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ファイナルファンタジーIV Original Soundtrack | |
2007年にニンテンドーDSで3Dフルリメイクされた「FFIV」。そのゲーム中で流れる音楽をゲームオリジナル(厳密に言うとゲームに落とし込む前の)音源で全曲収録したサウンドトラックアルバムである。オープニングCGの曲はもちろん、以前(SFC)のサントラでは割愛されたMEもコンプリートしている。まさに「完全盤」。 スクウェア・エニックス SQEX 10105〜7 2008年 JASRAC表記:あり このCDをamazonで購入できます。 |
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ゲーム紹介 ファミコン版から初のフルリメイクとなり、3Dで描かれたニンテンドーDS版「FFIII」は好評を博し、クオリティ的にもセールス的にも手ごたえのあるものとなった。スクウェア・エニックス、そしてともに開発に参加したマトリックスは、当然「次」を考え始める。実はDS版「FFIII」開発終了直前から、プロデューサーの浅野氏は「次は"FFIV"をDSで」という企画を描いていた。それを持ちかけられた、オリジナルのスーパーファミコン版でシナリオ・演出を手掛けた時田貴司氏は、比較的近い時期にGBA版「FFIV」が発売されていたことから「時期的にどうかな」とも思ったようだが、DS版「FFIII」のクオリティで3Dフルリメイクができるのなら、やる意味はあるな、とGOサインを出した。 基本的にはオリジナルに忠実なリメイク。テイストやテンポ感はオリジナルを損なわぬようにという大前提のもと、グラフィックはもちろんイベントを拡充。ただし無駄にセリフを増やすことはせず、3Dキャラクターの表情と身振り手振りで心象を現し、プレイヤーの想像力に委ねた。また、特に重要なイベントについては、キャラクターボイスを加えている。「デカントアビリティ」などのDS版ならではの新規追加要素も加えたうえで、オリジナルのSFC版を経験したユーザーには違和感なく、未経験のユーザーには新作RPGとして訴えることのできる、「いま」のものとして「FFIV」は蘇った。ただ「家庭用」「携帯機」といったあたりを意識しすぎたためか、明らかにオリジナルよりも難易度(戦闘での彼我のバランス)が格段に上がっており、古参ユーザーの一部から不満があがったり、新規ユーザーからはプレイを断念されるなど、課題を残すものとなった。クリア後の「お楽しみ」も、先にリリースされたGBA版のような追加ダンジョンはなく、ただデタラメに強いだけの隠しボスを配置、しかもそのボスは2周目でなければ挑めないといったあたりも批難の対象となっている。筆者の印象としてはシステムで遊べた「III」に比べてストーリー寄りと言われる「IV」のリメイクは、デカントアビリティの追加でやり込める要素は増したものの、データの引継ぎがあるとは言えどユーザーを2周まるまる付き合わせるにはやや弱いと感じた。 作中で使われる音楽は、使いどころも含めて基本的にはSFC版に忠実。もちろんDS版でのアレンジが施されてはいるが、その音楽面での基本方針もやはり「オリジナルに忠実に」。アレンジを担当したのはTBMで植松伸夫氏とともに活動し、昨今ではブレイン的に数々の植松プロジェクトに参加している福井健一郎氏と、「FFX」で植松氏と組んだ仲野順也氏(ちなみにこのプロジェクトの前後で福井氏はスクウェア・エニックスから離れている)。オリジナルを作曲した植松氏、そして時田氏とアレンジャーの二人が楽曲製作に際して「どのような方向でいくか」と最初に打ち合わせをしたところ、「オリジナルのイメージを崩さず」「要所要所でケルティックの要素を取り入れる」ことで決まった。福井氏によるとそれは「曲に関しては、リメイクというより移植」とのことで、そのうえで「新しいイメージでより良いサウンドを求めていく」こととなった。「16年経過してまったく進化していないのもどうかと思うし、かと言ってオリジナルの雰囲気は壊したくない。その間で揺れ動いた(植松氏・談)」という「せめぎあい」の中での結論だ。さて、「ケルティックの要素」とは、FF音楽ファンであればすぐにピンとくるであろうが、「FFIV」のアレンジアルバム「ケルティック・ムーン」からのフィードバックである。SFC版「FFIV」の音楽にはそもそも、ケルティックどころか民族音楽的なイメージはそれほどない。アレンジアルバムを経て、DS版はそれを消化したうえでのサウンドでいこう、ということになったのである。 福井・仲野両氏の手によってアレンジが施された楽曲は、ゲームに落とし込まれる。有名なエピソードであるが、SFC版当時、他社からリリースされたゲーム「アクトレイザー」の出音の凄まじさに青くなった植松氏は、その時点でほぼ完成していた開発中の音色データをすべて捨て、イチから作り直した。初めてのSFCということもあり、オリジナル「IV」の頃から音には気合いが入っていたのだ。今回、ゲームからの出音を司るのは、スクエニのオペレーター野田博郷氏である。SFCとDSでは当然、出音は異なる。まったく同じ譜面データを演奏させても、ハードが変われば同じ鳴り方はしないのだ。これはアレンジャーサイドの努力だけで解決できる問題ではなく、野田氏の力量に負うところが大きい。オリジナルのユーザーから「なんか違う」と言われないために、氏は「SFC版のサントラを参考に音を修正していった」のだそうだ。ただ、一部の曲はサントラに収録されておらず、かといって当時のデータも残されてはいない。「あるのかどうかわからないけど、ネット上の情報(ウチなんかも参考にしていただけたのだろうか?)を見るとどうもあるようだ、という曲が数曲あった」ということで、今回のDS版サントラではそれら「未収録曲」も網羅されたのは嬉しい限りである。 当時のデータがまったく残っていない、ということはアレンジチームにも影響したようで、「植松さん、MIDIないんですか」「なんにもない、ゴメン!」とのことから基本的にはすべて「耳コピ」したと福井氏。自分でイチからアレンジするよりも、耳コピして当時の音を再現したうえで、そこからDS用アレンジを施していくのだから手間は倍以上である(SPC抜けばいいのに……とか言わないように。実際は多少参考にしてると思うが…)。「耳コピすると、どうしてもオリジナルどうりになる。でも、同じものを作るのは簡単であり、面白くもない。そこにどう自分らしさを入れていくかと考えるが、オリジナルの雰囲気は潰してはいけないし……(福井氏・談)」と、実際のアレンジ作業でも板挟みに悩むこととなった。いずれにしても、もとがファミコンサウンドだった「III」に比べ、楽器音が明確だった「IV」の新アレンジはその変化がわかりにくいが、個人的に「IV」をFF音楽のひとつの頂点と思っている筆者の印象を語るなら、オリジナルへの忠実度は非常に高いレベルであると思っている。新規追加されたアレンジや「ケルト風味」もそれを損なうことなく、「ケルティック・ムーン」を聴いたことがある者ならば抱いているであろう楽曲のイメージを上手く溶け込ませている。曲によってはもっと変えてしまっても良かったのでは、とも思うものもあるが、いやいやきっとこれが「新旧ユーザーが抱くイメージ」のバランスを考慮した場合、ベストなのであろう。「III」と比べると「変わった!」というわかりやすさがないぶん非常に目立たない仕事ではあるが、わかる人にはしっかり伝わる、「縁の下の力持ち」になっているのだ。 では、オリジナルを作り上げた植松氏は何も関わっていないのかというと、アレンジに対するアドバイザーとしてはもちろん、テーマソングの作成にも参加している。テーマソング「月の明り」の実際のアレンジは福井健一郎氏が担当しているが、そのボーカリストの選定にはオーディションが行われ、植松氏はその選定に時田氏とともにドップリと関わり、レコーディングにも立ち会っている。プロとして音楽で糧を得ているであろう人からの応募もあり、「優れた人材がいすぎた」と植松氏が振り返るオーディションだったが、最終的には「SFC当時のユーザーの中にもいま音楽をやってる人がいるかもしれない、どうせなら作品を愛してる人に歌ってほしい」とのことから、その座を射止めたのは北海道在住の伊田恵美さん。「いろいろ指示しても歌いにくそうだったので、最終的には自由に歌ってもらった」とは植松氏の談である。 と、いうところでこのCD。SFC版サントラではCD1枚に無理矢理詰め込んでいたため、ループの少なさやせわしなさの点で不満があったが、このDS版サントラは2枚組にしてゆとりを持たせている。オープニングCG用の曲やテーマソングはもちろん、かつて未収録であったMEもすべて網羅していることから、2008年にしてようやく「FFIV」のサントラは完全版が出たのだと言える。「DISC 3」として同梱されている特典DVDには、OPCGやトレイラーのほか、サウンドスタッフインタビューも収録されており、ファン必携の内容になっている。DS版をプレイしていないSFC版ユーザーも、アレンジ盤として、コンプリート盤として所有する価値があるものであろう。ただ、最後にひとつの事実として記しておくとこのCD、というかDS版のアレンジは、オリジナルをプレイしその音楽を愛したユーザーからはおおむね不評である(ネット上の声を拾う限りは)。もちろん彼らは「SFCの音ありき」で評価しており、オリジナルを至上とする人々に新たなアレンジを気に入ってもらうことは難しい。原典とリメイクが比較されるのも宿命である。それについて意見するつもりはまったくないので、どうかSFC版サントラを擦り切れるまで聴いていただきたいと願う。そのうえで、音楽に対して懐の深さを持つ人、固定概念をリセットして新たなものを受け入れる幅の広さを持つ人、新旧の作品を前向きに比較・評価できる人は、DS版サントラも楽しんでいただきたいとさらに願う次第だ。 |
DISC 1 DISC 2
レビューの一部はSFC版レビューを改変して使用しています。
DISC 1 | ||
01.FFIV DS オープニングムービー ・オープニングムービー |
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DS版「FFIV」を起動すると、メーカーロゴの後に流れ始めるオープニングムービー。そこに充てられているのがこのトラックです。基本的には代表曲メドレーという感じで、最初は「愛のテーマ」、そして「FFIV
メインテーマ(1分7秒〜)」、「オープニング(ファイナルファンタジー、2分3秒〜)」という形。ムービーの方はメインキャラクター紹介という内容で、スクウェアお得意のハイクオリティCGで生まれ変わった懐かしくも新しいキャラクターたちが縦横無尽に飛び回っています。アレンジは仲野氏の手により、オーケストラにひけをとらない厚いシンセ演奏で盛り上げています。 ん?DS版「III」のオープニングムービーはオーケストラ録音してたよねえ?と思われるかもしれませんが、きっとアレですよ、音響制作費を声優さんのギャラに持ってかれてしまい……ボーカルオーディションにもお金がかかって……いやいや、邪推ですが。と言ってもけっこうな大御所声優を起用してますから、とてもオーケストラ録音する余裕は……いやいや。私なんかはこれでじゅうぶんです。ただ、せっかくのスペシャルなトラックもDSのスピーカーではアレなんで、ぜひサントラで!ムービーもDVDで、大画面で見たいところです。 |
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02.プレリュード ・タイトル画面 ・各地のクリスタルルーム ・月の民の館内部 ・開発室の「音楽室」 ・ミシディアで「伝説」を聞くイベント ・エンディング「THE END」以後 ・ポーチカ修行:ローザと100秒瞑想 |
