パッケージ画像 GAMERS EDEN的ゲームレビュー File007.
オリビアのミステリー

ジャンル:パズル
制作:アルトロン
SHVC-ZY

1994年2月4日発売
定価:9800円

画像への直接リンクは禁止させていただきます。


検索などで直接いらした方、当サイトは「GAMERS EDEN」です。
エクゼクティブプロデューサー  MASAO CHAN ゲームデザイン  HIRAPON
シナリオ  TEIKOKU MANIA プログラマー  YNGVI
 HOFUKUN
グラフィックデザイン  MARO     アニメーション  BABEL NOTO
サウンドデザイン  N. SHIODA

謎めいたパズルゲームなんです。
「オリビアのミステリー」……このタイトルだけを聞いて、あなたはどんなゲームを想像しますか?ミステリー風味のアドベンチャー?それともサウンドノベルかな?はい、どっちもハズレです。なんとなんと、パズルゲームなんです。その昔、ファミコンディスクシステム用ソフトとして発売された「きね子(キネティック・コネクション)」をご存知でしょうか。後に「2」も発売されましたが、つまりは「きね子」タイプの「絵が動くパズルゲーム」なのです(メーカーは違いますが)。実は筆者、目の前にジグソーパズルなんかがあろうものなら時間を忘れて没頭することもあるぐらい、けっこうパズルって好きなんですよね。もちろんパズルがゲームで遊べる、となれば放っておくことはできません。ましてスーファミとくれば、美しいグラフィックとゴージャスなサウンド、そしてそれ相応のボリュームで楽しませてくれるはず。なので「オリビアのミステリー」にも期待したんですよ〜、当時、プレイするまでは

今回はこの作品を知らない方のために筆者も初心に返り、まさしく初めてプレイするかのような気持ちでレビューさせていただきます。ソフトを手にしてまず最初に目に飛び込んでくるのは、そのパッケージに描かれたイラスト。上の画像ではわかりにくいかもしれませんので、ちょっと大きくしてみましょう。

パッケージイラストUP

どう見ますかコレ。なんつーかですね、中学生ぐらいの時にクラスでちょっと絵の上手い友達が描いたような絵といいますか、ぶっちゃけ商品として販売されるレベルの絵ではないですね。独特と言えば独特な絵柄ではありますけど、味とかそういう言葉で誤魔化せるものではありません。あらゆるユーザーが本作を語るとき、まずこのイラストへのツッコミから入るのがお約束になっていることからもわかる通り、やっぱり誰がどう見てもお世辞にも「上手い」とは言えないものに違いありません。かろうじて「筋肉質なガタイの良い金髪の兄ちゃん」ということはわかるものの、それよりも「もしかしてこのゲームはヤバイのでは」とユーザーに不安を抱かせる破壊力に満ちています。なにがヤバイって、本作はパズルゲームなわけで、もしも中身もこんな絵のオンパレードだったらクリアそのものが難しくなるじゃないですか。

ま、まあ、パッケージイラストなんてものは、ホラ、ゲームそのものとは関係ないですから。ゲームを見てみないことには始まりませんよ。ということでさっそくゲームを起動!

タイトル画面

……さらに不安になったのは筆者だけですか?まあパッケージイラストと比べればマシなグラフィックですが、「動く絵パズル」なクセにタイトル画面は微塵のアニメーションもありません。それよりなにより不安なのは音楽ですよ。メインのメロディに絡んで対旋律を奏でる木管、ビミョーにハズしてませんか?狙いですか?本作の音楽担当は塩田信之さんという、けっこういろいろな作品を担当されている人なんで、こんなデタラメな曲を作るとは思えません。おそらくゲームデータとして落とし込む段階で何らかの負の力が加わったのでしょう。そう思って聴くと、本編の音楽もパートがズレてたりテンポがおかしいような気がしてくるから不思議です。

このタイトル画面でBボタンを押すと、純白画面にピンクの文字という、ファンシーなパスワード入力画面に移れます。コンティニュー用ですかね。入力したことはありませんが。
電波シナリオと超高難易度の「動くパズル」
とりあえず、プレイしてみないことには、ねえ。タイトル画面なんて飾りです、えらいヒトにはわからんのです。さて、パズルというジャンルのゲームは、レビューがラクです。複雑なシステムはないですし、プレイ時間が短く、なんと言っても長いストーリーがありませんから、自分がプレイした感想をまとめれば立派なレビューに……。あれ?なんか文章がスクロールしてきたんですけど。ほほう、パズルゲームなのにストーリー仕立て、なんですな。サウンドノベル風味ってか。そういえば取扱説明書にそれらしい記述がありましたっけ。「皇帝の娘を助けなければならない。そう思い込んだ男が、冒険の旅に出る」……ずいぶん思い込みの激しい主人公のようで、やたらに壮大・しかし半端なプロローグなのが気になります。そして、そのストーリーとパズルがどう関係してくるのかも見もの。というかですね、パズル以前にこのスクロール文章、初回プレイにおいてはしっかり読むためにポーズぐらいさせてほしいのですが、ユーザーのことなどおかまいなしに勝手に流れては消えていきます。本当に読ませるつもりがあるのか、疑問を抱かずにはおれません。逆に早送りやスキップもできません。何度目のプレイにおいても強制的に読まされます。

また、このストーリーも荒唐無稽というか、はっきり言って電波入ってます。支離滅裂というわけではないのですが、展開が常人の考え得るものではなく、ベクトルが常に斜め上。文章そのものもプロが書いたものとは到底思えず、句読点の位置が微妙なうえに漢字を使ったり使わなかったりと、どのあたりの層をターゲットにしているのでしょうか。本作を語るうえで、このブっ飛んだ電波文章も欠かせないツッコミどころ。ですのでここではじっくりゆっくり読んでいただきながら、適宜ツっ込んでいきたいと思います。まずはゲームスタート直後の文章から。文字、句読点、改行は原文のまま。強調表示は当方で意図的に行ったものです。

すぎさってしまったことをあれこれとかんが
えるのは、まだおきていないことについて心
配するのとおなじくらい意味のないことだと
もいう。
しかし、気になるのはあの事件は結局、ただ
のじこだったのかそれとも何者かがわざとや
った事だったのかということだ。
それは、なつのことだった。

ある日、水道局のビルで爆発があった。局の
ビルはくずれ、給水パイプもだめになった。
ためてあった水がどっとながれでてしまい、
まずいことに軍のレスキューチームの車も水
のなかへしずんでしまった。
あまりのことに、さすがのレスキューチーム
も、ただぼうぜんと水につかった自分たちの
ビル
を見ているしまつであった。

