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交響組曲「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」(ファミコン版)
ジャケット画像  家庭用ゲームにおける国産RPGの代名詞「ドラゴンクエスト」、そのシリーズ3作目がこの「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」である。イベントやフィーチャーの増加に伴ってその音楽もいよいよ多彩になってきている。正統派RPG音楽はもちろん、ピラミッドやジパングといった民族性あふれる楽曲も本作の特徴。壮大な「ロト伝説」を想い出しながら聴き込みたいアルバムである。

アポロン音産
BY30-5181(CD)廃盤
AY30-1〜2(LP)廃盤、KLA1567(カセットテープ)廃盤
【なぜかLPレコードだけ2枚組だった】
1988年
JASRAC表記:
あり

amazonなら旧盤も購入可能です。
ゲーム紹介

 1986年に発売された「ドラゴンクエスト」は、ファミコンユーザーに対して「ロールプレイングゲーム」というものをわかりやすく翻訳し、その魅力を広く認知させることに成功、150万本の売り上げをもって堂々のヒット。翌1987年には続編「ドラゴンクエストII」が発売される。この2作品は、昨今のRPGにありがちな「タイトルやアイテムの名前が共通なだけの、形ばかりのシリーズ」ではなく、ストーリーも密接に絡んだまっとうな続編であった。前作の主人公が残した子孫、そして前作で登場した町や城が登場、前作の世界は「II」で語られる世界のほんの一部分でしかなかった……ゲームの中で徐々にそのことが明らかになり始めると、ユーザーは唸ったものだった。

 そして1988年2月10日、今では考えられないリリースペースをもって、第三作「ドラゴンクエストIII」が発売。前2作とのストーリーの繋がりは、誰も予想しなかった「I」よりも過去の話、という内容で語られた。つまり、時間の流れとしては「III」→「I」→「II」となる。今でこそ「過去のお話」はありがちな手法となっているが、当時はまったく斬新、しかもゲームでやってのけたことに大きな驚きを覚えたものだ。ゲームの終盤になってからそのことが明らかになることもあり、堀井雄二という稀代のストーリーテラーに「してやられた」という名シナリオである。イベントやマップも凝っており、「I」では地続きだった土地がまだ繋がっていなかったり、洞窟がまだ未完成だったり、「III」の主人公が「I」における勇者の称号「ロト」となるいきさつ、そして残された武具が「ロトの装備」となり後世に残されていくところなど、「I」をプレイしたユーザーであれば背筋がゾクゾクするような仕掛けが盛り込まれている。

 ゲームをやらない世間一般に「ドラクエ」の名が広く知れ渡ったのも、この「III」からだろう。発売日には学校を休んでまでショップの行列に加わる子供たち、そしてやっと手に入れたソフトを強奪されるといった「不名誉なニュース」が大々的に報じられ、決して好ましいとは言えない知名度を得てしまったのだ。ゲームが大人たちから「不健全で暴力的なもの」といった目で見られるようになったのも、この頃が最初ではなかったろうか?

 そのような側面もあるにはあるが、やはり「ドラクエIII」は紛れもない名作であることについて、少なくともこれを読んでいる方々の中に意義を唱える人はいないだろう。「II」から始まって今日まで受け継がれるパーティ制、そして新たに登場した転職という概念。広大なマップと多彩なイベント、そしてモンスター、すべてがファミコンRPG最高レベルのクオリティであり、これを超える作品にはちょっとお目にかかれないかもしれない。堀井雄二のシナリオ、鳥山明のキャラクター、そしてすぎやまこういちの音楽、それぞれのプロも第三作目で確信に満ちた仕事をしている。成熟したと言ってよいだろう。