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SFC版はディレイのような効果を持ったハープの音色が左右にパンニングされていましたが、DS版も音色はもちろん、左右へのパンニングまで忠実に再現しております。オリジナル「FFIV」から「プレリュード」に加えられた、中盤からの木管+弦による新たなメロディももちろんあります。とは言っても今ではこの形がスタンダードになってますよね。SFCのサントラではすべて収録しきれていなかったこの曲も、今回のサントラでは余裕を持ってたっぷり収録されております。アレンジは仲野氏。 楽曲そのものは、各クリスタルルームや「月の民の館」など、ゲーム中でキーとなる場面・場所で、何度も耳にすることができます。ミシディアでの「伝説」を聴くイベントでも流れましたね。また、「開発室」の「音楽室」でも聴けるところまでSFC版に倣っています。エンディングも同様です。DS版で新たに流れるようになった場面はありません。 |
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03.赤き翼 ・ゲーム導入イベント(飛空艇部隊、戦闘中も通して) ・試練の山での、パラディンセシルと暗黒セシルの一騎打ち ・バロン城、シドに導かれてエンタープライズへ ・ゾットの塔でカインとローザが仲間になるシーン ・地底から地上に戻り、シドの犠牲を胸にバロンへ向かうシーン ・バブイルの巨人を砲撃するドワーフ戦車隊&シドの飛空艇団 ・月の地下渓谷BG |
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SFC版では「赤い翼」だった曲名が、DSサントラでは「赤き」になっています。ゲーム中に出てくる飛空艇団の名前は「赤い翼」なんですけどね。誤植でしょうか?まあいいか。音質&ステレオ音場の広がり感はオリジナルと比べるまでもなく格段に向上していますが、楽曲の持つイメージはSFC版で完成していたことが、新バージョンを聴けば聴くほどわかります。マーチングスネアに勇ましいブラス、ぶっといベースは原曲をていねいになぞっています。オリジナルにあるパートはすべて残ってますし、今回新たに加えられたフレーズも目立ったものは見当たりません。唯一大きく異なると思われるのは、オリジナルではティンパニでやっていた終盤のフィルを、ドラムキットのタムが行っているところかと。ティンパニだと気にならなかったのですが、タムになったことでデジタルドラムのような連打となり、音色がリアルになったぶん、全体の中での「いかにもな打ち込み臭さ」が強調されてしまったのが残念。アレンジは仲野氏が担当。 楽曲そのものは一応、セシルが隊長を務める飛空艇団「赤い翼」のテーマということになるのでしょうが、主人公が所属する集団のテーマにしては妙に緊迫感があり、かつ威圧的です。もちろんそれは意図あってのことで、主人公はすぐに「赤い翼」を抜けますし、そして敵対するようになります。そう、主人公がいるからといってその集団が必ずしも正義とは限らないのですね。そう考えるとこの曲は、あくまで「赤い翼のテーマ」であって主人公のテーマではないのかもしれません。にも関わらずラスダンのBGとして使われていたり、ゾットの塔でカインが仲間になるイベントで流れたりと、曲の使われどころが場面によってややブレているのが気になります。もっともここぞというところでこの曲が流れると、無条件にググッと盛り上がってしまうのですが……。これはもう、楽曲自体の強さに起因するものですので、しかたありません。ゲーム冒頭でここまで印象的な曲を流して、以後何度も聴いているうちに「主人公のテーマ」と錯覚してしまうのも無理はありませんね。結局この曲は「セシルのテーマ」なのか「カインのテーマ」なのか、「赤い翼のテーマ」なのかというところについては曖昧になっており、制作者側の解釈で便利に使い回されているような気もします。 SFC版サントラのレビューで指摘した、『シドの犠牲によって地上へと戻ったセシルが、シドの遺言通り"バロンへ……向かう!"と決意するシーンでも使用。ただし一度でも飛空艇を着陸させると通常のBGに戻ってしまうあたりはツメが甘いか?』という点については、DS版でも修正されていませんでした。確認するあたり筆者も意地が悪いとは思いますが……。「FFIV」は曲そのものは良いのに使い方に不満のあるところがわりと多く、それが適切なものになっているかどうかというところもDS版での興味だったのですが、残念ながらそういうところも「オリジナルに忠実」であり、ほぼすべてSFC版のままでした。おかしいと思っているのは自分だけなのか?と落ち込みましたよ……。 ちなみに、ラスダンで流れるものは出だしを変えた別ファイルになっています。 |
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04.バロン王国 ・バロン城BG ・バロンの追っ手がカイポに現れるイベント |
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バロン城で流れるBGです。「赤き翼」と同様、バロンは主人公のベースメントというよりは「その後敵対していくことになる存在」なので、平和なお城というよりは緊迫感のある楽曲になっています。「城の曲」ではなく「国家の曲」なんですね。もちろんストーリーが進むにつれて敵対関係は解消されていくので、お城のBGとしても違和感のない「どちらにも取れる曲調」に仕上げているのはさすがです。自分がそこを自由に歩いている時には「勇ましいお城の曲」に聞こえますし、昔の水路から侵入した時には楽曲から「敵の本拠地に忍び込んだ緊張感」を感じ取れることでしょう。もし平穏なお城の曲を作ってしまったら、そういうシーンで別の曲を充てる必要が出てきてしまうのです。 DS版アレンジは仲野氏。音色が増強されている以外は原曲通りで、単純にグレードアップバージョンとして楽しむことができます。SFC→DSというゲーム機の進化のみならず、趣味でシンセをやってるような人には「シンセのオケ音もずいぶん良くなったなー」という点でも興味深いでしょう。 |
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05.愛のテーマ ・ミストに向かう前夜、ローザがセシルの部屋を訪れ叱咤するイベント ・カイポでのローザとの再会 ・ローザを「さばくのひかり」で治療〜仲間に ・ゾットの塔でのローザとの再会 ・月に向かう前、魔導船から降ろしたはずのローザが現れるシーン |
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音楽の教科書にも載ったことから、一般的には「FFIV」のみならず「FF」の代表曲となった感のある「愛のテーマ」。本作においてはテーマソングとしての昇格も果たし、ボーカルものとなってエンディングにも現れます(それについては後述)。もちろん本編で何度もダメ押ししているからこそ、エンディングでの歌入りが活きるわけで(実際に「活きて」いるかどうかについても後述)、その下地はSFC当時から敷かれていたのです。SFC版と使用箇所は変わりませんからね。当時、もしもゲーム機で歌を流せる技術があったなら、きっとやっていたんじゃないでしょうか。 オリジナルはいきなり木管メロから始まりましたが、DS版では20秒強のハープによるイントロが加わりました。しかし、オリジナルを熟知している人なら初めてイントロだけを聴いても「あ!愛のテーマ!」とわかるほど違和感はありません。「ケルティックムーン」のイントロともまた違うのにね。そして、メロを担当する思いっきり強弱の付けられた木管と、強弱はもちろん音の伸びるところで微妙なビブラートをみせるバイオリンの表現力は、シンセ演奏であることを忘れそうなほどです。原曲にはなかったリタルダントも、曲に新たな表情をもたらしています。また、原曲では一部サビを除いて主旋律は木管のみだったのですが、DSアレンジは完全な木管とバイオリン(いや、ここはフィドルと言うべきか?)のユニゾンに。これらDS版の新解釈こそ、「ここぞという時のケルティック要素」の顕れと言えるでしょう。アレンジを担当した仲野氏の言葉を借りれば、ケルトらしさとは「コブシというか、上下に揺らすような音にすると特徴が出る。また、ユニゾンで別の楽器が同じメロディを奏でることも多い」とのことで、それらの研究成果がぞんぶんに投じられているのです。 1周目と2周目が単なるリピートでなく、完全に別演奏であるところにも注目。DSゲームのBGMとしては異例の、1曲3分弱という長いものになっているのです。普通なら「繰り返しでいいでしょ」というところ、いやいやケルトっぽさを出すには楽器の幅を増やさなければ、ということでしょうか。飽きのこないアレンジになってます。とにかく満点。最後に歌入りが控えていることもおおいに意識してるのでは。 |
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06.オープニング ・カインとともにミストへ向けてバロンを発つセシル ・ラスボス戦直前、地上の人々が祈りを捧げるイベント |
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「FFIV」のオープニングは、後に「ファイナルファンタジー」と呼ばれるあの楽曲。これまでファミコン時代もオープニングで流れてはきましたが、SFCで初めて披露されたオーケストラ音色による演奏はユーザーをシビれさせ、現在に続くまでスタンダードな形として受け継がれているのです。 「FFIV」独特の、徐々に盛り上がって金管が歌い上げるイントロから、主題へと流れ込む形はもちろんDS版も同じ。各楽器のパート分担も、原曲をなぞっています。アレンジは仲野氏です。いやもう、「オリジナル尊重」ということならこれはこれ以外にないでしょう、というベストな形ですね。とは言え、この曲がリアレンジされたのは今回が初めてではありません。「FFXII」のオープニングには、「FFIV」のイントロを採用した「ファイナルファンタジー」が使われているのです。そちらのアレンジは崎元仁氏の手によるもので、氏独自の解釈が加えられており要チェック対象ですよ!「XII」のサントラを持っている人は、ぜひ比較してみて「アレンジの妙味」を体感して下さい。 |
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07.街のテーマ ・バロンの町、ミストの村、カイポの村、ミスリルの村、アガルトの村、トロイアの町、トメラの村 ・クロロの家、ハミングウェイ一族のすみか ・トロイア城で、テラとギルバートが和解 ・ドワーフの城でシドと再会 ・ファルコンを改造中、疲労で倒れたシドを見舞う一行 ・ヤンがシルフの家で臥せっていることをヤンの奥さんに伝えるシーン ・ヤンを「愛のフライパン」で目覚めさせたとき |
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やっと見つけた街に入り、ひとときの休息。この曲に癒されたプレイヤーも多くいることでしょう。順当に行けば、バロンの町が初出となるはず(バロンに寄ってなければ、ミストの村ですね)。そういえば……ゲーム中では「町」なのに、なぜ曲名は「街」なのでしょう?という疑問はDS版でも同じ。アレンジ担当は仲野氏で、ケルト音楽の味わいがふんだんに採り入れられており、原曲からの「変貌度」では作品中でもいちばんかも。打ち込みっぽさをまったく感じさせない、情感たっぷりの演奏は出色です。主旋律が出る前に、それを予感させるイントロが付いたのは、おそらく「ケルティック・ムーン」からの影響でしょう。「本物のケルトというよりは、植松さんのアレンジアルバムをかなり意識してます」との仲野氏の言葉通りです。ただしそれともまた違うものとして、「オリジナル」「ケルティック・ムーン」「ピアノコレクション」に続く、第四のアレンジとして立派に自立しています。ただ「ケルティック・ムーン」バージョンは途中で曲調が独自のものへと変わりますが、意識はしつつもDS版では、音色・奏法以外の楽曲の進行は原曲重視。 タイトル通り、多くの「町」で使われているわけですが、特殊なケースでは、トロイア城でテラとギルバートが和解する場面でイベントBGとして使われています。これはほかにハマる曲がなかったゆえの単なる流用と思われ、意味はなさそうです。また、ドワーフの城で負傷したシドと再会する場面、ファルコンを改造していたシドが疲労で倒れ療養するシーンでも使用。さらに、ヤンが地底で病床に臥せっていることをヤンの奥さんに伝える場面でも流れ、そこで預ったフライパンでヤンを目覚めさせると、同じくこの曲が……。ゲーム中盤以降はなんか「病人のテーマ」みたいにもなってます……。 |