改行ポイントがデタラメで読みにくいことこのうえないですね。ということで、いきなり主人公らしき人物の回想から始まったわけですが、いきなり「あの事件」と言われてもね。夏のある日、水道局で爆発事故があったと。それが単なる事故なのか、それとも何者かのしわざなのだろうかと考えているわけです。で、崩れたのは水道局のビルで、水の中に沈んだのはレスキューチームの車。しかし、軍のレスキューチームが呆然と見ているのは「自分たちのビルであった」……状況がまったく繋がっていないんですけど!どこに「軍のレスキューチームのビル」の記述があるのですか?突然強制的に読まされた意味不明な文章に混乱していると、

1面

問答無用でパズルスタート!何をすればよいかは、見ればすぐにわかりますね?中央の額縁(?)の中に、バラバラのピースをうまく繋がるように並べていけばいいのです。もちろんここでお見せする画像は静止画ですが、実際のゲームではすべてのピースの中で絵が動いています。動きがある以上、それもきちんと繋がるように配置しなければなりません。方向キーでカーソルの移動。Bボタンを押しながら方向キーを操作するとカーソルの移動速度が速くなります。Aボタンでピースをつかんで移動させたり、置くことができます。Xボタンでピースの左右反転、Yボタンで上下反転です。操作方法をフンフンと手に馴染ませつつプレイするうち、マスの数よりもピースが多いことに気付きます。これぞ「ダミーピース」というもので、簡単に言えばニセモノ。見た目はホンモノそっくりなのですが、正しい場所に置くと消滅するという、プレイヤーをイライラさせることだけを目的に用意されたフィーチャーです。ゲームを面白くするのならばともかく、ただムカつくだけの障害物なのダ。

それよりも問題なのは、パズルゲームなのに何の絵が描かれているのか推測すら困難なこと。説明書によると、直前の文章で提示された状況から完成形を想像してね、とのことなのですが、ユーザーはパズルがやりたいのであって、電波文章の脳内解析なんかしたくありません。また、一般的なパズルに見られるピースのデコボコがなく、「おそらくこのピースどうしが隣り合うはず」という予測もできません。さらにパズルを困難にしているのが、ガイド線すらないキャンバス。どのあたりに置けば良いのかという目安が存在しないため、微妙な位置の調整を何度となく強いられます。たとえば最初に完成形を一瞬見せるとか、正しい場所に置くべきピースを置いたら何か音がするとか、そういう親切さが欲しかったですね。あくまで突き放した難易度を目指したというのなら受け入れるほかありませんが。そんなわけでどうにかこうにか絵の繋がり、動きの連なりのみを手掛かりにしてパズルを完成させることができました。

1面完成図

……これはいったい何ですか。もしかして「あまりのことにただ呆然と、水に浸かったビルを見るレスキュー隊員」ですか。中央のがビルですか。山かと思ったよ。手前の男は何してんの?というかみんな一心不乱に傘を振ってるのはどういうつもり?そもそもこの絵の質はどうしたもんでしょう。アニメーションしてるってだけで、イラストとしては何か、完成してもぜんぜん嬉しくないのはナゼ?さらに、左右が逆でもかまわないってあたりがハンパです。まあ、一応ステージ1はクリアってことのようです。流れは把握できました。「ストーリーを読む→ストーリーから場面をつかみ、パズルの完成形を想像しながら並べる」の繰り返しになるわけですね。えーと、ストーリーは絶対に必要なものでしょうか?もちろんこの後、面白くなっていくんですよね?じゃあ、2面にいきます。もちろんここでも電波文挿入。以後はスペースがもったいないので、原文の改行は無視します。

パイプから水がどんどんもれていく。このままでは水不足のなつにそなえて、ためておいた水がなくなってしまう。きわめてあさい所に塩がうまっているこの地方において、これはたいへんなことであった。塩があるために、いどをほっても塩水しかえることができず、したがって給水は水道局にたよっていたのである。これはたいへんだ。それはわかっていながらも、どうすることもできない。なにしろ水道局のビルは爆発でゆかがほとんどぬけてしまい、パイプのあるところまでいくことができないのだ。

だれもが「なんとかしなければならない」と思った。しかし、だれもが「なんとかなるだろう」とも思った。ほうっておけばたいへんなことになるかもしれないが、どうしていいかわからないし、だいいちなんとかするにしてもめんどうだ。とてもたいへんなことだから、だれかがなんとかするだろうと思った。しかし、そんなことをかんがえている間にも水はなくなっていってしまう。私はついに、ビルのカベを登ってパイプのバルブをしめにいくことにした。

とにかく「たいへんなことだ」と事の重大さを強調し、危機感を煽ります。しかし一方で「どうすることもできない」「めんどうだ」「だれかがなんとかするだろう」を連呼されてしまうと、おまえら実はそんなに困ってないだろ、と。長いだけでここまで内容のない文章も珍しいですね!筆者も人のことは言えないですけど。つうか「きわめて浅い所に塩が埋まっているこの地方」って、知るかそんなこと。ということで、さすがにヤバいと思ったのか、とうとう自らビルを登って水を止めに行くことを決意した主人公。次のパズルはコレだな。

2面

無理だああああ。かろうじて、主人公と思われる人のパーツはなんとか組めるとして、周囲のビル窓!上へ下へとスクロールしまくって、目がチカチカするうぅぅぅ。えーと、とりあえず主人公は「登ってる」んだから、窓は下へと通り過ぎるはず。すべてのピースに映る窓が下に流れるよう反転したうえで、人物から組んでいきましょう。

2面完成図

正解はこう。それにしてもこの絵……。一説によるとプログラマーが描いたとも。グラフィック担当スタッフいないの?ウソでしょ?本当なら、よくそれでゲーム開発にGOサインが出ますね。ファミコンじゃないんだから。ちなみに、画面右上のタイム表示が気になりませんか?もちろん気になりますよね?あれは、そこまでのプレイタイムです。面白くもなんともない答で正直すみません!
ますます意味不明になっていく電波文
どうにかこうにか、パイプにたどりついたが、時はすでにおそすぎた。水はほとんどなくなっていて、人々に給水するにはすくなすぎる。くろうしてビルをおり、そのことをつげるとみなは、あぜんとつぶやいた。「ああ、どうしよう。」いまさら、おそいのである。

水道局なしで、水を手に入れるには、大型給水塔しかない。大型給水塔は、地下ふかくから水をすいあげるので、まみずをえることができ、さらに水のでるところをもとめて、自分であるいていくという「すぐれもの」だが、すいあげる水がすくないので、いちどにくばれる水はすくなかった。さらに、大型給水塔は水道にくらべて、たかくつくので、数もそんなにはなかったのである。

そんなわけで、人々はすくない給水塔に列をつくり、水をもらっていた。

自分で動くことをせず、ひたすら他力本願な人々に呆れる主人公。オマエだってさっきまでは面倒くさがってたじゃん。急にやる気になってビルに登ったりしてるけどさ、そもそもオマエ誰ですか?普通、主人公っていうのはもうちょっと身分を明かすものでしょ。まあいいです、別に興味もないですから。というところで唐突に提示された「大型給水塔」の存在。しかも「水を求めて自分で歩く」ものだというブッ飛び設定!そして「吸い上げる水が少ないので、一度に配れる水は少なかった」という小学生レベルの作文!3面にしてもうウンザリです。
3面 3面完成図
3面はこんな感じで、右側が完成形。基本的には人の列が中心なので、比較的揃え易いと思います。左側にあるのが大型給水塔のようです。人間はそろえるのがかんたんなので、クリアするのはかんたんでした。先生!ボクにも小学生の作文できました!次は4面です。

