TOBAL2 Original Sound Track
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ゲーム紹介

 「トバル2は、反省と進化のゲームである」。これは、筆者が「トバル2」というゲームに対して、個人的に抱いている印象である。前作「トバルNo.1」は、スクウェアのプレイステーション参入第一弾ソフトとして、華々しく発表された。「スクウェアが格闘?」という驚きもあったが、鳥山明をキャラクターデザインに迎え、そして業界に少しでも興味のあるゲーマーであれば、「鉄拳」や「バーチャ」という3D格闘の基礎を築き上げたスタッフたちが、「ドリームファクトリー」という会社を設立して作ったソフトであることも、話題性としては充分であっただろう。

 だが、前評判とは裏腹に、「トバルNo.1」はさほどの記録を残さなかった。「FFVII」の体験版効果も手伝ったうえで、売り上げは実に70万枚。それでもかなりの数字ではあるが、このスタッフが作って100万枚未満というのは、衝撃に近いものがあった。原因としては「グラフィックがしょぼい」「必殺技がない」といった食わず嫌いの類であろう。「リアルな格闘」を表現すべく、無駄な装飾(テクスチャー)を削ぎ落としたポリゴンむき出しのキャラクターたちは、多くのユーザーの目に「しょぼい」と映った。やはりユーザーの購入意欲というものは、見た目がかなりの比重を占めるのだ。

 そして、「トバル2」である。前作の反省点から、よりなめらかになったキャラクター。見た目の派手さも満たすべく取り入れられた必殺技。一方でつかみや投げ抜け・受け身といったかけひきや、後の「エアガイツ」に受け継がれるジャストフレームなど、格闘ゲームとしてのストイックさは健在である。なにより、単独のゲームとして成立するほどのクオリティにまで高められたクエストモードは、今なお名作の呼び声が高い。正直、一般ユーザーに受け入れられたとは言い難いが、業界人ウケは非常に良い、隠れた名作となっている。

 音楽は、前作を担当したスクウェアコンポーザー(光田康典氏)の手を離れた。光田氏は前作で「新たなゲーム音楽」の模索に挑戦したものの、その評判が上々であれば、続けて今作の音楽も担当したはずだ。が、そうはならなかった。ユーザー、もしくはスタッフ内部での評価が芳しくなかったのではないだろうか(筆者はそうは思わないが)。言ってみれば、ドリームファクトリーのスタッフにとっては光田氏は門外漢だったのだ。変わって今作の音楽を担当したのは、新たにドリームファクトリーに移籍してきた中村隆之氏。かつてセガでバーチャの楽曲を手掛けた彼は、実はドリームファクトリーの面々とは旧知の仲。「格闘ゲーム音楽を知り尽くした男」とまで評される彼は、どんなトバルサウンドを聴かせてくれたのだろうか。
デジキューブ
SSCX 10007
1997年 
JASRAC表記:
なし

格闘ゲームファンなら一度はやっておくべき。
TOBAL No.1 トバル2


01 TOBAL2 本作品のタイトル曲。ゆったりとしたテンポのリズムにシンセメロが乗るシンプルな楽曲です。前作のタイトル曲との共通点も見出せる気もしないでもないですが、実はこの曲、ゲーム中では影が薄く、あえて言うならイメージテーマといったところ。だってほとんどゲーム中で耳にしないでしょ?

作曲の中村氏が本作の楽曲に課したテーマは「テンポを落とし」「メロディ重視」の2点。前者は、速く、激しくなっていく一方の格闘ゲームの音楽における新しい表現の模索、後者は勢いや気持ち良さというもの以外に、単純に「良い曲」で勝負する、という意思に基づいているそうです。ちなみに、この思想とはまったく逆の手法・発想で作られたのが「エアガイツ」の楽曲であり、こちらは楽曲のノリやスピード感、ループの気持ち良さを前面に出しております。あなたなら、どちらが格闘ゲームに向いていると思われるでしょうか?
02 Checked Career
(album original mix)
オープニングムービーに使用されている曲を、サントラ独自のミックスでお届け。ベースとリズムのみのイントロから始まり、おなじみのブラスアタックが入ってきます。ゲームでは聴けないギターソロもあり。唯一の疑問は、なぜ最初からコーダ(曲の完結部分)を作らず、フェードアウトにしたのかということ。オープニングムービーを見て気付く人は気付いたでしょうが、かなりムリヤリなケツ合わせが行なわれております。邪推すれば、当初オープニングムービーにはテーマ曲を使う予定だったのでは。あ、どうでもいいですか?