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08.ファイナルファンタジーIV メインテーマ ・フィールドBG(ホバー、船も含む) |
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フィールドでかかるBGM=その作品のメインテーマという「FFのお約束」。このメロディは他の曲にも現れるので、しっかり覚えておきましょう(ゲームをした人ならイヤでも覚えるでしょうけど)。ファン人気のたいへん高い楽曲ですが、個人的にもFFフィールド音楽で1、2を争うお気に入りです。何度聴いても本当に良い。そんな曲をアレンジさせられる仲野氏もプレッシャー大というところですが、なかなかどうして、原曲の音色クオリティだけをぐいっと引き上げたかのような、まったく違和感のない「完全移植」です。新アレンジについての楽しみはあまりありませんが、安心できるというか、落ち着いています。 唯一「ん?」と思う点があるとすれば、曲アタマの入り方。原曲は(ゲーム中においても)フェードインぎみに鳴り始めたんですよ。しかしDS版はアタマからガツンとMAXで鳴っているんです。まあ、こんなところ比較されてもアレンジャーは困るでしょうし、気にするのも筆者ぐらいのもんでしょうし……と思っていたら、かつてリアルタイムでSFC版をプレイしたことのある職場の後輩が言ったんですよ。「あの曲の入りはないですよねー」と。彼は特にゲーム音楽に注目しているタイプではないですし、ましてサントラとか買ったり聴いたりしないんですが、メインテーマの入り(フェードインじゃない)は気になったみたいです。いやはや、「思い入れ」って怖いですねー。リメイクスタッフの苦労がわかります。これは音だけでなく、イベントやグラフィックもね。完全新作を作るのであればいらぬ気苦労ですから。 |
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09.バトル1 ・通常ザコ戦闘 ・カイポでのギルバートとサハギンのイベント戦闘 ・ポーチカ修行:セシルとゴブリン100匹討伐プレイ中、エッジと手裏剣100投プレイ中 |
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ハードが同じ、出音の制約・条件も同じということで「スーファミ三部作」として「IV・V・VI」を括るのであれば、その中のザコ戦音楽で一番好きなのがこの「IV」のバトルです。ダントツですね。というか、「V」と「VI」のバトルはあまり好きじゃないです。この曲もフィールド同様、SFCの時点で完成度が高かった曲です。さらにいじるとなったらどうしよう、と頭をヒネるところですね。ゲーム中、他の曲とは比較にならないほど何度も何度も聞く曲ですし。まして、原曲と比較されてなんやかんやとイチャモンつけられるのはわかりきってますから。 フィールドが原曲の音のみを底上げする方向で、基本的にはそのまんま「クオリティアップ」に留めていましたが、バトルはよりアグレッシブにしようと目論んだのか、いくつか改変されています。まず、イントロの駆け上がりに派手なディレイ効果が加えられました。原曲にもディレイはさりげなくあったのですが、よりエフェクティブに。これはまあ味付け、戦闘突入時のインパクト増としては「アリ」でしょう。もっともDSのスピーカーではあまり効果が出ていないのですが……。そして、Aメロ終わりのスネアのオカズ(11秒、「ダカダッ、ダカダッ、ダッ」)が別音色になったこと。これは……うーん、余計かな。DS版を初めて遊ぶ人には何も気にならないところですが、オリジナルを知っているとねえ……。過去、何度も聞いたゆえに違和感が。リズム関係では、後半に入ってからのスネアの連打(23秒など)も変わってますね。原曲は一拍で「タッタカ()」だったのに対して、DS版は二拍をまたいで「タッ、タカタカ()」になってます。手数が増えているんです。「そんだけのことかよ」と思われるかもしれませんが、だいぶノリが変わるんですよ。繰り返しますが何度も何度も聞いた曲ですので、DS版プレイ時にはついつい身体がリズムをとってしまうわけで、そこで「アレっ?」となる。何度聞いても慣れないんですね。もう一つ、原曲はすごくベースが利いてたのですが、DS版は他の楽器がゴージャスになったぶん、ベースがちょっと引っ込み気味。逆に金管群は他の曲を聞けばわかるように、やろうと思えばもっとリアルにもできたのでしょうが、この曲についてはあえて原曲のテイストを重視したものにしてあるのはグッジョブ。 とまあ、あくまで原曲ありきのツッコミばっかりですが、リメイクの宿命ですね。いやもう、原曲の完成度がいじりようのないぐらい高かったんですって。もちろん原曲(SFC版)を知らない新規ユーザーにとっては何ら問題はないことを付け加えておきます。 |
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10.勝利のファンファーレ ・戦闘勝利 ・ファブール城にいる踊り子の踊り ・セシルとゴブリン100匹討伐終了時、エッジと手裏剣100投終了時 |
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これはもう語ることもないですね。ケルト風味を入れる余地もありませんから、音色の向上以外は原曲に忠実です。同じDSの「III」はオケ寄りでした。「III」は全体がそうだったんですが、ファミコンからのグレードアップを示すにはオケがわかりやすいんですね。しかし、「FF」の音楽にはもっとポップス要素があっていいんですよ。「V」「VI」となるにつれ、ギターとかオルガンとか入ってきますし。個人的な感覚ですと、リメイク「I」「II」「III」の音楽は全体にオケっぽすぎたんです。それは前述のような理由(わかりやすさ)があるからですが、DS版「IV」はもとがSFCなのでヘタにグレードアップする必要がなく、本来のFFサウンドに寄ってます。アレンジは同じく仲野氏によるもの。 なお、ゲリュオンやプロトバブイルといったスペシャルな隠しボスに勝利した際も特別なファンファーレが鳴るということはなく、通常のこのファンファーレが鳴ります。それが確認したくてやり抜いたようなものです。 |
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11.デブチョコボ登場 ・デブチョコボメニュー ・ドワーフのパブにいる酔っ払いの踊り ・プリンプリンセス「王女の歌」○回目以降 |
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チョコボくさいところで「ギサールの野菜」を使うと、デブチョコボ登場!原曲は重々しく太い、ブリブリとした金管とベース、ティンパニなど「いかにも重そうな楽器」で構成されていましたが、DS版もお聴きの通り原曲重視。特に目新しい仕掛けは施されていません。デブチョコボのゲーム中での役割は変わってましたけどね……。アレンジはやはり仲野氏。 | ||
12.チョコボ ・黄色チョコボ騎乗中 ・ミスリルブラザーズの踊り ・プリンプリンセス「王女の歌」2回目以降 |
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おなじみのチョコボのテーマです。木琴と金管で楽しく跳ね回るようなオリジナルのイメージは引き継ぎつつ、DS版は楽器を一新。フィドルを中心とした「ケルト風」になっているのがおわかりでしょうか。「ケルティック・ムーン」にもチョコボはありましたがそれともまた違う、そこまで民族色はないものの、面白いケルトチョコボになってます。ケルト楽器の音色と手法を使いつつ、基本に忠実なチョコボを演奏した感じ。ここまで徹底されると「あれ?FFIVって北欧が舞台だっけ?」と錯覚しそうになります。アレンジはこちらも仲野氏。 | ||
13.ダンジョン ・ミスト洞窟、地下水脈、アントリオン洞窟、昔の水路、磁力の洞窟、エブラーナ洞窟、 封印の洞窟、幻獣の洞窟、アダマン洞窟 ・ポーチカ修行:セシルとゴブリン100匹討伐開始前、エッジと手裏剣100投開始前 |
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これまた、原曲の完成度が非常に高かった楽曲。初のSFCにして極めちゃった、みたいな。ストリングスが冷ややかにメロディを、かつハープが美しくアルペジオを奏でる珠玉のダンジョン曲です。個人的には「FF」の洞窟音楽ではいちばんの名曲かも……と思ってます。冷たい曲調なんですが、おどろおどろしさはない。それには3拍子であることも影響してるでしょうか?というか、植松氏はダンジョン曲が異常に得意ですよね。ただ怖いだけでない、憂いのあるダンジョン曲がすごく上手い。 そんな「名曲」をアレンジした仲野氏、イントロのストリングスがジワジワジワ……と上ってくるあたりで既に「おっ!」とこちらの気持ちをつかみます。原曲の雰囲気がよく出てる!主メロが出てからは、オリジナルが弦メインであったのに対してDS版は木管が強められているものの、イメージは損ねていません。いや、これは良い仕事ですね。原曲が持っていた微妙な「冷ややかな弦」の味わいが、じゅうぶんに再現されています。おっと、これは仲野氏ばかりではなくて野田氏の功績も大きいかな。 |
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14.バトル2 ・各所中ボス戦(四天王、ゴルベーザ関係は除く。ただし一部に例外あり) ・月の地下渓谷、B8F以降のエンカウントバトル ・ダムシアン城で逆上したテラがギルバートに襲い掛かる(イベント〜バトル) ・ホブス山でヤンを発見〜魔物を蹴散らすヤン〜マザーボム戦 ・ファブール防衛6連戦 ・エブラーナ洞窟でルビカンテと対峙するエッジ→イベントバトルへ ・ゴルベーザ&フースーヤVSゼムスのイベントバトル |