その年のなつはとくにあつく、さらに雨もなかなかふらなかった。水道局の水はあっというまにそこをついてしまった。給水塔があれば、すこしながら水が手にはいるので、がまんすればどうにかなり、命のキケンはなかった。しかし、山では大型給水塔ははいってくることができず、水道にたよっていたのでたいへんであった。まあ、このあたりで、わざわざ山にすむ者はおらず、昔からそこにすんでいる人々は、ためイケがあるのでもんだいはなかった

それでも、ついちかごろに山にうつりすみ、ためイケもつくらずに水道にたよっていた者があいた。帝国研究都市である。

研究都市は帝政に反対する過激派のテロをさけるために、山にうつったばかりであった。さらに、研究都市にはあつさをさけるためにきていた、皇帝の若い娘もいた。研究都市でつくられた天気予想システムをつかってみても、ほら、しばらく雨はふりそうもない。

「ほら」って誰に言ってんだコラァ!それはともかく、またまた「たいへんであった」と煽りながらも「がまんすればどうにかなる」ことや「もんだいはない」ことをストーリーに採り入れるのはいかがなものかと。じゃあ別にやらなくていいんじゃん、といった具合にプレイヤーのモチベーションを損なう危険があります。しかし!「帝国」とか「過激派」とか「若い娘」とか、アツくなれるモノがたくさん出てきましたよ!こりゃあやめるわけにはいきません。まあ、このグラフィックで「若い娘」とか言ったところでたかが知れてるわけなんですが。

4面

4面。天気予報でしょうか、テレビのフレームのようなものや「予想天気図」の文字がヒントとなります。まずはそのあたりを中心に組んでいき、あとは画面内を通過する太陽の辻褄を合わせることで完成に近付けていこうかと。
クリアにならず。 やっとクリア。
いったん「よし完成!」と思ったものの、なぜかクリアにならず首を傾げたのが左。右が完成形。どこが違っているのかわかりますか?つか、テレビはともかく右側の意味不明なオブジェはいったい何?

さて、水道局のビルからおりたあと、私がなにをしていたかというと、ちかくのサーカスでアルバイトをしていた。水道局のカベをのぼっていたのが気にいったらしく、スカウトされたのだが、することはもっぱらみずくみであった。まあ、べつにすることがあるじゃなし、そんなにふまんではなかった。

とある日ウワサをきいた。皇帝の娘が研究都市でくるしんでいるという。皇帝の、娘なんだから水ぐらいなんとでもなりそうなもんだが、皇帝が人々からとりあげた水をおくろうとしても、「人をくるしめて手にいれたような水は飲めません」とことわったとか。もともとあの2人はなかがわるいときく。ほら、皇帝があのとうり過激で、娘は娘でしずかながら気はつよいから。

で、私はかんがえた。べつに皇帝の娘にかりがあるわけではないが、くるしんでいる女の子をみすてるわけにはいかない。かといって、私はほかの人までやしなえる水をもっているわけではない。では、どうするか?

ふと、思いついた。そうだ、水がいくらでもあるとこへ行けばよい。だが、どうやっていけばよいのか?そうだ!サーカスでつかう大砲でうってもらおうではないか!そして、そこで給水車にのってかえってくる、そして人々に水をくばり、皇帝の娘に水をわたす、皇帝の娘にほめてもらう、なんてすばらしいかんがえなのだろうか!

すばらしくねえよ!バカだろ、おまえ。つーか「ほら」って言うな。「あのとうり過激」とか「静かながら気は強いから」とか言われても知らないし。ていうか「水道局のカベを登っていたのを気に入られて」サーカスにスカウトされたのに、やらされてるのは「水汲み」。そこのサーカスも気が狂ってますね。でもって単に「皇帝の娘が苦しんでる」という噂を聞いただけなのに、水が原因に違いないと思い込む主人公。さらに会ったこともない皇帝の娘を「見捨てられない」というオヒトヨシなんですが、そこで思いついた妙案が「大砲で撃ってもらって水のあるところに行く」。普通は死ぬぞ、それ。ほいでもってさっそく、

5面完成図

ドーン。
主人公はお空の星になりましたとさ。5面はだいぶカンタンでした。左上のガスマスクをしているふたりはサーカスのメンバーらしいのですが、ショーの最中にもいちいちガスマスクをするのでしょうか。というか、サーカスでこんな大砲を使ってどんな出し物を?

メンバーのみまもるなか、私は大砲でうちあげられた。たかく、はやく、そして遠くへ。みなれたところはまたたくうちにとおざかり、チラリと山の研究都市がみえた気もするが、気のせいだったのかもしれない。さらにとおくへ、すくなくとも国ざかいはこえないと水は手にはいりにくい。それにしても、そのころはまだ飛行機がなかったのでよかったが、いま、こんなことをしようものなら対空砲でうちおとされかねない。よいこのみんなはマネしちゃダメだぞ

さて、国ざかいのしるしを飛びこえたあたりからこまってきた。スピードがおちない。それどころか空気とのまさつがちいさくなってきたので、よけいにスピードがでてきた気さえする。学者ツォルコフスキーによると、空のうえの方は空気がうすく、さらにあがっていくと空気はなくなってしまうともいう。

こまった。

おとなしく宇宙のチリになればいいんじゃネーノ?なんか空気がなくなることを心配してますが、その速度域を生身で飛んでるんだから、上空に到達する前に窒息死するはずです。安心しなさい。「よいこのみんなはマネしちゃダメ」なんてあたりは、作者は最高に面白いと思って書いたのでしょうが、ありきたりすぎて寒いです。というところで6面。センターにいる主人公らしき絵はわりとすぐ組み上がると思いますが、やっかいなのは周囲の空。似たようなピースが山ほどあるので、雲が流れていく方向を合わせながらはめていくしかありません。で、完成。

6面完成図

その服装はなんのつもりですか?つーかそろそろ身元を明かして下さいよ。それと仮にも主人公なんだから、もうちょっとキバってデザインしてあげなさいよ、スタッフ。
跳ね上がるパズルの難易度
まずい。
くらくなってきた。
くるしいし。
どうしよう。

いて、なんかにぶつかった


それが月であった

天のたすけか地のなさけか、そのころは月にも、空気も水もあった。ただ、月人はいなかった。いや、ただしくは、むかしはいたらしいのだが、もういないようであった。きれいにかざられたたてものや、りっぱな道なども、なんとなくわびしささえ、ともなっていた。月の人々はどこへいってしまったのか、なぜ、月をみすてたのかは、わからない。ただ、私にはそういったことにきょうみがあっても、しらべているひまはなかった。私は水をくみにきただけなのだから。

アトミック水くみ機をみつけた私は、水くみをまかせて、自分はかえる方法をさがすことにした。なにしろ月に大砲は、ない。

帰る手段のアテもなく、「なんてすばらしいかんがえなのだろうか!」と自画自賛していたんですね。救いようのないバカヤロウです。大気圏を突破し、生身で月に到着しても「なんかにぶつかった」程度の感想。「昔はいたらしいのだが、もういないようであった」という感動的ですらある国語力。文章だけで言えば「里見の謎」も軽々と超えてしまいそうです。不名誉なことですが。てか、「アトミック水くみ機」ってなんだよまた突然。というところでパズルももう7面です。何面あるんだ?という気もし始めてますが、この世に実在しない空想の産物を、お手本もなしにパズルにしちゃうあたりがなんともミステリー。

7面

……ピース、増えてねぇ?

