parasite EVE II ORIGINAL SOUNDTRACK
ジャケット画像 デジキューブ
SSCX-10038
1999年
JASRAC表記:
なし

アマゾンで購入
パラサイト・イヴ2 ゲーム・ミュージック
ゲーム紹介

 前作「パラサイト・イヴ」発売後、ディレクターの時田貴司氏は「パラサイト・イヴ2があるかはわかりませんが、『シネマティック』シリーズは続けたい」と述べていた。そして、その発言から1年、スクウェアの「シネマティック」第二弾として、「パラサイト・イヴ2」が発表となった。が、そこにあったのはジャンルも、スタッフも前作から大幅に変更された「続編」であった。

 前作があくまでRPGでありながら、「バイオ」などのホラータッチなアドベンチャー作品とよく比較されたからか、「パラサイト・イヴ2」はアドベンチャーゲームとなった。どうせ比較されるのならその通りにしてしまおう、という開き直りがあったかは定かではないが、ホラータッチでありながらも独自のシステムとテイストを持っていた「パラサイト・イヴ」は、残念ながら「2」では単なる「バイオの亜流」に見えなくもない。前作をプレイし、続編を希望していたユーザーからの評価が芳しくないのも、頷ける気がしてくる。

 一言で表わせば「バイオっぽい」とは言え、バイオシリーズがあくまで現実世界に重きを置いているのに対し、「PE2」では「パラサイト・エナジー」などの設定が、システムの面ではかろうじて「バイオの二番煎じ」に終わることを防いでいる。そして、様々な要素が「やり込むほどに面白くなる」ゲーム性を維持。が、一方シナリオ面では最終的に「ウイルス」などのキーワードに頼らざるを得ないところが、現実と非現実の境界線ギリギリの部分を舞台とした「アドベンチャー」ゲームの限界を露呈している感は否めない。

 メインスタッフもほとんどが入れ替わり、共通しているのはキャラクター・デザインの野村哲也氏ぐらいだろうか。ディレクターはスクウェアの岩尾賢一氏で、本作のテーマは人間の汚い部分、「偽善」であると語る。前作の世界観を踏襲しつつも、舞台や登場人物はヒロインを除いてほとんどが新規。ジャンルの変更もあって、前作をプレイしていないユーザーでも問題なくプレイできるであろう。ただ、それが正統な続編かどうかは、別の問題であるが……。

 音楽も前作の下村陽子氏に代わって、スクウェアサウンズの水田直志氏が作曲を担当。「プレイヤーの感情を邪魔しないよう気をつけ、プレイヤーの感情を突き動かすよう努力した」と語る氏は、果たしてどのような「PEサウンド」を聴かせてくれるのだろうか。ゲームをプレイせずにサウンドトラックのみを聴くと、つまらないものに聞こえてしまうかもしれない。核となるメロディのない曲が半数を占めるからであるが、実はそこが水田氏の狙いであることは、ゲームをプレイしてさえいただければ理解できるはずだ。あくまでゲームありきのゲーム音楽、それをよく理解したうえでレビューを読み進めてほしい。

DISC 1          DISC 2

DISC 1

01 Forbidden Power
[Theme for Aya]
イントロを聴いた瞬間、前作をプレイした人ならば、すぐにピンとくるあのピアノ。ヒロイン・Ayaを象徴するフレーズに、ディストーションギターとループのリズムが乗せられていき、テクノっぽさをより推し進めた「Primal Eyes」のリミックスとも捉えられるこの楽曲、オープニングムービーに使用され、作品の続編性を示すうえでは導入に最適だと言えます。

個人的にはリズムの構成が凄く好きで、歪み系の軽いループから始まり、そこに別のループが加えられ、さらに4つ打ちのガシガシテクノ・リズムへと展開していきます。そこにオカズ的に加えられるタムやスネアのフィルがアクセントを付加し、重厚でいてテンポのいいグルーブを生み出しています。前作の「Primal Eyes」が、とにかく音数勝負、スキマなく音を重ねていく方向にあったのに対し、今回のバージョンは洗練された印象です。なのに、まったく薄さを感じさせない。お見事です。