この曲は他にトーナメントやVSモードのキャラクターセレクトや全クリア時のリプレイなど、ゲーム中ではテーマ曲以上にフィーチャーされているので(聞こえ方はだいぶ異なりますが)、プレイしたユーザーには馴染み深いでしょう。短くアレンジされたMEバージョンも、勝敗が決した時のアタックとして使用されています。そういう意味でも、この曲こそ本作のメインテーマ的な印象がありますね。
03 The Origin No.5 ここから18曲目までは、バトル中に流れるいわゆるステージBGMを収録しています。ステージBGMは特定のキャラクターに与えられているのではなく、ステージに対して設定されています。つまり「この背景の時はこの音楽」というように定められているわけです。これはトーナメント、VSモード共通のルール。これらにおけるステージ選択はランダム(トーナメントではある程度一定)ですので、毎回曲順が変わる場合がありますし、同じステージがチョイスされれば同じ曲が複数かかることもあります。

この曲は屋内コロシアムで流れるもの。格闘ゲーム音楽として非常に明快な、わかりやすい曲です。ドハデなどつき合いよりもストイックな駆け引きが深い「トバル2」にあって、まさにふさわしい曲だと思います。淡々と緊迫感を煽る、とでも言いましょうか。左右にパンニングされたオケヒットも、良いアクセントになっております。
04 Amethyst 夕焼けの遺跡ステージ(ステージ名は便宜上筆者が名付けたものです)で流れてくる楽曲。アコースティックギターがメインメロディを担当する、どこか渋み・哀愁漂う楽曲。ベースとリズムのマッチングも出色。こういうリズム隊にアコギを乗せるというのも新鮮ですね。格闘ゲームの音楽といったら普通はとにかく「ハデ」重視で、歌い上げるアコギなんてなかなかないですから。
05 The Grody Boy 湖上の芝ステージで流れる曲です。ゆったりめのテンポで、バトルにズンズン感を与える曲(なんじゃそりゃ)。バトルの傾向が曲に左右されることってあっていいと思うんですよ。アップテンポな曲では技の応酬、そしてこういう曲ではつかみ・投げ・抜けのかけひきを楽しむ。曲によって「今回はどう戦おう」っていう気分があってもいいし、上手い格闘ゲームの音楽っていうのはそれを誘発してしかり、だと思いませんか?音楽がハデなだけのゲームって、ついつい単なるドつき合いになりがちですし。
06 Knock My Door ステージBGでも最も耳馴染みのある曲。ということは、それだけキャッチーだということですね。ピアノによって緊迫感・宿命すら感じさせ、曲の展開も豊富。何が何でも負けられない、そんな気分にさせられます。リズムの配置もうまく、シェイカー・ハイハット・ライドが入れ替わりつつ展開に変化を作り、微妙な強弱の付けられたテクノ的スネアも絶妙なノリを生み出しています。ループを使わず、打ち込みだけでこのノリを作り出すのはなかなか難しいですよ。夜のグランドキャニオンステージに使われている曲です。
07 In an unguarded moment シンセ・ストリングスが緊張感を醸し出すステージBG。うっすらと入れられたボイスもいい味付けとなっています。あとはシンセ、ピアノ、オケヒットとおなじみの音色で構成されています。昼のグランドキャニオンステージに使われている曲です。
08 Grope after the truth ボイス音色から始まるミステリアスなナンバー。以後もベル音色がアクセントを付けながら、ボイス中心に進行していきます。あえてリズムとベースが控え目になっているので、立たせるべき音色がよく立っています。でもこういう曲って家庭用格闘ゲームならではですね。ゲームセンターではまず埋もれてしまうでしょう。家庭用オリジナルタイトルが増えてきた昨今、格闘ゲームの音楽も多様に変化してきており、また、そうであるべきなのです。この曲は昼の遺跡ステージで流れます。
