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制服伝説 プリティ・ファイター

ジャンル:格闘アクション
制作:イマジニア
SHVC-P-ASFJ(JPN)

1994年12月2日発売
定価:9800円

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検索などで直接いらした方、当サイトは「GAMERS EDEN」です。
プロデューサー  イイダ ショウイチ ゲームデザイン  黒田 愛実
ディレクター  オオスガ アツシ プログラム  ハギワラ ツトム
アートディレクター  ナカムラ テツシ     グラフィックデザイナー  タカハシ マサル
 コウノ タカシ
作曲/効果音  モリ アキヒコ

制服好きにはたまらない?スポ根コスプレ格闘……実はそうじゃない!
1994年……ゲーム史的にはプレイステーションやセガサターンが登場し、家庭用ゲームが一気に3D化されていく気配に満ちていた頃。それはいわゆる「格闘ゲーム」も例外ではありませんでした。アーケードでは「バーチャファイター」を始めとする3D対戦格闘ゲームがあっという間に主流となり、家庭用ゲーム機にも移植がなされ始めていました。対戦格闘の元祖とも言えるカプコンの「ストリートファイター」系統は2Dへのコダワリを貫き続けましたが、後に3Dタイプのバリエーションもファミリーに加わっていきます。

プレステやサターンの出現によって、スーパーファミコンにとってのこの時期というものは末期と言っても良い頃でしょう。とは言うものの、技術的な成熟によって「スーファミでここまでできるのか!」という作品が現れたのもこの頃でした。一方で、ヒット作にあやかった模倣品が氾濫したのも同じ時期。格闘ゲームのブームを受けて「ストII」の真似事を始めたメーカーがその作品をやっと完成させたものの、スーファミ的には末期だったということになります。ただでさえ微妙に時代遅れなうえ、もちろんノウハウのないメーカーがやることですので、完成した作品が真似事の域を出ないものになってしまうのも無理はありません。

ここで御紹介する、イマジニアの「制服伝説プリティ・ファイター」もそんな模倣品のひとつ。何の模倣かと言うと、ズバリ「ストII」のです。ただし真正面から勝負を挑んだところで、大ヒットした本家本元に太刀打ちできるわけはありません。そこで本作に盛り込まれた「ウリ」が、「制服」と「プリティなギャルたち」だったわけです。女の子を前面に押し出した格闘ゲームがそれまでまったくなかったわけではありませんが、現在ほど「フェチ」「萌え」という趣味が表面化していなかった当時、「制服」というキーワードを最前面にハッキリと提示してみせた思い切りの良さは、もっと評価されるべきなのではないでしょうか(答:ないでしょう)。

試しにタイトルを口に出して発音してみて下さい(可能であれば人前で)。こっぱずかしいでしょう?「美少女戦士セーラームーン」と同じぐらい、健全な男子が口にするにはあまりにストレート。間違っても店頭で「制服伝説プリティ・ファイター下さい」なんて言えません。さらにパッケージもかなりこっぱずかしく、これを手にしてレジに向かうのは、中学生がエロ本買うより緊張すること間違いなし!イラストはもとよりコピーもそうとうなもので、「美少女たちの熱き戦い!様々なコスチュームに身を包んだ8人の美少女達が、日本を舞台に暴れ、舞い、そして転ぶ。君はこの興奮にいつまで耐えられるか?」って、耐えられないほど興奮しなきゃならんのか。しかも「暴れる」や「舞う」はともかく何故「転ぶ」を強調するかなぁ?ハッ、もしや暗にパンチラを期待させるために?!しかし残念ながら、この作品にパンチラは一切ありません。つーかスーファミのグラフィックでパンチラしてもな。

まあ、このゲームのことを知らない人がタイトルとパッケージから受ける印象は、「制服姿の女の子たちが何らかの目的を達成するために戦う根性もの」ぐらいのものでしょう。実際、後にプレステでリリースされる続編「FIST」は「アイドルになるために格闘大会でナンバーワンを目指す」というような内容でした。しかし!本作「プリティ・ファイター」においてはその予想はまったく惜しくもないほどハズレです!登場するキャラクターたちはいずれも、もっともっと重い運命によって戦わざるを得ないのです。
重い宿命を背負っていそうな女の子たちですが……
取扱説明書に掲載されているストーリーを読んでみましょう。出だしがいきなり「今から3000万年前」とめちゃめちゃ壮大なことになってます。んでその3000万年前のまだ大陸が一つだった頃、現代に生きる人類とは異なる種族が繁栄していたんだそうですよ。その種族のトップに君臨していたのが「ライドウ王家」を中心とした王族で、君主グラン・ライドウ王には8人の王女がいたとか。ずいぶんと子だくさんやな。王族は優雅かつ幸せに暮らしていましたが、その生活が一変します。叔父・キールが反逆したのです!迫り来る魔物たちは民衆を襲い、兵士たちも次々に倒れていきました。当然王族が暮らす城にも敵が攻めて来ます。まるでRPGのようなストーリーです。

城の塔から敵が攻め込んでくる様子を見ていた8人の王女たちは、敵の背後に「黒い陰」の存在をはっきりと感じます。そして叔父・キールもその陰に操られているのに過ぎないのだと看破します。そうする間にも敵の追っ手は迫り、兵士達や神官、そしてグラン王までも、王妃と王女たちを逃がして力尽きてしまうのです。