そう、ここからピースが今までのパズルよりも細かくなっています。それだけ分割数が増えており、ご覧の通りパッと見ただけでは何が描かれているのかまったくわかりません。根気のないプレイヤーはこのあたりで挫折するんじゃないでしょうか。本当に根気のない人は2面で挫折してるでしょうけど、耐えに耐えて頑張ってきた人でも7面は壁になるんじゃないかな。
7面初期 7面中期
筆者が採った方法は、とりあえず組めそうなものからブロックごとに作っていくというもの。パッと見て「これとこれは隣り合うだろう」と思ったものをとりあえずまとめておく。するとさらに大きな視点での繋がりが見えてきます。左の画像から右の画像へと至る過程で、徐々にではありますが全体像に迫っています。しかし、ここまで作り上げて天地が逆であることに気が付きました。
7面後期 7面完成図
天地を逆にして、再度組み上げていきます(左)。そして完成です(右)。手間取っちゃった。

さて、いろいろさがしたすえにやっとつかえそうなものをみつけた。みるだけで、空を飛ぶためのものであることはわかる。なにしろ、とりのかたちをしているのだ。これが飛ぶためのものでなくして、なんであろうか?ただし、学者モジャイスキーがつくった飛行機とはちがって、はばたくようになっているのがとくちょうであった。なお、この機械はナスカ地方にいくとでっかいイラストがあるので、ひまな人はみにいってみるとよい。だいぶディフォルメされているが、イメージはつかめるでしょう。だれがかいたかしらないが。

しばらくパタパタと飛びまわったころには、水くみもおわっていた。とりあえずはすこしあればいい。これはこれで皇帝の娘にあげちゃって、あらためて水道パイプでもひけばいいさ。月に水があるなんてだれもしらないだろうな。さ、それではいそいそと、かえりますか。

月に水があることを知らない以上に、水道パイプをひくのは無理だと思います!つーか偶然とはいえ命がけで月まで来たのに、「とりあえずは少しあればいい」「これはこれで娘にあげちゃって」とは。どんだけ行き当たりバッタリなんでしょうかこの主人公は。ナスカのイラストについてのくだりでは「イメージはつかめるでしょう」、なぜここだけ敬語?言葉遣いまで行き当たりバッタリですか。

8面完成図

8面も7面と同様の細かいピースですが、6面の応用なのでそれほど難しくはありません。鳥型飛行機もわかりやすいデザインなので、全体像を把握するのはたやすいでしょう。ちなみにこの飛行機、タイトル画面にも登場しています。

パタパタとかえろうと思ったが、月からでるだけでかなり燃料のエーテルをつかってしまったらしい。はばたきがおそくなってきてしまった。こまった。
と、ちかくに人工衛星があるでないの。おそらく月の人々がむかしあげた物であろう。どれくらいむかしの物か、はっきりはしないがいまだに動いているというのはおどろきだ。でも、どうせつかう人もいないことだろうから、この人工衛星から燃料をもらってしまおう。飛行機械からでる空気をすいながら人工衛星の燃料を飛行機械にうつしかえる。からだがういてやりにくい。
さて、どうにかこうにか燃料うつしかえもおえて、地球をめざす。

「どーせ誰も使わないからもらっちゃえ」という、落ちてるモノは俺のモノ的な発想。世間一般ではそれをネコババと呼ぶんだぜ。使おうが使うまいが物には所有権というものがありまして……ってウチは何のサイトだ。まあ地球に帰れるかどうかの瀬戸際ですから、主人公も必死です。思い付きで月まで来たものの帰る方法を考えておらず、たまたまあった飛行機械で、たまたまあった人工衛星から燃料をもらって……もしかしてとてつもない強運の持ち主なのでは。
9面 9面完成図
ここもそんなに悩みません。中央でクルクル回ってるのが、文章で語られている人工衛星のようです。ずいぶんイメージが貧困なことについては触れちゃいけません。星空がやっかいそうに見えますが、月があるおかげでわかりやすくなっています。右側が完成形。次からいよいよ10面に突入。まだ終らないの?

さあ、地球にかえって来た。地球につくとからだがおもい。とりあえず、するべきことは研究都市までいくこと。そして皇帝の娘に水をわたすこと、そして皇帝の娘をつうじて水道局に月までの水道管工事をたのむことだ。飛行機械の燃料はまだだいじょうぶ。こんどは研究都市めがけてパタパタと飛ぶ。研究都市は軍にまもられていたが、皇帝の娘に水をとどけにきたというだけであんがいかんたんにいれてもらえた。なにしろ、皇帝に対する過激派というのはけっこういるのだが、その娘に対する過激派というのはまず、いない。娘は温和で、過激な皇帝が退位したあと、温和な彼女が帝位をついでくれれば、なにもこちらもあぶないおもいをして過激なことをする事はない。

そんなこんなで皇帝の娘にあうことができた。おもっていたよりもずっとこがらで、きゃしゃなかんじさえする。そんなに私と、としがちがうわけじゃなく、ただの女の子なのだから、とうぜんといえばとうぜんだが、なんとなく、なんとなく。

皇帝の娘は、私のビル登りから、月からかえるまでのはなしをたのしそうにききながら水を飲んでいた。

ついに水を持ち帰り、皇帝の娘に会うことができた主人公……って、ツッコミどころが多すぎてどうしたものやら。水をあげた恩をタテに皇帝の娘から水道局に口利きしてもらい、月までの水道管を作らせるという壮大な計画なんですけど、いま初めて聞きました、そんなこと。なるほどねえ、そこまでの考えがあったからこそ、必死な思いをしてまで月に行って来たわけだ。全部偶然の産物だけどな。つうか主人公、いつの間にか正義のヒーローみたいになってるんですけど。そして研究都市「めがけて」飛ぶ主人公。「めざして」ではなくあくまでも「めがけて」なんです。

そんな主人公の上をいくバカどもが、軍の連中。皇帝を守る立場にあるにもかかわらず、どこのウマノホネとも知れない男が「皇帝のお嬢さんに水をお持ちしやした〜」と言っただけですんなり謁見を許可、ありえん!そこまで甘いセキュリティチェックじゃあ、テロが絶えないのも無理はないですね。電波文もここにきて冴え渡り、「娘は温和で、過激な皇帝が退位した後、温和な彼女が帝位を継いでくれれば」ってワンセンテンスに同じ言葉がカブりまくり。「なにもこちらが危ない思いをして過激なことをする事はない」って、オマエが過激派だったのか!

