GAMERS EDEN ゲーム音楽 ゲームサントラ レビュー
交響組曲「ドラゴンクエストI」
すぎやまこういち指揮 
東京都交響楽団


CDを購入
 すぎやまこういち氏が東京都交響楽団と出会ったのは2004年、「ドラクエVIII」および「PS2版ドラクエV」のゲーム発表会で行われた演奏会のためだった。その結果、都響の演奏はすぎやま氏の望む最高のものであったらしく、氏は発表会の席で「今後ドラクエシリーズの曲を都響で再録音し、順次CDにしたい」と発表。このことはドラクエ音楽ファンの間でそうとうな話題となった。既にN響やロンドンフィルの演奏があるシリーズの音楽に、新たに「東京都交響楽団」という顔が加わるわけで、さらにそれは「リメイクで追加された新曲や未収録曲の初収録」といった期待にも繋がっていった。

 そしてPS2版「V」発売とタイミングをほぼ同じくしてまずリリースされたのが、都響盤「V」。都響組曲第一弾であり、すぎやま氏の「SUGIレーベル」の第一弾ともなった。以後、ゲームのリリース順とは必ずしも一致しないものの録音とCD発売は継続され、当時の「VIII」までのシリーズ内では最後にいよいよ原典「I」が発売。「I」は楽曲数が少ないため、CDアルバムとしてのボリューム不足が懸念されたものの、シリーズの「ME」をオーケストラ演奏した「ME集」が収録され、ファン垂涎の内容となっている。

2007年・Aniplex/SVWC 7457
2009年・キングレコード/KICC-6300(SUGIレーベルの移籍)
JASRAC表記:
あり

01 序曲
OVERTURE MARCH
「ドラクエI」は原典であるファミコン版のほか、リメイクとしてスーパーファミコン版とゲームボーイ版、さらには携帯アプリでもリリースされており、今さらゲームそのものについての説明はするまでもないでしょう。すぎやまこういち氏がユーザーとしてエニックスに送ったゲームのアンケート葉書きがきっかけで「ドラクエI」に参加することになったものの、与えられた時間はごくわずか。すべての楽曲を1週間で書いた……というのも、今となっては有名すぎる逸話です。最初こそクリエイター・プログラマーサイドとの衝突があったものの、その後すぎやま先生が「ドラクエ」になくてはならない人となったことはご存知の通りです。

ファミコン版「I」を受けて発売されたCDは交響組曲ではない「組曲」、即ちフルオーケストラとは呼べない小規模のもの。それでもゲーム音源バージョンにはないフレーズが盛り込まれ、楽曲としての基礎はこの時点で完成されていました。後にスーパーファミコン版のリリースをきっかけにして、ロンドンフィルにより「交響組曲」へと進化。圧巻のフルオーケストラによるお馴染みの音楽たちは、どんなに聞き馴染んだものであっても新鮮でした。そして2006年、すぎやま氏の「都響計画」により、東京都交響楽団の手による初の「国内オケ演奏盤」が発売されたのです。

この曲は言わずと知れた「ドラクエ」シリーズのメイン・テーマ。もちろんイントロは「ロト仕様」です。最新作「VIII」に至るまで、既に交響組曲での演奏がいくつもある曲ではありますが、ファミコン世代としてはこのイントロで少年時代にグッと引き戻される感覚がありますね。ホルンによるイントロですが、この時点から既に都響盤は、東京弦楽合奏団のものよりもロンドンフィルのものよりもテンポが速いです。また、同じフルオケでもロンドンはスタジオ録音、都響はホール録音となっておりますが、都響のものはかなりオンマイクで各楽器が狙われており、細部がはっきりと聞こえてきます。そのうえで豊かな残響成分も感じられますから、パートマイクとは別のアンビエンスマイクも立てているのでしょう。スタジオ録音的な長所とホールの長所がうまく混ざり合っているというか、オンとオフのブレンド具合がなかなか見事です。マスタリング技術の進歩もあってかダイナミックレンジも心地良く得られており、音圧感があります。テンポの速さとあいまって、どこかアグレッシヴな演奏となってます。

楽曲の展開やアレンジ的には、基本的にロンドンフィルのものにほぼ準拠。東弦バージョンには当然のことながら存在しない、「V」から追加された副旋律の木管(フルート、ピッコロ)もあります。また、最後に主題をリピートするオーラスの部分ではマーチングスネアがなくなり、「II」「IV」でおなじみの3連ベースに変貌する点も、過去のアレンジと同様です。
02 ラダトーム城
CHATEAU LADUTORM
弦楽による「城」のテーマです。最近の「ドラクエ」ではお城がいくつも出てきますが、「I」ではお城と言えばラダトームでした。城塞都市や竜王の城はありましたが、この曲が相応しい城は、ね。それだけ特別な場所であり、同時にこの曲も特別な曲でした。