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ボス戦のバトルBGM。テンポの速さと緊迫感を煽る旋律はバツグン。イントロもおなじみのフレーズで始まりますが、シリーズのボス戦音楽では珍しい部類で、四天王戦の曲との明確な色分けにもなっています。初めて聴くことになるのはミストドラゴン戦。その後、いわゆる中ボスとの戦闘で度々使用されます。イベントシーンにも多用されており、そのままバトルになだれ込むところでも気の利いた使われ方をしていて、楽曲の印象度は四天王戦のものより上ではないでしょうか。 ノーマルバトルではDS版アレンジでの改変にいくつかイチャモンをつけましたが、こちらは目立った改変はなく、基本的には文句なしです。楽曲のキモになっているベースも、硬めの音色が使われておりよく立っています。ブラスと弦が一体となって迫り来る迫力は、もちろん原曲以上です。ひとつだけ指摘するならば、楽器の定位がオリジナルとは変わっているんですね。それだけならたいした問題ではないように思えますが、原曲では各楽器が大胆に左右・センターへと割り振られたことによって、「どの楽器がどこを奏でているか」とか、フレーズの引き渡しの妙が味わえたんです(打ち込みの参考にもなったりして)。惜しいことにDS版はリアルな音場形成を目指したためか、わりとセンターに集中しているため、そういう面白さが失われているのです。わかり易いところで言うと、テンポはほぼ同じなのでどちらも43秒以降のところ、「チャーラー、パーラー、パーラー、ターラー」と、同じ音形を弦1→弦2→金管1→金管2が引き継ぎながら繰り返すところ。SFC版は中→右→左と音像が動いていく面白さがありますが、DS版はわりとみんな真ん中寄りにいるので、音場の面白みが減っています。目指す完成形が異なるため、これをもってDSアレンジを劣っているとすることはもちろんできません。SFC版のは「少ないパートでステレオ感を出すための策」だったのでしょうし。ですが「死ぬほど」オリジナルを聴き込んだ人間はこんなところにも突っ込むよ……ということで。 |
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15.ボムの指輪 ・ボムの指輪がミストの村を焼き払うイベント→リディアとの強制戦闘まで ・ファブールを発ったセシルたちの船がリヴァイアサンに襲われる ・地底における、赤い翼とドワーフ戦車隊の砲撃戦イベント ・バブイルの巨人出現イベント |
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陰謀めいた楽曲。不安・緊迫……非常に劇伴的な、いわゆるサントラっぽい曲です。曲タイトルの通り、セシルの持つボムの指輪が発動し、ミストの村が焼き払われてしまう衝撃的なイベントで流れます。すると、泣きじゃくる女の子がひとり……。セシルたちに対し憎悪を露わにする彼女との強制バトルまで通して使われます。 DSアレンジは仲野氏担当。原曲よりもテンポがかなり遅くなり、音色の厚みが格段に増したことからおどろおどろしさがアップ。新しいところでは全体に加えられた右側のライドシンバルが、楽曲にさらなる緊迫感・焦燥感をもたらしています。原曲のグレードアップとしては文句のない出来と言えるのではないでしょうか。他の曲に比べて主張しない楽曲ではありますが、手抜きのない仕事です。 SFC版の頃から、ゲーム中における「疑惑のテーマ」「一方その頃」との使い分けが曖昧なところが気になっていたのですが、DS版でも楽曲の使用箇所は特に見直されてはいませんでしたね。結論としては「特にこれといった曲がないイベントのための、汎用不安BGM」といったところでしょうか。 |
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16.少女リディア ・カイポの宿屋で、セシルに対して名前を名乗るリディア ・ホブス山でファイアの使用を拒むリディア ・ドワーフの城における、成長したリディアとの再会 ・エブラーナ洞窟で覚悟のエッジにリディアが「これ以上人が死ぬのはいや!」 ・ポーチカ修行:リディアと宿題100問できるかな |
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リディアのテーマ。やさしいフレーズの中にも寂しさのある曲。シンプルな構成ながら語りかけてくるような曲は、植松氏の得意分野ですね。もちろん、リディアに関するイベントで何度か使用されています。初出はカイポの宿屋で、リディアが自分を守ってくれたセシルに対して心を開き、名前を明かすイベントでした。その後はホブス山において、リディアが「炎はイヤ!」とファイアを使うことを拒む場面で使用。そしてドワーフの城での大人になった彼女との久々の再会や、エブラーナの洞窟で「これ以上人が死ぬのはいや!」と嘆くリディアなど。「リディアのトラウマ」のテーマ? DS版はこれも仲野氏のアレンジ。原曲にはなかったイントロが、「愛のテーマ」と同様に加えられています。これもケルト風味シリーズとして、ぞんぶんに調理されています。情感豊かな、生演奏と聴き紛う演奏は「愛のテーマ」に劣りません。しかも2周目(1分18秒〜)もやはり単なる繰り返しではないのです。1周目では木管とフィドルのユニゾンメロだったものが、フィドルとパイプのユニゾンになっているのです。そんなところも実にケルティック。なお、「ケルティック・ムーン」のボイス入りアレンジもグッとくるので、ぜひ聴いてみて下さいね。 |
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17.ダムシアン城 ・ダムシアン城BG ・エブラーナ城BG |
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バロン王国の飛空艇団に破壊されたダムシアン城で流れるBGです。やっと辿り着いたセシルにしてみれば「おいおい、マジかよ……」という不安と絶望感。そんな情景によくマッチしていた楽曲です。かつて忍者たちの城として栄えたエブラーナ城でも使用され、さながら「朽ち果てた城のテーマ曲」といったところでしょうか。 DSアレンジは、これも仲野氏の仕事。「ボムの指輪」と同じく、こちらもテンポが下げられています。オリジナルではまだ元気がありすぎる、という判断でしょうか?より情景にマッチした曲調になりました。また、オリジナルがチョッパー気味のノリノリベースだったのに対し、DS版は這うようなネチっこいベースになりました。この曲は新解釈がオリジナルを超え、楽曲をより良いものにしていますね。 |
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18.哀しみのテーマ ・ダムシアン城でアンナの死に直面し、怒りに震えるテラ、嘆くギルバート ・リヴァイアサンに襲われた後、ひとりミシディアに漂着するセシル ・自ら石化し、迫り来る壁から仲間を救ったパロムとポロム ・ゾットの塔で力尽きたテラ ・バブイルの塔で仲間を閉め出して犠牲となったヤン ・バブイルの塔におけるエブラーナ王&王妃との戦闘(良心を取り戻して以後) ・再びパーティに戻ったカインを責めるエッジを、制するローザ〜月に行こうと決意する一行 |
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いかにも「FF」というか、植松氏的な楽曲。他の「FF」にも出てきそうな……。「哀しみのテーマ」だけあって、アンナの死を初めとした、そういった「哀しみ」のシチュエーションで何度もかかります。構成楽器や雰囲気はまったく違いますが、ちょっと聴けば「FFIV メインテーマ」のアレンジであることはすぐにわかるでしょう。 この曲は何と言っても、我が身を犠牲にしてセシルたちを救ったパロムとポロムでしょう、やっぱり。突然現れたNPCアンナより、苦楽をともにした仲間の犠牲は、より深く胸に突き刺さります。そういう意味では、ゾットで別れることになるテラも……バブイルで別れるヤンも……このゲーム、本当に仲間との別れが多いですね。貴重なアイテムやギルを、どのキャラのために費やすべきか……そんな悩みもあった「FFIV」でした。変わったところでは、バブイルの塔におけるエッジの両親・エブラーナ王&王妃との戦闘。両親が良心を取り戻すと戦闘中にもかかわらずこの曲が流れ、エッジの心情をプレイヤーに乗り移らせます。 やはり仲野氏の手によってアレンジされたDS版は、ピアノと思われる鍵盤楽器で奏でられたSFC版に対し、よりわかり易いシンセ的なベル音色を大胆に採用。「オケ楽器にはこだわらない」という姿勢の窺える、楽曲が使われるシーンとのマッチングを優先した音色セレクトは好印象ですね。もしこれをチェンバロとかでやっちゃったら「ピアノのままでいいじゃん」となるところですが。一方で伴奏はハープでしょうか。爪弾く感じの質感がグーです。 |
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19.ギルバートのリュート ・ダムシアン城でのギルバートとのやり取り(リディアの「よわむし!」以降) ・カイポの村で夜、ひとりリュートを奏でるギルバート(サハギンバトル前) ・カイポの村における、ギルバートとアンナの思念との会話(サハギンバトル後) ・トロイアでのギルバートとの再会 ・磁力の洞窟で、「ひそひそう」から流れ出てダークエルフを苦しめるメロディ |
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アンナの死後、哀しみに暮れるギルバートに寄り添った曲です(ここでの彼はリュートを弾いてはいませんが……)。しかし彼は、自分と同じように今にも大切な人を失う事態に直面しているセシルに力を貸すため、仲間となってともに行動します。後に、カイポの村でギルバートがアンナの魂と会話する場面でも使用されます。言ってみれば、「アンナに捧げる愛の歌」……ですかね。トロイア城で彼と再会するシーンでも使用。さらに、磁力の洞窟で危機に陥るセシルたちのもとへ、「ひそひそう」を通して届けられるメロディもこれ。意味的には完全に「ギルバートのテーマ」と言っても良いでしょう。 DS版は基本的に音色をよりそれらしくしただけで、曲の本質は一切変わっていません。DS版「III」の「ノアのリュート」に異議申し立てをした人たちも、これならオッケーではないでしょうか。アレンジは仲野氏。 |
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20.試練の山 ・ホブス山BG ・試練の山BG |
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山道系ダンジョンで使用されている曲(と言っても2箇所しかありませんが……)。試練とは言ってもSFC版の楽曲には辛さを感じませんでした。むしろ、厳しい道のりを楽曲で中和している感じでしょうか。パロムとポロムを伴い、彼らのキャラクター性も内包したかのような、やや楽しげな木琴メロは「なるほど!」という感じで、ひたすら前に進んでいく主人公の姿とオーバーラップさえしたものです。そもそも木琴は「パロム・ポロムのテーマ」と共通のトーンなんですよね。 が、DS版を最初に聴いたとき、筆者は耳を疑いました。「この下品なシンセはなに?!」と。木琴メロもユニゾンで残ってはいますが、マスキングされてしまって完全に印象が変わっている……。ケルト風味ともかけ離れた、このシンセの意図を誰か教えて下さい!「試練っぽさ」を強めようと思ったのでしょうか。いや、リメイクなんだから「変えるな」とは言うつもりありませんが、これはまったく違うでしょう……。個人的にDS版最大の改悪。オリジナルをなぞって弦のままにした方がぜんぜん良かったのに。……ところが、ゲームで流れるものを聞くとそれほど気にならないんです。落とし込む際に角が取れたのでしょうか?それでもサントラバージョンは受け入れられません!なお、アレンジは仲野氏。この音色にしたのは仲野氏?野田氏? |
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21.ファブール国 ・ファブール国BG |
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ファブールにのみ一点豪華主義で特化されている、他に流用のしようのない楽曲。これはもうSFC版のまんまですね。音の厚みが増したぐらいで、順当進化です。もっと直球な民族系打楽器(ドラとか)がくるかな〜と予想してたのですが、普通にシンバルでした。必須時期を越えるとファブールにはあまり行かなくなる(フライパンイベントぐらいかな)ので、本来であれば記憶の彼方に消えてしまいそうなぐらいに使用頻度の少ない曲ですが、なにしろ作品中での特異っぷりとそのインパクトが半端ではないので、「IV」をプレイした人が忘れることはないでしょう。 | ||
