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ファイナルファンタジーVII リユニオン・トラックス
ジャケ&オビ  このCDは、「ファイナルファンタジーVII」オリジナルサウンドトラックのアンケートはがきを集計、特にファンに人気の高かった楽曲をゲーム音源のままでまとめた、いわばベスト盤である。いわゆるアレンジヴァージョンではないので、既にサウンドトラックを持っている人には無用かと言うとそうではなく、中でももっとも「アレンジ」を望まれる3曲(メインテーマ、片翼の天使、エアリスのテーマ)をフルオーケストラアレンジして収録し、サントラを所持しているファンに対しても価値を持たせているのがうまい。価格もほぼ2000円となっているので、おそらくファンなら手が出てしまうだろう。

 オーケストラアレンジを担当しているのは、アニメーションのサントラなどにもその名をよく見ることができる作編曲家・浜口史郎氏。後にFFの音楽を陰で支えていくことになる浜口氏が、初めてFFに携わった作品である。ライナーノーツには作曲・植松伸夫氏と、音楽評論家・渋谷陽一氏の対談を収録。植松氏がFFの音楽を作曲するうえで考えていること、そして「VII」について、興味深い話を語ってくれているので、ファンなら必見の内容だ。
 
 アルバム全体としては各テーマ曲と、ゲームの中でも比較的メロの立ったものが集まったかな、というかんじ。「VII」で聴くことの出来たあらゆるタイプの異なった曲がバランスよく並んでいる印象を受ける。中には「これ、人気高かったの?」というものもあるかもしれないが、逆に植松氏の引き出しの豊富さを確認できるラインナップになっていると思う。

ファイナルファンタジーVII リユニオントラックス
デジキューブ
SSCX 10012
1997年(廃盤)
JASRAC表記:なし
スクウェア・エニックス
SQEX-10042
2005年再発
JASRAC表記:なし

01 オープニング〜
爆破ミッション
これが1曲目にくるのは順当と言うか、予想通りですね。ある意味、PSを起動して初めて「FFVII」を立ち上げた時のインパクトに勝るものはそうそうないのかもしれません。単純な「すげえ〜っ」という驚きと、これから始まるゲームへの期待感。楽曲のファン人気が高いであろうことは容易に想像できました。特に「オープニング」は作品の幕開けとして欠くことのできない曲であり、後の「ADVENT CHILDREN」でもオープニング曲として採用されています。つまり、「FFVII」という世界観すべてを包み込んだテーマ曲だと言うことができるのです。
02 星降る峡谷 これがセレクトされるというのはそうとうシブいですね。決してキャッチーでなく、かつゲームの特定の場所でしか流れることのないこの曲が選ばれたのは、シナリオとイベントの勝利と言えるでしょう。あのイベント以来、それまで使っていなかったレッドXIIIを頻繁にパーティに入れるようになったユーザーも多くいるにちがいありません。「レッドXIIIのテーマ」「偉大なる戦士」とあわせての人気獲得ではないでしょうか。過去の「FF」にはなかったテイストの曲だったため、ゲームに入れるべきかそうとう迷ったという植松氏。ディレクター北瀬氏をはじめとするスタッフのウケが良かったため採用に踏みきったということですが、ファンのウケも良かったようです。
03 更に闘う者達 えてしてバトル曲は人気の高いもの。中でもこの曲は「これぞ植松バトル!」と言うべきノリの良いロック調の楽曲であるため、特に植松氏のファンに人気が高いと思われます。ハードがプレステになったことで、氏が「やっと正面からロックができる」との思いで作り上げた楽曲なのです。