都響盤のアレンジにおいても新しいことや特別なことはされず、基本に忠実に、丁寧に演奏したという感じ。すぎやま氏の「集大成を作りたい」という思いが現れた演奏となっています。なにもいたずらに新アレンジを施したり、アイディアを追加したいわけじゃない。演奏・録音ともに、後に残せる「ベスト・オブ・ドラクエ」を作るんだ、という心意気ですね。

テンポはロンフィル盤とほぼ同じ。比べてみると、東弦盤はずいぶん速かったんだなと感じますね。録音としては、ロンフィルのものが伸びやかな高音が強調された「スタジオらしい」音色でまとめられているのに対し、都響盤は残響も含めて低音部がかなり出ています。「生」で聞く弦楽の音は、こういう感じだと思いますよ。

いろいろ比較はしていますが、レビューの趣旨は東弦・ロンフィル・都響それぞれの演奏に優劣をつけることではありません。音色やテンポ、録音、総合的な演奏の良し悪しについては、結局は聴く人の好みで良し悪しが判断されるべきものだと思いますし、それを語るときに音楽的素養の有無・優劣はまったく意味がないものだと思っています。クラシック音楽ではとかく初心者が軽視され、意見・感想を述べることすらはばかられる雰囲気が多かれ少なかれあると感じますが、そんなことはないと。ただ、とにかく「ドラクエ」は演奏・アルバムの種類が多いので、これから聴きたい人、聴いてるけど違いがいまひとつわからない人の「楽しむ手助け」にほんの少しでもなれば、と思って書いております。
03 街の人々
PEOPLE
こちらも、弦を中心とした「街」のテーマです。アレンジはロンフィル演奏時のオーケストラアレンジとほとんど同一で、そこで加えられた要素はそのまま継承されています。間奏(2'12"〜)のピチカートソロに加えられた鉄琴、リピート(2'48"〜)で加えられた木管メロなどですね。もっとも一度確立された交響組曲のアレンジというものは、演奏するたびにちょこちょこと手を入れる性質のものではないんですけどね。同じで当たり前です。あとは指揮者の解釈でテンポや音の入り抜き、強弱のニュアンスに違いが出てくるわけですが、「ドラクエ」音楽はすぎやま氏自身が一貫して指揮を担当していますので、そんなにブレることはないですね。テンポは過去に演奏されたものの中ではいちばんゆっくりとしています。もっとも「秒数で言うと」であり、曲の流れにおいてはロンフィルとの差は微々たるものです。

流れるようなアンサンブルは、じゅうぶんに気品を感じさせながらも、跳ねるようなリズムは軽快で楽しげ。オーケストラは荘厳なだけじゃないんだぞとばかりに、幅広い表現力を実感させるにはうってつけの楽曲です。
04 広野を行く
UNKNOWN WORLD
これこそ、ファミコンRPGフィールドBGMの元祖。街を出て、ひとり広野を行く時の不安と寂しさを何倍にも増幅させてくれます。パーティという概念がまだなかった、一人旅スタイルの「ドラクエI」ならではの曲と言えるでしょう。ファミコンでの「II」「III」を経て、「ドラクエ」の代表曲になったと言ってもいいかもしれません。

ロンドンフィルがフルオーケストラで演奏した時点で、かつて東京弦楽合奏団が弦楽器で演奏していた部分の多くが、木管楽器に変更されました。冒頭からオーボエが出てくるなど、両者の印象はだいぶ変わったのではないでしょうか。より寂寥感が増したとも言えるでしょう。その後もメインのメロディを木管(フルート)と弦など複数の楽器が交代に受け持ち、バリエーションが広がりました。都響盤でも基本は一緒です。あくまで既存のスコアを演奏し直す、録音し直すというのが命題なのですね。
05 戦闘
FIGHT
ひとり寂しく広野を進んでいると、突如として出現するモンスター。ドラクエシリーズの大きな特徴である、漫画家・鳥山明氏によるどこか愛嬌のあるモンスターたちも、この曲を伴うことによって何倍にも手強く、脅威的に感じさせられます。「ドラクエI」のバトルは例外なく主人公VS魔物の一騎打ちですから、他に頼るものがない、攻撃も回復も一人で行わなければならない緊張感は昨今のRPGでは味わえないものです。