塔の最上部へ辿り着いた王妃と王女たち。そこには開かずの間がありました。突然王妃の持つペンダントが光ると、開かずの間が開いて中から武器や防具が現れたのです。その昔にこの地を守った8人の勇者がその力を封じ込めたそれらの武具は、処女の力を借りて復活する守り神。ということで王女たちは武具をまとって戦場へと向かい、次々と魔物を打ち倒してついには魔王と対峙します。さすがに魔王そして魔王の精鋭部隊は強く、王女たちでもかなわない……そんな時、スフィンクスの兜がもたらした助言に従って王女たちは武具を集め合わせました。すると、そこから光が沸き上がって天に駆け上り、巨大な竜へと変化!吹き飛ぶ魔王の軍団!そして魔王との壮絶な戦いの末、悪は滅んだのです。ただし、一抹の不安を残して……。「3000万年後、再び大地が接するとき、我らは蘇りこの地を我が物としようぞ」……。

戦いが終わり、王女たちは元の姿に。持っていた武具はアザとなって彼女達の身体に残りました。この壮絶な戦いの影響によって大陸変動が起こり、大地はゆっくりと分裂・移動を開始。民もまた移動を始めたのです。

……と、取扱説明書4ページにも及ぶ、およそ格闘ゲームのそれとは思えない壮大なストーリー。これでも要約してあるのですよ。原文はちゃんと文章が書ける人が書いたとはとても思えないほど、文の繋がりや句読点がデタラメなんですけども。つまり、本作「プリティ・ファイター」で描かれるのは、その「3000万年後」ということなのでしょうね。そういえば登場するキャラクターも8人です。ということは、彼女達は3000万年前に魔王を打ち倒した8人の王女の生まれ変わりか末裔、というような設定がなされているのでしょう。そして復活した魔族と戦う……タイトルやパッケージからは想像もつかない、実にヘビーなストーリーです。それがなんで「制服」である必要が?という疑問は残りますが、まあ売るためにはそういうフィーチャーも必要ですしね。では、さらに取扱説明書を参考にしながら、そんな転生した王女たちを見ていきましょう。

青木真琳(アオキマリン/声:くまだひさこ)はセーラー服姿の女子高生。パッケージイラストなどでの扱いを見れば、おそらく主人公であると思われます。万人ウケしそうな無難なルックスに、上下ともにミニすぎるセーラー服は作品の顔として妥当なセンです。趣味が「将棋」ってのはいかがなもんかと思いますが……。必殺技は波動拳モドキの「セーラーパンチ」っつーかコマンドも波動拳。そして「ブルセラアッパー」については名称にもツッコミたいところですが、

しょーりゅーけんっ!

おい、それ昇龍拳じゃん!

……いきなりパクリ全開ですか。モーションそっくり、もちろんコマンドも同じ。他に「ポケベルフラァシャー(取説まま)」なんて技もありますが、「フラッシャー」じゃないの?まあいいか。「ポケベル」も時代を感じさせますな。取説ではコマンドが「ヒミツ」とされてますが、秘密にする意味がサッパリ。なら載せるなよ。えー、体力ゲージが1/3のピンチ時のみ使える技で、どこから始めてもいいので十字キー1回転+キック、です。

赤坂樹里(アカサカジュリ/声:くぼやまみほ)は今となっては完全に時代錯誤な、ボディコンスタイルに扇子を持ったディスコねーちゃん。「趣味=ディスコ」って見ればわかるわ、ボケが。というかボディコンは制服じゃないだろ。名前は「ジュリアナ」をモジったものですな。ジュリアナは赤坂ではなく六本木じゃなかったっけ?と思いがちですがそういう意味ではなく、キャラクターの苗字には必ず色を入れてあるんですな。もしかしてこの色、王女の名残りとしてストーリーに密接に絡んでくるとか?

実は開発初期までは彼女を主人公として想定していたという噂があり、言われてみればエンディングの声優クレジットでは樹里の名前が一番上にあります。「制服伝説」という作品名にするにあたって、それじゃあボディコンを主役にするわけにもいかんだろうということになったのでしょうか?

白鳥クリス(シラトリクリス/声:さとうゆり)はミニスカナース。つーかこんな極端なミニスカナースは患者(主に男性)の血圧値を著しく乱すので解雇です、確実に。「好物=ジャンボフランク」については「男性患者の」とか言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしてしまいますね。「苦手な物=ホラー・スプラッタ物」つーのも、「ナースのくせに血が苦手なのかよ!」というツッコミに期待した設定っぽいですが、誰でも思い付きそうでサムいです

技に関しては注射器でナゾの液体を浴びせる「メディカルシャワー」や「聴診器フラッシュ」など安易すぎるものはともかく、ヒップアタック攻撃の「おしりプー」については技名を考えたヤツ連れて来い。説教だ、説教。「ひらキック」は何のことかわかりませんでしたが、モーションを見ると両足をガバッと開いていますので「開キック」ということなのでしょう。似たものにはやはり足を広げての「パックリ旋風脚」……すべての格ゲーファンと制作者に詫びろ!

