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ファイナルファンタジーX Original Soundtrack
パッケージ画像
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ライナーノーツ表紙
↑ライナーノーツ表紙
 FFシリーズは多様な発展・分化を遂げているが、通し番号の付いた正当なシリーズはいよいよ2ケタに突入、さらにFFとしては初めて「プレイステーション2」ソフトとして発売された、あらゆる意味でシリーズ集大成・記念碑的な意味も持つ「ファイナルファンタジーX」。そのゲーム中で使用された楽曲を、ゲームオリジナル音源で収録したサウンドトラック。今回、初めて植松伸夫氏以外のコンポーザーが参加したという意味でも、「新たなFFとそのサウンド」を感じさせてくれる名盤ではないだろうか。
オリジナル盤
デジキューブ
SSCX 10054〜7
2001年(廃盤)
JASRAC表記:
あり
再発盤
スクウェア・エニックス
SQEX-10013〜6
2004年再発
JASRAC表記:
あり
ゲーム紹介

 「ファイナルファンタジーX」は、FFシリーズ初のプレイステーション2タイトルとして2001年7月19日に発売された。前作「IX」からはほぼ1年の間隔での発売となる。製作は「VII」「VIII」を担当した、北瀬佳範氏が統括する通称「北瀬チーム」。原点回帰を謳った前作とはガラリと趣向を変え、最新鋭の技術と演出を用い、キャラクターデザインも野村哲也氏を起用して「新たなFF」を前面にアピール。結果としてPS2のプラットフォームで、国内200万枚以上の売り上げを達成した。また、この「X」で、「VII」「VIII」から続く「北瀬チーム」の持ち味も確固たるものとなった。

 「X」の当初のコンセプトは「アジアンテイスト」。製品版は結果としていろいろな要素を含んだものにはなったが、「VII」「VIII」とは明らかに方向性の異なる、新たなFFの世界観の構築に成功していると言っていいだろう。もっとも「アジアンテイスト」を主軸として開発を進めたわけではなく、各担当者(シナリオ、デザイン、美術)が最初に持ち寄ったものがたまたまそれっぽかった、という偶然があってのことらしい。この時点ですでにFFが「XII」まで発表されており、「XI」がオンライン仕様となっていたこともあって、北瀬氏が目指したのは「オフラインRPGの、現時点での最高傑作を作ろう」ということだったようだ。

 システム面では通常の「レベル」を廃し、プレイヤーによるキャラの育成がより重要となる「スフィア盤」を採用。育て方によってはプレイヤーキャラのHPや敵に与えるダメージが5ケタに達する「限界突破」も話題となった。また、基本的にキャラクターのほとんどにボイスを採用したことで、これまでのFFになかった「声での表現」が可能になったことも大きな変化。リアルなモデリングのポリゴンキャラクターが感情を露わにして「しゃべる」様子からは、時として生きているかのような生々しさをも感じ取ることができた。

 音楽面では、FFサウンドに新たな血が加わったことが最も大きい。「IX」製作時点で「さらなるシリーズの発展のためには一人でやるのは限界。新たな世代を入れていかなければ」と感じていたという植松伸夫氏は今回、浜渦正志氏(チョコボの不思議なダンジョン、サガフロンティア2など)・仲野順也氏(アナザーマインド、デュープリズムなど)というスクウェアサウンズの後輩を2名招き入れた。結果として楽曲の幅が広がり、これまでのFFにはなかったタイプの楽曲も多数採用されることになり、作品としては大成功となった。

 おおまかな楽曲の分担は、植松氏がメインテーマやキャラクターのテーマなど、メロディの立つものを担当し、浜渦氏・仲野氏がBGM的なものを担当したという。それについて植松氏は「僕が目立ちたいというわけではなくて」と述べ、「僕はメロディの立つ曲しか書けないから。構成で聞かせる曲を作れない。二人(浜渦・仲野両氏)は構成で聞かせる技量があるから」と説明している。今回、キャラクターが喋るようになったこともあり、さらにムービー以外の効果音もステレオとなった。そこに常にベタベタなメロディの曲がつくとしつこいという判断もあり、楽曲は「VII」「VIII」に増して「一歩引いた」ものにしている。場面によっては音楽が鳴らないことも少なくない。音楽以外の要素がより「語る」ようになったことで、ファミコン・スーファミの頃のようなベタベタなBGMによるは演出は不要になったということである。これについては植松氏は「こういう言い方はしたくないけど、今回の音楽の付け方はより映画的なんじゃないかな」というようなことを言っていた。

 「アジアンテイスト」という雰囲気を受け、主題歌は今回も日本語を採用。歌うは沖縄民謡の歌い手、RIKKI。今回は楽曲の完成よりも歌手の決定の方が先だったようだ。作曲は植松氏、編曲は浜口史郎氏によるゴールデンコンビ。そして作詞はシナリオライター野島一成氏が担当している。

ゲームをプレイして、音楽も楽しみましょう!
ゲーム原作 インターナショナル そして、サントラ テーマソングです

レビューの表中、作曲者/編曲者は○○/△△のように表記(同じ場合はひとつだけ表記)。
「植」は植松伸夫、「浜」は浜渦正志、「仲」は仲野順也、「史」は浜口史郎を現わしている(敬称略)。
サントラやネットで使われている記号の表示は個人的にわかりにくいので、あえてこのように表記させていただいた。

disc1        disc2        disc3        disc4


disc1

01 「全部話して
  おきたいんだ」
サントラの冒頭がこのようなセリフで始まるのも「X」ならでは。声の主はもちろん、ゲーム本編でティーダを演じている森田成一氏です。声優さんたちのデータはこちらを参照。
02 ザナルカンドにて ゲーム冒頭に流れる、ピアノソロによる美しく静かな楽曲。有名な話ですが、この曲はもともと「X」のために作られたものではないんです。フルート奏者・瀬尾和紀氏がリサイタルを開くにあたって作曲を依頼された植松氏が、その時に出したアイデアの断片が残っていたもの。その時は完成しきらないまま、「リサイタルには悲しすぎるかな」ということでボツにしたそうですが、今回「X」の開発にあたって制作から曲を急かされた植松氏は「とりあえず出しとけ〜」という感じで、この曲をアレンジし直した。それを、制作側がオープニングにあててみたところ、「バッチリ!」となり、メインテーマ級の扱いを受ける楽曲にまでなってしまった……らしいですね。植松氏としては「そういう作り方をした曲がこんなことになって申し訳ない」と思う反面、「でもあの時、開発が遅れぎみで沈んでた開発チームが勢いを取り戻した」こともあって、一番のお気に入りだということです。

