GAMERS EDEN ゲーム音楽 ゲームサントラ レビュー ファイナルファンタジー
ファイナルファンタジーIX Original Soundtrack PLUS
ジャケット画像  「ファイナルファンタジーIX(以下"FFIX")」は、プレイステーションプラットフォームで最後の「FF」ということで「原点回帰」をうたったものの、最高のCG技術と重厚なテーマを伴うシナリオをふんだんに盛り込み、プレイステーションのスペックを引き出しきった、間違いなく当時で最新・最高のクオリティを誇る「FF」となった。それに伴って音楽・効果音も大幅にパワーアップが図られたわけだが、内蔵音源のクオリティアップはもとより、ムービーなどの演出にピッタリと合わせたフルオーケストラ録音による楽曲も「VIII」に比べて飛躍的に増加。中には数十秒という短い曲も存在したのだが、サントラ発売にあたってそれらの曲は「曲数の激増」「CDの収録時間」といった制約によってカットせざるを得なくなった。やはりCD流通の現状から言って、5枚組のパッケージは生産ラインに乗りにくいというわけだ。
 
 そこで、それらの未収録楽曲を集めたサウンドトラック追加盤、この「PLUS」が発売されることになった。イベントやムービーに長さ・展開を合わせた短い曲を中心に、サントラに収録しきれなかった楽曲や未使用曲も収録。「FF」音楽ファンとしてはサントラ未収録曲があまりに多かったため、この発売決定の知らせは福音となったことだろう。特に印象深いムービーの曲は、ゲーム中で流れるのも一瞬。ぜひCDで繰り返し聴き込みたいところだ。

 ライナーノーツには植松氏の日記コラム「理恵子のオーバーオール」を収録。それによると、一時ネットでは「"FFIX"の音楽は坂本龍一という無名の作曲家が担当」だとか、「"FFVIII"の後、植松氏はスクウェアを退社」などという根も葉もない噂が流れたらしく(この噂自体はけっこう有名)、ネットでの「言いたい放題」に対してやりきれない植松氏の心情を読み取ることができる。

 もちろん音楽は坂本龍一などということはなく、植松伸夫氏が担当。オーケストラ録音のアレンジは、もはやおなじみの浜口史郎氏が今回も担当している。


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デジキューブ
SSCX 10047
2000年(廃盤)
JASRAC表記:
あり
スクウェア・エニックス
SQEX-10035
2005年再発
JASRAC表記:
あり

01 ブラネ登場〜劇開幕
場内の照明が落ち、一瞬の静寂ののちにスタイナーの合図でライトアップ、打ち上がる花火。盛り上がる観客たち、そしてブラネ女王。が、ガーネット姫はあいかわらずうつむいたまま……というゲーム序盤のムービーで流れる曲。曲名には「ブラネ登場」とありますが、ブラネの登場を彩っているわけではありません。あくまで劇の開幕にかかっています(ブラネはそれを見てはしゃいでるだけ)。また、ムービー中では楽団員の姿も描写されており、この曲は劇中における現実音楽の扱いになります。

ムービーは当然完パケですから観客の歓声も入ってますが、ムービーの終わりからクロスフェードするように、リアルタイムSEの歓声・拍手が入り、音を途切れさせることなく繋いでいるのはお見事。普通ならムービーとリアルタイムの間でいったん無音になるところですが、ムービーの音声を再生しながらリアルタイムの効果音を重ねることで、スムーズに場面を繋いでいます。映像が黒味になっても、音が繋がっていると場面の切り替えが気にならなくなるんですよね。さりげないけど、ムービーに伴う演出が進化してるのです。

生オケの効果絶大のパレード調の楽曲。この曲はもうラッパがすべてですな。この曲ですでにブラネという存在の異様さ、怪しさが出ていると思いませんか?
02 万国旗スタイナー激突
イベント・ムービーにしっかりと音を合わせたフルオケ楽曲。基本的には勢い重視のテンポものなのですが、しっかりと「Melodies Of Life」のアレンジになっております。