というわけで、正体不明の男(もしかすると過激派)が持って来た水を、毒見もせずにグビグビと飲む皇帝の娘。父が民から奪い取った水の方がよっぽど安全な気がするのですが、ここでパズルです。おそらく皇帝の娘が描かれているはずです。ドキドキ。

10面

2人の人間らしきものが描かれているのがわかります。たぶん主人公と皇帝の娘でしょう。なんとなく、なんとなく。わかりやすい人間から組み立てていき、それらをキャンバスの上で合体させ、残りを埋めていきます。

10面完成図

さきほど主人公は皇帝の娘を「思っていたよりもずっと小柄で、華奢な感じさえする」と評していましたが、同じぐらいの背丈じゃん。女性にしては大柄に見えるぞ。もしかして主人公がチビなのか?それよりなにより、皇帝の娘ってどこかで見たような気がするんですけど……。

わかりやすい比較。

まさか!

あのパッケージイラストは皇帝の娘だったのか!娘……娘……どう頑張っても娘に見えないのは筆者だけですか。冒頭で思いっきり「筋肉質なガタイの良い金髪の兄ちゃん」とか書いてるオレ。言われてみればムネがあるようにも見えますけど、パッケージではちょうどそこにタイトル文字が被さってるんですよぉ。電波文章よりも稚拙な本編グラフィックよりも、これが本作品いちばんのショック!
終局に向け急展開、パズルもさらに複雑化
娘ショックが抜けきらないまま、ストーリーを進めます。

だが、ことはそんなにうまくははこばなかったのである。

そのよく日、私は軍につかまえられ、娘がひどく、くるしみだしたという事をきいた。水がわるかったわけではない。そのなかにナゾの生命体がはいっていたのだ。研究都市の研究によると、その生命体は人間の中にすみ、やがてその人間をころして飛び立つという生き物らしい。もしかすると月の人々が月をみすてたのはこいつのせいなのかも、しれない。

そんなことはどうでもよい。なんで私がよばれたかというと、きくところによると、ピラウトラというらしいこの生命体をもってきたのが私であるために、皇帝の娘は私が「かるく、ぼうけんの1つや2つをこなして」どうにかしてくれるといったらしい。

こうなってはしらないふりをしてごまかすわけにもいかない。私はとりあえず、薬学にすぐれた東洋へでかけてみることにした。

ほら、言わんこっちゃない。わけわかんない男が持って来たわけわかんない水なんか飲むからだよ、娘さん。しかも水が腐ってたとか傷んでたとかではなく、ナゾの生命体が潜んでいたとは!しかもとびきり凶暴な。そんな重大な事実を知ってなお「水が悪かったわけではない」と自分に非がないことを主張する、往生際の悪い主人公。明らかに悪い水です!そしてその事実も彼にとっては「そんなことはどうでもよい」とどこまでも無責任。娘はというとそんな危険な水を飲ませやがった主人公を責めるでもなく、「きっと大冒険をして私を救ってくれるわ」と根拠のないことを言ってます。コイツの何を信じてるんだ、娘さん。とりあえず普通なら銃殺にもされようかというところを釈放され、しらんぷりはできないからと東洋へ向かう主人公。それも当てずっぽうくさいなあ。
11面 11面完成図
11面は、東洋へ向かうべく旅立った主人公が乗っているものと思われる汽車の絵。汽車部分はそれほど難しくなく、わりとサクッと組み上がったものの、困ったのは上部の背景。似たようなピースが多く、ここで思いのほか時間を消費してしまいました。さっきまで飛行機械で飛び回ったり、生身で月まで行った人間が地道に鉄道旅行とは。またサーカスの大砲で東洋に向けて撃ってもらえばよかったのでは?まあそれだと似たようなパズルばっかりになってしまいますけど。

さて、東洋はとおい。ウラルからチャリヤビンスクをぬけ、シベリヤをかけぬけて、地球のやねといわれるけわしい山々をこえてやっとついた。東洋のうつくしさはたびのつかれをいっきにふきとばした。うみのようにひろいかわといい、むげんにつづくようなサイクリングコースといい、すごいのである。

いやはや、東洋はすごいとこである。薬さえも機械でつくってしてしまうのである。なんでも人がおおいので、薬やがいちいちつくっているのでは間にあわないそうだ。機械が薬をつくっているというと、「なにかのはずみでへんな薬ができたりしないかしら?」と、気になる人もいるかもしれないが、だいじょうぶ。ここの人のはなしによると、「アイヤー、機械、まちがえ、ないアルヨ」とのことである。なんかよくわからないがたのもしいではないか。

いったいどういうことをするのかわからない機械がおおいが、なんとなくハイテクである。

「人工衛星」「飛行機械」「過激派」なんかは漢字だったのに、「うみ」や「かわ」はヒラガナ。フォント作るのが途中で面倒くさくなりましたか?東洋を訪れた主人公の感慨は、海とサイクリングコースがまったくの同列。すごいのである。東洋の凄さは「薬さえ機械で作ってしてしまう」ところらしく、「里見の謎」もかなわないぐらいの国語力をして心配してしまうしてのでして。「なんかよくわからないが頼もしい」「なんとなくハイテク」って、最新技術についていけなくなった中間管理職のオッサンか。さて、開き直った感さえある電波文章を受けて、パズルです。

12面

ぎゃああああ!

ピースが、とんでもなく細かいものに。そんでもってそれぞれのピースがコマゴマとアニメーション。プレイヤーの視神経を破壊するつもりですか?テキトーにやっていたのでは絶対に完成しなさそうです
。とりあえず、わかりやすい緑色の薬ビンから並べ、そこからナゾのカラーメーターのようなものを手掛かりにして、上へ上へと組み上げていきます。
あれ、おかしいな。 12面完成図
いったん全部のピースを埋めたのが左の画像。でもクリアならず。どこが間違ってるのかと目を凝らしてもわかりません。見る限り矛盾はなさそうなのですが……。いったいどこが違うんだよ!となかばキレつつもやっと間違いを見つけて直したのが右の画像。これでやっとクリア。気分はほとんど間違いさがし……。どこが違ってたかわかります?

