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FINAL FANTASY VI SPECIAL TRACKS

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NTT出版/ポリスター  PSDN-6101   1994年   JASRAC表示:なし

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 スーパーファミコン時代の「FF」シリーズは、オリジナルサントラやアレンジ、ピアノコレクションとは別にCDシングルによる「ミニアルバム」をリリースしていた。そこにはリミックスやゲーム未収録曲、過去作品のリメイクバージョンを収録していたが、「VI」についても同一コンセプトに基づくシングル盤がリリースされた。それがこの「FFVIスペシャルトラックス」である。

 「VI」発売にあたりリリースされたマキシシングル「F.F.MIX」で、過去の「FFIVミニマムアルバム」「FFV 5+1」及び「マンボdeチョコボ」といったシングル収録のレア音源は一通りフォローされたが、この「FFVIスペシャルトラックス」は同時期の発売だったため収録されていない。即ち、シングル盤の中ではこのCDこそ、再収録のないレア中のレアアイテムとなっている。ゲームそのもののファンには無用のものではあるが、その音楽にも興味を持っている人ならば一度は聴いておきたいところだ。ただし、入手はFF関係のCDの中でも最も困難を窮めるだろう。

 内容は書き下ろしの歌モノとゲーム未収録のアウト・テイク、それとSNOW PRODUCTIONによるリミックス、計6トラック。当初、筆者はこのCDについてサントラとして位置付けるのもいかがなものかと思い、レビューで扱うつもりはなかったのだが、近年ファンの間でこういったシングル盤に対する関心も高まってきているように感じたので、発表することにした。


track1.近づく予感
 このシングルにのみ収録されている、書き下ろしのオリジナル曲。作曲・編曲を植松伸夫氏が手掛け、作詞をスクウェアの伊藤裕之氏が担当。歌唱しているのは「FFVI」の開発スタッフである。ファンの間でしばしば交わされるのが「『近づく予感』ってゲーム中のどの曲?」という会話だが、ここで正解を記しておくと、ゲームでのどの曲にも該当しない。冒頭で述べた通り、この曲は「書き下ろし」であり、ゲーム本編とはまったく関係がないものである。

 植松氏いわく、この曲は「心に深い傷を負った友人のために書いたもの」ということであり、非常にプライベートなものだ。それが歌を入れる前のものか、最終ミックスのものかは知り得ないが、植松氏は完成したテープを聞いて自分が涙してしまったという。

 何れにしても楽曲自体のゲーム本編との関係は希薄であると言わざるを得ないが、FFVIのスタッフたちが歌ったことでシングル入りとなったわけだ。当時「Vジャンプ」の企画でビデオも製作されたことから、植松氏の個人的な曲が企画としてどんどん膨らんでいったのではないだろうか。もしも「FFVI」がプレイステーションの新作としてリリースされていたら、エンディングあたりに挿入された可能性もゼロではないだろう。

 ゲームとの関わりに乏しいのであえて楽曲自体に触れることはしないが、参加スタッフは豪華。中村栄治氏、赤尾実氏といったサウンドチームはもちろんのこと、北瀬佳範氏、高橋徹也氏といったディレクター、野村哲也氏や皆葉英夫といったデザイナー、さらに坂口博信プロデューサーなど、総勢40名以上。彼らによる、決して上手いとは言えない大合唱が、なぜか心に響くのだ……。元気のない時に聴きたい、隠れた名曲かも。


track2.街2 (ゲーム未収録曲)
 「街」で流すために作られた曲だが、「VI」ではいよいよ曲数が膨大な量になってきたため、街で流れる曲も既に複数用意されており、こういった曲が入る余地はなかったようだ。ギターの伴奏に木管によるメロディ、そしてキックとシェイカーによるリズムで、テンポは早め。街ごとの雰囲気で曲を使い分けたかったのかもしれないが、この曲がハマりそうな街があるかどうか……?ゲーム内で多用されている「街角の子供達」が素晴らしい曲だけに、余計なものは削ぎ落とそうという判断があったゆえ、かもしれない。もっとも他の作品ならともかく、「VI」全体を貫く雰囲気からはこの曲はやや外れているような気もする。


track3.街3 (ゲーム未収録曲
 こちらも「街」の曲。「街2」に比べてもうちょっと庶民的というか、ほのぼのとした感じ。どちらかというと「V」の「ハーヴェスト」のような、土地に根ざした雰囲気のある曲調になっている。これは作品中に使われていても違和感がなさそう。サマサの村では街のテーマではなく「ストラゴスのテーマ」が流されていたが、そのあたりの「村」に使われる予定だったのでは?と予想してみる。


track4.トロイア国 (リメイク)
 「V」のシングル「5+1」で「マトーヤの洞窟」がリメイクされたのに引き続き、今回も旧曲リメイクが収録された。それがこのトラック、「IV」から「トロイア国」である。ギターのバッキングにバグパイプといった、「ハーヴェスト」なアレンジになっている。オリジナルがハープのアルペジオ+弦のオケにフルートメロだったので、かなり印象の異なるアレンジになっていると言えよう。

 ん?そういえばなぜ、スーファミになってからの「IV」の曲がリメイクされたのだろうか。しかもすでに生楽器でのケルティックアレンジが存在する「トロイア国」を、なぜわざわざゲーム音源で?確かにファン人気の高い曲ではあるが、あまりこのアレンジを施すことの意味が感じられない。まさか……「VI」でも使われる予定だった、とか(超・根拠ナシ)!


track5.テクノdeチョコボ (アナザー・ミックス)
 ゲーム中では「YMO」だった「テクノdeチョコボ」を、シングルではおなじみのSNOW PRODUCTIONがさらにリミックス。おお、808のカウベルだぁ〜……時代を感じさせますなあ。で、リミックスですが、現在のものほど洗練されたテクノではなく、かと言ってとびきり奇抜なこともやっていない。打ち込みのリズムにアナログシンセっぽい音色でのチョコボメロが乗っているだけ。後半のピアノのところなんか、「これテクノか?」という感じすら。単なる無難なアレンジバージョンに終始しており、はっきり言ってあまり面白くはありません。

track6.近づく予感 (ボーカルレス・ヴァージョン)
 「近づく予感」のカラオケというか、オフボーカルトラック。友達やクラスメイト、会社の同僚たちで肩でも組みながら大合唱してみませんか?


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