 そんなプロたちが作り上げた世界を冒険する間、プレイヤーに寄り添ってくれるのは、すぎやまこういち氏による珠玉の音楽。氏によれば、「I」を基準とした時、「III」は過去の話だからよりクラシカルな曲調でまとめてあるらしい(ちなみに「II」は若い世代の話だからポップス調だとか)。優雅な城の曲、楽しげな町の曲、勇敢なフィールド、孤独感を煽るダンジョン、場面場面にぴったりとハマり、かつ邪魔をしない「正統派ゲーム音楽」はもちろんのこと、ピラミッドやジパングを彩る民族色の溢れた独特の楽曲も用意され、あらためて氏の幅の広さというものを実感させてくれるはずだ。

 このCDは、そんな「ドラクエIII」になくてはならない楽曲たちを、すぎやまこういち氏みずからがオーケストラアレンジして収録したアルバムである。演奏は、おなじみのNHK交響楽団によるもの。さらにゲーム音源で構成されたサウンドストーリーも収録されており、かつての冒険の日々を振り返らずには聞くことのできない名盤と言えるだろう。残念ながらこのCD自体は廃盤となっているが、N響による組曲はゲームボーイ版のサントラに再収録されており、一方のサウンドストーリーは「ゲーム音源大全集」に収録されているので、両方を揃えればこのCDで聞くことのできる音源は現在も入手可能だ。

名作はゲームもプレイしておきたいですね。
ファミコンか? Wiiの完全移植版か? それともスーファミ? ゲームボーイも!

01 ロトのテーマ
Roto
おそらく、日本で最も有名なRPG音楽だろうと思われる、ドラゴンクエストシリーズのメインテーマです。「I」では「序曲」、「II」では「ドラゴンクエストマーチ」と呼ばれていたこの曲は、ロト完結編の「III」で初めて「ロトのテーマ」という称号を与えられました。もっともこれは、ファミコン版「III」のオープニングでこの曲が流れないことから、"序曲"という名前はふさわしくないだろうという配慮もあってのことでしょう。また、「III」はメインテーマにドラクエ前期イントロとも言える、ホルンによる「ロト編ファンファーレ」が採用された最後の作品ともなりました。次回作「IV」からは冒頭のファンファーレが大きく変化することになるのです(俗に言う「天空編ファンファーレ」です)。

そんなホルンの勇ましいイントロに続いて、誰もが口ずさむことのできる主題部が始まります(0'12"〜)。そして43秒からの主題のリピートでは、オーケストラ全体が奏でる圧倒的な迫力で我々を魅了してくれます。言ってみれば、このCDはドラクエ音楽としては初めてNHK交響楽団が演奏したもので、ファミコン版「I」「II」の組曲を担当してきた東京弦楽合奏団の演奏と比較すると、まず楽器編成の厚みが明らかに豪華になりました。さらに、かつてはティンパニとシンバルだけだった打楽器に、N響となったことでマーチングスネアが加えられ、より勇ましい行進曲調に仕上げられた点が、東京弦楽合奏団の演奏と比較した場合に最も特徴的なことでしょう。

もちろんロンドンフィルハーモニック管弦楽団がドラクエ音楽を演奏するようになるのはまだまだ後のことですので、安易な比較は慎むべきでしょうが、N響の演奏は全体一発録りではなくマルチトラックレコーディングであり、ミキシングの段階で後付けの残響を付加しているため、やや輪郭がぼやけています。また、ミキシングバランスの問題なのですが、たとえばシンバルが明らかに前に出すぎているなど、オーケストラ録音としてやや不自然な箇所も目立ちます。これは当然、演奏ではなく録音側の技量なのですが。

ここからトラック10までは、すぎやまこういち氏がみずから指揮した、NHK交響楽団の演奏によるオーケストラバージョンが続きます。
02 王宮のロンド
RONDO
弦楽による「城」の音楽です。いかにも王城という感じの、古典的バロックの香りがする秀逸な楽曲です。すぎやまこういち氏の有名な発言に「『I』を基準として、『II』は新たな世代の物語だから音楽もポップス的に、『III』は過去の話だから音楽もよりクラシカルに」というものがあります。その発言の意図は、このお城の音楽を聴いていただければなんとなくでも理解してもらえるのではないでしょうか?