ちなみにこのギターはスクウェアサウンズ・関戸剛氏によるものです。Ayaのモチーフは前作の音楽担当、下村陽子氏のもの。
02 MIST 前作のユーザーへのアピールからか、ゲーム序盤にこういった前作の曲を持ってくるのはニクい演出と言えます。MIST内部で使われている、前作「NYPD」内部で流れていた「Out of Phase」の新バージョン。よりゆっくりとしたテンポのジャジーなインストとなり、ダークでアダルトな雰囲気になってます。オリジナルはもちろん、下村陽子氏。「PE2」スタッフからの、前作に対するリスペクトでしょうか。

サントラでは曲名が「MIST」となっていますが、ドライフィールドのサロンG&Rにあるジュークボックスを見るとこの曲、当初は「Out of Phase 2」と呼ばれていたようですね。このように、MIST射撃場やジュークボックスの曲名は、サントラとは異なっているものが多いです。

なお、ニューゲーム開始直後の、射撃訓練中にAyaが前作の事件を降り返るモノローグで流れる曲はCDには収録されていません。プレイして照らし合わせてみると、実はパラサイト・イヴ2には、サントラ未収録曲もかなりあるようです。印象としては、ループするBGを中心に収めている感じ。イベントやムービーなどに使用される、短い楽曲は省かれているようです。
03 Aya Again Ayaのモチーフが組み込まれた楽曲。前作ユーザーへのアピールとしては抜群の効果があり、本作が明かに「パラサイト・イヴ」の続編であるということを認識させられます。ピチカートで奏でられるAyaのモチーフ以外は、低音部のピアノと空間を埋めるシンセで構成され、早くもゲームのテイストを示唆するかのようです。Ayaがアクロポリスタワーに到着すると流れてきます。

このシーンはBGムービーも話題になり(CG専門誌にも取り上げられた)、グラフィックの進化が見て取れますが、音も凝ったことをやっています。パトカーのけたたましいサイレンに混じって、警察の無線交信音が現場の雰囲気を盛り上げています。
04 Don't Move ! ME的な構成の短い曲。Ayaがアクロポリスタワーに入り、エレベータを降りて銃を構えるイベントシーンで使われています。
05 Nightmare in the Battlefield 本当の意味で背景音楽(笑)。メロも何もなく、ボイス系の音色とSEのみで、あくまで雰囲気重視で作られています。前作よりも暗く、不気味なホラーテイストが強調された「パラサイト・イヴ2」にあって、プレイヤーに与える心理的効果は抜群ですね。この曲は、アクロポリスタワーのSQUAREに初めて進入した時に流れます。SWATの死体が累々と横たわる、あの場面です。この惨劇を生み出す元凶とは果たして……。

この、「聞こえないようでいてさりげなく流れてる」という空気感のようなBGの雰囲気は、ゲーム全体を通して終盤まで貫かれる演出。「見えざる恐怖・不安」といったものを聴覚から感じさせることに成功していると思います。
06 Deadly Calm アクロポリスタワーの空間を埋める、ME的でもありSEにも思える雰囲気モノ。CDで聴くとまだ音楽然としていますが、ゲーム中ではあくまでさりげなく、うっすらと使用されているため、ベースノイズのような感じに聞こえます。こうやってジワジワと、プレイヤーに心理的な「見えざる恐怖」を植え付けているんですね。たまに挿入される「ドン」という低い音が、ゲーム中ではまるで何かの物音のようで、「……何かいるの?」といっそう不安にさせられます。水田氏の術中にハマってるワケです。
07 The First Encounter 本作における最初の戦闘となる、カフェテリア前のイベントでかかる曲。こういう曲が流れると、自分が「バイオハザード」をやっている気分になるから不思議です(笑)。高音のストリングスによるショッキングな導入から続いて、緊迫感を煽るテンポの速い戦闘BGとなります。それにしても、これ内蔵音源でやってるの?と思ってしまうほどに多種多様な音が散りばめられております。

ただしこのイベントでエンカウントするのはグリンストレンジャー×1なので、この曲を長く聴くことはあまりないでしょう。
08 Tower Rendezvous こんな明るい曲、流れていたっけ?と思われるかも知れませんが、カフェテリア内の店内でかかる、ラジオかテープから流れている現実音楽という位置付けであるジャズ・インストルメントです。おしゃれなカフェテリアで実際に流れていそうな曲で、こういう雰囲気が、直後に起こるアクシデントの印象をより強くするのです。ブラシのドラムとピアノ、ギターがいかにもそれっぽいのですが、演奏のクレジットがないので内蔵音源でしょうね。本作の楽曲はサンプリングのレベルも高いです。

