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ファイナルファンタジーVI ORIGINAL SOUND VERSION
ジャケット  ますますスケールアップ、ついにCD3枚組となったFFオリジナルサントラ。シリーズ6作目「ファイナルファンタジーVI」に使用された楽曲を、ゲーム音源で収録。ゲームでオペラをやってしまった、ある意味での記念碑的作品であり、当時からそのサウンドに注目が集まっていた。スーパーファミコンの性能を限界まで使い果たしていたのはユーザーの目(耳)にも明らかで、実際これが最後のスーファミ「FF」となった。次回作からはプラットフォームをプレイステーションに。

ポリスター
PSCN 5001〜3  
1994年  
JASRAC表記:なし

ファイナルファンタジーVI オリジナル・サウンド・ヴァージョン
ゲーム紹介

 スーパーファミコンでは最後となる、ファイナルファンタジーシリーズ第6作。「V」をも超える壮大なシナリオと、テクノロジーの臭いがするシリアスな雰囲気が、シリーズ最高峰のグラフィックをもって表現されている。すべてのスーパーファミコンソフトでも1、2を争うレベルのグラフィックに序盤から驚かされたものである。一見すると「剣と魔法」よりも「機械」が幅をきかせているサイバーな世界観は、後の「VII」にも受け継がれる要素であろうか。ある意味ではRPGの定番、「中世ファンタジー」ではなくなったとも言えよう。あらゆるものを貪欲に取り入れていく姿勢はさらに進化し、「和風」を感じさせるキャラクターやオペライベントまで導入。スーパーファミコンでの表現の限界に真正面から挑んでいる。長く魅せられるイベントやその演出技法、多彩なキャラクターの登場は、賛否両論あれどFFをますます「映画的RPG」と位置付けることとなった。
 
 FFはよく「奇数はシステム、偶数はシナリオ」などと評される。それに沿えば本作は間違いなくシナリオ重視の作品。キャラクターのカスタマイズや隠しボスなどのやり込み要素は少なくなったが、次々と展開されるイベントの連続でプレイヤーを飽きさせることなく引っ張っていく。逆に言うと、提供されるストーリーを一度堪能してしまえば、2周・3周と遊ぶ気にはあまりなれないのが残念。「参加型の映画」としての完成度は高いが、ゲームとしてはいかがなものかなど、ユーザーの間に論議を呼んだ作品でもある。いずれにしてもFFのターニングポイントとなった作品であることは疑いようがない。後に、プレイステーションに移植。ゲーム本編については完全移植(追加・変更・アレンジはなし)を貫きつつも、オープニングやエンディングへのムービーの追加、「クロノトリガー」同様のクリア後の「おまけ」も追加され、オールドファンのみならず新規顧客にもアピールしている。


 
サントラは、初の3枚組となって発売。作曲はもちろん、FF音楽の父・植松伸夫氏が担当している。シナリオの増加に伴って当然音楽も著しく増加したが、CD2枚に詰め込まずゆとりを持って3枚にしていることで、1曲を長く聴くことができるのは喜ばしい限り。3800円と価格が抑えられているのも嬉しい配慮だ。ライナーノーツではおなじみの植松氏によるコメントに加え、プロデューサー坂口博信氏と植松氏二人に対するインタビューを収録。FF誕生にまつわることから、製作のうえでの「精神論」まで、実に興味深い内容が語られている。

ゲームをプレイせずに、音楽のみ語ることなかれ。
名作・SFC版 完全移植のPS版 GBA版


DISC 1          DISC 2          DISC 3


DISC 1

01 Opening Theme
予兆
いきなり荘厳なオルガンから始まります。タイトル画面で流れるこの曲、これだけでもうゲームの雰囲気が伝わってきますね。重厚なチャーチ(パイプ)オルガンとボイスでひとしきりインパクトを与えた後、うって変わってなんとも切なげなハープによるアルペジオが奏でられます。

そして1分15秒あたりからの展開は非常に映画音楽ぽくてグー。早くも、プレイヤーと敵対することになる「ガストラ帝国」のモチーフが顔を出します。作品中の印象的なモチーフを組み合わせて構成するという手法は、グラフィックや演出が「映画的」と評されがちなFFにおいて、音楽も負けじとそうであろうとしていることを感じさせてくれます。スーファミでこれをやろうとする姿勢が素晴らしいではありませんか。このパートに乗せて世界背景がテキストで語られた後、オープニングイベントはいったんここでポーズとなり、とある場所に3体の魔導アーマーが現われます。

2分21秒からのパートは、主要スタッフの名前が表示されつつ、ティナたちの乗る魔導アーマーが雪の中を進んで行くシーンに充てられています。ここでは既にティナのモチーフが用いられていますが、新規プレイヤーにはこれがティナのテーマだということは当然わからないわけです。しかし、印象的なメロディをここで使っておくことで、後への伏線を張っているんですね。

これにてオープニングイベントは終了。ここまでは、ニューゲームを開始せずにコントローラーを放置しておくと、自動的に一連を見ることができます。改めてニューゲームをスタートすると、1分15秒のところから再度繰り返されます。このように、実際のゲームでは1度ポーズがあるのですが、CD化するにあたって組曲風に編集してあるんですね。

また、PS版ではゲームを立ち上げた際にまずムービーが流れます。このムービーもかなりのインパクトがあるのですが(楽曲は新録)、その(当時)最新のムービーが持つインパクトに負けていないのが、このオリジナル版「Opening Theme」の凄いところ。ひと昔前のスーファミ音源でも、決して最新の技術にひけをとっていません。

開発中、坂口博信氏はこの曲について植松氏に「怖すぎるんじゃないか?ドラキュラみたいにならない?」と指摘したそうですが、植松氏はサラリとかわしてそのままにしたとのことです。もちろん「これでいい」という確信があったからこそでしょう。
02 Colliery Nalsh
炭坑都市ナルシェ
グラフィックの雰囲気がとてもよく出ていると思います。あちらこちらで蒸気の立ち上る炭坑の町(これがホントのスチームパンク?)。この曲で、もう街の情感がわかってしまうでしょ?Lchにあるハンドクラップと、ジャジーなベース音色がイイ味出してます。たまにR側に挿入される、スチームとも吐息とも取れるSEが、独特の味を作り出しているんですね。音色のセレクトもろもろ、後の「VII」にも通じる香りのする曲になっています。ちなみに、オープニングイベントで強制的にナルシェにやって来た時は流れず、炭坑内に入ってからが初出となります。

イベントBGとしても流用され、リターナー本部でのバナンとの会話などに使われています。また、ナルシェでもわりと頻繁に作戦会議のようなものが行なわれるため、そういったイベントにもバッチリはまっているのはさすがだな、と。リターナーのテーマとしての意味合いも兼ねているように思えますね。

後に、サマサの村でストラゴスが「なぜ村人が魔法を使えるか」について語るイベントの背景にも流れます。こちらは単なる流用で、ナルシェやリターナーとは何の関係もありません。同じような流用には、カイエンの夢の中で「あの人を助けてほしい」と、カイエンの妻と子が語りかけてくる場面があります。こういった流用は、曲調が単一のイメージにとらわれない幅広さを持っているからこそ行なわれているとも言えます。

一方、世界崩壊後のナルシェではこの曲が流れなくなります(Disc3-5「死界」が流れる)。だから流用されても違和感がないんですね。
03 Awakening
目覚め
「ティナのテーマ(Disc2-1)」のモチーフが切ない音色で顔を出すこの曲は、ナルシェの民家でティナが目覚める場面が初出。まさに「Awakening」ですね。まだプレイヤーにとって彼女のテーマであるという意識はないはずですが、このメロディはかなり早い段階で心に染み付くことでしょう。くどすぎず、シンプルかつ耳から離れないメロってのは、そうそうないもんです。サンプリングした弦のループがだいぶ目立ちますが、この揺らぎまでもが曲の雰囲気を形成しているんだから面白いものです。さて、ここではこの曲がいかに「目覚め」という一点に的を絞って使われているか、検証してみることにしましょう。

まずはフィガロ脱出後、自分の身の上を聞かされてティナが落ち込む場面で使われます。さらにリターナー本部で、バナンとの会話によって傷ついたティナがベッドで目覚めるシーンは、まさにAwakening。また、幻獣に反応したティナが何かに変身して飛び去り、行方不明になってしまった後でも流れました。これなんかも「覚醒」という意味では、たしかにAwakeningかもしれませんね。うーん、深い……。

そしてさらなる目覚めは、ゾゾのてっぺんでトランスティナが目を覚ますシーン、さらに彼女が記憶を取り戻してパーティに復帰する場面でも再度使われています。こちらも広い意味での「目覚め」ですよね。このようにあらためて見てみると、一貫して「目覚め」にこの曲を充てている印象付けはニクいとしか言いようがないですね。

以後もこの曲はティナがらみのシーンで便利に流用されていきます。これまで、ティナの「苦悩」や「哀しみ」といったシチュエーションに充てられることの多かったこの曲ですが、帝国を倒すべく幻獣の協力を得るための橋渡し役を引き受けるティナ、といった前向きな場面にも使われるようになっていきます。これも、初めての積極的なティナ自身による動機という意味では、「目覚め」ではないかと。う、こじつけ?

