
デジキューブ SSCX 10053 2001年 JASRAC表示:あり(廃盤)
スクウェア・エニックス SQEX-10029 2004年再発 JASRAC表示:あり
シングル盤を購入できます。
1.素敵だね featured in FINAL FANTASY X
2.御月様 〜ウティキサマ〜
3.Pure Heart
4.素敵だね featured in FINAL FANTASY X(instrumental)
FFシリーズ初のプレイステーション2ソフトとして発売された「ファイナルファンタジーX」。製作開始時にスタッフが持ち寄ったアイデアの断片から導き出されたキーワードは「アジアンテイスト」だった。今にして思えば「アジアンテイスト」のFFに、奄美大島民謡(島唄)の歌い手RIKKI(リッキ・本名:中野律紀)を抜擢したのはごく自然な流れにも思えるが、もちろん最初から決定していたわけではなかった。
FFシリーズには「VIII」から主題歌が入るようになり、毎回「誰に歌ってもらうか」でスタッフミーティングを開いている。スタッフがめいめいにCDを持ち寄り、これがいい、こっちはどう?などと試聴して意見を出し合うわけだが、今回はこれを1,2回やっても歌い手が決まらなかったらしい。そんなおり、スタッフのひとり(スクウェアサウンズの松下マネージャー・当時)がCDショップで見つけたRIKKIのアルバムを作曲・植松伸夫氏に提示。それを聞いた植松氏は「これはいいよ!すごいよ!」と即決、すぐさまRIKKIに連絡を取ったという。やってもらえるかどうか不安だったと植松氏は語るが、きわめてスムーズに交渉は進んだようだ。以下はRIKKIのインタビューから。「ゲーム自体はプレイしたことがなかったんですが、FFシリーズが映像と音楽に突出した作品だということは知っていました。フェイウォンさん(FFVIII)と白鳥英美子さん(FFIX)のCDも持っていましたから、"FFX"の主題歌を依頼された時は、すごく光栄に思いました。実は私、白鳥さんの大ファンなんですよ。白鳥さんの次に抜擢されるとは感無量でした」。
さて、歌手が決まったところで、次は楽曲製作。これまでの「VIII」「IX」は曲が先にあって歌手を選定したが、今回は逆。植松氏はRIKKIの声や音域をイメージしたうえで作曲にとりかかったらしい(事前にRIKKIのライブを見たようだ)。実は作曲段階ではなかなか順調に作業が進まないこともあったようで、ある夜、植松氏は気分転換のために、なんとシンセを会社の応接室に持ち込んで作業。すると、1時間ほどの間に一気に15曲ほどを書き上げてしまったというのだから驚きだ。「この時にできた曲ならどれがテーマになってもいいな」、と植松氏は思ったそうだが、よほど良い曲が何曲もできたのだろう。中でも氏がベストと思われる曲を推した結果、その曲が「素敵だね」になったわけだ。
同時にシナリオ担当の野島一成氏も、RIKKIの声をイメージして作詞(野島氏もRIKKIのライブを見たうえで)。「野島さんが表現する歌詞と私の心情が同調した部分も多々ありました」とはRIKKIのコメントだ。そうしてユウナの気持ちを歌った美しいバラードは完成した。植松氏いわく「普通に聴いたら悲しくない曲。でも、ゲームをプレイしてストーリーを知ったうえで聴くと、歌詞の裏にある本当の意味に気付いてすごく切なくなる」とのことだ。ちなみにアレンジは、FF音楽ファンにとってはもはや植松氏とのゴールデンコンビ、浜口史郎氏が担当している。
実は、このマキシシングル盤とサントラ盤の「素敵だね」、間奏のヴァイオリンが異なっているのに気付いただろうか?レコーディングで「おまかせ」で数パターン録った、ヴァイオリニスト(太田恵資氏)の演奏があまりにも迫力があって植松氏が驚いたというのはわりと有名なエピソード。「もったいないからどっちも使おう」なのか、「ゲーム中ではおさえめ、シングルは激しめ」という判断なのかはわからないが、ともかく2バージョンの間奏ができたわけだ。そして、シングル盤の間奏を初期に放映された「X」のテレビCMで使用。サントラ発売後には「あのCMの曲がサントラにないけど、あれは何?」という話題がファンの間で交わされたのも記憶に新しい。賢明なファンは「あれはシングルの間奏」と早くから見抜いていたようだ。
さらに、植松氏はこのシングル発売に際してもうひとつの仕掛けを施した。それは、過去のFFの楽曲の中からファンに好きな曲を投票してもらい、1位になった曲をボーカル曲としてリアレンジ、RIKKIに歌ってもらいシングルのカップリングとして収録するというものだった。結果はファンの予想通りに「FFVII」の「エアリスのテーマ」に決定、このシングルに「Pure Heart」として収録された(作詞:白鳥英美子)。ちなみにアレンジは植松氏のフィドルの師匠、Jim Ediger氏が担当。歌詞の内容がかなりエアリスを想起させるものだけに、「VII」ファンはゾクっとするはず。
シングルには他にRIKKI作詞・曲によるオリジナルソング「御月様〜ウティキサマ〜」を収録。アレンジ、そしてピアノは「X」のピアノコレクションズで演奏を担当した黒田亜樹氏による。
RIKKI オリジナルミニアルバム「加那鳥〜カナリア〜」

ユニバーサルミュージック UMCK 1056 2001年 JASRAC表示:あり
アルバムを購入
「素敵だね」のシングル発売からまもなく、RIKKIのミニアルバムが発売。CDショップのゲームコーナーに「素敵だね」と並べて陳列されていたので目にした人も多いだろう。全7曲中、7曲目に「素敵だね〜秋ヴァージョン〜」を収録している。こちらのアレンジも黒田亜樹氏がピアノの演奏とともに担当。ヴァイオリンとピアノだけのシンプルなバックトラックながら、原曲の雰囲気をしっかりと感じさせる見事なリアレンジ。ヴァイオリンは原曲で見事なソロを聴かせてくれた、太田恵資氏だ。カスレるかカスレないか、ファルセットぎりぎりのところを漂うRIKKIのボーカルは、我々をなんともせつない気持ちにさせてくれる。
|