ガーネットを探して城内を探索していたスタイナーが、ジタンに追われている彼女を発見。ジタンに微笑んで塔から落下するガーネット、何をするんだ?!というところで流れ始め、「Melodies Of Life」がはっきり聞こえてくると、万国旗につかまり悠然と空を舞うガーネット、追うジタン。スタイナーも真似して飛来するものの、楽曲の25秒のところで壁に激突……。それにしても、あまりに良い笑顔のガーネットを見ると、とても導入で物憂げな顔をしていた娘と同一人物とは思えませんね。なにか深い事情がありそうです。
03 アレクサンドリアからの脱出
勇壮なマーチ曲から、テンポアップして脱出BGになります。序盤からこれでもかというぐらい、フルオーケストラで盛り上げます。ゲーム中ではもちろんCDオーディオを単体でそのまま垂れ流しているわけではありません。ムービーファイルに付随した、効果音も合わさった完パケ音声になっています。

ガーネットを見事に誘拐し(というより、本人に頼まれたのですから苦労もないのですが)、潮時とばかりに退散する劇場艇プリマビスタ。ステージ上でガーネットの存在も明るみに出てたわけで、ブラネが黙っているわけはありません。観衆があたりにいるのもかまわず、プリマビスタを捕らえるべく楔を打ち込みます。身動きの取れなくなったプリマビスタは民家に激突したりして、あたりは大変なことに!そんなムービーで流れる専用曲です。ティンパニーが効いてますね〜。
04 プリマビスタ墜落
もうおしまいか、と思われたプリマビスタでしたが、ガーネットを乗せたままかろうじて飛び去ります。悔しがるブラネ、しかしプリマビスタは長くはもたずに、アレクサンドリアからそう遠くはないところに不時着してしまうのです。そんなムービーで流れるこの曲。

ファイナルファンタジー」がちょっと変奏でありまして、クジャのモチーフらしきフレーズが入ります(14秒〜)。まだクジャのモチーフが出るにはちょっと早い気もしますが、どのような意図が?。そして不穏な森の中へと……。34秒からは、ブラネのテーマとも言うべき「深淵の女王」のフレーズです。
05 ブランク石化
サントラの「走れ!」フルオケバージョン。これもムービー曲です。ジタンが木々の追撃をかわして疾走、なんとか魔の森を脱出!しかしブランクは捕らわれて石になってしまう、あのムービーの所ですね。動きに見事にシンクロさせた編曲がお見事。

まあ、このムービーの直前まで「走れ!」が流れてるので、バージョン違いとは言えどすぐに同じ曲を被せるのは音楽設計上どうなのか、というところはあります。「あえて重ねた」のであれば、効果があると思って狙っているのでしょう。
06 黒魔道士VS黒魔道士
フルオケならではの圧倒的な説得力を持った、ムービー専用楽曲です。突然、黒のワルツ3号に襲われるカーゴシップ。彼奴の攻撃を受け、空中に放り出された黒魔導士たちが落下していきます。美しい前半部はその曲調とは対照的に、黒のワルツ3号の攻撃を受けて吹き飛び、船から落下する黒魔導士たち、それを驚きの表情で見つめるビビという映像。絵柄のおかげでそうでもありませんが、よく考えると凄惨なシーンをあえて恐くせず、美しい音楽を合わせることで深みを増しています。後半は逆におどろおどろしく緊迫し、ジタンたちに迫る3号のアップに合わせて恐怖感を増幅させています。
07 南ゲート突破
これもムービーとのシンクロで圧倒的説得力を持った楽曲。発売前、マスコミ等に公開されたプロモーションビデオでかかっていた曲でもあります。私はこの曲の印象が強かったのですが、サントラに収録されておらず、ずいぶん探しました。「PLUS」で収録されてよかった〜。

小型艇でジタンたちの乗るカーゴシップを追って攻撃してくる、暴走状態の黒のワルツ3号。その攻撃を凌ぎながら、リンドブルムの南ゲートをくぐり抜けるカーゴシップ。暴走したワルツの強大な魔力が小型艇に引火(?)し、敵は自滅。なんとか無事、ジタンたちは追っ手を振り切り南ゲートを抜けることに成功するのです。