黄織涼子(キオリリョウコ/声:いいじまようこ)は黄色の和服に身を包んだ大和撫子系なのですが、その裾はミニスカートのごとく短いもの。正式には和服を着る際には確か下着を着けないはずなのですが、涼子ちゃんはどうなんでしょう。つーか言ってもいいですか?和服って制服じゃないような気がするんですけど。肌身離さずムチを携帯しているようで、大和撫子とは程遠いです。なんで勝ち台詞が「ダイナマイト!」なんだろう。
紺野警子(コンノケイコ/声:わたべなおみ)は婦人警官。やっぱり上下ともに極端なミニ化が施してある改造制服は、本庁から大目玉モノ。こんな婦警サンなら捕まりた〜い!という不純な動機の犯罪者が増えないかと心配になります。技に関しては、「警棒ブーメラン」は警棒の使い方を根本から間違っているような気がするので没収して下さい。「おしりペンペン」「後ろの正面ダレー」については、ネーミングにやる気がまったくないですね。こちらのプレイ意欲もなくなりそうです
桃山愛(モモヤマアイ/声:きじまさちこ)は、ブルマをはいた最年少のロリ担当です。新体操部らしいのですが、新体操なのにまるでバレー部のようなヒジ・ヒザのパッドは、デザイン的にどうなのよ?「バナナ食べ」という体力回復技を持っていますが、ブルマの中学生がムグムグとバナナを頬張る姿は、特殊な趣味をお持ちのオニイサンたちから絶大なる支持を受けているとかいないとか。「趣味=亀の散歩」というあたりは、いったいこのキャラをどういう方向に持っていきたいのかまったくわかりません。対戦勝利時の「いえ〜」という声が負けた側の神経を逆撫でするほど小馬鹿にした感じなのはともかく、

新体操ってこうなのか?

↑この勝利ポーズが何をしたいのかもよくわかりません。

緑川みなみ(ミドリカワミナミ/声:のむらようこ)は、真琳とは対照的なブレザー制服の女子高生関西人。「趣味=阪神の応援」「好物=たこ焼き」という意外性も何もない典型的な関西キャラで、実は制作スタッフ全員関東人なんじゃねーの?というほどに何も考えられていません。実際にゲームをしてみると、声がまったく可愛くなくて困ってしまいます。
山吹柔(ヤマブキヤワラ/声:クレジットなし)はその名の通りの柔道娘で、漫画の「YAWARA!」にインスパイアされたのか、もしくは個人的にはそう呼びたくない国民的アイドル・某田村嬢にあやかったのかは不明。柔道着の上だけを着込んでおり、下半身がかなりアブないことになっているほか、普通なら女子が柔道着の下に着用するはずのTシャツすら着ておらず、帯が乱れたらどんなことになってしまうのかドキドキしてしまいます。

以上8名の「王女の生まれ変わり」がバトルを繰り広げるわけです。「制服伝説プリティ・ファイター」でありながらボディコン、和服といった制服でないものが採用されている点、さらに言えばブルマや柔道着も制服と言っていいのか微妙なところで、もしも制服マニアがそれ目的でこのゲームを購入したのなら8人中半数が制服ではない事実に激怒は必至でしょう。

取扱説明書ではキャラクター紹介の次に、13ページにも及ぶ決して上手とは言えない漫画が収録されています。ヒロインは青木真琳で、魔族に襲撃された彼女が勇者として覚醒する様子を描いていることから、上で紹介したバックストーリーの続きのような内容と言えるでしょう。これを受けていよいよゲーム本編が始まるわけですから、どんなに壮絶な物語が繰り広げられるのか期待は膨らむばかりです。ちなみに漫画の原作は「村山寛貢」、作画は「矢崎和也」とゲームのスタッフロールには出てこない方々が担当していますが、そういや本作のキャラクターデザインやイラスト関係のお仕事はどなたがしているんでしょうね?
斬新な要素を一切廃した、シンプルなシステム……なのか?
ではでは、ゲームの方を起動してみましょう。イマジニアのロゴが大きく表示された後、流れ始める音楽のオケヒットに合わせて一文字ずつ出現する「制・服・伝・説」の文字。凝ってますな。そしてパッケージイラストをドット絵で再現したタイトル画面が表示されます。

タイトル画面。

うーん、なかなかよくできているじゃないですか。グラフィッカー、頑張りましたね。本編のキャラグラフィックにも期待です。さて、タイトル画面には「STORY MODE」「V.S. MODE」「OPTION MODE」の文字があります。「STORY MODE」はおそらく、取説での壮大な前フリを受けてのメインストーリーに沿ってお話を進めながら戦い、勝ち上がって行くゲームモードだと思われます。「V.S. MODE」は対戦モードですね。ということで、まずは「OPTION MODE」をのぞいてみることにします。格闘ゲームというものはオプションを見れば、どんなゲームかだいたいわかりますから。

