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ファイナルファンタジーVIII Original Soundtrack
初回版ジャケット

↑初回版パッケージ
(でかい!)。
縦に2枚ずつ、
見開きで計4枚のCDが
収まっている。
ゲーム紹介

 「ファイナルファンタジーVIII」は、「VII」を作り上げた通称『北瀬チーム』がプレイステーション用「FF」第二作目として発表した、スクウェア社の人気RPGシリーズの8作目である。これまで様々な年齢層のキャラクターが登場してきた「FF」のイメージを一新、ほとんどの味方キャラクターをほぼ同年齢の「学園の同級生」とした、斬新な「学園RPG」とでも言うべき作品。さらにシナリオ・イベントによる「これでもか」というほどの恋愛描写は、これまでの「FF」にはなかったタイプの「愛」の表現として話題になった。同時に古くからの「FF」ユーザーの間では賛否両論もあったが……。この「恋愛路線」は、その後の北瀬チームの持ち味となっていく。

 グラフィックは当然のように強化され、ムービー・リアルタイムの別なく常にキャラクターを8頭身で表現し、ユーザーを驚かせた。前作「VII」以上にイベントやムービーによる演出を増やし、いわゆる一本道路線をさらに強化した「ストーリーの押し付け」に拒否反応を示すユーザーは少なくなかったものの、魔法や召喚獣を「ジャンクション」と称して装備するシステム、こちらの成長とともに敵のレベルも上がる緊張感ある戦闘、そしてやり込み要素いっぱいのミニゲームや隠しイベントなど、プレイヤーそれぞれのスタイルでしゃぶり尽くすことが可能な奥深さも併せ持つ。「VII」で3枚組だったソフトもとうとう4枚組となり、「PS最高クオリティのRPG」と評されたことも記憶に新しい。結果、「ドラクエVII」が登場するまでは、PSソフトでの最高売り上げ枚数を記録した。

 音楽面で最も大きいのは、初めて「主題歌」が採用されたことだろう。「VII」の時からテーマ曲を歌にする意見は開発内で出されていたものの、唐突すぎる、シナリオとの関連性が薄いといった理由から、作曲担当の植松伸夫氏はこれを却下してきた。しかし、今作「VIII」ではこの「歌」そのものがシナリオ上で重要な意味を持つため、主題歌の採用となったようである。様々な歌手が候補に上がったようだが、選出は難航。ところがある日、候補となるCDの中にシナリオ担当の野島一成氏が忍び込ませていた「フェイ・ウォン」の歌声にその場にいた誰もが魅了され、満場一致で決定。その後の依頼から録音までは比較的とんとん拍子に進んだと言われている(ただしフェイのスケジュールの都合から、録音は香港で行われた)。そうしてできあがったのがご存知「EYES ON ME」である。
 
 それ以外では「EYES ON ME」との対照で「魔女のモチーフ」が効果的に用いられ、そのふたつのテーマ曲によるイベントの印象付けは、これまでのどの「FF」よりも巧妙な印象がある。また、オープニングやエンディングなどで、フルオーケストラ録音の楽曲も登場。ここぞというところで流れてくるオーケストラの音は、FF音楽ファンに新たな喜びと驚きをもたらした。編曲を担当したのは「リユニオン・トラックス」で見事なまでのオーケストレーションを披露してくれた浜口史郎氏である。この手法は「IX」以降でさらに強化されていく。
 
 サウンドトラックCDは「VII」同様4枚組で発売された。初回版は縦長の特殊ケース仕様となっている。ライナーノーツには植松伸夫氏のインタビューのほか、一問一答方式のQ&Aも載っていてファン必見の内容である。

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ゲーム本編はコチラから。

通常版ジャケット画像

↑通常版パッケージ
デジキューブ
SSCX 10028
1999年(廃盤)
JASRAC表記:
あり
スクウェア・エニックス
SQEX-10005〜8
2004年再発
JASRAC表記:
あり

disc1        disc2        disc3        disc4


disc1

01.Liberi Fatali
・オープニングムービー
今回の「VIII」には、いつもの「FFシリーズ」で言うところの「メインテーマ」と題された曲が存在していません。作品的には「Eyes On Me」がメインテーマなのでしょうが、「FF」におけるいわゆる「メインテーマ」とは意味合いが違うものでしょう。また、一連の「魔女のモチーフ」も、音楽面では本作の大テーマに違いありません。作品の「メインテーマ」を定めず、用途に応じた複数の「テーマ」を使い分けることは、いくつもの要素が投じられ「なんでもあり」をコンセプトとする「FF」シリーズにおいてはまっとうなこと。「そもそも"FF"に"メインテーマ"は必要なのか?」という議論もしばしば目にしますが、キャラクターテーマの廃止や主題歌の採用なども含め、本作「VIII」の音楽コンセプトは「これまでのお約束を踏襲しない」ことだったのではないかという気がします。

メインテーマ不在とは言え、作品の「オープニングテーマ」という意味で言えば、間違いなくこの「Liberi Fatali」がそれでしょう。「FF」のゲーム上では初となる歌詞付きのオーケストラ音楽は、圧倒的な表現力を持ったムービーとあいまってその効果は絶大。ゲームに明るくないライトユーザーを引き込むという点では、「VII」よりも完成された「オープニングらしいオープニング」であると言えます。当時最先端の超美麗CGと荘厳な音楽、意味ありげなモーションタイプ、要所要所で鳴らされる派手な効果音。そこで描かれるスコールVSサイファーの激しいタイマンバトル、何が起こったのかと思わせますが、ゲームが始まってみれば「おめー、あとで体育館のウラ来いやコラ」のレベルだったってのはご愛嬌……。「VII」のオープニングがそのままゲームへの導入になっていたのに対し、「VIII」のオープニングは完結型のミュージッククリップタイプであり、オープニングとしては正統派な形を採っています。

歌詞の原案はシナリオの野島一成氏。ラテン語に翻訳されて歌われていますが、日本にはラテン語の専門家が少なく、この翻訳のために植松氏はインターネットでその道のプロを探しまくったそうです。結局は京都在住の山下太郎氏にメールで翻訳を依頼、植松氏みずから京都を訪れました。そんなこともあってかこの曲は植松氏一番のお気に入りであるようです。オーケストレーションはもちろん浜口史郎氏。歌詞とその意味が知りたければサントラを買いましょう。

植松氏的にはこの「Liberi Fatali」を気に入っていたため、これをメインテーマとしてあちこちで(フィールドも含め)使おうかと考えたこともあったようですが、「Eyes On Me」を作ったらそちらもメイン級の曲になり、どれがメインテーマなのかわからなくなってしまったそうで、だったらいっそ「メインテーマ」という名前は使わないようにしよう、となったとか。「FFVIII」に「メインテーマ」という楽曲は存在しませんが、「"VIII"のテーマ曲は?」との問いには「"Liberi Fatali"と"Eyes On Me"」という答えで間違いないでしょう。

プロモーション的には「Eyes On Me」がクローズアップされることが多いのですが、作品的にはこの「Liberi Fatali」も非常に重要な曲。冒頭から繰り返されるモチーフはまさしく「魔女のテーマ」ですし、53秒からは「SeeDのテーマ」を奏でています。これらふたつのテーマは作品のキーとも言うべき要素を象徴しており、それらが対極(魔女対SeeDの宿命的な闘い)、もしくは表裏一体(SeeDは魔女が作ったもの)となっていることをこの曲は示しているのです。「魔女のテーマ」における「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」という歌詞とメロディ、そして「SeeDのテーマ」は様々な楽曲に散りばめられており、これらをしっかり認識しておくことによってキャラクターの立場、イベントの状況などがより解り易くなるように設計されています。この曲を単に「魔女のテーマ」と括るのは大きな間違いですので注意。「SeeDのテーマ」をしっかり区別しないと、「SeeD(Disc1-7)」や「The Stage is Set(Disc2-10)」まで「魔女のテーマだ」とするような、トンチンカンな勘違いが起こります。

ちなみに、ゲームとはまったく関係ないのですが、2004年のアテネオリンピックで、アメリカの女子シンクロチームがこの曲で演技してました。すげえなあ、アメリカ人に「この曲で演ろう!」と思わせちゃうんですよ?あの人たちはゲームをプレイしたんですかね?
02.Balamb GARDEN
・バラムガーデン内BG
バラムガーデン内でかかる曲。オープニングの荘厳さとは一転、落ち着いた曲調です。ガーデンはあくまで「学校」なわけで、どういう曲がマッチするかはもう雰囲気次第というか……。極端なハナシ、何でもいいんです。何かの音楽が流れていれば、そういうものかと納得できてしまう。ただ、ギャルゲーみたいなのは勘弁してよね……ってことで、この曲は成功していると思いますよ。歴代「FF」の街や村の曲のようでありながら、しっかり若さ(学校だからね)を出しているというか。ピアノ、アコースティックギター、ハープから成る瑞々しいな導入に始まり、ストリングスと木管(フルートなど)の暖かな旋律にホッとさせられます。いろいろとトラブルの多いガーデンでは緊迫感のある曲が流されることも多いのですが、そんな苦境を乗り越えてまたこの曲が流れ始めれば、「なんとか凌いだなあ」という安堵感をより強く感じられるというもの。1周1分39秒と長めになっているのは、ガーデンの広さを考慮してのことでしょうか。

最初にこの曲が流れるのはオープニング後、保健室にいたスコールと彼を迎えに来たキスティスがひとしきり会話をし、渡り廊下にさしかかった時に挿入されるBGムービーのシーン。バラムガーデンの様子と校舎全景が印象的に描かれたムービーに抜群のハマリ具合でした。おおっ、リアルタイムポリゴンキャラがムービーの中を歩いてる!なんていう新鮮な驚きも「VIII」ならではでしたね。ちなみに保健室のシーンは音楽ナシ、鳥のさえずりの効果音だけで和やかかつ爽やかな空気感を作っていました。

この曲のメロディは「ガーデンのテーマ」的意味合いから徐々に「仲間のテーマ」のような意味を持たされ、いくつかの曲に散りばめられていくようになります。仲間の結束、絆のようなものを描くシーンではこのメロディが聞こえるという感じで、ただのBGMと思わせておきながらしっかりと関連付けられているのです。あとはプレイヤーがどこまで気が付くか……積極的に音楽を聴き取ろうとする人でなければ何かを感じることすらないであろう仕掛けです。事実、音楽にまったく興味を持たずにプレイしている人は「Eyes On Me」のメロディにすら気が付かないのですから、「Balamb GARDEN」のアレンジはかなり難度が高いと言えます。そういった発見に喜びを感じるかどうか、それは人それぞれですけどね。
03.Blue Fields
・フィールドマップBG
フィールドマップ音楽。重めのピチカートストリングスに始まり、スティールパンのような音色がメロディを奏で、木管群が脇を固めています。途中からは木管がリードに立ちます。音色的には開発陣が意識してそうしたという「青空・緑・海」に合わせてあるような気もしますが、その曲調はどこまでも重い!ユウウツ!広大なフィールドというロケーションにはマッチしているものの、「途方に暮れる」「前途多難」「路頭に迷う」というイメージがどうしても拭えません。というか、歴代シリーズでも最も思い入れのないフィールド曲ですよ、個人的に。これまでの「FF」ではひたすら爽快、もしくは宿命を感じさせるカッコ良さのある、作品の顔にもなり得る「メインテーマ」が流れていたのに……。どうして「VIII」はそうしなかったの?

植松氏いわく、「VII」まで貫いてきた「フィールドでメインテーマが流れる」という「FF」シリーズの伝統を、「月並みかなあ」と思ったため意図的に崩したとのこと。本作「VIII」でのメインテーマがどの曲なのかはともかく、例えばフィールドで「Eyes On Me」はくどいかもしれませんし、「魔女のモチーフ」も違うでしょう。「Liberi Fatali」も……というわけで、なんとなく漂流感のあるこの曲がフィールドに。幸い、「VIII」ではフィールドを歩いて移動する機会は他の「FF」シリーズに比べると少なくなっており、必然的にこの曲を耳にする頻度もあまり高くはありません。まあこれは各々のプレイスタイルにもよりますけどね。アイテム・魔法集めやモンスター狩りをしたプレイヤーはかなり聴いたはずですし(というか、筆者がそうですし)。なお、徒歩の時のみならず、車や汽車、船やガーデンといった乗り物で移動している際も流れるのはこの曲です。ゆったりしたこの曲はこれら乗り物へのハマり具合は良かったですね。ノロノロしたガーデンにピッタリの気だるさ……。ま、汽車はちょっとスピーディかなぁ……という感じはありましたが。最速で聴くタイミングはゲーム開始直後、SeeD試験を控えたスコールがキスティスとともに炎の洞窟に向かう際。

いや〜、告白しちゃうとですね、筆者、3D酔い体質なんですよ。それもかなり酷い。で、「VIII」のフィールドもけっこうツラかったんですね。3Dなのはいいんですけど、カメラがグルグル回っちゃうのがね……。「VII」は平気だったんですよ、あまり視点がグラつかなかったので。頭身も関係あるのかなあ。「X」みたいにアングルが固定な場合も大丈夫なんですよね。「VIII」って、ちょっとレバーに触れただけで視点が揺れまくるでしょう。「XII」も3Dでしたが、酔わなかった。同じ3Dでも、「酔う3D」「酔わない3D」ってあると思います。何が言いたいのかって?つまりですね、この曲……いまでも単体で聴くだけで、あの気持ち悪さが蘇ってくるんですよ……。こんな理由、楽曲の良し悪しと何の関係もないことはわかっているんですが、それもあってあまり好きな曲じゃないんです……オエっ。
04.Don't be Afraid
・通常戦闘BG
かなりオケ感の強調された戦闘BG。ベース以外はポップス楽器がほとんど入っておらず、ストリングスと金管をメインに緊迫感を強調した仕上がりになっています。ここまでオケ色に寄った通常バトルは、シリーズでも珍しいのではないでしょうか。そのため、オーケストラアレンジにおいても原曲重視で違和感のないものになっています。また、意外と見過ごされることですが、FFの通常戦闘曲としては初めて5/4拍子になりました。さらに、「VII」に続いて「FF」伝統の「バトルイントロ」が使われておりません。このことは「オールドユーザー離れ」にも繋がるものですが、できた曲がこれだけカッコ良いものなら問題ナシ。「VIII」はドローのおかげでこの曲を果てしなく聴くことになるのですが、個人的にはかなり好きな曲なのでまったく苦にならないです。

「VIII」はオールドユーザーから見ると音楽的にもかなり異端らしく、「バトルイントロ」がないことや前述の「フィールドにおけるメインテーマの廃止」、一見すると軟派な「女性ボーカル主題歌の採用」などなど、本作を境にシリーズへの接し方が変わったファンがかなりいましたね。その兆候は「VII」の頃からありましたが。「曲にメロディがなくなった」というのもよく言われていましたね。で、新たなファンが入って「The Man with the Machine Gun(ラグナ編戦闘曲)」に人気が集まったりしましたが、個人的には「Don't be Afraid」の方が好きです。

