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交響組曲「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」
すぎやまこういち指揮 東京都交響楽団
 かつてファミコンの頃には東京弦楽合奏団、スーパーファミコンでのリメイクをきっかけにロンドン・フィルハーモニー管弦楽団がそれぞれ組曲を演奏してきた歴史的名作「ドラゴンクエストII」の音楽。「VIII」の製作で東京都交響楽団と出会い、過去のシリーズ音楽をすべて録音し直したいという欲求に駆られたすぎやまこういち氏が、PS2版の発売を間近に控えていた「V」の次に発表したのがこの「II」(及び「III」)であった。

2005年・Aniplex/SVWC 7246
2009年・キングレコード/KICC-6301(SUGIレーベルの移籍)
JASRAC表記:
あり
ゲーム紹介

 ある意味で、マニアックなPCゲーマーのものだったロールプレイングゲーム(RPG)を家庭用ゲーム市場に「翻訳」し、広く知らしめたのはほかでもない、「ドラゴンクエストI」であったことは誰もが認めるところだろう。とすれば、パーティ形式RPGの礎を築いたのが「ドラゴンクエストII」であったことにも、異論が起こるはずもない。一人旅であった「I」から大幅にグレードアップした「II」は3人パーティ制を採用し、今日のRPGの基礎を作った。「I」と関連性を持たせた世界設定とストーリー、プレイヤーがパーティとなったことで敵もまた複数で出現、はるかに手強くなった謎解きなど、ユーザーによっては「II」を「ドラクエ最高傑作」に推すのも納得の完成度を誇っており、リメイクされたスーパーファミコン版やゲームボーイ版、携帯電話アプリでプレイしてもいまだ古さを感じさせない「名作」である。

 舞台設定が「I」の100年後ということから、作曲のすぎやまこういち氏いわく「ポップス寄りな曲が多い」本作の楽曲。ファミコン当時にリリースされた東京弦楽合奏団の手による組曲アルバムは、まさにポップスを強く意識したアレンジに仕上がっていた。ドラムスはもちろんエレキベースやエレキギターといった、今の「ドラクエ交響組曲」ではまず使われない楽器によって彩られた楽曲たちは確かに異端ではあるが、それが逆に時代や懐かしさを感じさせ、または「ゲーム音楽にフルオーケストラなんてとんでもない!」といったレコード会社や世間の認識をも深読みさせてくれる。逆に言えばそれがあったからこそ、後にフルオーケストラで演奏された時に驚けたわけで、喜びも感じられたと言えよう。

 「II」の楽曲を演奏したフルオーケストラアルバムは、スーパーファミコン版の発売を機に発表されたロンドンフィルハーモニー管弦楽団盤が初出となる。ポップス寄りな楽曲たちから実際のポップス楽器は一切排除され、まごうことなき交響組曲となったそれは、擦り切れるほどに東弦盤を聴き込んだ者にとってはいささか違和感を覚えるものであったに違いない。しかし、アレンジが変われば同じ曲もここまで表情を変えるのかといった純粋な驚き、そして「ゲーム音楽の地位もここまできたか」という喜びは心地良いものであった。以後、シリーズの音楽が機会あるごとにロンドンフィルによって演奏されていくことで、このアルバムは「II」音楽の決定盤になると誰もが確信していたことだろう。

 しかし、「VIII」の製作中に東京都交響楽団と出会ったすぎやま氏は、過去の作品をすべてこの楽団で録り直したいと発表、直後にPS2リメイク版の発売を控えていた「V」の音楽でそれを実現。過去の交響組曲では割愛された楽曲も新たに追加されたことで、「ドラクエ」音楽ファンの間で都響盤への期待はいやでも高まることになった。以後は作品順にリリースされていくものかと予想されたが、収録楽曲の少なさから「I」がしばし見送られたことで、「II」と「III」が続けて収録・発表された。交響組曲としては既にロンドンフィル盤があり、それとの比較もまたファンの楽しみ。追加された新録音曲は、短い曲でありながらなんとも言えない美しさで人気の「聖なるほこら」。過去のアルバムと比較もしながら、聞き進めていくことにしよう。


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記述の一部に東京弦楽合奏団盤ロンドンフィル盤のレビューを引用しています。