都響盤での演奏は、これは録音条件やマスタリングも絡んでくることだと思いますが、「序曲」と同じくダイナミックな音圧のあるこのテの楽曲において、前にグイグイと出てくる迫力を感じさせます。ティンパニやシンバルといった打楽器も鮮明で、渾然一体となったオケ全体というよりは、各楽器の細部がクリアに捉えられた録音と言えます。1分16秒から聞こえる間奏部のハープ(左寄り)が弦を弾く音が非常に印象的でした。生のオーケストラコンサート(PAなし)ではまず聞こえてこない音ですし、ワンポイントステレオレコーディングでも得られない音。言い換えれば生オケというよりは録音ならではの演奏なのですが、CDアルバムとして聞くのであれば何の問題もない、むしろ興味深いほどですね。「ドラクエ」音楽を通してオーケストラ楽器に興味を持った人も少なくないと思いますが、「どこで何の楽器がどういうことをしているか」を聞き分けるうえで、良い教科書になると思います。

では、各楽器がバラバラで調和がとれていないのか?と言えば、じゅうぶんなアンビエンスによって一体感も得られており、オーケストラの魅力は損なわれていません。あまりに細部がクリアすぎて生オケとは程遠い、という理由から本盤の録音を拒絶する方もおられるでしょうし、理解できるのですが、オケ入門者が少なくないであろうと思われる「ドラクエ」ファンに対しては、こういう録音は正解なんじゃないかと思うのです。
06 洞窟
DUNGEON
フィールド以上に、孤独感と不安を増幅するダンジョン音楽。だんだんとテンポが遅くなっていき、ダンジョンの深くまで進めば進むほど、不安もまた増していきます。都響盤における演奏は、アレンジはロンフィルの時のものを継承しつつも、テンポはやや速くなっております。東弦の頃のテンポに戻った感じですね。金管の存在感が少し増したような気もします。前述のような録音スタイルのためかもしれません。

ここで、オーケストラ録音の方法について、代表的なものを簡単にまとめておきましょう。まず、「どこで録音するか」があります。ひとつは「A・録音スタジオ」、もうひとつが「B・ホール」です。録音スタジオでの録音はブースの存在により、大音量を発する打楽器などを隔離することで、他の楽器を狙っているマイクに対する音の混入を防げるというメリットのほか、マイクや機材をセッティングする環境が整っており作業がし易い、という利点もあります。デメリットとしては狭いためにじゅうぶんな響きが得られないこと、時にはあとで機械的に残響を足さなければならなかったりすることです。また、最近ではフルオーケストラを一同に収容できる広さのスタジオがなかなかないということもあります。

ホールはその「響き」については問題ありませんが、それが良質なものなのかあまり良くないのかはホールの特性に支配されてしまい、基本的にはコントロールできません(最近はコントロール可能なホールもあります)。広さについては問題ありませんが、もともと録音用途を想定していないホールでは準備・撤収に大きく時間を割かれてしまいます。ホール録音は場所の選定が非常に重要です。

録音する場所が決まったら、あとはどういう形で集音するか。マイクの立て方ですね。オーケストラ録音では大雑把に分けて3つのスタイルがあります。ひとつは「1・ワンポイントステレオ録音」。オーケストラの前(指揮者の位置あたり)もしくは頭上にステレオマイクを仕掛け、録音する方法です。最も「会場で聞く生演奏」に近い集音方式になります。これで捉える音は「全体の音」ですから、各楽器の細かな音はなかなか拾えませんし、後でバランスを調整することもできません。

次は「2・マルチマイク録音」。楽器ごと、もしくはパート、セクションごとにマイクを置き、それぞれを狙って集音します。これだと各楽器が明瞭になり、細部が聞こえるものになります。ただし、ワンポイント録音ではマスキングされてしまうレベルの微細なノイズ(衣擦れ、譜面の捲り、足音や楽器の発する音、ブレス)まで拾ってしまうというデメリットもあります。さらに、オーケストラ全体が発する「響き」が得られぬゆえ、「オケ全体」が醸し出す一体感に欠けることもありがちです。

そこで「3・マルチマイク+アンビエンスマイク」です。それぞれにマイクを立てて狙ったうえで、全体を狙う「響き集音用」のマイクも立てます。あとはそれらをどうブレンドするかが、録音技術者のセンスになってくるわけです。録音する側についても、ステレオで一発録りするのか、マルチトラック(各楽器がセパレートになっている)で録音して後でバランスを調整するのかで分かれてきます。

ドラクエ音楽のCDにおいては、東弦はホール(電子楽器のある曲は一部スタジオ)、N響とロンフィルのほとんどはスタジオ、都響はホール録音をしています。集音方法はおおむね「マルチマイク+アンビエンスマイク」ですが、N響の一部ではアンビエンスマイクが立っていません。興味のある方はこれらをふまえて、各楽団の演奏を比較してみてはいかがでしょうか。
07 竜王
KING DRAGON
「ドラクエI」のラスボスである、変身後の竜王との戦闘音楽です。ラスボスは一度以上姿を変えるというRPGの伝統も、すでにここに始まっていました。ボス音楽は通常戦闘よりもさらに激しく、という傾向がありますが、実は「ドラクエI」においてはそうでもありません。むしろ、シンプルでありながらも低音を中心とした「刻み」による威圧感・緊迫感が重視されており、通常戦とは異なる音楽の初めて流れる戦闘となるわけで、インパクトは絶大でした。