どっかで見た画面。

……「ストII」そっくりじゃん。

さすが、某雑誌で「"ストII"をそっくりパクったその意気やよし!」などという、決して喜べない賞賛を得たゲームだけのことはあります。「ストII」人気を受けて似たようなものを作るならまだしも、「参考にはしました」と言い訳する気もなくそのままコピーしちゃうなんて大胆すぎ!さきほど「格闘ゲームはオプションを見れば、どんなゲームかわかる」と書きましたが、本作がどんなゲームか皆さんにも理解していただけたと思います。十字キーと弱中強のパンチ&キック、そしてそれらを組み合わせたコマンドがあるわけですね。十字キーは上でジャンプ、下でしゃがみ、対戦相手と逆方向(自キャラの背中側)でガードといった、「ストII」と寸分違わぬ割り当て。必殺技だけはガードしても少し体力が減るという「削り」も健在。説明する必要もないぐらいシンプルです。「シンプル」と言うと聞こえはいいですが、別の言い方をすれば「制作陣が何も考えていない」とも言えますし「スキルもノウハウもない」とも言えますけど。格闘ゲームファンで「ストII」をプレイしたことがない人は当時少数派だったでしょうし、ならば共通言語をそのまま使えば話は早い。ここまでソックリだと、「ストII」経験者なら何の迷いもなくゲームに入っていけるでしょうから。

問題は、格闘ゲーマーが本作をチョイスするかという点。やっぱり女の子や制服が目当てな、普段はあまり熱心には格闘ゲームをやらない層が購入しているような気がするんですよ(偏見?)。しかしこの操作方法ならばシンプルで食い付きが良さそうですし、これで格闘ゲームに興味を持った人が例えば「ストII」に行ったとしてもスムーズに入っていけます。そういった人が「"ストII"って"プリファイ"のパクリじゃん」なんて言い出さないか不安ですが。

まあ普通なら、ベースとなる部分は定番のものを拝借して、そこに独自のシステムを盛り込むとかするものです。「なんとかゲージ」を設けて超必殺技を使えるようにするとか、ね。もちろん本作にもそういう要素は、ありません。皆無です。プラスアルファは一切ナシ!骨の髄まで「ストII」です。強いて言えば、制服とかギャルばっかりとかヘンテコな技名とか、そういったことが独自の要素。そこに魅力を感じない人は、素直に「ストII」で遊んだ方がいいでしょう。

ただし、操作やコマンドを「お手本」に似せることはできても、なかなか真似のできないことがあります。技のバランス調整やCPUの思考パターン、操作感(反応)がそれ。これがうまくいかないと、同じシステムを採用していてもまったく手触りの違うゲームになってしまうのです。本作はどうかな?さっそく「STORY MODE」を始めてみることにしましょう。まず始めに8人のキャラクターから一人を選ぶことになります。

キャラクターセレクト

ここで選んだキャラクターのストーリーを追っていくんですね。先に御紹介した通りいろいろな女の子がおりますが、中でも主人公っぽく、かつ「ストII」で言うところのリュウケンタイプである青木真琳が使い易そうで、初めてのプレイでは無難に思えます。ヒロインという存在は戦いやすいバランスにされてるものですし、ゲームの手触りを探るにはもってこいのキャラではないでしょうか。ということで、真琳をチョイス。ゲームに慣れたら他のキャラクターのストーリーも追っていくのがベストではないかと。

さてさて、真琳を選んだら最初の対戦相手は柔です。まず対決カードが表示されます。

対戦前のキャラクター表示

キャラクターイラストをドット絵に落とし込んだその画面は、イラストの雰囲気やキャラの特徴を見事に現していて好印象。パッケージや取扱説明書に描かれているイラストに魅力を感じる人であれば、まずまず満足な仕上がりと言えるでしょう。しかし、これは言わばゲーム本筋とは関係のないオマケの部分。このレベルのグラフィックでゲームができれば大絶賛モノですが、スーファミソフトにそれを求めるのは酷というものでしょう。この後、実際に対戦をすることになるステージが表示されます。

対戦画面。

うーん、画面表示関係がとにかく「ストII」っぽいのは確認するまでもないとして、普通ですなー。きわめて普通。スーファミの対戦格闘ゲームとしてはこれぐらい、という妥当なセンです。特別ダメなわけではないけど、良くできているわけでもないという、ほぼ及第点といった感じのグラフィックです。ただ、女の子をウリにしている作品なわけですから、キャラグラフィックにはもう少し愛情を注いで欲しかった感はありますね。まあ、イラストとグラフィックのギャップが「FIST」ほどではないので、精神的ダメージは少なめです。もっともあちらは3D、こちらは2Dですけど。

操作感も普通です。ボタンを押せばそれに対応したアクションがさほどのタイムラグもなく出るので違和感はなし。コマンドも入り易いと思います。レスポンスはまずまずです。「ストII」の経験があれば、悩むことなく意のままに操作できるでしょう。モーションとそれを表現するアニメパターンも、特筆すべき長所はないものの「これはヒドい!」と言いたくなるような欠点も見当たりませんね。さすがに「ストII」をお手本にしているだけあり、そのあたりはしっかり吸収したものと思われます。しかし、女の子を可愛く見せようという努力があまり感じられず、ゲームのグラフィックに対して生じる「キャラ萌え」や感情移入は期待できそうにありません。グラフィックの質とともに、女の子がウリのゲームなのですからそういった努力はもっともっとしてほしかったところですね。