しかし、初めてにしては操縦うますぎるぞ、ダガー。
08 リンドブルム王国到着
ムービー専用の情景曲です。初めて都市らしい都市にやってきたなあ、という感じ。ここまでがけっこう長かったですね〜。使用箇所は曲名の通り、カーゴシップでリンドブルムに到着した際に挿入されるムービーです。「シドのテーマ」のモチーフが入っているのかいないのかというところは、微妙ですね。そう聞こえるといえば聞こえますし、違うとも。まあ直後に城内で「シドのテーマ」が流れますので、わざわざ被せてもいないとも考えられます。
09 歌〜ジタンとダガー
Melodies Of Life」です。イベントにピッタリはまってゾクっときちゃいました。サビ部分を「ラララ〜」でやってます。まるでダガーが口ずさんでいるかのよう(というか、彼女が口ずさんでいるのですが)。テーマの伏線はけっこう早かったですね。歌声はもちろん、白鳥英美子さんによるもので、サウンドトラックにも歌唱を提供しているんです。彼女の声を用いた曲はサントラ盤にも収録されており、ゲームの各所で効果的に使われています。

リンドブルム城を探索していると、あるタイミングで「記憶の歌(サントラdisc2-4)」が流れてきます。上の方から聞こえてくる……と見張り塔へ向かうジタン。そこでムービーが流れ始めると、こちらの曲に切り替わるわけです。「記憶の歌」とセットになっているんですね。即ち、ダガーが歌っている現実音楽の扱いです。22秒で歌がなくなるのは、ダガーがジタンに気付いて歌うのをやめたから。あとは器楽のみで盛り上げます。このあたりのムービーとのシンクロも見事。
10 ブルメシアから去るクジャ
disc1のクライマックス。力尽き、地面に倒れているジタンたちを見下ろしながら、竜に乗って悠然と立ち去るクジャ。謎の人物が現れ、事態はさらに悪化する様相を見せていながら、主人公たちは力なく倒れるばかりでどうすることもできず。いったいどうなるのか?!という、少年マンガのような「ヒキ」でディスクをまたぎます。この「雨のなか、倒れる主人公」という絶望的な画は、ソフト発売前のCMや広告でも多数露出しました。思わせぶりな映像に「何が起こるんだ?」と思わされたものです。

この曲はそのムービー専用に編曲された「クジャのテーマ(というより、その派生曲である"背徳の旋律")」で、おなじみのリズムに生オケをかぶせたもの。コーラスがもう「クジャ!」って感じに仕上がっています。内蔵音源のやつも好きなんだけどね。雨の中で絶望感に打ちのめされるプレイヤー。竜をも操るこの男……いったい何者なんだ!?おかげで凄く雨を連想させてくれます、この曲。なおリズムは生音ではなく、ゲーム音源で使っているものと同じですね。
11 召喚獣発動クレイラ消滅
ムービー曲です。オーディンが天空から舞い降りる所ですね。ブラネが召喚したオーディンが、その圧倒的な力でクレイラを滅ぼしてしまうシーン。天からオーディンが現れるところから鳴り始め、大爆発するクレイラ、去るオーディン、感嘆するブラネというところまで流れます。ひたすら圧倒的な金管で押していき、終盤は静かに。

33秒から鉄琴+ピチカートでさりげなく奏でられているのは、ブラネのテーマとも言うべき「深淵の女王」です。こまかい!もちろんムービーも、ブラネのアップに。見たくねえよぉ。
12 リンドブルム炎上
レッドローズ率いるアレクサンドリアの飛空艇団がリンドブルムを爆撃、一方でブラネ配下の黒魔導士兵が城内に侵入、破壊の限りをつくします。常に主人公らの先手をとるアレクサンドリア軍に、しまった、遅かったか!……というところ。ゆったりとした「走れ!」のアレンジになっているような気もます(18秒〜、似てるだけか?)。