そんな中、テーブル席のひとつに座っている女性がひとり……。
09 Metamorphosis カフェテリアでの、女性がANMC(グレーターストレンジャー)に変化するショッキングなムービー〜戦闘にかけて流れる曲です。以後、このシーケンスフレーズは戦闘やANMCを象徴するフレーズとして、いくつかのバトル楽曲でモチーフ的に組み込まれ、「戦闘のテーマ」的扱いになっていきます。「このシーケンスが鳴ったら戦闘開始。鳴り終ったら敵を全滅できた」という判断を、プレイヤーに無意識のうちに下させる役割を担ってます。
10 Watch Out ! グレーターストレンジャー戦後、ルパートに指示されてMISTへの連絡を取りに行くイベントから流れる曲です。これまでのアクロポリスタワー内BGに比べて、はっきりとした曲になっています(とは言っても、音数は少なめですが)。以後、アクロポリスタワー内の探索中は流れ続けます。
11 Ambush ! アクロポリスタワー内での、エンカウント戦闘BG。いわゆるザコ戦音楽ですね。作品中のバトル音楽の中ではおとなしめの部類でしょうか。前述のシーケンスが早くも取り入れられており、NMC・ANMCの異様さ、不気味さを色付けています。所々にクリーチャーの声を思わせるような、SE的な音色が散りばめられているのがポイント。また、センターでさりげない音量でシンセ・ベースが刻んでいるのですが、テレビでは聞こえないでしょうね。

グレーターストレンジャー戦後、カフェテリア前でのグリンストレンジャー×2とのバトルが初出になるはずです。
12 What the Hell Happened ? ルパートが聖堂で謎の覆面男に襲撃されているのを救出後、アクロポリスタワー内の探索BGとして流れ続けるようになります。

右から左にディレイが割り振られ、音が回っているようにも聞こえます。そして全体を包み込むシンセ・ストリングスが緊迫感を高め、センターのベースがいつどこで敵と遭遇するかわからない不安を増幅します。楽曲後半にはボイス的な音色も加えられてきます。そして訪れるブレイク……本作のサントラは、「音のスキマの作り方」が本当にウマいです。ベターっと音を鳴らし続けるのではなく、一瞬、音が無くなる(止まる)空白をはさみ、タッチをつけているのです。グラフィックの「映画的」進化に伴い、やっと音楽も本当の意味で「映画的」演出がなされるようになってきました。

なお、ルパートが覆面男に襲われている時に流れるショッキングなMEは、サントラには未収録となっております。
13 Do Something ! ベースのみがズンズンと刻み続ける曲。曲と言っていいのでしょうか……。次第にパンニングされたシンセベースもフェードインしてきますが、低音だけがブブブブと言ってることに変わりはありません。しかし、ヘタに激しい音楽で煽られるよりも、焦らされてしまうのは何故でしょうか。思うに、このベース音が、人間の心拍を連想させるからじゃないでしょうか。ゲームを中断して、ちょっと胸に手を当ててみましょう。あなたの鼓動がベースとピッタリ合っていたら……しっかりゲームにハマってる、ってことですね。

この曲はタワーのヘリポートに向かう最中、爆弾を発見してから流れ始めます。また、3rd Day・シェルターにおいて、研究室でピアースの電話を受けてからピアースの言う「北(=ポッド整備架橋)」に向かう際にも流れます。
14 Weird Man ヘリポートにおける、覆面男=キングゴーレム=No.9との戦闘にて初出となる曲。急き立てるようなループのビートに乗せて、左右にパンニングされたベンドダウン・ベースとシーケンス、各種SE的な音色が焦燥感を醸し出します。特にNo.9の笑い声かつぶやきにも聞こえる、モニョモニョというボイス音色が、いっそうの不気味さを表わしています。

このループはフレーズサンプリングでしょうか?一小節×2フレーズを音色として持っておき、ループさせているんでしょうね。ゲーム音楽でループが使われるということは、CD再生なら珍しくもありませんが、最近では内蔵音源での再現も増えてきました。内蔵音源でループものをやるには、前述の通り長めの音色として持っておくか、SEと同じようにCDXAで再生する方法が考えられます。どっちでしょうね。