実際に戦ってみると、感覚的には弱攻撃は「ストII」のそれよりもさらに弱、という感じで、攻撃手段としては有効ではありません。確かにスキは小さく連打もできますが、一般的な「削り」よりももっとチマチマとしており、いつになれば決着が着くのかわかったもんじゃないです。中攻撃は弱よりも大きなスキができますが、当たればそれなりのダメージを与えられるので実用的。強攻撃はかなりのスキを生みますが、与えるダメージも大きいと。もちろんこれらは単体のパンチやキックのみならず、必殺技にも適用されます。コマンド入力によって必殺技が発動しても、弱攻撃では効果的なダメージを与えることはできません。どうせなら強攻撃の必殺技で大ダメージを狙っていきたいですね。技によっては3〜4発ヒットできればそれだけで勝てることもあります。もちろんこちらが喰らえば手痛いダメージを受けることになりますが……。必殺技のダメージが大きすぎるのかも。

その必殺技ですが、もちろんキャラクターごとに様々な技が用意されています。しかし、それらのダメージバランスが上手く調整されていないように感じました。簡単に言うと、ヒットした際に相手に与えるダメージ量にかなりバラつきがあるのです。中には似たようなコマンドの技なのに多段ヒットするキャラとそうでないキャラがおり、自ずと使い易いキャラ・使い難いキャラの差が生じます。女の子ゲームはお気に入りのキャラを重点的に使いたくなるものですが、もしそれが「使えない」キャラだとわかった時の悲しさは男性諸君には理解してもらえるのではないでしょうか(笑)。このようなキャラクター性重視のゲームの場合、極端な能力差は好ましくありません。選択の幅が狭まるからです。すべてのキャラクターの能力を均等に近いものにしておくことで、どのキャラもマイフェイバリットになり得る可能性を残しておかなければならないのです。

通常攻撃(パンチ、キック)と必殺技のダメージ差もかなり凄い場合があります。強パンチがクリーンヒットした際のダメージが、必殺技をガードされた時の削りダメージより小さいことすら。こうなると通常攻撃そのものがばかばかしくなり、結果として必殺技だけを狙い続けるという、面白みのないプレイに終始しがちになります。

また、CPUの思考パターンもイマイチですね。はっきり言うと、単調。ある状況に置かれた際の行動がワンパターンなんです。体力があるうちはバリエーションに富んだ行動を見せるものの、不利になると鬼のようなガード体制に突入、繰り出す技も単調なものになります。回復技を持つキャラはひたすらそれを繰り返したりと、思考の分岐があまりに少ないのが気になりました。プレイヤー側としても、ワンパターンな行動を繰り返す敵に対して採れる手段は限られてくるため、駆け引きや緊張感のない作業的なプレイになりがちです。こういうところは既存の格闘ゲームをコピーしきれなかったと言わざるを得ません。一方でCPUはハメ技をためらいなく使うため、一度その思考パターンにハマるとネチネチとハメ技を繰り返されるというイヤな状況になることも。そのままアッサリ負けることもあり、スッキリしないというよりもイヤな後味が残ります。

ざっとプレイしてみた感じでは以上のような感想ですね。グラフィックやレスポンスは可もなく不可もなく、ただしキャラごとのダメージバランスと必殺技の有効性にバラつきがあり、CPUの思考パターンは単調。ゆえに爽快感や満足度が総じて低いものになっている、という感じですか。システムや見た目は「ストII」を模倣してみたものの、肝心の中身は真似できなかったというありがちな「失敗作」ですな。
ストーリーモードをプレイするとわかる、秘められた驚愕の事実
そんなわけで柔にサクッと勝利。対戦後のグラフィックはこんな感じです。

勝敗画面。

ここの顔グラフィックもキャラによってはいい仕事がされています。特に真琳はさすが主役だけあり、念入りに描かれているような気がします。対して負けたキャラのショボ顔が見られるのもここだけで、イメージイラストにはない表情にドッターの個性が反映されていて興味深いです。まあこれも「ストII」っちゃあ「ストII」なんですけどね。なお、文字でセリフが表示されていますがボイスによる読み上げはされません。

と、ここまで書いていて気が付いたのですが、登場キャラ8人ってプレストーリーにおける「8人の王女」が転生した存在であるはずですよね?つまり、3000万年前はともに戦った仲間です。その彼女らがなぜ、今ここで互いを潰し合っているんでしょうか?普通なら力を合わせて復活した魔王に戦いを挑むところですが……。もしかして全員と戦うことで彼女らを仲間にしていくのでしょうか。そのあたりはストーリーモードを勝ち抜いていく中でおいおい語られていくのかな?と思いながら次のステージに進みます。

ところが、警子・愛・クリス・涼子・樹里らを相手に勝ち進んでいくも、いっこうにプレストーリーに関わるようなイベントが発生しません。会話はもちろん、テキストすらなし。そうこうするうち、ついに最後の対戦相手・みなみとのバトルがスタート。そうか、これを撃破するとそこで初めて語られるのだな。どのような展開が待ち受けるのか期待しながらみなみを倒しました。いよいよ魔王を……あれ?

なんじゃこりゃ。

レベルを上げて頑張ってね、だと?