作品に登場する「城」で、ほぼ例外なく使用されている楽曲です(竜の女王の城、ゾーマの城はもちろん除外)。1分6秒からの間奏部分はゲーム音源にはありません。また、ゲーム終盤で冒険をすることになるアレフガルドの地においても、城の曲はこの曲です。「I」の曲が流れないのは残念ですが、容量の都合でしょう。こういった不満はスーパーファミコン版で解消されています。
03 世界をまわる
(街〜ジパング〜
  ピラミッド〜村)
AROUND THE WORLD
タイトルの通り、音楽で世界一周といきましょうか。「III」で旅することになる、あらゆる街や村で流れる楽曲たちをメドレーにした組曲トラックです。まずは、なんとも楽しげな、木管楽器が跳ねるような「街」の曲から。この木管楽器という要素も、N響が演奏するようになって前面に押し出されたもの。きっと「I」「II」の時にもすぎやま氏は木管を使いたかったのでしょう。弦楽中心ではどうしてもバリエーションの面で難が出てくるものです。金管とはまた違う、木管にしか出せない柔らかな音色は「街」や「村」にはうってつけ。悲願達成ぐらいの勢いで、「III」の組曲では木管楽器がフィーチャーされているのも頷けるというものです。

1分24秒からは「ジパング」の専用BGM。いわゆる「和風」ではなく、もっともっと昔の日本、イメージは邪馬台国といった感じ。右側のチャンネルで鳴っているひっかくような音は、弦楽器の弦を弓で叩くようにして発音しているものです。3分6秒からは「ピラミッド」の曲です。もっともピラミッドは街ではなくダンジョンですが……。

4分18秒からは、「III」で初めて登場した「村」で流れる曲です。「街」と比べてよりのどかで、人々がマイペースに暮らしている伸びやかな雰囲気になっております。
04 冒険の旅
ADVENTURE
アレフガルドを除き、ゲーム全編を通したフィールドで流れる楽曲。「III」の中でも最も人気が高い部類に入るでしょう。特にオーケストラバージョンの、ゲーム音源版にはない珠玉のイントロが高評価であるようです。この流れるような弦が宿命をも感じさせます。だからと言って悲壮感はまったくなく、あくまで前向き。楽曲そのものは、勇壮な金管にマーチングスネアの添えられた、なんともヤル気にさせてくれるものなのですが、このイントロがあるからこそ、楽曲全体の勇ましさがより引き立っています。このイントロを受ける形のような、55秒からの弦パートもなんとも言えません。オルテガより受け継ぎし意志と、後の世へと継がれていくロトの伝説を語っているかのようです。

「ロト3部作」で最も勇ましいフィールド曲であると言っても過言ではないでしょう。これについてすぎやま氏は「これまでのように徐々に仲間を見つけていくのではなく、最初から仲間を連れて冒険できるから」と語っていました。しかし実は、本作でも「II」のように、物語序盤と後半ではフィールド曲を変えることが検討されていたようです。この「冒険の旅」は後半用で、序盤は「I」のように寂しげな曲も用意されていたらしいのですが、いわゆる「容量の問題」からカットされ、この曲が全編で使われるようになったのです。今の感覚で考えると、曲ひとつでそんなに容量を切迫するのだろうか?と思えてしまいますが、ファミコンというのはそういうものだったのですよ。しかし、全編に渡って流れていたからこそ、この曲の人気があるのです。
05 ダンジョン〜塔
      〜幽霊船
DUNGEON〜TOWER
〜THE PHANTOM SHIP
「I」のダンジョンに通じるテイストを持った、孤独感と緊張感を増幅する「洞窟」のBGMから。ここでも木管楽器がフィーチャーされていますね。ラストダンジョンである「ゾーマの城」でも使われている曲です(スーパーファミコンではゾーマの城は別の曲になります)。1分59秒からは、「II」から定着した要素である「塔」の音楽。「II」とはまた違った、脅かし要素が多い構成の楽曲です。変拍子が多用されているのも特徴。「VI」なども塔では変拍子が効果的に用いられていますね。