個人的にめちゃくちゃ涙腺にクるメロなのですが、フルートバージョンも聴いてみたいですねー。

なお、ピアノの演奏は森陽子氏。つまり、いわゆる内蔵音源ではありません。ただ、このバージョンになったのは開発終盤も近かったようで、それまでは植松氏手弾きのものが入っていたようです。う、聞きたい(笑)。
03 プレリュード テクノっぽいプレリュード。ゲーム開始して間も無くこれが聞こえてきた時には、「また新しいFFが始まったんだ〜」とワクワクしたものです。ここのところ扱いが悪かった「プレリュード」ですが、ここにきて復活!という感じですか。スフィア盤のチュートリアルでも流れました。リミックスは野田博郷という方がされているようです。序盤のシーケンスとベースだけで「プレリュード」とわかりますネ。言ってみれば「F.F.MIX」のプレリュードに似ている感じもします。

ちなみに「プレリュード」は、かつて「FFI」製作中、ディレクターの坂口博信氏から「ここ、曲が必要になったから急いでよろしく」と言われた植松氏が、10分ぐらいで作ったということ。それが今や「FF」の代表曲として、毎回テーマみたいに流れることには、やっぱり「申し訳無いなあ」と思うこともあるそうな。
04 ティーダのテーマ ブリッツスタジアムに向かうところで流れる楽曲です。シーンにはマッチしていたと思うのですが、やっぱりこれもサントラで「ティーダのテーマだったのか」と気付くパターン。いや、後々のティーダを知っていればいいんですが、予備知識なしでファーストプレイ始めた人にはわからないでしょ、ティーダのキャラっぽくないから。このあたりはゲーム中でもインパクトのある曲が続くので、残念ながらこの曲の印象が薄いものになっています。頭のファンファーレっぽいところは好き。

なお、ティーダのテーマは当初は「ブリッツに賭けた男達」だったそうな。
05 Otherworld これですよこれ!賛否両論になるかと思えば、意外とユーザーはすんなりと受け入れていたようです。私はもう、大好き!FFでこんな音楽聴けると思わなかったから、余計に。「X」でどのように序盤のインパクトを作るか思案していた植松氏に、スタッフが「プロレスの入場曲みたいな、激しいロックとかかけたらかっこいいんじゃないですか」と言ったのがきっかけとか。さらに当初は、この曲がゲーム開始直後から流れる案もあったとか。スタッフの中には「FFのイメージが壊れる」ことを危惧していた人もいたみたいですが、いらぬ心配だったようですねえ。

ユーザーの中でも特に音楽ファンの間では、この曲を「あれは浜渦だろう」「いいや、仲野だ」という議論も交わされましたが、明らかに植松氏でしょう、コレは。植松氏としては、「ファンはRPGにはオーケストラを求めてる」という思い込みから、ずっとオーケストラサウンドを基調としたアレンジを心掛けてきたわけですが、もともと植松氏はロックから音楽に入っている人。「そろそろ疲れちゃったし、もう長いことやってるから、そろそろ好きにやらせてもらってもいいかなって」と、この曲を作ったという。それについては「ほんの少しだけ、本音を出しました」と。

作詞は「IX」の主題歌「Melodies Of Life」の英訳も担当したアレクサンダー O.スミス。迫力ある吐き捨てデスボーカルは、バンド「XtillidieX」のビル・ミュール。なんとスクウェアのスタッフが飲み屋で知り合い、植松氏に紹介したんだとか。

ちなみに、この曲はオープニングのムービーのほかにゲーム中、非常に重要な場面でもう一度使用されています。これにはやられた!っていう感じでグーですよ。そちらの方はCDとはちょっと鳴り方というか、音源が異なっています。
06 急げ!! ティンパニとスネアが打ち鳴らし、弦とシーケンスが緊迫感を煽る、典型的な焦らし楽曲です。ゲーム中では序盤、かなり長く聴くことになります。同じような楽曲を植松氏が作ったものとは、リズム隊の構成や音符の並びに違いがあって興味深いですね。特に主となるメロディが無いことが決定的な相違でしょう。植松氏の場合、こういう曲でもわりとメロのようなものが付きますから。

インターナショナル版での「盗まれた祈り子の洞窟」における、ダークようじんぼうとの5連戦の間では、イベントが終了するまでずっと流れ続けます。
07 これはお前の物語だ ティーダがアーロンによって異世界に連れていかれる一連のムービー部分の曲。すでに「アーロンのテーマ」のアレンジになっています。アーロンのテーマが出て来るのはもっと先ですが。それにしてもこのシーンのムービーは迫力ありましたねえ。ちなみに内蔵音源によるリアルタイム再生ではないようです。なぜかちゃんとスタジオでレコーディングされています。

このシーンのムービーは開発終盤に作られたようですから、ここにこの曲がきたのかもしれませんね。
08 不気味 これはもう植松氏の言うところの「環境音」ってところでしょうね。いきなり見知らぬ場所に連れてこられて、周りには誰もいない。そんな状況にうまくマッチしています。最初は「海の遺跡」となっていますが、つまりバージ=エボン寺院なわけで、恐いボーカリーズなども入っています。持続しっ放しのストリングスとベース、そしてアナログシンセで作ったような風っぽい音が非常に効果的。
09 ノーマルバトル 通常戦闘の曲です。イントロは3/4拍子なんですね。さすがにFF伝統の「イントロ」はなくなりましたが、まさに植松戦闘音楽!といった匂いを持っています。ベース、ハイハット、ライドシンバルから音の定位に至るまで、やっぱりFFの戦闘音楽なんですよ。ブラスの音の安っぽさは狙いなのかな……。

それぞれの音色はわりと軽めで、そのためか「緊張感がない」と言われることも。実際、開発中に各開発部署に置かれた「目安箱(匿名で、他の部署などに宛てた注文や不満を投書できる)」には、この戦闘曲に対する文句がさんざん投書され、ついには制作が植松氏のところへ「作り直して下さい」とやって来たらしいのですが、植松氏は逆に「いや、これでいかせてください」とお願いしたとか。FFの音楽のことは俺が一番わかってる!そんな自信が植松氏にはあったのでしょうか。

ちなみに、訓練所での「すべてを超えし者」との戦闘でさえこの曲なのはいかがなものかと。あれぐらいはボス戦のBGにしてほしかったなあ。インターナショナル版におけるダーク召喚獣との戦闘も、一部を除いてこの曲が流れます。
10 勝利のファンファーレ おなじみ、ファンファーレです。今回はずいぶんときらびやかに、よりファンファーレっぽくなりました。植松氏が毎回ファンファーレを微妙に変えるのは、「自分の中でまだ完成してないっていうのがあるから、基本は同じでも中の和音とかをいじり続けているわけです」とのこと。特に最近のFFでは冒頭のファンファーレ部分もずいぶんとマイナーチェンジを繰り返しています。
11 ゲームオーバー チェンバロで奏でる「素敵だね」のアレンジ。つまり、ゲームオーバーになるといち早く「素敵だね」のアレンジが聴けるわけです。やっと「プレリュード」がゲームオーバーMEからお役御免になりました。

