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交響組曲「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」(ファミコン版)
ジャケット画像  家庭用ゲーム(ファミコン)に、初心者にもわかりやすい翻訳された形でのRPG(ロールプレイングゲーム)を持ち込み、その魅力を広く浸透させることに成功した「ドラゴンクエスト」。過去3作の「ロトシリーズ」をもって、すっかりファミコンを代表する国民的タイトルに成長した作品の、第四作がこの「ドラクエIV」である。ロトの伝説と訣別し、新たな「天空編」の幕開けとなった作品であると同時に、ファミコンでは最後の「ドラクエ」である。

アポロン音産
APCG-9001廃盤
1990年
JASRAC表記:
あり

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ゲーム紹介

 1986年に発売され、家庭用ゲーマーに「ロールプレイングゲーム」というものをわかりやすく翻訳、その魅力を広く認知させることに成功した「ドラゴンクエスト」。3作品に跨る壮大なスケールで描かれた「ロトの伝説」。そのどちらもが、ファミコンRPGの代名詞と言っても過言ではないほどである。もはや定番として定着したシリーズだったが、そうなればユーザーが常に気にするのは「次回作はどうなる?」ということだった。スペック的に表現の限界が見え始めてきたファミコン、そして完結した「ロトの伝説」。ユーザーの目にもドラクエに壁が立ち塞がっているのがはっきりと見えていた。いつまでロトを引っ張るのか?次の舞台はどうなるのか?ファミコンで「III」以上の表現が可能なのか?

 堀井雄二氏、エニックス、そしてチュンソフトが出した回答は、いかなるユーザーの予測も不安も覆すものであった。シナリオ的には、これまでの「ロトの伝説」の縛りを受けない、まったくの新たな舞台を用意。さらに、シナリオとそれぞれの主人公を五つの章に分けることで、一本のゲームの中に複数の物語を詰め込んだ。そして、5つの物語、5人の主人公たちは最終的に集束し、共通の目的に対して動き出す。それが即ち「導かれし者たち」なのだ。ここからが、やっとゲームの本筋となる。それに伴い、世界も前作「III」にひけをとらない広大なものとなった。章を進めるにつれ、既に見知った場所を訪れることもあるが、プレイヤーにとって既知でもキャラクターたちにその記憶はなく、あくまで見知らぬ土地ということに変わりはないという不思議な感覚。訪れるたびに何かが変化し、かつて訪れた仲間たちの残り香を感じさせる絶妙のストーリーテリング。ロトに依存せずとも、堀井氏の語り口は不変なのである。

 新たな土地、新たなシナリオに加えて新たなアイテムや呪文も多数用意されているが、これがまごうことなき「ドラクエ」であることは、もはやおなじみとなったモンスターやアイテムが証明していた。加えて流れ続ける数々の音楽が、この作品を「ドラクエ」たらしめていることは言うまでもない。本作も、これまで同様すぎやまこういち氏が音楽を担当。お約束の城や街、ダンジョンはもちろん、どこを切ってもドラクエ節。加えて過去作と共通のMEが、プレイヤーの「今やっているのはドラクエなんだ」という没入感を高めていた。

 旧シリーズとの訣別は、時にシリーズものに取り返しのつかない危機的状況を与えてしまう。つまり、「こんなのドラクエじゃねーよ」と言われる危険性ということだ。が、「ドラクエ」は見事にそれを回避した。一新した「IV」は「III」より劣るとは言え、堂々310万本の大ヒット作となる。それは堀井雄二のテキストが持つ独特の味が不変であったこと、ドラクエの香りをふんだんに放つ楽曲があったこと、過去作と同じ手触りを違和感なく感じさせてくれたプログラムがあったからに他ならない。毎回メインのスタッフが入れ替わり、変化することを良しとする「ファイナルファンタジー」とはまるで対称的である。固定客の多いシリーズを維持することは容易ではないが、「ドラクエ」ほど見事にそれをやってのけた作品は他に例がない。後にプレイステーションでリメイクされ、敵側であるピサロの背景がより深く描かれたことも記憶に新しい。それもファンの支持があってのことであることは言うまでもない。