今回も「ドラ、ゴ〜ン」は健在です。というより、アレンジ全体がロンドンフィルバージョンに倣っています。が、パーカッションや打楽器がかなりクリアに前へと出てきているぶん、インパクトが増した感はあります。また、都響盤では金管がかなりブリブリと、割れる一歩手前のような攻撃的な音になっており、威圧感が増強されました。1分1秒あたりのブラスを、ロンドンフィルのものと比較してみるとよくわかります。その直後にくるシンバル+ドラも強烈!力まかせに引っ叩いている、そんな熱が伝わってくるようです。

また、ロンフィルの演奏は前半から後半にかけてかなりはっきりと強弱が付けられており、序盤はうっすらと、かすかな音量で静かに不安を煽りながら、中盤以降で一気に盛り上がっていました。対してこの都響の演奏はわりと序盤から飛ばしてる感じで、前半・後半でのメリハリの付け方はロンフィルほどではありません。どちらが良いかはお好みで……。

1分12秒や1分29秒で聞ける、うねるような「パオーン」というブラスは、竜王の咆哮を表しています。
08 フィナーレ
FINALE
圧倒的な達成感のある、プレイヤーを賞賛するエンディング曲。世界には平和が訪れた……そして新たな旅に出る勇者。そんなあなたを、ロンドンフィルが最高の演奏で送り出します。そしてそれは、以後のドラクエシリーズへと続く、壮大なオープニングでもあるのです。そんなことを考えながら時間を経て聴けば聴くほど、「フィナーレ」と「序曲」が表裏一体のように思えてきますね。頭のファンファーレから主題へと流れる構成、フレーズなど、だんだん「序曲」を発展させた曲に聞こえてきてしまうのは筆者だけでしょうか?

ロンドンフィルバージョンの時点で、東弦からはるかに増したパートによって奏でられる厚みのある演奏はまさしく圧巻のひとこと!という感じでしたが、この都響盤のドアタマのインパクトは凄まじい!集音・録音・マスタリングも無縁ではないでしょうが、パーンとスピーカーの前に飛び出してくる迫力は特筆ものです。都響の楽団員にしてもすぎやま先生にしてもN響やロンフィルという前例があるわけですから、当然それを超えてやる!という気迫もあったのでしょうが、日本発のゲームの音楽を日本のオーケストラが演奏するんだ!集大成にするんだ!という意識が伝わってくる名演奏。優劣をつけるつもりはないと言いながら、イチ押ししたい気持ちになりますね。
ME集
09 宿屋(I) ここからは、「ドラクエ」シリーズではおなじみのものから、特定の作品で1度しか流れないものまで網羅した「ME(ミュージックエフェクト)集」です。「ドラクエI」の楽曲だけではアルバムとしてのボリュームに欠けることから、ファンの間では発売前より、何らかのボーナストラックが入るであろうことが噂されてきました。すぎやま先生が出した回答は、おなじみのME集だったというわけ。思えばこれらも立派にすぎやま氏の手による「ドラクエ音楽」ですから、氏にとってもファンにとっても、いつかオーケストラ演奏となることは悲願だったのかもしれません。

「VIII」まですべてプレイした人であればあるほど、宿屋と言えば21トラック目を思い出すはずですが、実は「I」の宿屋は違っていたんだよ、というこのME。ああ〜、そういえば!という感じですね。フルートによる演奏になってます。
10 勝利 戦闘が終わった瞬間に鳴らされるこの音も、実はすぎやま先生による「音楽」扱い。効果音だと思っていた人も少なくないのでは。演奏している楽器はクラリネット。
11 レベル・アップ 言うまでもなく、レベルが上がる時のMEです。既にイメージが定着している、トランペットによる音を再現しています。基本的には自分や仲間のレベルが上がる「嬉しい音」ですが、「IX」では敵のレベル上げという予期せぬ作業をやらされることになりましたね……。敵のレベルが上がる時にもしっかりこの音が鳴ってくれます。
12 重要アイテム発見 スーファミ版「I」から、重要なアイテムを入手した際に使われるようになったMEです。以後、シリーズおなじみのものとなりました。木管+鉄琴という組み合わせで、キラキラ感を出しています。
13 まだ「レクイエム」系の全滅曲がなかった「I」では、戦闘で全滅したときにこのMEが流されていました。全滅してもゲームオーバーではなく、ラダトーム城に戻って王様に怒られつつの再開となります(罰として所持金が半分に)。そのため、この「死」→「ラダトーム城」という音楽的な流れが耳にこびりついている人も少なくないでしょう。MEとしては「VIII」で復活して、ちょっと懐かしくなったりもしましたね(「VIII」での曲名は「全滅」)。