戦闘曲のイベントへの転用も歴代「FF」ではよく見られましたが、本作でもフィッシャーマンズホライズンにて、ガルバディア兵に乱暴される駅長を助けるべくスコールたちが駆け付けるシーンで、イベントからこの曲が流れてそのまま戦闘へ、という演出が見られました。意外にも他にこういった使い方は見られませんでしたね。わりとイベントはイベント曲、戦闘は戦闘曲と明確に分けられていた印象です。

・この曲が使われる、ザコ戦以外の特殊ケース
ディアボロス、セクレト(名もなき王の墓)、ビッグス&ウェッジ(D地区収容所)、ジャボテンダー(サボテンダーアイランド)、トンベリキング(セントラ遺跡)
05.The Winner
・戦闘勝利時
・FHでのコンサート直前、担当楽器決定時
・カードゲーム勝利時
・チョコボの森でチョコボ捕獲成功時
メインテーマやキャラクターテーマの撤廃、「VII」に続けてのバトルイントロの排除、主題歌の採用など、歴代「FF」音楽作法を踏襲せず新たな試みを採り入れた「VIII」ですが、戦闘に勝ったらおなじみのこのファンフーレ。これは外せません。もしこれも外しちゃってたら、そーとー叩かれたんでしょうね(実際、叩かれたのが「X-2」でした……植松氏じゃないけど)。本作のファンファーレは戦闘曲(「Don't be Afraid」)に合わせてか、オケタッチの強い色合いになっています。前作「VII」がエレクトリックな音でしたから、厚みのあるオケ音色が盛大に鳴り響くのがかえって新鮮。特に頭の立ち上がりの良さはシリーズでも群を抜く出来かと。

ドールで戦うことになるボス・エルヴィオレは序盤の強敵ですが、なんとか撃破するとエルヴィオレ消滅の余韻と長〜い静寂の後、タメにタメてファンファーレが鳴り響きます。この「間」を挟み込むことによる達成感の増幅は効果抜群で、狙ってやってるんだとしたらなかなかニクい演出です。本作では多くのボス戦において、このようにファンファーレが鳴り出すまでの「間」が非常に大切にされているんです。ボス消滅時にはCD-XAでド派手な効果音を鳴らしているわけで、その余韻まで含めての音の演出、お見事。

様々な「やったぜ!」なシーンでファンファーレが使われるのは歴代シリーズでもおなじみのお遊びで、定着しているからこそ効果もあります。本作「VIII」においてもカードゲーム勝利時やチョコボ捕獲時などに使われていますが、コンサートのリハーサルで鳴り響いたのは予想外でビックリしました。あの〜、まだコンサート本番が成功したわけではないのですが……。
06.Find Your Way
・炎の洞窟(イフリートのいるフロアはSEのみ)
・セントラ発掘現場(ラグナ編、エスタ兵と戦闘後)
・名もなき王の墓
・セントラ遺跡
・シュミ族の村入り口、地上部分(エレベーター以降は無音)
言ってみればこの曲が「VIII」の汎用ダンジョンBGという役割かな?けっこう好きな感じの曲です。冷たくてうすら寒い導入、しかし鐘の音色が神秘さも醸し出し、26秒からのピアノは美しくもあるなど、シンプルな構成ながら様々な表情を持っています。汎用BGMというものはこのように、いろいろに受け取れる幅の広さを持たせておくことで、どんな場所に充てられてもハマって聞こえてくるのです。暗くて怖いだけでなく、美しさ、はかなさを備えているのも植松ダンジョン音楽の特色。

最初にこの曲が充てられているのは言うまでもなく、バラムガーデン東の「炎の洞窟」。ただし内部に入る前の外観部分はフィールドから引き続き「Blue Fields」が流れています。ところで、「VIII」っていわゆる「ダンジョン」が少ないんですよね。あってもほとんど分岐もなく一本道で、迷った覚えもないですし。ダンジョンのような性質の場所であっても、ガーデンとか大塩湖とかルナティック・パンドラなどの特殊なロケーションが多く、汎用BGMが使われる機会もあまりありませんでしたね。いろいろな所で聴いていたような気がするのですが、使用箇所は意外や意外、上記の5ヶ所に留まっています。
07.SeeD
・SeeD試験に向かうスコールたちの前にシドが登場、試験概要説明
・上陸艇でドールに向け出航〜艇内でのシュウによる作戦説明
・SeeD試験合格者たちに対する、学園長室でのSeeD認定式
・初任務(ティンバー行き)についてシドから説明を受ける
・「森のフクロウ」メンバーから大統領拉致作戦の説明を受ける
・カーウェイ大佐から魔女暗殺作戦の説明を受ける
・シドにミサイルについて報告し、MD層の説明を受ける
・宇宙ステーションに向けてスコールらの乗るカプセル射出〜エスタにルナティックパンドラが接近
・ルナティックパンドラ接近中のエスタ内BG
・月の涙以後、エスタ内BG
ある意味ではこれも「VIII」の中核を成す楽曲だと言ってよいでしょう。これは主人公が所属する傭兵集団「SeeD」のテーマとでも言うべき楽曲で、イベントBGとしては作品中での使用頻度は最多。主にある作戦についての指令やその説明を受けるシーンなどで、頻繁に流れています。マーチ調の重々しいリズムと、粛々とした木管の旋律が、プレイヤーに課せられたミッションの重要さを感じさせると同時に、それに向かう緊張を高めます。君たちはプロなんだよ遊びじゃないよ、命の危険もあるけど失敗は許されないよ……という感じでしょうか。思わずこちらの気も引き締まります。1分41秒からは鐘の音とディストーションギターがさらに危機感を煽ります。

「Liberi Fatali」のアレンジになっているのがおわかりでしょうか?53秒あたりからを聴けばすぐわかりますね。というか、「Liberi Fatali」が「SeeD」を組み込んでいると言った方が正しいでしょうか。どちらにしても、「なんで魔女を倒すSeeDのテーマが『Liberi Fatali』に入っているの?」という疑問は、そもそもSeeDがどうして、何のために作られたかを考えればなんとなく理解できるはず(ゲームをプレイしていない人は理解できるはずもないですが)。「Liberi Fatali」はそもそも歌詞がSeeDのことを歌っているしね。では、そこで歌われているのは誰の「想い」なのか?と考えれば疑問も解けるでしょう。もっともファーストプレイでそのような疑問を持った人がどれだけいるか……。オープニングで流れる「Liberi Fatali」だけになんの疑問も感じないと言えばそれまでですし。
08.The Landing
・SeeD試験ドール突入時〜広場占拠まで戦闘を通して流れる
・ガルバディアがバラムガーデンへと攻め入るシーン
  〜以後、スコールの艦内放送までバラムガーデン内BG
SeeD最終試験のためドールに向かうスコールたち一行。ドールに水上艇が突入するムービー一連から流れるのがこの曲。体験版でもあったシーンだけに印象が強いですね(流れる楽曲は異なりますが)。ちなみに心臓の鼓動音は個別の効果音ではなく、音楽ファイルに組み込まれている楽曲の一部です。

これも「Liberi Fatali」のモチーフというか、「SeeD」が入っていますよ(1分35秒〜に顕著)。テーマ性を持った映画音楽的な展開に、いやおうなく気分が盛り上がっちゃいます。心拍音は水面に映る月の上を水上艇が進んでいくフカンのカット。管弦が宿命的な旋律を奏でるあたりは、厳しい表情で陸地を見つめるスコール。そして51秒からの、シンセシーケンスを率いての緊迫感溢れる盛り上げはいよいよ上陸というシーンにあたります。以後は51秒からがループします。51秒までの導入部分が流れるのはゲーム中ではただ一度です。ドール以外ではDisc2終盤、ガルバディアがバラムガーデンに乗り込む場面で流れますが、ここでも51秒からを使用しています。

体験版のドールで流れていた曲はこの「The Landing」ではなく、製品版未使用の曲でした。映画「THE ROCK」のためにハンス・ジマーが作曲したスコアによく似ていたためか、体験版をプレイした一部ユーザーの間で「パクリだ」と別の盛り上がりかたをしてしまい、製品版では差し替えられたとウワサされています。それでも特徴的なフレーズは変形に留まっている、と筆者は思いますが。
09.Starting Up
・ドール電波塔始動ムービー
・拉致した大統領と対峙、しかしニセモノであることがわかるシーン
ドール電波塔のムービーでかかるイベント曲。最初は「おっ、レーザー砲発射か?!」とか思ったものですが……。電波規制に関しては何の前フリもなかっただけに、ずいぶんおおゲサな、と。あとになるとわかるんだけどね。

ミョーにおどろおどろしい(それこそオバケでも出そうな)イントロで始まり、メカニカルな音がし始めるとギュイーン、ガチャガチャと動き始める電波塔のギミック。あれよあれよとパラボラが開いて……。まあハッタリですけど、シナリオ的には伏線になるシーンです。音楽もこれといったメロのあるものではなく、完全に雰囲気モノ。この曲じゃなければいけないというほどの存在感はありませんが、何か鳴ってないと寂しいね、という。このシーンは別の見方をすれば、序盤において「VIII」の世界観を「剣と魔法のファンタジーじゃありませんよ、テクノロジーな世界ですよ」と明確に提示しているのです。そのわりに魔女とかいるんですけど。

「森のフクロウ」に協力し、列車入れ換え作戦でまんまと大統領を拉致したリノアたち。さっそく大統領と対面するも彼はニセモノだった……という場面でもこの曲が流れています。ただしここではサントラ収録の完結バージョンではなく、イントロ部分をループさせたものを使用しています。
10.Force Your Way
・中ボス戦BG
中ボス戦BGがこちら。ボスの数が多いので、寄り道をしなくても何度も聴くことになると思います。通常戦闘(「Don't be Afraid」)とは異なり、オルガンやディストーションギターの入ったロックっぽい曲。テイストとしては「VII」の中ボス曲(「更に闘う者達」)に近いかも。「プレステでやっとロックができるぞ、今回もやっちゃる」ということかどうかはわかりませんが、オケ中心にまとめてある通常戦闘との区別をしっかり付けているんですね。一般的なゲームではよく「軽めのロックを通常戦、重めのオケをボス戦に」という使い分けがよく見られますが、逆に特別な戦闘にロックを多用するあたり、植松氏の好みが現れているような気がします。イントロに5/4や6/4といった変拍子を組み込み変化を付けるプログレ的手法も、いかにも「植松FFロック」でいいですね。

本作の中ボスときたら序盤からけっこうな強さで……連打、連打のハイハットに焦らされましたね。ジャンクションをちゃんと理解していないプレイヤーはそうとう苦労したんではないでしょうか。サントラ的にここに収録されているということは当然、ドールでのエルヴィオレ戦をイメージさせた構成になっているわけですが、ゲームでは既に「炎の洞窟」における対イフリート戦で使われています。ということで、当サイトでは毎度おなじみ、戦闘でこの曲が使われているボスを列挙してみましょー。それっ。

イフリート(炎の洞窟)、ビックス&ウェッジ〜エルヴィオレ(ドール電波塔)、グラナルド(訓練施設)、偽大統領〜ナムタル・ウトク(アジト列車)、ブラザーズ(名もなき王の墓)、シュメルケ(ガルバディア大統領官邸内「魔女の間」)、サイファー(ガルバディア)、エリート兵+GIM52A×2(D地区収容所)、コマンドリーダー+コマンド兵×2(ミサイル基地)、BGH251F2(ミサイル基地)、オイルジッパー(MD層)、マスター・ノーグ(バラムガーデンマスタールーム)、BGH251F2(FH)、雷神(バラムホテル前)、風神・雷神(バラムホテル)、ケルベロス(ガルバディアガーデン)、サイファー(ガルバディアガーデン)、アバドン(大塩湖)、プロパゲーター(ラグナロク)、オーディン(セントラ遺跡)、風神・雷神(ルナティックパンドラ)、機動兵器8型BIS+支援兵器L型・R型(ルナティックパンドラ)、サイファー(ルナティックパンドラ)、アデル+リノア(ルナティックパンドラ)、アルティミシアのしもべ(スフィンクス/アンドロ、コキュートス、トライエッジ、ドルメン&アリニュメン、ウルフラマイター、ティアマト、ガルガンチュア、カトブレパス)、オメガウェポン
11.The Loser
・ゲームオーバー時
ここにこの曲が来るのもなんか意味深ですな……。制作陣の思惑としては、エルヴィオレかX-ATM092で一回ぐらい全滅してほしいってことか?このゲームオーバーの曲、前作「VII」同様にプレリュードへと繋がります(24秒〜)。コーラスとベルの音色が鎮魂歌っぽい雰囲気に……。はっきり言ってプレリュードの立場、なんか悪くなったなあ……。「全滅のテーマ」になりつつある……。全滅したことのないプレイヤーは「今回、プレリュードないよね」って。逆に、炎の洞窟に向かう途中でアルケオダイノスとエンカウントしてしまい、わけもわからずゲームオーバーになった人も少なくないでしょう。さらに悪いことに教室でGFを取っておかなかったばっかりに、コマンドが「たたかう」だけだったなんて話も。「VII」から「VIII」への流れで、RPG初心者……いわゆる「ライトユーザー」も多数流入してきた本作において、「ジャンクション」は最初の壁でしたね。
12.Never Look Back
・ドール脱出時
・最初のラグナ編、ガルバディアへ向かう森の中
・D地区収容所警報発動〜スコール救出まで(戦闘中も)
・ガルバディアガーデンに突っ込むバラムガーデン
  〜格闘ミニゲーム〜スコールがリノアを救出するまで
・復興後のドールBG(電波塔方面山間部)
これまでのシリーズで言う「急げ!」的なイベントBGM。「振り返るな!ひたすら前に向かって走れ」ってことですかね。左右で交互に鳴るオケヒットは、焦らしものとしては定番中の定番でベタベタですが、好き。うねり系のシンセベースがよく聴くと2つあったり(LRに割り振られてます)、緊迫感たっぷりのストリングスも効果的。焦らすパーカッションの構成もうまい。表ノリな16分音符のスネア、左右で打ち鳴らすタム、楽曲後半で加わるハイハット、ウッドブロック、トライアングルなどなど、パーカッション類だけでかなりのパート数。さらにそれぞれのパートの抜き差しも絶妙で、旋律的な要素は決して多くないのにもかかわらず展開が凄く多様。イベントBGとして邪魔はせず、しかし最大限に焦らすという良いお手本です。

ドールでのX-ATM092に追われながらの脱出の際には、戦闘中にも通して流されていました。なお、X-ATM092を倒した場合も、ドールの海岸に辿り着くまでは途中でエンカウントする敵とのバトル中も含めて、やはりこの曲が流れ続けます(脱出ムービーがなくなるので、Dead Endは流れなくなります)。他にもゲーム中で何回か流れており、いずれもわりと長時間耳にするので、印象に残り易くなっています。
13.Dead End
・ムービー「X-ATM092に追われるスコール〜ドール脱出」
・ムービー「時計塔から飛び降り、イデアのもとに向かうスコール」
ムービー専用楽曲。確認した限りではドールでの脱出時(X-ATM092から逃げるムービー)と、ガルバディアでスコールが時計塔からジャンプして車を奪い、イデアに突入するムービーでの2回、使用されています。ただし、ドール脱出時については途中でX-ATM092を撃破していた場合は流れません(当然ムービーもなし)。「Never LookBack」から繋がるような、音色に共通性を持たせたアレンジも効果大で、緊迫感を盛り上げます。ドールでのイベントで2曲が続いた時の繋がり感は楽曲の切り替えを感じさせません。

楽曲の展開は完全にムービーありきで作られており、画に合わせられています。それだけに魔女パレードで再度使われていた時には驚いたものです。楽曲はまったく同じものですので、偶然にもムービーの長さや展開が一緒だったのでしょうか?まさか曲ありきでムービーの長さを決めるなんてこともないでしょうし……。「さて、このムービーはどんな曲にしようかな……(なんとなく「Dead End」を合わせてみる)……あれ、合っちゃったよ。じゃあ、これでいいか」……まったくの想像です。でも植松氏ならこんなこともありそう?