黒魔導士たちが暴れるシーンにあたる部分には、ちゃんと黒魔導士のモチーフ(="ビビのテーマ")が入っています(32秒〜)。これも芸が細かいですね。
13 リンドブルム壊滅
爆撃、破壊だけでは飽き足らず、アトモスを召喚してリンドブルムにトドメを刺すブラネ。まあ、クレイラのように一瞬で消滅させられなかっただけ、マシですかね……。アトモスに吸い込まれてしまった人々は気の毒ですが、なんとか滅亡は免れました。

絶望的な鐘の音にシビれますね〜。強大な存在が放つ威圧感と恐怖を表す金管に加え、弦の細かい刻みも緊迫感あってグーです。手も足も出せず、その様子を遠くから見つめるだけのダガーとジタンなのでした。
14 霧の消滅
ザ・ソウルケージ撃破後、イーファの樹から発生していた霧が晴れるムービーで流れる短い曲です。伸びやかさのある3拍子で、ほんのりと平和なムードに包まれています。基本的にはどの曲もタイトルのまんまなんで、説明の必要はないっちゃあないんですが……。まあこういうサイトですので、一応すべての曲に触れておかないとね。
15 ダガー回想(召喚士村の滅亡)
マダイン・サリで、ダガーの脳裏に召喚士村が滅亡した時の記憶がフラッシュバックするムービー、そこで挿入されるのがこの曲になります。こんなサイトを見ながら注意深く曲を聴いている人であればすぐにわかると思いますが、「Melodies Of Life」なのです(18秒〜)。かなり細かく念入りに、テーマで伏線張ってますね。と言うよりも、サントラのdisc1-20「あの日の記憶」の別バージョンです。

イントロの、ピアノから派生するローズ系の音色(主音色がピアノでディレイがエレピ)、PANの降り方も含めて凝ってます。
16 召喚!バハムート
ブラネによって召喚されたバハムートがクジャを攻撃するムービーで流れるフルオケ曲。負傷し血を流したクジャが不敵に微笑むカットが印象的でした。

鐘の鳴る静かな冒頭部分からは「クジャのテーマ」の匂いが。そしていっきにブ厚くなりバハムートが出現。それに呼応するかのようにラッパが勇壮に鳴り響きます。そして中盤(28秒〜)からは弦ではっきりと、クジャのモチーフが入ってきます。
17 全滅ブラネ艦隊
上のムービーから少し後に流れる、同一シーンのムービー用楽曲。天空の巨大な目玉(インビンシブル)から謎の光線が注がれ、バハムートやブラネ艦隊を翻弄。コントロールの利かなくなったバハムートがブラネの目の前で炎を吐き、艦隊は壊滅。一瞬で、戦いはクジャの圧勝となります。

木管によるクジャのモチーフ(14秒〜)があって、サントラでのブラネのテーマとも言える「深淵の女王」へ続きます(28秒〜)。イントロのトレモロストリングスもブラネのイメージですね。こういったキャラに対しても一貫してテーマアレンジをしてくれるところはさすが!その後も、クジャのモチーフとブラネのモチーフが絡み合いながら進行します。映像に合わせて象徴的な音をこまかく合わせてあります。
18 新女王誕生
Melodies Of Life」ピアノソロ。母の墓前に参り花を供え、何かを決意したかのような表情を見せるダガー。disc2のラストシーンとなるムービーです。シンプルで短い曲ですが、耳馴染みのあるメロディがシーンの情景と合わさることで、感情を増幅させる効果は絶大。

女王になるってことは、パーティから外れちゃうんでしょう?また「途中でパーティキャラ離脱」のパターンなの?せっかく育てたのに……という心配は無用です。安心して育ててね。
19 バハムート来襲
disc3で、クジャがアレクサンドリアにバハムートを召喚するムービーにおいて使われている楽曲。劫火に包まれる城下町、驚愕の表情でそれを見つめるダガーという内容で、ここに「召喚!バハムート」と同じメロ(「召喚!バハムート」の17秒以降の金管)を使うあたり、うまいです。この旋律がバハムートのテーマ、ってことになるんでしょうか?召喚獣まで統一モチーフで括るあたり、徹底しています。手抜きなんて、とんでもないですよ。そもそも、そういう工夫をしなければこの曲数を一人でこなすのは大変です。

