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DIRGE OF CERBERUS -FINAL FANTASY VII-
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作品紹介

 「コンピレーション・オブ・FFVII」。「FF」シリーズの中でも特に格別のファン人気を誇る「ファイナルファンタジーVII」は、スタッフにとってもまた特別な作品だった。「それ以前」の世界や後日談を望むファンの声は止まず、その想いはスタッフにとっても同じだったに違いない。そうして、スクウェア・エニックスは同時多発的に「FFVII」の世界観を核とするコンピレーション作品を打ち出した。携帯電話でプレイする、タークスメインの「BC」を筆頭に、クラウドたちの"その後"を描き大ヒットした映像作品「AC」、ニブルヘイムの"あの日"に焦点を絞ったPSP用アクションRPG「CC」。発売時期はそれぞれ異なるものの、「FFVII」の世界観や謎を補完していくそれらは、いずれもユーザーから賞賛をもって迎えられていった。

 そして本作「DC」もまた、「FFVII」の世界を補完するのに欠かせないタイトルである。舞台はオリジナル「VII」の3年後。即ち「AC」からさらに1年後の世界だ。「DC」の主人公はヴィンセント・ヴァレンタイン。タークス時代のエピソードと神羅の闇、そしてルクレツィアとの関係など、「VII」本編では描ききれなかったストーリーが補完される一方、また新たな謎や伏線が展開していく。ゲーム本編はRPGではなくガンアクションへと変化。RPGプレイヤーが大多数を占める「FF」の番外編としては思い切ったジャンルではあるが、アクションの苦手なファンでもストーリーを追えるように難易度を極限まで引き下げたイージーモードも用意されており、「アクションは苦手だけどストーリーは知りたい」というユーザーでも結末に辿り着けるはず。腕に覚えのあるユーザーはノーマル以上のモードでプレイすればちょうどいい。「FF」らしくイベントシーンも膨大で、じっくりとストーリーを紡いでいく。さらにしばしば挿入されるハイエンドムービーはまさに「AC」レベルのクオリティを誇り、ユーザーを惹き付けていくだろう。

 「DC」の楽曲を担当するのはスクウェア・エニックスの浜渦正志氏、「DC」の世界観にはハリウッド式デジタルオーケストラがハマるが、自分にそういった曲のフォーマットがなかったので苦労したと語る。そんな浜渦氏が「FFVII」の世界観にどのような楽曲を持ち込んだのかという点も興味深いところ。少なくとも筆者としては、植松伸夫氏が担当したオリジナル「VII」や「AC」とはまた異なる味付けを施すことに成功していると感じている。「VII」の楽曲のアレンジが出てくるというようなファンサービスがないのは賛否両論あるだろうが、イベントシーン・戦闘シーンごとに計算された音楽たちはゲーム音楽として高い完成度を保っていると思う。

 そんな「DC」のゲーム音楽を収めたサウンドトラックがここで紹介するCD。残念ながら、膨大な曲数が投入されている本作のすべての楽曲を収録することは叶わなかったが、オーケストラや生楽器をふんだんに使用したゴージャスな楽曲群は一聴の価値あり。Gacktによる挿入歌と主題歌についてはしっかりと収録してある。未収録曲が多いので、聴きたい曲が入っているかどうか、ここでしっかりチェックしてほしい。

日本クラウン
CRCP-40137/8
2006年2月15日発売
JASRAC表記:
あり

CDは以下から購入可能です。

「DC-FFVII-」Original soundtrack初回限定盤

「DC-FFVII-」Original soundtrack通常盤

 DISC-1       DISC-2


DISC-1

ネタバレしてます!プレイ前の方はご注意下さい。プレイしてみたい方はこちらを参照。

01 Flicker

・メインタイトル画面
メインタイトル画面で流れている曲で、本作「DC」のメインテーマとも言えるものがコレ。冒頭で提示されるファンファーレ調のフレーズはヴィンセントのテーマモチーフと言っても差し支えないもので、様々な楽曲において耳にすることができるでしょう。この曲においても18秒のオーボエ、49秒あたりのフルート、そして1分11秒のホルンなどが何度も繰り返し再現していきます。マニアックな聴き方にはなりますが、まずはこのモチーフをしっかり耳に焼き付けておくことが重要です。

生楽器の録音がふんだんに使われているのも本作の大きな特徴で、主にイベントシーンやムービーの曲では迫力・説得力と感情表現に多大な貢献をしています。この曲は東京フィルハーモニーオーケストラの演奏をホール収録したもので、ミキシングはSOUND INNで行われています。SOUND INNは本作の楽曲の多くをミキシングし、浜渦氏が絶大な信頼を寄せています。録音はともかくミキシングについて、内部のスタジオではなく外部スタジオを使うということも、ゲーム音楽(特にスクエニ作品)では珍しいのでは。
02 Calm Before
    the Storm
はてさて……、サントラ2曲目にして説明のしようがない曲が現れてしまいました。筆者はこの曲をゲーム中で耳にした覚えがありません。曲名だけを見た時は「お祭りの曲かな?」と思ったのですが、ぜんぜん違いますしね。うーん、「嵐の前の静けさ(Calmは"静かな")」?もちろん「Calm」はカームの街にもかかっているのでしょうが。うーん、オンラインプレイオンリーの曲なのかな?筆者はオンはやってないので何とも言えません。この曲についてご存知の方、私に教えてやって下さいませんか?

と書いていたらさっそく、nanashiさんが教えて下さいました。「シングルプレイの場面選択画面で放置するとFlicker後に聞けます。メインタイトルでも聞けますが、そちらではカーソルをひたすら動かしてデモムービーに切り替わるのを阻止しなければなりません」とのことです。これはまったく気付きませんでした。助かりました!
03 Trigger Situation

・デモムービー
デモンストレーションムービー用の曲です。ゲームを開始してからのオープニングムービーではなく、ゲーム起動後に放置しておくと流れ始める、スタッフクレジットがある方のダイジェストムービーの方ですね。荘厳なコーラスを前面に出した、ある意味で強力な「ヒキ」のある曲になっています。その派手さからついオーケストラ演奏と思ってしまいますが、クレジットがないのでサンプリング&シンセによるものでしょう。このハイクオリティなシミュレートはさすが浜渦サンと言ったところではないでしょうか。内蔵音源ではなく、シンセ演奏をスタジオでしっかり完パケミキシングしています。ミキシングはこれも、レコーディングスタジオとして有名なSOUND INNスタジオで行われています。

広がりのあるコーラスやオーケストラ音色もさることながら、楽曲にインパクトと重みを与える鐘、ハリウッドの映画音楽を思わせるせわしないリズム楽器がムービーとのシンクロの度合いを高め、プレイヤーのテンションをぐいぐい引っ張っていきます。実際の映像とのシンクロもバッチリで、これはもう見て下さいとしか言えないのですが、緩急しっかりメリハリをつけることで絶妙のタッチになっているのです。
04 Prologue of
"DIRGE of CERBERUS"


・オープニングムービー
・ドラゴンフライヤー登場(一部)
・第四章冒頭、ルクレツィア
次々に表情を変えていく組曲風のこのトラックは、ゲームスタート後のオープニングムービーで流れるもの。ただし3年前のユフィとヴィンセントをメインにした、シスターレイにおける導入場面は効果音だけで紡がれているので音楽はありません。

トラックのアタマから1分8秒まではルクレツィアを前にしたヴィンセントの独白。その後、実際のムービー中ではちょっと間隔が開きますが、1分12秒からはカームの街を謎の集団が襲う惨劇のムービーに充てられています。そのまま続く悲劇的な2分11秒からは連れ去られる街の人々、そしてヴィンセントのメインモチーフで締め括ります。プレイヤー的にはこの後、初めてヴィンセントを操作してゲームへと入っていくことになるため、このメインモチーフが「そろそろ始まるよ、準備はいいかい?」というサインになっているのです。なお、このトラックもしっかりとオーケストラ録音されています。

なお、実際のゲーム中ではこの曲の前半に挿入されるべき、カームのお祭り(ネットワーク復興祭)で流れている現実音楽は未収録となっています。作品において風変わりな曲なだけに、できれば入れてほしかったですね。まあムービーに合わせたものではあるので、そんなに長くは作ってないのでしょうけど。こんな感じで、わりと印象的な曲が省かれちゃったりしてるんですね、このサントラ。

アタマのルクレツィアシーンのピアノ曲は、第四章の最初にも使われています。もちろんルクレツィアのほこらでの会話シーンです(「ごめんなさい」「なぜ?」「目覚め……」)。また、1分12秒からのパートによく似たモチーフが、カームの街におけるドラゴンフライヤー登場イベントで短く流されています。ただしそちらは後ろにパーカッションは続きません。ME的に完結している、別演奏です。。
05 Fragment of Memory

・記憶の断片メニュー
ゲームクリア後のセーブデータ管理画面内には、新たに「記憶の断片」メニューが現れます。ゲーム中のイベントシーンを好きなだけ鑑賞できる、つまりイベントビューワですね。そこで流れる、しっとりとしたピアノインストルメンタルがこの曲。バイオリンとチェロは生楽器です。サンプリング音源では出せない微妙なニュアンスをお楽しみ下さい。ピアノはおそらく浜渦氏によるシンセ演奏でしょう。ジムノペティのような淡々とした雰囲気が印象的です。曲名はまさしく「記憶の断片」の英訳。

けっこう長い曲で、後半はかなり感情的な高まりを見せますが、ゲーム中においてここまで長く聴く人はまずいないでしょう。だからこそサントラに収録してじっくり聴いてほしい、ということなのでしょうが、この曲よりもサントラに収録すべき曲は他にあったような。

ゲーム本編では終盤に短く使われています。グリモアを失い、ヴィンセントを失い、さらに自らの子供まで失ってしまったルクレツィアが「もう、ダメみたい……心も、身体も」と失望するイベントでした。
06 Fearful Happening

・カームの街
・第六章山道〜WROブリッジ
探索中BGM。初出は最初の探索マップとなるカームの街になります。いわゆるゲーム中の音楽ということになりますが、ベタベタなBGにはせず、探索中に発生する様々なイベントや状況に対応すべく、様々な表情が盛り込まれています。複数組み合わせ使い分けられるリズム隊やその抜き差し、テンポ感の変化、緩急など、二度とは決して同じ雰囲気を再現しないぐらいの展開の豊富さで、飽きさせません。個人差はあっても探索中はだいぶ長い間聴くことになりますが、マンネリに陥ることなくプレイヤーを引っ張ってくれます。1分41秒からの管によるフレーズは他の曲にも顔を出すことから、何らかのテーマ的な意味合いを持たされているものと思われます。WROのテーマということでもなさそうなので、「何かを救うべく奔走するヴィンセントのテーマ」といったところでしょうか。

ハリウッドテイストということではこの曲もまさにそうで、シーンに合わせてコロコロと表情を変えていくさまなどは、このまま映画の中に流れたとしても違和感はありません。音色のゴージャス感もしかり。こちらはリアルタイムBGMとなるためオーケストラ録音はおろかスタジオミックスも行われていませんが、イベントシーンの楽曲にひけをとらない完成度。あまたのゲーム音楽にはハリウッド調をうたうものも少なくないですが、本作の楽曲のクオリティの高さは頭一つ飛び抜けていると言えるでしょう。逆に言えばあくまで劇伴を意識しているため、音楽単体で楽しめるかどうかは聞き手によるところ。映画音楽をCDで聴いているような人ならおいしくいただけると思います。

第六章でWRO本部へ向かう山道の探索中にも流れます。危機感溢れる曲調に思わず「急がなきゃ!」という気分にされてしまうのは思うツボといった感じで、まんまと浜渦氏の策略にはまってます(笑)。

なお、ディストーションギターを採り入れた、さながら「ロックバージョン」といった趣の別アレンジも本編では確認されていますが(第二章ミッション「ガードハウンドを撃退せよ!」)、サントラの方には未収録となっています。同一曲はメインバージョンだけを収録するという方針のようですね。ちょっと残念。
07 WRO March