あ、ドール脱出時のムービーは製品版と体験版ではちょっと違うんですよね。体験版ではスコールたちの服装が違っていたり、セルフィのかわりにリノアがいたりします。体験版エンディングでのモーションタイプもカッコイイので、機会があったら見て下さいな。オススメ。
14.Breezy
・バラムBG
・D地区収容所脱出後、車でその場をあとにする一同
・チョコボの森BG
・シュミ族の村、工房
複数の場所で流れていますが、中でもバラムの街のBGMとして印象に残っている音楽。ここまでシンプルな、装飾のないアコースティックギターソロはシリーズでも珍しいのではないでしょうか。港もあるバラムにはピッタリな、塩の匂いや爽やかな風を感じさせる曲です。アコースティックギターが「VII」の頃よりもますますそれっぽくなっています。途中で入るピッキングも実にそれらしいですね。ギターの音に自信がないとついつい他の楽器を乗せてしまいたくなるところですが、なかなかどうしてソロでまったく問題ナシ!

サントラではこの位置ですが、ゲーム中では炎の洞窟に向かう際にバラムへと寄り道することで、もっと早いタイミングで聴くことも可能です。逆に、SeeD試験に参加するべくドールへ向かう際には必然的にバラム港に立ち寄りますが、ミッション前の緊張感を出すためかここではBGMが流されません。船に乗らずに街中へ寄り道することも可能ですが、やっぱりBGMは流れず、静かなバラムの街を制服姿で駆け回るスコール、というおかしな絵が見られます。

気になったのはチョコボの森。かなり低めの音量でうっすらとこの曲が流されているのですが、こちらとしてはチョコソナーの音に全神経を注いでいるわけで、潔く音楽ナシにしてくれた方が。おおかた「何もないと寂しくない?」という判断でしょうけど、いらないって!
15.Shuffle or Boogie
・カードゲームBG
カードゲームの音楽です。実は植松氏的には「本当はコレがすごいお気に入り」なのだそう。「何も考えなくていいし」とのことです。カードをコンプリートした私としては、それはもう何度となく聴かせていただきましたとも。というか、このカードゲーム、ヤバすぎですよ。すんごい中毒性がある。カードのコレクションはもちろんのこと、ゲーム自体の完成度が高くて純粋に面白いんです。ミニゲームの作り込みには定評のある「FF」ですが、コレ本当に楽しいですよ。SeeDが任務そっちのけでカードに興じてていいのかい、という毎度おなじみの疑問はありますが……。次回作「IX」でもカードゲームはありましたが、「VIII」の方が楽しいね。単体でも商品になり得る……と思ってたら、PC用の「FFVIII デスクトップアクセサリー」に本当に単体で収録されちゃったようです。

あ、何の話でしたっけ。ああ、音楽ね。えー、出だしのホーミー(モンゴル発祥の独特な歌唱法)みたいな音色が面白いですよね。ただのジュースハープかもしれないですけど。陽気なハンドクラップも楽しげでいいじゃないですか。つーかね、この曲についてあれやこれや語るのもどうかと思うんですよ。
16.Waltz for the Moon
・ムービー「スコールとリノアのダンス」〜キスティスに呼び出される
スコールとリノアの初めての出会い、ダンスシーンでかかる曲。もちろん「Eyes On Me」のワルツアレンジなのですが、なんと気付く人の少なかったことか……。私の周囲では「そうなの?」と言う人が異様に多かったですね。製作者がテーマということに気を遣って作っているのに、なかなかユーザーには伝わらないもんだなあ……と思いましたよ。こんなわかりやすいアレンジもないだろうに、ちとガッカリ。まあ、グラフィックの方に意識を奪われるのもわかるんですが……。音もちゃんと聴こうよー。

楽曲の方は、「ブンチャッチャ、ブンチャッチャ」が基調の正統派ワルツ。それも特に踊りやすそうな(笑)。前半部分ではまったく踊れないスコールをユーモラスに描き、55秒からの後半では華麗なステップを……って、ずいぶん急速に踊りをマスターしてくれるじゃないか、スコール君。リノアの指導が良かったんでしょうか。1分16秒でちょっと落ち着くところは、ムービーでは暗くなって花火が上がるシーン。チークタイムですかい?とドキドキしたところで、何かを見つけたリノアはすーっといなくなっちゃう。その後のスコールの表情が印象的でした。

ゲーム中では最も早い「Eyes On Me」のアレンジなんですね。スコールとリノアを徹底的に「Eyes On Me」のメロディで彩り、他のキャラクターテーマを一切なくした演出は成功だったように思います。印象的なメロディは多ければ多いほど個々を覚えにくくしますし、ただでさえ「魔女のテーマ」と「SeeDのテーマ」がありますからね。本作の至上命題は「スコールとリノアを立てること」だったわけで、言ってしまえば引き立て役であるその他のキャラにテーマは不要だったんです。それにしても、素人考えでは4拍子の曲を3拍子のワルツにするのって難しそうな気がするんですが、まあ見事にやっちゃうもんです。
17.Tell Me
・「秘密の場所」でのキスティスとスコールの会話
・トラビアガーデンバスケットコートでの会話後半(戦う理由)
キスティスがスコールに悩みを打ち明けるシーンで流れた曲です。なんかちょっと「VII」にありそうな雰囲気ですね。ところでこの曲、「Balamb GARDEN」のアレンジになってるの、わかります?わかり易いところを挙げるなら、例えば28秒からのメロディ、「Balamb GARDEN」では1分17秒のところで出てきます。ね?

「秘密の場所」はガーデン内の施設ですからこのアレンジが流れることに何の意味も感じないかもしれませんが、トラビアガーデンでのイベントでこの曲が流れることの意味は大きい。このメロディはバラムガーデンのものであってトラビアガーデンとは関係がない、ではなぜここでこのメロディなのか?ということについて考え始めると、メロディの持つ意味が単なる「バラムガーデンのテーマ」ではなく「仲間たちのテーマ」なんだ、ということに気付くわけです。もっともそういったことも、ゲームをプレイしていないと理解できません。サントラだけ聴いている人にしてみれば「Balamb GARDEN」のアレンジだね、で終わりです。ここがゲーム音楽(というか劇伴音楽全般)の面白さであり、難しさです。曲を聴いただけではわからない「意味」「意図」がある。他の曲についてもそうなのですが、「これって○○のアレンジだよね」というだけでは、その曲を理解しているとは到底言い難いのです。

様々な用途を想定して作られていそうな曲なのに、上に挙げた2ヶ所でしか使われていないのは意外でした。もっと使われているような気がしていたのですが……。おそらくガーデン内で頻繁に「Balamb GARDEN」を耳にしていること、このメロディを使った曲が他にもあることなどが、総合的にメロディの印象を強めているのでしょう。
18.Fear
・バラムガーデン訓練施設内BG
・サイファー、魔女とのイザコザ後、ティンバーテレビ局から退散
・ガーデン初飛行後、自室で様々な出来事に思いを巡らすスコール
・ルナゲートBG
チッチキ系の不安げなBG。「fear」は「恐れ」ですから、まあそんな曲調です。エレピとシンセストリングス、ウッドっぽいベースなどで淡々と進行していく雰囲気もの。イベントBGMということでもなく、ほとんどが「音楽はほしいんだけど特にどうということはない」みたいなところに充てられているもので、まったく主張の無い楽曲になっています。まあ、映像作品においてはこういう曲も必要です。無音じゃ寂しいから曲は必要、でも邪魔しないものを……みたいなオーダーはよくあるのです。そのため、音数は少ないんだけど空間を埋めるように計算されていますね、この曲。あえて目立たないように作られています。そのため印象には残らないでしょうし、この曲をお気に入りに挙げるファンは少数派でしょう。極端に言えば他でも代用は効くし、なくてもいい曲。
19.The Man with the Machine Gun
・ラグナ編戦闘BG
ユーザーにはかなり人気のある、ラグナ編の戦闘曲。スコールたちの曲(「Don't be Afraid」)とは異なり、かなりテクノ(ただし歌謡テクノ)っぽい曲になってます。ある意味でこれまでのFFにはなかった曲ですね。808系のオープンハイハットの音が効いてます(笑)。まあSC-88にもたしかに入っているよね。わりと植松氏の作曲時のスケッチがそのまま出ていると思われるトラック。

明確にスコール編の戦闘曲との差別化を図ったゆえの曲調、音色のセレクトなのでしょうが、4つ打ちのキック、裏拍のオープンハイハット、シンセシーケンス、パッと聞きのキャッチーさなど、当時流行りの歌ものダンスミュージックを採り入れてみましたよー、という感じが個人的にはちょっと気になりました。巷に溢れていたんですよ、あの頃こういうダンスミュージックが。だからこそユーザー(特に若ければ若いほど)にウケが良いのもよくわかるんです。筆者は「Don't be Afraid」の方がダンゼン好きですけどね。ファンの間では圧倒的に「The Man with the Machine Gun」の方が人気ですが、なんか、ラグナというキャラクターのノリの軽さを強調する感じがしませんか?
20.Julia
・最初のラグナ編、バーでピアノを演奏するジュリア
・シュミ族の村、ホテル
もちろん「Eyes On Me」のピアノソロです。これはわかるよね……いくらなんでも。じゃないとシナリオ・イベント・楽曲すべての意味がなくなっちゃいますよ……。ここでこのメロディを記憶できなかった人は、後に歌入りの「Eyes On Me」が流れても意味がチンプンカンプンなばかりか、唐突にさえ感じてしまったことでしょう。それを防ぐために直後のシーンにおいて「Roses and Wine」でダメ押ししてますし、宇宙に行くまでにクドいぐらいに「Eyes On Me」のメロディを強調するわけですけど。Disc3までに覚えてくれよ!ぐらいの勢いで。主題歌を使うのは簡単ですが、それを意味あるものにするためには周到な準備が必要なんです。

「Eyes On Me」っていうのは「VIII」世界の現実音楽なんですよね。バーでピアノを弾くジュリア。彼女が演奏していたのがこの曲でした。しかしジュリアはピアノだけではなく歌いたい……でも、詞が書けない……。常々そんな悩みを抱いていた彼女は、ラグナとの出会いをきっかけにして詞を書き、それを歌います。その曲こそ、「Eyes On Me」なのです。ちなみに曲名にもなっている「ジュリア」、フルネームは「ジュリア・ハーティリー」。あれっ、リノアって「リノア・ハーティリー」じゃなかった?なんてことをわざとらしく言ってみました。

シュミ族の村では基本的に音楽が流れませんが、ホテル内にはBGMがあります。そこでこの曲が流れているわけですが、初めて訪れた際にはスコールが「この曲……」とつぶやくのです。スコールがこの曲を耳にしているのは、ジュリアの演奏だけだったはず(プレイヤーは何度も聴いてますが)。なかなかたいしたものです、スコール君。
21.Roses and Wine
・ラグナに話しかけてくるジュリア〜部屋での会話まで
・リノアが宇宙を漂流(後半、スコールに助けられラグナロクに漂着まで)
あからさまなメロディこそ入れられていませんが、さりげない「Eyes On Me」のアレンジです。左右に割り振られたギターとベースによる伴奏、そしてフワフワとした浮遊感のあるメロディ音色という3パートほどのシンプルな楽曲。この独特の浮遊感は3拍子(6/8)も関係しているんじゃないでしょうか。シーンとしてはジュリアのピアノ演奏の直後、ホテルの部屋でのジュリアとラグナとの会話に流れるもので、「Eyes On Me」ダメ押しですね。2人のやり取りを「Eyes On Me」で徹底的に括ることで、後への伏線を張っているわけです。「ピアノだけじゃなく歌いたい」という願望をジュリアが露わにするなど、「VIII」の世界で「Eyes On Me」が生まれるキッカケが示される重要な場面でもあります。

あえてわかり易いメロを入れなかったのは、「Julia」との重複感を嫌ったためでしょうか。これ、リノアの漂流シーンでも流れるんですが、ここもわりとすぐに歌入りの「Eyes On Me」が来ますし。理屈としてはわかるんですが、ここはあえてもっとベタベタなわかり易いものにしても良かったんじゃないかとも思います。この曲から「Eyes On Me」を感じ取れる人は、作り手の想定よりずっと少ないはずですから。
22.Junction
・ティンバー行きの列車で眠ってしまった3人が眠りから覚め、
    お互いの見た夢が一致することに驚くシーン
・ラグナ編2回目、セントラ・発掘現場で最初のエスタ兵と戦うまで
・海洋探査人工島BG
GFをジャンクションすると記憶の一部がどっか飛んじゃうらしいよ〜。へー。という突然かつご都合主義な設定にはビックリしましたが、この曲はそれとはあまり関係がなく、ハープが奏でる神秘的かつ不安げなイベントBGです。主に序盤、わけもわからずラグナたちの世界(過去)へと意識を飛ばされるスコールたち、という場面の前後で使われています。「なんだこれ、何が起こってるんだ」という戸惑いを強調した曲になっているのはそのため。それゆえ、スコールたちがその現象にも慣れ「あ、また来た」という感じになってしまってからは使われず、だいぶ後になって海洋探査人工島に転用されたりしています。作ってみたんだけど、いまひとつ効果的に使えなかったかな〜という不幸な楽曲です。イベントで使われていてもあくまでBGMとしてひっそり流されているため、ほとんどユーザーの印象には残らず、覚えていたとしても「アルテマウェポンのいる所でしょ」みたいな。「VII」の時から意識的に行っている「音楽が一歩引く」っていうのはこういうことなのかな。ものは言いようというか、それって「なくてもいい曲が増えた」とも受け取れるんですよね。
23.Timber Owls
・「森のフクロウ」アジト列車内BG
・Disc3ラグナ編、ナゼか映画に出ることに
「owl」はフクロウのこと。「ティンバーのフクロウ」……つまり、リノア率いるレジスタンス組織「森のフクロウ」を指しています。これは彼らが拠点としているアジト列車の中で流れる曲です。ウッドブロックがカッコンカッコンとリズムをキープするなか、ピチカートストリングスがメロディ(?)を奏でていきます。そのうちトライアングルやギロといったパーカッションが加わり、木管・金管から成る呑気な伴奏も合流。全体としてどっかコミカルなのは……、わがままでこわ〜いお姫様と、それに逆らえない構成員たち、この真面目にやる気があるんだかないんだかわからない連中の描写でしょうね。特に情報収集を口実にして実行部隊に加わらないワッツ、肝心な時には腹痛(仮病)のため役に立たないゾーンらにハマりすぎ。リノアは「やっぱり子供の遊びみたいに見えちゃう?でも、痛いぐらい……本気なんだよ」と言っていましたが、少なくともこの曲を作った植松氏には遊びに見えたようです。この曲のキモは、ラスト(1分23秒)に入る「コン・コン・コン」ではないかと思っています。見事に曲にオチをつけてます。