 このCDは、ゲーム中で使用された楽曲をすぎやまこういち氏みずからが交響組曲としてオーケストラアレンジし、NHK交響楽団が演奏したものを収録。さらにドラクエのCDとして初めて2枚組となり、1枚に交響組曲、もう1枚にファミコンのゲーム音源を収めている。ゲーム音源は楽曲単体ではなく、「III」までと同様にサウンドストーリーとしての収録ではあるものの、ゲーム中の章ごとにトラックが分けられており親切な作り。オーケストラバージョンとゲーム音源を容易に比較することが可能である。残念ながら廃盤となっているが、N響によるオーケストラバージョンはプレイステーション版のサウンドトラックに再収録を果たした。また、サウンドストーリーはゲーム音源大全集に収録されており、当CDに収められているすべての音源は現在でも入手可能である。

やはりゲームあってこその音楽、ゲームもプレイしたいですね。
ファミコンが現役なら! PS版も良い出来 DSでもリメイク


Disc1 オーケストラ・ヴァージョン
01 序曲
Overture
CDの幕開けはもちろん「序曲」から。「I」〜「III」とは異なる新しいイントロは、新たな「天空編」の幕開けに相応しい華々しいもの。高らかに鳴り響くトランペットが、壮大なる冒険へと旅立つ勇者(=プレイヤー)を讃えます。以後、このイントロは少しずつアレンジを変えながら、最新作まで使われ続ける「ドラクエの顔」となっていきます。

イントロ以後はシリーズ共通の主題になりますが、「IV」は冒頭から弦楽器などによる伴奏が3連符を刻む、いわゆる「3連ベース」のアレンジになっています。パッと聴いて同じように聞こえる序曲でも、実は作品ごとにこういう細かい部分が違っているんですよね。これをすべて判別できるのはかなりのドラクエ音楽通と言うかマニアですが、このへんの違いもどこかで解説したいと思っていますので気長にお待ち下さい。えっ?筆者がマニアですって?そりゃ、こんなページ作ってるんですから言うまでもないでしょう(笑)。

実は「天空編」の始まりにあたって、音楽的には大きなピンチがありました。それは、制作陣の「新しいシリーズだから、序曲を変えませんか?」という思いつき。すっかり定着した「ドラクエの顔」を、新しい曲に変えようというものだったのです。しかし、すぎやま氏ははっきりとそれを拒否。「ならば、頭のファンファーレを変えよう」という代替案で解決したのです。新しいシリーズだから曲を変えよう、という発想はものを作る人なら誰でも思いつきがちな安易なアイディアではありますが、それが成功したためしはありません。だったら潔くゲームのタイトルも変えちゃえよ、ということです。もしここでまったく違う序曲になっていたら、ドラクエはここまでのシリーズにはなっていなかったかも。「そんなおおげさな」と思われるかもしれませんが、決しておおげさではありませんよ。
02 王宮のメヌエット
Menuet
弦楽による「城」の音楽。そのイメージは過去のロトシリーズから不変です。ドラクエの城といったらコレ!というイメージは、序曲と同様にすっかり定着していますよね。情感たっぷりの弦楽器はオーケストラバージョンならではの楽しみですが、ファミコン音源でもかなり高いクオリティで完成されたアレンジと言えます。ブックレットに掲載されている3段の楽譜がありますが、できる人はこれを試しにMIDIで、それっぽいストリングスの音色で打ち込んでみて下さい。3段から成る音符で構成された編曲の、その完成度に驚愕すること間違いなしです。もちろんファミコン音源版にない展開の魅力は、オーケストラバージョンだけに与えられた特権。心ゆくまで酔いしれましょう。後に、プレイステーションに移植された「IV」では、この交響組曲を再現した会心のゲーム音源バージョンも楽しむことができます。
03 勇者の仲間たち
Comrades
(間奏曲〜
戦士はひとり征く〜
おてんば姫の行進〜
武器商人トルネコ〜
ジプシー・ダンス〜
ジプシーの旅〜
間奏曲)
間奏曲に挟まれた、各章の主人公達のテーマ曲を組曲でお届けするこのトラック。こういった形での楽曲の味わい方もまた、交響組曲ならでは。それぞれの旅の軌跡に思いを馳せて浸りましょう。