・WROを援護しろ!
・ドラゴンフライヤーGL戦後
・第六章WRO本部内
ふーん、なんかサントラでの曲収録順がゲームの進行に沿ってなくて気持ち悪いですねー。この曲の初出はカームの街における後半のミッション「WROを援護しろ!」遂行中になります。アスールが去り、リーブ(ケット・シー)とコンタクトした後です。

曲タイトル通り、シンプルで判り易いマーチを組み込んだ探索BGMになっています。2〜3パートのマーチングスネアとシンバルでベースとなるリズムを構築し、そのうえで正統派ヒーローイズムを感じさせる勇ましいオーケストラが鳴り響きます。リズムはともかく、上モノはスタジオ録音も使ってるかな?と思いきやオールシンセ音源。なんだこの「鳴りの良さ」はー。良質なサンプリングを使っていることは想像できますが、それだって素人にはこうは鳴らせません。オーケストラのシミュレートが完璧でないとこの響きは作り出せませんぞ。さすが、「オーケストラの打ち込みシミュレートは割と得意なほう」と語る浜渦氏ならではと言ったところでしょうか。

第一章のラストで行われるドラゴンフライヤーGL戦後、DGソルジャーの銃弾にさらされるヴィンセントをかばうようにWROのトラック(シャドウフォックス)が登場するシーンでも再度流れます。こちらはイベントBGとしての使用ですね。このように、早くから「WROのテーマ」的な使い方がなされていきます。ゲーム後半でまったく使われなくなってしまうのがもったいないのですが、使える場面がないですね。

第六章ではDGに襲われてボロボロになったWRO本部内で流れてきます。当初は勇ましく聞こえたこの曲も、この状況で流れてくるとどこか悲劇的な感じがするのですから不思議なものです。
08 Azul the Cerulean

・シェルクとアスール
・アスールらと対峙atカーム
・アスールらWRO本部へ
・第四章ラスト
・第六章「うぬは、用済みよ」
「蒼きアスール」のテーマ。ツヴィエートの中でもわりと序盤から露出するアスールの登場シーンに流れるイベントBGMです。断続的なリズムと緊迫感を煽るストリングスから成るイントロに始まり、そのうち威圧的な展開に至ります。生っぽいドラムやディストーションギターでロックっぽいアプローチも組み込まれ、巨体で迫り来るアスールの強大さを音で演出していると言えるでしょう(ちなみにこのギターのみ生楽器です)。カームにおける初めての対峙では、アスールが見ている前で行われるDGソルジャーとの戦いにまで通して流れました。最初にイベントBGMと書きましたが、イベントとバトルがシームレスに繋がる場面では、楽曲が引き続き流れることもあるのです。

第四章においてアスールたちがWRO本部を襲撃するイベントでも使われています(「ふん、他愛ない」)。続けて第四章のラストでは、ついに本部内部でアスールとヴィンセントが対峙。天井を突き破ってドハデに登場するアスールという場面で流れるのももちろんこの曲でした。

第六章では、我々に秘められた真の姿を見せるアスール。そこでももちろん流れています。ベヒーモス型のモンスターのような姿で現れたアスールは、味方であるシェルクをも攻撃の対象とします。いわく、「うぬは、用済みよ」。それがヴァイスの命と知り、ショックを受けるシェルク。ヴィンセントとシャルアは彼女を連れてその場を離れますが、直後に思いもよらない(というか予想通り?)悲劇が待ち受けているのです。
09 Fight Tune
"Arms of Shinra"


・VSドラゴンフライヤー
・VSドラゴンフライヤーGL
・ブラックウィドー追跡
・VSブラックウィドー
・VSブラックウィドーII
・VSブラックウィドーTW
・VSドラゴンフライヤーPT
本作での、いわゆるボス戦音楽には共通して「Fight Tune」というタイトルが付けられています。その後に「VS○○」といった具合に副題が銘打たれているわけですが、この曲はその名の通り「対・神羅兵器」です。ツヴィエートとはまた違う、神羅の機械兵器との戦いを彩ります。兵器との戦いを意識してか、オーケストラを主体としつつも、飛翔音っぽいエフェクトやカチャカチャとしたメタリックパーカッションを採り入れているのが特徴的。

中でももっとも主張しているのが、ここまでオーケストラ音色で染め上げてきたからこそ異彩を放つディストーションギター。これによって「ここで戦うのは特別な敵ですよ」ということを匂わせています。オーケストラ+ロック的なエレキギターという組み合わせも、近頃のハリウッドではもはや主流と言っていいでしょう。王道です。積極的にハリウッドテイストを取り入れようとする姿勢が窺えます。1分40秒以降で加わってくる、生っぽいドラムスがさらなる危機感を煽ります。ギター以外はすべてシンセによるシミュレートだということに驚き。ストリングスなんかは比較的容易だとは言え、ここまでシンセで生っぽく鳴らせているゲーム音楽がどれだけあるでしょう?

初出はカームの街におけるドラゴンフライヤー戦。ここで使われているのはサントラバージョンとは少し異なり、生ドラムのフィルインをアタマに付け、いきなりギターの入った部分から始まります。一方、その少し後で戦うことになるドラゴンフライヤーGL戦では、サントラと同様のバージョンが使われていました。第五章の神羅屋敷において、逃げたブラックウィドーを追いかける際、移動中に流れるのはドラゴンフライヤー戦と同じギターバージョン。そのブラックウィドーとのバトルで流れるのはサントラバージョンでした。ここ、曲を分ける必要あったのでしょうか?追跡〜バトルへと通した方が流れがスムーズだったのに。プログラム上の仕様ですかね。

第六章・WRO本部でのブラックウィドーIIとのバトルでは、ドラゴンフライヤー戦と同様のギターバージョンが使われています。統一感という点では、神羅屋敷でのブラックウィドー戦と同じサントラバージョンにした方が良かったのでは。何か、「どこでどのバージョンを流すか」ということについて、あまり考えられていないような気がするのですが。第九章・神羅ビルにおけるブラックウィドーTW戦で使われるのもギターバージョンでした。第十一章・零番魔晄炉における対ドラゴンフライヤーPT戦ではサントラバージョン。うーむ、ドラゴンフライヤーとブラックウィドーでバージョンを統一した方が良かったような気が。
10 Abhorrence Whirls

・リーブによるDGの説明
・エッジでのWRO隊員死亡
・零番魔晄炉BGM
・ヴァイス、ネロを一撃
・宝条の独白
第二章開始直後、シャドウフォックスの中でリーブがディープグラウンドについて解説するシーンで流れる雰囲気ウネウネもの。曲というよりMEですが、映像音楽の分野では場面によってはこういうものの方が、セリフやイベントの進行を邪魔はせず、しかし味付けはできるため重宝されます。くどい心象的なメロディはいらないけど雰囲気は欲しい……そんな製作者の欲求を満たす「劇伴」ですね。音楽単体で聴くことを前提に作られているものではありません。

このイベントでは同時に「ジュノンでの集団失踪事件」についても語られますが、音楽は引っ張られています。一曲で括ることで、ディープグラウンドと失踪事件が無関係でないことを暗に示していると言えます。また、楽曲後半には人の吐息ともうめきともつかない抽象的な音色が混ぜられていますが、これはリーブの問い掛けに対して音で応じているものと思われます。「聞こえますか?風の中に聞こえる……この音が……」。もちろん本編ではSEで補完されていますが。

すぐ後に、エッジの探索中に瀕死のWRO隊員と出会うイベントがあります。隊員は「朱いソルジャーにやられた…」と告げて事切れますが、そのイベントシーンで流れていたのもこの曲でした。その「朱いソルジャー」とはもちろんロッソのことです。前述のイベントと合わせて考えるに、人々から見た(もしくは感じた)DGの脅威、というものを表現するのがこのトラックだと言うことができそうです。DGサイド視点ではなく、それ以外(つまりこちらサイド)から見た時のDGテーマ、ということです。

DGのテーマということではまさしく、第九章のラスト、ディープグラウンドへと続く「闇の扉」が開く時に鳴らされるのもこの曲でした。また、第十一章で探索することになる零番魔晄炉のマップBGMとしても使われています。さらに、ヴァイスの覚醒シーン(手刀でネロを瞬殺)や、ヴァイス(宝条)の独白バックにもうっすらと流されていたりします。
11 Silent Edge

・エッジの街
雨が降りしきるエッジ探索中のBGMです。エッジ探索中はたえず雨の効果音もその場の雰囲気を演出していますが、この隙間を持たせたような楽曲構成も、ユウウツな雨の情景を描き出すのに貢献しています。「カッカカコカッコカッコカッ……」という減衰系のシーケンスパーカッションと、雨によく乗る弦とピアノが肌寒さと緊張感を、ギターが人の気配のしない閑散とした街に佇むヴィンセントの孤独感を表しているように聞こえます。美しい曲であると同時に、なんとなく気だるい感覚を覚えさせる曲でもありますね。マップ、シチュエーションと高いシンクロ度を持つ楽曲で、探索BGMとしてはかなり好きなタイプです。もちろん、エッジで流れていればこそですよ。「DC」のエッジにはこの曲以外あり得ないだろう、というぐらいの説得力がありませんか?

なお、やはりギターのみ生楽器を使用しています。浜渦氏と言えど、やはりギターに関しては打ち込みよりも本物をとるようです。筆者の個人的な感触では、あらゆる楽器の中で最もシミュレートが困難なのがギターなんです。最近は機材も良くなっているのでそこそこの打ち込みを聴くことも増えましたが、ひと昔前のギターの打ち込みなんてとても聞けたもんじゃありませんでした。ディストーションバリバリのギターならばエフェクトでの誤魔化しも可能ですが、こういったナチュラルなギターはそれができないぶん難しいのです。だったら本物を使っちゃおうということになります。それも最近のゲームだからできるんですけどね。内蔵音源での演奏しか選択肢のなかった頃は、ギターをやりたければ打ち込む以外になかったのですから。ゆえに、ひと昔前の(内蔵音源ものの)ゲーム音楽では、ギターってあまり使われない楽器だったのです。「FF」の植松氏はかなり積極的にチャレンジしてましたけど。
12 Undulation

・「こやつか?」
・シェルク、WRO本部を特定
水面下で動く敵の存在(ツヴィエート)を装飾する雰囲気もの。うねるようなシンセが印象的ではありますが、それだけでもあります。「曲」と言ってよいのかどうかというもので、短いサイズのループ。サントラに入れるほどでもなあ……という気もしますね。第一章・カーム探索中に挿入されるアスールの初登場イベント(シェルクとの会話「こやつか?」)でチラッと耳にすることができます。どういうわけかヴィンセントはやつらに狙われているようです。

第四章の冒頭、シャルアとヴィンセントの会話シーンの後に挿入される、シェルクとアスールの会話イベントでも流れています。ヴィンセントの動きを解析していたシェルクたちに、WRO本部の場所が特定されてしまうシーンです。
13 Counteroffensive

・第四章WRO本部内
・第六章WROエントランス
第四章、WRO本部探索中にかなり長い間に渡り聴き続けることになる曲です。第六章で再度本部を訪れる際にも、エントランスで流れることになります(WROブリッジは「Fearful Happening」、WRO本部内は「WRO March」が流れる)。ウッドのようなベース音色とユニゾンのピアノ、妙に色気のあるサックスが全体にジャジーな雰囲気を醸し出しつつも、攻め入られる緊迫感は欠落していないのがお見事。セクシーなのに焦燥的……。なかなか両立し難い要素に思えますが、スパイ映画の劇伴ってこういうのありますよね。そう思って聴くと、左側で鳴っているパーカッションなんかもろにそんな感じです(笑)。この色気はシャルア姉さんを表している、わけではないと思います。