ゲーム音源ではオルガンのイメージだったのですが、木管になってしまいましたね。58トラック目「フィーバー」をシンセサイザー音源にするなら、このテの曲はオルガンにしちゃっても良かったのではないでしょうか?まさかコンサートでやるつもりで、オケ楽器にこだわったとか?
14 ぎゃーっ、ヤメテー!というトラウマME。本来はゲーム中で、呪われた武具を装備してしまった際に突然鳴らされる「ショッキングME」なのですが、そうは言ってもゲーム中で呪われたからってショックを受ける人は少数派でしょう。これはやはり「セーブデータが消えた音」というイメージの方が強いのでは。電源投入、そして「ぼうけんのしょはきえてしまいました」という突き放したメッセージとともに流されるこのME……。そこにこのMEを当てようと言い出したのは誰なのか?!

ピアノで奏でられておりますが、古典的・元来的な意実ではピアノって、オーケストラ楽器ではないんですよね……。「必要があれば、加えられることもある」ぐらいのもので。オーケストラが生まれた頃にはピアノは組み入れられていなかったわけで、専門的には普通のオーケストラとピアノのあるオーケストラは別のもの、と考えられていたりもします。呪いにピアノを使うんだったら、「死」がオルガンでもいいじゃん……しつこい?
15 教会(治療) 魔法を覚えてしまうと、教会での治療ってめったにしなくなってしまうんですが、なけりゃないでやっぱり困りますよね。これは「いきかえらせる」や「どくのちりょう」「のろいをとく」などで流れるMEです。大多数のイメージはこれもオルガンだと思いますが、弦楽で奏でられています。テンポはかなり速いです。
16 ねむりの笛
(フェアリ・フルート)
これはもう曲名そのもの、フルートで演奏されています。「I」におけるゲーム中での名称は「妖精の笛」。メルキドの入り口にいるゴーレムに挑む際、これで眠らせると確実に倒せるというものでした。頑張ってレベル上げをしておけば、眠らせなくても倒せるんですけどね。ここでの演奏はだいぶゆっくりとしたものになっています。
17 ローラの愛 「I」の沼地の洞窟でドラゴンと戦い、囚われのローラ姫を救い出した際のイベントで流れるMEです。「連れて帰って下さりますのね?」「はい/いいえ」で、とりあえず「いいえ」を選んでみるのはお約束ですね。「そんなひどい……」と問答はループし、いずれにしても最終的には「はい」を選ばないとお話は進みません。ローラ姫をお姫さまだっこすると「うれしゅうございます……ぽっ…」。それとともにこのMEが流れるのです。ここでは弦と木管で奏でられています。情感豊かな演奏です。
18 虹の杖
(レインボー・ハープ)
「レインボー・ハープ」の名の通り、ハープによる演奏となっています。はっきり言って、どこで流れたか忘れてしまいました……。雨雲の杖と太陽の石を持って、聖なるほこらで「にじのしずく」を手に入れるところでしたっけ?
19 虹のかけ橋
(銀の竪琴)
「I」での終盤。虹のしずくを使い、いよいよ竜王の居城がある島へと橋をかける!ポロロロポロロロ……ポロリロリン。ということで、ハープで奏でられるMEです。今回めでたく本当のハープになりました。
20 出た! 1 あれ?このME集、基本的には「I」〜「VIII」がほぼ作品順に並んでいるはずなのですが、なぜこの位置にこれが?「VI」の「悪のモチーフ」とよく似ているんですが、CDでの位置としては「I」ですよね。出てきましたっけ?

というわけで、ゲームボーイ版「I」で追加されているんです(FC版、SFC版では出てきません)。エンカウント時に、それまで(FC、SFC)はすぐ戦闘の音楽が流れたのですが、ゲームボーイ版ではまずこのMEを鳴らし、続けて戦闘曲が流れるようになっています。これは「モンスターズ」からのフィードバックのようですが、「モンスターズ」はよく知らないので……。音楽自体は「VI」の方が先なので、「"VI"のMEを"モンスターズ"に流用→それをGB版"I・II"にフィードバック」ということになりそうです。GB版「I」のこのMEは、「モンスターズ」における通常戦闘エンカウントMEです。
21 宿屋 「II」からは宿屋宿泊時のMEがこちらになり、以後シリーズを通して使われ続けていきます。宿屋だけでなく、「そして夜が明けた」などの演出時に挿入されることも。ここではフルートの演奏です。
22 仲間(出会い) ピアノと弦で奏でる、仲間参加ME。短いのにかなりグッとくる、グーな演奏ですね。パーティ制が採り入れられた「II」で初出となり、以後シリーズで新たな仲間が加わったときに流される定番のMEになりました。PS2版「V」のBGMはN響のオーケストラバージョンが使われていましたが、当時オケ録音のされていなかった、こういったMEはシンセでした。ということは、今ならMEまですべてオケのリメイクも可能ということですね。いや、「X」とかでやってくれんかな。
23 福引のあたり これは競馬のファンファーレ?!という、トランペットのMEです。すぎやま先生ならではという珠玉のナンバーですね。「II」にあった福引きで、大当たりが出たときに流れるもの。結局当たらず、このMEを聴かないままゲームを終えた人もいるでしょうね。