ところが、ここではナゾの生命体、ピラウトラに対抗する薬はつくっていないそうである。まあ、ナゾの生命体というからには、かんたんにその対抗薬が手にはいるとはおもっていなかったが、ここでつくってるのはうちみ、ねんざによくきく飲み薬だけだそうである。そいじゃこまるから、なんとかしてナゾの生命体に対抗する薬をつくってくれといったら、「アイヤー、それならとなりむらのハオ先生が、薬なんでもとくいアルヨ」と、おしえてくれた。東洋の人はみんなしんせつである。

さあ、こまかいところははぶくがハオ先生の家までやって来た。とにかく薬をつくってもらおうと、先生をよぶ。でもへんじがない。もういちど、よぶ。やっぱりへんじがない。どうしよう。いないのだろうか。だったら帰りをまつだけだ。せんたくがほしてあるからそんなにとおくへは、いってないだろう。

しかし、そのころハオ先生の家ではしばられた学生がたすけをもとめて、はっていたのであった。

何のアテもなく東洋までやって来て、やっぱり薬はなかったという行き当たりバッタリすぎる主人公。とことん呆れてしまいます。月から持って来たナゾの生命体なんて、その存在すらまだ知られてないはずで、もちろん薬なんかがこの世にあるはずもないことは考えなくてもわかりそうなものですが。それがどういった生命体でどのような危険があるかもよくわからないのに、なんとかして薬を作れとは正気の沙汰ではありません。それと、普通は干してあるのは「洗濯物」であって、「洗濯が干してある」というのはどのような状態なのか教えてもらえますか?

13面完成図

13面。またあの細かいピースを組み立てなければならないのかと思うと気が滅入りますが、なぜかピースが大きくなっていて難易度が低下しています。「助けを求めて這う学生」なんですが、這っているようには見えないのもさることながら、これ学生ですか?警官かと思った。

門のところで待っていたら、いきなりしばられたやつが、ころがってきておどろいた。彼のはなしをきいてみるとこういうことだ。なんでも、まえの日の晩、この地方をあらしまわるバンディッツがハオ先生をさらっていってしまったということである。ハオ先生の薬はなんにでもよくきく。その先生に毒をつくってもらい、さからう者をころしてしまおうというかんがえだ。さあ、どうしよう。

どうしようと、いったところで、することはだいたいきまっているようなものである。じつは、こんなこともあろうかと飛行機械を列車ではこんでいたのだ。私はいそいで飛行機械をとりにいくと、そのままのりこんでいっきに飛びあがった。なにしろ月からのってきたぐらいだ、だいぶなれてきた。

しばらくさがしまわり、いよいよバンディッツのアジトをみつけた。私はひくくかまえてリーダーめがけてまっすぐつっこむ。しかし、バンディッツもタケヤリをなげてくる。はげしいたたかいとなった。

現状を好転させ得る唯一の頼みの綱、ハオ先生(つか、誰)がさらわれた!主人公の強運はいつの間にか尽きてしまっていたようです。薬を作るのが得意なハオ先生ならきっと凄い毒薬を作れるはず。その毒を使って敵対者を殺そうと目論む、小学生並みの知能しか持っていないバンディッツ(及びシナリオ担当者)。たいした敵ではなさそうですし、そもそも本作はパズルゲームですから、敵の強さなど関係ありません。とゆーか、バンディッツなる名詞も唐突に登場したうえに説明不足。そいつらはなにものなのよ?で、ビルを登ったり月に行ったりした主人公、今度は戦闘にその身を投じます。どこまで万能な超人なのですか。
14面 14面完成図
ユーザーから「もしかすると最難問かも」と評されることの多い14面。ピースは最も細かい部類のステージで、かつ描かれたアニメーションがサイアク。中央でパタパタと飛ぶ主人公はまあいいとして、ビュンビュンと竹ヤリが飛んでくる背景、特に奥から手前へと流れてくる地面が極悪です。青・白のタイル地なのですが、ピース上ではチカチカと点滅しているだけにしか見えず、マス目のサイズは統一されていないわ、線はひしゃげているわとプレイヤー泣かせの要素が満載。クリアさせる気があるのかと問い詰めたい。予想通り地面で手間取りましたが、気合でクリア!へっへっへっ、ざまーみろ。

かった。
はげしいタケヤリのあらしをかいくぐり、リーダーにおどされているハオ先生をいっきにかっさらってやった。まあ、バンディッツたちをやっつけることはできなかったが、ひまがないのでしょうがない。

かえりもうしろからはげしく飛んでくるタケヤリをあるいはかわし、あるいはたたきおとしながらかえってきた。

とにかく、ハオ先生はおどろいてはいたものの、げんきそうでよかった。飛行機械のしくみなどを、しりたがっていたが、ざんねんながら私もわかってはいない

先生はなんでもするとまでいっていたので、いままでのことをはなし、ナゾの生命体ピラウトラの対抗薬をつくってもらうことにした。

先生は、そんなことならかんたんヨ、とシャカシャカと薬を作ってくれた。

仕組みすらわからない飛行機械を巧みに操り、ビュンビュン飛んで来る竹ヤリを華麗にかわすのはまだしも、叩き落しながらハオ先生の救出に成功する主人公。でもって、見たことも聞いたこともないピラウトラへの対抗薬を「かんたんヨ」と作り始める先生。このゲームの登場人物はみな超常能力をお持ちのようです。
15面 15面完成図
15面もピースは細かいのですが、手掛かりが豊富なため14面ほど難しくはないです。大きく分けると、何かの液体をかきまぜるハオ先生の手(と思われるもの)、波打つ液体、ビン、そして背景は主人公と皇帝の娘の会話シーン。まずは皇帝の娘あたりから組めば、左上部分はすぐできます。ビンの模様をヒントに、早くから下半分も組み上げてしまいましょう。あとは動き回る手と棒が繋がるように、抜けた部分を完成させます。

先生につくってもらった薬を手にもち、先生と学生のみおくりをうけて列車へいそいだ。飛行機械をのせて自分もとびのる。さあ、地球の屋根をこえ、シベリヤをかけぬけ、ウラルをこえてまっしぐら。

しかし、やっとかえっておどろいた。人々は娘が死んだはなしをしているではないか。あわててちかくの人にきいてみると、皇帝の娘はもうきょういっぱいもたないだろうということであった。こまった。

やむをえず、うまを1ぴきかりて研究都市へはしることにする。むりにたのんで、いちばんはやいうまをかりた。が、さすが、いちばんはやいうまである。のるまえにはしっていってしまった。はやいのなんの、おっかけるのがたいへんだ。うまは帝国の新兵器発表会の会場をつっきって走っていく。帝国のえらいやつらが、おおぜいきているが皇帝だけは、いなかった。軍の人々は、新兵器のスピードが馬とあんまりかわんないのにがっかりしたとか、そんなことを、あとできいた。