0分00秒からは「間奏曲」、後のシリーズでは「インテルメッツォ」と呼ばれることもある定番の曲で、冒険の書作成/選択画面で流れる短いものです。ピチカートと鉄琴、ハイハットという構成も不変の要素。こういう短い曲も組曲に入れられるのは嬉しい限り。ゲームの追体験として欠かせません。それにしてもハイハットのリバーブのかかり方はすごいですね(笑)。ケツのティンパニも効いてます。

0分27秒からは第一章、戦士ライアンのフィールドテーマ「戦士はひとり征く」。ふくよかな管群と雄大なストリングスに包まれ、ゆったりと進行する「まったり音楽」。屈強な戦士ライアンにとって、バトランド周辺などの探索などは散歩をするがごとし、という感じ。2分04秒からは第二章のフィールドテーマ、「おてんば姫の行進」。トランペットは恐れを知らずに堂々と進むアリーナ姫を描き、それを支える伴奏は姫のムチャに付き合わされるクリフトとブライ、という印象。小言の絶えない、賑やかな旅を想起させます。

4分05秒からは第三章、トルネコのフィールドテーマ「武器商人トルネコ」。低音のコントラバス主体の編成はトルネコの体格から?木管の暖かな伴奏が、彼の性格の良さそうな人柄を感じさせますね。5分46秒からは第四章の戦闘音楽、「ジプシー・ダンス」。カスタネットとタンバリンの軽快なリズムに乗って、流れるような弦楽器が舞い踊るさまは、まさに踊り子を模したダンス。姉妹は「蝶のように舞い、蜂のように刺す」戦いをしているのでしょうか。きっと戦っている姿も美しいんでしょうね。8分06秒からが第四章のフィールドテーマ「ジプシーの旅」。若くして重い宿命を背負った姉妹にふさわしい、いくつもの複雑な想いを秘めた楽曲です。ピチカートによるメインのメロディとその裏のオーボエとの対比が、姉妹の外見の華麗さと内に秘めた想いを語っています。

最後に9分29秒からは再び「間奏曲」でシメます。
04 街でのひととき
In a Town
(街〜
楽しいカジノ〜
コロシアム〜
街)
このトラックでは街メドレーをお届け。まずはストレートに、町で流れる「街」。人々の往来と賑わい、商売に精を出すいくつもの店、とにかく明るい、笑顔の絶えない町の雰囲気を十二分に表した気持ちの良い楽曲です。ちなみにゲーム中では町・村の区別なくあらゆる場所で流れます。

1分21秒からはその「街でのひととき」のアレンジである「楽しいカジノ」。もちろんカジノで流れるものです。ブラシのスネアドラムと金管中心のアレンジは、ビッグバンドジャズの味わい。オーケストラでこのアレンジはなかなか見られませんが、こういうタイプの曲もそつなく演奏するあたり、さすが劇判も無数に演奏しているNHK交響楽団、というところでしょうか。おまけとして、3分24秒からは「ファンファーレ中」も入っています。ファンファーレはこのファミコン版「IV」で初登場し、以後のシリーズで定番となったもの。カジノの曲は「VIII」で再登場していたりもします(「IV」の街アレンジなのに)。

3分34秒からは「コロシアム」。その中でも冒頭はコロシアムの楽屋、4分44秒からはコロシアムのスタンド部分です。5分07秒からは「街」のモチーフも組み込みつつ、「コロシアム」が進行します(「コロシアム」自体は「街」のアレンジではありません)。「コロシアム」の弦のトレモロは、観衆のざわめきを表現したものだとか。これはファミコンならではのアイディアですね。ゲーム音源版も合わせて聴くと、そのニュアンスが理解できるでしょう。