01 ドラゴンクエスト・マーチ
Dragonquest March
まずは言わずと知れた「ドラクエ」シリーズのメイン・テーマ、「ドラゴンクエスト・マーチ」です。この曲はシリーズによって「序曲のマーチ」「ロトのテーマ」などいろいろな呼ばれ方をしますが、「II」ではファミコン版の頃から一貫してこのタイトルが与えられています。俗に言う「天空イントロ」がそれ以後も定番となった感がありますが、「II」はここでももちろん「ロトイントロ」です。「II」と言えば「3連ベース」ですが、この都響盤においてもそれは厳守されています。

過去の演奏は、東京弦楽合奏団のものがストリングスを前面に出したもの、ロンドンフィルは金管によるメロディが主体となっていました。両者は組曲としての性質が異なるのでそのような差異は当然のことで、今回の都響盤はもちろんロンドンフィルのものに近いアレンジがなされています。

過去の演奏との大きな違いは、リピート以降から派手に鳴り響くマーチングスネアの存在。東弦盤、ロンドンフィル盤とも曲名が「ドラゴンクエスト・マーチ」でありながら、マーチングスネアはありませんでした。マーチに必ずしもマーチングスネアが入っていなければならないわけではありませんが、都響盤で初めて一般に感じられるところの「マーチらしさ」が加えられたと言えます。ちなみに、組曲で初めてマーチングスネアが加えられたのは「III」の「ロトのテーマ」。「IV」の「序曲」ではなくなり、「V」の「序曲のマーチ」で復活して以降定番になりました。
02 Love Song 探して
Only Lonely Boy
もうさすがにだいぶ慣れてしまった、ピチカートストリングスによる「Love Song 探して」は今回の都響盤でも継承。もちろんポップスアレンジに戻ることなどあり得ないわけですが、逆に最近「ドラクエ」の音楽にはまった人が東弦盤のアレンジを聞いたらひっくり返るのでしょうか?かつてネットに無数にあった耳コピMIDIやリミックスMP3を聴く限りでは、圧倒的にポップスアレンジに人気があるようですが、おそらく皆さんリアルタイム世代なのでしょうね。若い人にしてみればそもそもこの曲の存在自体が謎だったりして……。
03 パストラール〜カタストロフ
Pastoral〜
  Catastrophe
スーファミ版、ゲームボーイ版、携帯アプリといったリメイクバージョンでは必ず挿入されるイベントだけに、この曲の認知度もだいぶ上がったことと思われます。かつてはファミコン世代にとっては「えっ、この曲ナニ?」と驚くものでした。スーパーファミコン化にあたって序章に追加された、新たなイベントのための新曲だったのです。当然のことながら、ロンドンフィルが初めて演奏しました。都響盤ではアレンジについては特筆すべき変化はありませんが、テンポがだいぶ速くなっているのが特徴。そのため、特に「カタストロフ」になってからの緊迫感が凄いことになっています。また、時とともにデジタル録音・マスタリングのテクニックが洗練されたこともあり、パッと聞いた時の音量感・音圧感は都響盤でだいぶ上がっています。これは全曲について同様のことが言えますが、オーケストラの技量とは違う部分ですので要注意。

ゲーム中では、一見平和そうなムーンブルク城が映し出されるところに「パストラール」が流れています。静かに流れるストリングス、憂いを帯びた木管が印象的な穏やかな曲ですね。そして、事態は一転してハーゴンの手下が襲ってくるところから、1分37秒以降にあたる「カタストロフ」になります。ティンパニと金管楽器が鳴り響き、弦楽器が危機感を高めているこの曲、まごうことなきドラクエ音楽であり、新曲でありながら旧作のイントロとしてまったく違和感はありませんでした。

この曲が純然たる新曲ではないことも、今となってはだいぶ知れ渡っていることでしょう。かつてすぎやまこういち氏が音楽を担当した「劇場版ガッチャマン」で使われた曲です。「交響組曲ガッチャマン」として、CDもリリースされています。そちらの演奏はNHK交響楽団ですので、ある意味ドラクエ音楽ファンには無視できないものではないでしょうか(笑)。ちなみに「ガッチャマン」における曲名は「平和そして危機への予感」です。

