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20020220 music from FINAL FANTASY
パッケージ画像  ゲーム音楽のコンサートは、それほど珍しいことではない。数年前は「ゲーム音楽コンサート」なんてイベントはザラに開催されていたし、すぎやまこういち氏のドラクエ音楽は毎年のようにコンサートで演奏されている。FF音楽もまた例外でなく、これまでにコンサートが開かれたことはある。が、それはあくまで第三者の手によるものだった……。2002年、とうとう植松氏自らがプロデュースするFFコンサートが実現!その模様を収めたCDがこの「20020220」である。

デジキューブ SSCX 10065〜6
2002年(廃盤) JASRAC表記:
あり
スクウェア・エニックス SQEX-10030〜1
2004年再発 JASRAC表記:あり
 植松伸夫氏はかつて、自らオーケストラアレンジを施してその演奏をコンサートで披露したことがある。が、それが氏にとって己の力量不足を痛感する結果となったことは、FF音楽ファンには既知のことだろう。確かに、生オーケストラのアレンジは、オーケストラについて専門的な知識がないとできない。その辺りのノウハウを植松氏が自ら苦手としているのもまた、FF音楽ファンには既知のこと。ゲーム音源で「オケっぽい曲」を作るのとはわけが違うのだ。この時、すぎやまこういち氏は植松氏に対して「これは植松くんにとってのレベル1。レベル1を経験しないと、それ以上には育たないだろう?」と言って激励したというのも有名な逸話だ。

 だがその後、植松氏は生オーケストラのアレンジを自ら手掛けることはせず、専門のアレンジャーに委ねるようになる。すぎやま氏の言葉に倣えば、これはレベルアップの放棄だ。レベル1のまま、停滞する行為……。だが、果たして人間は、そんなに何でもかんでも自分でやらなければならないのか?そこまで器用であるべきなのか?できた方がいいに決まってるけど、信頼できるプロに任せた方が良い結果が得られるなら、それでいいのだ。作曲専門、編曲専門のプロがそれぞれに最高の仕事をすればいいのだ。確かに「FFVI」のアレンジ盤のような失敗もあったが、それすらも己の糧としてレベルアップしていけばいい。

 それに、植松氏は決してレベル1で留まってはいない。彼の生み出す楽曲は、どんどんレベルが上がっているじゃないか(と筆者は思う)。FFシリーズで紡がれてきた名曲の数々は、決してレベル1の勇者が作ったものではない。ファンの思い入れや世間の認知度を見ても、ラスボス(=すぎやま氏?)に挑めるレベルにまで育っているんじゃないか。曲の良し悪しは、「オーケストラの編曲ができるか」では左右されない。オーケストラアレンジのできない作曲家なんて、世の中にはたくさんいるのだ。

 そんな、かつてレベル1だった男が、自ら生み出してきた音楽のオーケストラコンサートを企てた。それがこの「20020220 music from FINAL FANTASY」である。編曲こそ盟友・浜口史郎氏に一任してはいるものの、間違いなく植松伸夫主導のオーケストラコンサートだ。彼のために指揮者・演奏者・歌手・役者が集い、コンサートは大成功、そしてこのようにCD化までされてファンに愛聴されている。果たしてこれがどのくらいのレベルなのか、筆者にはもはや見当もつかない。かつて植松氏と仕事をし、今回集ったプロたち。そして、会場に駆けつけた5000人のファン。オーケストラのアレンジなどできなくたって、彼の音楽はこれだけの人々を繋ぐ魅力に満ち溢れている。改めて声を大にして言おう、「植松伸夫はレベル1なんかじゃない」。