ちなみに、最初聴いた時はちょっと「イデア?」とか思いませんでした?
12 夢も希望もありません 海の遺跡の探索中にかかる曲です。非常に植松氏っぽくて好感が持てますね。ちなみに曲のタイトルはだいたいが作曲者が自分で付けるそうで、そんなところからも各作曲者の個性を感じることもできます。このタイトルなんか、とっても植松氏っぽいんだけど。
13 暗躍 なんか別のゲームの音楽のような気がしてきます。3人共作の効果が早くも現われているのでしょうか?じわじわ〜っと音量が上下するストリングスがなんとも恐げ。3/4ですね。
14 海底遺跡 これは完全に環境音というか、ほぼSEに近い背景音。もろ水の中、という感じの音色がいろいろ入っています。冒頭のソナーみたいな音もそうですが、左右にパンニングされている泡のような音色も効果大。重低音も効いてます。もし将来的にゲームの楽曲もサラウンドになるようなことがあるのなら、こういう曲こそサラウンドにしてほしいですね。
15 チイはアルベド族 曲タイトルの「チイ」はアルベド語。「キミはアルベド族」となります。リュックのテーマのアレンジになっています(これも早いな〜)。ティーダとリュックがサルベージ船で会話するシーン一連で流れます。
16 敵襲 いわゆるボス戦の音楽です。特にシームレスバトルでかかることが多く、SEも合わさってのイントロは緊張感があってグーですね。これまでのFFのボス戦といったら「ロック」でしたが、個人的にはこういうテイストも大歓迎。どちらかと言えば「IX」のボス戦に近いテイストですね。逆に、本当の意味でのボス(たとえばシーモア)戦を際立たせるためには、中ボスはこれぐらいの方がいいんだ、と思います。あまりドハデな音色が鳴り響くわけでなく、さりげなく緊迫感を煽る編曲はお見事です。後半のボイス音色が入るくだりはかなり好きです。

ユーザーからの指摘通りたしかに「FFっぽく」はないですけど、製作者が「新しいこと」を試みているなら、ユーザーにもそれを受け入れる、受け入れないまでも噛み砕く努力が必要です。頭ごなしに却下とするのはいかがなもんでしょ。

それにしても、こういう曲を植松氏が担当しなかったのは意外ですね。ちなみに仲野氏が「FFX」で最初に作った曲だということ。
17 ブリッツに賭けた男達 ティーダが初めてビサイド島に辿り着き、ワッカたちビサイド・オーラカと出会うシーンで流れる他、ルカ到着時のムービー、イベントでもかかります。勇ましいホルンが、期待感を盛り上げます。プレイヤーを元気付ける曲になっていますね。「ティーダのテーマ」のアレンジです。

ところで、今回メインキャラのうちワッカとキマリにはテーマ曲がないんです。過去の反省から無理に全員分作る必要はないという判断かもしれませんが、ちょっと寂しいですね。曲のタイトルからこれがワッカのテーマにも思えますが、場面から考えると違う気もしますし。植松氏としては、今回ボツにした曲が2〜3曲あるらしいのですが、案外それがワッカやキマリのテーマだったのでは?と邪推してみたりして。
18 ビサイド島 ビサイド島の街道BGです。浜渦氏の作曲ですが、個人的にはすごく好きなんですよね、この曲。薄い音なんですが、なんか聴かせるというか。浮遊感のあるシーケンスも癒される気がしますし、なによりピアノがいいじゃありませんか。グラフィック、雰囲気ともにビサイド島にピッタリ。街道BGではイチオシです。
19 スピラの情景 植/浜 わりと何ヶ所かで聴けるBGM。「素敵だね」のアコギバージョンです。演奏者のクレジットが無いところを見ると打ち込みのようですが、なんですかこのリアルさは!どういうサンプリングをしたらこうなるんだ?ピッキングやフレットノイズはおろか、ギターのボディを軽く叩くカウントの音まで「コツ、コツ、コツ」。微妙に音を外してるところなんかもあって、浜渦氏、凝りすぎ!っていうか素晴らしいです。二人のギタリストが腰掛けながら演奏している姿が目に浮かびそう。う〜ん、何度聴いても生演奏に聞こえる……脱帽。ボディの鳴りまで再現した音色も秀逸。何分でも聴いていられます。
20 祈りの歌 植/浜 今回、非常に重要なポジションにある一連の「祈りの歌」。当初は秘密とされていた謎かけも解禁になったので知っている人も多いでしょうが、念の為。歌詞はそのままだと「いえゆい のぼめの れんみり よじゅよご はさてかなえ くたまえ」ですが、これを
じゅ
とし、これを4字ずつ縦に読んでいきます。まあ並ばせ方の法則にはちょっと苦しまぎれもある気がしますが、それに従うと「祈れよ エボン=ジュ 夢見よ 祈り子 果てなく 栄えたまえ」となるのです。これは植松氏が考案したものではなく、シナリオの野島一成氏が考えたものだとか。

「祈りの歌」一連は植松氏が作曲をし、編曲を浜渦氏に一任していますが、制作時には浜渦氏はこの仕掛けを聞かされていなかったらしく、「ワケがわからずアレンジに苦労しました」。

ちなみにコーラスは「VII」「VIII」の時と同様、浜渦氏の声楽科仲間が担当しています。そんなことからもアレンジが浜渦氏に任されたのではないでしょうか(浜渦氏は植松氏よりもはるかに専門的な音楽知識を備えていることもある。実は浜渦氏はあの浜口史郎氏の後輩なんだそうです)。
21 幻想 透き通るような音色で構成された楽曲。とても美しいです。メロディがないようで、あるような。まさに幻想的な雰囲気を持っています。「氷」を連想させますね。クリスタルな雰囲気もありますが、今作において「クリスタル」はないでしょう。マカラーニャ湖などで使用されています。

また、付録DVDのスタッフ・キャストインタビューのバックにも流れていましたね。
22 試練の間 多くのプレイヤーがだいぶ長い間聴かされたであろうBG。この間抜け、コミカルとも思える楽曲の雰囲気が、ますます試練を辛く、イライラさせるものにしています。なんか聴いていてダル〜くなってきますね。しかし、このバックに流れているお経のようなボイスはまずテレビでは聞こえないと思われます(このお経が何と言っているかは、植松氏も知らないそうで)。それにしても植松氏は鐘の音が好きだなあ。
23 祈りの歌
〜ヴァルファーレ
植/浜 「祈りの歌」は召喚獣ごとにアレンジが変わっています。主に男性か女性がソロで歌っているか、複数で歌っているかですが、これを聴くとヴァルファーレはメスなんでしょうか?そもそも、召喚獣に性別ってあるのかな?
24 召喚 ロード画面で流れる曲との印象が強いのですが、なぜに「召喚」なのでしょうか。プレイヤーをゲーム世界に召喚するってこと?それともプレイヤーがティーダたちを召喚するってこと?