22.脱出 ・セシルたちがダムシアン城を目前にしたところで、飛空艇団がそこを爆撃 ・ファブール防衛線中に転ぶギルバート〜クリスタルルームまで ・暗黒セシルと対峙したセシルが仲間に「手を出すな!」 ・バロン城で壁が迫ってくるイベント ・磁力の洞窟、対ダークエルフ戦。歯が立たず「剣さえ使えれば……!」 ・ゾットの塔、セシルとカインがローザを助けに走る ・魔物たちがバブイルの巨大砲を暴走させてしまう〜ヤンがひとり犠牲に ・バブイルの塔脱出後、敵の飛空艇から逃げるエンタープライズ〜シドの決心 ・バブイルの巨人崩壊 ・封印の洞窟、デモンズウォール戦 |
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いわゆる走れ!急げ!系音楽。短いループの音楽で、どっちかというとME。初めて聴くことになるのは、ダムシアン城がバロンの飛空艇団に爆撃を受けた直後でした。その後もけっこうな頻度でプレイヤーを焦らせてくれます。中でも封印の洞窟におけるデモンズウォール戦では、この曲がバトルBGとして流れます。ただでさえ時間制限のあるバトルで、めちゃくちゃ焦らされること間違いなし。これは選曲の勝利ですね。 DS版は、もとが速い曲なのであまり目立ちませんが、オリジナルよりちょっとテンポが落ちています。そして、オリジナルでは右側でやりたい放題やっていたピアノの音がチェンバロっぽいものに変更され、センターに定位しました(広がってはいますが)。とは言え楽曲の印象は原曲通りです。ちなみに、ここにきてやっと福井氏がアレンジを担当。なんか途中参加っぽい気もするなー。曲数も仲野氏に比べて圧倒的に少ないですし、「終らないよ〜助けて〜」「よっしゃ〜」みたいな? |
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23.疑惑のテーマ ・ゲーム導入でバロンに帰還後、飛空艇団の任を解かれるセシル ・ミストの洞窟、ミストドラゴン戦直前の「謎の声」との対話シーン ・アントリオン戦後の会話シーン「魔物が悪の影響を受けているらしい」 ・ファブール城でカインと再会〜一騎打ちへ通して ・飛び立ったエンタープライズのもとにカインの乗った飛空艇がやってくるシーン ・磁力の洞窟、ダークエルフ戦直前 ・ゾットの塔でセシルに「何か」を感じるゴルベーザ ・仲間になったカインが「闇のクリスタル」の存在を語るイベント ・ドワーフの城でセシルたちに敗れたゴルベーザが「私は…死なぬ!」 |
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まんま、疑惑。使用頻度トップクラスの短いループBGです。「赤き翼」のアレンジになっているあたり、印象付けが巧妙。最初はそのメロディを主人公サイドのテーマと思わせておいて、いやいや、どうも違うらしい……あれ、主人公が赤い翼を辞めさせられちゃったよ……おや、「赤き翼」のアレンジがカインの再登場シーンに?……と、なかなか複雑です。 CDではこの位置ですが、初出はかなり早い時期。セシルがバロン王のやり方に異議を唱え、飛空艇団隊長の任を解かれるイベントがそれ。そしてミストにボムの指輪を届けろと……うーむ、すでに疑惑(王への)がありまくりなわけですな〜。印象的だったのは、やはりファブール城でのカインとの再会シーン。わけもわからず一騎討ちの戦いとなってしまいますが、バトル中もそのまま続けて流され、セシルの戸惑いをも表現しているかのようでした。サントラでもこの場所に収録されているということは、やはりカインのテーマではと仮定するにじゅうぶんな根拠でしょう。その後も、飛び立ったエンタープライズの所にカインの飛空艇がやってくるイベントでも使用されました。ただ、カインの登場シーンだけに着目すると「カインのテーマ」と断定してしまえるのですが、そこには常に「どうしちゃったんだカイン!」と思っているセシルもいるわけで、「赤き翼」はやはりセシルのテーマかもしれない、ということになります。このあたり、いまだ筆者の中でも結論が出ません。 DSアレンジは福井氏が担当。とは言っても基本的には音色をグレードアップしたぐらいで、パートもフレーズもほぼ原曲のまま。オリジナルのMIDIが残っていれば、こんなに簡単な仕事もなかったかもしれません。「MIDIあったよー、じゃあ音色差し替えようか」ということで、いちばん苦労したのは野田氏だったかも。そういえばDS版「III」の時に「スクウェアって凄い会社だよね、ふつうはどこかにデータを残しておくもんだけど」と他人事のように言っていた植松サン、その体質の根源はもしかしたらアナタなのでは……。 |
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24.黒い甲冑ゴルベーザ ・ファブール城でゴルベーザが初めてセシルたちの前に姿を現すシーン ・土のクリスタルを持って強制的に連れて来られたゾットの塔での、ゴルベーザとの会話 ・ゾットの塔6FにおけるテラVSゴルベーザ(対峙〜戦闘中まで) ・ドワーフの塔での再対峙〜戦闘まで(リディア加入前まで) ・封印の洞窟を出たところで、再びゴルベーザの術に堕ちるカイン |
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スーファミになったからこそ可能となり、そしてスーファミでもじゅうぶんすぎる説得力を持っていたパイプオルガンによるゴルベーザのテーマ。DS版も路線は変わらず、よりオルガンらしさを強めました。アレンジはオルガンならお手のもの、キーボーディスト福井氏。つーかアレンジの余地なしで、ほとんど耳コピ職人と化してます。終端部のリタルダンドもSFC版同様。 SFC版でも違和感のあった、ゾットの塔での音楽構成はDS版でもそのまま。土のクリスタルを持ったセシルが強制的にゾットの塔に連れて来られ、ゴルベーザと会話するシーンでこの曲が流れるわけですが、ゾットの塔はそもそもBGがこの曲のアレンジである「ゾットの塔」なんですよね。つまり、ここではゴルベーザのテーマを挿入する必要はまったくないんです。一連のシーンの中で「疑惑」→「黒い甲冑ゴルベーザ」→「ゾットの塔」と音楽があまりにもせわしなく、まったくもって楽曲の無駄使いという感じだったのですが、DS版をプレイしたところそのまんまでした。曲をアレンジするのであれば、使い方も考え直してほしかったのですが……。 |
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25.親方シド ・ファブールから船で出発するセシルたち ・バロン城、カイナッツォ撃破後にシドが現れるシーン ・闇のクリスタルの在処がわからず意気消沈する一行に、喝を入れるシド ・バブイルの塔からの脱出に際し、危機一髪のところで一行を救い出すシド ・シドの弟子たちが飛空艇を改造するイベント ・エブラーナ洞窟でエッジが仲間になる場面 ・ルビカンテ撃破後の、エッジを中心とした仲間たちの会話 ・シドがファルコンを耐熱仕様に改造するイベント ・地上に戻る手立てがない一行のもとに、「なんとかしよう!」とシドが現れるシーン ・アダマンタイトを見て、鍛冶屋クロロがやる気になるシーン ・開発室BG |
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シドのテーマ。いわゆるマーチです。シドがらみのイベントで多く使われているほか、流用もされています。実は初出はシドがらみではなく、セシルたちがファブールから船で出発する場面でした(そこにシドはいません)。シドがらみでは、カイナッツォ撃破後、にせバロン王をぶちのめしてやる!と王の間にシドが飛び込んでくる場面が初出。後に、「闇のクリスタル」のありかの見当がつかずに意気消沈するセシルたちをシドが一喝する場面などでも使用され、雰囲気を明るく、前向きなものにしてくれたものです。バブイルの塔から落下するセシルたちを危機一髪、飛空艇で救うシーンでも流れました。この頃になるとプレイヤーは、自然とこの曲を「シドのテーマなんだな」と認識してますよね。さらに、彼の弟子たちが飛空艇を改造するイベントでも使用しています。 しかし、シドがパーティから離れると、この曲は「エッジのテーマ」的な使われ方もされていくようになります。そういえばエッジのテーマはないんですよね。まずエッジが仲間になる場面でチラっと流れ、ルビカンテを倒した後で「諸悪の根源ゴルベーザを倒す!」とエッジが決意するシーンでも使用され……。仮にもメインキャラクターのテーマが使い回されているのです。そのわりに、後にシドと再会すると、彼がファルコンを耐熱仕様に改造するシーンでやっぱり「シドのテーマ」として流れます。知らなければこの曲のタイトルが「親方シド」とはとても思わないでしょう。 DS版は福井氏のアレンジで、新たな味付けをすることなく原曲重視。 |
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DISC 2 | ||
01.ミシディア国 ・ミシディアBG |
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悲惨な過去を持ち、セシルを恨み、そして世界を救う鍵を握る伝説が眠る地なのに、こんなヘンな曲。普通に考えたらミシディアのBGは「長い道のり」とかになりそうなところ、そうはならないのがFF流!他のゲームならボツになりそうなところを採用されちゃうのがFFらしさ!……え、別にこの曲のことが嫌いなんじゃありませんよ? この奇怪な曲のアレンジを担当したのは福井氏。どないせーっちゅうんじゃ!と言ったかどうかは定かではありませんが、苦労の跡が窺えます。その苦労に対して、決して安易に「パーカッションのニュアンスがまったく違う!」「マヌケさが足りん!」とか言ってはいけません。そもそもなんでミシディアにこんな曲……んがんぐ。 |
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02.長い道のり1 ・ミシディア長老から「試練の山に行け」と言われるイベント ・ミシディア祈りの部屋BG ・開発室の「仮眠室」 |
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非常に映画的な音楽というか、当時のゲーム音楽にはあまりなかったタイプの曲。ミシディアで長老の話を聞く場面に流されていますが、曲タイトルの意味するところはイマイチ不明です。しかも「1」って、「2」はどこに?それはともかくとして、ミシディアの祈りの部屋BGとしても流されています。DS版は福井氏の手によって、原曲にはなかったティンパニやスネアが加えられ、音の厚みも増強されてさらに重々しくなりました。なんかもう、「ミシディア国」との対比がえらいことになってます。とても同じ場所に対して充てられた曲とは思えません……。ま、こっちの曲は場所にではなく舞台背景に対して付けられているわけですが……。 ミシディアでは神々しく聞こえたこの曲ですが、「開発室」の「仮眠室」では、なにやらとてつもなく虚無感のある曲に聞こえるから不思議なもんです。ナイス選曲!ただ、こちらのシーンに対してはSFC版の方がマッチしてましたね。DS版ではスネアがちと余計になっちゃいました。あくまで「仮眠室」についてですけどね。 |
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03.パロム・ポロムのテーマ ・パロムとポロム初登場 ・試練の山で、炎をブリザドで消し得意げなパロム〜ポロムがポカッ!と制する ・パラディンとなったセシルがバロンへ向かう際、ついていく!と申し出るパロムとポロム |