 コンサートはCDタイトルにもある通り、2002年2月20日に行なわれた。会場は東京国際フォーラムAホール、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。指揮は、自らFFの大ファンだと語る竹本泰蔵による。単なる雇われ指揮者では到底不可能な、FF音楽に思い入れたっぷりの指揮を堪能できよう。また、MCを「FFX」の主役2人、森田成一と青木麻由子が担当し、場を和ませてくれている。ファンにはおなじみのテーマソング「いつか帰るところ〜Melodies of Life」と「素敵だね」も演奏され、それぞれ白鳥英美子とRIKKIが歌唱した。FF音楽ファンにはおなじみのピアニスト黒田亜樹、そしてギタリスト天野清継も参加。とてもゲーム音楽のコンサートとは思えない豪華なゲストを迎えて行なわれた「20020220 music from FINAL FANTASY」、CDで心ゆくまで味わってほしい。

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DISC1/第1部
01 Tuning オーケストラコンサートにはつきもののチューニング風景。CDにもしっかり収められ、擬似コンサート体験のような雰囲気を再現してくれているのがありがたいですよね。これがあるのとないのとでは、CDを聴く時のテンションもだいぶ違ってくるはずです。
02 Liberi Fatali
(Final Fantasy VIII)
とにかくインパクトのあった「FFVIII」のオープニングムービーで流れていた楽曲です。もともと植松氏作曲&浜口氏編曲で作られた曲ですから、このコンサートの幕開けにはピッタリの選曲でしょう。基本的には原曲と大きな変化のない構成になっていますが、ド派手なドラが数箇所に加えられています。また、ケツの一音が原曲ではピアノだったのに対し、今回のコンサートではストリングスになっています。

CDを聴いていて最も気になるのは、ミックスバランスでしょう。印象を記すと、なんとなく各パートが乖離して聞こえるんですよね。コンサート会場で聴けるような一体感に乏しいというか、あまりにステレオ音場でのクロストークがなさすぎる。スネアも大きすぎて、とても通常のホールで聞くバランスではありません。

オーケストラコンサートというものは基本的にはステレオ一発録りですので、非常に難しいのです。そこは、現場のミキシングエンジニアのセンスに完全に委ねられてしまいます。逆に、ゲームで使用されているものはスタジオでのマルチトラック収録になるので、後の調整が容易ですから納得いくまで詰められますし、修正も簡単です。そういう意味ではオーケストラ録音とスタジオ録音を安易に比較することはできないのですが……と思ったら、ライナーノーツの写真を見ると、パートごとにマイク立ってますね。マルチトラック録音ではないにしろ、ワンポイントのステレオ収録ではなさそうです。

ということは、この「一体感のなさ」は、パートごとに収音されたことが原因のようです。天井にマイクを吊るしてステレオ録音したら、絶対にこうはならない。マルチマイクだと個々の調整は容易なのですが全体を捉えるのが難しく、「空気感」が伝わりにくい。アンビエンスマイクを立てたとしても個々のマイク同士の位相の干渉もあり、ベストなポイント、ベストなバランスを作るためには入念なリハーサルが必要となります。

とにかく、ただただ迫力だけを狙いすぎてしまっているミキシングで、臨場感と高揚感には欠けているのが残念です。
03 愛のテーマ
(Final Fantasy IV)
スーパーファミコン時代の名曲をオーケストラで聴ける楽しみ。これぞ、FFシリーズが持っている歴史の、最大の楽しみ方ではないでしょうか。何年経っても、名曲は色褪せることがありません。

冒頭の主メロはオーボエが受け持ちます。徐々に他の楽器が加わり、厚いストリングスが愛を歌い上げていくさまは圧巻です。前の曲にあったようなやかましいリズム楽器もなく、安心して聴けるバランスですね。3分31秒からは大サビとも言える一番の盛り上がりがくるのですが、ここのラッパがかなり微妙です。流して聴いているうえではそれほど気になりませんが、ヘッドホンでじっくり聴き込んでいるとズッコケるかも。

ただし、あくまで一発録りだということを忘れずに。原則、オーケストラコンサートでの演奏ミスを指摘するのはマナー違反とされています。人間だもの、ミスもするさ。ウチはレビューサイトなので指摘しちゃってますが……。会場にいたお客が騒然とするようなミスじゃなければ、普通はスルーするもんです。なので、これ以降のレビューではミスについては触れませんのでご理解下さると幸いです。
04 MC-1 森田-ティーダ-成一と青木-ユウナ-麻由子によるオープニングMC。普通のオーケストラコンサートではMCなんて型破りですが、そこは植松氏。あくまでファンに対するサービスが大前提なんですね。堅苦しいものにはしたくないという意向もあります。