実はビサイド村でユウナが初めて召喚獣を呼び出すイベントで、ちらっと流れてます。
25 大召喚士の娘 うお、「FFVII」ぽいイントロ、と思ったら、ゆっくりなのでわかりにくいかもしれませんが「素敵だね」のアレンジになっています。メインはピチカート音色です。さりげない、音数の少ない曲。
26 おやすみ 宿泊、休憩時のMEです。

disc2

01 ユウナのテーマ なんか「FFVIII」のウインヒルとか、ラグナがらみのイベントで流れそうなアレンジによる「素敵だね」。こういうアレンジで聴くと、「素敵だね」の後半ってちょっと「エアリスのテーマ」に似てますね。非常に美しく、癒しの要素をたっぷりと含んでいて、長く聴いていたい曲。ユウナのテーマが「素敵だね」のアレンジだということは、非常に順当と言うか正統です。
02 萌動 植/仲 こちらは「ザナルカンドにて」のアレンジ。「X」のもうひとつのメインテーマと言うか、「素敵だね」「祈りの歌」に並ぶ、重要な楽曲ですね。もうこのアレンジは切なさがいっぱいでグッときます。特にゲームを一通り終わらせてから聴くと効果大!もともとのメロディの良さももちろんのこと、仲野氏のアレンジが巧みすぎます。連絡船などでも聴くことができますが、やはりサントラで聴いてほしい!

ちなみに「もえどう」じゃないですよ。「ほうどう」です。
03 異界送り 植/浜 キーリカでの、ユウナによる異界送りムービーで流れるバージョンです。やや雅楽のテイストも入っていて、非常にアジアンな雰囲気になっています。きっと外国人に受けが良ろしいかと思われます。もちろん、私も非常に好きなんです。パーカッションの配置も実にウマイ。
04 嵐の前の静けさ キーリカの森やマカラーニャの森など、「森」のテーマですね。個人的にはマカラーニャの森の、あのキラキラとした感じにとても合っていると思います。とてもダンジョンの中とは思えない、和ませる曲調は植松氏の十八番。ゆえに敵とエンカウントした時のビックリ度も高くなるわけです。計算ずくなら完敗です。アコースティックギターとベル系音色の組み合わせは癒しの効果いっぱい。
05 祈りの歌
〜イフリート
植/浜 ま、イフリートは男声でしょう。当然。それにしても力強い歌声です。
06 ルカ 「以前は他のメーカー(コナミ)でアーケードの曲を作っていたのですが、ゲームセンターに置くものとなると、とにかく派手で目立つ音作りが要求されるので、作り続けるのは辛かった。でも今は家庭でじっくり聴いてもらえる曲を作れるので、そういう曲を作ることを念頭に置いてます」だいたいこんなことを仲野氏は言ってました(この話し、くわしくはサントラのライナーでも読めます)。この曲は見事にそんな感じになっていると思います。決して派手ではありませんが、しっかり聴かせてくれるじゃありませんか!ちなみに仲野氏自身もこの曲はかなりお気に入りだとか。
07 マイカ総老師歓迎 こちらは一転、派手なファンファーレ調の楽曲。最初、てっきり植松氏だと思い込んでしまいました。イントロに少し「祈りの歌」が盛り込まれているわけです。テーマによる印象付けは今回もしっかりと行われています。
08 不撓の決意 最も印象的なのは、ブリッツボールの作戦画面。あとはエボンドームなどでも流れています。これぞ植松氏の言う「構成だけで聴かせられる音楽」でしょう。主たるメロを持たせずにここまで緊迫感を煽るのは並大抵のことではありません。あ、「不撓」は「ふとう」と読みます。
09 The Splendid
  Performance
いかにも浜渦氏ですが、ゲーム本編においてはあまり印象の無い曲でした。
10 対峙 キーリカ寺院でルカ・ゴワーズの面々と対面した時が初出。あとはルカ・ゴワーズとの決勝戦前に流れる曲。なんか異様に恐いです。ギターとベースがズシズシいってますね。ゲーム全体のボリュームから考えると、流れるのがあまりに一瞬でもったいないです。もうちょっと流用できそうだけど。後ろの方でSE的に挿入されている、サンプリングの「ギュイ〜ン」というディストーションギターがいい感じ。ギター打ち込みの参考になりますネ。あまりにツボをついた打ち込みテクニック、浜渦氏ってギターも弾けるんでしょうか。
11 Blitz Off イントロの音色が水中っぽくてグー。ギターもイイ音しています。ループと思われるビッグビート風のリズムもスピード感ありますね。曲の展開も飽きさせず、長く聴いていられます。これも今までのFFにはなかった色と言っていいでしょう。若い感性がFFという作品に良い効果を与えているようです。ミニゲームのBGというあたりがちともったいないですが。FFにこんな感じのバトル音楽があってもいいですよね。
12 アーロンのテーマ ここでやっと出て来るアーロンのテーマ。そのデザインもあってか、やや和風なテイストを感じさせる楽曲になっています。イントロはロックバラードですけど……。ただ、印象的な使われ方をしている場面がほとんどなかったのは非常に惜しいです。エンディングはいい感じでしたが、あまりにも短かったですし……。ちょこちょこ流れてはいるんですが、いっつも流れたと思ったらわりと短く終わってしまう。サントラでやっと曲の全貌が聴けました。

ところで、ピコピコシーケンスは絶対必要だったのですか?
13 ミヘン街道 わりと曲を先に作って、それを合うシーンに当てはめていくこともあるという、FFの音楽制作。すべてを画面を見てから作っているわけではないんです。この曲がそうだとは言いませんが、「どんな曲を作ってもどこかに当てはめられる不思議な許容量が、FFにはあるよね」とは植松氏の談。この曲はいかにも植松氏な曲です。妙に時代劇っぽいのも、やはりアジアンテイストだから?なんかお地蔵さんが並んでいる街道でオニギリ食べていそうな……。あ、この曲、「IX」のク族の沼で使っても違和感ないかも。ビョンビョンビョンって、カエルつかまえる。

あとは、連絡船リキ号の動力室でちらっと流れます。
14 ブラスdeチョコボ 今回は何のジャンルでくるのかな、と思ったら「ブラス」!そうきたか。ブラスの音色はたぶんこの曲専用の音色ですね(他の曲では使わないでしょう)。ドラムはたぶん本当に叩けるように考えてあるように思います。楽曲はチョコボに搭乗できるミヘン街道、ナギ平原ほか、チョコボ関係のミニゲームでも聴くことができます。