ちなみに、戦闘終了後からヘリポートへ移動する際にかかる、テンポの速いベース楽曲はサントラには収録されていません。
15 Return to the Base 2日目、MISTセンターにてボールドウィンから新たな任務を伝えられるシーンで流れる曲。No.9戦で心拍数の上がったプレイヤーをなだめるような、優しくて落ち着いたトーンのインストルメント。

このイベントが終わってからは、MIST内部では再び「MIST」が流れます。
16 Ghost Town ドライフィールドでの探索中BG。熱く、ホコリっぽく、人気のないさびれた集落の様子を、これ以上なく上手く表現しているではありませんか。このギター、雰囲気出すぎ!ひたすらブルージーで、カッコイイです。ギターの他にもいくつかの音が散りばめられていますが、しばしばセンターで鳴るギシギシという音が、そこらで扉や看板が軋んでいる様子を連想させます。グラフィックでの表現を、うまく音が補完している感じ。

それにしても、楽曲後半のメロ(?)を受け持っているのは何の楽器でしょう?
17 Hunt in Dryfield ドライフィールドにおける、戦闘BGM。例のバトルシーケンスがモチーフとなっています。前述したように、バトルBGMは基本のシーケンスモチーフを中心として、マップや敵に合わせて数種類が使い分けられているのです。これによってAyaのいる場所や敵の特性を、無意識のうちにプレイヤーに認識させています(プレイヤーにそれを聴き取る余裕があれば、ですが)。

ドライフィールドの中でも、給水塔前のゲートにおけるデザートチェイサーの連戦では、この曲をかなり長く聴くことになります。制限時間のあるゲートオープンも伴って、けっこう焦らされる戦闘イベントとなっています。
18 Don't Shoot ! ダグラスのガレージを捜索中、突然「動くな」と銃を向けられてしまうAya。そのシーンに使われている短い曲です。疑いはすぐに晴れることになりますが。タイトルの「Don't Shoot !」は、Ayaの心境ですね。
19 Douglas' Blues ダグラスからモーテル6号室のカギをもらうイベントが初出の、ダグラスのテーマと言っていいでしょう。このけだるさ、シブさはドライフィールドのテーマ「Ghost Town」に通じるものがあります。ギター、リズムセット共に構成音色も共通しているようです(オルガンが加わっていますが)。ちなみにこの曲のギターは、きちんと演奏されたものです。フレーズサンプリングでしょうか(もしくはストリーム?)。

このテの曲は「バイオ」ではまず聴くことがないタイプのもので、「バイオ」とは異なる雰囲気を表現するため、音楽が少なからず作品を救っていると言えるでしょう。
20 Water Tower 「水の塔」?いやいや、給水塔です。カイル・マディガンと初めて出会うシーンで流れる、ギターインストルメントです。本作「PE2」では、ギターの音色・シミュレートも出色。さらに言えば、全体的な音色が非常に独特なのは、サントラをお聴きの方はお気付きでしょう。いわゆるありがちな、プリセットシンセ的な平凡な「楽器音」がほとんど使われていません。楽曲を構成する音色をイチから吟味しているんでしょう。でなければ、ここまでアルバムとしての統一感は出ないと思いませんか?
21 Hiding Place ダグラスのハウストレーラーで流れる曲で、ちょっと聴いただけでは19曲目の「Douglas' Blues」と変化ないように思えますが、途中から「MIST」のあのフレーズ(「Out of Phase」のモチーフ)が混ざってくるようになります。即ち、このハウストレーラーがAyaにとっては安全な場所、拠り所となることを示しているわけです。

ジュークボックスでは、曲名が「Rock And Fire」になります。
22 Dryfield ハウストレーラーで悲鳴を聞いてからは、ドライフィールドの探索BGがこの曲に変化します。徹底的に音数を減らし、いたずらにプレイヤーの不安のみを増幅させる楽曲です。楽曲というか……ほとんどパーカッションのみですが。

それにしてもあの悲鳴はコワかった……遠くにいてもうっすら聞こえ、近付くと大音量で「ウギャアヒイィー」。いったいこの中でどのような惨劇が……早くモンキーレンチ持ってこなきゃ。
23 The Bottom of the Well ドライフィールド地下道の空間系BGです。かなりバイオハザードしてますが、こういうシーンではこういう曲になるものなのでしょう。斬新な音楽を狙うばかりではダメで、時には偉大なるお約束も絶大な効果を生み出すものなのです。
24 Stealth Assault ドライフィールド地下道での、グレイストーカーとのバトルが初出でしょうか。やはり例のバトルシーケンスから始まります。以後、夜間のドライフィールドではこの曲がエンカウントバトルのBGとして流れることに。パッと聴くと変拍子系に聞こえますが、リズムの配置によってそう感じさせるような作りになっているようです。