Disc3のラグナ編にちょこっと流用されてますが、意味はありませんね。序盤にしか出てこない曲なので、「みんな忘れてるだろう」という頃の単なる使い回しでしょう。汎用コミック音楽、というほどの位置付けではありません。そういやコミカルな曲少ないですよね、「VIII」は。

disc2

01.My Mind
・「森のフクロウ」アジト列車でリノアと再会
・D地区収容所にスコールらを助けるべくやって来たリノアとの再会
・FHでミサイル基地チームと再会後の、スコールとリノアの会話
・脱出ポッドの中で、エルオーネがスコールに見せたリノアの過去
・宇宙を漂流していたリノアとスコール、ラグナロクの中に入ってひと息(「ハグハグ」のところ)
・ラグナロクのコクピットで地上と交信、助かるメドが立つ
・魔女として自ら封印されることを望むリノアにスコールが「行くな!」
  〜立ち去るリノア、スコールはラグナロク内で仲間と再会
「Eyes On Me」のアレンジとしては最多使用を誇る曲。特にDisc3で頻繁に流れ、本チャンの「Eyes On Me」をバックアップします。まあ、位置付けとしてはリノアのテーマ、ということになりますか。「VI」「VII」での「各キャラのテーマがあまり効果的でなかった」反省から、各キャラのテーマがなくなった「VIII」ですが、今回、リノアとスコールに関しては「Eyes On Me」という強力なテーマがありますからね。ディレクター北瀬氏の至上命令は「スコールとリノアを立てること」だったと言うし、この二人のテーマさえあればあとは一歩引いて、というのも演出的には正しい判断だと思います。

アコースティックギターとウォーミーなシンセストリングスに包まれ、トイピアノのシンプルな音色が「Eyes On Me」のメロディを奏でています。徹底してスコールとリノアの出会いや会話シーンに充てられており、他のキャラクターが絡むシーンには一切流されていません。「この二人の、もっと言えば二人の"愛のテーマ"ですよ〜、しっかり覚えてね」という感じでしょうか。
02.The Mission
・大統領列車強奪イベント
・ミサイル基地終了後、混沌としたバラムガーデン(シドに会うまで)
FF版「電車でGO!」……というか、列車切り離しイベントのBGです。言ってみればミニゲームなんですけど、ここでの結果がSeeDレベルに影響するという。失敗してもストーリーは進みますが。最初はもしや「SeeD」のアレンジが入っているのかな?とも思いましたが、それはないようですね。

刻み続けるストリングスとハープシコード、そしてリズムを司るトライアングルによって、ミッションの緊張感と列車の疾走感がうまく出ています。「センサーにひっかかるな!」とか「敵に見つかるな!」とか「コードを速やかに入力!」とかいろいろなことを言われますが、実はセンサーは壊れていて無視してOKだったり、何回もやり直しが効いたりと、音楽が感じさせるほどの障害にはなっていません。これによってボス戦に至る展開にペナルティをつけたりしても良かったのでしょうが、仮にもRPGである以上、本筋にあまりハードルの高いミニゲームを入れちゃうと怒られますからね。

一度だけの出番ではもったいないので、マスター派と学園長派が火花を散らしているバラムガーデン内で再度登場します。
03.Martial Law
・ティンバーBG
FFサントラで何度か目にする曲名「Martial Law」は「戒厳令」。ガルバディア兵がそこかしこで目を光らせている、ティンバーの街で流れる曲です。大統領がやって来るってんで厳重警備。そんな中、フクロウとSeeDは無謀にも思える計画を実行に移すのです。張り詰めた緊張感はもちろん、どこか潜入調の不安げな雰囲気になっています。まあ状況音楽と言いますか劇伴的な楽曲であって、テーマとか主張といったものはありませんね。筆者はゲーム初プレイ中、曲の中盤で鳴る「ゴーン」っていうSE(1分13秒以降)にビックリした思い出が。どっかで雷が鳴っているのか?みたいな。
04.Cactus Jack (Galbadian Anthem)
・世界各国に対するガルバディア大統領からの電波放送
ガルバディアの国歌みたいなものでしょうか。お国柄というか、見栄のようなものがよく出ています(?)。金管中心のストレートなマーチです。ゲーム中では、ティンバーのテレビ局から世界に向けてデリング大統領の放送が流される場面でのみ使用され、他の流用は一切ありません。
05.Only a Plank Between One and Perdition
・デリング大統領の放送中、スタジオにサイファーが乱入
  〜キスティスからの要請でスコールたちがテレビ局に着くまで
・D地区収容所でスコール救出後、今度はゼルを救出するまで
  〜リノアと再会後、最上階に到達するまで
・D地区収容所潜行ムービー
・ミサイル基地にて、発射準備を進めるガルバディア兵と対峙
  〜ガルバディア兵撃破後、脱出するまで
・FH駅長と会話後、街にガルバディア兵が現れる
・バラムで「指揮官」を発見〜雷神、風神と対峙
・イデアの家付近でバラム、ガルバディア両ガーデンが接触
・VSバハムート戦(海洋探査人工島)
・VSアルテマウェポン戦(海洋探査人工島)
・ラグナロクがルナティックパンドラに突入〜風神・雷神と対峙
バラムVSガルバディア(魔女側)のようなシチュエーションでよく流れている曲です。戦闘中も通して流れることが多く使用頻度も高いため、非常に耳に残っています。圧巻はガーデン同士の激突。あそこでえんえんと流れた時には焦りましたね〜。次々と敵は乗り込んでくるし、「あっち行け、今度はこっち行け、次はアイツを助けろ」ってな感じで息つくヒマもなかったっす。

圧倒的な力で攻めてくるガルバディア軍勢を表現するのにうってつけの力強さを持った曲で、オケヒットに始まってベースとピアノが低音部を支え、ドロドロとした威圧感を醸し出します。ユニゾンのベースとピアノの低音部という手法は、植松氏がよく使うテクニックでもありますね。で、これまた圧倒的に力強いビートがズンズンと迫り、一方でストリングスは焦燥感と危機感を煽ります。さらに後半ではディストーションギターも登場し、敵の猛威を描いています。

この曲が流れてくると反射的に「負けてたまるか!いくぞみんな!」という気にさせられるのですが、バハムートやアルテマウェポンといった隠しモンスターとの戦いに流用されているのは、ちょっとやっつけかなと思いました。まあ他に適切な曲があるわけでもないんですが……他の特別な戦闘曲は魔女絡みになっちゃいますからね。というか、オメガウェポンですら「Force Your Way」が充てられているわけで、バハムートやアルテマウェポンだけが妙に浮いた「特別感」を持たされちゃってるんですよね。
06.SUCCESION OF WITCHES
・大統領をさらったサイファーの前に魔女イデアが登場〜イデアとともに去るサイファー
・ガルバディアガーデンマスタールームでサイファー、イデアと対峙
・アデルのそばにリノアを連れて行くサイファー(ルナティックパンドラ)
・アデル戦後、時間圧縮が始まるまで
「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」に代表される「魔女のモチーフ」。ゲーム序盤では「イデアのテーマ」という感じなんですけど、その後も魔女がらみのシーンで徹底的にこのモチーフを使うことで強烈な印象付けに成功しています。「Eyes On Me」に対する、「VIII」のもうひとつのテーマ曲ですね。イデアが魔女でなくなってからも、アデルやアルティミシア(時にはリノア)に対してこのモチーフを充てていくことで、「今、誰が魔女なのか」「魔女の力はどこに継承されているのか」がわかるようになっています。

チェンバロで奏でられるイントロと伴奏は、魔女の妖艶さと気品をこのうえなく描いています。キモとも言えるコーラスが歌っている言葉はもちろん「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」です。弦や木管が出てくる、どことなく異国情緒のある後半部分も、魔女の持つ独特なオーラを描くのにじゅうぶんな雰囲気を持っています。ユーザーの耳にも残りやすく、グラフィックの持つ力もあるとはいえ、毎度のことながら敵側の曲は印象的です。

最近、人は暗くて恐い曲の方が覚え易いのではないかと思っています。主人公サイドに暗い、恐いテーマ曲を乗せるということは通常あり得ませんが、敵側は重かろうが暗かろうがなんでもアリ。見た目や存在感に合わせて思いっきり曲調を染められます。結果、覚え易くなるのではないかと。
07.Galbadia GARDEN
・ガルバディアガーデンBG
ズバリ、ガルバディアガーデン内部で流れるBGです。重低音の効いたイントロには、PSでもこんな音が出せるのか、と思いました。一般的なテレビのスピーカーでどれだけ出るかが問題かな。同じガーデンでもバラムの曲とはぜんぜん雰囲気ちがいますよね。最初こそ明確な対立関係にはありませんが、ゆくゆくは敵地となる場所ですから、その際にも違和感が出ないようにまとめられているのでしょう。もともと「私語禁止」のような厳しさのある校風ですから、曲調的には問題ありません。もしセルフィがガルバディアに転校していたらどんな娘になっていたのだろう……。変わらない気もしますが。

サントラを聴いて「アレっ?」と思った人の多くは、聞き覚えのないイントロに疑問を持ったのでしょう。実はゲーム中では一度だけ、このイントロが流れているんです(それを忘れているだけ)。イントロ付きで流れるのは、最初にガルバディアガーデンを訪れた時のみ(ムービーあり)。以後、ガルバディアガーデン内にいる間はもちろん、再度出入りしても45秒以降の部分しか流れません。ちなみにゲームではイントロ付きとイントロなしは、別ファイルのデータとして用意されています。

音楽的な聴きどころは、左側にいるメトロノームをそのまま使っちゃった〜、という部分と、ベースがメロディを受け持っているというところ。ボーカリーズが醸し出す冷ややかな空気感にも注目ですね。特にイデア討伐時のガルバディアガーデンへの潜入シーンでは、ガランとしたひと気のなさにピッタリはまっていました。そこにポツンとうごめく物体が……うかつに触れるとケルベロス!なんてことも。準備もなく戦闘に突入してしまった人もいるのでは。
08.Unrest
・SeeD試験からガーデンに戻り、愚痴るサイファー
  〜スコールら合格者たちが学園長室に呼ばれるまで
・ティンバーのテレビ局でサイファーと対峙〜大統領を連れ去るサイファー
・ガルバディアガーデン応接室にて、サイファーが処刑されたことを伝えるキスティス、
  ショックを受ける一同
音数の少ない「一歩引いた」楽曲。ベースのせいでしょうか、ちょっとジャズっぽいテイストで、劇伴的な不安感を助長する音楽です。あまり展開がなく、あくまで淡々とBGMに徹している感じ。

使われ方としては「鬱憤溜まりまくりのサイファーのテーマ」という感じで、初出のシーンはどうやらSeeD試験には合格しそうもない自分と、自分を不当に評価する周囲への不満をサイファーが露わにするイベントでした。その後も独断でティンバーにやってきて大統領を拉致してしまうシーン、そしてそんなことをやらかした彼がどうやら処刑されたらしいということをスコールらが知るシーンで使われています(曲名の「心配」とか「不安」といった意味はこのイベントを指しているものかと)。しかし彼は処刑などされておらず、魔女の騎士として活躍(?)することになります。以前から夢だった魔女の騎士になることで鬱憤は解消されたようで、以後はこの曲の出番もなくなります。
09.Under Her Control
・デリングシティBG
ビンザー・デリング終身大統領が治めるガルバディアの街(デリングシティ)でかかる曲です。これまたジャジーなナンバーで、初出のシーン(ラグナたちがバーへ)の印象からか、どこかオトナの雰囲気を感じます。クラヴィとオルガンがイカしてますね〜。キーボーディストが大活躍するタイプの音楽ですな。街のBGMと一言に括っても、ティンバーなどとはまったく違う雰囲気です。曲タイトルは「魔女の支配化にある街」という意味なのかしらん?