なお、サックス奏者は「キングダムハーツ」でもサックスを演奏した前歴のあるお人で、本職はプログラマです。
14 Ten Year Reunion

・シャルアとシェルク再会
・10年ぶりの姉妹喧嘩
第四章も佳境。冒頭のショッキングなMEは、ヴィンセントに対してシャルアが銃を向ける場面です。しかし、実はその銃は背後に忍び寄るシェルクに向けられていたものでした。そしてシャルアは「やっぱり……」とつぶやきます。曲名の「リユニオン」から「FFVII」ファンとしてはついついジェノバとかセフィロスとかを連想してしまいますが、ここでの「10年越しのリユニオン」は、まさしく10年ぶりに再会した姉妹・シャルアとシェルクを指しています。すぐに優しくももの悲しくなる楽曲は、姉妹の切ない会話に寄り添うものです。ここで提示されるメインモチーフ(16秒〜木管)は「姉妹のテーマ」と解釈したいところですが、シェルクバトルの曲にも使われているモチーフであることから「シェルクのテーマ」という扱いのようです。今後、いくつかの楽曲に出てきますので覚えておいて下さい。もちろんこの曲でも全体に散りばめられています。

楽曲は1分39秒と2分52秒あたりを境に3つのパートに分けられますが、ゲーム中での実際の使用ではそれぞれ少し間隔が開きます。1分39秒以降はシェルクが10年間に渡って味わい続けてきた苦痛を語るシーンに、2分52秒以降はリーブがやって来てシェルクを制止し、シャルアの身体について説明するシーンに充てられ、また、バトルの後にシャルアが駆け寄る場面で再度使用されています。このように、短いパーツを1トラックにまとめて1曲としているものが多いのも本サウンドトラックの特徴です。もともと個別の曲なのか、それを想定したうえで1曲として製作されているのかはわかりませんが。

なお、この曲ではフルート、クラリネット、オーボエといった木管群に生楽器を採用しています。
15 Fight Tune
"Girl Named Shelke"


・シェルクとの戦闘
・シェルクとネロ激突
上での悲しい会話シーンの後に行われる、シェルクとの戦いで流れるバトル音楽です。テンポの速いリズムに生楽器のヴァイオリンとフルートが、「シェルクのテーマモチーフ」を幾度も重ねていきます。悲しいイベントの後だからこそ、これら生楽器による打ち震えるかのような切なさがより響いてきますね。他のバトル音楽とはまったく異なるカラーで、編成も少なめでありながら決して埋もれることなく主張しています。イベントやシェルクのキャラ設定と楽曲が一体となり、良い相乗効果を生み出している好例です。

イベントBGMとしても使われており、第九章の冒頭でシエラ号に忍び込んだネロに対してシェルクが戦いを仕掛けるイベントがそれ。プレイヤーが関わることのない戦闘ですが、先の用例とは楽曲の持つ意味がまったく異なっているのです。前者が「敵の曲」だったのに対し、後者はシェルクの立ち位置の変化から「こちら側の曲」になっているのです。「私にもわかりません」という言葉が示す通り、シェルクの中でも何らかの変化が現れているようです。
16 Fight Tune
"Killing One Another"


・VSアスール
WRO本部での対アスール戦で使われるバトル音楽。アスールのテーマ曲「Azul the Cerulean」が組み込まれているのがわかりますでしょうか(1分9秒〜)。シェルクバトルの曲に比べると、こちらは正統派浜渦バトルミュージックという感じ。「FFX」の「襲撃」などを彷彿とさせる、ピアノも用いた盛り上げ方は氏ならでは(48秒以降の盛り上がりに注目)。

でもってコレ全部シンセで鳴らしてるってところが、毎度のことながらやっぱり「えー?!」って思っちゃう。ちょっとシンセを持ってて打ち込みなんかやってみたことのある人ならわかりますよね?音源の良し悪しはもちろんですがそれ以外の部分、「生のオーケストラっぽい表情の付け方」はさすが!の出来。一度でいいから浜渦氏のシーケンスデータを覗いてみたいものです。どんなことをやっているのか……。もちろんそれをしたからといってすぐ真似できるほどアマくないですが。この響きは理論的な和声の組み立てとかもろもろを熟知していないと出せない音ですし。ここまでやられちゃうと他のコンポーザーやプログラマが大変ですヨ。

この曲はもちろん、第九章の神羅ビル最深部で再度アスールと戦う際にも流れます。ただしそれは第一形態(普段の姿)の時のみ。真の姿を見せてからは別の曲が流れます(こちらはサントラ未収録)。
17 Uneasy Feelings

・ニブルヘイム〜神羅屋敷
第五章で探索することになる、ニブルヘイム地下水道及び神羅屋敷で流れるマップBGがこちら。隙間を埋める空間音がうねりまわるなか、心拍音を思わせる低音のパーカッションと、メタルヒットの音色がどことなくオリジナル「FFVII」の「星に選ばれし者(神羅屋敷で流れていた曲です)」を思わせます。緊張感を維持するストリングスとボイス音色、淡々としたピアノはどこまでも不気味で、やっぱ神羅屋敷はこうなっちゃうかという感じで納得。何が出てきてもおかしくない、得体の知れない恐さがあるんですよね、この屋敷には。ヴィンセントだってもともとここで寝てたわけですし(笑)。では、浜渦氏は「FFVII」の曲を意識して楽曲を制作したのか?という根本的な疑問が生じるわけですが、全体のトーンから判断する限り、そういったことはあまり気にはしていないと思われます。神羅屋敷については演出サイドから「オリジナルの神羅屋敷っぽく」というオーダーがあったのかもしれませんね。

一応オールシンセ演奏です。ピアノや弦はリバース(逆回転)音源も使われていて、独特の雰囲気を作っています(楽曲中盤、1分13秒や1分41秒などで顕著に、右側寄りで聞こえます)。

シンセサイザオペレータの山崎良氏によると、「FFVIIというとどこまでも暗い闇が続く、殺伐とした精神世界といったイメージがあるのですが、それを音で表現できないかなと思って、遠くでガーンと重い金属を叩いたような音を入れてみました。妙にハマったので、いろいろな曲で入れてあります。個人的に本作の世界観を象徴する音になったと思います」とのこと。この曲で聞こえるメタルヒットなんかもそれでしょうか。
18 Memories with Lucrecia
・第五章回想-初対面
・第七章回想-昼寝
・最終章回想-ごめんね
43秒のあたり以降が、第五章で挿入される回想シーン(ヴィンセントとルクレツィアの初対面)にて流れるのが初出となる曲です。サントラのサイズで使われているのは、第七章のやはり回想イベント。風が気持ちの良い木陰でつい居眠りをしてしまった若かりし頃のヴィンセントと、「それで護衛が務まるのかしら」とからかい気味に話しかけるルクレツィア。「いっしょに食べる?」とお弁当を差し出すルクレツィアの笑顔が印象に残る場面です。

最終章冒頭のイベントでも使用されています。第七章と同じ風の気持ちいい場所で、ルクレツィアが「失敗ばっかりだね、私」「ごめんね」と自分の気持ちをヴィンセントに伝えるシーンです。ここのルクレツィアの芝居のおかげで「なんだこのアタマの悪そうな女は」という印象をユーザーに持たせてしまったのは失敗でしたが、楽曲には関係ないので(笑)。でも正直、オリジナル「VII」では謎めいた存在だった彼女を本作で詳細に描いたことで、嫌いになった人はいても好きになったというユーザーはいないと思うんです。

この曲が回想シーンばかりで使われているのは曲名の通り。というかルクレツィアについては本来、すべて回想なんですけどね。だってもう目覚めることのない人ですから。今回はシェルクという媒体を通してちょくちょく出てきてますけど。なお、ヴァイオリンとフルートが生楽器による演奏になっています。楽曲冒頭のピアノから提示されているモチーフはもちろん「ルクレツィアのテーマモチーフ」です。ヴァイオリンが追いかけるフレーズももちろんそれ。彼女のテーマが出てくるのはだいぶ後(ゲームでは終盤、サントラではDisc2-9)になりますが、彼女絡みの楽曲ではこの曲のように、早くから伏線が張られているのです。
19 Sneaky Cait Sith

・第二章ケット・シー登場
・第五章魔晄炉潜入
Cait Sithって何だ?と一瞬思ってしまいましたが、「ケット・シー」ですね。あの、第五章での潜入イベントで流れていた曲です。ゲーム中で唯一ヴィンセント以外を操作できるイベントですが、ケット・シーは武器を所持しておらず、格闘も激弱!見つからないように隠れて移動するのが基本となるため、敵に追われて思わず苦戦したプレイヤーも多いようです。こういう「避けて通れないミニゲーム」みたいなものがシナリオ上の必須ルートに組み込まれているのもスクウェアっぽいですね。なお、ケット・シーの声優さんは「X」のアーロン、「X-2」のトーブリと同じ石川英郎サンです。

なお、本作ではこの曲が「ケット・シーのテーマ」ということで間違いないと思います。カームでのケット・シー初登場イベントにおいて、この曲の2分18秒以降が使われていました。ただし、ピチカートとピアノのみのバージョンでしたが。楽曲自体はケット・シーのキャラというよりも、潜入そのものにスポットを当てて作られたような曲調です。リズムにいろいろと面白い音が散りばめられているので、隅々にまで耳を澄ましていると不意打ちで笑わされてしまうかもしれません。

フルートとチェロが生ものになっています。というよりこのフルートのニュアンスは打ち込みでは出ないでしょう。また、52秒からチェロが奏でるフレーズはさりげなく「WRO March」の金管メロディになっています。ケット・シーを操る人間がリーブであることを考えれば、なるほどなー納得させられてしまいます。
20 Darkness

・第五章ネロ初登場
・シェルクとネロ対峙
・第十章ネロバトル直前
・第十一章ネロバトル直前
第五章、零番魔晄炉に潜入したケット・シーの前に漆黒のネロが姿を現すシーンで短く使われているのが初出。ゲーム的にもネロの初登場シーンになります。もちろんこの曲はネロのテーマと言ってよいでしょう。第九章の冒頭、異変の起きたシエラ号のエンジンルームでシェルクとネロが対峙する場面でも流れています。

もちろんヴィンセントとの直接対峙に際しても流れています。第十章でのネロとのバトル直前、「初めまして……ですかね?」のイベントです。第十一章における、零番魔晄炉中心部における再対峙(ユフィを闇から救い出した後、「あれは?」の問いに「死、ですかね」と応えるところ)でも流れていました。

奥から手前に向かって飛来するかのような効果音的な音色が、ネロの身体を包んでいる暗黒物質(?)の動きを思わせます。しばしば映像とシンクロするんですよね、この音。それも見越して入れたんなら完敗といった感じです。それ以外ではピアノと弦を中心とした悲劇的・絶望的な雰囲気がとにかく印象に残る曲で、敵のテーマ曲としてはアスールの曲と同程度の使用頻度となっています。初登場の時こそさりげないですが、ゲーム終盤でかなりフィーチャーされてきますので、耳に残るのも当然ですね。あまり目立つことはなくともこういった背景をしっかりと支える曲って、意外と強く残ったりするんですよね。
21 Lifestream

・ルクレツィアのマテリア
・第九章オメガとカオス
第五章・神羅屋敷において、ヴィンセントがルクレツィアの残したマテリアの映像を見る際(?)に流れる楽曲です。彼女の残像が「オメガはライフストリームから生まれる」と語る、物語の核心に触れるシーンです。いったん終わりかけて1分10秒、そして2分35秒、3分27秒から別の曲に切り替わるような構成になっていますが、ゲーム中でも実際にこのように続けて流れます。場面展開に完全にシンクロさせるため、間隔を取ってあるわけですね。

なお、23秒からのフルートによるメロディは「ルクレツィアのモチーフ」と言えるもので、彼女絡みの楽曲でたびたび顔を出すものです。1分18秒以降もそうですね。これらのモチーフを繰り返すフルートとオーボエは生楽器の演奏です。3分27秒からのブロックもこのモチーフを主体にしています。

また、最初のブロックは第九章の冒頭、神羅ビルを目前にしたヴィンセントがシェルクと交信している途中、突如ルクレツィアの言葉を喋りだすシェルクに触発されるようにしてルクレツィアの幻影を見るイベントでも流れています(文字にするとわかりにくいなー)。ここではオメガと、ヴィンセントの内に宿るカオスの関係について語られています。こちらも核心の部分と言ってよいでしょう。

