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ファイナルファンタジーX-2
INTERNATIONAL+LAST MISSION Original Soundtrack
ジャケット画像  最近のゲーム業界の風潮として「海外版の逆輸入」があるが、そもそもスクウェア(現・スクウェアエニックス)が「FFVII」において「インターナショナル」を発売したのがハシリではなかったか。以後「FFX」や「キングダムハーツ」などがその例に倣い、追加要素を盛り込んでの「インターナショナル版」をリリースし、そこそこの売れ行きを見せた。本作「ファイナルファンタジーX-2」も御多分に漏れず、ユーザーの予想通りに「インターナショナル」を発売。このCDは、インターナショナル版で新規に追加となった楽曲のみを収めたサントラである。

AVEX(コピーコントロールCD)
AVCD-17388  
2004年
JASRAC表記:
あり
ゲーム紹介

 2003年3月17日に発売された、「FFX-2」。シリーズ初の単独ナンバリングにおける続編であり、当初は「FFX」のマップやモンスターを使い回したお手軽な続編との予想もなされたが、実際にプレイしてみれば、胸をはって完全新作と言える作り込みがなされ、「X」の世界観や雰囲気を踏襲しつつもまったく別のゲームとして成立させることに成功していたと言えよう。結果として「X」と同等の200万枚近くを出荷。賛否両論あれど、セールス的にはまっとうな「FF」の一作品としての仲間入りを果たした。

 もちろん、「FF」シリーズは海外でも発売されている。そして、古くは「FFVII」の頃から、スクウェアは海外版を日本語に再翻訳し、「インターナショナル版」として国内市場に放ってきた。その際に、通常版にはなかった追加要素を盛り込むことで、作品にドップリはまったコアユーザーやまだプレイしていないユーザーを相手に、大ヒットとはいかないまでもそれなりの売り上げを確保しているのだ。後に、「FF」シリーズでは前作「X」がインターナショナル版を発売し、「FFファミリー」とも言うべき「キングダムハーツ」も、「FINAL MIX」という名でインターナショナル版を発売している。

 この「インターナショナル商法」とも言うべきビジネスはゲームユーザーの間では賛否両論である。いわく「同じソフトを2度買わせるのか」「追加するぐらいなら最初から入れろ」……メーカーとしては、開発中に心残りだった部分について、海外版で手を入れることは珍しくない。さらに、同じコンテンツを複数のパッケージで使い回して利益を上げることは、今やゲーム業界の風潮でもある。海外版も同様だ。少ない手間である程度の売り上げを見込めるのならばそれに越したことはない・・・・・・正直そんなところだろう。

 2004年2月19日、ユーザーが予想していた通りに「FFX-2」もインターナショナル版を発売。それが本作「インターナショナル+ラストミッション」である。通常、インターナショナル版の追加要素と言えば、通常版には存在しなかったさらなる最強ボスの追加や、武器・アイテムの追加、システムの不具合の修正などがほとんどであった。「X-2」もお手軽な追加要素か……と思いきや、かなり早い時期に本編とは異なる新たなゲームを収録することがアナウンスされていた。それが「ラストミッション」である。本編とはゲームシステムがまったく異なる自動生成ダンジョン探索型RPGだ。さらに、本編にはサブイベント「クリーチャークリエイト」を追加し、こちらも極めようと思ったら果てしなく時間のかかるミニゲームに仕上がっている。クリーチャーを捕獲・育成でき、バトルにも参加させられる。すべてのクリーチャーを集めると、本編とは別のエンディングを見ることができる……。しかもこれは北米版にはなく、純粋な日本市場向けの追加要素なのだ。ここまでしてあれば、反インターナショナル論者も納得せざるを得ない?という、怒涛の追加っぷりなのだ。

 本作がお手軽な海外版の再利用でないことは、音楽の面からも伺い知れる。通常、インターナショナル版においては通常版の楽曲がそのまま使用されるが、本作においては豊富な追加要素のために6曲の新曲を追加。さらに海外版ということもあって、主題歌も英語版を用意している。しかもそれらの新曲を収めた、インターナショナル版のみのサウンドトラックまでリリースされた。それがこのCDというわけだ。楽曲制作は、通常版と同じく松枝賀子氏・江口貴勅氏の学友コンビが担当している。また、通常版の劇伴が追加部分にどのように使い回されているかも興味のある部分だろう。このページでは、CDに新たに収録された曲はもちろんのこと、「ラストミッション」における楽曲の使用についても分析してみたいと思う。