あー、そうか。確かに「OPTION」にはゲームレベルがありました。筆者は最初のプレイということで、難易度を下げてプレイしていたのです。つまり、難易度をデフォルト以下にすると本来のストーリーは見られないようになっているわけです。そーかそーかそういうことか。ならば、難易度を上げて再度挑戦するのみ!ここまでプレイして、ストーリーの結末も見ずには終われません。難易度を戻し、真琳で再挑戦です。

……でもやはり、展開は変わりません。幕間でのイベントも発生しなければ、対戦そのものにも何ら変化はありません。確かにCPUは手強くなっているものの、ストーリーモードということに限ってみれば低難易度の時と何も変わらないのです。ま、みなみを倒せば何か起こるさ。

コングラッチュレーション!

ガキ大将だったマリン でもいつも言っていた
弱いものイジメはしないって・・・・ 「悪い奴らはこらしめてやる!」


……ピースサインをした真琳のグラフィックと、このテキストが表示されました。え、3000万年前は?転生した王女は?魔王は?勇者の武具は?アザは?と半ば混乱しつつ事態を把握しようとする筆者。しかし無常にも、画面はスタッフクレジットへと移行。え?まさかこのまま終わり?!そのまさかです。ドドーンと自信満々に表示されるイマジニアのロゴ。そしてタイトル画面へ……

ポカーン。

しかし、筆者はまだ諦めません。ストーリーにまったく触れないストーリーモードなんてこの世にあるわけがありません。だいいちこのまま終わってしまったら、取扱説明書に載っていた壮大なストーリーとおまけ漫画の存在価値がまったくないではありませんか。取説に載せているものを、メーカー自ら否定するような作品を作るわけがない!そこで筆者は考えました。

8人全員使ってストーリーモードをクリアすればいいんだ。

思い立ったら即・実行!真琳はクリア済みですから、あと7人です。特に苦戦することがなければ、1人につき30分ほどでクリアできるはず。決めた!もう今日は一日「プリファイ」に捧げるよ!まずは対戦した時にわりと手強かった愛タンを使ってクリア!

順調。

いい調子です。続いては(中略)そしてついに、最後に選んだ樹里でのクリアが目前に!真琳以外のキャラを選んだ場合、最後に戦う相手が真琳になります。よっしゃ!倒した!魔王、カモーン!

……。

なにこれ。

そしてこれまで同様、またもやスタッフロールへ。そしてタイトル画面に……。あの〜、もしかすっとアレですかい。壮大な前フリとゲーム本編はまったくリンクしていないってことですかい。取説で大風呂敷広げるだけ広げておいて、放置ですか。つーかこれのどこが「ストーリーモード」なんだよ。ふざけんな!無能なスタッフの名前を8回も拝むためにプレイしたんじゃねーぞ!ましてこんなヘボグラフィックと電波テキストを見るために一日を捧げたわけではない!

まあ本当のところはですね、筆者もゲーム歴そこそこ長いんで、最初に真琳でクリアした時点で気付いてましたよ。セーブ機能すらない本作において、8人分クリアすれば真のエンディングが……なんて凝った仕掛けがあるわけがないんです。よって後半は完全にネタというか創作ですね。そこまで鈍感じゃないよ、いくらなんでも。んじゃ、取説に長々と載っていた壮大なおハナシはなんなの?漫画はなんだったの?ということですが、たぶんRPGカブレのスタッフがいたんじゃないですか。自己満足ですよ、ソイツの。「ねえねえボク小説書いちゃった〜見て見てぇ〜」なんていう自己顕示欲過剰な中学生と大差ないです。というか他のスタッフも、そんなの止めてあげなさいよ。さもなければゲームの方にちょっと反映させるとかさ。本作が世間で「クソゲー」と言われる最大の要因って、実はシステムとかバランスとかパクリ云々よりも、この意味不明なバックストーリーとゲーム本編があまりに無関係なところにあるんじゃないですか?
バックアップバッテリー必要なし!やり込み要素もなし!
本作には先に述べたようにゲームデータのセーブ機能がありませんから、何度クリアしようがハイスコアを更新しようが、電源切ったらきれいサッパリ洗い流してくれます。この仕様はスーファミソフトでは珍しくありませんが、肝心のゲームそのものがプレイヤーに「極めよう」と思わせるものでは決してないため、記録のセーブもできないということは即ち「何度もプレイする意欲が起こらない」ことに直結します。追加キャラやご褒美グラフィックなんてものがスタンダードになるのはプレステ以降でしたが、そういったご褒美要素もないのではますますやる気が起こりません。せめてクリア後の一枚絵ぐらいはコレクションできるような、セーブ機能が欲しかったところです。ま、セーブ機能がないということはバックアップバッテリーの消耗に脅えることもないため、電池交換せずに一生遊べるあたりはリーズナブルではありますが、このゲームを一生遊び続けたいという奇特な人はそうそういないかと。というか電池なんかもともと入ってないと思いますが。

ご褒美要素が一切なく記録もセーブできないときたら、残るプレイヤーのモチベーションは「上手くなりたい」「対戦で勝ちたい」という純粋な向上心のみになりますが、少なくとも筆者はこのゲームの上達に費やす時間があるのなら、その時間を他のことに使った方が良いと考えます。でもって対戦についてはそもそも対戦してくれる人がいません。このゲームについて説明すると、ほとんどの友人がプレイを拒否してくれます。あげくに「そんなのよりこっちやろうぜ」と他のゲームを取り出すのです。これではいくら上達したところでその腕前を活かす機会もありません。よって、多くのプレイヤーにとって「ちょっと遊んだらポイ」なゲームでしかないのです。

それでも買ったからには一応エンディングが見たい、という人も少なくないと思います。が、前述の通り難易度をデフォルト以下にすると本来のエンディングは見られません。しかしデフォルト以上の難易度にすれば、CPUがかなりイヤな感じになってしまってクリアできない人もいるでしょう。そんなアナタに一言アドバイスをするなら、「樹里を使え」「昇龍拳コマンドをマスターせよ」。樹里で昇龍拳コマンドを入力すると、「ぐるぐるパンチ」という必殺技が出ます。

ぐるぐる、パーンチッ!