そういえばチョコボの鳴き声も毎回変わるFF。「X」は「ふわ〜い」と、なんか気の抜ける声でしたね。
15 旅行公司 音数の少ない、静かな曲。各地の旅行公司で流れます。あんまり理解してもらえないかもしれませんが、個人的にはこの曲、「祈りの歌」のアレンジに聞こえてしまうんですよ。なんでだろ。

たまに挿入される手拍子(?)の音がミョーに生々しくて、ハッとさせられます。
16 通行を許可します シーモアのテーマのアレンジが、テーマよりも早く登場。なんか今回、このパターン多いですよね。狙ってるのかな?
17 シーモアのテーマ こちらがシーモアのテーマのオリジナル。イントロの弦が恐いですね〜。どことなく「プレリュード」を思わせるハープが入ってからがメイン。だんだんと曲の構成要素が増えていきます。今回の敵役のテーマはわりとあっさりとしてますね。
18 宵闇 プレイヤーを不安にさせる曲ですねえ。重々しいというか。ほとんどMEです。これを曲と言ってしまってもいいんでしょうか。ほんとに背景BGに徹しています。

後に「シン」の体内・悪夢の中心にも流用されています。
19 ジョゼ寺院 これは「作っちゃったから入れてみた」っぽい。聴いてすぐに植松氏だとわかってしまいました。恐い曲なんだか、マヌケな曲なんだかはっきりしてくれ〜。
20 祈りの歌
〜イクシオン
植/浜 これも男声。イクシオンはオスなのね。
21 シパーフ乗るぅ? 題名の通り、幻光河で聴くことができます。他では多分流れません。また、ゲーム終盤では流れなくなります(別の曲が流れます)。問題は、この曲がシパーフのテーマなのか、シパーフを操るハイペロ族のテーマってこと(え?どうでもいい?)。
22 リュックのテーマ ここでリュックのテーマの本チャンがやっと登場。幼い女の子っぽい曲調ですが、リュックって年よりは大人っぽく見えるんだよな……。いえ、リュックのテーマだと気付かなかった言い訳ではありません。
23 グアドサラム すごいイントロ。低音しかありません……。これほど「一歩引く」必要があったのか……。ゲーム音楽としてはいいですが、ここまでくるとサントラで聴いてもあんまり楽しくないですね。1分30秒ぐらいのところから、やっと曲らしくなってきますが……。たぶん「何もないと寂しいから」ということなんでしょうが、ここまで主張しないのであれば、曲そのものがいらないのかも。「VIII」における「シュミ族の村」みたいに、ベースノイズだけでもいいのでは?

disc3

01 雷平原 リュックがギャーギャーわめいているというのに、この楽しげな曲。ミスマッチを狙ったのなら大成功ですね。他の仲間たちはただあきれるばかり、みたいな。イントロ及び曲の後ろに、メトロノームかもしくは柱時計のような効果音が入っているのですが、これ、連続200回雷避けの際に非常にジャマでした(笑)。狙ったのならこれも大成功ですね。でも、普通なら暗くしてしまいそうな雷平原の曲をこのようにしてくれたおかげか、ちょっと癒されたのも事実でしょう。
02 ジェクトのテーマ アコースティックギターによる曲ですが、「スピラの情景」に比べてやや打ち込みっぽい感じがしますよね。フレットノイズもちょっとわざとらしいし……。でも、これちゃんと演奏してるんですよ……(ちなみにあの「武蔵伝」作曲の関戸剛氏も弾いてます)。う〜ん、打ち込みと生演奏の境目がわからなくなってきたゾ……。あ、弾いてもらったものをフレーズとしてサンプリングして打ち込んでいる?そんなことしないか……う〜ん。
03 マカラーニャの森 マカラーニャの森とは言っても、ティーダとユウナがアレした泉(聖なる泉)の方でのみ流れます。大部分のマカラーニャの森ではキーリカ同様「嵐の前の静けさ」がかかりますので、念の為。しかし、浜渦氏だとは思わなかったです、はい。
04 霧海 「X」における仲野氏のいかにもなカラー。海の遺跡で流れる「不気味」と似た雰囲気のある曲です。動きまわるパーカッションが落ち着き無くてイイです。
05 寺院楽隊 こちらもパーカッションと持続音をメインに構成されたBG。シンプルです。
06 シーモアの野望 もちろんシーモアのテーマのアレンジです。こちらの方がより厚みがあって、個人的には好きですね。テーマでは弦で奏でていたフレーズをディストーションギターが受け持っている点もグー。シナリオ上ではここでシーモアを初めて明確に敵として位置付けているという点でも、このテーマのインパクトは大事ですね。こっちをテーマにしてもよかったのに。ちなみに戦闘に突入してもずっと流れ続けます。こういうドラムが入ると、やや「IX」のクジャのテーマも感じさせてくれますな。
07 祈りの歌
〜シヴァ
植/浜 女声ソロ。そうか、シヴァは女性ですか(見りゃわかる)。
08 迫りくる者たち マカラーニャ寺院で反逆者とされ、寺院を脱出する際のBG。後ろから追って来るグアド・ガードが不気味です。その後、マカラーニャ湖まで流れ続けていました。あとはゲーム終盤、「シン」の体内でも使われています。この場合は「シン」にとってティーダたちが「迫りくる者たち」だったんですね。曲そのものはループのリズムとシーケンスによる、静かな中にも緊迫感のある、良い意味での「背景音楽」です。
09 灼熱の砂漠 これはもうタイトルまんま!水……水をくれ……。目の前の景色がぼやけて見えそうです。さりげなくシタールのような音色も入れてあるあたり、ウマイですね。アナタは右へ行きましたか?それとも左へ行きましたか?
10 危機 アルベドのホームでずうーっと流れる曲です。ターミネーターに追われているのか?という、ブラッド・フィーデルのような曲。これも今までのFFにはなかった色、ですね。どちらかと言うと、バイオハザードとかそっち系の、ハリウッド調焦らし音楽になってます。

ちなみにサントラには入ってないのですが、ゲーム中でのアルベドホームではこの曲といっしょにえんえんとボイスのようなSEが繰り返されていたんですけど、どうもそれが「4時4分、4時4分」に聞こえてしかたがなかった記憶があります。

他にもアルベドがらみのイベントにてよく流れました。マカラーニャ湖におけるアルベド襲来とか。ミヘン・セッションでも流れてました。
11 明かされた真実 はい、スタッフサービスです」。上司に恵まれなかったら……。というネタはもう「IX」のレビューでやりましたので……。えーっと、「ザナルカンドにて」のアレンジです。ピアノであるオリジナルとはまた違った味付けの弦楽バージョン、とでも言いましょうか。「明かされた真実」のタイトル通り、キャラクターの衝撃を見事に表しています。最初に流れるのは、アルベドホームにてユウナの旅についての真実を知ったティーダが、「知らなかったの……俺だけかよ!」と感情を露わにするシーン。それ以後はわりとあちこちで、というより「泣き」のシーンでよく使われていました。