ファイナルファンタジー X-2 インターナショナル + ラストミッション オリジナルサウンドトラック(CCCD)
01 real Emotion (FFX-2 Mix) オープニングムービーで流れるオープニングテーマ。通常版で倖田來未が歌っていたあの曲を、オケはそのままにボーカルを英語バージョンに差し換えたものです。歌うはJade from sweetbox。サントラに収録されているこのトラックはオープニングムービーに使用されているサイズにエディットしたもので、フルサイズについてはsweetboxのアルバムを買ってネ!ということらしいです。

日本語(倖田來未)バージョンとはちょっとした声の上げ下げやブレスのタイミングなど、ボーカルの味付けに違いが見られて面白い。倖田來未本人が歌う英語バージョンとの比較も一興では。

それにしても、当初オープニングはこのようなダンス系ボーカルものとアイドル歌謡のふたつの候補が考えられていたといいますから、もしもアイドル路線が採用されていたら、海外版のオープニングはいったいどうなっていたことやら……それはそれで見てみたかった気も。ちなみにオープニングムービー、通常版とインタ版では数カット微妙に変わってますので、探してみてはいかが?
02 1000 Words(FFX-2 Mix) 上と同じく、英語版の「1000の言葉」。ストーリーレベル4、雷平原でのユウナライブムービーで流れるものです。オケは原曲のまま、やはりボーカルのみがJade from sweetboxによる英語バージョンに差し換わっています。こうしてネイチャーな英語ボーカルが乗ると、もともとこの楽曲が非常にR&B系ボーカルものとして秀逸だということがわかります。このあたりは江口氏の本領発揮というところかな?

問題は歌詞の微妙なニュアンスをどう英語詞に置き換えるかですが、ゲーム中では雷平原でのムービーに、日本語詞そのままの字幕が乗せられています。ライナーノーツに載っている英語詞をざっと見ても、日本語詞に則した英訳が行なわれているようで好印象。「翼に変えて〜」のところが「サスペンディッド・シルバーウィングス〜」になることで、「へー、シルバーだったんだー」という新解釈もあったりしますケド。

面白いのは、英語版でのコーラスの絡み合いではないでしょうか。日本語(倖田來未)版にはなかった多重録音による「ひとり合いの手」によって、本編のムービーまで大幅な変更がなされたのです。ユウナ(もしくはレン)ひとりで歌うことができない「掛け合い」を、ユウナとレンのデュエットという画作りで表現したムービースタッフに拍手!このことでインターナショナル版では、通常版ではやや希薄だったユウナとレンの関係をやや深めに演出することに成功しています。曲先行か画先行かはわかりかねますが、これはインターナショナル版における大きな変更点にもなっています。

ちなみに、こちらもゲーム中のムービーサイズ。フルサイズはsweetboxのアルバムに「日本盤ボーナストラック」として収録してます。
03 風紋 〜3つの軌跡〜 通常版で言うところの「久遠」タイプの、テーマ性を持った楽曲です。切ないピアノのアルペジオに、バグパイプ系の音色とベル、そしてバイオリンソロで哀愁倍増。ときおり挿入されるアタック音も、ドスーンと低音を響かせてイイ感じになっております。「ザナルカンドにて」→「久遠」→「風紋」と続いてきた、「X」シリーズのテーマ完結編と言いますか。個人的にはどこか「ザナルカンドにて」の匂いを感じるのですが、それがきっと気のせいでないことは、ゲーム中で耳にするとわかると思います。

ところが!この曲、どんなに本編を遊んでもいっこうに出てくる気配がないのです。おいおい、もうシナリオ終わっちゃうよ!エンディングだよ?という頃になってもなお、現れないのです。結論を言うと、この曲は本編だけを遊んでいると聴くことはありません。それもそのはず、本編での曲の使いどころは基本的に通常版と同じですから、この曲が使われる可能性があるのはもう追加部分にしかないわけです。

ということで、実はこの曲、本編に関してはサブイベント「クリーチャークリエイト」でのみ使われています。さらに正確に言いますと、クリーチャークリーエイトでのクリーチャーコンプリート率を100%にした時のみ見ることができる、「クリクリエンディング」で使われているのです。しかし、個人的な意見で申し訳無いのですが、「クリクリエンディング」はそこに至る苦労のわりには消化不良なものなので、ちとこの曲が浮いているかな、と。あくまでオマケ的といいますか。