なお「ライフストリーム」は「VII」の世界観の根幹を成す概念で、「星を巡る生命の循環」といったようなもの。人が死ぬことを「星へ還る」と表現しているのは、この概念によるものです。詳しくはオリジナルの「FFVII」をプレイして下さい。というか「VII」をやっていない人が本作をプレイするとは思えませんけどね。だって、原作を知らなければキャラや話がチンプンカンプンでしょ?
22 Rosso the Crimson

・第三章ロッソと初対峙
・第五章ロッソと再度対峙
・奪われるエンシェントマテリア
エッジでのボス戦の後、ヴィンセントが初めて朱のロッソと対峙する場面で初出となる曲です。もちろんロッソのテーマ曲という解釈でかまいません。第五章の神羅屋敷での再度の対峙、およびブラックウィドー戦後、ロッソがヴィンセントに不意討ちをくらわせてエンシェントマテリアを奪取する場面でも流れます。

あたりにあるものをかまわず切り裂くような威圧感、そして切り裂かれた者のうめき声を思わせるかのような狂気的な弦楽器がとにかく恐く、敵のテーマとして圧倒的な存在感を放っています(この弦は当然ながら生楽器です)。惜しむらくは、ゲーム中で3度しか流れないこと。それしか流れないのにこれだけ印象が強いのですからたいしたものですが、たとえば彼女との戦い(第八章)の前に挿入されるイベントでも流してほしいところでした。なぜここでは流さなかったのでしょう?
23 Mysterious Ninja

・第六章ユフィの名乗り
・第十章ユフィの名乗り
第六章の始め、ヴィンセントを助けた謎の「忍」がシャドウフォックスの中で、自分の正体を大袈裟に名乗る際にバックで流れる曲。カッコよくキメるところまではいいものの、バランスを崩して壁に頭を強打!楽曲もそれに合わせたサイズ調整がなされており、30秒ほどに編集されてます。なのでこのシーンではサントラのように長くは流れません……。

第十章のラスト、ヴィンセントとネロが対峙するところへ颯爽と現れたユフィが名乗りを上げるシーンでも再登場。しかしやはりサイズ調整がされており、結局サントラ収録のフルバージョンで流れることはゲーム中ではないのでした。では何を想定して浜渦氏はこのサイズで作ったのでしょうか……。まあ制作の過程でいろいろあったんでしょうが。

筆者はこの曲、ゲームで聴いた時にフルオケだと信じて疑わなかったのですが、なんと生なのはフルートとオーボエといった木管だけ。この弦や管の生々しさはどう説明するんだい!?ゲームにここまでやられたら、テレビや映画の人が大変ですヨ……。
24 Ninja Girl of Wutai

・アタシが助けたんだぞ
・飛空艇での会話
第六章のユフィ初登場シーンで流れる、彼女のテーマ。というか曲名がもろにその通りですね。「ウータイのニンジャガール」と言ったら彼女しかいません。カッコよく名乗りをあげているところでは上の「Mysterious Ninja」が流れていますが、頭をゴチーンして「イテテテテェ……」のあたりからこちらの楽曲に切り替わります。驚けよ、心配しろよ!

第七章の飛空艇内部で彼女に話しかけた時にもこの曲に切り替わります。飛空艇内部では通常「Return to the Subject」が流れているのにもかかわらずわざわざ切り替えるあたり、イベントスタッフの「ユフィ愛」が感じられますね(笑)。それでもって「オエー」ですから、オリジナル「VII」からの生粋のユフィファンも思わず顔がほころんでしまいそう。モーションを見ているだけで飽きません。かかずゆみの嘔吐が聞けるのは「FF」だけ!

彼女のテーマ曲としてはオリジナル「FFVII」の「忍びの末裔」がありますが、一方で「マテリアいただき」を彼女のテーマだとするファンもいます(あくまでシャレのレベルで)。本作のユフィのテーマはその中間点といった感じでまとまっており、違和感を感じませんでした。あれ?これ、原作でも流れてなかったっけ?とまで言うのは大袈裟かもしれませんが、なまじオリジナルがあるといろいろ比較されてしまうのは仕方ありませんな。

なお、こんな軽めの(使用頻度も多くはない)曲ですら、弦とフルートは生を使っています。よっぽど気に入ったんでしょうか、「これも生にしちゃえ!」というノリなのか、はたまた小品と言えど手は抜かない姿勢の顕れなのか。しばしば挿入される和風な木製パーカッションと、どことなく異国情緒のあるメロディが「ニンジャ」の雰囲気を作っています。ベタな和風にはしないというか、原作でも和風ではなかったですもんね。
25 Sudden Parting

・シャルアとの別離
第六章・WRO本部における、姉妹の別れのシーンに流れてくる楽曲。「Ten Year Reunion」のアレンジとなっています。シェルクを救うために我が身を犠牲にしたシャルア。「生きててくれてよかった……今でも…大好き・・・だよ」というシャルア最期の言葉は、シェルクにどう響いたのでしょうか。「バカ…みたい…」は決して本意ではないのでしょうが、他に表現のしかたを知らないシェルクの戸惑い。10年の時を経て再会し、これから10年を取り戻そうとしていた姉妹を襲った突然の悲劇を、楽曲が憎らしいほどに盛り上げます。一歩間違うと「チープなお涙頂戴音楽」になってしまうところですが、既出曲(テーマモチーフ)をうまく利用することで意味を持たせています。

楽曲は大きくふたつに分かれていますが、後半(45秒〜)のピアノソロは、おそらくアスールの手にかかったのであろうシャルアの体液が、扉の下から染み出してくるところで鳴り始めるものです。内蔵のほとんどが人工物となっている彼女の体液は、赤いものではありませんでした。いろいろな意味でショックなイベントでしたね。

なお、フルートのみ生楽器です。
26 Discovery in Sadness

・本当に大切なもの
第七章はバトルなし、基本的にイベントのみで進行するパートです。二度と目覚めることはないだろうという状態で、かろうじて生命維持だけはなされているシャルアを前にして、「お前こそが彼女の命だったのだろうな」とシェルクに語りかけるヴィンセント。「私にはわかりません。あなたにはわかりますか?」と返すシェルク。そこで流れたのがこの曲です。ヴァイオリンとフルートが生楽器による演奏です。

「人は本当に大切なものを守るために、命をかけることができる。それが人、なのだろう」と語るヴィンセントの言葉、シェルクはそれを理解して、「人」になることができるのでしょうか。フルートのメロ、そして終盤のピアノによるメロディに「Ten Year Reunion(シェルクモチーフ)」が組み込まれています。シェルクが「本当に…大切なもの……」と自問するようにつぶやくところにこのメロディがピタッと合わされているあたりに、重要な意味が込められているように思えます。彼女が「本当に大切なもの」として頭に浮かべたのは、何だったのでしょう。
27 A Proposal

・私の中に入れてみませんか
第七章、ルクレツィアとオメガに関するデータの不足に悩むリーブに対し、シェルクが自らの身体に刻み込まれているデータの断片の提供を申し出るシーンで流れる楽曲。曲名は「提案、申し入れ」です。大人顔負けの理論で「お互いの利益に繋がると考えますが?」と、大の大人相手に淡々と語るシェルクはとても年相応には思えません。流麗で堂々とした楽曲はそんなシェルクを装飾しつつ、物語の核心に大きく関わってくるであろう「真実」が動き出す、そんな予感を感じさせるものになっています。フルートとピッコロが生楽器になっています。ゲーム中で一度きりしか流れないのがもったいない曲です。

この曲にシェルクモチーフが取り入れられているのは当然として、ルクレツィアモチーフも組み込まれていませんか?そして他の楽曲も比較していろいろ聴いてみると、シェルクモチーフとルクレツィアモチーフってよく似ているんです。たまに「これはどっちだ?」と混乱しそうになるぐらい。で、これ、わざと両者を似たものにしてあるんじゃないかと思うんですよ。本作ではシェルクはヴィンセントとルクレツィアを繋ぐ重要な役目を担っているわけで、場合によってはルクレツィアの言葉を代弁したり、ルクレツィアの想いをヴィンセントに伝えます。そんなシェルクのモチーフとルクレツィアのモチーフを近いものにすることで、音楽演出の上で実に巧妙な伏線を張っているんじゃないかと考えます。
28 High-Spirited

・飛空艇団登場ムービー
ユフィの「外!外!」の声に導かれて外に出たリーブとヴィンセントの前に現れたもの……。第七章、WRO本部にシドのシエラ号率いる飛空艇団がやってくるムービーで流れるイベント音楽です。ティンパニとスネアによるマーチングリズムに始まり、勇ましいブラスと風を切るようなストリングスがシーンを盛り上げます。壊滅的打撃を受けて一度は立ち止まりかけたリーブに対し「残りの戦力を集めろ!ミッドガルにカチ込むぞ」と煽り立て余裕の笑みを見せるシド。「FFVII」ファンにとって嬉しいシーンではないでしょうか。「AC」でのシドはチョイ役だったので……。もっとも本作でもチョイ役ですが

ムービー曲ということで迫力のフルオケ演奏になってます。
29 Return to the Subject

・飛空艇内BG
第七章で探索する、飛空艇シエラ号内部で流れるBG。物静かに始まりますが、途中からマーチ的な展開を見せ始め、「WRO March」を取り込んでいきます。壊滅した本部にかわり、これからはここシエラ号こそが本部となるのです。まあ第七章の間でしか聴くことはできませんが、緩急をつけた展開は飽きのこない作り。フルートとオーボエが生楽器です。
30 Marching Tune #0

・クラウドら初登場ムービー
第七章・クラウドやバレット、ティファが初登場する、地上部隊侵攻開始ムービーで流れる曲。タムタム系パーカッションを中心に、ハリウッド調の勇ましいオーケストラが鳴り響くさまはまさに映画音楽といった感じ。「AC」以来の「VII」メンバーたちの終結に思わずワクワクしてしまいます……っておい、レッドXIIIはどうした?!

やっぱりこれもオールシンセ演奏だそうです。「Marching Tune(Disc2-2)」と比べてもそれほど聞き劣りしていないのが凄い……。

DISC-2

01 Return to the Origin

・SNDムービー
第七章、センシティブ・ネット・ダイブを実行したシェルクが、自らの内部に刻まれた断片とオメガレポートの内容とを繋ぎ合わせたデータを具現化して見せるシーンで流れるムービー音楽。ムービーの美しさに目がいってしまうと思いますが、ルクレツィアの独白も重要なことを言っているので聞き漏らすことのないよう。

冒頭からルクレツィアのテーマが提示され、彼女の研究理論を具体的な映像として見せていきます。強と弱、動と静のメリハリをつけた展開は完全にムービーの内容に合わせたもので、もちろんフルオーケストラ録音となっています。
02 Marching Tune

・ミッドガル侵攻ムービー
本作ムービーのハイライト、シド率いる飛空艇団とヴィンセントらの空中部隊、クラウドら地上部隊がミッドガルに侵攻を開始するド迫力のムービーを彩る楽曲です。冒頭の金管はヴィンセントモチーフを奏で、太鼓がドンドコと鳴り響いて緊迫感を盛り上げる部分(15秒〜)は敵の地上部隊の展開、そして空中部隊が降下開始。53秒からのどことなくかわいらしいブロックはシェルクがモニタリングを開始するあたり、1分25秒からは「Marching Tune #0」のフレーズが鳴り響き、クラウドら地上部隊の侵攻。1分40秒からは「Fearful Happening(Disc1-6)」のフレーズが挿入され、ロッソとクラウドが激突。そこから戦場は混乱をきわめ、各所入り乱れての激戦が繰り広げられていきます。

既出曲のフレーズがあちらこちらで顔を出してくるので、映像と合わせてその曲が使われているわけ、というようなものを考えながら聴いていくと、浜渦氏の明確なサウンドプランニングにはっとさせられることもあるでしょう。ある意味、「DC」音楽前半の集大成的な楽曲になっているのです。言うまでもありませんがフルオーケストラ録音です。
03 Fight Tune
"Crimson Impact"