昔のRPGにおいて、街の音楽はゆったりとした癒し系であればそれで成立していましたよね。度重なる戦闘に疲れた体を休める場としての、暖かな音楽が好まれました。「FF」も例外ではありませんでしたが、次第にグラフィックがそれぞれの街の特色を如実に描き出すようになってからは共通の音楽では語り足りない部分が出始め、このように個別にマッチした楽曲が与えられるようになってきたのです。デリングシティでティンバーの曲が鳴ったらやっぱり困りますから。

「魔女に支配されてるんだからもっと怖い曲でもいいのでは?」とも思いますが、ゲーム中で感じる限りでは、市民はそれほど恐れてないんですよねー。むしろ、魔女の加護を得ることを歓迎しているよう。目の前で大統領を殺害されているのに、パレードでは魔女に手を振る市民たち。シュメルケが暴れてからはパニックの様子も描かれてはいますが、その後魔女はガーデンの方に行っちゃうので、街は平穏。このあたりの描き方はちょっと半端な気がしますが、何にしても楽曲を怖くする必要はないですね。
10.The Stage is Set
・魔女暗殺作戦始動、それぞれ持ち場へ向かう
  〜リノアにあやまるためカーウェイ邸へ戻ったキスティスたちが閉じ込められる
  〜ひとり魔女のもとへ向かうリノア
・バラムガーデンMD層
・エスタでのルナティックパンドラ接触ミッション中
緊迫音楽です。「舞台は整った」=「準備完了」ぐらいの意味かな。いよいよ魔女暗殺計画を実行に移すカーウェイ大佐(というかスコールたち)。一方で、リノアもまた独自の動きを見せ始めます。その一連の「始動」を、この曲でだーっと括って見せていきます。刻み系のストリングスが緊張感を出し、マーチングスネアが「いよいよ動き始める者たち」、といった高揚感を高めます。コントローラーを握る手に思わず力が入りそうな曲です。植松氏はこういった作戦マーチもお得意で、「VII」にもこんな感じの曲がありました。後半(1分11秒以降)からは「SeeDのテーマ」が奏でられ、SeeDに課せられたミッションを彩る楽曲としてまっとうな出来。

それにしても今回の「VIII」は全般的に弦の音がよくできてます。生オケ楽曲との格差をなくそうという努力が垣間見えますね。
11.A Sacrifice
・単身イデアに接触したリノアが返り討ちに遭う
  〜イデアムービー〜イデアの演説〜シュメルケに襲われるリノア
  〜一方、閉じ込められたキスティスたちは地下水路へ
・宇宙ステーションで覚醒する魔女リノア〜リノアがアデル・セメタリーの封印を解除
・ルナティックパンドラでサイファーと対峙
「SUCCESION OF WITCHES」のテンポをさらに落とし、コーラスを省いてインストにした「魔女のテーマ」のアレンジ。イントロのチェンバロのイメージはそのまま引き継ぎ、鐘やドラなどのパーカッションが威圧感を高めています。荘厳に、優雅に、神秘的に、しかし恐ろしく……様々な表情を一曲に封じ込めているのはさすが。歌詞付きのコーラスの代わりにボーカリーズシンセが使われています。

「sacrifice」は「いけにえ」「ささげ物」といった意味で、リノアとしては「ささげ物」のつもりでバングルを持参してイデアを訪ねたわけですが、お気に召されなかったようでリノア自身が「いけにえ」的に操られ、シュメルケに襲われちゃいました。
12.FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC
・ムービー「魔女のパレード」〜スコールら時計塔到着まで
・20時にせり上がる時計塔、パレードは凱旋門へ〜閉じ込められるイデア、アーヴァイン射撃直前まで
誰もが感嘆したパレードのムービー。ダンサーのアクセサリーのカチャカチャまで再現された効果音(フォーリー)もさることながら、コーラスの入ったこの曲の効果は絶大。これから立ち向かうことになる魔女という存在を巧みに描き出していますね。もちろん「魔女のテーマ」です。太鼓のリズムや鳴り響くドラの音、シタールのような弦楽器の音色など、「どこの国?」といった異国情緒に満ちています。旋律自体やストリングスの微妙なニュアンスにも、そういった味付けがなされているのがわかるでしょうか?文明の発達した「VIII」の世界において異質な「魔女」という存在を描くには、音楽も世界観からそれなりに「浮かせる」必要があったわけです。その狙いはバッチリ成功していると言えます。

タイトルについては「これ、何語?」とよく言われたものですが、これは実在する言葉ではなく、植松氏によるアナグラムです。アルファベットをバラバラにして組みかえると……。植松氏は「ヒミツ」にしていましたが、2つの説があります。ひとつは「SUCCESION OF WITCHES LOVE」。『魔女の愛の継承』という意味合いになります。もうひとつは、並べ替えた「SUCCESION OF WITCHES LOVE」から、既にある「SUCCESION OF WITCHES」を取ると「LOVE」が残る、というもの。作品テーマそのものの『愛』ですね。どちらが正解かな?こういった謎かけは「FFX」の「祈りの歌」にも見られますね。「い〜え〜ゆ〜い〜」って。
13.Intruders
・デリングシティ地下水路(スコールたちが時計塔到着後)
・ガルバディア兵にFH駅長が交渉、様子を見るスコールたち
・ガルバディアに制圧されたバラムの街(雷神発見まで)
・復興後のドールBG(橋のある山間部のみ)
「Intruders」=「侵入者」の意。潜入調のトライアングルとハイハットに乗せて、ピチカートストリングスとウッドベース、エレピが隙間を大切にしつつ静かに鳴ってます。これも背景音楽の類で、強い主張をすることはないもののシーンの雰囲気を演出するためには欠かせないタイプの楽曲です。深めにかけられたリバーブ(残響)が初出のイメージでもある「地下」を思わせますが、他のシーンはすべて地上なんですよね……。まあ、場所に合わせてリバーブ量をコントロールしろとまでは言いません。SEならともかく、楽曲でそれをやる必要はないでしょう。

トライアングルが特にいい音してます。ここまできれいにサンプリングするのはなかなかできないと思うのですが……。途中で鳴る、減衰していく「シャラリーン」っていうSEみたいなのは何の音なんだろ。
14.Premonition
・イデア戦BG(Disc1、Disc2の2回)
・Disc4、時間圧縮世界での魔女連戦
・アルティミシアと対峙〜アルティミシア初期形態戦
イデアをはじめとする魔女との戦闘曲。もちろん「魔女のモチーフ」が入っていますが、直後に「SeeDのテーマ」も追いかけていきます。というかこの曲、「Liberi Fatali」のアレンジと言う方が正しいかな、状況的にも。魔女とSeeDの直接対決ですし。イントロ部分に一瞬「えっ、VIIのメインテーマ?」と思わせる部分がありますが(21秒〜)、それはご愛嬌として。イントロ部分がイベントに流れ、39秒あたりからそのままバトルへ突入みたいな流れが美しいんですけど、ゲーム中ではそういったハマり方は見られず、イントロ中だろうとかまわず戦闘が始まっちゃいます。楽曲のトーンとしては正統オケ調なんですが、構成はまるでプログレ。6/8、7/8、8/8がめまぐるしく入れ替わる複雑な拍子になっており、耳コピ・演奏を至難のものにしています。こういう曲が作れる人ってすげー、と思いますよ素直に。

カテゴリーとしてはバトル音楽であり、あとはラスボス(アルティミシア)との戦闘でも序盤、聴くことができます。アルティミシアがグリーヴァにジャンクションする前まで。なぜアデルとの戦闘では流れないのかは「FFVIII」の七不思議(ウソ)。
15.Wounded
・ムービー「イデアが放った氷の刃がスコールを貫く(Disc1ラストシーン)」
曲名は「傷を負う」の意味で、ゲームではDisc1ラストの衝撃のシーンで流れる専用ムービー曲。他への流用は一切ありません。パイプオルガンと鐘の音が荘厳に鳴り響く、宗教音楽的な楽曲です。曲名こそスコール側を表していますが、楽曲はイデア側に充てられていると思います。冷酷無比で、強大な力を秘めている魔女……あれ?今さっきの戦闘はなんだったの?俺ら勝ったよね?なんで最初からその力を使わなかったのかなイデアは?という疑問ばかりが残るシーンですが、この曲のパワーで強引にねじ伏せています(笑)。

ここでやっぱり北瀬氏としてはリノアに「キャーッ!」と叫ばせたかったようで、その心残りから「X」はフルボイスとなったと言われています。「えっ、まさか主人公が死ぬの?」と思わせるシーンでしたが(「FF」はやりかねない)、後でケロっとして登場。まあケアルとかレイズとかある世界ですから、生かさず殺さず捕らえられたのでしょう。このショックはなんだったんだ……。
16.Fragments of Memories
・ラグナ編でのウィンヒルBG
・バンドイベント直後、自室でのスコール回想(孤児院)
・Disc2イデア戦後、魔女の支配から解き放たれたイデアの独白
・Disc3ラグナ編、エスタでエルオーネを救出・再会
・シュミ族長老が、「お付き」のラグナに対する敬愛のほどを語るシーン
・シュミ族長老と「お付き」による17年前の回想
・ラグナによる、アデル封印とラグナが大統領になるまでの回想
ラグナ編のウィンヒルにて初出となる、シンプルなベル音色によって奏でられる優しい曲。切なくもあり、懐かしくもあり、可愛らしくもある。これほどシンプルなのに、一言では言い表せない多彩な表情を持っている、メロディメーカー植松氏ならではの曲ですね。幾重にも装飾を施された厚い楽曲よりも多くを物語ってるんですよ。そのシンプルさから印象にも残り易い。ヘタをすると「Eyes On Me」さえも霞めてしまいかねないという点では、作品的に危険な曲でもあります。本筋でそれほど乱用されていないことは幸いでした。

これは、うーん、テーマ的な意味合いのものでしょうね。エルオーネのテーマにも思えてしまいますが使用箇所を見る限りでは、ラグナに寄り添っている楽曲のようです。もっと言えば、「ラグナとその周囲の人々との交流」を描いているというか。ラグナサイドのメインテーマ的位置付けでしょうか。
17.Jailed
・ガルバディアD地区収容所BG
収容所の曲です。少なくとも「虐待されるムンバのテーマ」ではないです。音数の少ない背景音楽で、なんともいえない倦怠感と虚無感に満ちています。ここに囚われた人々の溜め息が聞こえてきそうですね。しかし、ゼルたちはなんとか脱出できないものかと戦意を失ってはいません。とは言ったものの武器はねえしどうしようかなあ……という思案、そして実際に行動を開始してからのコソコソ感をもしっかり表現してあるあたりはさすがというべきでしょうか。少ない音でいろいろな状況にマッチする曲を作るのも、植松氏は得意ですよね。逆に強い音で強烈なイメージを定めていないからこそ、あらゆる場面にはまり得るということもあります。

便利に使い回せそうな曲調に思えますが、流用はありません。収容所クリア後は耳にすることのなくなるレア曲だったりします。でもけっこう耳にこびりついてるんですよね。けっこう長い時間あそこにいたからかなあ。
18.Rivals
・収容所でサイファーから拷問を受けるスコール
・ティアーズポイントBG
トレモロストリングスと不穏な木管で幕を開ける、不安・不気味系BG。以後も基本的には弦と木管のみで進行していきます。読みは「ライバル」ですね。もちろんスコールとサイファーを指した曲名です。とは言ってもここではあまりに一方的なわけですが……。どこかで聞いたことがあるような後半の旋律に、どこかに「Unrest」が忍ばされているんじゃないかな、ひょっとして「SeeD」が?と疑ってかかりましたが、どちらも気のせいでした。っていうか「VII」の「星に選ばれし者(セフィロスのテーマ)」とちょっと似てるんです。聞いたことがあるような気がしたのはそのせい。

ティアーズポイントでの使用は単なる流用で、意味はないでしょう。それにしても、「ヘタをしたらそこでしか流れる機会のない曲」がけっこうありますね。専用曲にする意味のある場面ならともかく、ここ(拷問シーン)についてはテーマ的な引っ掛けもないので「Jailed」のままでじゅうぶん成立するところです。制作側の要求なのか、植松氏がシナリオを読んで自発的に用意したのかはわかりませんが、前作「VII」を「まだまだ省けた」と振り返りつつも、本作でも「なくていい曲」がポロポロ見られるあたり、やっぱり製作途中は不安になるのかなあと思います。曲数が増えて「作っても作っても終わりが見えない、大変だ大変だ」と、自分で首を絞めているような。
19.Ami
・FHでBGH251F2との戦闘後、ミサイル基地チームと再会
・シドから強引に魔女討伐指揮官に任命されたスコールが自室で自問自答
  〜セルフィたちはFHでバンドの準備
・トラビアガーデンバスケットコートでの会話前半(孤児院の記憶)
・ルナティックパンドラ研究所BG(スコール編)
バラムガーデンの曲「Balamb GARDEN」のピアノアレンジです。聴き馴染みのあるメロディを強調し、楽曲の関連性を明確に。後半は弦や木管も顔を出し、和んだ空気や安堵感といったものを描き出します。原曲とは楽曲の構成が変わっている点にも注目。「Ami」の出だしは「Balamb GARDEN」のAメロです。逆に「Balamb GARDEN」のイントロが、「Ami」の1分5秒から登場。おそらく印象に残っているであろう明快なメロディを頭から提示することで、わかりやすくしているわけですね。ゲーム中ではミサイル基地に行っていたメンバーとめでたく無事に再会、というシーンが初出となります。久々の仲間たちとの再会にガーデンの曲が流れれば、プレイヤーも自然と「おかえり!」といった感情を抱くでしょう。

このように、「Balamb GARDEN」のアレンジがこの場面で流れることについては誰もが納得……ん?リノアとアーヴァインはバラムガーデンの人間じゃないじゃん。まあいいか、みんな仲間だし、これからはバラムガーデンが本拠地になるんだから。曲名の「Ami」はなんかヒトの名前っぽいですが、「友達」という意味合いの語句。本作においては「大切な仲間たち」というところでしょうか。この曲によって、このメロディーが単なるガーデンのBGMではなく、本来は仲間のテーマとして位置付けられるべきものであることが明確になっています。それを裏付けるかのように、ゲーム中において重大な設定が明かされる、トラビアガーデンでのイベントシーンでも流れます。仲間たちの関係、幼少の頃から繋がる「絆」が語られる場面です。

disc3

01.The Spy
・ミサイル基地内部BG
・エスタ、謎の建造物(大塩湖から入ってきたマップ)
ミサイル基地潜入。左右で鳴っているワウギターが新鮮です。たぶんですが、フレーズサンプリングして音色として取りこみ、それを鳴らしているんじゃないかと思います。ワカチコワカチコ。リバーブ感たっぷりのベース、定位で遊んでいるハイハットも潜入感たっぷり。さらに後半のストリングスが、隠密行動にふさわしいハラハラした緊張を演出します。ラッパはまあ、スパイとくればお約束っぽく。ギターの頑張りに対してちと安っぽいのが気にはなりますが……。
02.Retaliation
・ムービー「バラムガーデンに向かうミサイル」
発射されたミサイルがバラムガーデンに向かうムービーに充てられている、専用楽曲です。ムービーとあいまって、これ以上ない迫力と緊迫感が出ていました。例によってビデオとシーケンサーを手動で「せ〜の」、したんでしょうか?こういったオケ調のアオリものも植松氏は得意ですね。「Liberi Fatali」の匂いも感じますが、特に何かのアレンジということにはなっていないようです。構成的には「VII」での「魔晄キャノン発射〜神羅爆発」みたいな感じで、完全に映像ありき。曲名はズバリそのまま「報復」です。
03.Movin'
・バラムガーデンが飛び立ち、ミサイル回避ムービー〜不時着するまでバラムガーデン内BG
・宇宙ステーションで、リノアを追って宇宙に出ようとするスコール
スコールたちがMD層の最深部に到達したことによってガーデンが変形〜、そこへミサイルがやって来る〜、の曲。これも映像ありきで、シーンの展開に合わせて作られています。魔物でも登場しそうな、不穏な出だしは「なんか動き出したぞ?」というところ、23秒からの「たったったらー、たったったらー」は変形するガーデンの描写、1分16秒からは再度「Retaliation」を取り込み、「一方、迫るミサイル」という場面。危機感たっぷりの1分34秒からは地表に着弾するミサイル、大爆発が起こるもののガーデンはそれを回避して飛翔、といったシーンです。この部分、ちょっと「FFVII」のエンディングっぽいのはご愛嬌。1分59秒以降はループで、ガーデンが不時着するまではBGMとして流れます。この部分は独立して、宇宙ステーションでのイベントにも流用されています。