3分18秒からは、「III」で新たに登場したタイプのダンジョン「幽霊船」の曲です。「船乗りの骨」で位置をつかみ、海上で幽霊船を見つけた時のドキドキ感は今でも覚えています。いったい中はどうなっているのだろう……。その不気味な雰囲気に、一歩一歩が慎重になってしまう。カッ・カッ・カッというウッドブロックと、チキチキと鳴るハイハットが、そんなパーティの足音のように聞こえてしまいます。弦楽器は労働を強いられる者たちの悲鳴、威圧的な金管は異形のモンスターの雄叫びか……いろいろな情景が見えてくる曲です。5分30秒で鳴る、1発の「ザン!」は、「I」の交響組曲における「竜王」のアタマでも聞くことのできたバルトークピチカート。
06 鎮魂歌〜ほこら
REQUIEM〜
SMALL SHRINE
「II」の交響組曲では省かれた「ほこら」ですが、「III」で念願の組曲化。ですが、まずは全滅時に流れる「鎮魂歌」をどうぞ。それまでの勇ましいフィールドや戦闘の曲とはガラリと変わって、まさしく「鎮魂」。弦がしんみりと歌い上げ、「死んでしまった……」という絶望感を増幅します。

1分27秒からが「ほこら」の曲です。短いME的な楽曲で用途も限定されているにもかかわらず、非常にファン人気の高い曲です。
07 海を越えて
SAIL ON THE SEA
ドラクエの海はワルツ!その鉄則にのっとった、船で移動中に流れる「海」BG。その方向性は「II」のものよりもさらに強められ、まるで舞踏会のよう。ズンチャッチャ、ズンチャッチャ、紳士と貴婦人が手を取り合って踊っていそう。もっとも、僕らのダンスの相手はモンスターですけどね。命懸けのダンス。
08 おおぞらを とぶ
FLYING IN THE SKY
フィールド曲「冒険の旅」と並んで、「III」で1・2を争う人気を誇るのがこの「おおぞらを とぶ」。ラーミアに乗って空を飛んでいる際に流れるものです。ラーミアに乗っている限りはモンスターとエンカウントせずに流れ続けますから、長時間聴くことになるため人気が高いのも必至というわけです。神秘的なラーミアの存在を語りつつ、オーブを全て集めた達成感、そしてこれから終局へと向かっていく冒険を盛り上げてくれます。

個人的には「ラーミア、飛ぶの遅せー!」とか思ってしまうんですが、確かにこの曲に乗せてラーミアがビュンビュン飛んじゃったら違和感あるかも。それにしても「FFIII」のインビンシブルといい、「『III』に登場する空飛ぶ乗り物」ってばなんでノロいんでしょう?

なおこの曲、16年の歳月を経て、2004年発売の「ドラゴンクエストVIII」にて劇的な復活を遂げているんですよ。オールドファンであればあるほど、あの瞬間に背筋がゾクゾクする感覚は大きいものになるでしょう。しかし悲しいことに、ファミコン時代にリアルタイムで「III」をプレイした人の多くは、周囲を見渡すとかなりの割合でゲームから卒業してしまっています。皆さん、ゲームに帰ってきて下さい!そしてこの感動を共有しましょう!
09 戦闘のテーマ〜
アレフガルドにて〜
勇者の挑戦
FIGHTING SPIRITS
トラック9ではバトル音楽組曲をお送りします。まずは通常の戦闘音楽「戦闘のテーマ」から。初めてこの曲をファミコンで聴いた時には「ずいぶん細かい音を詰め込んだな」と思ったものでした。ファミコン音源で迫力のある音を作る時、細かい音をビッシリと並べることはひとつのテクニックなんだそうです。子供心に「これオーケストラで演奏できるのかな?」と余計な心配をしたのですが、聴いてお分かりの通り、まったく問題ナシです。ちなみに通常戦闘のほか、誰もがラスボスと思いつつも「なんで普通のバトル曲なの?」と思ったバラモス戦でも流れます。つまり、ラスボスは別にいる!と確信する瞬間ですね(笑)。スーパーファミコン版ではバラモスには専用のボス曲が与えられています。