・VSロッソ
曲名が示す通り、第八章のラスト、紅のロッソとの戦いで流れる楽曲です。不気味な吐息のような音が入っているのは、獲物を捉えて残忍な笑みを浮かべるロッソのイメージでしょうか?それ以外はわりと無難にまとまっている曲で、これといった強烈な印象がないのが物足りないところ。殺しそのものを楽しむ彼女の狂気とでも言いますか、たとえば彼女のテーマ曲である「Rosso the Crimson(Disc1-22)」で聴けたような、ヒステリックなヴァイオリンを取り入れるなど、印象を強くする手はあったように思います。ましてゲーム中では一度しか流れない曲であるゆえ、アスールの曲ほど印象に残っていないのが残念です。

本作の全体的な印象として、ちょっとむやみに曲数を増やしすぎたところはあるかもしれませんね。イベントについては「シーンごとにひとつひとつピタリと付けていくスタイルを採った」という浜渦氏の判断は尊重したいところですが、それも細切れに使われることが多いため「どれがどの曲か」というわかりにくさを生んでます。サントラ未収録の曲も多いのでなおさらです。そしてバトル曲ですが、たとえばツヴィエートの曲は統一するというテもアリだったのでは。それぞれにテーマ曲があるので、イベントなどでは各々のテーマを使ったとして、バトルは共通でイケたんじゃないでしょうかね。
04 Under a Full Moon

・ロッソ、自滅
ヴィンセントへの敗北を認められず、「あんたなんかに殺されてあげない」と自ら命を絶つことを選択するロッソ。満月を背景にして高笑いをしながら、中央塔から堕ちていく死に様はなんとも言えない後味をプレイヤーに残します(曲名の「Full Moon」はここから)。ピアノと弦が悲劇的な旋律を奏でていますが、オールシンセ音源です。

というかそれぐらいでツヴィエートが死ぬとも思えないんですが。それより、これ以前にロッソはクラウドとも対戦しているハズなのですが、その決着はどうなったのでしょう。クラウドは健在ですから何らかの形で闘いは中断されたのでしょうが、そっちについてはロッソは何も感じていないのでしょうか?
05 Trespasser

・神羅ビルBG
第九章の神羅ビル内部マップBGM。タイトルは「侵入者」ぐらいの意味でしょうか。探索中に絶えず流れ続けることになる曲です。楽曲に漂う焦燥感と緊迫感が、物語の舞台がいよいよ核心に近付いてきた事実を感じさせます。さらにそこにヘビーなギターのリフなんかも組み込んでしまうあたりは浜渦氏の個性と言えるものでしょう。縦横無尽な音作りは健在です。ちなみにやはりこのギターは本物のギター演奏を採用しています。

どことなく楽曲全体の空気感が「パラサイトイヴ」していると感じるのは筆者だけでしょうね。つまり、けっこう好きなタイプの探索BGだということです。このぐらいわかりやすいビートの効いた曲って、本作にはあまりないものですから。
06 Tranceformation
      into Chaos


・ヴィンセント、カオスに変化
・第九章アスール瞬殺
曲名がもうズバリなので解説するまでもないのですが、ヴィンセントがカオスへと姿を変えるイベントで使われている曲です。24秒までの部分は、第三章のラスト、ロッソに攻められたヴィンセントがカオスの姿に変化するシーンで初出となります(ただし演奏は別ファイルで、完結するようになっています)。サントラの形で使われるのは第九章が初。神羅ビル最深部で「真のアスール」と戦う中で、生命の危機に瀕して制御しきれなくなったカオスが噴出、そのアスールを瞬殺するイベントがそれ。

ジワジワと迫り来るようなオケ音色でカオスの持つ圧倒的な力を表現していますが、これらの音色もやはりシンセ演奏です。さすがにちょっと慣れてきましたので、もう「これがシンセ?」とは言いません。人間というものは慣れるのが早いので、本作を聴き込むうちにもうコレが基準になってしまうんですよね。映像もそうで、「AC」や「DC」の映像はユーザーにしてみればもう標準クオリティ。このレベルのものを出さないと「チープ」と言われてしまうわけですから、ゲームクリエイター(CG屋さん、音楽屋さん含む)というのも大変な仕事です。
07 Splinter of Sadness

・初めて君と出会った場所
・この身にカオスを宿した人
第五章と第六章の間に挿入される、回想シーンの後の「ルクレツィアのほこら」イベント(君と…会ったよ…初めて君と、出会った場所で……)で初出となる楽曲です。冒頭のヴァイオリン(生楽器です)が早くもルクレツィアモチーフを奏でています。以後もヴァイオリンはこのモチーフを繰り返していきます。キャラクターモチーフを徹底的に押していく手法は定番的な音楽演出ではありますが、イベントとイベントの間がだいぶ離れてしまうゲームにおいて(プレイのテンポは人それぞれですから)、明確なモチーフによる「耳」への訴えは不可欠なものです。プレイに没頭するあまりストーリーを忘れがちなユーザーに、「今から○○のお話が始まりますよ」「ここからは○○ですよ」と無意識のうちに伝えているわけです。特にアクションやRPGというジャンルは、プレイ時間がかさむうちに本筋を見失いがちですからね。

サントラでこの位置にあるのは、もちろん第九章ラストのイベントを受けてのものでしょう。ヴィンセントが自分の体内にカオスを宿したのは他でもない、ルクレツィアであることを理解し、「なら、この苦痛は……」と言いかける場面です(やはり「罰」と言いたいのでしょうか)。このシーンではサントラに収録されているほど長くは使われておらず、終盤をフェードインしケツ合わせでサイズを調整してあります。
08 Deep Darkness
       of Shinra


・ディープグラウンドBG
・ネロとヴァイス、ひとつに
第十章、ディープグラウンド探索中に流れるマップBGです。「神羅の深き闇」はまさに、ルーファウスですらその存在を知らなかったというディープグラウンドのこと。もしも3年前、ジェノバ戦役の頃にDGの存在が表面化していたら、力関係は大きく変わっていたことでしょう。それでも「セフィロスが最強であるべし」という「VII」世界の根本は揺るがなかっただろうとは思いますが、本作のヴァイスってセフィロス並み、もしくはそれ以上の強さじゃないですか?となると「G」の強さも気になるところですが、「G」もセフィロスと同様に片翼を持っているんですよね。セフィロスと「G」は敵対関係にあるのか、それとも融合することで絶対的な存在となるのか、さらなる続編でそのあたりが描かれることはあるのか。「DC」によって明らかになった謎もあれば、新たに提示された謎も気になるところです。オンラインで明かされるストーリーもあるようですが、オンはプレイしていないからなあ。

脱線してしまいました、曲の話をしましょう。この曲は後にイベントBGとしても使われており、第十一章終盤、ヴァイス(オメガ)がヴィンセント(カオス)に敗れたことに狼狽する宝条の前にネロが現れ、ヴァイスとひとつになろうとするシーンがそれ。不純物(ネロ)を受け入れてしまったヴァイスは宝条の望む本来のオメガではなくなり、彼の野望(とともにその存在も?)は藻屑となって消えたのでした。再登場はあるのか、宝条?

オケ音色が盛大に「闇」を描き出すこの曲ですが、不気味さや恐怖感はほとんどなく、どちらかというとその「闇」に迫る者の決意を表現しているように感じます。ケリをつけねばというヴィンセントの意志、そして、我が身にカオスを宿したのが誰なのか、ということを知ってしまった戸惑いと哀しみ。打ち鳴らされる鐘の音に、ヴィンセントの「罪と罰」を感じ取るのは筆者だけでしょうか。なお、これもすべてシンセです。
09 Lucrecia Crescent

・グリモア博士の死
・なんで親父と
自らの研究の正しさを証明するため、危険を顧みずカオスの分析を急ぐルクレツィア。結果、異変をきたしたカオスの影響によってグリモア博士を失うことになります。そんな第十章のイベントに流れた、曲名通りの彼女のテーマ曲がこちら。しかしここでは場面自体がそう長くはないうえにロードの都合からか曲もブツ切れで(ちょうど33秒のあたり)、しかも音量も低めなためこの曲であると認識することすら困難で、情緒も感情移入もありません。曲が流れることで生じるはずの効果もここでは感じられず、非常にもったいないことになっています。「FF」は昔からキャラクターテーマ曲の使い方がヘタなのですが、本作も例外ではないということでしょうか。作曲家がどれだけ優れた曲を書いたところで、イベントチームが音楽の使い方を知らなさすぎるのでは意味がありませんよね。サウンドセクションのみならず、演出サイドにも「音・音楽」に精通したスタッフが欲しいものだと毎度のことながら痛感させられます。まあ単純に、映像で描かれている悲劇に対して曲が軽すぎない?明るすぎない?という疑問もあるんですけれど。

第十一章冒頭の回想シーンでも流れます(1分40秒〜)。というか、こちらが本命ですね。グリモア博士とルクレツィアの関係に疑問を抱いた若かりしヴィンセントは彼女を問い詰め、「自分のせいであなたの父親を殺してしまった」と言う彼女は以後ヴィンセントを避けるようにし、結果として宝条のもとへ行ってしまったのです(このあたりの設定がまた、ユーザーの一部にアンチルクレツィアを生みもしましたが)。このことはさらにセフィロスを生む結果にも繋がり、ヴィンセントの罪意識の原因ともなります。テーマ曲としての使い方は真っ当なものですが、先のグリモア死亡シーンでの伏線が不完全なものになっているため、ちょっと唐突な感じもしてしまいますね。立つ曲だけになおさらです。

この曲のメインメロディは「ルクレツィアのモチーフ」として、彼女に関するイベントで流される楽曲に散りばめられています。それらの曲でゲーム序盤から伏線を張った後、終盤にこの曲で回収するわけです(回収には失敗してるっぽいんですが)。いわば、これは音楽のリユニオンと言えます。……って、考えすぎ?

この曲でサックス奏者としてクレジットされている「Hitoshi Ohori」氏はプログラマー。以前に下村陽子氏と組んで「キングダムハーツ」の中でもサックスを吹いていました。その経緯で、シンセサイザプログラマの山崎良氏から依頼し、今回も吹いてもらったそうです。浜渦氏は「それならばサックスを尊重した曲を」ということで出来上がったのがこの曲なんですね。つまり、曲自体が持っているテーマはルクレツィアじゃなくサックスなんです(笑)。
10 Forgotten Tears

・闇に囚われたシェルクの回想
第十章での闇に囚われたシェルクの回想シーンに流れる曲。幼少時代、母を失くした際の姉・シャルアとの会話を思い出すシェルク、そして生死の境を彷徨うシャルアの「もう星に還ってもいいかな」に対して口にした「まだ、だめ」。シェルクに訪れる何らかの変化、そしてとっくに失ったと思っていた涙……。曲名はまさしくこのシェルクの涙を指したものです。というか、綾波レイですか?えーと、生楽器のフルートは「シェルクモチーフ」を奏でています。

ちなみに作曲の浜渦氏いちばんのお気に入りはこの曲だそう。「10分そこそこで作った曲で、手法的にもたいしたことはしていないのですが、まとまり具合と気だるさではいちばんかな」。うーむ、「手法」ってあたりが浜渦氏らしいコメントですが、「気だるい」ですか?
11 Fight Tune
"Messenger of the Dark"


・VSネロラフレア〜
  ネロ・ウイングシューター
第十章で行われる、対ネロ戦で流れるバトル曲……つーか、ホントにそうかコレ?ゲーム中ではもっとデジタルなチャカチャカリズムの効いた曲だったんですが、このオケちっくな曲はナニ?そう、実はこれは第十一章における零番魔晄炉でのネロ戦に流れる曲なのです。第十章のネロバトル音楽は未収録となっています。残念。

で、第十一章のバトルなのですが、ネロ戦はネロ・ラフレアとネロ・ウィングシューターの二段階から成り、ラフレア戦の終わりで楽曲はいったん鳴り止みますが、蘇るようにして再登場するウィングシューターとともに再びフェードインしてきます。まあ別の新曲にする必要はないとしても、同じ曲が短い間隔をおいてフェードアウト・フェードインするというのは演出上いかがなもんでしょう。例えば第十章でのバトル曲をうまく再利用できなかったものかと。