09 Beating Hard ディストーションギターとシンセブラスをフィーチャーした、力強いロック調の楽曲。正統派な格闘ゲーム音楽、という感じです(本作では稀少ですが)ドラムも曲調に合わせ、生っぽいパターンになっていますね。後半のオルガンソロは、まあこういう曲ではお約束です。ロックにオルガンは欠かせませんからね。空中ステージに使われています。
10 a miracle's coming 屋内闘技場で使われている曲です。本作では珍しく、テンポが早めですね。打ち付けるようなオケヒットとこれでもかというほどのチキチキハイハットが、圧倒的なテンポ感を演出しています。こういう曲が鳴ると、必殺技の応酬でもしたくなりますね(笑)。しかしこうして曲だけ聴いてくると、パートの抜き差しが非常に巧みであると思わされます。
11 China Dress 昔のシューティングゲームを思わせる曲。ベースとシーケンスがなんかそれっぽいんですかね。もちろん今時のゲームですから、ディストーションギターが鳴り響いてますけど。比較的ゆったりとしたテンポで、バトルをヘビーに演出します。昼&夜の中華風ステージで流れます。「チャイナドレス」とか言うから、チャコのテーマかと思ったのですが(チャコのアナザーカラーはチャイナ服姿)、違います。
12 Hero's Looking Glass 作品中、最も格闘らしい曲。プロレスラーの入場曲のようです(笑)。3パートのディストーションギターとオルガン、ロックっぽいドラムスが基本構成。力の象徴とでも言いましょうか、バトルをズシズシと緊迫したものへと盛り上げる効果は絶大です。地下工場ステージで流れています。
13 The Speeder 一転してテクノ、それもディスコっぽい軽めの曲です。……と、今まで全体にホメ調でレビューしてきましたが、実は僕はこのサウンドトラックに対して、大きな不満を持っています。それは、音色が非常に偏っているということです。全部の曲が同じということではありませんが、分析してみると、全体で使われている音色は非常に似通っているのです。いくら曲が変わっても雰囲気は同じなため、単独のインストルメンタルとしては退屈なのです……。ゲーム中ではいいかもしれませんが、正直アルバム1枚を何度も愛聴する気になれない……というのが、正直なところですね。バリエーションが無いということです。せっかくの家庭用ゲーム、もっとハジけてもいいんじゃないかと思います。

この曲はゲーム中で聴いた覚えがないのですが、サントラの帯を見ると「ゲーム未収録曲を含む」とあります。この曲がそうでしょうか?クエストも含め、サントラに入れるべき曲は他にあるような気がするのですが……。私は個人的には、ゲームサントラの未収録曲はゲームに使われているものをすべて網羅したうえでならOKとします。それもナシに、ゲームで使われてない曲を入れられてもねえという感じです。せめてどの曲が未収録曲なのかを明記してほしいものです。
14 A Crying Son 海が見える砦ステージで流れるもの。ゆっくりしたテンポでギターが刻む、重めの楽曲です。が、やっぱりあのリードシンセが出て来てしまうわけで……。作品トータルではバランス取れているのかもしれませんが、格闘ゲームの音楽で、そんな音色までテーマ性を重視しないでも、と思うのですがいかがでしょう?
15 Knee Drop 12曲目「Hero's Looking Glass」に通じる、ロックテイストの楽曲。圧倒的に力強く、キャッチーなメロによって、よりプロレスっぽくなっています。プロレスの世界では、レスラーが自分で選曲して「これをオレのテーマにしよう」ということもよくありますから、ゲームが趣味のレスラーがいたら、ゲームの曲をテーマとすることだってあり得ますし、これからはそういう時代でしょう。まあ、それをやるにはJASRAC関係がいろいろ面倒ではありますが……。