なにが凄いって、主人公が乗る鉄道が凄い!この文章を読む限り、主人公は研究都市の最寄り駅から中国(らしき場所)まで、列車のみで移動していたんです。つまり、「ウラルからチャリヤビンスクをぬけ、シベリヤをかけぬけて、地球のやねといわれるけわしい山々をこえて」という経路を貫く鉄道なんですよ!凄いじゃないですか。さて、娘のピンチを聞きつけて馬を借りたはいいものの、乗れずに追いかける主人公。結局、必死に走って研究都市へ。馬を借りるという手間は単なるムダに。最初からただ走ればよかったのにねえ。そんなムダ手間をパズルにしてしまう制作スタッフに頭が下がります。もしも次のパズルが「新兵器のスピードが馬と変わらないことを知ってガッカリする軍の人々」だったら神認定だったのに(ただし、邪神の方向で)。
16面 16面完成図
16面はその「勝手に走っていく馬」と、「たいしてスピードが変わらない兵器」が描かれています。馬から組むと、かなりの面積を手早く埋められるでしょう。ピンクの馬というあたりには触れなくてかまいません(笑)。あとは兵器の方ですね。戦闘機か何かでしょうがイカれたデザインをしているので、あなたが先入観として持っている戦闘機のフォルムは捨てた方が賢明です。見たこともない物体をパズルにしちゃうあたりが本当にミステリー。制作スタッフ以外に正解のわかる人がいないですからねえ。

なんてことだ。おいかけてるうちに研究都市についてしまった。なんのためにうまをかりたんか、ようわからん

皇帝の娘にあうのは気がおもかった。なにしろ、毒を飲ませたのが自分だからだ。もちろん、だからといってあわないわけにはいかない。

研究都市では私をまっていたようである。私がつくやいなや、まっすぐ皇帝の娘のところへあんないされた。

皇帝の娘は思いのほか、しっかりしていた。はじめにあったときと、まったくかわらぬシッカリとしたすがたで私をまっていた。

しかし、私をみてもあまりしゃべろうとせず、しゃべってもひどくはなしがくいちがい、それも、とぎれがちなところをみると、かなりまいっていたらしい。

「これでだめなら、きるしかないね。」薬がきくのをまつあいだナースをてつだっていると、彼女はしずかにいった。

結局、馬にはまったく乗らずに研究都市に着いてしまった主人公。ようわからんと言いますが、このゲームは最初からようわかりません!学習しない研究都市の人々は、正体不明の男が持参した得体の知れない薬を娘に与えます。かつて娘に毒水を飲ませた男が持って来た薬を……。これで「私のテロは見事に成功した」みたいなエンディングだったらマジで神ストーリーですよ。そんで薬を飲ませてみたはいいものの、単なるいちナースが「これでだめなら切るしかないね」とアッサリ。この世界に医者はいませんか。つーか切って助かるんなら、薬に頼らず最初から切っとけ!
17面 17面完成図
17面は「切るしかないね」のナースと、ナースを手伝う主人公の絵。ナースに萌え要素がまったくないのは94年というリリース時期を考えると無理もないことですが、それにしたって絵が……ゲホゲホ。わかりやすい人物から組んでいくのはお約束として、窓枠がけっこうクセモノなのですがなんとかなるでしょう。で、一度は組み上げたもののクリアにならず。なんで?どこが違うの?と全体をくまなく見渡しても、おかしいところはナシ。12面同様のお手上げ状態で、すべてのピースを総当りで上下・左右反転させていると……どっかのピースを左右反転させたとたんにクリアになりました。なんなんだよもう……。で、「切るしかないね」のナースが手に持っているのはチェーンソー!しかも殺す気マンマンの目つき!危うし、皇帝の娘!他にも主人公が運んでいるハコの中にはナタやペンチが見えてたりして、どうやらこの世界の医学は我々の知るそれとは違う方向に進歩しているようです。
驚愕のエンディングとマルチストーリー
だが、まにあわなかった

皇帝は娘の死を、なげき、そのなげきは人々へのさかうらみとなった。

温和な娘が死に、帝政にのぞみをなくした人々もまた、皇帝へのさかうらみをつのらせた。

2つのさかうらみのぶつかりあいはしだいにエスカレートしていった。

やがて皇帝は軍を動員し、過激派とのどろぬまのたたかいに入る。

私はひとり、とらわれのみ。

あいかわらず句読点がデタラメな文章ですが、主人公(とプレイヤー)の努力は報われず娘が死亡。それをきっかけにして皇帝と人民が戦争状態に突入。おいおい皇帝さんよ、どう考えても悪いのは主人公だけだと思うぞ。当の主人公は囚われただけで、命は無事のよう。水道局事故を発端とした主人公の一連の行動は、世界に最悪の事態を招いただけでした。あのとき、ビルに登ったりなんかせずにひっそりと暮らしていれば……。この期に及んで、どんなパズルをさせようというのでしょう。

18面完成図

ザッザッザッザッザッ。

行進する無数の軍人!ひええ。ピースが少なくなって難易度は下がっているものの、同じような絵柄のループなので組み上げるのはけっこう大変でした。そして、スタッフロールが始まります。え、これで終わり?ずいぶん救いのないストーリーですな。しかしそれも、ここまでの斜め上をいく破天荒なストーリーなら納得……と、当時は本気で思っていたのです。が、インターネットをするようになってこの作品のことを検索してみてビックリ。なんとストーリーは分岐するんだそうです!とは言っても分岐するのは最終面だけ。つまり、ナースステージ(17面)をクリアした時点でのプレイタイムによって、結末が変わるんですって。そうか、画面右上のタイム表示にはそんな意味が……。

なんでも17面を3時間オーバーでクリアすると上のようなエンディングとなるそうです。これがいわゆるバッドエンド。3時間以内ならば娘はかろうじて助かるものの、車イス生活を余儀なくされます。これが「通常エンディング」だそうです(当然それに応じて18面の図柄も変わります)。2時間以内でクリアできればグッドエンドとなり、皇帝の娘が助かって女帝となるハッピーエンド(こちらも18面の図柄が変わります)。とは言うもののこのゲーム、正解の絵柄を事前に見るなどしない状態で2時間クリアってのはかなり難しいです。完成図とにらめっこしてピースを揃えていかないと、2時間なんてあっという間です、ほんとに。3時間も厳しいかも。正直、イチからやり直す気がしません……あの電波テキストと稚拙な絵をアタマから見直すなんて、筆者にはムリです。精神的に。誰かまともな文章ともうちょっとマシな絵でリメイクしてくれ!