アルブルグを発った船上でのティナとレオ将軍の会話イベントでも使用されていますが、ここでのティナは「寝つけなくて起きている」わけで、表面的には「目覚め」ではないようですが……、レオの立場で考えてみれば、感情を取り戻したティナは、呪縛から「目覚めた」ということなんでしょう。一方で世界崩壊後では、モブリズの村で「戦う力を失った」とティナが告白するイベントで短く使用されています。この場合、直接的には目覚めていませんが、実は次なる「目覚め」の前フリになっているのです。

ティナの最後の、そして最大の「目覚め」……それは、フンババを倒した後のことです。トランスしたティナを化け物と思って恐がる子供たち。落胆するティナ……。そこに、ひとりの少女が「あたしわかるよ。ママだ」と駆け寄る……そんなタイミングでこの曲が流れました。続々と、ティナに駆け寄る子供たち。ティナがついに、愛を理解した瞬間でした。そしてティナは決意します。「今ある命も、これから生まれる命も、……未来は私が守る」と……。これを「目覚め」と言わずして、何を目覚めと呼ぶのでしょう?

こうして検証してみると、この曲が徹底的に「目覚め」に関するイベントで使われていることがわかるでしょう?ゲームの製作中からこの曲名がついていたわけではないでしょうが、実にバッチリなタイトルであること、そして一貫した音楽演出にはただただ頭が下がるばかりです。……考えすぎですか?
04 Lock
ロックのテーマ
あ、ロックンロールではないんですね。そこまではやらないか。っていうかロックンロールは「Rock」だろ。とひとりでツッこんでおきまして……聞き流して下さい。さて、重たい雰囲気の多い「VI」全体のトーンでは、あまり聴くことのできないタイプの曲。テンポの速いマーチングスネアを核にして、ストリングス中心の勇ましく流れるようなメロディが快活さを醸し出しています。ナルシェで、ティナをかくまったジュンの家にロックが現われるシーンが初登場。そのまま、ナルシェの洞窟内〜モーグリとともに挑むシミュレーションバトルまで通して使われました。

明るく元気なロックのテーマとしてはわかりやすい楽曲なのですが、彼に絡んだ使われ方は決して多くなく、むしろ「仲間の奮闘」といったシチュエーションで使われるケースの方が目立ちます(例えば、フィガロ城が潜行してケフカを撃退するイベントなどで使用)。そのため、ゲーム中ではロックのテーマとしての印象はほとんどないのですが、世界崩壊後のコーリンゲンでレイチェルと束の間の再会を果たしたロックが、(ケフカを倒すという)決意を新たにするシーンでは、彼のテーマとしての面目躍如。ただし、やはりゲーム全体での使用回数が絶対的に少なく、テーマ曲というほどの印象は残りません。
05 Battle Theme
戦闘
これ以降のシリーズ(VII、VIII)ではしばらくお別れとなる、おなじみのイントロは今回もしっかりあります。ただ、植松氏自身が「VII」の頃に「あのイントロからの展開は限られるので、もうやめようと思っていた」と語っている通り、そろそろキツくなってきているのが曲に顕われているような気がします。いくつかギターのパートがありますが、そこにちょっと難があるのかな。ギター音源のチープさゆえに、個人的には前半の展開がややコミカルドタバタ劇に聞こえてしまいます。後半の展開はまだいいのですが……。エンカウントのたびにしょっちゅう聴くことになるので、個人的にはちとつらいです。ネタ切れ感が出てきたかなぁ、という印象。

「X」の製作中、周囲のスタッフからバトル曲への苦情が殺到したことは有名ですが、それでよくこの曲にクレームがつかなかったもんだ、というのは言い過ぎでしょうか?これに比べたら「X」のバトル曲の方がはるかに良いですよ、と私は思っているんですが。「VI」の戦闘にイマイチのめり込めないのはシステムのせいもあるでしょうが、曲にハマれるかどうか、ということも重要なんじゃないかと思います。

初めて聴くことができるのは、ビックス・ウェッジとティナがナルシェに突入した際の強制エンカウントバトルです。以後はそれこそ何回となく聴くことになるでしょう。
06 Fanfare
勝利のファンファーレ
おなじみのファンファーレなのですが、ディストーションギター入ってます。植松氏本来の趣味が出ているのでしょうか?それとも「VI」の裏テーマが「ギター」なのか?けっこういろいろな曲で、全般的にギターがフィーチャーされてますよね。
07 Edgar&Mash
エドガー、マッシュのテーマ
キャラクターのテーマというより、個人的には「フィガロ城のテーマ」かと思ってたぐらいで……。ブラスとティンパニが鳴り響く、オーケストラを意識した威厳のある楽曲です。「VIII」発売の時に植松氏が、「以前のキャラごとのテーマ曲が良い結果を出していたとは言えないので」というようなことをおっしゃってましたが、確かにこの「VI」では、キャラごとのテーマによる印象付けがあまり上手くいってないように思います。曲は覚えていても「えっ、コレって○○のテーマだったの?」と思うことしきり。よほど耳の肥えた人でもなければ(もしくはマニアでもなければ)、普通にゲームをプレイしていて気付くかな?というレベルではないでしょうか。

初出は初めてフィガロ城に訪れた際で、以後、フィガロ城内で流れ続けます。これが彼らのテーマなのだと気付かされるのは、世界崩壊後のツェンではないでしょうか。そこでセリスがマッシュと再会した時に、この曲が鳴るのです。「あ、この兄弟のテーマなんだ……」と、ここで認識するわけです。

ファイさんから補足の情報提供:「"エドガー、マッシュのテーマ"が初めて流れ出す場面はロックたちがフィガロ城を訪れ、門番が道をあけた時になります」。門番が門を開くまでは流れないようですね。

マッシュの師・ダンカンから究極奥義を授かるイベントでも印象的な使われ方をしています。ただやっぱり、曲調としてあまりに「城」の雰囲気にハマりすぎてた。これが、キャラクターのテーマとしての印象を薄いものにした一因ではないでしょうか。考えようによっては、キャラと城の両方を兼ねているわけですから、凄いとも言えるんですけど。
08 Cefca
魔導士ケフカ
一方、悪役ケフカについてはテーマによる印象付けが成功してます。初めて耳にするのは、フィガロ城に偵察との名目でケフカが現われるシーン。この時は、なにか間の抜けたトボケた悪役……程度の印象で、どちらかと言うとマヌケキャラだったのにねえ……。まさか物語を担う敵となっていくなんて。それにしてもこの曲があったからこそ、ケフカはFF史上でもかなり上位にランクされる、印象的な悪役になったのではないでしょうか?

ケフカの陰謀シーンには必ずといっていいほど流れます。ケフカがドマの水に毒を盛り、それによってドマ城の人々が次々と倒れる場面。サマサの村でレオ将軍とユラが和解したかと思ったところに、魔導アーマーを引き連れたケフカが現われるシーン。そして、最終決戦直前、それぞれの守るべきものを口にするティナたちに、ケフカが怒りを露わにして地上を破壊するという場面などなど、ちょっと「キレた」彼のキャラクターをこれでもか!というほどに演出します。「無邪気な狂気」といった感じですかね。
09 Mt.Coltz
霊峰コルツ
タムタムの連打とベースラインで、ヒイヒイハアハア言いながら山を登ってる感じを出してますね。それでも辛さを感じさせないのは、作曲者(植松氏)の人柄でしょう。低音で構成されたリズムとは対照的に、弦とハープ、ホルンで構成された上モノが高域を担い、全体的なバランスをとっています。今作でフィーチャーされているギターも、右側でジャージャカジャージャカと刻んでますね。

もちろん曲名の通り、コルツ山で流れるBGです。後に同じ「山」系マップの「幻獣の聖地」「ゾゾ山」でも使用されています。また、ダンカンの修練小屋でも使用。こちらは山ではありませんが。
10 Returners
反乱分子
わりと全体の音数が抑えられ、音に隙間のある曲になっています。軽めのマーチといった感じですが、後半はブラスがだいぶ盛り上がります。何か行動を起こそうと水面下で動く者たち……といった雰囲気がにじみ出ていますね。リターナー本部でBGとして流れるものです。

また、後にベクタで行なわれる、ガストラ皇帝とリターナーとの和平会食の際にも流れます。さらにこちらは流用ですが、フィガロ城の地下(ただしジェフ追跡中のみ)でもこの曲が使用されています。
11 Shadow
シャドウのテーマ
「ビョーン、ビョビョビョ〜ン」。最初イントロ聴いたら「ド根性ガエル」の劇伴かと思……。いやいや、その後の口笛っぽい音色はバツグンにカッコイイですよ。あまり当時のゲームにはなかったタイプの曲だと思います。今なら「ワイルドアームズ」とかがこんな感じですね。まあ、シャドウというのは「アサシン=暗殺者」であって忍者ではないわけで、和風な曲でなくて安心しました(?)。和風ということではカイエンもいるわけですしね。ギターのひっかきとあいまってどことなく西部劇っぽいのは、孤独感の演出かな。

初出は最初に訪れた時のサウスフィガロ・酒場です。ここで初めてシャドウと出会うんですね(この時点ではまともに相手をしてはもらえませんが)。次に聴くことになるのは、レテ川以降ひとりさまようマッシュが、とある一軒家に辿り着くところ。そこにシャドウがおり、お金を払うことでマッシュと行動を共にすることになります。さらに、ロックがコーリンゲンの宿屋でシャドウと出会う場面や、サマサの村でシャドウがパーティから去っていくシーンでも使用されます。