ちなみに「スタッフサービス」のCMでかかるクラシック曲はチャイコフスキーの「弦楽セレナード・ハ長調」。チャイコフスキーは植松氏のお気に入りの作曲家だけに、うーん、なるほど……。
12 発進 飛空艇のブリッジで流れますね。シナリオ的にはこれでいいんでしょうが、モンスターの捕獲やアイテム集めなど、ミニゲームをやり始めるとややウルサく感じます。「いや、そんな急いでないから」って。曲そのものはいいとして、もうちょっとボリュームを抑えてほしかったですね。この曲がガンガン鳴ってて、シドが「よーし!発進だあっ!」……うるせー、って。
13 結婚式 このへんのイベント一連は浜渦氏の独壇場。シーモアとユウナの結婚式でうっすら〜と流れる楽曲です。ユウナの心境を描写しているのか、結婚式というよりはお葬式のよう。
14 襲撃 ティーダたちがユウナ奪回!のためにベベルへ乗り込むシーンで流れる曲。しっかりと「発進」のアレンジになっています。こういう曲なのにピアノをフィーチャーしてくれるあたりが浜渦氏。タンバリンが非常に立っています。薄い弦も邪魔をせず、曲に良い味を付与していますね。

ゲーム終盤、一部の戦闘シーンでも流れます。
15 悲劇 結婚式の楽曲を引き継ぐようなトーンの曲。シーモアとユウナのアレのムービーで流れていた曲です。ぐっと拳を震わせて耐えるユウナがけなげですね……。やっぱファーストチッスだったのですか?ティーダ君も「そ……それはオレの役目なのにぃ〜っ!」と悔しさいっぱいの表情で。
16 私は飛べる こちらも「結婚式」、「悲劇」一連の楽曲と捉えていいでしょう。途中からムービーにシンクロして神々しく盛り上がります。ヴァルファーレがバサーって助けに来ますが、あれ大半のプレイヤーが「何か召喚獣が来るんだろ」と予測していたとかいないとか。
17 浄罪の路 ちょっと「ザナルカンドにて」の匂いもするピアノ曲です。あーっ、あっちの宝箱取りたいのに、この台座はどうすれば動くわけ?といった、プレイヤーの苛立ち・焦りを表現した曲……ではないですね、やっぱり。
18 祈りの歌
〜バハムート
植/浜 バハムートはオス?メス?えっ、子供?ってことで、どちらかというと祈り子のテーマ。
19 審判の時 基本的には「祈りの歌」のアレンジだと思えます。どこか恐怖感・緊迫感のある秀逸なアレンジ。かと思うと「素敵だね」を思わせるフレーズもあったり。これだけ散りばめられると「あれ、何の曲だっけ」と混乱してきます。
20 父を殺めた男 シーモアのテーマのアレンジ。タイトルがズバリでわかりやすいです。曲聴く前にどの曲かわかっちゃいましたもん。今までにいくつか出てきたシーモアのアレンジの中でも、最も悪そうなイメージ出てます。
21 素敵だね 植/史 言うまでもなく、本作の主題歌。これまでアレンジのインストはいくつもありましたが、ボーカル入りはあのムービーで初めて流れます。正統派・植松節バラード。ちなみにこちらは「サントラバージョン」というか、マキシシングルのものとは間奏部分に違いがあり、ネット上でも「あのフレーズはどこ?」と話題になってましたね。やはりバイオリンはこの楽曲のキモです。

歌うはRIKKI(本名・中野律紀)。奄美の歌姫と言われる、沖縄民謡の歌い手さんです。ファルセットを効果的に使いこなす、独特の歌唱法を持った個性的な歌唱が好印象ですね。実はこれまでに何枚ものアルバムを出しています。代表的なのは「Miss You Amami」かな。

今回はこれまでと違って、歌手が先に決定。楽曲はそのRIKKIの声のイメージで植松氏が後から作ったそうです。ちなみに植松氏は「海外版でもオリジナルを使って、字幕を乗せる予定。こぶしもウリのひとつですから」というようなことを言っていました。

disc4

01 ユウナの決意 植/仲 ナギ平原でずっと流れているので、街道BGと思ってしまうんですが、実は「ユウナの決意」なんですね。ティーダとのアレから一夜明けて、ナギ平原に足を踏み入れた時のイベントシーン、ユウナが寝転ぶところ。あれを指したタイトルのようです。個人的にはこの曲と「ブラス・de・チョコボ」はワンセットなんですが……。

テレビで聴くとわからないんですが、サントラで聴くと後ろの方で鳴ってるパッド系の音色が、どうにも不協和音に聞こえて気持ち悪いんですよ。なんか入っててほしくない、気持ちの悪い音が混じってるような気がします。テレビで聴くと癒され、サントラで聴くと不愉快・・・・・・不思議な曲です。
02 ルールーのテーマ ギンネムがらみのイベントにて。実は旅の大ベテランだったルールーのテーマ。この右の方で鳴っている、メロを担当しているフルートっぽい音色はまちがいなくメロトロンでしょう。サンプリングなのか、それともスクウェアサウンズ(もしくは植松氏個人が)メロトロン買ったのでしょうか?そう言えばけっこう「IX」でも使ってましたよね。

メロトロンというのは、まあ古典的なサンプラーというか。中にたくさんのテープレコーダーのヘッドのようなものがありまして、で、さらに楽器の音が入ったテープがあるわけです。鍵盤を押すと、そのテープがヘッドにこすれて楽器の音が出る。もちろんテープを変えれば別の楽器の音も出せると。ね。原始的なサンプラーでしょ?まあフルート系で有名なのは、ビートルズの「ストロベリー・フィルズ・フォーエバー」といったところでしょうか。植松氏があのへんの音にこだわりを持つのも何ら不思議ではないですね。

ちなみにこの楽曲そのものの印象はあまりないです。
03 勇ましく進め 「ハンパじゃない強さのモンスターたちに、勇ましく挑め」ってことでしょうか。モンスター訓練場のテーマと言っていいでしょう。曲調がとっても植松氏チック。他にどこかで鳴ったっけ?すべてを超えし者を倒すまでやった私としては、もう訓練場の曲にしか思えませんが、かといって専用に一曲作るほどのものではないような。
04 祈りの歌
〜ようじんぼう
植/浜 もっと和風でも面白かったかも。そういえばようじんぼうを召喚した時の、あの和風なME、扱いはやはりSEなのでしょうね。聴きたかったのに。
05 極北の民 これはマップ、シチュエーションにピッタリきてましたね。雪山を行く!って感じ。雪山でひっそりと暮らすロンゾという民族そのものさえも現わしているように聞こえます。バグパイプのような音色が入っているのも、民族色があってグー。さらに、そろそろ旅も終わりが近い、といったキャラクターたちの複雑な心境すら描き出している、というのは深読みしすぎ?