6分14秒からは再度「街」を演奏して組曲を締め括ります。ちなみにプレイステーション版では、「街」の曲に「街でのひととき」という曲名が与えられています。また、「コロシアム」は「コロシアム楽屋」「コロシアムスタンド」という曲名がそれぞれに与えられました(そのまんまや)。
05 勇者の故郷〜
    〜馬車のマーチ
Homeland〜
〜Wagon Wheels' March
第五章のフィールドテーマを組曲で。まずは仲間が全員揃っていない状態で流れる「勇者の故郷」からです。寂しげな孤独感を増強する、か細いストリングスのイントロに続いて、木管のメロディが切なさを醸し出します。歩き出したはいいものの、いまだ心の傷は癒えず。また、どこへ向かえばいいのかもわからない、そんな戸惑いを感じます。しかし、ひとり、またひとりと仲間と出会い、「何をすべきか」を見出していく主人公。そんな心境の変化を楽曲の展開が描き出しているかのようです。「馬車のマーチ」との対比をはっきりとするため、あえて一歩引いたおとなしめの曲にしているという意図もあるように思えます。

3分01秒からは、いよいよ導かれし者たちが全員揃ってからフィールドで流れ出す「馬車のマーチ」になります。馬車は第五章の序盤で手に入りますが、この曲が流れるようになるのはあくまで仲間が揃ってから。達成感を持ち上げると同時に、さあここからが本番、一丸となって出発!とプレイヤーを奮い立たせる両方の役割を担っている曲調はお見事と言うほかありません。それまでの「勇者の故郷」との対比もバッチリです。
06 恐怖の洞窟〜
   呪われし塔
Frightenin' Dungeons
〜Cursed Towers
洞窟と塔の「ダンジョン組曲」。まずは「恐怖の洞窟」から始まります。ゲームでのファミコン音源の時は、個人的にイマイチ怖くない曲だなあ、なんて思っていたのですが……特に31秒あたりからの弾むような部分が、どうにもユーモラスに感じて仕方なかったのですね。しかしオーケストラバージョンではうすら寒さが表現されています。オーボエによる切な系のメロが、ただ怖いだけでない独特の雰囲気を滲み出しているのです。50秒からのリピートは冷たい空気を感じさせる弦のパートが、さらなる洞窟の薄暗さを醸し出しているではないですか。PS版ではこれを模したゲーム音源バージョンによって、同じ洞窟でもファミコン版とはまた違った感触を味わうことができます。

さて、ドラクエ音楽リスナーの間で、不名誉な意味で有名な箇所がこのトラックにはあります。1分22秒あたりをよく聴いて下さい。音が欠落していますね?俗に言う「ドロップアウト」という現象で、テープメディアではプロ環境でもわりと頻繁に起こることです。古いテープはもちろん、新しいテープでも保存状態によっては発生します。問題はこれがPS版のサントラでも修正されていないこと。即ち、レコードの製作過程ではなく、マスターテープの段階で起こっているものであり、修正できないということを意味します。ミックスマスターであればもとのマスターからミックスをやり直せば修正は可能ですが、レコーディングマスターがドロップアウトしていてはどうにもなりません。レコーディング・マスタリングともにソニーのデジタルレコーダーが使われていますが、ドロップアウトにアナログ/デジタルはあまり関係ありません。おそらくテープの問題でしょう。タチが悪いのは、インラインモニターでレコーダーの返しを聞いていないと、録音中は気付かない点。楽団にOKを出して、後で聞き返して初めてわかるのです。可能性としてはレコーディングミキサー及び付随する機材・ケーブルの接触不良からくる欠落もありますが、これに気付かないようではレコーディングエンジニア失格です。どっちにしても原因は不明。PS版で修正がなされなかったことから、致命的な欠落のようです。

話が横道にそれましたが、1分43秒からが塔の曲、「呪われし塔」。これもファミコン音源だとぜんぜん呪われた感じを受けなかったのですが、オーケストラバージョンはひっそりと忍び寄ってくるかのような弦、バスの刻みが緊張感を高めています。強弱をつけた展開もインパクトがあり、じわじわと迫ってくるかのようです。登っても登っても先が見えない……そんな不安も感じます。
07 エレジー〜
   不思議のほこら
Elegy〜
Mysterious Shrine
ファミコン音源ではその醸し出す独特の低音とドロドロ感がなによりも恐怖を誘った名曲「エレジー」、そう、アッテムトの曲ですね。本来は全滅時の音楽なのですが、ファンの間では圧倒的に「アッテムトの曲」としての認知度の方が高いです。アッテムトの絶望的な雰囲気とあいまって、ドラクエシリーズでも随一の悲劇的楽曲という地位を不動のものにしています。オーケストラバージョンではドロドロとした感じはなくなり、ふつうに悲哀を強調した美しい弦楽に仕上げられています。これならアッテムトで流れてもこわくなさそうですね。実際PS版ではこれを模したものが流されていますが、やっぱりあまり怖くはありませんでした。