ここではFFの歴史について語ってくれています。なお、森田氏の「16年前」はライナーノーツにもあるように、「15年前」の間違いです。あっ、スルーすると言ったのにいきなりミス指摘しちゃった。
05 FINAL FANTASY I〜III
メドレー
FFの歴史を音楽で振り返ろう!ということで、懐かしいファミコン時代の楽曲をメドレー形式で。プレリュードに始まり、暖かい感じの「FFIメインテーマ」、ストリングスがのびやかに歌う「マトーヤの洞窟」へ。続く「III」の「水の巫女エリア」は、もとが短い曲だけにメドレーでもコンパクトな扱い。クラリネットによる導入から、弦が寄り添うようにして盛り上げてくれます。

さらに、シリーズでおなじみの「チョコボ」はなんとも楽しげに、トランペットとピッコロが跳ねるようにメロディを奏でています。そこから、オーケストラ全体で奏でる管主体の「帝国のテーマ(FFII)」へ。スネアが勇ましく鳴り響く、大迫力のマーチになっています。

浜口氏がこのあたりの曲をアレンジするのは初めてのことだと思いますが、全体的に非常にツボをついたグーなアレンジではないかと思います。曲のオイシイところをつかむのがウマいというか。過去のFFのオーケストラCDと比べても、なんら遜色はありません。これには、大のFFファンである指揮者・竹本氏も貢献しているのでしょうね。
06 MC-2 ユウナが「光」を召喚します(笑)。FFファンにしかわからないギャグがてんこ盛りでなかなか楽しいです。CDで何度も聴くのはどうなの?という疑問もありますが、コンサート擬似体験としては正しい作りかな。
07 エアリスのテーマ
(Final Fantasy VII)
これはもうハズしようがないというか、既に「リユニオントラックス」でもアレンジされた曲ですし、植松&浜口ゴールデンコンビにかかればお手のものでしょう。PS期FFの代表曲と言っても差し支えありませんね。これだけファンの思い入れがある曲だとアレンジする方も大変でしょうけど、浜口氏ならば安心してお任せできるというものです。

雄大に奏でられる序盤に対して、後半はちょっと盛り上げすぎでは?というきらいはあるものの、「Liberi Fatali」と同じくミキシングのさじ加減もありますから、一概には言えません。なんとなくわかってきたんですが、このCDのミキシング、打楽器(スネア、シンバル、ティンパニ)が大きすぎるんではないでしょうか。そこをちょっと引っ込めるだけで、だいぶ印象変わると思うんですけど。とは言っても変えようがないですが。
08 Don't be Afraid
(Final Fantasy VIII)
エアリスからガラっと変わって、「FFVIII」の戦闘曲です。原曲よりもちょっとテンポが速いです。この曲もすでにアレンジ盤「FINAL FANTASY VIII FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」でフルオケアレンジされていますが、そちらが原曲のシーケンスを流用して混ぜていたのに対し、今回は純粋なフルオーケストラとなっています。原曲の雰囲気を損なわないように支えているのは、意外にも右の方で鳴っているトライアングルだったりするのですから、トライアングルと言っても侮れないものです。これがあるとないとではだいぶ違いますよ。