同時に「VII」は、それまでのシリーズが持つ雰囲気からなかなか出せなかった植松氏本来の音楽的引き出しを、ようやく全開にすることができた作品でもあります。「これまでのFFは北欧的というかファンタジックだったから、どうしても曲はシンフォニックなものになった。しかし、今回は雰囲気がだいぶ変わったので、曲も変えなきゃいけない。今まで出さなかった部分をだいぶ出しました」とは植松氏の言葉。
04 牧場の少年 こういうホッとさせる曲がセレクトされるのも、なんとなくうなずけますね。それまでのゲームの(重々しい)雰囲気から一転、初めてチョコボファームに訪れた時の安堵感は大きかったはず。特に海チョコボをゲットすべく育成を繰り返したプレイヤーにしてみれば、耳に染み付いて離れないことでしょう。
05 ルーファウス歓迎式典 バラエティに富んだ選曲の本アルバム、これが入ってくることも何ら不思議はありません。なかなか隊列に入れずに苦労した想い出が蘇ってきます……。しかし植松氏、この曲を入れることにはかなり抵抗があったようで。「ほんとにね、たいした曲じゃないんですよ。なんででしょうねえ。まあゲーム中何時間もあそこにいたから、印象に残ったんですかね?アンケート結果が高かったので入れざるを得なかったんです」。ゲームとの相乗効果で曲の人気が高まったのなら、ゲーム音楽としてそれは最高じゃないですか。
06 エレキ・デ・チョコボ これ抜きには語れないでしょう。スーファミでは困難と思われるテケテケエレキを新鮮に感じたプレイヤーは少なくないはず。元ネタがわからなくともこの曲が好きになった人もいるでしょう。間奏なんかモロなんですけどね。わかんない人はお父さんやお母さんに聞かせてみて下さい。きっと「ベンチャーズみたいだね」って言ってくれると思います。
07 蜜蜂の館 まさかこれがくるとはなあ〜、とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。このアルバムの選曲コンセプトは、オリジナルサントラのアンケート結果をもとに上位のものを収録、ということですが、植松氏によると「僕のお気に入りも2〜3曲入れてあります」とのこと。ここでバラしてしまうと、この「蜜蜂の館」はアンケートでは20位にも入ってなかったのです。これにはたいそうショックを受けた植松氏、実はこの曲、氏はたいそう気に入っているんだとか。つまり、アンケート結果ではなく植松氏によってここに入れられているんですね。
08 シドのテーマ イベントとのからみで、異様に盛り上がる曲。ファン人気が高い理由としては曲が単純にかっこいいからというのももちろんありますが、シドの夢と「宇宙」という壮大なテーマを見事に演出していたためではないでしょうか。別アレンジでの演出の巧妙さで、いつの間にかこのメロディが頭にこびりついていたプレイヤーも。「宇宙への夢」「秒読み開始」、そして「星の危機(エンディング)」にもそのメロディが顔を出しており、印象に残らないはずがありません。
09 樹海の神殿 プレイヤーによってはとても長い間、聴きつづけた曲ですね。謎が解けないとそれこそ永遠に……。これもある意味では「耳にこびりつき系」でしょうか。アンケート結果、高かったの?
10 闘う者達 まあ、これがなくっちゃ始まらないですね。ゲーム音楽というのは普通のウタモノやサントラとは異なり、一度のプレイ中に同じ曲を何度も聴くという、きわめて特殊な環境に晒されるもの。それに耐え得る(繰り返し聴いても苦にならない)曲を作るというのは、並大抵のことではありません。くどいメロの曲は一度聴くには良いけど、繰り返し聴くにはツラい。一歩引きつつもさりげなく主張するという点で、ある意味満点の出来な戦闘曲と言えるでしょう。シリーズおなじみの「イントロ」こそなくなったものの、新しいスタイルの「FFバトル音楽」はユーザーに受け入れられたようです。
11 旅の途中で これも今作には稀な「癒し系」。キャラとともにプレイヤーもひとやすみ、ですね。過酷なシナリオ、厳しい冒険、課せられた運命が重いものであればあるほど、癒し系の曲の人気は高くなるものです。
12 ゴールドソーサー 音色からフレーズ、エコーのかかりぐあいまでが見事に「遊園地」なんだよなー、という、娯楽施設「ゴールドソーサー」のBGM。モンスターがウロウロするような世の中で、誰が砂漠の真ん中にそびえ立つ遊園地に遊びに行くんだよ?という冷静な分析は無用。サービス精神旺盛なスクウェア作品にはこれも欠くことのできないフィーチャーなんですよ。シナリオの野島氏にしてみれば、ゴールドソーサーをストーリーに組み込むのにはえらく苦労したようですけどね。
13 クレイジーモーターサイクル ドリフ」とか言われつつもしっかり人気は高かったのね。それだけ脳裏に焼き付く曲だったということでは。それほど強いメロのある曲ではないのに、ムービーとイベントとの相乗効果からインパクトを上げている、「一歩引いた楽曲」の成功例と言えるでしょう。聴きようによっては伴奏しかないんですけどね。前に出るメロディ、ないでしょ?御自分では「メロディのない構成曲は苦手」と言う植松氏ですが、こんなに素敵な構成曲を作っておられるではないですか。
14 ケットシーのテーマ 「タークスのテーマ」が来ると思ったんですけどねえ。こっちでしたか。あれ、そういえば神羅もないですね。その2曲を「ケットシーのテーマ」の人気が上回るとは正直意外……はっ?!もしかして植松サン!?
15 忍びの末裔 隠し扱いのユフィのテーマも登場。ファーストプレイで彼女を仲間にできなかった人も多いはずなのですが。まあ2周目で仲間にして、デートを狙うのはもはやお約束です。当時はヒ○スエも人気絶頂だったし。
16 J・E・N・O・V・A 中ボスとは別に、特別な戦闘曲の用意されていたジェノバ。ある意味でこれが本当の「リユニオン・トラック」でしょう(笑)。ピアノの低音部とシンベが掛け合うベースがグーな楽曲。センターにまとめちゃうとほとんど効果がないものを、思いきって左右に割り振るパンニングも大正解。とにかく全部がキャッチーで、人気が出ない方がおかしいというもの。
17 F.F.VIIメインテーマ
(Orchestra Version)
ここからの3曲はゲーム音源ではなく、フルオーケストラ演奏のスペシャル・トラック。あの長〜い「メインテーマ」もいよいよフルオケで登場。浜口氏のオーケストレーションに聞き惚れちゃいます。「VI」のオケアレンジ「グランドフィナーレ」に不満(アレンジにではなく、あくまで原曲とのイメージの不一致に、だが)があった植松氏も、これなら大満足というところか。過去のアレンジはテープと譜面を渡して「あとはよろしく」というスタイルだったらしいのですが、今回は植松氏と浜口氏がしっかりやり取りをして作ったとのこと。「イメージの一致ということでは今回がいちばんです」とは、アルバム発売直後の植松氏自身のコメントです。