「PASTORAL」=1 牧歌的であるさま。田舎風。2 田園生活や牧歌的な気分を描いた音楽・絵画など。
「CATASTROPHE」=1 突然の大変動。大きな破滅。2 劇や小説などの悲劇的な結末。破局(大辞泉より)。
04 王城
Chateau
おなじみ「A線上のアリア」こと、お城のテーマです。「I」と同様のイメージの、カルテット(弦楽四重奏)によるもの静かな楽曲。「I」の「ラダトーム城」が華やかさのある楽曲だったのに対し、この曲はさらに厳かな、高貴さを感じさせる曲調になっています。より格調高いと言いますか、クラシカルな感じ。

東京弦楽合奏団の演奏では同じ編成のままリピートしていましたが、ロンフィル版ではリピート以降の編成が厚くなっていました。都響盤も基本的にはそのアレンジを踏襲しています。

各奏者の「縦の線」が揃っていないことがやや気になったロンドンフィルの演奏でしたが、都響の演奏ではそれがなくなりました。クラシックに精通した人の中にはそれを「型にはまった情感のない演奏(逆に、ロンドンフィルは感情のこもった名演)」と評する人もいるようですが、特別情感が失われている感じは筆者は受けないですね。そもそもクラシックというものは歴史的には「楽譜の完全再現」「改変無用」が鉄則の音楽だったわけですから、「型にはまっている」のはむしろ良いこと(独自の解釈を盛り込む指揮者・演奏者は批難されたりも)。筆者個人としては再現性も情感もバッチリの、「王城」の決定盤と言っても良い録音だと思います。
05 街の賑わい
Town
東弦盤ではこのうえなくポップステイストになっていた街の音楽。ロンドンフィル版でも冒頭からハイハットが加えられていたりと、「II」の楽曲でも特に「ポップス寄り」が前面に現れた楽曲でした。都響盤の演奏は、かなりテンポが速く感じたロンドンフィルよりも少しゆっくり。また、ロンドンフィルではかなり控え目だったドラムスがかなり前に出ています。2分41秒以降のピチカート&木管による「ゆったりブロック」はロンドンフィルの頃からありましたが、「夜の街」を想像させて面白いですね。「II」のゲーム中においては夜にはなりませんが、もし日夜の変化が盛り込まれたらこういうアレンジが流れそう。
06 遥かなる旅路〜広野を行く
  〜果てしなき世界
Endless World

アレンジや演奏の差異は話題になることがあっても、意外に注目されないのが、都響盤で組曲の構成自体に手が加えられたこと。東弦盤・ロンドンフィル盤では「街」の次は「洞窟&塔」だったのが、都響盤ではフィールド曲メドレーになりました。曲単位を拾い聴きしているとわかりにくいのですが、しっかりアルバムを通して聴いていると「アレっ?」と思うはず。過去の盤を聴き込んでいた人であればあるほど、です。筆者個人的には、東弦盤の頃から組曲の構成に疑問を感じていました。ゲーム的に言えば、街の次はフィールドに出て、その後に洞窟だろうと。ゲームをやっていれば当然感じるこの違和感が、都響盤でやっと修正されたのが凄く嬉しかったのです……こまかいですが。

東弦盤とロンドンフィル盤でのそれぞれの演奏は何度となく聴きましたし、方向性が異なるので比較すること自体にあまり意味がなかったのですが、都響盤とロンドンフィル盤のコンセプトは同じものと解釈していますので(フルオーケストラの交響組曲ですから)あえて比較すると、都響盤はロンドンフィル準拠のスコアながら、だいぶ時間的に短くなってます(15秒ほど)。それぞれの楽曲において微妙に速度が速まっているのでしょうが、最も顕著なのは3人揃ってからの曲「果てしなき世界」ですね。都響盤はかなり速いです。その速さに拍車をかけているのがリズム楽器でしょう。ロンドンフィルではハイハットの刻みだけでしたが、都響盤はタンバリンとスネアがリズムを形成しています。シャカシャカシャリシャリという小気味のよいタンバリンが、足どり軽くどこか楽しげな旅路を思わせます。
07 恐怖の地下洞〜魔の塔
Fright in Dungeon
  〜Devil's Tower
ロンドンフィルの演奏から加えられたイントロで、より緊張感の増したダンジョン音楽「恐怖の地下道」。東弦盤に慣れていると一瞬「新曲?」と思ってしまうかも。48秒からはおなじみの形に。ということで、基本的にはロンドンフィルの時のスコアから大きな改変は行われておらず、それほど印象は変わらないかもしれません。

