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実際のMIDIのデータ。 |
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さてさて、打ち込み音楽に必要なものをざっと見てきたところで、「MIDIを打ち込むとはどういうものか」についても触れておきましょう。まずは「MIDIってどんなデータ?」というところからです。MIDIの規格に含まれるデータについては、おおまかに分けて2つあります。ひとつは、シーケンスデータ。実際の音楽を構成する楽譜(スコア)のようなものと考えて下さい。キーボードを弾いたり、数値を入力することで打ち込んでいきます。
もうひとつはコントロールデータ。「このトラックはピアノの音だよ」「このトラックのボリュームはいくつだよ」「ここで効果がかかるよ」など、演奏データに付随する各種のデータのことです。打ち込みというのは、このふたつをデータとして記録していく作業です。
実はMIDI音源というのは、おおもとの規格の中にさらに音色に関する規格があります。有名なのはGM(ジェネラル・ミディ)ですね。この規格では001〜128までの音があり、それぞれ「何番が何の楽器の音か」が決められています。これのおかげで、MIDIを作成した人がGMに準拠して作っていれば、聴く方でもGMに対応することで、作った人の意図した楽器の音で聞くことができるのです(逆にこの約束を守らないと、メチャクチャな音になります)。さらにGMをより発展させたものとして、ヤマハのXG、ローランドのGSなどがあります。
つまり「MIDIの打ち込み」とは、「音符」、「それを演奏する際の音量や強弱などの表情」、「それをどの楽器の音で鳴らすか」ということについてデータを作っていく作業のことになります。
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MIDI機器の性能について。 |
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機械であるからにはいろいろとあるわけです。代表的、かつ初歩的なものを紹介しましよう。
まずは「パート数」。これはそのMIDI楽器がいくつのパートを同時再生できるか、ということ。MIDIの規格として、ひとつのMIDI端子で送受信できるのは16チャンネルまでです。初歩的なMIDI機器でも、16トラックを使ったアンサンブルを演奏できるということ。つまり、1トラックはピアノ、2トラックはギター、…9トラックがベースで10トラックがドラムという、さながらバンド演奏かオーケストラか、ということが可能なわけですね。MIDI端子を複数用意することで、32パートなどに増やすこともできます。パソコンベースのシーケンスソフトでは「トラック数=無限」なんていうものも出てきました。ただしそれは内部的なものであり、外部音源を使う場合はトラック数に対応するだけの機材とインターフェイスを準備しなければなりません。
続いて「同時発音数」。ゲーム音楽でも頻繁に聞かれるこの言葉は、その機械で最大いくつの音を同時に出せるか、ということです。「同時発音数32」ならば、最大で32個までの楽器音を同時に鳴らせる、ということになります。勘違いしやすいのは、「そもそもMIDIのパート数が16なのに、32パートも必要なの?」ということですが、違うのです。たとえば、ひとつの楽器音で同時に「ドミソ」と和音をおさえた場合、もうこれだけで3音になってしまうのですよ……。小節のアタマで16パートすべての楽器がそれをやったらどうなります?3×16で……、いとも簡単に最大32音を超えますね。こうなると、一部の楽器音が欠けたりもたついたりします。ゲーム機で言えば、発音数ギリギリの楽曲が鳴っているところにさらに効果音が鳴り、曲の一部が欠けてしまう、というような現象です。ファミコンやスーファミではよくありましたよね。
それを回避するためには、同時発音数を常に考えてアレンジしていかなければならないわけです。どうしてもムリなら、物量作戦。機械的に音源を増やし、パートを分散させます。発音数32のシンセではギリギリだった曲も、もうひとつシンセを増やしてやれば余裕を持って鳴らせます。これは、たとえばスーファミではギリギリだった曲が、プレステになることで発音数が倍以上に増え、さらにゴージャスになったよ、みたいなものと言えます。