ところで植松楽曲のアレンジを担当しているアレンジャーがすべて「しろう」という名前の人だというのは、偶然とは思えない(佐藤史朗、鷺巣詩郎、浜口史郎)。まあ中には服部親子もいますが……。
18 片翼の天使
(Orchestra Version)
本編でも内蔵音源でコーラスをやってのけていたこの楽曲ですが、今回フルオーケストラでさらに重厚に、さらに神々しく生まれ変わりました。原曲と比べると新規に数小節追加されている場所があったりして、比較しながら聴くのも楽しいかも。PS版の楽曲では浜渦正志氏(コンポーザー。FFでは「X」で作曲を担当)の学友がコーラス隊として参加していましたが、今回はクレジットがなく不明。予想では同じ方々がやられているんだろうなという気がしますが。

なお、2003年に発表された「VII」の2年後を描く映像作品「アドベント・チルドレン」のトレイラー(予告編)で、BGMとして使用されました。
19 エアリスのテーマ
(Orchestra Version)
これがダントツの人気でしょうね、やはり。植松氏のもっとも得意とするところ。ご本人も「VIIで一番か二番目に一生懸命作った曲」と言ってますし。「エアリスのテーマは作った時に、"ああ、いい曲ができたなあ、これはイケるだろうな"と思いましたね。音楽理論的には1ヶ所、普通は使わない和音進行を使っていて、そこがポイントでもあったんですけど、オーケストラアレンジするときにアレンジャーの人がそれを直しちゃって、"いや、それは直さないでくれ"と言ったりしました。やっぱり芸大を出たような人だと許せないんでしょう。でも、僕はロック出身ですから許せるんですよ。そういうのって面白いですよね、音楽の正解って何なんだろうという感じで」。これは植松氏が"自身の曲で特にお気に入りなのは?"と問われた際のコメントです。本アルバムの裏話として興味深いので参考までに。その「和音進行を直しちゃったバージョン」も聴いてみたいですね。どんなふうに違って聞こえるのか。

結果として、「X」の主題歌「素敵だね」のカップリング曲として過去のFFの楽曲を歌ものアレンジすることになった際に、ユーザーに対して行われたアンケートで堂々の1位を獲得。RIKKIの歌唱によってボーカル曲にもなった。このアルバムのオケアレンジも、浜口氏のバツグンのオーケストレーションでいっそう泣かせます。基本的に原曲重視なアレンジですが、オリジナルでのピアノのイントロの前に、うっすらとした導入が加えられています。それでも邪魔はしておらず、曲の印象は変わっていないのでご安心を。むしろ「なるほどなあ」と思わされます。

さて、オーケストラアレンジに際してこの3曲を選んだ理由を、植松氏は次のように語ってます。「3曲とも、僕が本当に好きな曲なんですよ」。私達も本当に好きですよ!ね?

リユニオン・トラックのヒミツ
 実は、このCDにはとんでもない「隠し」がある。CDをプレイヤーに入れ、1曲目から逆に巻き戻してみてほしい。何かの楽曲が入っていることに気がつくだろう。実はこれ、ライナーにも載っていない「隠しトラック」なのだ。トラック1より前に収録されているため、CDプレイヤーにも表示されない。知る人ぞ知る、というものである。

 で、その楽曲は何かと言うと、18曲目の「片翼の天使」からコーラスパートを抜いた、言わば「カラオケバージョン」。なぜこれが隠しトラックとして収録されているのかはナゾだが、コーラスの練習に、耳コピのお手本に……と活用するといいかも。

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2001/2005 GAMERS EDEN

リユニオン・トラックスの後は「AC」のサントラもオススメ。
作品未見でもアレンジバージョンとして楽しめます。