それにしても、スポーツ選手はけっこう気ままに自分のテーマを決めちゃいますが、その分重複も多いですね。巨人の高橋由伸と格闘の桜庭は同じ「スピード2」ですし、新庄の「ウルトラソウル(B'z)」なんて、『オマエは水泳選手か!』とツッ込みたくなります。以上、余談でした。
16 On Your Dark Side 海が見える砦ステージ(夕景)で流れる曲です。このあたりになると、1枚のアルバムとしては飽きてくる頃でしょう。ある曲のアレンジやリミックスというわけでもないのに、似たような音ばかりのアルバムがあったとしたら、どうですか。目新しさがなく、何度も聴くには厳しいですよね。そういう意味では僕の中では前作のサントラに軍配が上がるし、ユーザーや制作サイドが「これこそ格闘音楽!」と言うなら、ちょっと失望してしまいます。ゲーム音楽を真面目に作りすぎてしまうと、アルバムとしてはややツラい。このアルバムはその典型、とさえ言い切ってしまいましょう。
17 Dropout 特に主となるメロのない、軽めのBG。途中で挿入される、ベンドダウンするボイスが怖すぎます。この曲もちょっとゲーム中で聴いた覚えがないなあ……。そういえば今回も前作同様、クエストモードやムービーの曲は収録されていませんね。あのダンジョンの曲を単独で聴きたいと思うのは私だけでしょうか……。
18 H.N またまた似通った音色の曲。「トバル2音色セット」とでも呼びましょうか。この音こそトバル2!みたいな。たしかに立つ音なんだけど、あらゆる曲で使ってしまっては効果はかえって薄れるような気がします。曲そのものは、タイトル曲「TOBAL2」のアレンジ。池上ステージで聴けるものです。
19 TOBAL2 1st ENDING トーナメントモードのランキングエントリー画面で流れる、メインテーマ「TOBAL2」のアレンジバージョン。ギターのイントロから始まり、オリジナルよりもかなりゆったりとしたテンポで暖かみのある雰囲気になっています。また、クエストモードのエンディングムービーでも似たようなテーマアレンジが流れるのですが、そちらは伴奏中心のアレンジになっており、ムービーに合わせて完結するように作られています。しかし、残念ながらそちらはサントラには未収録ですが……。

それにしても、このゲームのクエストモードは本当に名作でした。とにかくハマる!そしてモンスター収集がアツい!さらに、集めたモンスターを対戦で使える!育てたマイキャラも使える!すべてのモードが密接に関係する本作、未体験の人はぜひプレイして下さい。グラフィックばかりが進化しがちな昨今の格闘ゲームに、決してヒケをとりませんよ。
20 TOBAL2 2nd ENDING トーナメントモードのエンディング曲。こちらもタイトル曲「TOBAL2」のアレンジです。この前に各クリアキャラクターのエンディングムービーが挿入されるのですが、いや、なんでこの曲はこんなに暗いのかなー、と。クリアした爽快感、充実感を削いで、プレイヤーを虚しくさせる意図は何なのかと……。本作の音楽に失敗があるなら、タイトル曲が最もゲームにとってミスマッチだということではないでしょうか……。

ついでですが、この曲、スタッフロールの途中で終わってしまいます。なんか半端な印象を受けますよね。どうせフェードアウトなら、伸ばすことはできなかったのでしょうか?納期が近かったのか、予定よりもロールが長くなってしまったのか。

最後に、2種存在する「トバル」サウンド(前作と本作)ですが、個人的には前作の光田氏の音楽に軍配をあげましょう。
サントラ未収録曲
・ゲーム起動直後のドリームファクトリーロゴに当てられているブリッジ
・メニューで流れるアルペジオ主体の曲
・勝利時の「Checked Career」アレンジME
・敗北(YOU LOSE)時のME
・コンティニュー時のブリッジ
・ゲームオーバー時のME
・クエストモード全般(ムービー、探索中、バトル)
・各キャラクターのエンディングムービーで流れる曲

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