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FINAL FANTASY IV MINIMUM ALBUM

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NTT出版/アメリカーナレコード  N09D-004   1991年   JASRAC表示:なし

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 「FFIV」のために作られた楽曲の中から、オリジナルサウンドトラックには収録されなかったアレンジバージョン、及びゲーム未使用曲を集めたミニアルバム。「ケルティックムーン」「ピアノコレクション」とは別にこのようなシングル盤も発売されていたのですから、当時のスクウェアがいかにFF音楽を売り出そうとしていたかがわかります。全作曲はもちろん植松伸夫氏(トラック6のみ、SNOW PRODUCTIONによるリミックス)。

 言ってみれば、ゲーム中で使われた曲は一切入っていないファンアイテムなのですが、アレンジバージョンを聴けばゲームでの冒険を昨日のことのように生々しく思い出すでしょうし、未使用曲からはゲームの製作過程が垣間見えてきます。そのようなことも、より深く「FFIV」を楽しむための一助になることは間違いありません。「IV」を愛してやまない人、好きであればあるほどに必聴のミニアルバムだと言えます。

 ところが、当然のことながら現在は廃盤となっており、通常のレコード店での入手は困難です。この現物そのものを欲するなら、ネットなどで中古通販やオークションをあたるしかないでしょう。しかし、救済作はあります。後にこのミニアルバムの全曲を収めた12cmシングル盤「F.F.MIX」が発売されているのです。こちらもメーカー的には廃盤ですが、まれにレコード店の棚に並んでいるのを見かけることがあります(ゲーム/アニメ専門のグッズショップは確率高し)。中古やオークションで購入するにしても、曲数と内容の面から見ても「F.F.MIX」の方がオトクです。


track1.オープニング(Prologue・・・) (アレンジ・ヴァージョン)
 曲の出だしを聴くと、スーファミ版とさほど変わり映えがしないようにも思えますが、音源はややゴージャスになっています。ただし外部シンセの音とも思えないので、「同時発音数の制約を取っ払ったゲーム音源」、即ちスーファミ音源にダウンコンバートする以前の環境によるものと思われます。しかし、中盤(1分46秒以降)からのピアノとボーカリーズを聴けば、ゲーム音源に外部音源も併用しての大幅な新規アレンジが施されていることがわかるでしょう。

 後半は「オープニング」でありながらエンディングのような壮大な盛り上がりを聴かせてくれます(ちょっとFFVIIの匂いも感じますネ)。後に「ファイナルファンタジー」と呼ばれるようになるこの曲ですが、プレステ時期の作品におけるエンディングでの形態はすでにこの頃から温められていたことがわかります。植松氏によれば、「いつも同じアレンジだと飽きちゃうでしょ」ということで、今回はピアノを使って曲想をふくらませてみたとのこと。この目論見は見事に成功しており、ゲームで経験した数々のドラマが、頭の中に浮かび上がってきます。イマジネーションを解き放って聴くべし!


track2.愛のテーマ(Theme of Love) (アレンジ・ヴァージョン)
 植松氏いわく、「FFIVでいちばん受けのよかった曲。特に女の子に」、そんな「愛のテーマ」のシンセサイザーアレンジバージョン。メインはフルートです。鳴らしている環境は上の「オープニング」と同様でしょうか。こちらも中盤(2分16秒)から、ピアノが顔を出します。スーパーファミコンでは到底鳴らすことのできない、繊細なピアノをご堪能下さい。バックを固めるハープとストリングスも、あくまで原曲の雰囲気を壊さないように組み立てられており、安心して浸ることができます。


track3.序章(The Origin) (ゲーム未収録曲)
 以降は3曲続けて、ゲーム未使用曲(ボツ曲とも言う?)を収録。なかなかファンには届くことのないこういったトラックが聴けるのも、ミニアルバムゆえの利点でしょう。アレンジとボツ曲だけで構成したミニアルバムが商品として発売されていたことからも、当時すでにFF音楽が大きな商業的価値を持っていたことを推測でき、また多くのファンもそれを望んでいたのでしょう。

 この曲「序章」はタイトルからもわかる通り、製品版のゲームでは「赤い翼」が流れる、冒頭の飛空艇シーンのために作られたものです。「FFIV」の開発を始めて、植松氏が最初に作り上げた曲だということで、氏が作品に対して抱いていた当初のイメージを感じ取ることができます。言われてみれば、製品版の楽曲と共通する匂いがしませんか?音色の構成も、ゲーム全般に渡って用いられているものですし。

 ゲームを作り上げるということは様々な変更や修正がつきものですが、このように完成形まで持っていきながらも未使用となる楽曲も少なくないことは、我々にも想像できます。そうしたレアトラックからは、作曲者が最初に抱いていたイメージや製作過程を垣間見ることができ、ファンにとっては非常に興味深いものです。最近ではこうした未使用曲が発表されることもなくなりました。ちょっと寂しいですね……。


track4.ローザを救え!(Restless Moments) (ゲーム未収録曲)
 こちらも未使用曲。イベントの変更やシナリオの変更による曲調の修正、楽曲の追加はよくあることですが、しばしば「入る予定だったイベントごとなくなった曲」というものも出てきます。この曲はまさにそれで、ゾットの塔において制限時間内にローザを救出するイベント……がごっそりなくなったため、日の目を見ることがなくなったもの(曲名はそのイベントに由来)。細かく動き回るベースラインと勇ましいブラスが、ローザ救出のため敵地をくぐり抜ける主人公の姿を思わせます。既にじゅうぶんな曲数があったためか他に流用されることもなく、このCDで初めてお披露目となりました。


track5.静かの海(The Sea of Silence) (ゲーム未収録曲)
 「ローザを救え!」がイベントごと消えてしまった曲であったのに対し、こちらは植松氏の「どうも雰囲気に合わない」という判断で差し換えられた、真の「ボツ曲」です。月面世界のフィールドBGとして作られたものだということ。製品版で採用された曲(「もう一つの月」)が不気味・神秘的なものだったのに対して、この曲は厳かかつ哀愁に満ちています。どちらがベターということでもないのでしょうが、植松氏がそう判断したのだからそれで正解だったんじゃないでしょうか。初めて訪れる未開の地・月面での不安、そして得体の知れない魔物とのエウカウントへの緊迫感は、製品版の方がより高められていると思います。それでもストリングスの匂いは双方共通ですね。

track6.プレリュード・クリスタルミックス
 「FF」と言えばこの曲ははずせません。そう、「10分で作られたテーマ曲」、ご存知「プレリュード」です。このミニアルバムでは、SNOW PRODUCTIONSによる軽快なダンスポップミックスとなりました。こういったサウンドは、「FF」のオフィシャルなアレンジでは珍しいタイプのものです(どちらかというと、アマチュアが作りそうな)。しかし今にして思えば、「FFX」に出てくる「プレリュード」の原型になったのかとも思わせますね。薄く混ぜられてる、かつてよく耳にしたループも時代を感じさせます。ちなみにここで使われている「プレリュード」のフレーズは、「FFIV」のオリジナルサウンドトラックをソースとして使用しています。


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