なお、このMEはスーパーファミコン版にも継承されていますが、ゲームボーイ版ではなくなっています。GB版で福引きが大当たりした際は、後のシリーズで共通して使用されるカジノ系当たりMEが鳴らされます。
24 出た! 2 これも「VI」の「悪のモチーフ」派生。ゲームボーイ版「II」に追加されたMEです。GB版「I」同様、エンカウント時において戦闘曲の直前に鳴らされるものです。というかこのトラック、ファミコン版が懐かしくて(かつリメイクはプレイしてなくて)CDを購入したオールドファンを混乱させますね。ブックレットに初出その他を明記してほしかったなあ。というか、ネットを見てもMEについて初出や使用例をまとめたページって、意外にないんですよ。

「出た! 1」がトランペット演奏だったのに対し、こちらはフルートになっています。「モンスターズ」ではボスモンスターMEになっています。
25 やまびこの笛 「II」において、重要フィーチャー「紋章」のある場所で吹くとやまびこが還ってくるという、「山彦の笛」使用時の音色。ここで演奏されているのは「山彦あり(=そこに紋章あり)」のパターンで、紋章がない場所で吹くと冒頭の「チャーラーリーラー」だけになります。山彦の笛はイラスト的にはオカリナのような形をしているのですが、ここでの演奏はフルートです。
26 ルビスの守り(ほこら) 「II」で、紋章をすべて集めて精霊のほこらに行くとキーアイテム「ルビスの守り」が入手できます。そこで流れるMEです。冒頭のタッチ音はビブラフォン、後半はもちろんストリングスです。
27 セーブ(冒険の書) 教会でセーブするとこちらのMEが流れます。パスワード(ふっかつのじゅもん)式であったファミコン版「I」「II」では流れません。また、バックアップバッテリーとなったものの、ファミコン版「III」でも流れてません(「確かに記録した」というメッセージがすぐに出ます)。リメイクのスーパーファミコン版「I」「II」は当然バックアップバッテリーですが、ファミコンのテイストを意識したのか、やはり使われていません(SFC版「III」では流れます)。

このMEが初めて登場したのはファミコン版「IV」からになります。以後、シリーズを通しておなじみのMEとなりました。CDでこの位置(「III」のあたり)に入れられているのは、スーパーファミコン版「III」に組み込まれているからですね。

