッキオ」。時の最果てでスペッキオと対面した時に流れる、言わばスペッキオのテーマです。タイトルの通り、なんとも愉快な楽曲になってます。スペッキオに力試しを挑む際、戦闘中もこの曲がこのまま流れますが、そこからは想像できないスペッキオの強さに驚いたプレイヤーも少なくないでしょう。しかも、最初の頃はまだしも、だんだんと姿を変化させていくスペッキオ。場合によってはこの曲が浮きまくりでしたねえ。何もかも計算ずくなら完敗ですが。
14 Showdown with Magus 魔王のモチーフをイントロにして、風のSEが加えられ、そのまま戦闘曲へと突入します。魔王の嘲笑とも思える、不気味な笑い声もありつつ……。やっぱり敵の方が印象付けしやすいんですよね。カエル(グレン)VS魔王の、宿命付けられた戦いを彩ります。原題は「魔王決戦」です。

また、「黒の夢」内部での対ジール(巨大化)戦にも流用されています。……この場合、誰の笑い声ということになるんでしょうか?
15 Corridor of Time 原始でラヴォスが墜落すると、続いてクロノたちがやってくるのは古代。そこには、宙に浮かぶ町に暮らす人々がいた……。これはそんな、「魔法王国ジール」で流れるフィールドBGで、原題は「時の回廊」です。メインテーマをシタールのような音色でアレンジしています。メインテーマそのままのフレーズは入っていませんが、その派生形に聞こえますね。とっても光田氏っぽいと言ったら失礼でしょうか?
16 Zeal Palace 原題は「ジール宮殿」。もちろんジール宮殿内部の曲なのですが、プレイヤーが初めて耳にするのは、修復したグランドリオンをカエルに渡すと見ることのできる、カエル(グレン)の回想シーン。魔王と対峙するサイラス、グレンの場面です。また、建設中の黒鳥号でも聴くことができます。緊張した高域の持続音が恐怖感の増幅にはもってこいで、そのようなシーンにも流用されているのではないでしょうか。ジールという人物に関しても、どうやらひと波乱ありそうな……そんな予感が。後に、「黒の夢」内部での対ジール戦でも聴くことができます。ジールのテーマと解釈してもいいですね。
17 Schala's Theme ジールの長女、サラのテーマ(原題も「サラのテーマ」です)。母の計画と謎の予言者、そしてクロノたちに挟まれて苦悩する、優しく真面目過ぎる女性。そんなサラの哀しみを表わしているかのような楽曲です。初めて耳にするのは、なげきの山が落ちた後、地の民の洞窟にサラがやって来るイベントで。残念ながら、ゲーム中ではあまりフィーチャーされておらず、耳にする機会は少ないです。サラのいるシーンにはジールもいることが多く、どうしても「ジール宮殿」に食われてしまうんですよね。
18 Ocean Palace 言うまでもなく、海底神殿のダンジョンBGMです。原題は「海底神殿」……ってそれこそ言うまでもありませんでした……。戦闘に突入しても流れ続けるため、曲の印象が非常に強いものになっていますね。シンセによるパンニングされた機械的なシーケンス、ティンパニと低音のピアノで構成するベース、威圧的なブラスなど、全体的に重いトーンでまとめられており、未知なる文明を象徴しているかのよう。
19 World Revolution 原題は「世界変革の時」。ラヴォス本体(第一形態)とのバトル専用音楽です。かけまわるシンセと、ラヴォスのテーマのオルガンメロが随所に入り、戦闘を煽ります。かと思うと、弦によるメインテーマのモチーフもあり、楽しませてくれる楽曲です。言ってみれば、アップテンポ版・メインテーマ+ラヴォスのテーマメドレーってとこでしょうか。