それ(スコア)は1分45秒からの「魔の塔」でも同じなのですが、ここからは都響盤で印象がだいぶ変わっています。ロンドンフィルではかなりゆっくりとした演奏だったのですが、都響の演奏ではゲーム中のテンポに近くなりました。アルバムごとに聴いていると違和感なかったのですが、こうして比較するとロンドンフィルのはずいぶんゆっくりだったんだなあ……と。
08 レクイエム
Requiem
戦闘で全滅した時の曲です。ファミコン版にしてもリメイク版にしても、この曲を長く聴いたプレイヤーはあまりいないことでしょう。特にリメイク版はセーブがバックアップバッテリーになったことで、リセットしてからの再スタートもお手軽になりましたからね。全滅したらすぐにやり直すわけで、もしゲームでじっくりとこの曲に耳を傾けている人を見かけたら、その人は「ドラクエ」音楽ファンに違いありません(もしくはあまりの難易度に放心中か)。

レクイエム系の全滅曲はプレイヤーにあまり聴いてもらえない……という悩みはすぎやま氏も常々抱いていたそうで、それもあってかスーパーファミコン版以降では、この曲をしっかり聴かせてくれるイベントシーンが追加になっています。それはオープニングでのムーンブルク城陥落のシーン。魔物の襲撃を受けて炎に包まれていく城、そしてその報をローレシア城に伝えに行く、傷付いた兵士……そんな場面にこのうえなくハマっていた選曲でしたね。

都響盤での演奏は、東弦盤とロンドンフィル盤を比べたときほどの大きな違いはありません。悲壮感に満ちていながらこのうえなく美しい流れるような弦の旋律、広がりのある音場感など、ロンドンフィルの演奏に勝るとも劣りません。ちなみに都響盤の録音はホール(江戸川区総合文化センター)での、各セクションごとにマイクを立てたマルチマイク集音方式。おそらくアンビも立てているでしょう。一方でロンドンフィル盤はスタジオ録音。では、空気感は都響盤の方がふくよかか?と言うと、ロンドンフィル盤も決して負けていません。なぜか?これはアンビエンスの混ぜ方も関係してきますが、ロンドンのスタジオは日本のちょっとしたホールぐらいの広さ・高さがあるんです。日本ではフルオーケストラをいっぺんに収録できる広さのあるスタジオは減る一方ですね。オーケストラ録音をわざわざホールでやる理由は、そんなところにもあります。
09 聖なるほこら
Holy Shrine
都響盤の最大の目玉、組曲で初めて録音が実現した「ほこら」の曲です。ゲームではかなり短い曲で、組曲に入れ込むことが難しいことからこれまで見送られてきました。ME以外では「II」で唯一、組曲になっていなかったわけです。が、ユーザーの人気はかなり高いもので、昔からオーケストラ演奏が望まれてきた曲でもありました。

都響盤「V」でそれまで未収録だった楽曲が新録音されたことで、この曲もきっと都響盤に入るだろう……!と誰もが予想しました。しかし元の曲が短いことは変わりませんから、「レクイエム」あたりと組まれるのではないか?とも予想されてきました。ところが実際に発表されてみれば、まさかの単独トラック!弦楽で原曲の雰囲気を十二分に再現したものとなりました。そういう意味でも都響盤は「ドラクエII」音楽CDの「完全版」と言えます。