基本的なアレンジやコーダの処理は「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」と同様のものになっていますが、うねる風のようなSEが加えられていることでより混沌としたイメージになっています。あれ、そういえばこの曲に関しては打楽器のレベルが適切だな……。
09 ティナのテーマ
(Final Fantasy VI)
このCDの曲の並びって、コンサートと同じですか?エアリスとティナで「Don't be Afraid」をサンドイッチするのはいかがなもんでしょうか?まあそれはそれとして、ティナのテーマですよ。弦の刻みと木管による静かな導入から、徐々にマーチングスネア、金管が加わってきます。原曲のニュアンスを最大限に活かした好アレンジではないかと思います。やっぱ、浜口さんウマいよ!と絶賛せずにはいられません。特にこの人の弦の使い方は、個人的にはかなりツボです。
10 MC-3 演奏楽団と指揮者の紹介があります。竹本氏の話も聴けますよ。森田氏と青木嬢を見て、ティーダ&ユウナというよりはゼル&リノアだという竹本氏、かなりコアなFFファンだとお見受けいたしましたゾ。
11 親愛なる友へ
(Final Fantasy V)
ギタリスト、天野清継氏を招き入れての「親愛なる友へ」。やはりこの曲にはギターは欠かせません。そのあたりこのアレンジ、「わかってるなぁ〜」という感じで納得です。あくまで主役はギターという感じで、オーケストラは控え目になっています。ギターをセンターに配置したミキシングも正解でしょう。まあステージを再現すると、こうなるべきなんですが。

天野氏は著名なギタリストでして、こうしてFF音楽に参加してもらうことは単純に嬉しいですし、ありがたいですね。ソロ名義でのアルバムも山ほど出してらっしゃるので、興味を持たれた方はぜひ聴いてみて下さい。こういった「音楽の連鎖」によって、いろいろな音楽、いろいろなアーティストに出会えるのもFF音楽の魅力だと思います。
12 Vamo' alla Flamenco
(Final Fantasy IX)
やられた〜!まさかコレがくるとは予想してなかったなぁ。わかり易く言うと、「FFIX」におけるチョコボの穴掘りの曲です。フラメンコにゃギターが欠かせない!ってことで、ここでも天野氏が大活躍です。今度は負けじとばかりに、オーケストラも力強い演奏を聴かせてくれます。なんか久石譲の「ラピュタ」の劇伴みたい……。

盛り上がったところで、コンサートは第2部、CDは2枚目へ。
DISC2/第2部
01 MC-1 きたっ、ティーダの決めゼリフ!これで次に何の曲がくるかわからないアナタは、FFファンとしてはモグリですヨ。
02 ザナルカンドにて
(Final Fantasy X)
ということで、「ザナルカンドにて」をピアノソロでお届けします。編曲は、「X」のピアノコレクションも好評だった浜渦正志氏が行なっています。ピアノの演奏はRIKKIのライブでピアノを弾き、「X」のピアコレでも演奏を担当した黒田亜樹氏です。このあたりも、FFがシリーズを重ねていく中での出会いが生んだ音楽仲間、とでも言いましょうか。植松氏としても感無量でしょう。

原曲に比べてさらに感情が乗せられた「ザナルカンドにて」、観客も雰囲気に呑まれてしまい、拍手するのを忘れてしまったようです。たしかに、ピアノソロって一度終わったと思っても、またふいに始まったりするから拍手のタイミングが難しいんですよね。とにかく、この演奏は名演ですよ。ピアノって凄いでしょう?ときに、フルオーケストラよりも「語る」表現力を感じさせてくれます。個人的には大好きな楽器です。
03 ユウナの決意
(Final Fantasy X)
続いても同じく「FFX」から。編曲・浜渦、演奏・黒田は「ザナルカンドにて」と同じです。前の曲でこぼれた拍手が演奏の頭に被ってしまっていますが、それもコンサートならではということで。ある意味、リアルな臨場感があります。

この曲でもオーケストラはお休みとなります。ここでちょっとマメ知識。もともと、厳密には元来のオーケストラの編成には、ピアノって含まれていないんです。オーケストラ+ピアノって、古典的には変則的な編成なのです。ただし、あくまで変則であって反則ではありません。クラシックの名曲にもピアノの入っているものはたくさんありますからね。
04 MC-2 黒田亜樹氏の紹介とお話が聴けます。それにしてもMCの音量が小さすぎないですか?
05 Love Grows
(Final Fantasy VIII)
ここではピアノ+オーケストラの編成で、「Love Grows」。編曲は浜口氏に戻ります。MCでは曲名を「Eyes On MeのLove Growsバージョン」と紹介していましたが、それって正しいの?という疑問が……。「Love Grows」は確かに「Eyes On Me」のアレンジではありますが、別の曲です。まあいいか。ピアノとオーケストラの融合とでも言うべき演奏に酔いしれて下さい。