シャドウはユーザー人気の高いキャラクターなのですが、とにかくパーティにいたりいなかったりと出入りが激しいので、個人的にはまったく思い入れがありません。ほとんどNPC扱いです。ちなみに私の友人で、魔大陸でシャドウを待たずに、知らぬままパーティから消滅させてしまった者がひとり。あのイベントはちょっとねえ……。この場合、シャドウのテーマはゲーム中で二度と聴けなくなるわけです。
12 Troops March On
帝国の進軍
曲タイトルどーりの、まさにそんな曲。帝国のモチーフ(Disc2-13「ガストラ帝国」)をマーチ調にアレンジしたものです。初めて聴くことになるのは、ドマ方面の帝国軍陣地にて。そこから、帝国軍がドマ城に突撃するイベントまで通して流れます。後に、ケフカが氷漬けの幻獣を奪うためナルシェに攻め入るイベントでも使用されました。

幻獣界にて、攻め入ってきた人間を排出すべく長老が「封魔壁」を発動しようと動き出すシーンでも使用されていましたが、これは幻獣視点のイベントなのでちょっと違和感ありましたね。この曲が鳴るとやはり、帝国主観のような気がしてしまいます。まして、マドリーヌが幼いティナを連れて飛び出すシーンへと続くわけですから、この選曲はちょっと歓迎しかねますね。
13 Cayenne
カイエンのテーマ
出た!サムライといったらコレしかないでしょう。尺八ですよ、尺八。スーファミで、よくこれだけの雰囲気を出せてますよね!そのため「キャラクターのテーマ」としては、他のキャラクターよりは圧倒的に印象が強いです。カイエン初登場時のインパクトも大きいですね。帝国軍の突撃を前にうろたえるドマ兵のところに、「待たれよ!」……FFで「待たれよ」なんてセリフが聞けるとは。FFシリーズの「なんでもあり感」はこんなところにも出ているのではないでしょうか。余談として、この曲はドマ城のBGとしても使用されていますが、その割りにはドマにサムライっぽいのはカイエンしかいないような気が……。

ケフカの毒によってドマ王が亡くなってしまった後、カイエンが生き残った者を探して城内を探索するシーンでも流れますが、ここはいらなかったんじゃないかなあ……もしくは他のしんみり系音楽がよかったのでは。直後に妻子を失うだけに。そういえば、今回の「VI」には汎用的な哀しみ音楽がありませんね。

世界崩壊後、マランダのローラのもとにゾゾ山から手紙を送り続けるカイエン……そんな場面にも流れます。優しすぎる男カイエン、名乗り出ない奥ゆかしさもまさに「漢」!しかし、造花作りがうまいサムライというのも、とってもFF的な「なんでもアリ感」が……。
14 The Unforgiven
許されざる者
どこか「VII」を思わせる曲。ティンパニとスネアの感じでしょうか?初出はコルツ山でのバルガス戦の最中、マッシュが登場するシーン。次はドマ城に毒が流され、カイエンが王を守りに行く場面で使用。その直後、妻子の死に我を忘れて帝国軍に攻め込むカイエンと、そこに助太刀するマッシュといったイベントの背景にも流れました。言わば、汎用の「焦らし音楽」といった位置付けの曲です。せわしなさでは今作ナンバーワン。

しばらくの後、幻獣たちの影響で舵がきかなくなった飛空艇が不時着するイベントでも、焦らしBGとして使用。また、ツェンの町での時間制限のある、崩れかけの家から子供を救出するイベントでもけたたましく鳴り響き、プレイヤーを焦らせます。さらに、モブリズの村を伝説の怪物フンババが襲おうとしている……そんな危機感を盛り上げるのに使われていました。
15 The Mystic Forest
迷いの森
ボイス+アコースティックギターのイントロは出色。特にアコギの音色シミュレートがよく出来てます。ストリングスの音色はもう少し立ち上がりのいいものの方がいいかも?ここのところ伝統となっている、「3拍子のダンジョン音楽」を今回も踏襲しています。

曲タイトルは「迷いの森」になっており、もちろん迷いの森で流れるのですが、他にも全般的なダンジョンBGとして使い回されています。
・サウスフィガロへの洞窟
・ダリルの墓
・獣ヶ原の洞窟
・エボシ岩の洞窟
・カイエンの夢のダンジョン、夢の炭坑
16 Mistery Train
魔列車
うまい具合にディレイを混ぜ込んだSEがいいかんじです。一方で曲はと言うと、イントロのような音の薄い部分は「あの世行き」といった雰囲気が凄く出ているのですが、すぐに厚くなるブラスとティンパニが、なんとなくあの列車のイメージではないような気がしてしまいます。ただし、これは音楽のみ聴いている場合の感想。ゲームのプレイ中はまったく気にならないんだよな。してやられてる、ってこと?

また、普通なら単にオドロオドロしくしてしまいがちな場面だというのに、決してそうはなっていないところが植松氏のウマさかな、と。仲間になったりアイテムを売ったりするヘンテコなユーレイがいるわけで、一筋縄でいかないスクウェア製の「お化け屋敷」に、どことなくユーモラスなテイストにまとめてあるこの曲がなんともハマっているんですよ。あ、CDではトラックの最後に「ピピーッ!」というSL(汽車)のSEあり。このあたりもサウンドマニアには嬉しいですね。

なお、カイエンの夢の中の魔列車では、カタンコトンという走行音だけが使われています(曲そのものは鳴りません)。
17 Wild West
獣ヶ原
敵の技を覚えるためにえんえん聴いた記憶があるなあ……。その名の通り、獣ヶ原で流れるフィールド音楽です。獣ヶ原では、エンカウントバトル中にもこの曲が流れ続けるため、本当に長い間聴くことになります。パーカッションの構成が、同じスクウェア産RPG「クロノトリガー」に植松氏が提供した「燃えよ!ボボンガ」に通じるものがありますね。前半はアフリカっぽく?と思わせておきながら、後半はどこかアラビアンな雰囲気が混ざっていて、捉えどころのない「インチキ民族音楽(失礼)」になっています。
18 Gau
ガウのテーマ
これ、曲だけ聴かせられたら「ガウ」は連想しないかも……。バレンの滝を下り、流れ着いた場所で気を失っているマッシュのもとにガウが現われるイベントで初出となります。低音の弦とマンドリンぽいギターが妙に暖かいこの曲、どちらかと言うとマッシュたちの「生きててよかった……」という心境の方にシンクロしてしまっていて、元気な野生児ガウにはちっともノっていないところがなんとも言い難いですね。

しばらく後にはきちんとこの曲がハマる、ガウ関連のイベントもしっかり用意されています。世界崩壊後、ガウが父親と対面するイベントがそれ。あんな父親でも、生きていたことがガウにとっては「しあわせ」……野生だけにとっても純粋なガウの優しさを包み込むように奏でられました。とは言っても、私が記憶している限り、ゲーム中でこの曲が使われるのはこの2回のみ。しかも後者は必須イベントではなく、プレイヤーによってはこの曲を1度しか聴かないこともザラでしょう。かなりレアな曲であることは間違いなく、もったいないというよりはムダ遣いに近いものがあります。いや、曲自体は凄く良いんですよ。しかしゲームにとって本当に必要な曲か?というところを考えたいわけなんです。え、考えなくてもいいですか?
19 The Snake Path
蛇の道
リズム楽器はまったく入ってないんですが、左右のストリングスがテンポ感を出しています。その名の通り、蛇の道で流れるBGです。ジャノミチハヘビ(意味なし)。左へ行くか?右へ行くか?

「蛇の道」は基本的に一度しか通りません。これだけで出番終了か?と思いきや、後に「古代の城への洞窟」で流用されています。そのまま通して古代の城でも引き続き流れますが、これ自体が隠しイベントなので、プレイヤーによってはやっぱり一度しか聴かずにスルーされてしまう悲しい曲であったりします。
20 Kids Run Through
  The City Corner
街角の子供達
ああ、なんかホッとする。暗めの世界観にあってこの曲。一服の清涼剤になってます。とっても牧歌的というか、実際にそういう描写はありませんが、「街角の子供達」というタイトルもいいじゃありませんか。とってものどかで平和そう。植松氏は作曲にあたって、いろいろな楽器をいじって曲のイメージのとっかかりにしているそうで、弾き慣れたキーボードばかりだと手クセというか、染み付いた構成になりがちだからというのがその理由だとか。その際にいじる楽器は、ギターはもちろんマンドリン、リコーダー(笛)などがあるそうですが、この曲はリコーダーを吹いてるうちにできたんじゃないかな〜、と思えます。根拠はないですけど。

最も最初に聴くことのできる場所は、サウスフィガロの町になるはず。もしくはサウスフィガロ付近にあるマッシュの修練小屋ですね。以後、町のテーマとして各所で使用されていきます。モブリスの村、港町ニケア、コーリンゲンの村、ジドールの町などがこれにあたります。

特殊な例としては、帝国に占領されていた町が解放された後、町で流れる曲がそれまでの「戒厳令」からこの曲にチェンジされます。サウスフィガロやアルブルグがこれに属しますね。一方で、世界崩壊後の町では通常「あの日から…」が流れるのですが、サウスフィガロの町は珍しくこの曲がデフォルトになっています。