この「ぐるぐるパンチ」、強パンチで発動すればかなりのダメージになるうえ、多段ヒットする凶悪なシロモノ。ただ、初期状態だと強パンチがLボタンになっており出しにくいので、押し易いボタンに割り振り直しておくと良いです。あとは昇龍拳コマンドが難なく出せるようになれば、「強ぐるぐるパンチ」を連発しながらステージを走り回るだけで、高い確率でクリア可能なはずです。それで見られるのはキャラの一枚絵とスタッフクレジットだけですが、あとは売るなり捨てるなり人にあげるなりして下さい。
サウンドについて
音については、特に効果音は「ストII」の劣化模倣品という印象で、打撃音や風切り音などについてはひたすら「参考にさせていただきました」という感じ。しかし一方で楽曲の方はけっこう個性的なものを聴くことができます。例えば福岡ステージで流れる、サッカーのサポーターソング風味の「SONG OF ORE」には「オーオオ、オーオオ、オーオーオーオー」というコーラスが組み込まれていたり、大阪ステージの「SONG OF ROCK O」は「六甲おろし」ソックリな曲調もさることながらこちらもコーラスが使われています。これらのコーラスはいずれも実際の歌声をサンプリングしたものらしく、スタッフクレジットに歌い手の名があります(誰なのかはわかりませんが)。他には名古屋ステージ(パチンコ屋前)で流れる一昔前の軍艦マーチ風の楽曲や、東京ステージ(ディスコ内)で流れるジュリアナテクノっぽい曲などはなかなか特色があり、作品独自のカラーを出すことに成功していると言えるでしょう。別の見方をすれば「曲まで何かの模倣かよ」とも言えますが、面白味のない曲に終始するよりはウケを狙ってくれた方が潔いのです、この作品に限っては。

反面、そういったステージ的な特色に乏しい場所で流れる音楽の多くは「格闘ゲームの曲ってこんな感じ?」という特筆するところのない音楽になっているのが残念です。京都ステージなんか、もっと思いっきり「和」のテイストに寄せても良かったんじゃないでしょうか?青森ステージでは津軽三味線やってるんですから。

キャラクターボイスに関しては、次回作「プリティ・ファイターX」からは有名声優を起用するようになるんですが、本作においてはイマジニアの社員では?などと噂されるほど素人っぽい声が充てられています。素人だとしたらかなり上手な素人だとは思いますけど。もともと声優には疎い筆者ですが、クレジットを見ても知ってる名前が一つもありません。まあ有名無名はあまり問題じゃないですけど、「ストII」なんかはいち早く宮村優子とか使ってましたし、有名声優は作品のウリになりますんでね。個人的にはそこに興味はないんですけど、後の「プリティ・ファイターX」や「FIST」はそういう売り方をしていくことになります。

ボイスのバリエーションは標準的なんじゃないでしょうか。掛け声、技名のシャウト、ダメージボイス、勝ちボイスなど、スーファミソフトとしては各キャラそこそこ用意されており、音質も悪くありません。唯一不満なのは、不発に終わった技やキャンセルされた技に対するボイスが、モーション中断後もカットされず垂れ流しになるところ。技の中断とともにボイスもカットアウトしてほしかったですね、細かいところですけど。すでに空振っている技のボイスだけがいつまでも残っている様子はなんとも間が抜けてました。
総評 - そして伝説へ?「FIST」へ続く道
いろいろ書きましたが、もろもろの要素はそんなにヒドくはないんです。それぞれのパーツは多少不出来でも、スーファミだからこれぐらいは許せる、というところに留まっていると思います。ただ、それらが集まって最終的に一本のゲームソフトになった時、マイナス面ばかりが作用し合ってしまい総合的に「イマイチ」になっていると、筆者はそう思います。それと、模倣作は真似事の域を出ないという事実ですね。見た目やシステムをヒット作に倣ったところで、バランスやCPUの思考、当たり判定といった内部的なものは簡単には真似できないのです。見た目や操作は「ストII」っぽいけど、プレイ感覚はまったくベツモノ、しかも劣化しているとなればそりゃ叩かれますよ。

最大の蛇足は、取扱説明書に掲載された壮大なバックストーリーと漫画でしたね。結局、あれだけの大風呂敷がゲームと何の関係もないということが、本作を伝説的な「クソゲー」の位置に押し上げた最大の原因ではないでしょうか。あれがなければ、おそらく本作はそんなにバッシングされなかったんじゃないかと。単純に、「制服美女たちが戦う格闘ゲームですよ〜」としておけば。3000万年前……とか言わなきゃ良かったんです。