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「ミシディア国」のテイストも引き継ぎつつ、パロム・ポロムのキャラクター性が巧みに投影された、彼らのテーマ。どちらかと言うとお調子もののパロム寄り?という感じにも思えますが、なかなかどうして必殺の「ポカッ!」で彼を制するポロムにもハマってます。木琴は彼らのテーマ楽器なんですよね。だからこそ彼らとともに旅する「試練の山」も木琴メロだったのに、DS版アレンジャーにはその意図が伝わらず改悪されてしまいました。 「試練の山」はおいといて、DS版のこの楽曲は福井氏のアレンジ。原曲になかった要素としては、ベースとユニゾンの野太いバス金管が低音を補強しているところ。楽しげな木管のニュアンス、木琴、コミカルな雰囲気は見事なまでに原曲を再現しています。まあ、「アレンジャー」としてはあまり面白くない仕事かもしれませんね……。いろいろ言われるにしても、「III」みたいな作品の方が腕の揮い甲斐はあるんでしょうね。 |
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04.ゴルベーザ四天王とのバトル ・各四天王との直接対決 ・月の地下渓谷におけるダークバハムート、プレイグ、タイダリアサンとの戦闘 ・ドワーフの城での対ゴルベーザ戦(リディア加入後) ・ゴルベーザ&フースーヤに倒されたゼムスがゼロムスへと変貌するイベント ・2周目隠しボス・ゲリュオンとのバトル |
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ゴルベーザ直属、「四天王」と呼ばれる中ボスたちとのバトル専用BGMですが、ラストダンジョンでレアアイテムを守っている強敵(ダークバハムート、プレイグ、タイダリアサンなど)との戦闘でも流れます。変拍子でとっても拍の取りにくい、コピーしにくい曲。でも好きです。展開に富んでいて、聴く者を飽きさせません。これぞFFバトル音楽!初出は試練の山での対スカルミリョーネ・第二戦です(変身前の第一戦は「バトル2」)。また、ドワーフの城におけるゴルベーザとの直接対決でも、リディアが現れた後はこの曲が使用されます。バブイルの巨人における四天王との再戦でももちろん聴くことができるほか、DS版で新たに追加された隠しボス「ゲリュオン」との戦いでも流れるのです。ゲリュオンは「バブイルの巨人で戦った四天王は順番に出てくるだけで力を合わせてない」とユーザーから突っ込まれ続けていたことを気にした時田氏が、「だったら合体したら驚くだろう」と発案したもので、四天王の持つ技を異常に短い間隔で繰り出してくる強敵。知らずに戦うと瞬殺されるのは必至です。 原曲の完成度も高く、ファン人気の高さから「THE BLACK MAGES」でロックアレンジもされましたが、DS版はそのTBMメンバーでもある福井氏が手掛け、ロックバージョンとは違う原曲重視アレンジをしてくれました。おそらくSFC版をプレイし、かつ自分でMIDIも趣味にしている人であれば、SFC版を前提とした自分ならではの「ゴージャスバージョン」を打ち込んでみたことがあるでしょう。DS版アレンジはその手本のような仕上がりで、新たな驚きはないものの堅実で質は高いです。こうした「SFC版に忠実な質の底上げ」が聞けるだけでも、DS未プレイの人がサントラだけ買う価値はあります。できればゲームもプレイしてほしいところですが……。SFC至上主義な、アタマのカタい人は最初っから聴かない方がいいですね。 |
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05.飛空艇 ・飛空艇搭乗時(エンタープライズ、ファルコン共通) ・ポーチカ修行:カインと100メートルジャンプ |
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飛空艇搭乗時のBGM。FFの飛空艇といったらこの「爽快・軽快」な感じは欠かせません。メインテーマのアレンジになっているところがニクい。ちなみに地上のエンタープライズ・地底のファルコンともに共通です。DSアレンジは引き続き福井氏が担当。テンポが原曲よりもほんの少し上がってますね。その他は特筆すべきことがなく、原曲を忠実に再現したうえで一歩引いた感じです。「もっとハデにしてくれよ!」という人もいるかもしれませんが、個人的にDS版「III」の飛空艇がやりすぎでやかましかったので、このぐらいが良いです。飛空艇での移動中は戦闘などで阻まれることがないので、そんなにゴテゴテにする必要がないのです。 | ||
06.トロイア国 ・トロイアBG |
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3/3拍子のワルツ調、あったか系の心休まる「癒し」楽曲。トロイア城で流れます。他のお城の音楽と比べると、格段に平和的。それも、まだクリスタルが安泰だからかな?そうは言ってもすぐに取られてしまうのですが……。この曲こそ、「ケルト風味」が相応しく、DS版は仲野氏の手によって予想通り、ぞんぶんにケルティックしています。耳につきやすいハープやフィドルは当然、パーカッション類も凝ってます。2周目からはお約束の「ユニゾンメロ」でますますケルティック風味に。原曲もこんなじゃなかったっけ?と錯覚しそうなほど違和感がありません。テンポはゆっくりになってますね。 | ||
07.サンバ・デ・チョコボ ・黒チョコボ騎乗時 ・トロイアの会員制パブ「王様」でのショー ・プリンプリンセス「王女の歌」1回目以降 |
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黒チョコボに乗ると流れてくる楽曲。DS版はかなりゆっくりになりました。とは言っても速いんですけど、原曲が異常に速すぎたんです。ホイッスルはもちろん、より充実したパーカッションが「それらしさ」を醸し出しています。単純な繰り返しでなく、けっこう細かいことやってるんですよ。アレンジは仲野氏。文句のつけどころもありません。筆者としては原曲が「いくらなんでも」というぐらい速すぎて、イマイチだったんですよね。 | ||
08.バブイルの塔 ・バブイルの塔BG |
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タイトルの通り、バブイルの塔で流れるマーチ曲。勇ましく進め!でも用心してね……という感じでしょうか。DS版アレンジは仲野氏。驚くほど原曲のままだったのでハッとした記憶があります(良い意味で)。もちろん音色は向上しているんですけど、ジワジワジワジワと入るイントロの弦、左から右に流れるハープ、スネアの質感、主旋律のブラスと刻みストリングスのバランスなどなど、こわいぐらいに原曲の雰囲気。新鮮味はありませんが、オリジナルユーザーからイチャモンつけられる余地のない再現度は、もしかしたら本作でダントツかも。野田氏の力も大きいね、これは。 ちなみに、DS版サントラの曲名をCDDBに登録したヤツ、頼むよ!なんだ「バイブルの塔」って。 |
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09.一方その頃 ・セシルたち試練の山に到着、その頃、スカルミリョーネにセシル討伐を命じるゴルベーザ ・ローザを返してほしければ土のクリスタルと引き換えだ、と言うカインとの対峙 ・土のクリスタルを入手したセシルたちのもとにさっそくカインがやって来るシーン ・バブイルの塔におけるルビカンテとルゲイエの会話 ・封印の洞窟、また敵側に操られたカインがクリスタルを持ち去る |
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状況説明音楽。「黒い甲冑ゴルベーザ」のアレンジで、劇伴的な短い楽曲。初出はセシル一行が試練の山に進入した時に挿入される、まさに「一方その頃」イベントで、捕らわれのローザの前でゴルベーザとカインがスカルミリョーネを呼び出す場面です。また、ローザを返してほしければクリスタルと引き換えだとカインに告げられるイベント、そしてその後、言われた通りクリスタルを手に入れたセシルのところへさっそくカインが現れる場面でも流れてます。カインがこちらの仲間になってからは敵側イベントへの流用がなされ、バブイルの塔でのルビカンテとルゲイエの会話シーンなどで使用されていますが、封印の洞窟ではまたまたゴルベーザ&カインの陰謀BGMとして復活してしまいます。結局カインは敵なの、味方なの?ということで、彼を中途半端に育てきれなかったプレイヤーも多いと思われ。これまでいろんな仲間が去っていきましたからねえ。 もとが短い曲なのでいじりようがないところですが、ベースの音色に注目。ちょっと弦がたるんだような、ルーズな音になっているのがわかるでしょうか?これがなかなか面白く、曲に新しい色を付けているなと感じました。SFC版のいかにもなベースも良かったのですが、個人的にはDS版のベース、好きです。アレンジは仲野氏。 |
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10.ドワーフの大地 ・地底フィールドBG |
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地底世界のフィールドBGですが、メインテーマの別アレンジってとこがニクいでしょ?あくまで「フィールドはメインテーマ」を貫いているわけです。地上のメインテーマよりもひんやりとした(ダンジョン的な)曲調になっているのですが、地底って溶岩のせいで熱いんじゃ?……というようなことをSFCサントラのレビューで書いていました。ところが……。 DSアレンジは福井氏。これはなかなか新しいことになってますよ。ストリングスは原曲のイメージそのままとして、トライアングルにまずドキッとさせられました。そして、ベースですよ。ウニョウニョとしたアナログシンセ系の音色になっています。SFC版と最も印象の変わったところですね。たかがベース、されどベースです。奏でているフレーズは同じなんですが、面白いことにこのベースの音から、地底世界のマグマの「熱さ(暑さ)」を感じるのです。SFC版のひんやりとした雰囲気に、「熱」の要素が足されているのです。と力説したところでそう感じたのは筆者だけかもしれませんが、感じたのだからしょーがない。 |
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11.キング・ジォットの城 ・ドワーフ城BG ・アガルトの宿屋にいる踊り子の踊り |
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とっても個性的な「城」BGM。イントロは勇ましいのですが、その後はコミカルテイスト。「ラリホー!」なドワーフたちならではの「城」ですね。SFC版では曲名が「ジオット」だったのですが、DS版サントラでの表記は「ジォット」に変わってます(ゲーム中での表記は「ジオット」のまま)。不思議ですねー。 DS版は仲野氏の手によって、より厚くなりました。ちょっと「勇ましさ」の方に寄ったかな。 |
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12.踊る人形カルコブリーナ ・カルコブリーナ登場、イベント〜バトル(合体前まで) ・バブイルの塔でのルゲイエとの対峙〜ルゲイエ&バルナバ戦(ルゲイエ2になる前まで) ・ミシディアの酒場にいる踊り子の踊り |