ちょっと前までは初歩的なシンセサイザーだと同時発音数は32音が主流でしたが、最近ではほとんどが64から128以上のようです。ちなみに大昔のアナログシンセサイザーだと、最大同時発音数は「1」。つまり、パートの数だけシンセが必要だったわけです。それから考えるとすごい進歩ですよね。さらにちなみに、人間の声の同時発音数も、もちろん1です。
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プラスアルファをしていこう! |
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MIDI機器やシンセサイザーだけでは、いわゆる現実音の「録音」ができません。たとえば自分でギターを弾いたり、歌を歌ったり。打ち込んだ曲にそういったものを加えていきたくなったら、いろいろとシステムを追加しなければなりませんよね。シーケンスソフトにハードディスクレコーディング機能を付加したものとか、単体のマルチトラックレコーダーとか、マイクとか、MIDI音源と録音素材を混ぜるためのミキサーとか……。パソコンでハードディスクレコーディングをするのであれば、それなりの性能のパソコンも必要です。もしかするとパソコンそのものを買い換えないとソフトがまともに動作すらしないかも……。外部の独立したシステムならば、機械さえ手に入れれば繋げるだけで使えます。さあ、どっちがいいのかな……。
パソコンを使ったシステムは、ソフトの性能が上がっていくにつれ、パソコン本体の買い替えも発生してきます。一方の独立したシステムならば、新しい機械を買い足すだけで、今までの環境も一切の変更なく継続して使えます。ただし、パソコン用のソフトは(プロ用でもなければ)それなりに安価ですが、同じことを外部のハードウェアで賄おうとすると、ケタの違う出費が必要になることも(音源やらエフェクターやら……)。それに機械は場所も取ります。まさに、一長一短。よ〜く考えて決めましょう。
ちなみに話題の「初音ミク」なんてのは、「人間の歌声」に特化した音源+シーケンスソフト。歌詞を入力してそれに音程を設定することで、バーチャルボーカルとなるのです。ただし、リアルに聞かせるためには強弱やビブラートなどをこまか〜くエディットしなければなりませんが。単純に打ち込んだだけではやっぱり機械っぽくなっちゃうのです。
「初音ミク」や「鏡音リン・レン」は、「ボーカロイド2」というソフトウェア。その前身にあたるのが「ボーカロイド」で、女声の「MEIKO」や男声の「KAITO」、外人「ミリアム」などがありました。「ボーカロイド」と「ボーカロイド2」にデータ的な互換性はありませんが、両者を同時にインストールすることは可能。また、VSTに対応したDAWソフトウェアからVSTプラグインとしても呼び出して使うことができます、ってまた難しい話を!
こうやっていろいろ見たり読んだりしてくると、「音楽作るのってお金がかかるんだなあ」と思われるかもしれません。初心者向けソフトや機材は比較的安価ですが、プロも使うようなものになると十数万円単位のお金がポンポン出ていきます。それは事実ですし、プロ用のものが高いのにはそれなりの理由があるのですが(できることやクオリティの面です)、それがなければ音楽が作れないというわけではありません。すべては「作ってみたい!」という情熱から始まります。安価なパソコンにフリーウェアのシーケンスソフトだけでも音楽は作り始められるのです。まず、とにかく始める。それで面白くなってきたら、どういう方向に進むかは自分しだい。プロを目指すもよし、趣味の範囲でちょこっとだけお金をかけるのもよし、ラフに作り続けるもよしです。
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ここはゲーム音楽からMIDIを知って興味を持った人のために、きわめて初歩的なことしか説明していません。もっと詳しく知りたいという人は、それこそネットサーフィンです!インターネットにはMIDIに詳しい人が作ったサイトがたくさんありますよ!それこそ入門から、上級者のためのノウハウを掲載したサイトまで、いろいろです。ぜひ、探してみて下さい。そして、アナタもお気に入りのゲーム音楽を、自分流のアレンジで打ち込みしてみませんか? |
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