サターン版「プリティ・ファイターX」ジャケット

1995年6月には、この「制服伝説プリティ・ファイター」をセガサターンに移植という形で「制服伝説プリティ・ファイターX(エックス)」がリリースされます。実際には移植というよりも新作に近い完全リメイクで、スーファミの8人に加えて新キャラが4人追加。メディアがCD-ROMになったことでキャラごとのデモムービーが加えられたり、一定ステージクリアに伴うご褒美グラフィックが用意されていたり、スーファミではなかったパンチラがあったり、そのため18歳以上推奨になったりしています。スーファミ版で懲りたのか、3000万年前なバックストーリーは消滅し、虎視眈々と世界制服を狙う新興宗教団体を相手に戦う制服美女たち、という単純明快な設定が取り入れられ、それを反映させたキャラクターが対戦相手として登場してもいます。時期的に新興宗教団体という設定がかなりきわどかったことは想像できますが、「世界征服」と「制服」をかけている(と思われる)あたりはスーファミ版に比べて潔いかと。

グラフィックは(当時の)次世代機ということでスーファミ版から大幅に向上し、ゲームバランスも改善されています。スーファミ版と比べて総合的なクオリティアップが図られ、キャラクターボイスには有名声優を起用。これならば「クソゲー」と叩かれることなく……とイマジニアさんは思っていたことでしょうが、世間の評価は最悪なものでした。「総合的なクオリティアップ」とは言っても、あくまで旧世代機のスーファミ版と比べたら、というレベル。当時のサターンやプレステでリリースされていた他のソフトと比べてしまうと明らかに劣っていたのでした。システム面で言えば、格闘ゲームのスタンダードになりつつあった軸ずらしや回避、ゲージの蓄積による超必殺技、ダッシュ移動といった要素を一切組み込まず、スーファミ版とほとんど変わりません。バランス調整などでもスーファミの頃からあった問題点がそのまま残っており(それも移植?)、格闘ゲームとしてはやはり面白いものではなかったのです。

当時のサターン系ゲーム雑誌では読者によるユーザー投票が盛んに行われていたのですが、「制服伝説プリティ・ファイターX」は複数の雑誌で初登場とともに最下位を記録しまくりました。あげくにソフトバンクが発行していたセガサターンマガジンでは「最下位女王」という不名誉な称号まで与えられ、さすがにイマジニア及び制作スタッフ一同も懲りたのではないかと思われました。



「FIST」パッケージ

しかし、「プリティ・ファイター」が「プリティ・ファイターX」になったように、世間の悪評などものともせず、イマジニアはさらなる続編をリリースします。1996年にプレステとサターンで発売された「FIST」です。当サイトではそちらのレビューも行っていますのでここでの詳細は割愛しますが、やっぱり世間の評価は最悪。ストーリーは徹底的に無駄を省いて「アイドルを目指す女の子たち(一部例外アリ)が、有名プロデューサーの手によるデビュー権を獲得するため格闘大会で優勝を目指す」というシンプルなものになりましたが、「プリファイ」を作った会社が3D格闘を作ったらどうなるか……という点についてはおそらく、アナタの想像通りでしょう。いや、それ以上かもしれません。はっきり言って、「FIST」をプレイしたら「プリファイ」がまともに思えてくるほどです。

さすがに「FIST」の酷評がキツかったのか、以後プリファイシリーズの新作はリリースされていません。筆者はPS2なんかで最新作がリリースされたら面白いなー、と密かに期待していたのですが、実現しませんでした。それどころかイマジニア社のホームページのどこを見ても、一連のシリーズについての記述がないのです。「そんなゲーム知りませんよ」とでも言いたいのでしょうか?

リリースするたびにかつてないほどの酷評の嵐に晒されても、シリーズが3作も製作・発売された事実。つまり、可愛い女の子と声優が出ていれば、格闘ゲームとしてはどれだけ不出来でも採算が取れるぐらいには売れていた、少なくとも新作の開発にゴーサインが出せるぐらいには商売になっていた、ということです。さらに言うなら資金が回収できたということは、これを中古ではなく新品できちんと購入した人がそれなりに存在したということの証明。なんというか男ってヤツは、ギャルと制服が好きなんだねぇ〜、と実感する次第であります。
どんな人に向いたゲームなのか?
このゲームをプレイすべき人
・「ストII」のような格闘ゲームに慣れた人
・格闘ゲームも好きだけど美少女キャラはもっと好きな人
・制服に思い入れがある人
・「FIST」の原点に興味がある人
・クソゲーしか愛せない人
・黒田愛実氏の熱狂的なファン

このゲームをプレイすべきではない人
・「ストII」を心の底から愛している人
・格闘ゲームでは日々鍛錬を怠らない人
・格闘ゲームは男臭くないとダメだという人
・アニメ絵や美少女キャラに拒否反応を示す人
・ゲームではストーリーを重視する人
・クソゲーと言われるものは見たくもない人

シリーズに興味を持った方は、どれかひとつと言わずにすべてゲットして下さい。学習することを知らない愛すべきクリエイターたちが作品を作り続けるとこういったものができる、という良い実例です。こんなサンプルはなかなかないですよ。もちろんクソゲーマニアは全作品必須!

スーファミ版中古500円前後。 サターン版「X」はややレア。 ソフトより攻略本の方が高い!