2分46秒からはほこらの曲。短い曲なのですが、もはやシリーズのお約束となったほこら曲は欠かせない要素。その短さゆえ組曲にすることが難しいのですが、そこは我らがすぎやまこういち先生、「III」からはしっかり組曲に組み入れてくれるようになりました。こういった小曲にしっかりとファンがつくのもドラクエの特色。ほこらが各地に点在しており曲を耳にする機会が多いという理由に限らず、すぎやま氏がこのような短い曲でも手を抜かず良い曲を作っているということの証明なんですよね。
08 のどかな熱気球のたび
   〜海図を広げて
Balloon's Flight〜
Sea Breeze
組曲・乗り物。ということで、入手順とは異なりますが、最初は「のどかな熱気球のたび」をどうぞ。軽やかなワルツかと思いきや変拍子の連続で、テンポチェンジもある、一筋縄ではいかない曲ですね。3/4→4/4→5/8→4/4→5/8→4/4→5/8→2/2……自分でもワケわからなくなります。常々すぎやま氏は「空は敵と出会わずに音楽が流れ続けるから、絶対に快適じゃなければイカン」とおっしゃっておられるのですが、私は聴くたびに進行を追ってしまってワケがわからなくなり、ちっとも快適じゃないです!ファミコンってこんな複雑な拍が管理できるシロモノだったんでしょうか?うつろいゆく空模様を表現しているんでしょうね。明るい昼があれば暗い夜があり、穏やかな時もあれば激しく風が吹くこともある、と。

前2作では3拍子「ドンブラコ」の法則を守り抜いた海の楽曲ですが、「IV」において初めてワルツではなくなりました。4分11秒からは「海図を広げて」、ファン人気も高い、船に乗っている間に流れる曲です。水の流れ、波の動きを表現しているかのような流麗なストリングスがなんとも悠然で、目を閉じて浸っていたくなります。船入手前にもゲーム中ではチラッと流れておりまして、第四章の最後、マーニャ・ミネア姉妹がハバリアから船に乗ってエンドールへ向かうイベントがそれ。姉妹の想いを投影したかのような曲調は没入感バッチリで、イベント専用曲かと思ってしまうほど。後に船を手に入れた時に「おお〜!」と思わされるわけです。
09 謎の城
The Unknown Castle
曲名こそなんとなくこわい「謎の城」ですが、決してデスパレスで流れるわけではなく、天空城の専用BGです。たしかに初めて着いた時にはプレイヤーにとって「謎の城」ですね。空の上にあるし……。楽曲はドラクエの「お城」のイメージに反しない、しっとりとした弦楽です。オーケストラバージョンは奏者の感情さえ感じ取れる雰囲気たっぷりの演奏で、聞き惚れてしまいます。

「天空城」はこの後、スーファミでリリースされる「VI」まで共通のキーワードになっていきますが、楽曲は統一されておらず、作品ごとに別個の「天空城」の曲が与えられます(「VI」ではナシ)。この「IV」の曲をずっと使っても良かったんじゃないかなあ。まあそれぞれの作品に、「ロト」ほどの密接な関連性はないからこそ曲を変えたんじゃないかとは思うんですけど。
10 栄光への戦い
Battle for The Glory
(戦闘-生か死か-〜
邪悪なるもの〜
悪の化身)
トラック10はバトル組曲です。まず最初は通常のザコ戦音楽「戦闘−生か死か−」。圧倒的なテンポの速さと音数でグイグイとテンションを引っ張ります。後半は9/8→2/4→7/8という流れの変拍子が組み込まれており、これがまた戦闘に独特の緊張感を与えてくれるのです。ファミコン音源の「ピコピコピコピコ……」というイントロもインパクトのある秀逸な出来。