で、この曲の本領はやっぱり「ラストミッション」になるわけです。プレイを開始すると、イベントのたびにかなりの頻度で……っていうかしょっちゅう流れます。テーマの乱用はインパクトの低下を招きませんかねえ?本編での「久遠」よろしく、本作に携わる演出陣の楽曲の使い方(特にテーマ曲の使い方)はイマイチっス。せっかくの良い曲なのになあ……。ちなみに使用箇所についてはページの下の方で触れてますんで、ご参照下さい。
04 ラストミッション No.1 ザ・スリル!「ラストミッション」での、ヤドノキの塔探索BGM・バージョン1。ラストミッションでは探索・バトルで曲が切り替わることがないので、この曲かな〜り長い間に渡って聴くことになります。が、まったく苦痛じゃないし飽きもこない。これがもし、ありがちな不気味&ズンズンのダンジョンBGだったら、かなりツラいと思うんですよね。その点、こういう「進め進め!」的な勢いのある、ブラス中心のスパイ系の楽曲にしたことは正解でしょう。
05 ラストミッション No.2 「ラストミッション」での、ヤドノキの塔探索BGM・バージョン2。バージョン1と同じくブラス音色でまとめつつも、ジャズっぽいテイストだったバージョン1のリズムとは対照的に、焦らすようなテクノ調のリズムにしたことで変化をつけています。忙しく鳴り続けるワウギターも、「X-2」の音楽的な世界観を踏襲しており、統一感を出しています。

なお、「No.1」と「No.2」は探索を中断しない限り、10フロアごとに交互に使用されます。
06 ラストミッション No.3 「No.1」「No.2」とは位置付けの異なる曲で、20F・40F・60Fといったボスのいるフロアで流れる曲です。そのためかここまでの軽快なジャズ調のBGとはうって変わってヘビーな音色でまとめられ、テンポもズンズンとゆったりめ。言ってみれば「バウンサー」のボス(ドゥラガン)戦のよーな雰囲気です。通常フロアとはまるっきり色を変えることによって、このフロアは何かが違う、ということが一目瞭然になるです。
07 クリーチャークリエイト その名の通り、クリーチャークリエイトのメニュー画面で流れる楽曲になります。クリーチャーの育成と登録を繰り返すうち、何度も耳にすることになるでしょう。いろいろな遊びの入ったリズムとホンキートンクっぽいピアノ(江口氏手弾き?)のマッタリ感が、主張しすぎず邪魔をせず、徐々に埋められていくクリーチャー事典を彩ります。よく聴くとベースにウッドベース音色を使用しており、そのため全体的に非常にジャジーな大人の雰囲気に満ちています。なんかゲーム中とはだいぶ違う聞こえ方がするんですが、容量の問題で削られた部分がけっこうあったのかな?

クリクリ内では、既存の楽曲も使用されていますので一応ここでまとめておきましょう。
クリーチャー捕獲→「スフィアハンター」
魔物コロシアムメニュー→「ミッションスタート」
バトルシミュレーターメニュー→「ユリパファイト No.2」
バトルシミュレーターバトル中→「ユリパファイト No.3」
バトル勝利時→「ミッションコンプリート」
バトル敗北時→「ゲームオーバー」
08 フラッシュオーバー クリーチャークリエイトのコロシアム参戦中に、バトルを通して流れる音楽です。これぞ「X-2戦闘音楽!」という感じ炸裂で、ある意味手放しで遊べるコロシアムでもプレイヤーはもうノリノリでしょう。リサイクルみたいなソフトで解体・再構築しまくったようなアップテンポなビートに、刻んだシンセベース……これだけでご飯が3杯イケそうですが、その上に弾むようなシンセのオカズが入ります。さらに、挿入される笛のような音色がどこか和のテイストを感じさせて風変わり。なぜかお祭り士で戦っていると妙にハマります。

途中にブレイクしてサイレントになる場所があり、(2分05秒〜)楽曲に緩急を与えています。このサイレントが、大技が決まったところや試合の開始・終了にタイミング的にハマったりするのですから、面白いものです。

ちなみにコロシアム以外にも少しだけ流用されていまして、クリーチャークリエイトで見ることのできるマキナパンツァーのエピソードでは、マキナが雷平原に集まるシーンでイベントBGとしてこの曲が使われています。同じように、バロングの魔物人生エンディングでも、頭領との戦いを彩っています。この曲が鳴ると無条件に「クリーチャー頑張れ!」という気持ちになってしまいますね。

なお、バトルでこの曲が流れるのは「青年同盟武闘会」まで。召喚獣杯では既存曲から「召喚獣」、魔界の扉・魔界カップ・最強シンラ君カップでは「死闘」、異界カップでは「終焉」がそれぞれ使用されています。
09 1000 Words
  Orchestra Version
インターナショナル版のエンディングにおいてスタッフロール部分で流れる、「1000 Words(1000の言葉)」のオーケストラバージョン。これもオケは日本語版のまま、ボーカルをJade from sweetboxによる英語詞に置き換えたものです。ちなみにこのバージョンの「1000 Words」は、CDではこのサントラにしか収録されていません。