続いては、ゲーム終盤に訪れる「アレフガルド」のフィールドBGM(1分40秒〜)。切なすぎる木管とハープで構成され、郷愁を誘う弦のイメージも「I」「II」と共通です。ただし「III」ではハープのアルペジオが3連符になっており、受ける印象はやや異なっています。コアなドラクエ音楽ファンの間では、どちらの「アレフガルド」が良いか?といった会話もなされており、「3連符アレフガルド」のファンも少なくないのです。アナタはどっち?組曲に組み込まれた時の、流れるような曲から曲への受け渡しは3連符に軍配が上がりますね。

と、静かな演奏に浸っていると突然「ドジャーン!!」。2分56秒からはラスボス・ゾーマ戦のバトル音楽「勇者の挑戦」。特筆すべきは間奏部分。4分44秒からをよく聴いて下さい。まず現れる右側の金管は「ロトのテーマ」のイントロ部分、続く4分46秒からの弦によるモチーフはまさしく「アレフガルドにて」ですね(4分47秒からの左側にいる管も追いかけてます)。続く4分50秒で聴ける金管のフレーズは、「ロトのテーマ」の主題部です。さらに4分55秒には、「I」の「序曲」だけに組み込まれている間奏からの引用も。なんだかすぎやま氏に試されているような。「どこまでわかるかな?」って。「I」と「III」を繋ぐような、音楽的な仕掛けが満載です。もちろんゲーム音源にはありませんが……オケ版だけのファンサービスというところですね。

曲名を見ればわかる通り、あくまでこの曲は「勇者側の視点」から見た決戦を表現している曲なのですね。決して敵の強大さだけを語っているのではないということです。だから、ロトのモチーフが顔を出しているのです。こういった立場で作られているラスボス曲というのは、「ドラクエ」シリーズでもきわめて珍しいのではないかと思います(他には「VIII」も主人公視点ですね)。

さて、なぜ戦闘曲2曲と「アレフガルドにて」がメドレーになっているか、という疑問を感じる人も当然いると思うのですが、前述のような「勇者の挑戦」へのモチーフの引用ももちろんその理由でしょうが、人によっては「そもそも戦闘のテーマがアレフガルドのアレンジである」と主張しています。戦闘のテーマでの主題の始まり「ファードーシー」が、アレフガルドの出だし「レーラーソー」のアレンジだとする意見です。さらに「勇者の挑戦」のメインフレーズ「レーソーファー」も同じだ、とする人もいます。もちろんこれだけの類似性でアレンジだと判断するのは間違っているとする人もいたり、ファンの間でも意見は割れています。あなたはどう思いますか?私としては断定しかねるところなのですが、わざわざオケ版がメドレーになっていることを考えると、これもすぎやま氏の罠かなぁ、と思ってしまいますが。
10 そして伝説へ…
INTO THE LEGEND
エンディングテーマ、「そして伝説へ…」をフルオーケストラで。もちろん曲名は、ゲーム本編のサブタイトルでもあります。つまり、「I」のロトの伝説へ繋がっていく…という意味ですね。「III」とは言っても、まだまだエンディングは短くシンプルでしたね。その後の物語はプレイヤーに委ねるというか、余韻を残すというか。「III」が終わった直後に「I」をプレイした人はかなりいるんじゃないでしょうか(私もそうでした)。

どうも疑り深くなってしまいますが、これもどこかにアレフガルド入ってんじゃないの?とか、ロトのモチーフはどこ?とか。23秒からの「ドーソーファー」もアレフガルドじゃん!とか言う人はさすがにいないか。