ゲーム序盤、キマリをからかいにくるビランとエンケのイベントシーンでも使用。
06 祈りの歌
〜ロンゾ族
植/浜 勝利したキマリを称え、ロンゾたちが歌ってくれる「祈りの歌」。
07 彷徨の炎 切なく、寂しげな曲です。けっこうあちこちのイベントシーンで鳴っていました。妙に心の中に響いてくる曲です。これといったメロディもないのに……。これが、植松氏の言っていた「構成で聴かせる」ってことなんでしょうか。楽器のセレクトが非常に巧妙です。ミヘン・セッション失敗後にジョゼ街道でずっと鳴っていました。廃墟となったザナルカンドの遠景にもこれ以上ないってほどにハマってましたね。
08 いつか終わる夢 植/浜 「素敵だね」のアレンジ。ザナルカンドのフリーウェイ跡で、イベントシーンの後から戦闘中に至るまで、えんえんと流れていたためにとっても印象に残っている曲です。キャラたちの複雑な心境、ティーダのとまどい、そしてみんなの覚悟。同時に「終末が近い」ことを予感するプレイヤー。様々な感情−想い−が現われているんだと思います。けっしてアオらない曲調も素晴らしいです。

ミヘン・セッション失敗後、たまらなくなってシンを追うティーダのイベントシーンなどでも使われていました。
09 祈りの歌
〜ユウナレスカ
植/浜 これはちょっと恐いバージョンの「祈りの歌」。こんなのが背景に流れていて、こいつイイ奴のわけがないっていう。
10 挑戦 これはかなりお気に入りのバトル曲。サントラの位置としてはユウナレスカ戦ですが、他でもかかってます。シンのコケラ:ギイとのリターンマッチ〜ムービー一連や、シーモア終異体戦のほか、オメガ遺跡におけるオメガウェポンとの戦闘もコレです。

ユウナレスカ戦では、アーロンが「さあ、どうする?!」ってアオりまくるイベントシーンから、戦闘まで一気に聴かせます(絵も凝ってましたね、このシーン)。イントロおよび曲中のディストーションギターがいい味出してるなあ。いろんな展開があって飽きさせない。新たな「FFサウンド」の方向性として、私は大歓迎ですね。植松氏ひとりでは決して出てこなかったでしょう、コレは。柱となるメロがないわりに、勢いと構成でグイグイと引っ張る。アリでしょう。

「魔天」つながりなのか、インターナショナル版でのダークバハムート戦もこの曲でした。
11 深淵の果てに オメガ遺跡のBG。なんかヘンなところに迷い込んでしまったぞ、というような。低い弦とピアノが前に出てますが、後ろの方でボイスのような不思議な音も鳴っています。「ファーイファーイファーイ」って。宝箱や隠し通路なんかもありましたねえ。とにかく私はマスタートンベリを捕まえるために、ずいぶんウロウロしましたとも。
12 暗澹 本当に仲野氏は難しい漢字が好きですねえ。ってことはどうでもよく、オメガ遺跡でアルテマウェポン後のマップで流れる曲です。「深淵の果てに」とはまたずいぶん異なる曲調で、ずっと持続し続ける高音のストリングスとパーカッションの構成がとっても仲野チック。
13 祈りの歌
〜スピラ
植/浜 さあ、みなさんごいっしょに!です。スピラの人ってみんな歌ウマイのね。しかも、これまでなかったフレーズまで。
14 死人(しびと)が笑う 「シーモアのテーマ」アレンジ。個人的にはこのフレーズを活かしたまま、戦闘に突入してほしかった。
15 シーモアバトル まず大前提として、ラスト周辺の戦闘曲は、植松氏・浜渦氏・仲野氏で一曲ずつ作ったということ。そして、最初から「この曲はどこの戦闘」と決めなかったこと。出来た曲を後からあてはめていったこと。こういったことがあって、シーモアバトルはこうなったわけです。個人的には、そんないきあたりばったりなことせずに、シーモアバトルはちゃんとシーモアのテーマをアレンジしてほしかった。

この曲はもろ植松節な戦闘ロックで、そのためかファン人気もけっこう高いのですが、「シーモアとのバトル曲」と言われたら個人的には「?」という感じ。せっかくここまでシーモアのテーマ、「祈りの曲」、「ザナルカンドにて」、「素敵だね」を使い分けて印象付けしてきたのに、なんでここでシーモアのテーマを使わないのかはなはだ疑問。まあ、シーモアはラスボスではないから、「流した」と言われればそれまでですが、あんまりですよ。コーラスとか入ってて、「どこに使われてもいけるでしょ」という半端な構成もちょっとね。
16 祈りの歌
〜アニマ
植/浜 アニマを入手していない人は聴いてない曲です。このイベント、シーモアがらみのけっこう重要なものなんですが、なぜか隠し。「隅々までやってね」ってことでしょうか。ライトユーザー突き放しの姿勢なのか?
17 召喚獣バトル 「祈りの歌」アレンジになっています。これは召喚獣バトルとして、まっとうな楽曲。「決めてなかった」というわりに、これは召喚獣バトルかラスボス戦しかありえない(シーモアじゃないでしょ)。仲野氏は植松氏から「祈りの歌を使ってね」とお願いされたそうですし。

楽曲そのものは、圧倒的なリズムとコーラスが主体の、あとはとにかくひたすら音のブ厚い「構成曲」。それにしても際立つメロディなしにここまで聴かせるのも凄いですね(「祈りの歌」のモチーフは別として)。映画のサントラとかに興味のない人には、単独で聴いたら何が良いのかわからない曲なんだろうな……。

インターナショナルにおけるデア・リヒター戦では、この曲が流れます。ん?デア・リヒターって召喚獣と関係あるのか?
18 決戦 「かつてない戦闘曲を作ろうと思った」。浜渦氏はこのようなことを念頭に作ったと言われています。すでにあらゆるジャンルやテクニックがやり尽くされた感のある「ラスボス戦音楽」で、何か今までにないことはできないかと……。そうしてできたのが、組曲のような雰囲気も併せ持つ、この重厚なオーケストラ曲。激しいリズムや早いテンポでアオるのではなく、楽曲重視で聴かせています。キャラクターたちの心境、覚悟、なによりティーダの秘めた想いとユウナの心境を考えると、この曲がとてつもなく響いてきます。一部に「祈りの歌」のモチーフが散りばめられていますが、特筆すべきはサンプリング音源で本格的なフルオケ調の曲にあえて挑戦しているところ。これだけやれていれば、満点でしょう。それにしても、本当に「決め打ちナシで」作ったの?