当然、このコンサートにあたり、「Eyes On Me」を歌唱曲として演奏する計画もあったと思うんですよ。フェイ・ウォンにも連絡したりして。その名残で、ここにこの曲が収められているんだと思うのですが。まあ、フェイはあんまり生では歌いたがらない人ですし、仕方ないですね。……フェイよ、ドラマに出てるヒマがあるんだったら、歌っておくれよ!
06 素敵だね
(Final Fantasy X)
RIKKI歌唱による「素敵だね」。シングルバージョンではなく、「X」のエンディングにおけるオーケストラバージョンに近いアレンジになっています。生のオーケストラをバックに歌うというのは、どんな感じなんでしょう。めちゃくちゃ緊張するんじゃないかなあと思いますが、ところがRIKKIさん、堂々としたものです。微妙にファルセットを使いながら、情感たっぷりに歌いあげています。

そもそも生のオーケストラの音圧って凄いものがありますんで、ステージ上ではかえって聴き取りにくかったりするものなんです。まして、それにテンポや声量を合わせて歌うのは至難の技。ステージ写真を見る限りではステージ上にフィードバックモニターが転がしてありますので、ここに返したものを聴いて歌っているんでしょうね。そういう意味で、オーケストラを従えて歌うのって素人が考える以上に難しいのです。
07 MC-3 MCとRIKKIのトークです。RIKKIと「素敵だね」の出会いなど。
08 いつか帰るところ
〜Melodies of Life
(Final Fantasy IX)
大御所、白鳥英美子の歌唱による「FFIX」のテーマソング。冒頭に「IX」におけるタイトルBGM、「いつか帰るところ」が加えられています。木管楽器によるもの静かな演奏は、原曲の「古楽っぽさ」をじゅうぶんに再現していると言えるでしよう。

そのまま繋がって「Melodies of Life」。やっぱり年季が違いますね、この歌は。RIKKIが良い意味でも「若い」のに対し、オケをバックにしてなおこの存在感は凄い!植松氏が「俗世間離れした声」と絶賛するのも頷けます。浜口氏の編曲も涙腺を刺激しまくります。
09 MC-4 MCと白鳥英美子氏のトークです。
10 片翼の天使
(Final Fantasy VII)
「リユニオントラックス」でもフルオケアレンジされていた、「片翼の天使」です。今になって聴いても、やはりこの曲の持つインパクトは凄いものがあります。これをプレステで流した「VII」は、いや、植松氏はやっぱり偉大だなあ、と思います。今回も浜口氏のアレンジで迫力の演奏が楽しめます。アレンジは基本的には「リユニオントラックス」のものをなぞっています。

が、ここにきて「Liberi Fatali」と同様のミックスバランスの悪さが気になってきます。なんだこのトットコスネアは!デカすぎだっちゅーの。さらにコーラスは、やっぱり分離しており、音場の中でこれだけ別の空間にいるという感じですね。しかも合唱は32人いるはずなのに、イマイチ人数を感じることができない。たびたび聞こえるノイズには目をつぶるとしても、このバランスの悪さはプレステ音源の「片翼の天使」にも負けているぞ!と断言してしまいましょう。このCDにおいて、ミキシングは最大の難点です。
アンコール
11 MC-5 植松氏を忘れてた!ってそんなバカな。
12 The Man with the
     Machine Gun
(Final Fantasy VIII)
ファン人気の高いラグナ編の戦闘曲がアンコールで登場です。「VIII」のアレンジ盤「FITHOS LUSEC WECOS VINOSEC」でもフルオケアレンジされていました。原曲はけっこうテクノっぽい音色がふんだんに使われており、その時のオケアレンジでもオリジナルのシーケンスを取り入れていたのですが、今回は完全にオール生楽器アレンジになってます。ここにきて、初めてハイハットが登場します。オーケストラでハイハットというのも異色ではありますが、やはりなくてはならない要素なんですね。