2分56秒からはデスピサロ戦の序盤〜中盤にかけて流れる「邪悪なるもの」。金管が前面に出された威圧的なトーンで、異形な敵の強さをこれでもかというほど感じさせています。5分08秒からが最終戦、デスピサロ第三形態で流れるラスボス楽曲「悪の化身」。確かに悪なんだけれども、人間も悪いんだよ……というメッセージが、曲に…込められてませんね。「邪悪なるもの」から引き継ぐような編成で、緊迫感のある弦の刻みと、高域の弦による張り詰めたようなメロディラインがさらなる危機感を煽ります。
11 導かれし者たち -終曲-
The End
デスピサロを倒し、天空城から仲間のもとへ……気球に乗って、主人公は仲間たちを故郷に送り届けます。そのようすを見せながら、この楽曲がこれまでの足跡を雄弁に語ってくれるのです。ゲームの中では各キャラクターのテーマやその他の様々な楽曲のモチーフを取り入れながら進行したこの楽曲ですが、オーケストラバージョンでは「導かれし者たち」の主題のみで構成されておりちょっと残念。ゲームでの展開に添ったオーケストラバージョンが聴きたかったですね。
Disc2 オリジナル・ヴァージョン
01 オープニング〜間奏曲 当時はまだ、ゲーム機(=ファミコン)が鳴らす音楽に、音楽としての市民権が与えられていなかった時代。今でこそ珍しいことではありませんが、ゲーム音源による曲を単一のトラックに収めることは稀でした。そういった背景からか、ゲーム音源はこのようにゲームのストーリーをなぞるように紡がれていました(しかも効果音入りで……)。「III」までは1枚のCDにオーケストラバージョンとサウンドストーリーがまとめられていたため、1つのトラックにオープニングからエンディングまでが詰め込まれていたのですが、本作からはCDが2枚組になったことで、各章ごとにトラックが分けられました。これだけでかなり聴き易くなったのではないかと思います。なお、このCDは廃盤ですが、サウンドスートリーは「ドラゴンクエスト ゲーム音源大全集」に再収録されています。

このトラックにはオープニングから間奏曲(冒険の書作成)までを収録。0分00秒から「序曲」、1分42秒からが「間奏曲」ですね。ピッピッと、名前を入れています。「序曲」はファミコン音源でもしっかり3連ベースなのがおわかりいただけるでしょう。
02 第一章
〜王宮の戦士たち〜
2トラック目は第一章「王宮の戦士たち」のダイジェストです。0分05秒から流れるのは「王宮のメヌエット」、ライアンたち兵士が王様からある任務を伝えられているところです。1分08秒からは「戦士はひとり征く」。イムルに向かうところでしょうか?1分37秒からはそのイムルに到着したのか、「街」。古井戸の底に向かい、2分22秒から「恐怖の洞窟」です。3分16秒で鳴るのが「重要アイテム発見」です(PS版との違いに注目)。空飛ぶ靴を入手でしょうか?かと思うと3分35秒で突然「第一章エンディング」。あれ?塔は?
03 第二章
〜おてんば姫の冒険〜
こちらは第二章。0分00秒から「おてんば姫の行進」にのって、アリーナが勇ましく進みます。待ってろカメレオンマン!かと思うと0分57秒、「不思議のほこら」。……テンペは見殺しですか?フレノールは?洞窟、塔は無視ですかい?王様も喉を痛めなかったご様子。というわけでアリーナはいきなりエンドールへ。2分08秒は「コロシアム」……っていきなりそれかい!修行以外のことには目もくれない姫なのでした。で、大会出場。3分26秒から「戦闘−生か死か−」です。効果音からして、いきなりベロリンマン戦。勝利して、4分16秒は「第二章エンディング」。はやっ!
04 第三章
〜武器商人トルネコ〜
4トラックは第三章「武器商人トルネコ」。アタマから流れるのは彼のテーマ「武器商人トルネコ」です。0分35秒は「王宮のメヌエット」。ん?ボンモールかな?と思っていると0分48秒でいきなりセーブ。そうかと思えば突然0分53秒「楽しいカジノ」。お〜いトルネコさん、いきなりカジノですかい?ファンファーレ小、中、大がそれぞれ1回ずつ流れて、2分10秒「第三章エンディング」……このジジイ遊んでただけじゃねーか!しかもボロ勝ちしてるし。
05 第四章
〜モンバーバラの姉妹〜
第四章「モンバーバラの姉妹」です。まず0分00秒は「ジプシー・ダンス」、夜のモンバーバラ劇場でしょうか。座長と会話するのが0分36秒「街」かな?宿屋に泊まって(0分58秒)、いよいよ旅立ちです(1分01秒、「ジプシーの旅」)。
よし、まずはオーリンと出会って、それからキングレ……って1分55秒で「海図を広げて」。もう旅立っちゃうのっ?2分43秒は「第四章エンディング」。何の苦労もすることなく、船で旅立っちゃう姉妹でありましたとさ。めでたし。
06 第五章
〜導かれし者たち〜
いよいよ最終章、第五章です。「街」から始まり、0分34秒から「戦闘−生か死か−」。小さな村を魔物たちが襲うシーンですね。ちょっとした無音部分が訪れ、ダイアログの効果音。これは「勇者を討ち取りました!」「でかしたぞ」の部分。1分14秒からは「エレジー」で、見るも無残な村のようすに呆然と立ち尽くす主人公。2分21秒から、「勇者の故郷」にのせて歩き出す主人公。さて、どこへ向かおうか……。3分04秒からは「呪われし塔」……ってアンタいきなり大灯台ですか!せめてエンドールぐらい行っとこうよ!で、聖なる種火を……、4分50秒から「馬車のマーチ」。えっ、いつの間に全員揃っちゃったの?もう、仕事速いなあ勇者サマったら。