当時、公式サイトのPVに使われていたこともあります。
20 エーコ降下
とても透明感のある楽曲。こういう曲はなにげに内蔵音源でやるのは難しかったりしますよねえ。これも楽曲の妙でゾクっとさせてもらいました。神秘的なムービーとハマりすぎで、素晴らしいの一言につきます!アレクサンドリアの危機に「ダガーの声が聞こえた、今こそアレクサンダーの聖なる審判のとき!」と、飛空艇から飛び降りたエーコがダガーのもとに降り立つという、召喚士どうしが呼び合うムービーで流れたものです。

彼女たち二人のテーマモチーフは込められていないように思います。あくまで映像に合わせて作られた単独曲ですね。召喚士一族を象徴する「Melodies Of Life」も使われていません。さすがにクドくなると判断したのでしょうか。
21 アレクサンダー召喚
エーコとダガーによってわけのわからないうちに召喚された、この世のものとは思えない圧倒的な存在感を放つアレクサンダー。建築物にも見えるけど羽が生えてたり、動けば脚部からプシューと煙が出たりと、生き物なのか機械なのかよくわかりませんが、その実力は絶大なもの。バハムートの攻撃などものともせず、逆に圧倒的な力でバハムートを退けます。そんなアツい展開のムービーに添えられていたのが、この神々しい楽曲です。そりゃあ、ムービーがあんなに頑張ってちゃ、曲も負けられませんね。これも背筋ゾクッ系。曲だけ聴いても、画を思い浮かべてしまうほどです。
22 幽霊船
ホ、ホラー映画でも始まったのかい?弦。鐘、そしてコーラスが恐すぎます!突如として空に現れた、巨大な「目」。クジャが呼び出したインビンシブルです。短い曲なのですが、インパクトはもの凄いことになってます。ていうかビジュアルも強烈ですからね。ダガーにとってもそりゃ、トラウマになるわけですよ。天空の巨大な目、恐ろしいです。
23 ダガー救出
神秘的でありつつも緊張した冒頭部から、ダンダダダダンのマーチへと変化する曲。完全にイベントの展開に合わせています。きっと植松氏も、何度もVTRに合わせてプレビューしたんでしょうね。

インビンシブルから放たれた謎の光線によって破壊されるアレクサンダー、そしてアレクサンドリア城。崩れ落ちる足場に、ダガーの姿。絶望の表情を見せる彼女のもとにさっそうと現れたのは、ジタンその人。後半、曲がしっとりする部分は、ジタンにダガーが思わず抱きつくカット。二人を見つめるエーコが少しムッとした表情をするところにも注目。「なによっ、ダガーばっかり!エーコもいるのよ、ジタンのバカ!でも、今だけは許してあげるわ」なんて声が聞こえてきそう。
24 髪を切るダガー
これはもうタイトルのまま。あのムービー以外にはありえません。ここで「Melodies Of Life」がこなかったのは意外……と思いきや間奏部分のメロが入ってるっぽいですね、これは。まだゲーム中では「Melodies Of Life」が流れてない時期に、間奏で振りますか?難易度高いでしょ、それは。

それにしても映像と楽曲のシンクロ具合の妙なのか、世界観に基づいて極限までディフォルメされたガーネットというキャラを、このムービーで正直「かわいい……」と思ってしまった私は、ちょっと変ですか?
25 ダガー回想(幽霊船)
と、思ったらここが「Melodies Of Life」でした。短っ!これも「ダガー回想(召喚士村の滅亡)」と同じく、サントラの「あの日の記憶」から派生したもの。

ブラン=バルへと辿り着いたところでインビンシブルの姿を目撃したダガーが、かつてマダイン・サリを襲った「目玉」を思い出して気を失うムービーで流れる曲です。「ダガーのトラウマ」のテーマ。
26 ネオクジャ崩壊
コーラスと弦、ハープで厚く奏でられるクジャのテーマ曲です。ドーン、っていう重低音のパーカッションがズシンと響いてます。