植松氏的には「まさかアンコールでマシンガンがくるとは思わないでしょう」と、してやったりの笑顔でした。
13 FINAL FANTASY 最後の最後、トリを務めるのはやはりこの曲でしょう!当時の最新作「X」では消滅してしまったこの曲ですが、植松氏は忘れてはいませんでした。基本的には「FFVIII」のエンディングで使われたアレンジを採用しています。またこの曲がゲームで使われることを、そしてこういったコンサートが再び開催されることを願って、目を閉じて聞きたい演奏です。

曲の途中に拍手が入っています。通常のオーケストラコンサートではあり得ないことですが、どうやらここで植松氏を含む出演者たちがステージに姿を見せたようです。それで起こった拍手なら、めくじら立てずに見逃してあげましょ。

最後の拍手は、音だけではわかりませんが会場総立ちのスタンディング・オベイション。観客からの演奏者や歌手、そして植松氏に対する、最大級の賛辞です。満面の笑みで手を振る植松氏の姿が目に浮かびます。

CD-EXTRAについて
メニュー画面  Disc2をパソコンのCDドライブに挿入すると、ショートムービーを閲覧することができる。「FINAL FANTASY」の楽曲に乗せて、リハーサル風景やコンサート中の映像が流れ、しばしば植松氏や出演者の顔出しコメントが挿入されていくというもの。コンサートが終了した後のインタビューなので、それぞれが充実感と満足感、そして安堵に満ちた表情をしているのが印象的だ。このコンサートの開催は、植松氏にとって挑戦であり悲願であった。それが大成功のうちに終了、達成感の溢れる彼の笑顔を見ていると、心から「おつかれさま、そしておめでとう」と言いたくなるのは筆者だけ?

 パソコンを持っていない人は……パソコン買ってでも見るべしっ!
関連DVD
TOUR de JAPON
music from FINAL FANTASY
MARCH 12th.-APRIL 16th.2004

SQUARE ENIX
非売品

2005年5月末、植松伸夫氏のファンクラブ「ノビヨのしっぽ」会員に特典として配布されたDVD。FFの楽曲たちがフルオーケストラで演奏されるもようを堪能できる。指揮棒を振るうのは竹本泰蔵氏、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団。オーケストラアレンジはおなじみ浜口史郎氏の手による。FFのオーケストラ音源を収録したCDはいくつかあるものの、映像を見られるソフトは貴重だ。
 2005年5月初旬とアナウンスされていた配布時期が伸びる伸びる・・・FF音楽ファンが、そして植松伸夫ファンが首を長くして待っていたFFのオーケストラコンサート「TOUR de JAPON」、その様子を収めたファンクラブ特典DVDがこれ。ファンクラブの会員募集告知ではかなり早期から配布が告げられていたため、待った人は実に長いこと待ったのです。さて、「20020220」が東京で開催されたコンサートであったのに対し、「TOUR de JAPON」はそれ以外の都市も巡ることを前提に企画されました。地方のFF音楽ファンに、わざわざ東京まで出かけることなくコンサートを楽しんでほしい……いまやFFのオーケストラコンサートは海外でも好評を博していますが、ドラクエ(すぎやまこういち氏)に追いつけと言わんばかりの精力的な展開には頭が下がります。

 DVDには全13曲を収録。指揮を務めるのは「20020220」と同じく、自身も大のFFファンであるという竹本泰蔵氏。時に楽曲のフレーズを口ずさみながらノリにノッた指揮を「魅せて」くれます。「ザナルカンドにて」、「エアリスのテーマ」といった「泣き」の定番から、懐かしい「FFI〜IIIメドレー」まで、楽曲のセレクトも良い感じ。圧巻は何と言っても「FFVI」の「オペラ"マリアとドラクゥ"」。ステージにソプラノ・テノール・バスが現れ、オーケストラ演奏をバックに、日本語詞でゲームの進行と同じ流れのオペラを再現しています。

