Melodies Of Life
〜featured in FINAL FANTASY IX /白鳥英美子

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Melodies Of Life featured in FINAL FANTASY IX
キングレコード  KICS 811   2000年   JASRAC表示:あり

 スクウェアのプレイステーション用RPG「ファイナルファンタジーIX」の主題歌「Melodies Of Life」のシングル盤。あくまで白鳥英美子のシングルとして、デジキューブではなくキングレコードからリリースされている。そのため楽曲名には「featured in Final Fantasy IX」と銘打たれている。
 
 「FFVIII」で始まった、「テーマソング」という路線はシナリオ的には成功。そして、CDのセールスや楽曲の評価も大成功だったと言える「EYES ON ME」。「FFIX」の製作にあたり、製作スタッフそして作曲者・植松伸夫氏は、再度テーマソングを挿入する方針を固めた。「IX」のプロデューサーにして「FFの生みの親」・坂口博信氏は当初英語による歌詞を希望したと言うが、「伝えたいメッセージはストレートに伝えたい」とする植松氏は日本語を採用することに決めた。

 歌詞は植松氏いわく「誰よりもFFIXを深く理解している人物」、謎の人物シオミが担当。これが誰なのかということでも話題となったが、現在に至るまでその正体は(クレジットでは)公表されていない。実はどうやらシオミとは、FFIXゲームディレクター・伊藤裕之氏のことであるようだ。植松氏はシオミを「シオミは水の中で生まれて5年間水中にいた後、北海道の土の中で暮らしていたんです」と語っている。北海道には、潮見町という地名があることから、そこから取ったペンネームではないかと思われる(すべて推測だが)。ちなみに伊藤氏は「FFVIスペシャルトラックス」収録の「近づく予感」でも作詞を行なっており、その点も根拠になり得るかと。
 
 楽曲ができたとなると、誰に歌ってもらうか、ということになるが、当初の日本語詞ということも決定していなかった段階では、エルトン・ジョンやエンヤなどの名前も挙がっていたようだ。前述のように植松氏の意向で日本語詞ということが決定すると(この時点で1999年の7月頃)、植松氏はスタッフにハワイまで様々なCDを送らせた。冗談のような話だが、石川さゆり(演歌界の大御所)にコブシを回さず歌ってもらえば、などという話もあったとか。
 
 植松氏としては「生とか死とか、でっかいテーマやるんだったら、ストイックな、俗世間離れした声の人がいい」という考えがあり、かつ経験もあって深みと説得力のある白鳥英美子氏(ボーカルデュオ「トワ・エ・モア」のメンバー)に、1999年の秋頃に依頼。「ゲームの主題歌」と言われて白鳥氏が連想したものは「インベーダー」や「マリオ」だったというが(笑)、「デモテープを聴いて良い曲だったので」と依頼を快諾。仮歌から積極的に製作に参加したという。「わたしが死のうとも」という詞の表現に苦労したという白鳥氏だが、作詞のシオミと綿密に打ち合わせをし、詞の理解を深めていったようだ。特に植松氏とシオミの間では、どんなに歌詞を手直ししたとしても、「わたしが死のうとも」は絶対に外さないようにしていたという。
 
 曲が完成した後、植松氏はゲームでの感動を損なわないための配慮から、ラジオなどに対してなるべく「Melodies Of Life」は流さないように依頼したらしい(そのわりにサンプル盤-後述-は配布されまくってたが……まずはキングレコードに依頼すべきだったかもね)。そのようにして我々の前に姿を現わした「Melodies Of Life」。「(植松氏がもしも)ゲームを離れてアルバムを作ったらどうなるのかしら」という白鳥氏の問いに、植松氏は「きっと『Melodies Of Life』のような曲ばかりになると思います。だってこれが僕のやりたいことなんだから」と応えている。思えば「FFIII 悠久の風伝説」の頃から続く「女声バラードを書きたい」という植松氏の願望が、最もストレートに出たのがこの曲なのかもしれない。

 前述のとおり、作詞はシオミ、作曲は植松伸夫氏。編曲はおなじみの浜口史郎氏である。CDには「Melodies Of Life」の日本語バージョンと英語バージョン、そしてインストルメンタル(オフボーカル)を収録。いずれもサウンドトラック盤には収録されておらず、シングルでしか聴けないものだ。サントラの「Melodies Of Life」はエンディング用に「ファイナルファンタジー」と組み合わせた編曲版であるし、ボーナストラックの英語バージョンはバックトラックが異なっている。オリジナルオケの英語バージョンはまさに、ここでしか聴けないものなのだ。さらにシングルには、白鳥英美子氏のオリジナルナンバー「Galwayの空」を収録している(編曲は浜口氏だが、作曲は植松氏でなく白鳥氏自身による)。

 英語バージョンはゲーム中では流れないが、CMにて使用。当時、植松氏は「海外版があれば、そちらではゲーム本編で流れるでしょうね」と発言していた。実際、海外版の製品ではそちらが使われているようであり、当初よりそれも想定しての楽曲製作がなされたものと推測できる。さらに、歌手選定についても英語がきちんと歌える人、という条件があったのではないだろうか。英訳詞は染谷和美氏(「EYES ON ME」の作詞者)と、「FFX」で「Otherworld」の英語詞も担当している、アレクサンダー O.スミス氏。


プロモーション版「Melodies Of Life」

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キングレコード  DCH 12061  2000年  NOT FOR SALE

 こちらは「IX」発売前にマスコミ向けに配布された、いわゆるサンプル版と呼ばれるもの。収録されている内容は製品版と同じ。ただ、表記が「feautured in FINAL FANTASY IX」となっている部分が唯一異なる。CDの盤面もそうなっていることから、誤植ではなくおそらく本気で間違っているもよう。


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