この曲は正統派なボス戦音楽としてオケを中心にまとめられており(念のためですがシンセです)、オケ全体で煽り立てる圧倒的な迫力で、終盤戦をこれでもかと盛り上げます。「Darkness(Disc1-20)」と共通の飛翔音を組み込むことで、ネロのテーマとしての印象を強めています。ただ、この後にはさらなる強敵となるであろうヴァイスとの戦いが控えているため、そのさじ加減については苦労されたのではないでしょうか。ヴァイス戦を立てつつも、ネロ戦も盛り上げたい。低音の弦による刻みを入れることで、異形のラフレアが放つジワジワとした嫌悪感を強調しています。
12 Awakening

・カオス覚醒
本作における「目覚め」には2つの意味があると思います。ひとつはヴァイスの目覚め。そしてもうひとつは、ヴィンセントに宿りしカオスの覚醒。この曲に与えられたタイトルは後者を指しています。言ってみれば「Tranceformation into Chaos」の発展系といったものですね。

ルクレツィアの助言により、ヴァイスの中に取り込まれたエンシェントマテリアの力を利用、人の身のままカオスを引き出したヴィンセント。このあたりからこの曲がジワジワと流れ始め、「どれ、試してやろう」と牙を剥くヴァイスの猛攻をた易く回避してみせるヴィンセント、という場面が本トラックの50秒からの激しいブロック。このカチャカチャとしたせわしないリズムと重厚なオケ音色の融合はやはりハリウッドテイストというものを強く意識したもので、最近の映画音楽のトレンドです……とは言っても本場ではやや廃れ気味ですが。ゲームやテレビは映画界の流行をワンテンポ遅いタイミングで吸収していくので、ちょっと前の映画的流行が「今」の主流になる傾向があります。ゲーム界発のトレンドを他ジャンルが真似るようになれば、文化として本物になったなあと実感できるのですが……。容易なことではないですが。

いったん静まり、1分18秒からが「宝条、ごたくはたくさんだ」「なにぃー?!いい気になるなぁー!」のくだり。そしてヴァイスとの戦闘へとなだれ込んでいきます。
13 Fight Tune
"The Immaculate"


・VSヴァイス
ヴァイスとの戦闘曲。ヴァイスとの戦いは2度行われますが(1回目は必ず負けるイベント戦)、楽曲は共通です。コーラスを伴ったイントロで幕を開け、戦闘の始まりを奏でるインパクト重視の荘厳なアタック。ピアノも交えながら、流れるように展開していくさまは威圧的ながらも美しく、1分59秒あたりからはヴィンセントモチーフも組み入れながらバトルをグイグイと引っ張っていきます。「FFX」のラストバトル「決戦」を彷彿とさせます。ところでやっぱりこれもシンセオンリーなんですよね。どうしたらここまでブ厚く鳴らせるのでしょうか。

とは言うものの、まだ楽曲的にはどこか遠慮しているというか、弾けきれていない印象。それもそのはず、すっかりコイツがラスボスだと思い込んでいた人も少なくないと思うのですが、実は真のボスはこの先に控えているのです。ヴァイスすらも通過地点でしかないということ。
14 Finally Reborn

・オメガ出現ムービー
最終章の冒頭に挿入される、オメガ降臨ムービーで流れる楽曲がこちら。フルオケ録音の楽曲です。静かな導入にのせて、じわりじわりと高まっていく魔晄のエネルギー。そして突如として姿を現すオメガ。その圧倒的なインパクトのある映像を、楽曲的には40秒のところのピアノで支えます。恐れるべきオメガの姿が神々しくさえ見えてしまいます。その後の展開は「なんとか洋画劇場」みたいですが(笑)、オメガにつられてカオスまでもが「対のものとして」覚醒してしまいました。いったい誰がオメガを止めるのか、といったギリギリのピンチを描いています。登場キャラたちは誰ひとりとしてあきらめていないようですけどね。

「終わり名」を持つオメガに対しては、カオスのいかなる力をもってしても太刀打ちすることは叶いません。それを悟っているシェルクは、オメガの内部に対してセンシティブ・ネット・ダイブを試みるのです。
15 The last SND

・シェルク最後のSNDムービー
こちらもムービー用のフルオーケストラ楽曲。オメガ内へのセンシティブ・ネット・ダイブ(SND)に成功したシェルクは、そこでルクレツィアからエンシェントマテリアを託されます(26秒〜)。渡してなるかと迫るオメガの追っ手を振り払い(51秒〜)、ついにヴィンセントのもとへ届けます(1分7秒)。ルクレツィアのモチーフ(1分14秒〜)とともに、カオス=ヴィンセントは人の心を取り戻すのです。ムービーの展開にピタリと合わせた楽曲構成はお見事のひとことで、まさにハリウッド調映画音楽という感じ。普通なら2人組以上のチームでとりかかるであろうボリュームの仕事を、ひとりでやりきった浜渦氏にはただただ拍手あるのみ。
16 Everyone's Help

・世界を救うとしようムービー
クラウドら「VII」チームが魔晄炉の停止に成功、「あとはまかせた、ヴィンセント」「ふっ、仕方がない、世界を…救うとしよう」「いっけー!」のムービーです。当然のことながらフルオーケストラ録音による圧倒的な音の厚さをお楽しみ下さい。54秒・1分5秒ではもちろんヴィンセントのテーマモチーフがビシッと鳴り響いてます。そして最大出力(笑)のヴィンセントはオメガの体内に突入します。そこで突如として流れる「LONGING」……。このギャップもまたたまりません(いろんな意味で)。
17 LONGING / Gackt

・オメガの体内BG
オメガ体内のマップBGとして流れる、コラボレーションアーティストGackt様のサブ・テーマソングです。エンディングのみならず劇中歌まで書き下ろすサービス精神には脱帽。なぜこの曲がここで流れることになったのかという経緯は明らかにされていないのですが、エンディングの唐突感を緩和する狙いがあるのでしょう。逆に言えばこのシーンが唐突なものになってはいるのですが……。マップBGMに歌モノというのも新鮮ではありますけど。これからのゲーム音楽はこういうのもアリなんじゃないか?ということは示せています。ちなみに「LONGING」とは「あこがれ、熱望」という意味の英語。

普段は個人的にGacktの曲を聴くという習慣のない筆者ですが、ここ最近本作や「新訳Zガンダム」など、同時多発的にGacktの楽曲に接する機会が増えています。そんな状況で思ったのは「音作りが凝ってるな」ということです。かなり時間をかけたプリプロ、そしてレコーディングが行われているのだろうと想像できます。詞や曲はGackt自身が作っているようですが、それ以外の部分で優秀なアレンジャーが付いているなと感じました。「LONGING」もかなり音のギミックというか、遊びがふんだんに取り入れられています。混沌-カオス、そしてオメガの体内という場面設定をうまく音で表現していると思います。間奏で挿入される、オルガンを伴ったオケパートもゲームをおおいに意識してのものだと言えるでしょう。

歌モノの完パケをステージのBGとして使う時に生じる問題が「曲が終わっちゃったらどうする?」ということですが、本作においてはうまくループ処理がなされており、コーダから最初の歌アタマに戻るようになっています。オメガの体内に留まる限り、曲は途切れることなくループし続けるのです。まあ同じ歌詞が何度も出てくることにはなるのですが、完結してまた最初から鳴り始めるよりは賢い処理です。歌モノは歌詞のループという制限が出てくるんですよね。ゲームのBGMに圧倒的にインストが多い理由のひとつでもあります。
18 Terminus

・VSクリスタルフィラー
オメガ3連戦のトップを飾る、クリスタルフィラー戦で流れるバトル曲。バトル曲でありながらアオリ要素がないのは、謎解き要素の強い戦闘だからでしょうか。基本的にオメガ(コクーン)本体への攻撃はできず、出現するのはザコばかり。知らずに戦っているとザコの相手ばかりを永久に続けることになりかねません。たまに開いては発光する、周囲のクリスタルフィラーをまずは潰していきましょう。

呪文を囁いているかのようなボーカリーズ音色が、いよいよラスト間近だなということを感じさせています。曲名はまさしく「終着点、目的地」の意味。またこの曲は本作では珍しく、現実的な楽器音色の要素がないものになっています。終盤でストリングスが出てきますが、リバース音色も使うことでただの弦にはなっていません。当然すべてシンセによって奏でられています。
19 Quickening

・VSオメガコクーン
クリスタルフィラーを潰すとオメガコクーン出現。その戦闘に流れる曲がこちら。前の「Terminus」と共通するような骨格の上にピアノや鐘の音色が乗せられたような、統一感のある曲調になっています。ボーカリーズも健在で、うっすらと聞こえます。これはこの後の最終戦を彩る「Death and Rebirth」〜「Chaotic End」との差別化を狙ってのことだと思われます。全部が全部ガチャガチャとアオる曲調では飽きますしね。そもそもフィラーもコクーンも無抵抗主義なようですから(笑)。というわけでコクーン自体は何もしてこないため、注意すべきはザコのみ。適度にあしらって弾丸や回復アイテムを補充し、真の最終戦への準備を整えましょう。

こういうメロディ要素があるようでないような、構成だけでグイグイと引っ張っていくタイプの曲っていうのは、浜渦氏ならではというか。植松氏には絶対作れないタイプの曲なんじゃないかなと思います。ゲームと切り離し、音楽単体で聴く際にどれだけ鑑賞に耐えるかというのは個人差あると思いますが、こういう曲が作れるというスキルは、プロとして劇伴音楽を作るうえでおおきなウリになるのは間違いないと思います。
20 Death and Rebirth

・カオスVSヴァイス
コクーン戦後、再びヴィンセントの前に現れるヴァイス。その姿を神々しくも不気味なコーラスが迎えます。しかし、ヴィンセントの一撃で瞬殺……と思いきや、逆にヴァイスの刃がヴィンセントの身体を貫き……いやいやこれも残像。人知を超えた、究極にして互角の戦いが繰り広げられ……というイベントで流れるのがこの曲。イベントシーンはまるっきり「ドラゴンボール」なのですが曲名は「エヴァンゲリオン」なのでした。

これも構成曲と言えば構成曲で、荒々しく打ち付けるパーカッションとティンパニ、そしてスティールドラムのような音色でリズムを構成し、それを支えるように配置された弦の刻みと割れるような金管のタッチ、そして楽曲の雰囲気を決定しているのはコーラスと、ほぼこんな要素なのですが、見事にシーンを描ききっています。短い曲なのでベタベタなメロディは不要なのですが、それでここまで聞かせるというのは凄いことです。今さらながらこの厚みをすべてシンセでやっているということにも、改めて驚かされてしまうトラックです。
21 Chaotic End

・VSオメガヴァイス
いよいよ最終戦、オメガヴァイスとの戦闘を盛り上げるのがこちらの曲です。これはラスボスを彩る曲というよりも、それに立ち向かうヴィンセントサイドの曲であることは、全編に組み込まれたヴィンセントのテーマモチーフから明らかです。つまり気分としては「頑張れカオス!負けるなヴィンセント!世界を救ってくれ!」なわけですね。そういえば「カオティックエンド」ってのは、オリジナル「VII」におけるヴィンセントのリミット技の名前でもありましたっけ。

とうとう真の最終ボスということで、バトル音楽でありながらフルオーケストラを採用しています。いくら本作のシンセ演奏がよくできていると言っても、やっぱり表現力が違いますね!本来は「FFVII」のスピンアウト作品である「DC」ですが、こと音楽についてはオリジナルはもちろんのこと、「AC」以上の労力と費用が投入されていると想像できます。オーケストラ録音して、レコーディングスタジオでミックスして……。かなりゼイタクな恵まれた環境ですが、常にこれができるわけではありません。プロデューサーが音に理解のない人だとまず捻出されない予算です。そうなるとシンセで、内蔵音源で、ミキシングは自分で……となってしまいます。「FFVII」だからこそ出せたお金でしょうね。ちょっといやらしい話ですが、現実です。
22 REDEMPTION / Gackt