それにしても今回の「VIII」はかなり全体にオケ色が強いですね。映画音楽ぽくなっているのはそれも大きいと思います。基本的に「FF」の音楽は「なんでもアリ」で、「VIII」ももちろんそうなんですが、全体の傾向としてはよりオケ寄りかなと。
04.Blue Sky
・飛び立ったガーデンの2Fから外を見るムービー
低空しか飛べない飛空艇、ガーデン。えっ、もしかして今回の飛行手段ってこれだけなの?トロいし操作しにくいしサイアク。実は後でもっと高性能な飛空艇が手に入ります。飛行ガーデンの存在は、シナリオ進行度による移動制限を持たせるためのもの。いきなりあちこち行けてしまってはね。

さてこの曲、いきなり飛んでしまったガーデンから外の様子を見る時に流れる、爽快なムービーで聴けるもの。バラムチームにリノアがいる時のみ、専用のムービーが流れるんです。ちょっとだけ「Eyes On Me」が入っている(23秒〜)のはそのため。リノアがミサイル基地に行っちゃってる場合については確認してないのですが、楽曲に込められたフレーズの意味的に言っても流れないんじゃないかと推測。
05.Drifting
・バラムガーデン訓練施設にて、魔物に襲われていたエルオーネ
       (とはまだ知らない)を救出した直後、白いSeeDとの会話
・図書室でエルオーネと会話、俺を巻き込むなと激昂するスコール
  〜白いSeeDが彼女を連れ去っていく〜スコールの苦悩・回想
・白いSeeDリーダーの回想(エルオーネがいなくなった経緯)
・リノアが宇宙を漂流(前半、一度絶望しかけるまで)
思いっきり音に隙間を持たせた雰囲気BG。弦楽ってことで、弦の音の良さがよくわかります。打ちひしがれた悲壮感たっぷりのこの曲、なぜかエルオーネ関連のイベントでよく耳にするため彼女を象徴するものなのかと思いきや、曲名はまんま「漂流」。自ずとどのシーンのために作られた曲なのかがわかりますね。解釈によっては、船で(意図的な)漂流を続ける白いSeeDのテーマとも取れますが、やはりここで言う「漂流」は宇宙の方でしょう。この隙間のとりかたは、どう考えてもリノアの吐息などの音を効果的に聞かせるように計算されたものであり、同時に宇宙の静寂感を表したもののはず。絶望的な悲壮感もこちらに合わせたものに違いありません。
06.Heresy
・バラムガーデンマスタールーム、ノーグの前
こちらも植松氏お得意、チャーチオルガンによる荘厳な楽曲。このオルガンもよくできてるなー。マスターノーグとの会話時に流れる曲で、「Heresy=異端」の意味から、ノーグのテーマ曲と解釈してかまわないでしょう。わざとぶつかり合うような不協音を入れてある、危うげなアレンジが何とも言えない不快さを醸し出しています。異形の者を前にしたスコールたちの戸惑い、ノーグという人物の危険さが音に現れているかのよう。ゲーム中で聴ける場所がきわめて限定された楽曲です。
07.Fisherman's Horizon
・フィッシャーマンズホライゾン(FH)BG
・スコール編ウィンヒルBG
エレピの柔らかいイントロで始まる、いやし系の楽曲。言うまでもなく、フィッシャーマンズホライズンのBGMです。やさしいメロの音色とゆったりしたテンポが束の間の休息、という感じで、特に1分14秒からのパンフルートが本作においては新鮮なカラーになってます。ガーデンから街に行くのにはかなり時間がかかるんですが、曲のおかげでもってます。

基本的には同じメロディを繰り返していくタイプの曲なのですが、注目したいのはメロを受け持つ楽器の移り変わり。最初がオカリナ風の音、続いてはハーモニカかピアニカかという懐かし系の音色で、次がパンフルートという具合。旋律上の要素は多くないにも関わらず飽きがこないのは、このメロディ音色のおかげ。これをもしひとつの楽器で繰り返していたら、ちょっとクドかったかもしれませんね。この曲はアレンジバージョンも激しくオススメですよ。

フィッシャーマンズホライゾンの印象が強すぎ、そこでしか流れていないものと錯覚してしまいそうになるんですが、スコール編ではウインヒルのBGとしても使用されています。その錯覚は、ラグナ編の「Fragments of Memories」のイメージが強いために生じるものでもあります。というか、どうして曲を変えたんでしょうかね?もちろんスコール編でのウインヒルは、立ち寄らなくてもかまわない場所ではあるんですけど。だったらなおさら「Fragments of Memories」のままで良かったのに。
08.ODEKA ke Chocobo
・ウインヒル(スコール編)チョコボの通り道
コレ最高!プレステからこの音が出てくるとかえって新鮮。ファミコン時代から続くシリーズならではの遊びです。ストーリー的には聴かなくても進められてしまうのですが、聴いてない人はぜひウインヒルに寄って聴きましょう!ちなみに曲名はおなじみのチョコボのテーマで使われている「○○・デ・チョコボ」の形を踏んで、「オデカ・ケ・チョコボ」と言ってるわけです。
09.Where I Belong
・トラビアガーデンBG
「Ami(Disc2-19)」のスローバージョンとでも言いますか、もともとは「Balamb GARDEN(Disc1-2)」から派生している曲です。仲間たちのテーマとして、セルフィの出身地・トラビアガーデンで流れています。単に「ガーデンのテーマ」として、バラムガーデンとの共通項を持たせているからでもありますね(ガルバディアは例外ですが)。わざと汚しをかけたような、独特のピアノ音色が印象的ですね。このどこか郷愁のある音色により、めちゃくちゃに破壊されてしまったトラビアガーデンで健気に生きている人々、という感じがよく出ています。たとえ形は変わっても、想い出の場所という拠り所は不変なのです。

ゲーム中では「Ami」が何度か流れるため混同されがちですが、このバージョンはトラビアガーデンでしか流れません。
10.The Oath
・D地区収容所でスコール救出時
・バラムVSガルバディア激突時、スコールの艦内放送
・囚われたリノアを取り戻しに行く際の、魔女記念館内部
・ルナティックパンドラにて、サイファーを説得する風神と雷神
「VIII」までのFFサントラにおいて、すべて英語の曲名というものは意外にもありませんでした。日本語の曲名はイベントやキャラクター、ゲームでの状況が思い出し易く、どこで使われたかがすぐわかります。単純に曲名も覚え易いですしね。それに対して英語はヤッカイですねー。カッコいいけど、頭の中で曲名と楽曲が瞬時に結び付きません(汗)。特に筆者のように英語に明るくない者は、調べながらの確認が必須です。

で、「oath」は「誓約」とのこと。それを知ったうえで使用箇所を振り返ると、なるほどな〜と思うんですけどね。「決意を新たに」といった、スコールが行動するうえでの動機となるイベントで使われています。筆者的には、この曲が流れるとどうも「ここから感動するシーンですよ!」と無理強いされてるような気分になってしまい、イマイチ好きになれない曲です。植松サンには申し訳ないのですが、これは曲そのものというよりも使われ方が、かな。あざといというか。

これも弦楽器メインで構成されている楽曲。本作の音源は特に「弦に自信あり!」という感じですね。
11.Slide Show Part1
・Disc3のラグナ編、映画の撮影前半
フィルムのSEまで加えられていて、凝ってます。このピアノの音はエフェクトで汚しているのだろうか?それともそういう音色をサンプリングしているのだろうか?レトロな映画音楽っぽくなっていてグーです。撮影中の映画にBGMがあるっていうのもヘンなんですが。
12.Slide Show Part2
・Disc3のラグナ編映画撮影、ドラゴンとの一騎打ちから
チャップリンですな。非常にわかりやすいのでこれ以上語るべきこともないですね。ところで、ストーリー上必須なものとしてこういうミニゲームを置くのも「FF」っぽい仕様なんですが(ガルバディアガーデン侵入時の格闘ゲームとか)、これをよしとするかウザいとするかは人それぞれ。確かにゲームにいろいろな面白さを取り込めるかもしれませんが、大多数のユーザーは「普通に戦闘させてくれよ!」と思ったんじゃないでしょうか。寄り道ならばともかく、ミニゲームに手間取って本編の進行が滞るというのはねえ。難易度は決して高くないんですが、こういうの苦手な人っているでしょう?特にRPGファンは。
13.Love Grows
・最初のラグナ編、ホテル部屋でのジュリアとの会話(後半)
・Disc3冒頭でイデアと会話後、保健室でリノアに語りかけるスコール
・リノアをおぶってエスタへ向かい歩き続けるスコール
「Eyes On Me」のアレンジです。これはもうストレート。さすがにこれはわかるよね、と期待したい。弦とハープをバックに、管がメロディを奏でる暖かなアレンジです。とにかく音色がよくできていて、表現力はバツグン。特に、縁の下の力持ちながらもピチカートストリングスの音色はピカイチですね。

ゲーム中で最初に流れるのは、Disc1での最初のラグナ編。ピアノの演奏だけでなく歌も歌いたい、でも歌詞が作れないと言うジュリアが、ラグナとの出会いをきっかけにしていい歌が作れそうだわと言うシーンです。ゲームの世界では後にジュリアは実際に「アイズ・オン・ミー」という歌詞付きの曲を作り、ヒットソングとなります。この歌詞はラグナとのことを歌っているんですね。この場面にはもうこのメロディしかあり得ません。ゲームではこのシーンに至るまでに「Eyes On Me」のアレンジが3曲続くわけですが、ユーザーからクドいと思われる危険を承知で、徹底した印象付けを優先したのでしょう。「とにかくこのメロディを覚えてよ!」という。

そして最も印象的なのはスコールが単身リノアをおぶって、エスタに向かって遠い道のりを歩み始めるシーンではないでしょうか。Disc2が終ってDisc3に入れ換えると、なぜかリノアへの愛情を大爆発させるスコール。あれ?オマエそんなにリノアのこと好きだったっけ?と、多くのユーザーがキャラクターとの乖離感を強く感じた場面です。そんな疑問もこの曲が流れることによってうまく誤魔化されます(笑)。いま冷静になって振り返っても、スコールがリノアを好きになった理由がやっぱりわかりません。
14.The Salt Flats
・大塩湖BG
・魔女記念館BG(リノア救出時は除く)
大塩湖です。ここをリノアをおんぶして歩くのはさぞ辛かったことでしょう。「遠いな、エスタ……。もう疲れたな。コイツ、意外と重いな。置いてっちゃおうかな」というスコールの本音を表した曲、ではもちろんありません。とことんツラく、悲壮感溢れる曲調になっていますが、エスタへの入り口を見つけられず途方に暮れたプレイヤーにとってはトラウマかも。

ここなんかは単なる通過点でしかないので、ダンジョン音楽の流用でも成立したかもしれませんね。それでも1曲用意しちゃうあたりが「FF」らしさなのかもしれませんが。エスタに着いてからは特別な狙いがない限り二度と訪れない場所であるため、この曲を聞く機会もなくなります。さすがにもったいないと思ったのか、魔女記念館に流用されていますが、こちらもプレイヤーが自発的に立ち寄らないと聞けません。イベントで強制的に来る際には、曲が「The Oath」になっているからです。
15.Trust Me
・ミサイル基地脱出失敗に落ち込む面々〜大爆発ムービー
・Disc3ラグナ編、エスタでの強制労働〜エルオーネ救出
「Balamb GARDEN」派生の、「仲間のテーマ」のひとつ。「Ami」「Where I Belong」とは姉妹曲ということになりますか。そのフレーズが出てくるのが53秒からなので、メッセージ飛ばしまくりでプレイしていると気付かないことも。このメロディはゲーム中では一貫して「仲間の絆」に対して使われているのに、Disc3のラグナ編でえんえんと流れるのがナゾではあります。そこだけ、この曲が流れる理由が見つからないんです。ただの流用にしては曲自体に意味がありすぎますし。
16.Silence and Motion
・エスタBG
・エスタ大統領官邸でラグナたちと対面〜オダイン博士が最終作戦について解説
「IV」のミシディア国に通じるヘンな曲シリーズ。どういう発想からこういう曲が生まれるんでしょうか。なんか、考えて作れる曲じゃないような気がするんですよ。天才的なヒラメキとかがないと。「エスタ=最先端科学を持つ閉ざされた国」なわけで、植松氏が最先端技術に対して抱くイメージなのかな?楽曲終盤で一瞬、ガラリと変わるノリ(2分24秒〜)にも強烈なものが。そこまでの進行にいきなりこのノリをブチ込むことは普通はしません(笑)。音色にもヘンなヤツが盛りだくさんで、特に右側にいるシャックリのような音にはバカにされてるような気さえしてきます(笑)。というか、このデータを渡されて音色を作ることになる河盛慶次氏はさぞ苦労したんじゃないかと。

で、このヘンな曲にOKが出る「FF」はスゲエなあ、と思わされるわけですよ。さすがに「月の涙」以降は違う曲にされちゃいますけど。個人的にはエスタの曲というよりも「おじゃる」のテーマかな。そう考えるとなぜかしっくりくる。え?植松さんの曲をけなすなって?いやだなあ、褒めてるんですよぉ。
17.Dance with the Balamb-fish
・SeeD就任パーティ〜リノアとの出会い(ダンスムービー前)
・宇宙ステーションBG
・復興後のドールBG(中央広場まで。山間部以降は別)
エスタの宇宙ステーションのBG。オケ調の華々しい曲で、宇宙ステーションでこうくるかー、という感じは意外でした。物語序盤の「ダンスシーン」でも、最初の部分にうっすらと流れています。さらに、どれだけの人がわざわざ訪れたであろう、復興後のドールにも。この街の存在をすっかり忘れてた人も多いとか。まあ、カードやらない人にとっては特に行く必要もないですしね。