街の曲についてはファイさんから補足情報をいただいてます。

他にも特殊な使用例を紹介しましょう。サマサの村では通常「ストラゴスのテーマ」が流れていますが、ヒドゥンを倒したことをガンホーに報告するシーンでのみこの曲が使われました。また、世界崩壊後のコーリンゲンでは通常「あの日から…」が流れているのですが、レイチェルイベントの後はこの曲が常に流れるように変化します。
21 Under Martial Law
戒厳令
さびしい……心細い……こわい……。帝国の支配化に置かれた町のテーマ。帝国のモチーフをアレンジしたものです。ひっそりとしたストリングスと寂しげなハープ、忍び足テイストのハイハットが、息の詰まりそうな雰囲気を形成。ロックが閉じ込められた、サウスフィガロの町で初めて流れます。地下の抜け道とはいったいどこに……見渡す限り帝国兵、町人の姿もほとんどありません。そんな空気をこの上なく適切に表現しています。同じような状況に陥っている、アルブルグの町やマランダの町においてもこの曲がBGとして流れます。

帝国から解放されるとこれらの町でも「街角の子供達」が流れるようになるのですが、不思議なのはアルブルグ。町の中は「街角の子供達」になるのですが、なぜかパブは「戒厳令」のままなんです。「帝国兵がいなくなって商売あがったり」な、パブのマスターの心境描写?それとも単なる見落としでしょうか。

いったんはリターナーと和解したかに見えた帝国。しかしやっぱりそれは罠だった。帝国に裏切られたセッツァーたちが、サマサにいるロックたちの所へやって来るシーンでも使用。また、世界崩壊後は港町ニケアでこの曲が流れています。

街の曲についてはファイさんから補足情報をいただいてます。
22 Celes
セリスのテーマ
後で出てくるオペラ中での「アリア」のメロディ。もうちょっと「セリスのテーマ」としての印象付けがうまくいってたら、オペラのシーンでもっと感情移入できたかも。ちともったいないです。それでも、オペラシーンのおかげでキャラクターテーマの中では、まだ印象が強い方に分類されるでしようか。ベル音色がメロディを受け持ち、その周囲をカルテットとハープが包み込む、暖かくて優しい曲。

アルブルグの町で再会したロックとセリスが、夜中に会話するイベントを盛り上げました。会話と言っても、なぜかセリスは無言……彼女の胸中は、そしてロックの落胆は……。女心とは複雑です。セリスとロックがお互いを気にし合っているのはプレイヤーがはたから見ていても明確ですが、煮え切らないふたりに感情移入するか、イライラするかは人それぞれ。

世界崩壊後では、シドが死亡するシーンで流れます。セリスがシドに新鮮な魚を手早く食べさせてあげられないとこうなってしまいます。が、シナリオ上のペナルティはなく、シドの生死はすべてに影響を与えません。かわいそうなシド……。絶望したセリスが身投げをするところまで流れます。それにしても綺麗な曲なのに、こういうシーンで使われると絶望的に聞こえてくるのだから不思議なものです。死にゆく者は美しい……ってか?

それにしても、やはり主な使いどころがこの程度というのは、曲がもったいない限り。結果としては「オペラの曲?」ぐらいの印象しか残らず、我々のようにサントラまで買うようなファンは別にして、一般ユーザーの記憶に残っているかどうかは微妙なところ。
23 Save Them
幻獣を守れ!
イベント曲としての効果は大。とても焦らせられます。焦らし音楽としてはひたすらピンチという感じの「許されざる者(Disc1-14)」とは異なり、味方側もだいぶ善戦しているような味付けで、ただ危機的というよりはむしろ勇ましい曲調になっています。ティナのテーマも実にさりげなく挿入されています。こうして様々な曲にティナのモチーフが織り込まれているため、ゲーム全編を通してティナのテーマの印象はとても大きいんですけどね。他のキャラのテーマがそれに負けてしまっているというか。

最初にこの曲を聴くことになるのは、ナルシェに攻め入ってきたケフカから幻獣を守るため戦う場面。例の「パーティ切り替えシミュレーションバトル」ですね。まさに曲タイトル通りのシチュエーションとなっています。バトルでも通して流れ続けるため、かなり長時間聴くことになるでしょう。

続いては、魔導研究所脱出時。トロッコに乗って魔物との連戦を戦い抜く際に、プレイヤーの闘志を存分に引き出す勇ましさで盛り上げてくれました。まあ、ここではすでに幻獣は……ということで、曲名のような意味合いはまったくありません(流用としてはじゅうぶん効果的ですが)。同じような流用として、魔大陸に向かって出発した飛空艇を帝国空軍(インペリアル・エアフォース)が迎撃にくるイベントでも使用され、そのまま度重なる戦闘まで通して流れます。「退かずに前へ進め!」という使い方が多いですね。
24 The Decisive Battle
決戦
通常バトルはだいぶけなしてしまいましたが、こちらはとても好きです。いかにもFFの中ボス曲!という感じではありませんか。怒涛のハイハットと、リリースの長短で使い分けられているスネア音色。ゲートリバーブっぽくてカッコイイ!発音数の制約から来る苦肉の策かも知れませんが、いい効果になってます。しかしこのドラム、実際に叩ける人いるのでしょうか(特にイントロ)。オルガンが多用されているのも、ロック好きな植松氏の好みが顔をのぞかせているな、という感じ。

初出はナルシェ炭坑での対ユミール戦。以後、ガードリーダー、ケフカの部下(魔導アーマー)、バルガス、オルトロス、ディッグアーマー、魔列車、ケフカ(ナルシェ)、ダダルマー、イフリート&シヴァ、ナンバー024、ナンバー128、クレーン、フレイムイーター、オルトロス&テュポーン、エアフォース、フンババ、しょくしゅ、デュラハン、デスゲイズ、ストームドラゴン、キングベヒーモス、チャダルヌーク、ヒドゥン、レッドドラゴン、フリーズドラゴン、ウーマロ、アースドラゴン、ブルードラゴン、アルテマバスター、イエロードラゴン、インフェルノ……うわ、ボス多いなー!というわけで、主要なボスとの戦闘を盛り上げてくれました。

また、ボスではありませんが、宝箱に潜んだモンスターとの戦いに使われることもあります。ダリルの墓でのプレゼンターや、古代の城の洞窟でのトンベリマスター、古代の城でのサムライソウルがこれにあたります。ボスでもないのにこの曲が流れてきたら、そのモンスターはかなりの強敵。覚悟を決めて戦いましょうね。
25 Metamorphosis
メタモルフォーゼ
恐怖系のイベントBGM。ティナのテーマのモチーフ入ってます。というよりも別バージョンと言う方が正しいかな。一つのメロディもアレンジひとつでこんなにも表情を変えるという、いいお手本。曲名の「メタモルフォーゼ(=変身)」とは、「ティナのテーマ」に対するこの曲のアレンジを指しているのではないでしょうか?そんなわけないですね、ハイハイ。

封魔壁へとやってきたティナたちの前にケフカが現われるシーンで使用され、そのままケフカとのバトルまで通して流れます。ここでは封魔壁が開く瞬間で一度鳴り止み、中から幻獣たちが飛び出してくるところで再度流れました。その直後、飛空艇のそばを幻獣たちが通り過ぎるシーンでも使用されています。

さらに、サマサの村でのケフカのふるまいに怒った幻獣たちが封魔壁を破って飛び出すシーンにも使用され、そのままケフカによって次々と魔石化されてしまうところまで通して流れました。このように「幻獣たちの怒り」を表わすイベントでの使用が多いのですが、何に対して「メタモルフォーゼ」なのかちょっと見えにくいですね。ケフカによって魔石にされてしまう幻獣のことを指しているのでしょうか?

魔大陸崩壊にともなう時間制限つきの脱出イベントでも使用。シャドウを待った場合、6分間まるまるこの曲を聴くことになりますね。そのまま世界が破壊されてゆくイベントシーンまで流れ続けます。

DISC 2

01 Tina
ティナのテーマ
今までも、さまざまなところに何度もモチーフが顔を出してますが、これが元祖(?)「ティナのテーマ」。言わずと知れた「VI」の代表曲です。私は「VI」のメインテーマかと思ってたぐらいで……。フィールド曲だし。パンフルート調の音色が美しくも切ない印象を出してます。マンドリンもちょっと聞こえてる?左にいるひっかきのアコギだけ、ちょっと限界ですね。やっぱ打ち込みでギターをやるのは難しいんです。

なんでティナのテーマがフィールド曲なのか、という疑問はありますが、シナリオによって主人公と言えるキャラが複数存在する「VI」において、やはりティナは特別なキャラクターであるからなのでしょう。「VI」はやはり、ティナの目覚めの物語なのです。

ゲーム中ではかなり初期からフィールドBGとして使用されています。初めて耳にするのは、サウスフィガロへの洞窟を抜けて地上に出た時。それまでは以前のイベントBGを引っ張る形(たとえば、ナルシェを出てフィガロへ向かう際は、フィールドでも「炭坑都市ナルシェ」が流れるなど)で、フィールドBGは流れませんでした。それにしてもイイ曲だなあ……CDで聴き直すたびに惚れ惚れしてしまう。

掲示板に書き込みをしていただいたファイさんによると、上で挙げた初出よりも早くこの曲が聴けるそうです。「"ティナのテーマ"ですが、フィガロ城で"エドガー、マッシュのテーマ"が流れはじめた後にフィールドに出ると聞くことができます」。なるほど〜。普通はなかなかそのタイミングで外には出ませんよね。気付きませんでした。細部を調べるっていうのはこういうことを言うんですね。
02 Coin Song
運命のコイン
イベント曲。「エドガー、マッシュのテーマ(Disc1-7)」のアレンジ違いです。ここでのイベントで初めて、このメロディに対して「あっ、二人のテーマなのか」と気付く人も多いと思われます。もともとはラッパで勇ましく奏でられていたメロディが、アレンジによってここまでその姿を変貌させるんですね。イベントに大変マッチした良いアレンジです。このへんは植松氏がもっとも得意とするものではないでしょうか。