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怪しいワルツ、カルコブリーナ。SFC版は左から右へ、左から右へとパンニングされたオルガンの伴奏の上で木管が舞い踊る、怪しさ倍増の曲だったのですが、DS版は少し雰囲気が変わってます。オルガンの音色が変わってるのはそれほど影響してなさそう……。木管の主旋律にも問題なし、スネアの打ち方も原曲通り……。じゃあ何が違うんだろうと思ったら、「オルガンの動き方が違う」ことに気付きました。オリジナルはオルガンが絶えず流れていたんです、左から右に。例えて言うなら「線」で。ところがDS版は「点」なんですね。言ってみれば左・中・右にそれぞれオルガンがいる感じ。完全に定位しちゃってるんです。SFC版はひとつのオルガンが移動している感じだったのです。ふーん……それだけのことでこんなに印象が変わるか。もっともスピーカーで聴いてたらそれほど気にならないことなんですが……。興味ある人はヘッドフォンで聴き比べてみて!どっちが良い・悪いということを言ってるんじゃないですよ、誤解なきよう。 カルコブリーナ撃破後はルゲイエに流用。ま、バルナバも人形みたいなものですし。ちなみにDSアレンジは福井氏が担当しています。 |
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13.ゾットの塔 ・ゾットの塔BG ・試練の山においてスカルミリョーネと遭遇 ・バロンでカイナッツォが正体を現す ・バブイルの塔でのルビカンテとの対峙 ・バブイルの巨人で復活した四天王との対峙 |
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「黒い甲冑ゴルベーザ」の別アレンジ。オルガンをパイプではなく普通のものにし、テンポを早めてリズムを加えた、という説明では簡単すぎるでしょうか。もちろん弦とか管とかベースとかも加わってますが。初出は試練の山におけるスカルミリョーネとの遭遇イベントです。テーマ性を持たせた印象付けの巧妙さは特筆すべき点。これも映画的、ってことかな。他にもバロンでのカイナッツォなど、四天王との遭遇シーンでは必ずと言っていいほど使われます。 もちろん、本命はゾットの塔のBGとして、なんですが。でもこれはあとづけのような気がする……。「ゴルベーザのモチーフだから、ここで使っちゃえ!」みたいな……。後に、バブイルの巨人での四天王復活イベントでも当然使用され、緊迫感を盛り上げます。DSアレンジは福井氏ですが、音色のグレードアップがメインで特筆するような目新しい点はありません。原曲のイメージが完成したものでしたからね。 |
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14.幻獣の街 ・シルフの洞窟、幻獣神の洞窟BG ・シルフの町、幻獣の町BG |
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「弦・ハープ・フルート」という「FFIV」でも使用頻度の高い楽器構成で聞かせる、神秘的なイメージ。タイトル通り「幻獣の町」のほか、幻獣神の洞窟、シルフの洞窟等で使用されています。ダンジョンに重きを置いたのか全体に不安げで、敵のいない(むしろ人に対してわりと好意的な)「幻獣の町」ではちょっとこわすぎる感じがしないでもありません。いっそのこと「幻獣の町」はリディアのテーマとかでも良かったのかも。 DS版は仲野氏がアレンジを手掛けており、これは野田氏の守備範囲かもしれませんが、音色が面白いですね。フルートがパンフルートっぽい、少しかすれた音色になっていて、寂寥感や人の手が及ばない未開の地、といった雰囲気が強められているのです。野田氏は「容量に収めるため、音色を使い回した」と述べており、それはこの曲についての発言ではありませんが、それほど音の使い回しは気にならない、むしろ筆者は曲に適した音色をしっかり使っているなあ、と感じていたので意外でした。フルートのみならず、この曲のベースも他の曲とはまた違う音色ですよね。DS版「FFIV」のサウンド関連の容量はボイスが入ったこともあって非常にシビアだったのです。それを感じさせない仕事は「さすが」としか言えません。 |
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15.魔導船 ・魔導船搭乗時 |
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これもFF定番の飛行音楽に倣った名曲です。とうとう空や海だけでなく、宇宙にまで……いざ行かん、月へ!プレイヤーの心理ともよくマッチしてると言えるでしょう。「爽快・軽快」はここでも健在。軽やかなストリングスが風を感じさせてくれるような気すらしてきます。DS版はオリジナルのテイストを最大限に尊重し、音色をゴージャスに。「飛空艇」と比べてだいぶ前に出る曲になりましたが、物語終盤に登場する究極の飛空艇を印象付けるために、その意味で言えばそれまでの「飛空艇」は「魔導船」を立てるためにあえて薄味にした、とも言えるのではないでしょうか。アレンジは福井氏。 | ||
16.もう一つの月 ・月面フィールドBG |
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月におけるフィールドBG。SFC版からなんとも言えない味を出していたムキュムキュした音色も、DS版でカンペキに再現しています。これは野田氏も苦労したんじゃないでしょうか?「植松さーん、あれって何の音なんですか?どうやって作ったんですか?」「忘れた!ゴメン!」とかいうやり取りがあったのかもしれません(あくまで想像です)。楽曲アレンジは福井氏。 一方でSFC版では隠し味的にさりげなく入れられていた、宇宙を通り過ぎていく流星を表わしているかのような「キューン」という音色ですが、こちらはDS版ではかなり目立ってます。SFC版が「はるか上空を通り過ぎる流れ星」とするなら、DS版は「目の前を通過する」感じでしょうか。 |
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17.月の民 ・月の地下通路BG ・試練の山における、セシルと「謎の声」の会話イベント ・バブイルの巨人で、フースーヤによってゼムスの呪縛を解かれ正気を取り戻すゴルベーザ ・ゼロムス撃破後、眠りにつくというフースーヤに「私もともに」と申し出るゴルベーザとの別れ |
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「もう一つの月」とは姉妹曲のようにも思える曲で、月の地下通路で流れるほか、もっともっと前、試練の山でのイベントでも使われていました。セシルとその父との対話シーンです。なぜこの場面でこの曲が使われたかは、月の民の館でフースーヤからセシルの出生の秘密を聞いた時に明らかになるでしょう。なるほど!と思うはずです。あんな早くに音楽的伏線が!そしてバブイルの巨人で、フースーヤによってゴルベーザが正気に引き戻されるイベントシーンでも使用。ここで、この曲がゴルベーザとセシルの意外な関係を予見していたことを思い知るのです。つまり、この曲名の「月の民」とは「誰と誰を」指しているのか……。フースーヤのことではありません。 DS版アレンジは仲野氏。「もう一つの月」は福井氏のアレンジでしたが、音色を司るのが野田氏であるため、アレンジャーが違えど曲の統一感は保たれています。 |
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18.巨人のダンジョン ・バブイルの巨人BG ・月の地下渓谷B7F以降BG |
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タイトルの通り「バブイルの巨人」内部で流れる曲です。いよいよ巨人の内部に突入!というところから流れ始め、物語終盤ということを予感させる宿命めいた曲調に燃えないわけにはいきません。以後、巨人内部で鳴り続けます。もうひとつは、やはり何と言ってもラスダン「月の地下渓谷」後半の印象の強さ。レベル上げしたり、最強武器を手に入れたり、この楽曲はやたらとプレイヤーの耳にこびりついているのではないでしょうか?ただし非常にエンカウント率が高いので、後半はめったに聞くことができないはず。 アレンジ担当は仲野氏。原曲における、特徴的なベースとハイハットの味をどれだけ再現できるかがアレンジの命題と言っても過言ではないでしょう。終盤の印象的な曲だけあって、ユーザーの思い入れも半端ではないはず。しかし、その点については何の問題もないほどカンペキ、かつグレードアップしています。その他の弦、管も素晴らしい再現度。モンスターの強さがSFC版を再現できてないラスダンにあって、オリジナルと印象の変わらない楽曲にはえも言われぬ安心感があります。「これこれ、これだよ」ってね。原曲でパンニングして遊ばせていたハープの動きはなくなったものの、この曲の雰囲気に関しては影響していません。が、ついでにぶっちゃけてしまうなら、作品全体的に曲や音色はオリジナルに忠実だけど、定位にまでは手が及んでないな……というのが正直な感想です。もっともパート数が比較になりませんし、サントラはゲームに落とす前のものなので、安易な比較はできないのですが。 |
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19.最後の闘い ・ラスボス戦 ・2周目隠しボス「プロトバブイル」戦 |
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「FFIV」のラスボス戦音楽。今のFFにも通ずる、非常に展開の多い楽曲は多彩な表情を見せます。メインテーマのモチーフもしっかり入っており、その後でなぜか「ゴルベーザ四天王とのバトル」の一部も盛り込まれています。部分部分にプログレ、ともすればシンフォニックメタルに通じるようなフレーズが顔を出す点も「燃える〜ッ!」という感じ。 DS版アレンジは仲野氏。最後はどうくるか……と思っていましたが、わりとアッサリ、原曲をなぞっています。変えたら変えたで文句は言われるでしょうが、DS版「III」のラスボス戦音楽ほどの驚きはありませんでしたね。というか……原曲を追いきれてないので、だったら大胆に新要素を入れてほしかった、というのが正直なところ。まず、テンポが遅くなってます。曲によってはアリな改変ですが、この曲は保ってほしかったところ。次に、イントロのエフェクティブな金管が、オリジナルに比べたら物足りません。ゲートリバーブ的に切れながら減衰していく……というギミックが導入のインパクトとして重要であるのに、DS版はただ減衰していくだけで「切れた感」がありません。余韻がありすぎるのかな?そして、主メロのブラスはもうちょっとなんとかならなかったの?というぐらいにチープ。そんなバカなと思われるかもしれませんが、SFCの音にも負けてると思います(イメージも多分にありますが)。「容量の都合で使い回した」の悪影響がここに来たとは思いたくありませんが、ラスボス戦にはスペシャルな、作品中で考えられる最高の音色を回してほしかったです。また、それに対して駆け回るオルガンの音量が強められているため、メロが際立っていません。あとはもう曲の終わりまでブラスのチープさだけが気になり、ループ……という感じで、最後の最後で不満が炸裂してしまいました。 そんな曲ではありますが、DS版の最強隠しボス「プロトバブイル」とのバトルでも耳にすることができます。ラスボスを上回る圧倒的な強さを持つこの敵にはこの曲しかない!ということなのか、はたまたプロトバブイルと戦うためにはゼロムスから盗む「ダークマター」が必須であるためか、関連性は不明。しかしゲーム本編では直接戦うことのなかった巨人との対決は嬉しいサプライズ。とは言っても対処法を知らないとその強さはとんでもなく、DS版「III」の「てつきょじん」が可愛く思えるほどです。対処法を知っていると、むしろゲリュオンよりも勝ちやすいのですが……。 |
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20.エンディング・テーマ -1- ・エンディングイベント前半 |