6分05秒から「のどかな熱気球のたび」。……いきなりですか。歩いてただけでどこにも行ってないのに、もう気球ですか。しかもコイツ、気球で直接天空城に乗りつけちゃったよ(8分55秒「謎の城」)!勇者の試練すっ飛ばしだよ!かと思うと、直情径行に洞窟に向かいます(9分59秒「恐怖の洞窟」)。えっ、闇の洞窟かと思ってたらもう火山かよ?結局、一度も戦わずして最終戦(10分31秒「邪悪なるもの」)!しかも強い!あっという間にデスピサロが最終形態に(12分49秒「悪の化身」)!結局、3分45秒ほどでデスピサロを撃破した主人公。誰かこの記録に挑んでみないかっ?
07 フィナーレ 天空城にすら立ち寄らないせっかちな主人公、というわけでエンディングです。ここではゲームバージョンですので、交響組曲の「導かれし者たち −終曲−」で省かれた各キャラクターのメドレーも聴くことができます。2分37秒から「序曲」、「戦士はひとり征く」「おてんば姫の行進」「武器商人トルネコ」「ジプシーの旅」と早いペースで繋がっています。再度「導かれし者たち」の主題に戻り、4分59秒からは「王宮のメヌエット」「勇者の故郷」が顔を出します。あとは主題をリピートして終結に向かいます。

まあいろいろツッこませてもらいましたが、なるべく同じ曲が被らないよう配慮した構成になっているということです。本当にゲームの進行をなぞったら、CDが何枚あっても足りませんからね。なお、サウンドストーリーの構成はゲームのメインプログラマーである中村光一氏(チュンソフト)が行っています。

N響バージョンが再販されました!
交響組曲「ドラゴンクエストIV」導かれし者たち
 PS版サントラへの再収録も果たした、N響による「IV」の交響組曲ですが、SUGIレーベルのキングレコード移籍に伴って単独盤が再販されました!ただし、ゲーム音源によるサウンドストーリーは収録されていません。ディスク1枚、オーケストラバージョンのみです。新音源というわけではないので、既発のN響盤いずれかをお持ちの方には基本的に不要ですが、最近ファンになり都響盤しか知らない方はこの機会にいかがでしょう?

キングレコード
KICC-6323
2009年10月7日発売 
JASRAC表記:
あり

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2005 GAMERS EDEN

アマゾンにはまだまだ中古あり!
街の中古CD屋さんより確実です。