世界崩壊後のフィガロ城で見ることのできる表題のイベントの他にも、フィガロ城内の神官長から聞くことのできる、兄弟の過去イベントでも聴くことができます。
03 Techno de Chocobo
テクノdeチョコボ
アタマの「チョコボ」というボイスが、なんともYMO。現代で「テクノ」といったら決してこうはならないと思うのですが、植松氏の聞いてきた音楽ではやっぱりYMOこそテクノなのでしょう。ちょっと「VII」のゴールドソーサーにおけるチョコボの曲に似てますね。もちろん、チョコボ騎乗中にフィールドで流れます。しかし、本作の世界観においては「なぜテクノ?」という戸惑いも隠せません。チョコボのアレンジとしてはあり得る形態なのですが、「VI」でなくてもいいのでは?という気もするのです。特に世界崩壊後の違和感ときたら。「死界」→この曲へと繋がるコンボは悶絶必至です。

ただ、今となってはたいしたことではないかもしれませんが、スーファミから「チョコボ」というボイスを出させることが単純に凄かったということはあります。それによってプレイヤーを驚かそうという企みは成功していますが、一方でそれはすでに「マンボdeチョコボ」でやっちゃったことでもありますんで。ん〜、なんとも微妙な位置にある曲ですね。
04 Forever Rachel
永遠に、レイチェル
イントロではわからないかもしれませんが、主メロが入ってからはたぶん「ロックのテーマ」のアレンジになってます。FFファンにはおなじみの「植松節」、悲しみ曲。コーリンゲンでレイチェルの家に立ち寄った際に挿入される、ロックの回想イベントで流れます。

世界崩壊後、生きる望みを失ったセリスが、渡り鳥が身に付けているバンダナをもしやロックのものでは……と気付く場面でも流れました。きっと、ロックは生きている……彼女が生きていくことを、そして旅立ちを決意する瞬間です。レイチェルとは何の関係もないですが……。ロックのテーマのアレンジということでの流用でしょう。

しかし、ただでさえロックのテーマ自体の印象が薄いのに、この流用は効果的なのか?とも思います。ただ、なんとなくイイ感じの悲しい曲が流れてる……という程度の受け取り方にしかならないのではないでしょうか。ロックのテーマがもっと立っていれば、まったく別の印象になったのでしょうが。

魔石フェニックスの力で、一時的に命を蘇らせたレイチェルとロックの会話シーンにも当然流れます。というか、このための曲ですもんね。
05 Slam Shuffle
スラム・シャッフル
なんだこのホワイトノイズは?と思ったら雨ですね。シャッフルのハネた感じか雰囲気出てます。とってもアナログシンセチックなスネア音色もステキ。絶えず雨の降りしきる、ゾゾのBGです。ウソつきだらけの、ロクデナシだらけの町。まさにスラム!場面とのマッチングはバッチリではないでしょうか。時計の針の謎解き、けっこう難解でしたね……あれ、みなさん難しくなかったですか?もしかして僕、ヘタレっすか?

屋内に入っても雨の音がしっぱなしなのは、まあこれは無理もないという感じで、いちいちツッこむことが間違いでしょう。ボリューム情報でSEチャンネルだけレベルをいじるとか……ムリか?
06 Spinach Rag
スピナッチ・ラグ
ラグっていうのは、つまりこういう曲のことです。ジャンルというか、演奏形態のこと。ゲーム中で耳にするのは、獣ヶ原でガウを仲間にした際に発生する、カッパによる「ガウの育て方」チュートリアルで使用されるのが最初になります。とはいってもこれはあくまで流用。本命は、オペラ座のBGとしてですね。また、ジドールの町のオークションでも使われています。破滅に向かう世界での、数少ない娯楽のテーマ。
07 Overture
序曲
ここからトラック10まではオペライベントの劇中曲。劇伴とでも言いましょうか。フルオーケストラを意識した楽曲は迫力じゅうぶん。スーファミでオペラをやったFFスタッフと、それに見事に応えた植松氏に拍手!1分44秒からの男声は、とにかく素晴らしいのひとこと。違和感うんぬんを言ってはいけません。スーファミから人の歌声が出ることが凄いんです!PSの「パラサイト・イヴ」でも、内蔵音源のオペラはこんなもんですから。

曲アタマから1分43秒までは、ロックたちが着席してから、舞台上でのナレーションが物語の背景を語る部分。そして1分44秒からが、ドラクゥの歌うボーカル部分になっています。アリアというか、セリスのテーマモチーフを含んでいますね。歌詞は以下。
「オー マリア  オー マリア
わたしの こえが とどいているか
おまえの もとへ」

歌詞はすべて、ゲームディレクター・北瀬佳範氏が担当。

2分26秒からは、ロックがセリスのいる楽屋に行くくだり。舞台ソデに入ったり、劇場から出るとちゃんと音量が「遠くなる」ところが細かいですね。3分45秒からのブロックは別のパートに思えますが、単なる続きです。オペラということで、あえて展開を多くしてあるんですね。ゲーム中ではこのブロックからがループになっており、次のアリアまでの間を繋ぎます。

また、セリスがこの後のオペラに失敗すると、オペラ座の入口からのリトライとなりますが、再び楽屋に向かうところでは、2分26秒のパートから演奏が始まります。
08 Aria Di Mezzo Carattere
アリア
エアリス」とか言っちゃダメ!……えー、コホン。もちろんセリスのテーマのアレンジとなっております。後にオケアレンジされた同曲は絶対おすすめですヨ。曲自体の良さもさることながら、オケと本物コーラスでコレやられちゃうと泣けます。もちろん、スーファミ音源によるオリジナルも頑張ってます。当時、スーファミから「こんな厚い音が出ちゃうんだ!」って思いましたから。それにしてもセリス、ちょっと前まで帝国の将軍とかやってたクセに、なんでいきなりこんなに歌えちゃうんですか?

歌詞は以下。
いとしの あなたは とおいところへ?
いろあせぬ とわのあい ちかったばかりに
かなしい ときにも つらいときにも
そらにふる あのほしを あなたとおもい
のぞまぬ ちぎりを かわすのですか?
どうすれば? ねえあなた? ことばをまつ

で、1分50秒からの間奏の間にドラクゥと踊り、バルコニーから花束を投げます。そして2分35秒からが2番。

ありがとう わたしの あいするひとよ
いちどでも このおもい ゆれたわたしに
しずかに やさしく こたえてくれて
いつまでも いつまでも あなたをまつ

ちなみに手順を失敗した時は、一瞬音楽が早回しになってカットアウト、「あれ?」みたいなSEのあとにセリスが「しっぱいしっぱい」と言い、観客のものと思われる「ブーブー」というブーイングのSEが鳴ります。
09 The Wedding Waltz 〜Duel
婚礼のワルツ〜決闘
アリアの後のダンスシーンに流れるワルツです。ここではロックが自由に操作できるので、ワルツ自体はループになっています。ダンチョーに話しかけるという条件で音楽が切り替わり、1分16秒からのパートが流れ始めます。曲調もガラッと変わります(「FFIX」冒頭のイベントを連想させますね)。舞台上では激しい戦闘シーンが始まり、そこにドラクゥ登場。再びオペラとなります。ここでも男声・女声ともに、内蔵音源によるコーラスを聴くことができます。歌詞は以下。

ドラクゥ「マリア」
マリア「ドラクゥ このひを しんじてた」
ラルス「マリアは このわたしの きさきになる べきひとだ」
ドラクゥ「いのち つきはてようとも はなしはしない」
ラルス「けっとうだ〜」

ところでコーラスの定位ですが、舞台上における各キャラクターの立ち位置に合わせてあります。ドラクゥがセンター、マリア(セリス)が左という具合。ステレオ表現が可能なスーファミならではのこだわりですね。

2分33秒からは再びループ部分。ロックがオルトロスを止めるために舞台の天井裏に向かうシーンで、戦闘中にも通して流れるもの。トラックの最後(3分57秒)についてるSEは、ロックとオルトロスが舞台上に落下する音です。
10 Grand Finale?
大団円
頭についている「ざわざわ……」は、突然落ちてきたロックとオルトロスに対する観客のどよめきですね(ゲーム中ではもっと長いです)。すわ、舞台はぶちこわしか?というところで、機転を利かせたロックにより劇は続行。ダンチョーの「ミュージックスタート!」に応えて、ティンパニーがドンデンドンデンと鳴り始めます。それがこの曲、テンポの早いにぎやかし音楽です。典型的なオペラのドタバタ劇のイメージ(こういう曲が流れるオペラはめったにないんですが)。そうしてなだれ込むオルトロスとの戦闘は、この曲をバックに行ないます。

植松氏はこれらオペラシーンの楽曲制作にあたり、まずデモを作るべく考え付いたものからどんどん録音。次々とアイディアが浮かび、最初に坂口氏に聞かせたデモは45分の超大作!さすがに「だめだこんなの、ここは15分あればいい」と言われてしまったようですが、製品版のこの曲は溢れ出たアイディアの中でも特においしい部分を集めたものだと言えそうなエピソードですよね。
11 Setzer
セッツァーのテーマ
ごめんなさい……初めてイントロ聴いたとき「?!グラ○ィウス?」とか思ってしまいました(最終面の曲ね)。それにしてもコレも、セッツァーのテーマでしたか。飛空艇のテーマと思っている人、多数に1000点。なぜなら、飛空艇内で流れるからです。ブラックジャック、ファルコンともに共通で使用されています。