まあ、どの結末になっても最終面の絵柄が変わるわけで、ご褒美があるわけでもなく、スタッフロールも変わりなし。やり直すまでもありません。つーか実はネットでその情報を知ってからやり直したんですが、まあせっかくですので通常エンドの18面をご覧に入れましょうね。
通常18面 通常18面完成図
最後の最後で我が目を疑います。何が描かれているのかまったくわからない!事前に表示される電波文には「いつのまにか、わすれていたかのように雨がふっていた」ぐらいしか情景のヒントがありません。確かに雨は降っていますが、オブジェと背景が完全に予測不可能。しかたないので、複数あるピースに目を付け、それを片っ端からキャンバスのあちこちに置いていきます。ダミーピースならば正解箇所に置くと消滅するので、そこから同じ図柄の置き場所を割り出すしかありません。ダミーピースを使い果たしたら、あとはまったくのカン。手前のオブジェはなんとなく把握できました、3面にも登場した自走式大型給水塔です。困ったのが奥の背景。建造物らしきものが描かれていますが、どう繋がるのかぜんぜんわからん!ここでは雨のアニメーションを頼りに、雫が繋がるよう試行錯誤を繰り返します。なんで最後にこんな苦労させるかな〜。

では、グッドエンドは?さすがにそれを見せちゃうのもどうかと思うので、グッドエンドはキミの目で見よう!なんてベタな締め方をしてみます。まあ想像の範囲内の絵ですよ。女帝になった娘と主人公の再会、みたいな。バッドや通常とは違って明るい絵です。とは言っても、また2時間ないし3時間を消費して見なければならないほどのものはありませんけどね。つうか、ゲームにおいてクリエイター個人がだいぶ注目されるようになっていた当時、本作のペンネームだらけのスタッフロールはどうなのよ?なんか自信のなさが現れてるように見えるなぁ。で、そんなスタッフロールの最後には……

……。

戻ってこんでいい!

と叫びたくもなるのですが、アルトロンさんは後にPC9801版「ウゴクエver1.1」を発売したり、オリビアと同じスーファミで「うごく絵ver.2.0 アリョール」という似たようなゲームをリリースしています。絵が小奇麗になってたり、最初に完成図が表示されたり、正しい場所にピースをはめると音がするなど、「オリビアのミステリー」での不満点がけっこう改善されていて遊びやすくなっているようですよ。
サウンドについて
本作の音楽については特別語るべきことはないです。それなりのゲームにそれなりの曲がついてるなぁ〜というだけで、楽曲そのものが特に良い、もしくは特に悪いということもありません。一応場面や状況を考慮して作られていると思われる曲もあるのですが、反対に「別に何でもいいのか〜」という曲もあり、一貫したコンセプトやポリシーのようなものは感じられず、これといった創意工夫も見られません。作曲者がどのように曲を提供したか……つまり、曲だけ渡してあとはオマカセだったのか、それとも変換や音源制作まで面倒を見たのかはわかりませんが、最終的なゲームへの落とし込みはうまくいってないように聞こえます。明らかに音がはずれてぶつかってるところがあったり、演奏がヨレてたりといった音楽的な違和感が拭えないのは、音楽知識のない人がデータ化したのでは?とすら。ただし、本作の楽曲については「変わった曲が多くてお気に入り」とするファンも多く、一概に「妙だ」と片付けられないことは記しておかねばなりません。

音楽とともにゲームでは重要な音、効果音については……そういえば効果音と呼べるものが果たしてあったのかどうか?振り返ってみるとまったくなかったような気がします。これは「必要がないから付けてない」のではなく、明らかに「付けられなかった」「できる人がいなかった」のが原因でしょう。効果音が必要となるシーンやアクションはありましたし、例えば通常エンドなんかは音楽を付けずに雨の音だけで雰囲気を出す、ということも考えられたはずです。しかし一切やっていないのは、効果音を付けるという発想がまったくなかったか、あっても作れる人間がいなかったか、予算や納期などの制限によって付けられなかったかのいずれかです。手を抜くという次元にも達していません。完全な放棄です。もちろん「ゲームには必ず効果音が必要だ」などということはないのですが、本作については効果音を付けるべきところはあります。まったく不完全だと言わざるを得ません。
総評
かなり消化不良気味なところはあるものの、「動画パズル」というジャンルとしては成立していると思います。システムまわりや操作性がだいぶ不親切ではありますが、あえて難易度を高くするためにやっているのであれば受け入れられます。どうもそうではない気は多分にするのですが……。以後のシリーズ作品で改善されていくので、作った人たちもそれはわかってたんだと思います。なので、パズル部分に限って言えば「クソゲー」「ダメゲー」と斬り捨てられるものではないと思います。

しかし、ゲームというものはシステム云々、ゲーム性云々の前に、直接的な視覚や聴覚によって判断されがちなものです。「絵がヘタ」「文章がキテレツ」「何が描いてあるのかわかりにくい」というような、最初にユーザーの目に映る部分で失敗していることが、本作を広く「クソゲー」と認知させている最大の原因ではないでしょうか。パズルゲームなのに絵がマズい……致命的です。そして、純粋にパズルのみをやらせても成立したものを、無理にストーリー仕立てにしたことまでは良いとして、提示されたストーリーとそれを紡ぐ言葉があのレベルでは、やらない方が良かったのでは?と言われても返す言葉もないでしょう。

パズルというものは絵が主役ですから、完成させることに喜びを見出せる絵を、もっと言えば上手い絵描きを用意する必要があります。ストーリーを盛り込むなら、ユーザーが進めたくなるような話を用意し、それを言葉巧みに語る文章のプロも必要になります。それらを欠いた状態でゲームを作る場合、スタッフはかなりの勉強を強いられることになるのです。それを怠ると、突っ込みどころ満載のゲームができあがるわけです。確かに伝聞やイメージ先行で「これはクソゲーだ」と評価されるのは不当ではあります。しかし、ユーザーが真正面から真剣に本作に取り組んだ場合に、そのイメージを払拭することができる要素がどれだけあるでしょうか。結末の分岐も用意されていますが、2度3度とプレイしてすべてを見る気にさせる作品になっているかどうか?残念ながらそこまでするユーザーはごく一部ではないでしょうか。インターネットがこれだけ普及し、新旧の様々なゲームが語られているなか、「オリビアのミステリー」に関する記述はごくわずか。印象に残らないゲームは語られることなく、語られたとしても悪い部分だけが尾ヒレを付けて伝えられてしまうのです。

本作が発売された1994年頃は、プレイステーションやセガサターンなどの「次世代機」へとプラットフォームが移行しつつあった時代。逆にスーファミは円熟期、ハード性能を限界まで出しきり、時にはソフトに特殊なチップを乗せて驚くような作品が多数リリースされていました。そこに登場した本作がユーザーの目にどう映ったか想像するのは難しくありません。

最後に本作最大のミステリーを。オリビアってなに?皇帝の娘のこと?
どんな人に向いたゲームなのか?
このゲームをプレイすべき人
・パズルゲームが好きな人
・難しい本を読むと目眩がする人
・「美麗グラフィック」という売り文句にヘドが出る人
・短時間でサクッと、ゲームクリア本数を増やしたい人
・クソゲーを片っ端から試してみたい人
・塩田信之サウンドのファン
・未知の生命体マニア

このゲームをプレイすべきではない人
・心からジグソーパズルを愛する人
・小説が好きで日々読書をしている人
・グラフィック(特に女性キャラ)に萌えを求める人
・視力が悪い、もしくは悪くなりかけの人
・薬剤師や医者など、医療に従事する人
・皇帝の娘という境遇に生まれた人
・テロリスト
・中国人

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