さて、これだけあちこちに使われていると、そもそも最初は何のために作られた曲なのか?ということも気になります。個人的には製作の順番から言っても、普通にダンスパーティかな〜と。曲名も、宇宙ステーション用に作ったのならこうはならないと思うんです。さらに、もしも筆者が「FF」の作曲者で、宇宙ステーション用に曲を作るとしたら、まずエスタの曲(「Silence and Motion」)のメロディは絡ませると思うんですよ。ドールのために作られたってことはないでしょう。復興後のドールはゲーム的には完全にオマケですから。
18.Tears of the Moon
・ムービー「月の涙1(月からモンスターが溢れ出す)」
・ムービー「月の涙2(地上に落ちるアデル)」
「月の涙」ね。おいおい何が起こっているんだよー?!あっ、モンスターのかたまりが!というわけで以後、エスタ街中でもモンスターが出現することに。ムービー専用音楽で短い曲ですが、ゲーム中では2回流れています。ただしムービーの長さがそれぞれ異なるため、ゲーム用には短いバージョンも存在してるんです。サントラに入っているのは、1回目のムービーで流れるフルサイズバージョン。2回目用の短いバージョンはサントラには未収録ですが、ゲームデータとしては別ファイルが用意されています。
19.Residents
・ラグナロク内部(プロパゲーターがいる間)
なんでこんなコミカルなのかなー……。あそこってわりとドキドキするイベントだったよね?わからん。「resident」は「居住者」。もちろんスコールとリノアのことではなく、ラグナロク内部に巣食うプロパゲーターのことを指しています。この曲のおかげで、プロパゲーターがちっとも怖くなくなってます。順番を守らないといくら倒しても復活してしまうヤツらは、本当は凄〜くオソロシイ魔物のはずなのに……。さすがにこの曲は制作チーム内から「違うのでは」という声が出たハズ。しかし、「VI」の頃に既に坂口博信氏のダメ出しをも軽〜くシカトしちゃった植松氏ですし、なんと言ってもスタッフの中でも最古参。自信を持って「いや!これでいいのだ」と……。以上、すべて推測。
20.Eyes On Me
・ラグナロクコクピットでのスコールとリノアの会話
主題歌がここで初めて登場。メロディはここまで幾度となく使われていますが、それが聴き取れていないプレイヤーにとっては唐突に聞こえてしまったことでしょう。このシーンではCDからオーディオを垂れ流していたわけではなく、曲のすべてをサンプリングデータとしてプレイステーションに送り込み、それを順次リアルタイム再生し、CDとほぼ同等の音質を実現しているのです。即ちCD-DA(通常の音楽CDフォーマット)ではなく、もちろんこのCD-ROMをCDプレイヤーで再生しても楽曲を聴くことはできません。ちなみに、召喚獣の効果音なども同様の手法で再生してマス。この方法を用いると、一枚のCD-ROMにおよそ250分ほどの音楽データを収録することが可能です。当初、「VIII」はすべての音楽をこの方法で流しCDと同質の音質にするという計画もあったそうなんですが、容量や読み込みなどもろもろの事情から「ここぞ」というものに留めています。もっとも、CD-ROMには音楽以外に入れなければならないものがたくさんありますしね。

歌うのはさんざん既出ですが、「アジアの歌姫」フェイ・ウォン。植松氏的にはフェイを採用したことの決め手は「声質」と「無国籍感」とのことですが、音色的にも「無国籍感」は現れてますね。一見、無難なポップスバラードの編成であるかのようで、イントロにはハンマーダルシマー、間奏の笛は篠笛と、一筋縄ではいかない特殊な楽器もふんだんに使用しています。篠笛は本物ですが、おそらくハンマーダルシマーはシンセ。なお、フェイ採用の経緯や歌詞、「Eyes On Me」関係のCDについてはこちらでまとめてますので、ぜひ参照して下さい。ここに書くとあまりに長くなりすぎるので……。

楽曲については、もともと私がフェイのリスナーだったこともありますが、個人的な1999年度ベストソング。いろいろな音楽を日々聴いていますが、結局この楽曲を超える曲には出会えなかったね。歌唱ももちろんのこと、バックトラックも秀逸。特に弦のアレンジには涙腺刺激されまくりでした。ダンス系コンピでいろいろリミックスもされましたが、やっぱりオリジナルが一番!

disc4

01.Mods de Chocobo (featuring N's Telecaster)
・チョコボ初捕獲時の「おでかけチョコボ」説明
・チョコボ騎乗時のフィールドBG
主にフィールドでのチョコボ騎乗中に流れる、おなじみ「チョコボ」のアレンジ音楽。毎回、「FF」シリーズでは「○○ de チョコボ」という形で、様々なジャンルでの演奏がなされてきた「チョコボのテーマ」、今回は「モッズ」です。「モッズ」というのは……、60年代ロンドンの若者たちのことを言います。正しくは「モダンズ」。当時の流行に敏感な若者の総称と言いますか……。その時に彼らがよく聴いていた音楽がジャンル名というか形態として残ったのが「モッズ」とくくられる音楽です。最近はモッズのコンピレーションとかも発売されているので、それ聴いてもらえればなんとなくノリがわかるかも。歴代チョコボのテーマでもっとも説明しにくいですね……。

センターがなく、右左にガッツリ割り振られた各楽器の定位もいかにも、という感じ。ドラムキットなんかまるごと右側にいってて、今の感覚で聴くと奇妙な感じがするかもしれませんが、当時の音源のステレオってこういうの多いんですよ。少ないトラックで録音してるんで、足りなくなったそばからピンポンしちゃってたりして、最初はモノラルだったんだけど後々ステレオにする時に困ったりとか。そんなことも含めてそれらしく再現してあるわけです。

植松氏は「VIII」のために「ゴーゴーdeチョコボ」「ボイスdeチョコボ」「アリババdeチョコボ」とかも作っていたらしいのですが、結局使われませんでした。今後の登場に期待しましょう。あ、「N’s Telecaster」ってことは、ギターは植松氏が弾いたテレキャスをサンプリングしたもの?
02.Ride On
・飛空艇搭乗時BG
飛空艇BGです。なんかとても気持ちいい〜。歴代の飛空艇音楽の中でもかなり好きです。わかりやすいんだけど、ピコピコシーケンスも含めてとても懐かしい、古き良きゲーム音楽という感じがなんとも言えません。ゲームでは自動操縦がありますから、目的地に着くまでゆっくり曲を楽しめます。こういうリズムセットの曲、「VIII」では他にないですね。おそらくこの曲専用の音色。

ちなみにゲーム中で、サントラのようなイントロ付きで流れるのは2回だけ。1度目はラグナロクがセルフィの手によって初めて飛ぶ時。2回目はラグナによる「愛と友情、勇気の大作戦」説明の後、行動を起こすスコールと仲間たち、というシーン。それ以外はいつラグナロクを飛ばしても、音楽は20秒からのスタートとなります。とこでこのイントロ、「Blue Sky(Disc3-4)」のアレンジだったりします。「初めて飛び立つ」、のテーマ。
03.Truth
・リノアの実家でカーウェイ大佐と会話
・バラムガーデンマスタールーム、エレベーター前
・イデアの家
魔女シリーズに括られる曲なのでしょうが、メロディ的にはかなりいじくられていて、パッと聞いてそれとわかるものにはなっていません。ただしチェンバロが使われているあたり、これまでの魔女曲のイメージもしっかり踏襲しています。

バラムガーデンのマスタールームでは、エレベーター前のみこの曲が流れますが、余計かな。マスタールーム内はすべて「Heresy(Disc3-6)」で良かったんです。ちょこちょこ曲を変える必要ないですよ。
04.Lunatic Pandora
・ルナティックパンドラ内部BG(再侵入時含む)
  〜ルナティックパンドラがティアーズポイントに到着ムービー
「最終要塞」といった雰囲気も感じさせる、ルナティックパンドラ内のBG。「ズーン、ズーン」とひたすら重々しく進行していくリズムと、ボーカリーズも含んだ運命的な音色によって巨大感がよく出ています。とんでもないものがこの奥に待ち受けているような、ただならぬ気配を感じさせるではないですか。それにしてもルナティックパンドラって、外見よりも内部が広いような気もするんだけど……気のせい?というか、ムービーで見るルナティックパンドラ、エスタで遭遇するルナティックパンドラ、そしてその内部、さらに飛空艇で乗り込む時などなど、それぞれでスケール感が合っていないような気がするんですよねぇ……。曲と関係ないけど。
05.Compression of Time
・時間圧縮世界(はじまりの部屋〜イデアの家〜鎖まで)
「時間圧縮」です。なんか孤独感のある曲。寂しい……。構成要素は多くはなく、ベース、ラッパ、ハープ、ボーカリーズなど。ボーカリーズがちょっと歪んでますか?よく聴くときわめて低い弦もぶぅーん、と鳴らされています。ゲーム中では意図的に引き返さない限りは聴く機会が極めて限定されている曲です。
06.The Castle
・アルティミシア城(外観・内部)
オルガンを中心とした、荘厳なアルティミシア城の曲です。魔女の城ならこうじゃなくちゃ、というイメージ通りの音楽。とはいうものの、1分20秒からのチェンバロの演奏は非常にロックな匂いを感じますね。その後の展開もさまざまで、謎を解きながら長時間さまようことになるラストダンジョンにおいて飽きさせることなく、見事な雰囲気を作り出しています。クラシックとかバロックとかいうよりは、メロディックメタルのバンドがアルバムの途中に入れてるインストトラックのような雰囲気。

「VII」同様のサイバー路線の「VIII」ですが、それでいて敵がファンタジックな「魔女」というのも、ギャップのある面白い設定でしたね。それにしても、予想はしてたけど「ジャンクションの封印」、始めは辛かったなあ。ザコモンスター相手に全滅寸前まで追い込まれたりしたものです。
07.The Legendary Beast
・グリーヴァ戦
ラスボス戦において戦うことになる、アルティミシアが召喚したグリーヴァとのバトルでの前半と中盤の間で、ちょろっとだけ流れます。そこまでは魔女戦闘曲の「Premonition(Disc2-14)」が流れているわけですが、それを引き継ぐかのような、魔女のパレード曲(「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」Disc2-12)っぽい舞踏的な雰囲気も持っています(魔女モチーフもチラっと、3分14秒あたりに)。基本はオケ色ですが、シンセベースも加えられており、オケから次のロックへの橋渡し役も兼ねています。急に曲調が変わるとショックが大きいため、中間的なこの曲を挟むことでそれを和らげようとしたものでしょう。

「Legendary Beast=伝説の獣」って、サントラで曲名を見た時はまだラストに至ってなかったこともあり、「オメガ戦用の曲があるんだ?」と恥ずかしい勘違いをしたんですが、スコールがしている指輪に模られた「想像上の動物、ライオン」のことを指しているんですね。あそこ(ガルバディアガーデン侵入時)で指輪に名前を付ける意味ってここにあったんです。もしも自分のペットの名前とか、なんかおバカな名前を付けちゃうと、ラスボス戦がミョーなものになったかも。

ゲームではあまりにも短い間しかかからないもったいない曲。この曲が流れ始めるとほぼ同時にグリーヴァがのたうちはじめちゃうんですよ。「オマエ何のために出てきたの?」ってぐらい。レビュー執筆にあたって確かめるためにもう一度ラスボスと戦ってみたのですが、やはり一瞬だけしか流れず。なんなんでしょ……。ネットでこの曲に関する記述を探しても、たいていどこも「一瞬で終わる」「長く聞けない」と書かれていますし。しかし、レビュー加筆のために今度はアタマからプレイし直したら、その時のグリーヴァ戦はそこそこ長く、この曲もかなり長時間聴けました。戦うたびに戦闘時間が変わるんですよ。確かアルティミシアが「おまえが強く思えば思うほど、それはおまえを苦しめるだろう」と言っていたのですが、プレイヤーパーティの状態によってグリーヴァの強さが変化するんでしょうか?アルティマニアにも載ってないんですよねえ。
08.Maybe I'm a Lion
・グリーヴァ戦(アルティミシアがジャンクション後)
ラスボス中盤の戦闘曲。アルティミシアがグリーヴァにジャンクションすると流れてきます。ちょっと和風な味付けになっていて、本作の中でも独特な仕上がりです。イントロのタイコドンドンや拍子木、「はあっ」ていうボイスサンプルは正直、ネタに困ってたのかな?という感じの飛び道具っぽさ。和風である必然性はまったくないんですが、何かひと味ほしかったんでしょう。「X」に登場しても違和感なさそうな曲ですね。すぐにギター、ベース、オルガンが加わってロックになるあたりは、「FFラスボス音楽きた!」という感じ。ラスボス戦がロックというのも、もはやお約束っぽいですが……。途中(1分45秒)からテンポが早くなります。「VII」での「片翼の天使」直前における「神の誕生」みたいな位置付けの曲ですな。ラスボス音楽の印象を食わないまでも、あくまでスペシャルなものとしての存在感は損なっちゃいけないし……。連戦形式のラスボス戦における音楽のサジ加減って、けっこう難しいですよね。

THE BLACK MAGESバージョンを聴きすぎたためか、いま改めて原曲を聴くと物足りないですね。せっかくのロックなんですからもっとガシガシと音圧稼いでほしいところです。太鼓を立たせるためか、控え目なバランスにされているドラムスもちょっと可哀相な感じ。
09.The Extreme
・アルティミシア最終形態
イントロのステレオ効果が恐すぎます。「魔女のモチーフ」がぐるぐる回っていきます。植松氏いわくゲーム音源では、正しいリスニングポイントで聴くとテレビの外から中へ渦を巻いていくようなサラウンド効果が加えられているとか。それを聴き取る余裕はゲーム中ではなかなかないと思いますが……。

もちろん正真正銘のラスボス戦闘曲で、最後の戦闘を彩るもの。静かなイントロから始まり、そのうちファンにはもはや懐かしいおなじみのバトルイントロ「ダダダダダダドド」が入ります(1分39秒〜)。こっからは圧倒的なアップテンポでガンガンいきますよ〜。とは言うものの「VII」ほどのインパクトがないのが残念と言えば残念ですね。「コーラスは前回やっちゃったし、同じことをやるのも何なので」ということで、本作の最終戦をどのような曲にするか、植松氏もそうとう悩んだんじゃないでしょうか。結果としてはスーファミ時代に聴けたような、シンプルかつストレートな「FFバトル」になりました。

もっと「魔女のテーマ」と「SeeDのテーマ」がぶつかりあったり、その間に「仲間のテーマ」が絡んできたりといった本編とのリンクを仕掛けても良かったんじゃないでしょうか。もっと言うと、「Liberi Fatali」の別バージョンぐらいの勢いもアリだったと思いますよ。なんかゲーム的にもアルティミシアの存在感って希薄なんですよね。唐突というか。楽曲でベタベタに括ってあげていいんじゃないかと。ラスボス戦が(バトルはともかくとして、演出的に)サラリと流れてしまっており、音楽的にも直前の「Maybe I'm a Lion」のインパクトを超えてません。音楽単体では普通に「カッコイイ!」とか言えちゃうんですけど、ゲーム的にはイマイチ半端な印象が。