 トリの「ファイナルファンタジー メインテーマ」では、楽曲の途中で植松氏がステージに登場。「20020220」と同様、楽曲の途中での拍手という、通常のオーケストラコンサートではあり得ないことが起こってますが、クラシックコンサートではないんで見逃してね、という演出でしょう。これで逆に拍手が起こらなかったら淋しいですしね(笑)。さらに、植松氏はそのまま竹本氏に代わって指揮棒を振るのです。曲のコーダで感極まった植松氏の表情、これだけで何も言葉はいりません。ちなみに、DVDのメニュー画面でピクピクと動いているオレンジ色のアイコンがありますよね?気付いてる人がほとんどでしょうが、念のため。このアイコン、クリックできます。そして、植松氏を中心にバックステージの様子をとらえた映像を見ることができるのです。コンサート開催にあたって、観客よりも誰よりも、植松氏がいちばんワクワクしているように見えたのが印象的。

 こういう形でのDVD配布は「THE BLACK MAGES」に続いて2回目で、ファンクラブ特典として非常にありがたいアイテムであるのは間違いないのですが、非売品ゆえの作りの荒さも少し気になるところ。オーケストラ、DVDときたら昨今の流れでいけばサラウンド、となると思うのですが、本作品はステレオ音声です。サラウンドにしたらきっと会場にいるような臨場感が味わえたと思うのですが……。まあ、サラウンドは音楽鑑賞においてそれこそオマケ的なものなので「可能だったら」という程度ですが、箇所によっては曲と曲の間の拍手がブチ切れなのは痛い。拍手はもちろん楽曲そのものではないのですが、映像付随でコンサートを鑑賞する際、「流れ」を寸断するのでこれはぜひとも処理してほしいところ。どのようなポスプロ作業が行われたかは知り得ませんが、編集した映像をそのまま(音響処理は行わず)オーサリングにかけたのでしょうか?

 巷で聞かれる意見として、「オペラの歌声がぜんぜん聞こえない」というものがありますが、オペラっていうのはそもそもこういうもんです。本来のクラシックにしろオペラにしろ「PA(拡声=マイクとスピーカーによる場内音響)」という概念はないので、会場で聴いてもこれぐらいが限度でしょう。オペラは雰囲気を楽しむものですから。ただ、後から録音媒体(映像メディア含む)としてリリースするなら、補完はあってもいいですね。ステージ下側から歌手を狙ったマイクを設置し、録音しておくとか。生っぽい雰囲気という点では、現状が正しいのですが。

 特典グッズ(非売品)であっても、作品としての価値はファンにとって商品と同等。お金を払ってなくても(正しくはFCの会費を払ってますが)、やっぱり不満な点は出てくるものです。ゆえに上で記したような欠点も気にはなるのですが、やっぱり嬉しい特典でもあるので、「文句言われるならもう作らない」とか言わずに、またお願いしますね。

収録楽曲
01.オープニング〜爆破ミッション from FINAL FANTASY VII
02.ザナルカンドにて from FINAL FANTASY X
03.Ronfaure from FINAL FANTASY XI
04.エアリスのテーマ from FINAL FANTASY VII
05.The Oath from FINAL FANTASY VIII
06.独りじゃない from FINAL FANTASY IX
07.ファイナルファンタジーV メインテーマ from FINAL FANTASY V
08.F.F.VII メインテーマ from FINAL FANTASY VII
09.愛のテーマ from FINAL FANTASY IV
10.FFI〜III メドレー2004 from FINAL FANTASY I〜III
11.オペラ"マリアとドラクゥ" from FINAL FANTASY VI
12.FF7 アドベントチルドレンより
13.ファイナルファンタジー メインテーマ

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