ゲーム音ではやはりオルガンのイメージなのですが、ここでの都響の演奏はなんともふくよかなホルン(+トロンボーン)に。個人的にはかな〜り違和感があります。
28 当たり 初出はファミコン版「IV」ですが、スーパーファミコン版「III」にも使われているためこの位置に入れられている、カジノやすごろく系アミューズメント施設で主に使われる「当たり」ME。当たりのデカさに応じて、以下の「中当たり」「大当たり」が使い分けられています。ピアノ、鉄琴、マリンバで奏でられています。これはイメージ通りですね。
29 中当たり 金管・木管でブ厚く奏でられる「中当たり」。ティンパニまでデンドンデンドンと入れられており、ここまで派手な曲だったのか!という圧巻の演奏になっております。
30 大当たり 当然のことながら「中当たり」のさらに上をいく、盛大なる大ファンファーレ。弦やハープも加わってのまさしくフルオケ演奏で、コーダなんかはゲームのエンディングのような雰囲気でシメています。
31 呪われしローレライの岩 このあたりは「III」独自のMEになります。オリビアの岬を船で通ろうとした時に、呪いで戻される際に鳴らされるMEです。このMEが鳴っている間に「あいのおもいで」を使えば……!都響演奏はオーボエとクラリネットの木管によるもの。スーファミ版は鍵盤楽器か鉄琴もしくはハープ、という感じでしたねえ。
32 呪いがとけた オリビアの岬で押し戻されている途中に、「あいのおもいで」を使うと流れるME。スーファミ版ゲーム音源のイメージそのままにハープと弦から成る、いかにもハッピーエンド系のMEです。
33 愛の思い出 「あいのおもいで」を使った後にエリックとオリビアの幻影が現れ、ともに天空へと消えていく際に流れるME。しっかり「呪われしローレライの岩」のアレンジ(というか移調)になっているところはさすが。スーファミ音源はボーカリーズでしたが、都響演奏ではハープとフルートで暖かい雰囲気を醸し出しています。
34 酒場でブギウギ これはMEというか完全に楽曲ですが、スーパーファミコン版「III」で新規に追加されたもの。「VIII」にも流用されていたりしますが、どちらの都響盤交響組曲からも漏れてしまったので、ここに収録されました。もっともこれを組曲に組み入れるのは無理がありますが……。ピアノによる弾むような演奏がイメージにピッタリきています。
35 6つのオーブ1 レイアムランドのほこらで6つのオーブすべてを捧げた時に鳴るME。スーファミ音源ではボーカリーズとハープでいかにも神秘的な感じでしたが、オケで演奏すると弦楽+ハープになりました。
36 6つのオーブ2 卵からラーミアが孵るイベントで鳴るME。「おおぞらをとぶ」のモチーフが組み込まれています。ハープとオーボエですね。
37 アレフガルドに朝が ゾーマを倒した後、魔王の爪跡(ラダトーム北の洞窟)から地上へ脱出した際に流れるMEです。すぎやま氏は短いMEについても決して手を抜かず、一級品の仕事をしてくれますね。ゲーム音源を忠実に再現した、ハープのソロとなっております。
38 モンスター・ハープ 「III」で「ぎんのたてごと」を使った時に流れるもの。魔物をおびき寄せる不穏な旋律、なのでしょうか。担当楽器はもちろんハープ以外にはあり得ません。
39 ねむりの村 「III」の「村」アレンジで、静寂に支配されたノアニールの村で流れるものです。スーパーファミコンでは風のようなSEとともに残響でめいっぱい広げられたエフェクティブな音作りがなされていましたが、ここではしっとりとしたフルートソロになっています。
40 目覚め(ミラクル) そのノアニールの村で、「めざめのこな」を撒くと鳴らされるMEがこちら。その後、人々が目を覚まします。ストリングスを従えたフルートによる演奏です。
41 あやかしの笛 ここからは「IV」独自のMEが始まります。まず「あやかしの笛」の名の通り、アイテムとしてあやかしの笛を使った際に奏でられるメロディ。基本的にはフルートですが、コーダだけクラリネットに乗り変わっています。普通の発想ならフルートのみで最後までいききってしまうものですが、楽器が得意とする音域を知り尽くしたうえでのこの構成はさすが。

どうして乗り変わっているのがわかるかって?音を聴いてもわかるのですが、定位が動いているということも理由になります。頭からの旋律はやや左寄りに位置していますが、コーダだけがやや右寄りになっています。ステレオ音場においてオーケストラ楽器の位置は決まっており、クラシック音楽においては通常、楽曲中に同一楽器の位置が動くことはあり得ません。定位が変わるということは、楽器が変わったということなのです。
42 聖なる種火 大灯台で聖なる種火を使った時に流れるハープのME。イントロはビブラフォンです。PS版のゲーム音源は全編ハープでした。
43 パデキアの種が パデキアの種をソレッタの畑に撒き、あっという間にパデキアが育つイベントを埋める、木管楽器のMEです。PS版そのまま、という感じの演奏になっています。
44 病気回復 パデキアをミントスに持ち帰り、クリフトが回復するところで鳴るME。こちらもイメージはPS版音源そのまま、木管による演奏です。
45 エンディング第一章 ライアンのテーマとも言える、「戦士はひとり征く」のモチーフを使った第一章終了時のME。ファミコン版と比べて、ずいぶんと壮大なアレンジに生まれ変わりました。PS版をそのままフルオケ演奏したような、壮大な演奏になっています。
46 エンディング第ニ章 第二章の終わりに流れる短いME。もちろん「おてんば姫の行進」のモチーフです。PSではトランペットが前に出ていたのですが、都響演奏では木管の方が主体になりました。
47 エンディング第三章 ゴリゴリのコントラバスで奏でられる、第三章終了時のMEです。言うまでもなく「武器商人トルネコ」のモチーフを利用したもの。イメージ通りです。というか、これはもう変えようがありません。コントラバスはもう、トルネコというキャラクターそのものを象徴する楽器と言えます。
48 エンディング第四章 第四章の終わりに流れる短いME。もちろん「ジプシーの旅」のモチーフです。PS版音源同様の切なげな弦によるアレンジですが、なんかアタマにノイズがありませんか?2秒あたりの左側に「チッ」て。短い曲なんだから録り直してほしかったですね。もしや現場でのチェックはまったくしていない?