ネオクジャというか、トランスクジャですね。曲名だと彼が崩壊するかのようですが、崩壊するのはテラです。せっかく何者にも負けない力を手に入れたにも関わらず、ガーランドから命にリミットが設けられていることを知らされたクジャが激昂、自分を無視して世界が存在するなど認めないとテラを破壊するムービーで流れる曲です。まあ、彼の「心」が崩壊しているとも言えますが……。
27 テラより脱出
崩壊するテラからジタンら一行を乗せて飛び立ち、ガイアへと出るインビンシブルのムービーに当てられた曲。不穏な中にも切なさのある弦とピアノが、クジャのモチーフのどこかのパートを奏でているようにも聞こえます。ここでの木管は、途方に暮れるかのような不安感を醸し出していますね。暖かみを出すのが得意な木管ですが、実は虚無感や迷いといった感情を表現するのにも向いているんです。
28 ジタン、ダガー別れ
最終戦後、ジタンはクジャがまだ生きていることを感じ取り、皆を退避させてひとりその場に留まることを決意。クジャを助けに行こうというのです。飛び立つヒルダガルデ3号を見上げるジタン、それを見つめるダガー……。ここでも「Melodies Of Life」です。かなりイベント映えする良い編曲です。なんか感情の奥底を揺さぶられる感じ……といったらわかるでしょうか。もっと長く聴きたいですね。
29 クジャの元へ
勇壮なイントロから始まり、何パートものパーカッションがプレイヤーを焦らせます。そしてそこに乗ってきたのは(29秒〜ピアノ)、なんと「Melodies Of Life」ではありませんか!ここまで印象付けをされれば、テーマとしての面目躍如。その後もたびたび現れるのは聴いての通り。植松氏の狙いにズボッとはまってしまう我々なのです。これももっと長く聴きたいなあ〜。

最終戦後、クジャが生きていると知ったジタンは彼を助けに行くと言ってその場に留まります。仲間が退避するのを見届けてから、単身イーファの樹内部へ突入するジタン。暴走した樹が侵入者を排除しようと幾重にも迫り来るなかジタンはこれをかわし、クジャがいるであろう場所を目指すのです。

ところでどうしてこのシーン、背景はムービーなのにジタンとクジャはリアルタイムポリゴンモデルなんでしょう?既にエンディングに入ってるわけで、彼らもムービーにして良かったんじゃないでしょうか。ゲーム序盤、迷いの森からの脱出はフルムービーだったのに。
30 ルーファウス歓迎式典
Millennium Version
ここからはムービー専用曲ではなく、ゲーム中で使われたもののサントラに収録されなかった、アウトテイクといった性質のものになります。まずは、シリーズのファンであればどこかで聞き覚えのあるこの曲。

スタイナー、ビビとともにガーネットを救出するため、魔の森へと向かうジタン。そこに挿入されるATE「森の演奏会」で流れるこの曲、「FFVII」やった人はかなり驚いたはず。ルーファウスの姿を探した人もいるとかいないとか?プリマビスタの楽団が演奏している(という設定)なのですが、それにしてもなぜコレが……たぶんファンサービスなんでしょう。原曲に忠実ですが、音源がクオリティアップしているため、ややゴージャスになっております(生オーケストラの演奏ではありません)。このATEを見終わってからプリマビスタまで戻ると、それまで音楽の流れていなかった(効果音のみ)だったプリマビスタ内のBGMがこの曲になっています。もっとも、魔の森をクリアするとプリマビスタには戻れなくなるため、ゲーム中で聴けるのはかなり期間限定。他に流用もされてません。

そういえば、ネットでは「FFVIIのバトルも流れるよ!」なんてデマがまことしやかに語られていたものです。もちろん、流れません。
31 ドーガとウネ これもオールドファンをハッとさせる曲。クオリティについてさすがにファミコンと比べるのも気がひけますが、雰囲気は再現できてます。元ネタは「FFIII」です。どこで鳴ったかって?蓄音機、聴きませんでしたか?