通常版では予定されていたスタッフロールに対して曲が長く、開発からクレームがきたものの、ロールのスピードを調整することで曲の修正はしなかったとのことですが、インターナショナル版は通常版に比べてロールが長いでしょうから、ちょうど良かったのではないでしょうか?もしも通常版で曲を短くしていたら、インターナショナルで苦労させられたかもしれませんね。もしくは超高速スタッフロールとか。
10 君へ。 おや?「Vocal Collection YUNA」に収録されていた、ユウナ(青木麻由子)のボーカル曲がなんでこんなところに?ボーナストラックでしょうか?ゲームに使われていたっけ?

そんなアナタは、ぜひ本編のクリアデータを読み込んだうえで「ラストミッション」をクリアして下さい。エンディングで、「X」から「X-2」をユウナ視点で振り返るスペシャルムービーが流れます。この曲はつまり、そのムービーで流れるものなんですね。ディレクター鳥山氏の選曲とのことですが、画のシンクロもバッチリでグーだと思います。このムービーは、いや、「ラストミッション」のイベントは、「X」「X-2」をプレイしてきたスピラの住人たちにはやっぱり見てほしいもの。「X」ワールドは、ヴェグナガンを倒して終わりではありません。その後のユウナたちの姿も、ぜひ見届けてあげましょう。
関連CD
ジャケット画像 インターナショナル版で使用されている英語版「real Emotion」と「1000 Words」のフルサイズは、こちらのsweetboxのアルバムに収録されております。ただし、「日本盤のみ」のボーナストラックとなっておりまして、出費をケチッて海外盤を購入してしまうと、その2曲が入ってな〜い!なんてことになってしまうのでご注意を。っていうか海外でこの2曲を売る気はないみたいね……。Jadeさんもお仕事で歌ってらっしゃるのかしらん。……えー、もちろん、コピーコントロールCDですのでご了承のほど。

「Adagio」 sweetbox
エイベックス AVCD-17405


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「ラストミッション」使用曲一覧
タイトルバック 「久遠 〜楽団員さんの演奏〜」
導入イベント ユウナ、ルカのスタジアムへ
→「1000の言葉 Piano Version〜時を越えた想い〜」
リュック登場
→「リュックのテーマ」
パイン登場
→「パインのテーマ」
飛空艇でヤドノキへ出発!〜タイトルロゴ
→「お助け屋カモメ団」
ヤドノキの塔に到着
→「久遠 〜楽団員さんの演奏〜」
チュートリアル 「ラストミッション No.1」
探索中 「ラストミッション No.1」or「ラストミッション No.2」
ショップ 「ミヘン街道」
塔の外に出される 「ゲームオーバー」
ボスフロア 「ラストミッション No.3」
ボス撃破時 「ミッションコンプリート」
10Fイベント リュックが大忙しの日々を語る
→「オラたちのデバンだなや」
「つきあい悪いって思った?」から移動まで
→「キーリカ」
20Fイベント 塔について語る
→「久遠 〜楽団員さんの演奏〜」
パインの「やりたいことがあってさ」から
→「ナギ平原」
30Fイベント ユウナの「彼もいるし」から
→「ビサイド」
40Fイベント 冒頭から、パインの「本、書いてるんだ」の前まで
→「1000の言葉 Piano Version〜時を越えた想い〜」
リュックの「思いつかないんだよね」以降、イベント終わりまで
→「風紋 〜3つの軌跡〜」
50Fイベント パインの「私なんだ」から、「ただの思いつき」まで
→「久遠 〜光と波の記憶〜」
60Fイベント パインの独白
→「アカギ隊」
リュックの独白〜ユウナの独白〜ティーダのセリフ前まで
→「風紋 〜3つの軌跡〜」
70Fイベント ユウナの「おんなじだから」から
→「風紋 〜3つの軌跡〜」
80F・対インテルゲル
第一戦・第二戦
「破滅」
80F・対インテルゲル
第三戦
「終焉」
インテルゲル撃破後 頂上進入前まで
→「久遠 〜光と波の記憶〜」
頂上 進入直後から「スカ?」まで
→「オラたちのデバンだなや」
パインの「私には見えるけどな」から、最後まで
→「1000の言葉 Piano Version〜時を越えた想い〜」
スペシャルムービー 「君へ。」

ぜひゲームの方も。 「X-2」サントラも。

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