ところで楽曲の話じゃなくて恐縮なんですけど、ウチのスコールくんは序盤でHPにジャンクションしていた「アルテマ」を異空間に飛ばされてしまい、攻撃されるたびに戦闘不能になってしまいました。こればっかりは運だね……。
10.The Successor
・アルティミシア戦後、スコールとイデアの会話
魔女のテーマで構成されている、静かで切ないピアノソロです。イベントの長さに合わせた完結型の楽曲。「後継者」「相続者」的な曲名で、その意味はゲームをすればわかります。作品的には「(力の)継承者」というところでしょうか。ちなみにかつて白いSeeDのリーダーが、「ママ先生がSeeDを作る時に、敬礼だけは決まってたと言ってた」と語っていますが、それはここでスコールがイデアに敬礼をして見せていたからなんですね。
11.Ending Theme
・エンディングムービー
壮大なエンディング。まるで映画のエンディングです。「ゲーム史上最高のエンディング」と評されたのも記憶に新しいですね。もちろん全編オーケストラ録音です。編曲は浜口史郎氏によるもの。冒頭からのうすら寒い孤独感、虚無感を強調したブロックは、帰るべき場所を見失い(GFジャンクションのせいで記憶が欠落したという説アリ)さまようスコールという場面。実際のゲーム中では2分11秒あたりで一度ポーズし、効果音やサウンドコラージュのみで構成されるシーンが挟まり、2分11秒からは倒れているスコールをリノアが見つける場面。そして「Eyes On Me」が始まる頃には背筋ゾクッ!ここまで音で伏線をはりまくってきた効果がここでどっと来るわけです。ムービーとのシンクロもバッチリ。花畑ブワーッ!のあたり(3分11秒)で不覚にも涙腺が震えてしまったヒト、手を挙げなさい。はーい。

サイファーやラグナ、エルオーネたちの「その後」を見ながら、ムービーは進行。5分6秒あたりでラグナとレインがガバッと抱き合ったりと、映像とのシンクロを徹底的に意識した盛り上げかたには唸るほかありません。ムービーチームはある程度、「Eyes On Me」の展開やフレーズを意識して画を作ったんですかね。「Eyes On Me」の展開と速度(テンポ)は決まってるわけですから、音楽後付けで合わせるのは至難の技だと思うんですよ。

曲ももちろんですが、エンディングではSE(効果音)も滅茶苦茶がんばってます。絶望的なスコールの、アクセサリーのカチャカチャまでも表情を付けているように感じます。フォーリーアーティストに拍手!さすが、お金をかけて海外のプロフェッショナルに作ってもらっただけのクオリティ。

さてさて、画面はいったん暗転し、スタッフロールにPinPされた、カメラで撮っているような加工のされたムービーが始まります。このアイディアも絶賛されましたね。わざと映像を汚すことで、CGのキャラクターたちがより活き活きと人間味を帯びています。実際、本編中のどのムービーよりもリアルです。そしてここで「ファイナルファンタジー」の登場です(6分58秒〜)。「Eyes On Me」からの流れは見事すぎますね。鳥肌立ちまくりっす!シリーズ曲の存在がやや希薄だった本作において、「やっぱりこれは"FF"だ!」と実感させられます。シリーズ作品はこうでなくちゃね。

あ、あ、電池が切れちゃう……といったところでいったんムービーは途切れて、スタッフロールのみのパートへ。ここで音楽は勇壮な「SeeDのテーマ」のマーチアレンジに続きます(10分2秒〜)。スタッフロールが終わると再びムービーで、リノア。視線の先にはスコールが……。ここでちょっと「プレリュード」っぽいフレーズになります(11分54秒〜)。ここは、いつもなら絵に合わせて曲を作る植松氏が「ここだけは、絵を音に合わせてくれ」とわがままを通した部分。効果はバッチリです。「VII」とは対照的に結末のはっきりとした、後味の良いエンディングでした。

アカデミックな音楽教育を受けていないと語る植松氏が作る楽曲は、時としてプロのオーケストラ演者には奇異に映ることも少なくなかったようで、演奏を始めると植松氏の意図しない音を出す演奏者もあったとのことです。「そこ、違います」「違ってません」という押し問答も。「この楽器は、この流れでこういう音は出さない」などのクラシック畑特有の「法則(いろいろとつまんない約束事があるんです)」に基づいた演奏者の判断で勝手に音を変えていたわけですが、植松氏としては「いや、それでも僕のこの曲にはその音が必要なんです」と演奏者を説得、なんとか指定通りに演奏してもらったというハプニングがあったようです。その辺、浜口氏はチェック入れないんでしょうか?
12.Overture
・ソフト起動後デモ
「VIII」を立ち上げると流れる曲。おかげで「プレリュード」はゲームオーバー時と、エンディングで一瞬流れるにとどまっちゃいました。我々をゲームの世界へと導く、期待感と躍動感あふれるゆったりとしたマーチに仕上げられているのですが、ゲームを早く始めたいプレイヤーにしてみればとっととすっ飛ばしちゃうでしょうね。オケを基調に作られていますが、生音のエンディングの後に並べられるとどうしても貧相に感じてしまいます。普通にサントラDisc1の1曲目に入れれば良かったのに。そうすればより「Liberi Fatali」も引き立つってもんだし。まあ、音楽CDとしてオープニングのインパクトを最初に持って来たかったのでしょうけど。

オーケストラヴァージョンもオススメです。

サントラ未収録曲
・戦闘曲「Don't be Afraid」ショートME付きバージョン

 確認した限り、ドールミッションでの対X-ATM092初戦でのみ流れるもの。電波塔の上から落下してくるX-ATM092に合わせた緊迫感のあるショートMEから、ダイレクトに「Don't be Afraid」へ続きます。ゲーム中ではMEと「Don't be Afraid」がひとつのファイルとして繋げられている(別々の曲を連続再生しているのではない)ことから、エンカウントイベントから戦闘に直接繋がるような他の場面での使用も予定されていたものと予想。

・「Starting Up」ループバージョン

 電波塔ではムービーに合わせて完結していた「Starting Up」。デリング大統領の拉致に成功したと思いきや実は影武者だった!というシーンでも使われていますが、ここでは完結しない(前半部分をひたすらループする)バージョンになっています。

・「Galbadia GARDEN」イントロなしバージョン

 サントラに収録の「Galbadia GARDEN」には、ガルバディアガーデンを初めて訪れた際に流れるムービーに合わせたイントロがありますが、これがゲーム中で流れるのは一度きり。以後はイントロのないものが流されます。データ的にも別ファイルになっていますが、もちろんわざわざサントラには入れてません。

・「Tears of the Moon」ショートバージョン
 「月の涙」関連のムービーはゲームでは2回流れ、そこではどちらも「Tears of the Moon」がBGMになっています。が、2回目のムービーは1回目より短く、そのため音楽も短いバージョンが用意されているのです。そのショートバージョンはサントラに入っていません。

・「アイリッシュジグ」と「EYES ON ME」インストバージョン

 魔女討伐指揮官となったスコールに、仲間たちからのプレゼント。それは素敵な、セルフプロデュースのバンド演奏でした。スコールにはナイショで、事前に担当楽器を決めるイベントがありましたね。そこで決定した楽器の組み合わせによって、実際にどの曲を演奏するかが決まります。サックス、エレキギター、エレキベース、ピアノを選ぶと(担当者は誰でも可)、ムーディな「EYES ON ME」のインストに、ギター、フィドル、フルート、タップの組み合わせだと「アイリッシュジグ」になります。それ以外の組み合わせではふたつの曲が混在したヘンテコ音楽に。さらに、どの曲を演奏しているかによってその後のスコールとリノアの会話が変化。「アイリッシュジグ」のみ二人の会話がスムーズに進みますが、「EYES ON ME」だと「やらしいね」「俺のことか?」「違うよ、曲が」「もういい」てな具合に話がこじれてケンカ別れ。また、混在パターンでも「ヘンなの、イライラするなあ」という展開でやっぱり話がこじれて決裂。「EYES ON ME」でベストパターンにならないのは納得いかない気もしますが、テーマ曲にしておけばいいだろうというユーザーの予想をあえて裏切ったのでは。

 パートが混在するケースも想定し、ふたつの曲はテンポが合っています。ゲーム中のデータ的にはひとつの楽曲データとして存在し、再生時に事前にチョイスしたパートだけを発音(残りはミュート)させているようです。楽器セレクト時にはそれぞれのソロを聴くこともでき、それを録音しておけば自分でミックスすることも可能です。まあそんなことをするヒマな人がいるかどうかはナゾですが、サントラ完全版を自分で作りたい人には重宝するかも。

 「アイリッシュジグ」はゲーム中、別の場面でもう一度だけ流れます。シュミ族の村では特定のイベントを完了させることで工房のラグナ像が完成しますが、その際、村の中で「アイリッシュジグ」がBGMとして流れるようになるのです(像が完成していなければ無音のまま)。

・「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」ボイスモチーフ各種

 ゲーム中のサウンドデータとして、「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」というモチーフを様々な音域で歌ったボイスのみのファイルが複数用意され、魔女を印象付けるシーンで効果的に用いられています。BGMというよりはME、SE的な使われ方ですが、音によるシナリオもしくはイベントの補完という意味では、無視できない重要なものです。ゲームディスク中にデータとしてその存在を確認できたものは以下。

1、ベースパート:男声のバス帯が歌うモチーフ。フランジングのようなエフェクトが加えられています。Disc2のラスト、ガルバディアガーデン・大講堂でイデアと対峙する際に流れます。また、宇宙ステーションで覚醒した魔女リノアが、宇宙に出てアデル・セメタリーの封印を解除するシーンにも。
2、男混声:1よりも厚みがあり、バスとバリトンが混ざった感じ。こちらにもフランジング効果が。わざと気味の悪い、ハズした感じの音程で歌われています。ゲーム中での使用は筆者がプレイした限りでは確認できませんでした。
3、アルトパート:女性の低めなコーラスで、フランジングはなく深めのリバーブがかけられています。ゲームでは、アルティミシア最終形態戦野前に挿入。ただしフランジングが適用されています。
4、女混声:アルトとソプラノが歌うモチーフ。「Liberi Fatali」のイントロに近いバージョンです。ゲーム中での使用は確認できませんでしたが、バージョン5の素材となっているようです。
5、男女混声:男声と女声が交代で現れ、最後は両方が同時に歌うもの。ハズしたような気持ち悪い音程も加えられ、気味悪さを出しています。トラビアのバスケットコートでの会話で、まませんせいが魔女イデアであることをスコールたちが知る際に耳にすることができます。また、宇宙から帰還したスコールのモノローグから、エスタの人間がリノアを連れて行く場面をまたいで使用。ガルバディア以後意識を失っていたリノアと待望の再会、なんとか地上に戻れたものの、エスタの人々にとってリノアは恐ろしい魔女でしかなく、スコールは再びリノアと引き離されようとしている、というなんとも切ないシーンです。
効果音について
 今回の「VIII」では初めて、ムービー部分の効果音製作に関してスクウェアスタッフとともに、ハリウッドで仕事をしている映画畑の外人サウンドエンジニアが参加しています。リアルなフォーリー(キヌズレやアクセサリーのカチャカチャ)や、発生点から残響の方向まで考慮された爆発音など、これまでにない説得力を持った効果音をドルビーデジタルで製作。擬似サラウンド効果を伴うように作られている(位相をいじくってる)ので、環境の良いステレオシステムやヘッドフォンなどでプレイすると、思いもよらぬ方向から音がするような場面も存在します。地味なようですが、このような効果音も「映画的」なFFには欠かせない要素と言えるでしょう。植松氏いわく、「"VIII"の効果音は金かかってますよ。音楽制作費の大半は効果音です」とのこと。

 というか音楽だけでも普通に金、かかってますよね……。フェイ・ウォンに歌わせて、しかも香港までレコーディングしに行って。スタジオとミュージシャンおさえてオーケストラ録音もして。いくらかかってるのか見当もつきませんが、「誰かが一度はやらなきゃならないこと。それを今はたまたまウチ(スクウェア)がやっているだけで。会社が金を出してくれるうちはとことん暴れてやろうと思ってます」とは植松氏の談。ちょくちょくその莫大な制作費と金まかせ体質が批判されるFFチームですが、氏は「僕らがやらなくても誰かがやること。成功しても失敗しても、後に続く人たちに教訓を残せる」と当時語っていました。
サウンドこぼれ話……
 ベースノイズだけで音楽の流れない「シュミ族の村」は、実は植松氏があの村(イベント)の存在を知らなかったことからああなったそうです。サウンドプログラマー赤尾実氏がデバッグをしているのを見ていて気が付いた植松氏でしたが、赤尾氏の「音がない方がいい感じですね」という一言で「じゃあ、それでいいか」となったそう。知らないイベントがあった……ということは、植松氏としては「わりとよくあること」なのだそうな。
「FFVIII」体験版の音楽
 スクウェアのアクションRPG「ブレイブフェンサー武蔵伝」に付属していた「SQUARE'S PREVIEW」収録の「ファイナルファンタジーVIIIトライアル・エディション」。ゲーム序盤におけるドールでのSeeD試験ミッションをプレイできるもので、製品版とは異なる部分が多く、その相違点についてはファンの間でいまだに話題になっています。スコールたちがSeeDの制服でなく私服を着ている点や、パーティにリノアがいるなどが大きな違いですが、実は音楽もだいぶ異なっているんです。

 タイトル画面からドールの街中・戦闘を通して演奏されているのは、製品版では使われていない曲。鐘の鳴る重厚なイントロから始まり、水上艇がドールに着岸する頃には映画「ザ・ロック」(音楽:ハンス・ジマー)によく似たオケ調の盛り上げフレーズが鳴り響く、非常にサントラチックな曲となっています。その「ザ・ロック」との酷似度に体験版をプレイした一部のFFファンが食いつき、「ザ・ロック」の曲を知らない人までもが「パクリだ」と騒ぎ始めてしまいました。植松氏が「ザ・ロック」のスコアを知っていて作ったのかどうかは知り得ませんが、結局製品版では差し替えられました。ちなみにこの「ザ・ロックみたいな曲」、筆者は確認していないのですが後に「FFX」のトレイラーでも使用されたようです。

 体験版の音楽の話を進めましょう。ドール上陸以降は「ザ・ロックみたいな曲」が戦闘中を通して流れ続け、中央広場の敵を倒すと初めて「The Winner」が鳴り、前述の曲が鳴り止むという寸法。以後、敵とエンカウントするごとに普通に「Don't be Afraid」が流れます。

 電波塔の始動で「Starting Up」が流れるところは製品版と同様ですが、エルヴィオレ戦では「Force Your Way」が流れず(まだできてなかった?)、ビックス・ウェッジ戦から引き続いて「Don't be Afraid」が流れます。その後、X-ATM092から逃げるイベントで「Never Look Back」、途中から挿入されるムービーで「Dead End」が使用されるのは製品版と同じ。そのまま体験版は幕を閉じます。ちなみにムービーも体験版だけの映像になっており、スコールたちが私服であったり、製品版でセルフィがいるべきところにリノアがいるなど、体験版用にわざわざ差し替えられているのです。キャラクターモデルを置き換えているだけではありますが、体験版用にそこでしか流れないムービーを作るとはいかにもスクウェアといった感じ。

 「Don't be Afraid」や「The Winner」については、製品版の楽曲よりもやや「軽い」感じがします。この後、開発が進んでいく中で音源などが見直され、さらなるクオリティアップが図られていったのでしょう。

ゲーム本編もぜひプレイして下さい。ベスト盤「アルティメットヒッツ」がおトクです。
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