ドーガの魔導器、ウネの夢幻鏡をトレノのオークションで競り落とし所持している状態で、黒魔導士の村・宿屋の蓄音機を調べると、村のBGMがこの曲に変わるんです。村の外に出るまで流れ続けますが、再度入り直すと通常のBGMに戻ってます。その場合も、同じ条件でもう一度蓄音機を調べれば、何度でも聞くことができますよ。
32 マダインサリの娘 「エーコのテーマ」の別バージョンです。聴いての通り「Melodies Of Life」のアレンジになっており、ベルの音色でメロディが奏でられています。なんか呑気でいいですね。ずっと聴いてると癒されます。このオケで、白鳥さんに歌ってみてほしい。このトラック、けっこう長く収録されていますヨ。

disc3開始後の、エーコを操作してアレクサンドリア城内を散策するときに流れるものです。ダガーが女王になるいまこそ、ジタンのハートを射止めるチャンスと意気込むエーコは、トットに手紙(ラブレター)の書き方を教えてもらいます。そのエーコ(召喚士)を見たトットが、ガーネットが漂着した日のことを回想するシーンにも使用。さらに、手紙を書き終えたエーコが再度、城内を散策するシーンでも使用されています。バクーと激突したエーコは、彼に手紙を託すのです。

サントラ収録の「エーコのテーマ」では「Melodies Of Life」であることをあまり出していませんでしたが、こちらはわかり易くメロディを乗せてみました、というものですね。おそらく、これだと「Melodies Of Life」のメロディがそこかしこに溢れ返り、何に対してのテーマなのかわかりにくくなる、特別感が薄れるといった判断があったのでしょう。よってゲームの多くの場面で採用されたバージョンは、「気付ける人だけわかる」ものにしたのではないかと。
33 クジャのテーマ
Millennium Version
ピアノソロだった「クジャのテーマ」に、ズンズンチャのリズムを加えたバージョンです。同じリズムは「背徳の旋律」をはじめとするクジャ派生曲で象徴的に使われていますが、「背徳の旋律」はオルガンやコーラスなど様々な音色で荘厳な構成となっており、シンプルなピアノ+リズムの組み合わせはこのトラックだけ。クジャ関連曲が多いためサントラではカットされたのでしょうが、ゲームの中でもいくつもの場面で使われていたんです。ここに収録されてよかった〜。

disc3:デザートエンプレス・脱出時BGM(ジタン以外のパーティ)

disc3:デザートエンプレス・エーコ誘拐後(主の間を除く)〜ブルーナルシスでヒルダガルデを追跡し閉ざされた大陸に着くまで(オート移動中)

disc3:グルグ火山にてクジャと再び対峙、もう君たちに用はない!と、変わり果てたゾーンとソーンをけしかけるクジャ

disc3:パンデモニウムでの戦いのさなかトランスしたクジャ、ジタンたちを虫の息にし、傷付いたガーランドを奈落へ突き落とす
Extra Tracks(Not Recorded in the FF IX)
34 Main ここからは「IX」ゲーム本編にも収録されなかった、言わば未使用曲です。未使用とは言ってもほとんどはバージョン違いが使われているので、完全なボツ曲とは違いますけどね。結局、メインで使い回す楽曲に関しては、いろいろなパターンを用意しておいたということでしょう。そういう未使用曲も含めると、いったい何曲作ったの?というところは想像もつきませんね。

この曲は聴いての通り、「Melodies Of Life」です。印象付けのおかげか、ゲーム内で流れてたかのような錯覚さえ起こします。ちなみにゲーム音源ですね。「Main」とあることから、ワールドマップのBGMとして作られたものでは?と予想(「FF」ではワールドマップに"メイン"テーマを流すのが通例であることから)。もしくは「行こうぜ!」みたいな前向きなイベントでバァーンと流すためのもの?これはこれで燃えそうですね。
35 Waltz ブラネのテーマである「深淵の女王」の別バージョンです。ん?劇中で流れてなかったっけか?そう思えてしまうのは、巧みな印象付けのせいなんですヨ。ゲームでは流れていません。流せるシーンはいくらでもあったのでしょうが、コミカルになりすぎるということでお蔵入り?ブラネは徹底して悪として描きたかった?
36 Kogaku Motet1 当初、古楽を大フィーチャーする予定だった「IX」。結果としてそうはなりませんでしたが、この曲は間違いなくその名残ですね。このメロディはゲーム中でもいろいろ使われましたが、いくつかのパターンから使うものを選んでいったら、結果的にこのバージョンが不採用になった、というものでしょう。作りかけという感じはなく、ゲームで流れても不思議はない完成度ですよね。開発中はウイユヴェールとか、イプセンの古城とかで流れていたのかも。