・エンディングスタッフロール
ヴィンセントや仲間たちの活躍も虚しく、空へ飛び立つオメガ。ヴィンセントはひとり、全力を振り絞ってオメガへと真っ向から立ち向かう。そして訪れる静寂……。オメガは消えた……しかし、ヴィンセントもまた……彼は無事なのだろうか?というところで流れ始める本作のエンディングテーマがこの「REDEMPTION」。歌うはもちろんGacktであります。ちなみに「REDEMPTION」とは「償い、あがない」という意味です。

「FF」ではおなじみのスタッフによる「テーマソングを誰にするか会議」において、これまで「FF」は女性ボーカルのイメージが強かったシリーズだったが今回は男性でいこうじゃないか、というビジョンはわりと早い段階で出ていたようです。その候補の中にGacktの名はすでに挙がっていたそうです。しかし野村氏には「FFVIIの世界観はある意味すでに完成されたものだから、それを受け入れてもらえるかどうか不安だった」という懸念もあったようです。

一方で「FFVII」のことはもちろん知っていたというGackt、スタッフからのオファーは「快諾」という形で受け入れられました。が、Gacktサイドからはスタッフに対しひとつの条件というか、提案が出されたのです。「かなりぶつかることになるけど、それでもいい?」と。いわく、「作品のためにそれに沿った曲作りというものはできない。そういうものなら、僕が作る必要はないと思う。どちらかのために説明的な作品を作るのは、想像力を狭めるだけだと思うから」。案の定、スクエニサイドからは当初、具体的なイメージや方向性が提示されていました。が、Gacktのスタンスをスクエニ側は受け入れ、「それでいいのでお願いします」とのことで楽曲制作にゴー。「なら作ってみるから、それを聴いたうえで使うかどうか判断してほしい」とのことで、Gacktは曲作りを始めます。まあ、Gacktが作品に楽曲を提供する時って常にこのスタンスなのです。「Zガンダム」でも富野監督相手にまったく同じことを言ってましたし。

スクエニサイドからは当初、バラード調の曲が発注されていましたが、出来上がったものはお聴きの通りハードな曲調に。「この曲しか考えられなかったから、これがだめなら縁がなかったんだと思っていた」とGackt。が、これを受け取ったスクエニサイドからの評価は「とても気に入ってもらえた」。さらに「バラードを想定して作っていた映像を、曲に合わせて作り直すとさえ言ってくれた。それに僕はすごく感動した。だから僕も、その気持ちに応えるためにできることはないかと考え、ゲームへの出演に繋がったんだ」ということで、「G」の出演は「REDEMPTION」の過程で生まれたものだったのです。同じことはスクエニサイドも考えていたようで、Gacktの出演はさしたる障害もなく進んだそうです。まあ、FFのCG世界に生身で出られるのは今の日本ではGacktぐらいではないでしょうか。衣装は野村氏がデザイン、Gacktはこれをライブのステージで着るといったことも考えているようです。

では、バラードを想定していたものが今回のような曲になったとき、スタッフサイドとしてはどんな感想を持ったのでしょう?「もともと激しい方が良いと思っていたので、すんなり受け入れられた」と語るのは野村氏。「AC」のエンドにヒムロックを使った彼らしい感想です(笑)。ディレクターの中里氏、シナリオの千葉氏は「このシーンで、こういうふうに流れるということは、逐一ビデオを届けて説明しました。シナリオやゲームの内容を気にしてもらって、その中でGacktさんの方で曲のイメージが"こっちだ"となった感じですね」と語っています。

ここまで読んで、もう一度「REDEMPTION」を聴いてみて下さい。「DC」のエンディングテーマとして、アナタの中で「アリ」ですか?「ナシ」ですか?
23 Hope of the Future

・エピローグムービー
スタッフロールと「REDEMPTION」の後、シェルクの語りが主導するエピローグが始まります。そこに流れる曲がこちら。冒頭の4小節のピアノは「REDEMPTION」の直後、カプセルに入ったシャルアをライフストリームが包み込むシーンで、あたかも「REDEMPTION」の余韻であるかのようにうっすらと流れるもの。17秒からの「シェルクモチーフ」以降が、エピローグムービーに流れるものです。この「シェルクモチーフ」が支配している間は、シェルクのヴィンセントへの語りかけ部分。2分17秒からはルクレツィアモチーフへとバトンタッチし、ヴィンセントがルクレツィアに語りかける場面。いったんポーズして、3分16秒からのヴィンセントモチーフは、ヴィンセントを迎えに来たシェルクの「まあ、どうでもいいですけど」を受けて流れ出すもの。そして「DC」の物語は終わります。メインキャラクター3人のモチーフを紡ぎ、壮大なフルオーケストラで奏でるこの曲は「やっぱFFのエンディングはこれだよな!」と納得の仕上がりです。

オリジナル「FFVII」が解釈を受け手に委ねる抽象的な終局であったのに対し、「AC」そして本作「DC」は明確なハッピーエンドと言って良いでしょう。オメガとカオスは星に還り、ヴィンセントもまた生きていた。彼の思いはルクレツィアに伝わり、そしてシェルクは失われた10年を取り戻し始めている……。すべての不安要素が取り払われた感のあるラスト、大団円でしょう。唯一シャルアがどうなったのかという点については明らかになっていませんが、シェルクは「10年を取り戻すことを始めた」と言っていますし、それには姉の存在が不可欠なはず。シャルアなくしてシェルクの10年は取り戻せないのです。だから、シャルアに何らかの奇跡が起こったのだと信じたいですね。

関連CD
限定DVDサイズパッケージ 「REDEMPTION」 Gackt

ゲーム本編にもいちキャラクターとして登場している、Gacktによるテーマソングシングル。そのパッケージデザインはほとんど「DC」寄りのもので、コラボの本気度が窺えます。もともとGacktは大のガンダムマニアという一面もある人ですし、ゲームも嫌いではないはず(本人のコメントから察するに、「FFVII」もおそらくプレイしたハズです)。さらに野村哲也氏の持つデザインセンスにも同調できたのでしょう。ゆえに主題歌提供以上の積極的な関わり方ができたのではないかと。さてさてはたして、Gacktファンは「FF」に流れてくれたのでしょうか?「FF」ファンはGacktのCDを買ってくれたのでしょうか?

初回限定盤 はCDとDVDとの2枚組みになっており、CDには「REDEMPTION」「LONGING」両曲とそれぞれのカラオケの4曲を収録。DVDにはGacktの「REDEMPTION」プロモーションビデオと、「REDEMPTION」をバックに「DC」の映像をふんだんに使用したミュージッククリップを収録しています。

日本クラウン CRCP-10129  2006年


通常盤のジャケットには「G」衣装のGackt様が!なお、通常盤はCDのみで、プロモ映像の入ったDVDは付いてません。
REDEMPTION通常版

サントラ未収録曲
昨今のFFシリーズのサントラとしてはコンパクトな印象のある本作「DC」。ゲーム中で耳にする楽曲の数に対してCD2枚では当然すべての楽曲を収録することはできず、結果としてかなりの未収録曲が発生しています。それがイベントで一度しか耳にしないものならともかく、耳馴染みのある一部のマップBGやキャッチーなバトル音楽までもがカットの憂き目に遭っており、ゲームで耳にこびりついたあの曲が入っていない!と、ユーザーの間でも賛否の分かれるものとなってしまいました。せっかくオーケストラ録音した曲や作品上重要な意味を持つ楽曲を優先したい事情は理解できますが、そのために使用頻度の高い曲、長い間流れることで印象に残り易い曲が削られることに対する疑問は拭えません。サントラにはどのような楽曲を収録すべきか?ということを改めて考える良い機会にはなりましたが。「FFIX」のようなサントラ「plus」は……さすがに期待できないでしょうね。ここではそんな未収録曲をまとめておこうと思います。アナタのお気に入りがここにないことを祈ります。なお、曲名は当然公式のものではなく、用途やイベントからこちらで便宜的に付けたものです。