関係ありませんがはっきり言っちゃうと、ラヴォス第一形態と「ドラゴンボール」の人造人間セルってそっくりじゃないですか?で、「ドラゴンボール」は海外でもとても人気の高い作品なんですよ。ってことはやっぱり、外人ゲーマーの中にも「Oh、ラヴォスとセルはクリソツですネ〜」とか思ってる人がいるわけですか?私は誰に質問してますか?
20 Epilogue
-To My Dear Friends-
原題「エピローグ〜親しき仲間へ〜」。オルゴールで始まりますが、途中から弦も加わってきて、厚みのあるアレンジになります。エンディングにて、ともに戦った仲間がそれぞれの時代に帰って行く場面で流れる曲。次々と去っていく者たち……特にロボとルッカのやりとりは今になって見ても泣けます。
21 Outskirts of Time 原題は「遥かなる時の彼方へ」で、エンディングもいよいよ大詰め、スタッフロール部分で流れる曲です。ゲームクリアの喜びとシナリオの余韻にひたり、そして各キャラのその後なんかにも想いを馳せて見ていると……MUSICのクレジットで表示されたのは「NOBUO UEMATSU」。えっ?こっ、これは光田氏にとってあんまりと言えばあんまりなのではっ?おそらく海外版でもそのまんまなんでしょうね。確かに海外でのネームバリューは圧倒的に植松氏の方が上かもしれませんが……。
22 Crono & Marle
-A Distant Promise-
(Arranged)
これ以降の3トラックは、プレイステーション版の追加要素として加えられたセルアニメーション部分に使われている、関戸剛氏によるアレンジヴァージョンです。原題が「クロノとマール〜遠い約束〜(Arrange Version 1)」であるこのトラックは、PS版を立ち上げるとまず流れるセルアニメでかかる曲。当然のことながら、SFC音源よりもオルゴールっぽくなっており、よりリアルです。SFC版をプレイした人にとっては、突然SFC当時にタイムトリップさせられるような効果があります。これを冒頭にもってくるというのは、「ああっ、わかってるなあ」という感じです。
23 Ayla's Theme
(Arranged)
原題は「エイラのテーマ(Arrange Version)」。原始における、エイラ初登場シーンに挿入されるムービーで使われているものです。原曲にも増してエイラの勇敢さが強調されていますね。厚みがある編成、力強いドラムなど、アレンジならでは。関戸氏のアレンジはけっこう原曲のニュアンスをよくつかんでいて、ファンとしては安心して聴くことができますねー。ゲーム内ではわりと早くフェードアウトしていましたが、CDではけっこう長めに入っています。

PS版および海外盤のサントラでは、原曲が入っていないのが残念。
24 Ending
-Burn ! Bobonga ! Burn
-Frog's Theme
-Outskirts of Time
(Arranged)
冒頭のファンファーレ調の部分はオリジナル版には存在しない曲で、PS版のエンディングに合わせて関戸氏が新規に作曲したものです。この曲が流れるPS版のセルアニメで初めてはっきりと、クロノとマールが結婚したということが描かれています。

PS版サントラでの曲名は「エンディング(Arrange Version)」で、含まれる各曲については明記されていませんが、ご覧の通り海外盤ではされています。「Burn ! Bobonga ! Burn」とは、「燃えよ!ボボンガ!」のことですね(原曲は未収録)。その後、「カエルのテーマ」に続いているわけです。

場面は再び結婚式に戻り、ここは「遥かなる時の彼方へ」のアレンジです。関戸氏の編曲テクニックによって違和感なくメドレー調になったPS版エンディング、個人的には大絶賛です。エンディングについてはSE・ガヤも含めてMAをしているようなので、ムービー部分の音楽はPS音源ではなく、ムービー入れ込みのものなのでしょう。さすがにPSとは言っても、内蔵音源ではこの厚みは出ないのではないでしょうか。
Bonus Track
25 Chrono Trigger
(Arranged)
海外におけるテーマ曲の人気の高さを配慮した結果なのでしょうか?このCDにはアレンジアルバム「THE BRINK OF TIME」から、ボーナストラックとしてテーマ曲のアレンジが収録されています。これは日本のPS版サントラには収録されていないもので、「ズルい!」という感じもしますね(笑)。まあ、海外盤ではPS版アレンジの多くが割愛されていますから、オアイコというところでしょうか。

街頭ノイズに始まって、誰かの足音が聞こえてきます。重厚なシンセストリングスが幕開けを予感させるその間も、足音は何かに向けて歩み続けます。その足音が立ち止まり、扉を開けたその時……。この「足音」は我々リスナーでしょうか?開かれた扉は「クロノワールド」の入口?そんな、どこかストーリーめいたものを感じさせる導入に続いて、ループのリズムが鳴り始めます。そして、どこかで聞き覚えのあるベースとローズ、ギターによる進行。続いて現れたトランペットは……まごうことなき、「クロノ・トリガー」のメインテーマです。

ゲームを遊んだリスナーなら、まずこのアレンジに驚くことでしょう。原曲はオーケストラサウンドを基調としたものだったのですから。しかし、戸惑いとは裏腹に、なぜかリズムにあわせて揺れてしまう体……。ファンク・ジャズのテイストを前面に押し出したクロノのメインテーマはゲーム中のそれとは違っていますが、「FF」のアレンジヴァージョンとはまったく別の方向性、そしてゲーム音楽のこれからの可能性を感じさせるには充分なものだったのです。バンドスタイルの演奏は、やはり打ち込みでは出せないアジがありますね。

このアレンジは、アレンジャーユニット「GUIDO」によってなされています。GUIDOはHIROSHI HATA、KALTA OHTSUKIの二人からなるユニットで、この二人は後々の「トバルNo.1」「ゼノギアス」etcに至るまで、光田氏の圧倒的信頼を受けて創作活動に携わっています。


ゲーマーズエデン トップへ サントラレビュー メニューへ
2004 GAMERS EDEN