「Motet」とは、「聖書の章句などに作曲した多声楽曲(ポリフォニー歌曲)」という意味で、複数のパートがそれぞれ異なる歌詞・言語による歌唱を同時に行うような歌曲のこと。でも、この曲は歌曲じゃないですけど……。またそのほか、地名としても存在するそうです。
37 Organum これも古楽モチーフの、チャーチオルガンバージョンです。ウイユヴェールの「顔部屋」で使うつもりだったのかも?「Organum」は、ざっくり言うと「中世ヨーロッパの多声音楽」とのことで、オルガン+コーラスということではまさに、ウイユヴェールの「顔部屋」なんですよね。オルガンとコーラス、どちらか迷ってのチョイスだったのかな?と。推測の域を出ませんけどね。
38 Mediteiranean こちらも古楽モチーフ。パーカッションの構成が実にそれらしいのですが、これ内蔵音源でしょうか?それにしては質が高すぎて、コンバートする前のデモトラックだとも思えるのですが……。

曲名の意味がわからず、検索してみたら「FFIX」のこの曲しか掛からない。似た語句として「Mediterranean」という単語が出てきたのですが、それは「地中海」とのこと。さすがに関係ないか?
39 Dokokade3 これは本当の未使用曲。派生曲もないでしょう。……採用・不採用のラインギリギリですね。ゲーム中でかかったらそれなりに聴けてしまいそうですが、単独で聴くのはちょっと……な感じも。曲名が「どこかで」なので、わりと「FF」ではよくある「どこかで使えたら……」という感じで作られたものでしょう。具体的にシナリオや映像ができる前に、予測で作り貯めておいた曲は「"FF"ではそういったものもどこかにはまる懐の広さがある」と植松氏は「FFX」の頃に語られていましたが、この曲はなかった、と……。そういうものでも、このぐらいには完成させてあるんですね。
40 Weuber こちらも完全な未使用曲。ピアノ・弦ユニゾンとアナログっぽいベースが重く進行していく曲です。途中のブニョブニョシンセがアクセントになってます。背景系の状況BGでしょうか?イベントの背景で鳴っていればそれなりに緊迫感のある雰囲気になると思われます。なお、「Weuber」という語句の意味は不明です。英語ではない?
41 Kuja5 クジャのテーマをピアノで。冒頭は未使用トラックとは思えないほど採用バージョンと同じですが、終盤で耳慣れないフレーズが顔を出します。何かのパートをミュートした、ピアノソロトラックにも思えますが、異なって聞こえるのはこれぐらいでしょうか。ちょっと、クジャがいいヤツに思えてくるような、やや明るい曲調になっているようにも思えます。
Bonus Track
42 Melodies Of Life
(Silent Mix)
ボーナストラックは「Melodies Of Life」のリミックスです。歌詞は英語、暖か系のウォームストリングスが包み込むような音場を作り出し、センターに抜群の存在感を持つ白鳥英美子氏のボーカルを配置。そしてなにやらシーケンスフレーズが一見、曲のテンポや拍とは無関係に飛び回ってます。個人的にはこのシーケンス、不要に感じますが……。こうやってオケを薄くすると、植松氏言うところの「俗世間離れした声」を持っている白鳥氏の美声がグッときますね。酔いしれます。アンビエントと言っていいのでしょうか。

で、サントラにも入ってましたけど、そもそもこういうリミックスバージョンは何のために作られたのでしょうか。白鳥さんの音楽性とも違いますし、サントラのボーナストラック用としてわざわざ作るか?とも思いますし。ゲーム中で使われる可能性があったのでしょうか?

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