曲自体は、ジドールにあるアウザーの屋敷で手紙を拾い、「さすらいのギャンブラー」の紹介が挿入されるところで初めて流れます。このさすらいのギャンブラーこそ、このテーマ曲の主・セッツァーなのです。その後、オペラ上演中にセッツァーが現われる場面でも使用。しばらくの後、世界崩壊後にコーリンゲンでセッツァーがパーティに復帰する際にも流れます。
12 Johnny C Bad
ジョニー・C・バッド
当時FFをやっていた人の中に何人、「ジョニー・ビー・グッド」がわかる人がいたのだろうか。原曲にはまったく似せてないですね。スタイルだけ拝借した感じ。このタイトル、安直でめっちゃ好きや〜。アルブルグの町のパブで流れてます。また、竜の首コロシアムでもBGとして耳にすることができます。それにしても、ホントにFFっていろんな曲があるよな〜。

ガウが父親と対面するイベントでは、対面前にマッシュたちがガウの身だしなみを整えさせようとします。ジドールの町でテーブルマナーを教え込み、服を見繕う彼ら……厳しい世界で息抜きをしているかのようにも見えますね。ガウ自身はちょっと迷惑そうですが……。そんな、ちょっと楽しげなイベントでこの曲が流れていました。
13 The Empire "Ghastra"
ガストラ帝国
ズーン。鐘の音が良いです。なんか各キャラのテーマより、「帝国のテーマ」の方が非常に立ってますよね。これは大成功だと思います。やはり悪役の方が、プレイヤーに残す印象も大きくなってしまうものです。あとは、いかにプレイヤーキャラのテーマ曲を立たせるか、ということがFF音楽における最大の課題かも?

この曲はサントラでは便宜上ここに入ってますが、ゲーム中ではもっと早く使われていました。ナルシェの炭坑で気を失ったティナの回想シーンがそれです。言ってみればまだオープニング直後で、帝国とティナとの関係や、帝国とは?といった背景が語られていない頃から「帝国のテーマ」は奏でられていたことになります。「ティナのテーマ」といい、今作はそんな「音楽による伏線」が多用されているのです。後に、ケフカによって火を放たれるフィガロ城、などの帝国の陰謀がうごめくイベントにて多用されていきます。

この曲が最も立っていたのは、セッツァーの協力を得て飛空艇でベクタに向かうシーンですね。徐々に接近してくる要塞の姿、夥しいサーチライト、帝国の重圧感がこの曲によって何倍にも増幅されている名シーンでした。当然、帝国首都ベクタ内のBGとしても使用されています。また、帝国が幻獣界に攻め入る回想シーンでも、絶大なインパクトを残してくれてます。封魔壁監視所でも、BGとして使用されていましたね。

さらに、サマサの村で行なわれるレオ将軍とケフカの戦闘中に、ガストラ皇帝が現われるシーン(もっともこれはケフカの見せた幻影ですが)でも印象的な使われ方をしています。この時から、敵は帝国ではなくケフカそのものであると明確に位置付けられていき、同時にこの曲は出番を終えます。
14 Devil's Lab.
魔導研究所
当時にしてこのインダストリアルな響き……。機械音のSEをまんまリズムに使うという、当時のRPG音楽としては画期的な冒険。これができるからFFってのは凄いよね。途中、ちょっとだけ「帝国のモチーフ」入ってます。まさしく魔導研究所、および魔導工場内で使用されているBGです。
15 Blackjack
飛空艇ブラックジャック
定番の飛空艇BG。ボンカレーはどうつくってもうまいのだ、アッチョンブリケ。は一切関係ないです。ベクタを脱出(クレーン撃破後)に初めて耳にすることになるでしょう。「ロックのテーマ」と同じく、「VI」では数少ない爽快系BGMです。流れるようなこの曲に呼応しているのか、本作の飛空艇はシリーズでも1、2を争うスピードを誇ります。
16 ??
ん?2
FFシリーズによくある、パーカッションがふんだんに使われたコミカル(奇妙)音楽なんですが、いまだに曲名の「2」の意味がわからん。そういえば「V」に「ん?」という曲があったが、そういうことなのか?

サントラではここに入ってますが、既にレテ川でのオルトロス戦後に流れてます。「やったのか?」「いや、てごたえがなかった……」この曲が流れることで、オルトロスがどういう存在なのかを匂わせています。ていうか、オルトロスって何だったの?単なるオジャマキャラ?彼は何がしたかったのでしょう。最終的には竜の首コロシアムの受付係になってるし。

レテ川で放り出されたマッシュが、ガウのおじさんの住む一軒家に訪れた際にも聞くことができます。俺は修理屋じゃないっつーの!……また、コーリンゲンの村の、変わり者の老人宅でも使われています。地下室に横たわっているのは……幽霊?さらに、コーリンゲンの北にある「竜の首の家(コロシアムになる前)」でもこの曲が使われています。

アルブルグを出発した船の上で、ロックが「ゲロゲロ〜」するシーンでも流れます。それまでのいい雰囲気がブチ壊し!一方で世界崩壊後では、ドマ城でひとり目覚めないままのカイエンの夢の中に、奇妙な3人組「夢の3兄弟」が入り込むイベントで耳にすることができます。
17 Mog
モグのテーマ
今ではおなじみの、モーグリのテーマ曲。「V」で初登場し、後に「チョコボの不思議なダンジョン」「チョコボレーシング」など複数のゲームに、アレンジされたうえで使われています。後の「FF」シリーズにももちろん登場。本作では基本的な楽器構成に加え、「VI」のサウンド面での特徴であるギターをふんだんに使用したアレンジとなっています。

ナルシェの洞窟内にあるモーグリのすみかで聴けるほか、モグが仲間になるイベントで聴くことができます。「金のかみかざり」ほしさに狼を助けてしまうと、モグが仲間になることは二度とないのでご注意を……。世界崩壊後、はぐれていたモグを再び仲間にするシーンでも流れます。
18 Stragus
ストラゴスのテーマ
あ、村の曲じゃなかったのね。という感じです。サマサの村でBGとして使われてるもんで、そういう印象なのかも。ミョーに怪しげなところが、ストラゴスの間の抜けたキャラに合ってるんだかないんだか。むしろ、魔法を使えることをひたすら隠しているサマサの村の人々にハマっているため、村のテーマと思われてもしかたないかも。
19 Relm
リルムのテーマ
ちょっとケルトというか、北欧の臭いのする楽曲。そう感じさせるのは、メインメロで顔を出すバグパイプ系の音色でしょう。植松氏の好みが出ていると言えますね。とてもFFチックです。また、後半のフレーズから「EYES ON ME」の香りを感じます。もちろんサマサの村におけるリルム初登場時が初出(リルムがスネてドアを閉める時のカットアウトは上手かったですね)。

幻獣の聖地でのオルトロスとの戦闘中に、リルムが現われるシーンでも使われていました。ここでは、コミカルなイベントに対して妙にあたたかいこの曲が流れるわけですから、けっこうな違和感があります。無理矢理テーマを使ってしまい、演出としては失敗しているパターンですな。リルムのテーマとしての印象は薄いですね。こういう曲調では、なかなか使えるイベントに恵まれないのも無理はないです。というよりも、めちゃくちゃ言葉の汚いリルムのテーマとしては、そもそも曲が美しすぎるのでしょう。

後に狂信集団の塔で、リルムがストラゴスに正気を取り戻させる場面でも使用されています。「くそじじー!!!しゃきっとせんかあ!!!」ってね。再会を喜ぶ二人にはハマってますが、リルム個人にはまったくと言っていいほどハマってません(笑)。植松氏はリルムのキャラクターを把握する前に曲を作ってしまったのでは?
20 Another World Of Beasts
幻獣界
拍子のわからない曲だー。7/8かな?サントラ的にはここに収録されていますが、ゲーム中での使用はかなり早い時期になります。最初にナルシェにやって来たティナが、炭坑の奥で「氷漬けの幻獣」と対峙するシーンです。覚えてた?かなり早い伏線が張られていたんですね。後に、再度「氷漬けの幻獣」と対峙した時に、ティナと反応し合うイベントでも使われます。

また、ゾゾでパーティの前にラムウが現われ、幻獣や魔大戦のことについて語り出すシーンでも聴くことができます。ここで初めて、帝国がいかにして魔導の力を得るに至ったかが語られるとても重要なシーンです。曲名の「幻獣界」も、このイベントで初めてその名を知らされることになります。さらに、ベクタの魔導研究所内部にある、幻獣たちがビーカーに入れられているエリアでも聴くことができ、魔導を吸い取られ命尽きていく彼らの悲哀をも表わしているのは、お見事のひとこと。

幻獣絡みのイベントでは他に、ティナが自分の出生を思い出すイベント中に挿入される幻獣界での「マディン」の物語、そして幻獣の聖地で幻獣たちと会話するシーンでも当然のごとく使われています。

ダンジョンBGとしての流用もあり、幻獣とのかかわりの深い「封魔壁への洞窟」、「フェニックスの洞窟」などで使われています。

DISC 3

01 New Continent
魔大陸
もう説明不要と言うか、説明不能と言おうか。何度聴いてもイントロの「ビューウン」でビックリしてしまいます。以後もSEてんこもり。当然、曲名の通り魔大陸でBGとなる楽曲です。グラフィックとあいまって雰囲気じゅうぶん。FF音楽ではおなじみのアルペジオも、曲の後ろ側で駆け回っています。