ちなみに、ファミコンのゲーム中ではこの曲、CDにおける0〜15秒のフレーズをえんえん繰り返していました。ほとんどMEというほどのものだったのです。それ以降の部分はスーパーファミコンでリメイクされた際に足されたものでした。それでもこの曲の持つ神秘性やシーンとのマッチングがあって、プレイヤーの人気を得ていたのです。彼らの頭の中で鳴っていた「ほこら」は、まさしくこういうものだったに違いありません。
10 海原を行く
Beyond the Waves
ロンドンフィルの演奏で加えられたイントロがごっそり削ぎ落とされ、東弦の頃の展開に戻った「海」の曲です。序盤は弦を中心にして素朴に進行していきますが、徐々に管やリズムも加わってきて盛り上がり、ゴージャスなワルツになっていくところはロンドンフィル準拠。どうしてイントロ切ってしまったんでしょう……。情景がパッとイメージできる、良い導入だったのですが……。不評だったのでしょうか、それとも都響盤で曲順が変わったことで、繋がりを考慮したのでしょうか?新録音となるとこちらはついつい「追加」「新規」に目が(耳が)いきがちですが、時にはなくなったり省かれることもあるのです。
11 戦い〜死を賭して
Deathfight
  〜Dead or Alive
東弦盤の頃から、「海原を行く」が「ジャンジャン!」と締め括ったらそれを受けるかのように「戦い」のイントロが勢いよく始まる、というのは鉄板の流れ。ロンドンフィル盤もそうですし、変えちゃいけないところですな。今回の都響盤もそれに倣っています。録音&マスタリングテクニックの成熟によりダイナミクスが増したこと(=単純に比べて音量・音圧感の増加)、そして打楽器がかなり強調されたことで、迫力満点。さらに、これは今でも残念なのですが、テンポのヨレヨレ感や縦軸のズレがかなり目立っていたロンドンフィル。それに対して今回の都響はこちらもバッチリで、完全版として、後世に残す「記録」としての役割をしっかりと果たしていると思います。

1分17秒からはラスボス・シドー戦専用曲「死を賭して」。ブラス中心の威圧的な編曲で、挑んでゆく主人公たちの前に立ちはだかる者の圧倒的な強さを思わせます。2分6秒からのブロックはロンドンフィル盤で追加されたもので、東京弦楽合奏団の演奏にはありませんでした。全体にブラス中心の楽曲の中にあって、弦による緊迫したフレーズは雰囲気にメリハリを与えています。この戦いはいったいいつになったら終わるんだ……そんなジリジリとした緊張感を醸し出しています。
12 この道わが旅
My Road My Journey
言うまでもなくエンディング音楽、「この道わが旅」。どんどん長大化していく最近のエンディングに対し、シンプルなこの曲を推すファンもいまだ多い、ドラクエシリーズを代表する曲です。

ピアノなどが用いられ、ポールモーリア的インストルメンタルを連想させた東弦盤での同曲に対して、暖かな弦をメインに始まるロンドンフィル盤は、また新たな解釈を我々に与えてくれました。前者が目的を達成した若い世代に贈る「明日への賛歌」だとすれば、後者は順当なエンディングであり「お疲れさまでした」という感じでしょうか。ロンフィル盤の終盤の盛り上がりはより圧倒的な達成感と、ゲームへの郷愁を感じさせてくれることでしょう。

個人的にはロンフィル盤には「III」もふまえたうえでの「ロト編の完結」を感じます。一方で東弦盤は「次回作への繋がり」。即ち、両者には開発段階でまだ「III」がなかったファミコン版と、既にその後だったスーファミ版、といった違いがあるように感じていたのです。その印象はいまでも変わっていません。

そこで、都響盤にはどのような感情が加えられているのかといったことも興味深いところ。「集大成」として、すぎやま氏の万感の想いが込められているのか、はたまた……。その結論は、アルバムを聴いている皆さんそれぞれに委ねましょう。ともかく、ファミコンの頃にリアルタイムで「ドラクエII」に出会った人、スーファミで知った人、最近になって携帯アプリで初めてプレイしたという人……、すべてのプレイヤーの心に等しく響くアルバムになっていると思います。「ほこら」も入りましたし、どのCDを買おうか迷っている人、「II」のCDはまだ一枚も持っていない人はとりあえずここから入ると間違いないでしょう。

東弦盤、ロンドンフィル盤ともにジャケットリニューアルしてキングレコードから再販されています。
特に入手困難だった東弦盤が現行商品として手軽に購入できるようになったのはありがたい!
都響盤とあわせて、この機会にいかがでしょうか。

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