なお、この曲はドラクエのオーケストラコンサートにおけるアンコールの定番。暗黙の了解というか、みんなわかってる。最近はどうなのかわかりませんが……。すぎやま氏もMCでは「この曲は聞いたらすぐ分かりますよ。分からないと言う人は、ドラクエをやってないモグリですね」というような紹介のしかたをしていたようです。
09 ドラゴンクエストIII
ゲームオリジナル
    サウンドストーリー
当時はまだ、ゲーム機(=ファミコン)が鳴らす音楽に、音楽としての市民権が与えられていなかった時代。今でこそ珍しいことではありませんが、ゲーム音源による曲を単一のトラックに収めることは稀でした。そういった背景からか、ゲーム音源はこのようにゲームのストーリーをなぞるように紡がれていました。今だからこそ、ファミコン単一音源によるサントラのリリースを強く希望したいですね。私は実機から録音して自分でサントラ作ったクチです。

なお、ファミコン音源の雰囲気だけはゲームボーイ版のサントラに収録された、ゲームボーイ音源の楽曲でも感じることができます。興味があったらそちらも聴いてみて下さい。廃盤となった当アルバムを補完するように、N響版のオーケストラバージョンも再収録されているお得盤ですよ。
はみだしコラム:オープニングがなかったファミコン版「III」
 「ドラクエ」と言えば、オープニング画面で鳴り響く「序曲(ロトのテーマ)」は欠かせないという人は多いはず。さあ、冒険を始めるか!という気分もおおいに高揚するというものですよね。しかし、ファミコン版「III」では、その「お約束」はありませんでした。厳密に言えば、オープニングそのものがなかったのです。真っ暗な画面に文字だけが浮かび上がる、なんともシンプルな導入……。もちろん音楽なんか鳴りません。テレビ画面が発するノイズだけの、静かな幕開け……最近「ドラクエ」のファンになったという人に想像がつくでしょうか?

 「III」は「I」よりもさらに過去、まだロトのいない世界が舞台。なのにオープニングで「ロトのテーマ」が流れるのはおかしいという理由からの演出……というような解釈もされていますが、実際のところはやはり容量不足からオープニングがカットになった…というのが真相のようです。「III」はよく語られる通り、開発においては絶えず容量との戦いがあった作品でした。バラモス戦用の音楽は作る予定があったにもかかわらずカットになったため、誰もが「コイツはラスボスじゃない」と看破したり(笑)、スイスの村がまるごと削除されたり(こちらも曲は作ってあったらしい)……。オープニングも例外ではなく、「オープニングをなくせば街がひとつ増やせる」ぐらいに切羽詰っていたそうです。どちらを採るか……という検討の結果、オープニングがなくなったのですね。その結果、エンディングでの「ロトのテーマ」の意味が通常よりも大きいものになっているとも言えますが。「ここに勇者ロト誕生」といった意味付けですね。制約を逆手に取って演出に盛り込んだと言うべきでしょうか。

 なお、セーブデータ(ぼうけんのしょ)が何らかのトラブルにより消えてしまうと、ゲームを起動した際に無音→「呪いME」のコンボが成立し、そのショックはトラウマになるほどでした。このことはいまでもオールドファンの間で、笑えない笑い話になっています。

 スーファミ版ではきちんとオープニングがあります。これについては「リメイクだからロトの存在を伏せる必要がない」とする説もありますが、ファミコンでは泣く泣くカットせざるを得なかったスタッフの「本当はやりたかったこと」が実現できた、本来の「III」の姿なのです。

N響バージョンが再販されました!
交響組曲「ドラゴンクエストIII」そして伝説へ・・・
 ある意味、ゲームボーイ盤のサントラにも再収録されていたりもするので、それほど入手困難ではない「NHK交響楽団」の「ドラクエIII」ですが、SUGIレーベルのキングレコード移籍に伴って単独盤が再販になりました。ゲームオリジナルサウンドストーリーをカットし、純粋なオーケストラ演奏だけで構成されています。演奏そのものは既発のものと同じですので、アポロン盤もしくはゲームボーイ盤を持っている人には基本的に不要です。

キングレコード
KICC-6322
2009年10月7日発売 
JASRAC表記:
あり

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2004 GAMERS EDEN

ユーズドでまだ手に入ると思いますが……