奇をてらった音楽ということでは成功してますが、楽曲単体で聴きたいか?と言われると微妙。ただしそれはゲーム音楽としてのこの曲の良し悪しとはまったく関係なく、あくまでゲーム音楽はゲームのための音楽である、という主張によれば、正しいあり方ではないでしょうか。「ゲームにとって良い曲=楽曲単体で良い曲」ではないのです。

なお、珍しく他への流用がない曲です。
02 Catastrophe
大破壊
世界が崩壊!このへんはプレイしている最中、「次どうなるんだろう?!」でしたね。とても厚みのある曲になってます。オープニングタイトル(テキストで世界背景が語られる部分)で聴くことのできる、帝国のモチーフのアレンジです。

初出は、皇帝とケフカが三闘神の力を解いたために魔大陸が浮上する場面。続いて、プレイヤーが三闘神像の前でガストラ皇帝・ケフカと対峙する場面から、その後ケフカと皇帝が対立し、皇帝が死亡、三闘神の力が暴走するまで長く引っ張られます。ちなみに、曲名こそ大破壊となっていますが、実際に破壊シーンに使われるのは「メタモルフォーゼ(Disc1-25)」です。この曲は大破壊への序曲、といったところでしょうか。
03 The Fierce Battle
死闘
緊迫の戦闘音楽。「VI」以降のFFシリーズに登場する戦闘曲のモデルになっているとでも言えましょうか。中盤のメロディ音色が独特な味を醸し出しています。ベンドもあからさまでグー。魔大陸でのアルテマウェポン戦で初めて使われます。これまでのボスをも凌駕する別次元のモンスターには、「決戦」では足りないということでしょうか。その戦いはまさに「死闘」と呼ぶにふさわしいものになるでしょう。

後に、がれきの塔におけるきしん、まじん、めがみとのそれぞれの戦いを彩ります。言ってみれば三闘神とのバトルテーマ。アルテマウェポンも、三闘神を守護するように配置されていましたからね。

こうして見ると、せっかくのボス戦音楽なのに出番が少ないと思われる方もいるでしょうが、こういう曲は乱用してしまうと意味がないのです。ここぞというボスにのみ使うからこそ効果があるんですね。そういう意味ではこの曲は合計4回しか流れませんので、じゅうぶん配慮された使われ方をしていると言えるでしょう。
04 Rest in Peace
レスト・イン・ピース
全滅=ゲームオーバー時の曲です。この位置に配置されているのがなんか意味深……。それほど、この頃の敵は強いということなんですね。幸い、私はプレイ中にこれを聞くことがありませんでしたが……(サントラで初めて聴いた)。

と思っていたら、他に流れる場所があるんだそうです。掲示板に肌村さんが寄せて下さったところによると、「世界崩壊後のダリルの墓で、墓石に文字を刻むシーンです。ダリルの墓では、ダンジョン内を回って墓石に刻む文字を集め、何も書かれていない墓石に文字を刻むイベントがあります。初期段階では刻む文字がわからないのですが、別の墓石を調べることで刻む文字が得られます。そして、文字を集め、正しい文字を刻むと、「レスト・イン・ピース」が流れ出します。そして、獲得経験値を倍にするアクセサリー「グロウエッグ」のありかが判明します。ダリルの墓は新たな飛空艇であるファルコンを入手するために必ず訪れるダンジョンでありますが、グロウエッグは隠し部屋にあるということで、見落としがちです。しかし、このイベントを発生させることによって隠し部屋の存在に気づき、グロウエッグを入手しやすくなります。この手のアイテムはほかのRPGにもいくつかありますので、再点検する価値はあると思います」とのこと。筆者はこのイベントをやったのか?やってないのか?記憶が曖昧……。
05 Dark World
死界
風のSEから始まります。この風は「クロノ・トリガー」の未来世界での風に似てますね…というより、スーファミだとこうなるんでしょう。元のサンプルが同じなのかな?プレイしている時の孤独感は今でも忘れません。この風は心理的効果がありすぎです。重く響くオルガンに、トドメは鐘の音色……ゲームオーバーよりも絶望的な気分にさせられてブルーになること間違いなし。セリスがひとり、破壊しつくされた世界をさまよいます。今、敵と出会ったらどうしよう……と、ビクビクしながら町を目指したものです。

なお、世界崩壊後はナルシェから人がいなくなりますが、その閑散とした町にこの曲が流れます。さらに、氷漬けの幻獣・ヴァリガルマンダとの戦いはこの曲のまま行なわれます。
06 The Day After
あの日から…
アコギ+マンドリンが切なすぎる、世界崩壊後の町で流れるBGです。基本的には「暗い町の曲」なのですが、フィールドで「死界」が流れているため、この曲を聴くとホッとしてしまいます(笑)。「やっと町に辿り着いたぞー」ってね。それぐらい、崩壊後のフィールドは絶望感に溢れているのです(しつこいですか?)。

最初に聴くことになるのは、孤島でシドが生きていた場合の、セリス旅立ちのシーン。イカダに乗って漕ぎ出すセリスは、まずはアルブルグ付近に流れ着くのです。アルブルグの町でもこの曲が再度流れます。ちなみに、シドが死んでいた場合は、セリスの出発は「永遠に、レイチェル」が流れることになります。

ツェン、コーリンゲン、マランダで流れるほか、モブリズの村はちょっと特殊で、地上は風のSEだけなのですが、ティナたちのいる地下だけでこの曲が流れています。

街の曲についてはファイさんから補足情報をいただいてます。
07 Searching Friends
仲間を求めて
「FFVI」の終盤のメインテーマといったらコレ。わずかな希望を見出すシーンにピッタリ。楽曲自体も厚く美しく、SE的なループも加えられるなど、オカズの多い曲になっています。ベンドかかりまくりのベースも凝ってます!メインメロディにフルートを持ってきた、音色セレクトのセンスも秀逸。だからこそこの「絶望の中に希望を見出す」的な、前向きな決意を感じさせることができるんではないでしょうか。コレ、メロがただのブラスだったりしたら、まったく印象に残らない可能性もあるわけです。

ファルコン号を入手し、かつての仲間を探しに再び空に飛び発つ……そんな、ダリルの墓での終盤のイベントで初めて耳にすることとなにります。ダリルの魂とともに……夢はつくりだせる!以後、飛空艇・徒歩ともにフィールドのBGとして流れます。
08 Gogo
ゴゴのテーマ
ものまねし、ゴゴのテーマ。仲間にできるのが遅く、曲もあまり印象に残っていませんね……。小三角島内部のBGとして流れていますが、ダンジョンBGにしては妙に緊張感がないな、他への流用もないし、もしやゴゴのテーマでは……と思ってはいたのですが。わざわざテーマを用意するほどのもんでしょうか?っていうか、この曲を語れ!っつーこと自体が無理難題というものです。無理に語れば……うーん、何回も落っことされてムカついたってことかな。あっ、コレ曲のことじゃないね。
09 Epitaph
墓碑名
曲名を変換したら「墓碑銘」となったのですが、サントラの表記はこのように「墓碑名」です。どちらが正しいですか?あ、どうでもいいですか?いや、あんまり学がないので、どっちなのかな〜って思ったもんですから。

イベント曲。しかも、使われるシーンがかなり限定された、専用曲です。「エドガー、マッシュ」と同じく、これ聴いてはじめて「あ!このメロ、セッツァーのテーマだったのか」と……。まるで音楽でもひとつの謎解きをしているような気分になってきます。ダリルの墓で、新たな飛空艇ファルコン号のもとへと向かうイベントシーンで使用されているものです(おそらくここでしか流れません)。この飛空艇の主・ダリルはセッツァーの旧友ですから、セッツァーのテーマアレンジになっているんですね。背景にはセッツァーとダリルのかつての記憶が映し出され、凝ったイベントになっています。

ただしこれも、ユーザーがどの程度セッツァーのテーマを覚えているかがカギになっており、むしろ大半のユーザーはセッツァーのアレンジだということにも気付いているか、怪しいものです。アレンジによる音楽効果というものは、もとネタになる楽曲(メロディ)がどれだけ定着しているかがすべてだなあ、と思い知らされます。印象に残らないアレンジというものは、単なるメロディの使い回しでしかありません。やっぱり、これだけの数のキャラクターすべてにテーマがあって、それだけでもかなりの曲数なのに、すべてのアレンジまで心に刻めるほど、ユーザーは器用じゃないと思うのです。「VI」のキャラテーマが失敗しているのは、そこが最大の原因ではないでしょうか。
10 The Magic House
からくり屋敷
FFの音楽を注意深く、サントラを買ってまで聴いてる人には、この曲ひっかかったんじゃないでしょうか?実は「FFII」における未使用曲なんです(「FFI・II」の48曲目『ダンジョン』)。植松氏のよっぽどのお気に入りだったのか、それとも開発が切羽詰っていたのか……。これについては公式見解が発表されておらず、FF音楽七不思議に数えられています。ウソです、数えられていません。

また、世界崩壊後のジドールの町でも使われています。アウザーの屋敷・地下でもそのまま流れ続けます。額縁の中の絵と戦うという、この奇妙な「からくり屋敷」にはピッタリでした。
11 Umaro
ウーマロのテーマ
これもあまりに終盤すぎましたね。テーマとしては印象ゼロです……。ウーマロの洞窟に入ると流れてきますが、知らない人はスルーしてしまうことから、この曲を聴かずにゲームを終えてしまったプレイヤーもいることでしょう。FFにこういった「隠された仲間」が増えてきたのもこの頃でした。以後シリーズでは「知らないと仲間にできないキャラ・召喚獣」がたびたび登場することに。「知らない人はおいてけぼり」と否定的に取るか、「知ってる人だけのお楽しみ」と好意的に解釈するか……。ま、1UPキノコみたいなもんだと思えばいいのでは?ちがう?