追記:上で「さすがに期待できないでしょう」と記した追加版サントラが、2006年8月にリリースされました!とは言ってもCDアルバムではなく、データ配信のみという形態を採っています。スクエニミュージックのサイトを経由するか、ITMSで検索すれば発見できるでしょう。以下のリストで曲名が
青文字のものは、追加版サントラに収録されているのでチェックして下さい。
チュートリアルBGM ループのリズムをベースに、パッドとギター、そしてピアノによって構成されたインストゥルメント。チュートリアルモードでかなり長時間聴くことになるうえ、わかり易い曲なのでサントラには入るであろうと予想しましたが、この通り収録されませんでした。
オープニングムービー中、
ニュース番組のジングル
まあこれは、まずサントラには収録されないでしょうね。オープニングムービー後半、ヴィンセントのいる(泊まってる?住んでる?)部屋のテレビから流れるニュース番組で使われている現実音楽です。
オープニングムービー中、
カームのお祭りの音楽
こちらもオープニングムービー後半、カームで開催される「ネットワーク復興祭」の会場で流れている現実音楽です。作品全体のカラーとはまったく異なるタッチの曲で、だからこそサントラに入るかなー、と思ったのですが。まあ短い曲ですしね。ちなみにこの「ネットワークの復興」は早すぎる伏線になっており、宝条の企みが現実のものとなって始動する直接的な要因になっています。
ケット・シー初登場 敵弾に倒れるリーブ!と思いきや、その中からケット・シー登場、という場面で流れるコミカルなピアノ音楽。「Sneaky Cait Sith(Disc1-19)」のバージョン違いですね。これは元バージョンが収録されているのでまあいいでしょう。バージョン違いまで全て収録してもキリがないですから。
ヴィンセント敵を撃破、の曲 カームでヴィンセントがガリアンビーストへと姿を変え、ドラゴンフライヤーGLを叩き落とすイベントでかかる曲。ドハデなアオリ曲なのですが、その短さゆえサントラではカットされたもよう?第八章のシュライク部隊撃退後のイベントでも使用されていますね。
ヴィンセントモチーフ・1 第一章・カームでの最後のイベントに流れる、ヴィンセントモチーフの短いブリッジ(リーブが「エッジも襲われています」と告げるあたり)。第四章の終わり(ニブルヘイムへ向かうとヴィンセントが告げるシーン)でも使用されているものです。サントラに収めるには短すぎた?
ロッソ初登場 第二章直前に挿入される、ロッソの初登場イベント(WRO隊員を瞬殺し「DGじゃ一日だって生き残れない」)で流れる曲。ロッソのテーマ「Rosso the Crimson」の別アレンジ、ということではなさそうです。
刈り取り宣言 ヴァイスによる全世界放送(「我らはこれより世界すべての刈り取りを行う」)で流れるコーラスもの。こういうテーマ性があり、かつインパクトのある曲がサントラに収録されないのはちょっと考えモノですな。ゲーム終盤、ヴァイスの身体を我が物にした宝条が正体を明かすシーンでも再使用。
ガードハウンド来襲 第二章、ガードハウンドに襲われるシャドウフォックス。それに対してリーブとヴィンセントは機銃をスタンバイ、迎撃準備をするという一連のイベントの音楽です。また、第四章の終盤も終盤、ヴィンセントがアスールにバズーカ(?)を撃ち込むイベントでも使われていました。焦らし曲です。
ガードハウンドを撃退せよ 上のイベントに続いて開始されるミッション「ガードハウンドを撃退せよ!」のBGMです。機銃の音も激しく音楽なんかほとんど聞こえないシーンなのですが、隙間隙間で「Fearful Happening」のフレーズが聞こえてきました。それもギターで奏でられています。言わば「Fearful Happening」のロックバージョン?といった感じです。他に流用はありません。
シャドウフォックス、飛ぶ ガードハウンドの追撃を振り切ったかに思えたシャドウフォックスにさらなる危機が!橋が落ちていて道が寸断!勢いにまかせてジャンプ!という橋越えイベントの短いブリッジ音楽。こりゃもう短かすぎてサントラに収録されるはずもありませんけど。
クリムゾンハウンド来襲 クリムゾンハウンド出現イベントのブリッジ。これも短いです。
クリムゾンハウンド戦 対クリムゾンハウンド戦のバトルBGです。バトル音楽も容赦なく未収録になってしまう本作、このあたりがユーザーから最も不評なところ。バトルの曲は印象に残り易いですからね。
クリムゾンハウンド撃退 倒したかに思えたクリムゾンハウンドがムクリと起き上がり、再びヴィンセントの背後に飛びかかる!しかし、ヴィンセントはしっかりお見通し。キック&弾丸を浴びせて華麗に撃退してみせます。そこで流れるブリッジです。プレイヤーが操作してる時にはそんなアクション見せてくれないのになあ。
対特殊部隊BGM 第二章の最後で戦うことになる、エアホース部隊とのバトルBGM。「Marching Tune」っぽい雰囲気を持つ、タイコがドンドコドコドン系。第八章の中ボス、シュライク部隊との戦闘でも使われている曲です。作中で二度使われるボスバトル音楽ながら、未収録となってしまいました。
ロッソの独白 第三章開始直後、ロッソの独白イベントで流れる短いブリッジ。「ヴァイスもいいこと言うわねえ」と残忍な笑みを浮かべる彼女の足元には、無数のWRO隊員たちの屍が……。そんなシーンでジワリと恐怖感を煽る、不気味音楽です。めちゃめちゃ短いです。
何者だ?! 第三章のエッジにて、初対面のヴィンセントとシャルアが銃を向け合うショッキングなブリッジ。もちろん初対面ゆえの行動であり、互いの正体を知るとすぐに銃を下ろします。
ヴィンセントとシャルア 上のイベントからすぐ後、ヴィンセントとシャルアによる会話シーンで流れる曲です。ヴィンセントの「何を探しているんだ」の問いにシャルアが「私の……命だよ」と返答する場面。また、第六章の冒頭、シャルアとシェルクの会話シーン(「10年ぶりの姉妹喧嘩といくか?」)にも使われています。
スナイパーを撃退せよ エッジの街において、物陰に潜むスナイパーからヴィンセントが狙われるイベントで流れる曲。這うようなシンセに、しばしば鐘のような音色がタッチ的に挿入される雰囲気ものです。直後にミッションが発生し、それらスナイパーを退治することになります。ミッション中のBGは通常のエッジBGM「Silent Edge(Disc1-11)」です。
VSヘビーマウントソルジャー エッジのボス、ヘビーマウントソルジャー戦のバトル音楽。特殊部隊との戦いで流れる曲とはまた違うのですが、テイストはやっぱりタイコのリズム。流用はおそらくなく、ゲーム中で流れるのは一度きり。
ロッソの脅威 第三章、ロッソと対峙したヴィンセント。彼女はエンシェントマテリアを渡せと言いますが、ヴィンセントにとっては知らない単語でした。無言を貫くヴィンセントに「交渉決裂?なら死になさい!」と襲いかかるロッソ。そこで流れるのがこの曲です。会話シーンまでは「Rosso the Crimson」が流れていますが、彼女が牙を剥くと同時に音楽も切り換わります。
ヴィンセント死亡? 第四章の頭、タークス時代のヴィンセントが謎の男(宝条)に撃たれる回想イベントで流れるME的楽曲。このあたりはカットされてもやむなし。
ヴィンセントの目覚め 宝条の凶弾に倒れたヴィンセントが、薄暗い部屋で目を覚まし悲鳴をあげるイベントの曲。弦をデタラメにひっかいたような、ホラー映画っぽい曲です。これも短いものなので、サントラにはまず入らない類。
ルクレツィアの論文1 第四章、WROの研究室において、シャルアがルクレツィアの研究について説明するシーンで流れる弦+ピアノ曲。
ルクレツィアの論文2 上のイベントから続いて、シャルアがルクレツィアの論文についてさらに説明するシーンの、コーラスベースの曲。終盤にヴィンセントのモチーフが入っています。
謎の忍者、ロッソを翻弄 第五章・神羅屋敷で謎の「忍」が登場し、ロッソを翻弄する際のME。
終わりの始まり 忍の活躍によってヴィンセントを取り逃がしたロッソが、エンシェントマテリアを見つめて「終わりが始まるわ……」と呟くシーンでの短いブリッジ。第五章もこれで終わり、そして第六章の始まり。
WROの危機 アスールの目覚めを待っていたかのように、DGがWRO本部へと侵入を始めるイベントでの曲。第八章、列車墓場のマップBGとしても使用されており、非常に耳に馴染んでいる曲なのですが、なぜか未収録。他にカットすべき曲はあるだろうに……。一度きりのイベント音楽よりも、こういう使用頻度が高くて耳に残っている曲を収録してほしいですよね。個人的に、サントラに入っていないことが最も納得いかない曲です。
飛空艇部隊 第七章のシエラ号登場ムービーの後、シドとヴィンセントが再会するシーンで流れる勇ましい曲。オメガの秘密とヴァイスの企みを知った一行が、ミッドガル侵攻の決意を固めるシーンでも使用されている曲です。
High-Spirited別バージョン 空中部隊の出撃準備シーン(シドの「たっぷり生き残ってやれ!」)で流れる曲で、「High-Spirited」の打ち込みバージョンとでも言えるもの。
頼まれるのは珍しい リーブから「頼みごと」をされたシェルクが戸惑うシーン(なんで私が……理由がありません)で流れる、「Ten Year Reunion」のメロディ(シェルクのテーマモチーフ)を組み込んだ短いME。
中央塔 第八章後半、シュライク部隊戦後のマップBG。ヴィンセントモチーフを組み込んだ曲。
VS真アスール 第九章、神羅ビル最深部における「真のアスール」との戦闘曲。「Azul the Cerulean(Disc1-8)」のイントロだけを伸ばして繋いだようなイメージの楽曲。
VSネロ第一戦 第十章のラストに行われる対ネロ戦バトル曲。ゲーム中ではもちろん一度しか流れません。ドラムンベース調のリズムを核とする、テンポの速い焦らし曲になっています。
圧倒するヴァイス ヴァイスが圧倒的な力でヴィンセントを翻弄するシーンのアオリ曲。
ルクレツィアの罪と罰 ラストSNDムービーの後、ルクレツィア視点で進行するイベント一連の曲。けっこうな大作なのですが、未収録となりました。「実験なんかじゃない!」〜宝条によるヴィンセントの射殺〜「あの人と同じ目」〜混沌の誕生〜エンシェントマテリア〜「あの子を返して!」〜「もう、ダメみたい」という流れのイベント。ちなみに最後には「Fragment of Memory」がゲーム本編で初めて流れます。
ヴィンセントモチーフ・2 最終章、「自分の口から彼女に伝えたらどうですか」と言うシェルクに対し、ヴィンセントが「その前に……この物語を終わらせよう」と告げてオメガへと向かうシーンで流れる、ヴィンセントモチーフの短いブリッジ。「ヴィンセントモチーフ・1」がどことなく暗示的で次へと続くような曲調だったのに対し、こちらは勇ましいイメージになっています。
ミッドガル上空 最終章、ミッドガルのマップBGM。
オメガにトドメを エンディングムービーで「REDEMPTION」の直前に流れる、金管の短いアオリ音楽。ヴィンセントがオメガに突撃し、その飛翔を阻止するシーンに使われているものです。
終焉を奏でよう シークレットムービー「G」で流れる雰囲気モノ。
では、オリジナル「FFVII」との音楽的な繋がりは?
結論から言えば、「VII」の楽曲がアレンジされて使われているといったようなことは、本作については一切行われていません。「AC」の後だけにこれにはガッカリした人も少なくなかったようですが、筆者はむしろ本作についてはその必要はないと思っているのです。あればあったで嬉しかったのでしょうが、必然性はないという感じでしょうか。

「AC」はそれ自体がお祭りのような作品でしたし、「FFVII」の正統な続編という位置付け。しかもストーリーの最終的な核はやはりクラウドとセフィロスの物語であり、さらに音楽担当は植松伸夫氏ですから、オリジナル曲のアレンジがない方が不思議でした。それでも当初のプランではアレンジ曲は「片翼」のみ、あとはすべて新曲でいくということだったのです。ファンのリアクションを受けて徐々にアレンジが増えていき、最終的には製品版の形になったわけです。

一方で「AC」にも先駆けて発表された「BC」は、基本的にはオリジナル「VII」のアレンジ曲を使わない、新曲で構成する方法を選んでいます。これは「VII」の前日談であることと、作曲者が植松氏ではないということが大きな理由だと思われますが、逆に言えば「DC」に繋がるストーリーではあるので(シャルアやアスールは「BC」にも出てきます)、「BC」の楽曲が「DC」に活かされる可能性はありましたが、結果的にそれも行われていません。

そして「DC」ですが、内容的には後日談ですし「続編」と言ってもかまわないでしょう。さらに、「VII」や「AC」に出てきた土地もありますし、キャラについては言うまでもありません。アレンジ曲が使われる可能性(もしくは必然性)はゼロではありませんでしたが、音楽的に「VII」ファンへのサービスは「AC」でじゅうぶん行ったという判断もあってか、「DC」でのアレンジ曲は製作されませんでした。これについてはまずゲームとして、DGやツヴィエート、WROを中心とした新たな舞台を用意したこと、そしてシステムそのものがRPGからガンアクションに変化したことが大きいと思われます。「VII」に登場したものについては旧曲、DG関連は新曲というような構成もできたのでしょうが、バランスとして半端になってしまううえ、やってることが「AC」と大差がなくなります。さらに、RPGに適した曲とガンアクションに適した曲は当然変わってくるわけです(イベントシーンについてはこの限りではありませんが)。また、他の人の曲をアレンジすることは、時として新曲を書くことよりも骨の折れるものであり、作曲者の負担も大きくなる。よって総合的に「すべて新曲」という選択肢が選ばれたのだと思います。そして作られた浜渦氏の曲がじゅうぶんに良いものだったため、筆者としては「VII」の曲が使われていないことに対する不満は感じませんでした。

では、もしも「VII」の曲を使っていたら、どのような可能性があったでしょう。どこかに「FFVIIメインテーマ」は使われたとして、ヴィンセントのテーマ曲(「悪夢の始まり」)やユフィのテーマ(「忍びの末裔」)は鉄板。「ケット・シーのテーマ」もあったでしょうね。シエラ号の登場ムービーは「空駆けるハイウインド」あたり?でもこれは「FFVIIメインテーマ」のアレンジだしなあ……。ならば「シドのテーマ」でしょう。他のメンバーは単体での登場シーンがないので、たとえばミッドガル侵攻ムービーなんかは「闘う者達」「更に闘う者達」とか。「生命の流れ」なんかは、ルクレツィア絡みのイベントやオメガ関連のムービーで使えそうですね(第七章とか)。

逆にありえないのは、「片翼」や「J-E-N-O-V-A」のアレンジ。本作とはほぼ無関係ですから。「エアリスのテーマ」もナシですね。第五章の神羅屋敷に「星に選ばれし者」というセンもありますが、セフィロスのイメージが強くなりすぎてしまうのでNG。同様に第九章の「栄枯盛衰・神羅ビル」に「神羅ビル潜入」というのも考えられますが、これはやはり「旧神羅」のイメージが強く、DGが巣食う現在の神羅ビルには適当ではないでしょう。まあ、こんなふうに「もしも」を考えてみるのもたまにはいいのでは?そして2006年発売予定の「CC」の音楽がどうなるか、楽しみに待ちましょう。
突っ込み・スクウェア・エニックスさんへ!
オフィシャルのサウンズページに掲載しているこのサントラCDの紹介文なんですけど、Gackt「REDEMPTION」「LONGING」を含む、全53曲を完全網羅したオリジナル・サウンドトラックが遂にリリース!って、なにをもって「完全網羅」としているのでしょうか?ゲーム使用曲は網羅してませんし、だいたい「全53曲」ってのはCDの曲数ですよね?そんなもの入ってて当たり前、「完全網羅」などとは言わないのでは?その文章では善良なユーザーが「ゲームの曲はすべて入っているんだ?」と思ってしまいますよ!


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2006 GAMERS EDEN

原点「FFVII」未体験の方は
この機会にぜひ。