ちなみにインスピレーションはポーランドの作曲家・シマノフスキーから得たらしいのですが、残ってはいないとのこと。
19 Ending Theme 植/史 浜口史郎氏編曲による、フルオケエンディングムービー楽曲。まずは「祈りの歌」です。その後で「ザナルカンドにて」が出てきます。実はこれが、もともとフルート奏者・瀬尾和紀氏の依頼で作った「原曲」の構想に最も近いのかな、などと思ってみたりして。とにかくこの「ザナルカンドにて」は素直に好きです。楽曲単独で聴いてもいいのですが、ここはやっぱり画があってこそというか、合わせて作ってあるものだから。両方同時に堪能したいですね。ルカ・シアターでエンディングが見られないのは残念。
20 「思い出してください」 これはセリフのみ。ゲームのエンディングを再現したかのような構成は、サントラとしてもマル。声の主はもちろん、ユウナ役の青木真由子嬢。声優データはこちら
21 素敵だね
−オーケストラ・ヴァージョン−
植/史 フルオーケストラ伴奏による「素敵だね」。ゲームでは終わりも終わり、スタッフロールで流れます。そういえば、今回のスタッフロールはシンプルでしたね。あいかわらず、浜口氏のオーケストレーションは涙腺刺激しまくり。弱いんですよ、こういうストリングス。でも、ゲーム的にはここ、普通の「素敵だね」でも良かったような、そんな気もしますね。

で、ふと考えてみてください。今回、シリーズで初めて「ある楽曲」が姿を消しました。そう、シリーズ通してファンをゾクっとさせてきた、その名もズバリ「ファイナルファンタジー」がどこにもないのです。エンディングは、「祈りの歌」「ザナルカンドにて」の二大柱があって入る余地がなかったのか、そして「素敵だね」とは繋ぎようがなかったのか。新しい「FF」に向けた、過去との決別の意思表示か。真実は植松氏しか知り得ないわけですが、やっぱりなんか寂しいですね。

はみ出しコラム「語ってもよいですかな?」
 音楽に限らず、SE(効果音)も気合の入った「FFX」。今回は特に5.1chサラウンドについて話題になっているが、それは実はルカ・シアターで鑑賞できるムービーのSEのみ。通常のゲームでは、ステレオフォーマットと5.1フォーマットの切り替えにどうしてもタイムラグが生じ、音がぶつ切れになってしまう(だいたい3秒ほど途切れるらしい)。音のスムーズなつながりがテーマだった「FFX」のSEにおいてそれは好ましいことではなく、本編の5.1ch化は断念することになったという。

 ただし、今回からはムービー以外の効果音もステレオで鳴っている。これだけでも大きな変化と言えるだろう。ベースノイズがステレオで鳴れば、これまでより臨場感のある空間演出となるだろうし、魔法やエフェクトのSEは迫力が増し、音の定位による演出も可能になる。なにもサラウンドがすべてではないのだ。今後、そのタイムラグの解決法もしくは「ごまかしかた」が確立するまでは、ステレオ主体であることに変わりはないだろう。植松氏の発言に「PS2になって使えるチャンネルは倍に増えましたが、その分はすべて効果音にまわしたんです」というものがある。それも、森や海辺の自然音のざわめき、さりげない風などの空気音など、空間を演出するノイズのグレードアップに一役買っているということなのだ。

 が、サラウンドについては可能性がないわけではない。ハードの進化に伴い、いずれゲーム本編がすべてサラウンドとなる日もそう遠くないだろう。実は以前から、FFのサウンドチームは実験用に、ムービーのサラウンドバージョンを作ってきている(公開はされていない)。そして、とうとう「X」ではムービーがサラウンドになった。当然、内蔵音源による効果音のサラウンド化についても、その技術を日々蓄積しているはずだ。次の新ハードあたりでは、すべてがサラウンドとなったFFが実現するかもしれない。

 ちなみに、「X」のムービーにおけるサラウンドのミックスは、ソニーのエンジニアが担当している。技術者向けに行なわれたサラウンド講習会では、「X」のムービーを題材としてそのエンジニアによる解説も行なわれたようだ。その解説によれば、「セリフを基準として、周囲を決めていく」ことが大前提だとのこと。つまり、ゲームにボイスが入ったことは、そういった面(音楽や効果音の音量)にも影響しているのだ。これはステレオでも同じこと。これまではボイスがなかった分、音楽や効果音のレベルはさほど気にしなくてもよかった。が、ボイスが入ることで、そのボイスが聞こえなくなるようなことがあってはならず、より繊細なボリュームコントロールが必要となっているのである。

 これまでと同様、派手なSEと等しく、フォーリーなどのこまかい部分にも細心のこだわりを見せる「FFX」。例えばキャラクターの足音は、そのキャラがどんな服飾で、どんなアクセサリーを付けているかにまでこだわってフォーリーアーティストに依頼。リアルタイムゲーム中の足音も、その収録した生音を鳴らしている。即ち、キャラクターごとにすべて足音が違うのだ(どこまでユーザーが気付くか、という問題はあるが)。また、「シン」もキャラクターと考えると、「シン」の蠢く音もフォーリーと言えるだろうか。「シン」のウロコのようなものがごそごそと動く音は「まつぼっくり」で作っているそうだ。他にも雑巾を湿らせてグチョグチョいう音だとか、いわゆる効果音を作るという作業も当然行われている。何から何までデジタルで作業されているわけではなく、昔の「職人さん」のような音作りも欠かせないのだ。

関連CD

「FFX」予約特典サウンドディスク

予約特典CD

 一部のゲームショップで「FFX」のソフトを予約をすると特典としてもらえたCD。Otherworld(EDIT Version)、ザナルカンドにて(Gameshow Version)、ノーマルバトルの3曲を収録。特に顕著なのはミックスやマスタリングの違いから生じると思われる、サントラとの聞こえ方の違い。もっともサントラ未収録曲はなく、コレクターズアイテムとしての価値は高いが、音楽的には特に何があるわけでもない。ジャケットは及び盤面は、キャラクターデザイナーの野村哲也氏が書き下ろしている。ヘナ絵のユウナがかわいい(笑)。


image d'amour

 説明の必要がないほどの、定番癒し系コンピレーション。今回はエンニオ・モリコーネやジョン・ウィリアムス、はたまた葉加瀬太郎やゴンチチ、果てはクレモンティーヌやシャルロット・チャーチと並んで、我らが植松氏の「ザナルカンドにて」が収録された。今回収録されたバージョンはゲームでの音源ではなく、「ライブイマージュ」の音楽監督であるピアニスト、羽毛田丈史氏の演奏によるもの。ゲームとは別の解釈による表情の付けられた、原曲よりもややテンポの速い「ザナルカンドにて」、機会があったらぜひ聴いてみてほしい。きっと「ピアノコレクション」にも収録されるであろう「ザナルカンドにて」、演奏者による楽曲の表情の違いを聴き比べてみることも、音楽ファンの楽しみのひとつではないだろうか。


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2001 GAMERS EDEN

FF音楽のある意味集大成・そしてひとつの到達点。