なお、ここまでの「IV」関係のMEはすべてファミコン時代から存在していたものであり、PS版で追加されたものではありません。
49 悪のモチーフ(V) ここからは「V」ですね。すべてスーファミ版の頃からあり、PS2版にも継承されています。まずはゲーム中で何度か耳にすることのできる、短いショッキングMEから。これが「V」における「悪のモチーフ」であると、このCDで初めて知りました。アルカパで聞けるレヌール城のこわーいお話、または雪の女王登場時、はたまたジージョ誘拐時などに使われたのですが、このモチーフがなんとラスボス音楽「大魔王」に!ラスボスの存在が希薄な段階からの伏線なので仕掛けとしてはハッキリ言ってスベってるのですが、それを徹底的に行ったのが次回作の「VI」になります。

決して厚くはない金管でサラっと演奏していますが、ゲームにおけるイメージ通りで、さらに禍々しさも出ています。上手いですね。
50 光の落下(花が咲いた) ハープソロの長めなME。プサンが瞑想してオーブの行方を追うイベントで流れたのは覚えているんですが、CDでの収録位置から考えると他にも流れていたかも?
51 妖精のホルン 妖精のホルンを使用し、妖精の城を出現させる際のMEです。まさしくホルンが使われております。
52 春風のフルート こちらももちろんフルートによる演奏。妖精の世界に春が訪れます。けっこう長めのMEですね。
53 スライム・レース 交響組曲に収録するわけにはいかない(笑)楽曲で、ここに収録されました。「V」戦闘曲のセルフパロディですが、この曲にのせて愛嬌たっぷりに駆けていくスライムのかわいいこと。力の抜けたラッパがなんともいえません。ロンドンフィルは演奏してくれなさそうです(笑)。
54 悪のモチーフ(VI) ここからは「VI」です。現時点ではオリジナルのスーファミ版しかありませんが、DSリメイクにもこれらのMEはまず間違いなく継承されるはずです。特にこの「悪のモチーフ(VI)」は、ほとんど作品のメインテーマと言ってしまえるほどに徹底した使われ方をしています。トランペット、トロンボーンによるこの演奏、PS2とかでリメイクして使ってほしかったですね。
55 奇蹟のオカリナ 「オカリナ」ですけどオーケストラ楽器にそれはないので、フルートで代用しています。ミレーユが吹くオカリナのメロディです。
56 ミステリー・ハープ もちろんこれはハープで。ゲーム内でのアイテム名は「マーメイドハープ」でした。あわあわ船で海に潜る時のハープです。
57 ロール登場 こ、こんなものまで!いわゆるドラムロール+オケヒットです。ゲームにおいてはベストドレッサーコンテストでの審査結果発表のアオリに流れます。「優勝は……」のタイミングで「ジャン!」ですね。テレビとかで使われそう。
58 フィーバー 「VI」のカジノのスロットで流れる愉快なMEで、カジノBGM「ハッピーハミング」同様に「VI」の街曲アレンジになっています。ゲームにおいてもあえてファミコン風というか「ゲームの音」っぽい音色にしてありましたが、今回もシンセサイザー演奏によってそれを再現。「オケ演奏によるME」にこだわりはなかったのか……。というよりもむしろ、フィーバーにおいてはこの音色にこそこだわりがあるんでしょうね。
59 ワシの歌を聴け ここからは「VIII」です。あれ?「VII」は独自のMEなかったんだっけ。プレイ時間がやたらに長いのでMEもたくさんありそうなものですが、既存のもので足りたということですね。

ゲームではドン・モグーラの「ワシの歌を聞きたいモグか?」という問いに「はい」と答えると流れるME。そもそもこれの元になっているのが「呪い」のMEだと思われます。ゲーム音源版はあからさまに「呪い」だったのですが、オケ演奏はちょっと違っちゃいましたね。
60 もぐらのリサイタル モグラのアジトで、ドン・モグーラが子分たちに無理矢理ヘタクソな歌を聞かせているイベントにて使われているMEです。
61 リンリン1.2.3.4.5. グロッケンシュピュールとチェレスタといった鉄琴によって演奏される、「VIII」のモンスター「リンリン」が戦闘中に発するME。ベルのような外見のモンスターで、音色のイメージはまさしくこういう感じです。5種類が続けて演奏されており、すべてシリーズ定番のMEが元ネタになってます。レベルアップ、宿屋、呪い、仲間、死の順番です。「仲間」はちょっとわかりにくい?
62 魔物出現 「VIII」におけるショッキングブリッジ。「忍び寄る影」のイントロと同じモチーフを、単独で抜き出したものです。曲名通り、魔物が出現するイベントで使われています。ゲームではブラス音色でしたが、オケでは威圧感よりも恐怖感を強調したストリングスアレンジになっています。

「ドラクエI」を聴き比べてみませんか?
原点・東弦盤 ロンフィル盤 都響盤

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