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SFC版サントラでは1トラック11分超だったエンディングは3つに分割されました。冒頭は太陽・惑星・月がロングで映し出される印象的な場面。1分45秒からは「赤き翼」や「メインテーマ」のアレンジに乗せて各地を巡り、その後の仲間たちの様子が描き出されるシーン。そして次のトラックへ続きます。 | ||
21.エンディング・テーマ -2- ・エンディングイベント後半 |
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まずは「さよなら……兄さん」に伴う、弦・木管・ハープが奏でる憂いのあるパート。そして1分19秒、「愛のテーマ」が聞こえてくると、エンディングイベントも終盤にさしかかります。そして1分46秒の「オープニング(ファイナルファンタジー)」へとつながるところで、仲間たちの祝福を受け、晴れてバロンの王・王妃となったセシルとローザでありました。 | ||
22.エンディング・テーマ -3- ・スタッフロールから |
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まだまだ終りませんよ。スタッフロールが残っているではありませんか。スタッフロールブロックは「赤き翼」も交えながら進行する、勇ましいマーチです。部分的には「勝利のファンファーレ」の後半部分にも聞こますね(エンディングは最高度の「勝利」ですし)。ここまで通して「メインテーマ」「愛のテーマ」「赤き翼」など、既出曲のモチーフを中心にまとめられたエンディングはお約束的手法とは言え、数十時間を費やしたゲーム中の冒険を振り返るにはやはり最適。様々な場面が頭の中を駆け巡ることでしょう。 DS版エンディングのアレンジはすべて仲野氏が担当。一貫して「原曲の音色増強」を目指し、曲そのものについてはあくまで原曲の域を出ていません。その選択はここでは正しいのではないでしょうか。なぜなら、DS版ではこの後に、SFC版にはなかった「もう一曲」、言わば「エンディング・テーマ -4-」が控えているのですから……。 |
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23.月の明り -Ending Version- ・エンディングオーラス(スタッフロール途中から最後まで) |
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ここでついに「愛のテーマ」ボーカルバージョン、テーマソング「月の明り」です。これを入れることになった経緯は、まず当然開発にあたって「歌をやるかどうか」ということを話し合うわけですが、今やゲームに歌を入れること自体は珍しくない。入れるのなら意味を持たせたい……ということで、曲は「愛のテーマ」に決まりました。もともとBGMだったものに詞が付けられるか?という点については、SFC版当時から時田氏が歌詞を付けて歌ってたりしたので、イケそうだ、と。ちなみにその時の歌詞は「君の名前〜、白魔道士〜」だったそうで、あっ、「君の名前」はまんま残ってるじゃん!ともかく、歌詞は時田氏が担当。セシルとローザに限定したものにはしたくなかったが、SFC版制作当時と今の気持ちがつながるので、「君の名前」はそのままにしたそうです。そして、サビでリフレインする部分をタイトルに。 アレンジは植松氏から福井氏に「バラードにしてほしい」「ピアノやストリングスは生で」「間奏のソロは笛系で」とオーダー。素朴な味が出るものを、ということで「笛」はオカリナになったとのこと(注:サントラ収録のバージョンに間奏はありません)。植松氏は「福井はいつも一緒にやってるから、頼めばその通りに仕上がってくる。やりやすかったですよ」と語っています。 あとは歌い手。時田氏の「著名な歌手とのタイアップも考えたが、せっかくだからSFC版を遊んでくれた人にやっていただきたい」との思いから公募をすることになりました。800を超える応募をすべて聞き、印象に残ったものを残してさらに聞き込み、100ほどに。そこから3人に絞り込み、最終的にボーカリストの座を射止めたのは北海道在住の伊田恵美さん。「歌が上手いことは前提として、やっぱり作品を理解してくれている人、愛してくれている人に歌ってほしい」ということで、決め手は応募書類などに添えられていた伊田さんの「想い」と「個性」だったとか。 実際のレコーディングは、ビビるかもな、という植松氏らの予想に反して度胸はあったという伊田さん。独特の歌唱は指導のたまものかと思いきや、「最初は指示したがやり辛そうだったので、最終的には自由に歌ってもらったら、そっちの方がぜんぜん良かった。だからあれは伊田さん流」と植松氏が述べています。どんな歌かは皆さんそれぞれ聴いて下さい。なかなか心に染みてきますよ。原曲のファンもきっと気に入ると思います。 が!ゲーム中での使い方については筆者的には不満があります。「CMだけで使われるようなものなら気乗りしなかった」「ゲーム中のここぞというところでガツンと一発!」「使われているところを見てみたけど、演出込みで良いシーン」といった植松氏の発言をプレイ前に見聞きしていたので、いったいどこで流れるんだろうとワクワクドキドキしてたんですよ。しかし、自分でゲームを始めてけっこう進んだなと思っても、いっこうに出てきません。「ここかな?」と予想していたいくつかのポイントもことごとくハズレ。待ちきれなくなって、先にクリアした知人に「歌ってどこで出てきた?」と聞いても「歌なんて流れてたかな?」との返事。おいおいちょっと待て、クリアした人間に「流れたか?」と言われるって、どんなテーマソングだよ。 で、実際に自分もクリア。スタッフロールが続いているのに、「エンディング・テーマ -3-」が尽きてしまう。あれあれ?と思っていると、突然「月の明り」ですよ。ここかよ。これが「ここぞ」かよ。ゲーム中の重要なイベントとかで「Eyes On Me」ばりに流れるものとばかり思っていた筆者は愚かでした。きっと前述の知人は、長いスタッフロールの途中で見るのをやめたのでしょう。映画のスタッフロールを最後まで見ない人がいるのと同じことです。ならば、「歌なんて流れた?」というのも無理はありません。なんというか……「言うほどの使い方かぁ?」っていうのが率直な感想。もったいないなあ、と。大々的にオーディションまでして……。 筆者はどこかで勝手に、「ゲームで歌が流れることは今は珍しくない」という旨の発言を、「エンディングで歌が流れるのなんて珍しくもない」という意味に変換して解釈していたのかもしれません。そんなのテレビや映画が昔からやってるでしょ、と。「ゲームで歌を流す意味=エンディングで垂れ流すだけではない」と思い込んでいたのです。だって、「ここぞというところ=エンディング」じゃ、あまりに普通すぎてもったいつける必要もないじゃありませんか。あれだけ煽ったんだからさぞかし……と勝手に期待した筆者がいけないんです。 |
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24.パラディン ・セシルが晴れてパラディンになるとき ・魔導船が出現するシーン ・ゴルベーザとフースーヤがゼムスを倒したとき |
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SFC版のサントラでは漏れていた「ME系」も、DS版サントラではめでたくすべて収録されました。なお、MEのアレンジはすべて仲野氏によるものです。まずはセシルがパラディンになる時に初出となるファンファーレから。おや、「赤き翼」のアレンジですね。ってことはやっぱり、「赤き翼」がセシルのテーマということになるのでしょうか。それはそれで疑問が残りますけど……。その他にも何箇所かで使われてます。 | ||
25.チョコボの森 ・チョコボの森 ・黒チョコボ保育園 |
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こんなものまで入れてくれました。チョコボの森や、トロイアの町にある黒チョコボ保育園で流れる、メロディなし(イントロループ)の「チョコボ」です。 | ||
26.踊り子 ・踊り子の踊り(一部に例外あり) |
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踊り子が踊る時に流れる「剣の舞」もどきがこちら。すべての踊り子がこの曲で踊るわけではなく、一部の踊り子には別の曲が充てられることもあります。 | ||
27.ジングル 宿屋/驚嘆/哀しみのテーマ2/ファンファーレ1/ファンファーレ2 |
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最後は本当に短いジングル集。「宿屋」は宿屋のみならず、テントやコテージで休んだ時にも流れるベル音色のME。「驚嘆」はショッキングアタックで、「ダムシアンでテラたちが倒れたアンナを発見」「エブラーナ王と王妃が襲いかかってくる」といったシーンで使用。「哀しみのテーマ2」はハープ(リュート?)で奏でる、短い「赤き翼」のモチーフで、アンナが息絶えたときに耳にしたもの。 「ファンファーレ1」は仲間が加入した時や目的達成時に鳴るもので、初出はオクトマンモスを倒したとき。以後仲間の加入時はもちろん、重要アイテム入手、仲間がイベントなどで特定のアビリティを覚えた際に鳴ります。意外なところでは「開発室」の「音楽室」で、「カミッチ」と会話すると聴くことができます。「ファンファーレ2」は「開発室」の「仮眠室」で「エッチな本」を発見した時に盛大に鳴り響きました(他にあったかな……?)。 |
関連CD テーマソングシングル 「月の明り」伊田恵美 ゲーム本編にも先行して発売された、テーマソングのシングル盤。サントラには「エンディングバージョン」として短いものが収録されていましたが、こちらはもちろんフルサイズ。DS版、SFC版の「愛のテーマ」ゲーム音源も入ってます。同梱のDVDにはプロモーションビデオが。伊田さんはもちろん、後ろでピアノを弾いている福井氏もチェック!ただし、曲中の実際のピアノ演奏は福井氏ではありません。 スクウェア・エニックス BVCR 19727/8 2007年 JASRAC表記:あり |
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参考:声優リスト 音楽とともに、「音」の重要な位置を占めるのが効果音、そしてDS版で採り入れられたボイスである。これらはDS版「III」から引き続き参加したスクウェア・エニックスの神谷智洋氏が担当。SEはもちろん、ボイスにかけられたエフェクトも氏の手によるものだ。そのボイスは、開発中のイベントシーンを見たスクエニの他のプロデューサーから「ここまでやるんなら声がない方が不自然」との感想を受けた時田氏が、じゃあ試しに2シーンほど入れてみようかとテスト的に入れてみたら予想外にはまったことから、本格的にゴーサインが出たという。声優のセレクションはディレクターの時田氏を中心に、スクエニのサウンドスタッフが協力して行われた。時田氏いわく「ユーザーそれぞれのイメージが既にあるので、この人なら文句は言わせない、という人にしたかった」とのことでかなりの大御所が揃うことに。対して主人公・セシルとヒロイン・ローザは「ゲームとユーザーの仲介役みたいなところもあるので、イメージのついてない人にしたい(時田氏)」ことから若手声優をオーディションし選定した。ここでは参考資料として、DS版「FFIV」に出演してる声優陣をまとめておくことにする。
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ファンならすべて集めたい、比較も興味深い「FFIV」のCD。