これだけの曲数があったら、それぞれはそれなりの出来であっても、やっぱり個々の印象はどうしても薄れるよなぁ……。なんか「むくわれない作曲作業」、とにかく数をこなすという感じがして不憫。いくらFFが「映画的」と言われていても、FFより曲数の多い映画なんてないでしょう。植松氏は作曲にあたり、シナリオを見ながら曲のいる場所をそれぞれチェックしていくそうですが、それとは別に「ここにこんな曲を」という、ディレクターからの発注も当然あるわけです。ふたつを合わせた「必要曲数」を見た時、植松氏は気が遠くなったのではないでしょうか?PS時代なら「いや、そこに曲はいらない」という選択肢もあるのでしょうが、ファミコンやスーファミではなかなかそうもいかないでしょうし。
12 Fanastics
狂信集団
とっても狂信な曲(?)です。世の中の人が「ヘンな宗教」に持ってるイメージっておおむねこういう感じでしょ?神をたたえる合唱が入ってたりして。もし私がこんなシチュエーションの曲を作るとしても、間違いなくこうなりますね。いろいろな宗教色がゴチャマゼになっている点も、「狂信集団」という感じ。言うまでもなく「狂信集団の塔」の内部BGです。また、がれきの塔最上階にて、いよいよケフカと対峙する場面でも使われています。
13 Last Dungeon
邪神の塔
「がれきの塔」内部で流れるBGです。これはもうとにかく、イントロがすごい!いったい何が始まるのかっていう焦燥感と恐怖感。ところが、メロが始まると普通のダンジョンBGになってしまう……。イントロの雰囲気のままの曲にならなかったのが残念でなりません。あとはほんとにベタなラスダン音楽という感じで、驚かせる要素はナシ。せっかく難易度の高いダンジョンなんですから、もっと曲がブッ飛んでてもよかったのではないかと思う反面、ラスボスとの戦闘でのインパクトをより強いものにするためには、その前はちょっと引いておこう、という判断があったのかもしれませんね。

ここはゲーム的に苦労した記憶の方が大きいですね。言ってみれば、曲を聴いてる余裕はなかったです、当時。PSに移植されたものをプレイして、「こんな曲だったっけ?」と思ったぐらい。
14 Dancing Mad
妖星乱舞
冒頭は駆けずり回るシンセベースに誘われて、「ガストラ帝国」のモチーフにパイプオルガンがかぶさり、女声アカペラへ。「かお・ながいうで・みじかいうで」とのバトル部分です。パイプオルガンはオープニングからフィーチャーされていた音色ですから、プレイヤーとしてはもうこの音が鳴るだけで、ただならぬ雰囲気を感じ取ってしまうはず。1分23秒からテンポアップし、刻むベースに男声コーラスが乗ります。ちょっと「VII」のラスボスを思い起こしますね。

続いて(4分30秒〜)、帝国を思わせるリズム隊にコーラスの入る曲調へと変化し、「きかい・とら・まほう・なぐる」とのバトルへ移行します。さらに(8分12秒〜)から別の展開になると、「まりあ・ねむり」とのバトル。神々しいパイプオルガンソロで、戦闘曲としてはなかなか掟やぶりです。さりげなく、ケフカのモチーフも組み込まれています。

クライマックス(11分33秒〜)は「予兆(Disc1-1)」のイントロで始まり、天からケフカが舞い降りて来ます。アップテンポなケフカのテーマアレンジになると、もちろんここはケフカとの戦闘を彩るパート。プログレ好きな植松氏の趣味炸裂!様々な展開で、テンポも多彩に変化しながら、いろいろなフレーズが顔を出します。ドラムキットは「決戦」と同じですね。ゲーム序盤からSEとして聴いてきたケフカの「笑い声」も、しばしば挿入されます。

ゲーム中でのそれぞれのパートは、該当する部位を倒した際に次のパートに乗り変わるようになっています。これがまた、いつ切り替えたのか判別できないほど自然にチェンジするんですよね。ボスの形態に合わせて楽曲が変化するという演出は、ラスボス音楽としてはFFで初めてのこと。サントラ版では17分30秒の大作になっております。植松氏、ご苦労様でした!
15 Ending Theme
蘇る緑
エンディングです。ゲームでは、「みんな、がれきの塔を脱出するぞ!」というシーンの後の、本のページがパラパラとめくれるセピア色の画面からこの曲が流れ始めます。あとは「THE END」までノンストップ。コントローラー手放しで20分以上ものお芝居を一方的に見せられる、尺に収拾のつかなくなったエンディングも、もはやシリーズの伝統か?

画面で展開されるイベントに合わせて、各キャラクターのテーマがメドレーになってます。まずはカイエンからスタートして、セッツァーへと繋がり、耳馴染みの強いエドガー&マッシュのテーマへ。ワルツ調のモグのテーマから、ウーマロ、ゴゴといった「いるのかいないのかわかんない組」。さらにガウのテーマが聞こえ、続くおなじみのセリスのテーマにはロックのテーマが上手い具合にミックスされています。最初からコレ、計算したうえでそれぞれを作曲してたんでしょうか?その後はまたもおなじみのティナ(わかりにくいですが、8分08秒のモチーフに顕著)。あとはリルム、シャドウ、ストラゴス。これで全員ですね。

今回の「VI」、プレイによってはいるキャラといないキャラがいると思うんですが、それらを欠いていた場合、そのシーンはカットされるんでしょうか?いないはずのキャラがエンディングだけに出てくるはずもないので、たぶん割愛されるんでしょう。そういえばモグ、ウーマロ、ゴゴのあたりには切りやすいようなポーズが設けられていますよね。

繰り返しになりますが、本編でのキャラテーマの印象付けが成功していれば、ここはもっと浸れるエンディングになってたと思うんですよねー。本当、惜しいです。単に「あ、聴いたことある曲」の連続に留まっているのがもったいない点ですね。

各キャラクターテーマのメドレーが終わると、もはや飛空艇の曲としてアタマに染み付いているセッツァーのテーマをベースとし、広大な世界をファルコン号が駆け抜けていきます。16分30秒からは、もはや「VI」の主題と言っても過言ではないティナのモチーフで締め括りに入ります。トータルで21分30秒にも及ぶ一大巨編ですが、個人的にはやっぱり、18分09秒からの「ファイナルファンタジー」の所でジーンと来ました。すっかりエンディング専用曲となってしまいましたが、シリーズのファンとしては脊髄反射のように感動してしまいます。
16 The Prelude
プレリュード
ここでプレリュードです。基本的には過去のものと変わりませんが、アレンジとしてはより「FFVII」のものに近くなっているようです。パンニングされたハープ音色の美しさは、ゲームの余韻に浸るにはうってつけですね。「プレリュード=前奏曲」という意味合いはもう完全に忘れられていますけど。サントラの収録も一番最後ですしね。

おっと、「前奏曲」という意味も残っているんですよ。ゲーム開始時のセーブデータ選択画面で使用されているほか、ナルシェの初心者の館で耳にすることができます。
サントラ未収録曲
・宿屋などで休んだ時のME
・ダリオの墓で墓石に「ともよやすらかに」と刻んだ時のME

PS版使用曲
・オープニングムービー=新規録音
・エンディングムービー=新規録音
・プロモーションムービー=アレンジ盤「グランドフィナーレ」の楽曲を再編集
・おまけのメニュー画面=ゲーム中の曲がランダムで流れる
補足:街で流れる楽曲の変化
ゲーム中で流れる「街の曲」は、世界の状況によって頻繁に変化しています。筆者が追いきれなかった部分をファイさんが補足情報として掲示板に寄せて下さったので、ここに掲載しておきます。情報提供に感謝!

アルブルグツェンマランダの3つの町は変化が特に激しく、
・初期状態では「戒厳令」
・会食イベントの後に開放されると「街角の子供達」
・魔大陸が浮上すると再び「戒厳令」
・崩壊後は「あの日から…」となります。

オペラ関連の楽曲も含めて、個人的にはアレンジバージョンもぜひ聴いてほしいと思います。

関連CD
オーケストラによるゲーム音楽コンサート4 〜ライヴ・ベスト・コレクション〜
 すぎやまこういち氏監修のもとで行われていた、オーケストラによるゲーム音楽コンサートのCD化第4弾。「スーパーマリオ」や「ドラクエII」と並び、トリである11トラック目に本作「FFVI」の楽曲が収録されている。オペラシーンで我々ユーザーに大きなインパクトを与えた劇中曲を、ゲームに基づいて忠実にオーケストラで再現。しかもゲームとまったく同じ日本語歌詞である。日本語の「アリア」が収められてるのは、世界中どこを探してもこのCDのみである。「FFVI」ファン、FF音楽ファンならぜひコレクションに加えたいお宝アイテムであることは言うまでもないだろう。

SONY RECORDS
SRCL 2736 廃盤
1994年
JASRAC表記:
あり

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