この曲のタイトルを見ればわかる通り、このあたりからストーカー系のクリーチャーが頻繁に出現するようになり、バトルは非常に厳しいものになります。シェルター突入直後、対アイボリーストーカー戦でも流れます。タイトルの「ステルス」は、米軍の「姿を見せない戦闘機」の名称としても有名で、ストーカー系クリーチャーにはピッタリです。
25 Heaven-sent Killer ドライフィールド廃屋での、No.9-キングゴーレム砂漠装備-との戦闘に流れる楽曲です。緊迫した高音のストリングスによる導入に、ボイスとうねるようなベースが這い回ります。「Weird Man」と共通する音色・フレーズが上手い具合に象徴的に使い回され、なるほどな〜っと思わされます。
26 The Depth of Aya's Memory No.9戦後、カイルと再会するシーンで流れるピアノバラード。もちろん、前作から続くAyaのモチーフが流用されています。もし「パラサイト・イヴ3」があっても、Ayaのテーマはずっと変えないでいただきたいものです。
27 From Dusk Till Dawn カイルと合流後、Ayaの車がスカベンジャーに破壊されてから、夜間ドライフィールドの探索中BGとして流れ始めます。徹底した空間系雰囲気モノ。カイルはすぐどっかに消えちゃうので、ひとりぼっちのAya(=プレイヤー)は、この曲によって孤独感と不安をつのらせることになります。「いつ、どこでストーカーに襲われるか」……あ、ストーカーってのはもちろん変質者のことじゃないですよ。クリーチャーの名称です。

なお、ダグラスに「部屋で休め」と言われてから以降は、ドライフィールドのフィールドBGは鳴らなくなり、あたりは夜の静寂に包まれます。真っ暗なグラフィックとあいまって、これはこれで不気味さがよく出ていますね。
28 Vagrants よく、アメリカ映画の劇中で使われていそうな、環境音としての現実音楽。ブルースハープがメロディを奏でる、いかにもアメリカンな……どこか懐かしいサウンドです。ラジオなどから流れている設定でしょうか?「漏れた音」という感じのエフェクトがかけられていて、非常に凝っています。音源はレコードの想定なのか、プチプチといったスクラッチノイズも混ぜられていますね。

どこで流れたか、耳馴染みのない人も多いかと思いますが、夜のドライフィールド・サロンにおいて、無銭飲食(?)中のカイルとの会話イベントで使われています。ただしこのイベント、見られる期間が非常に限定されており、見ないまま先に進んだ人も多いのではないかと思われます。具体的には、ガソリンをダグラスに渡してから、バーナーと戦闘するまで(シャワームービーを見る前)という、非常に短い期間となっています。また、このイベント以外でも、サロンのジュークボックスで聴くこともできます。
29 Dark Field セダンを破壊されたAyaは、ダグラスに車を貸してくれないかと頼みに行くことになります。その際、ダグラスに「ガソリンを汲んできてくれ」と言われてからは、夜間ドライフィールドのBGがこれになります。暗い雰囲気でありつつも、テイストはあくまで「Ghost Town」を受け継いでおり、場所ごとにおける楽曲のトーンが上手く統一されています。所々に挿入される、サンプリングによるドラムのオカズものがセンスいいです。
30 Gigantic Burner 対バーナー戦のバトルBGです。見た目も含めて非常にインパクトのある敵で、鳴き声や炎のSEも強烈であることから、音楽自体は一歩引いてるかのような感があります。でも個人的には、夜のドライフィールドは静かなトーンが続いたので、バーナー戦はもっと煽った曲でもいいかも、と思ったり。そうすると、初回のプレイヤーはパニくること必至です(笑)。
31 Douglas' Grief 実は私、この曲をゲーム中で聴いてないんですが、タイトルから察するに、バーナー戦の結果によってダグラスの愛犬・フリントが死んでしまった時に流れるんじゃないかと思ってます。ジュークボックスではこの曲のタイトルが「Requiem」になっていることからも、この推測はたぶん正しいと思われますが……情報求む。

DISC 2

01 Voice of Mitochondria ゲームのディスク1終盤、ガレージにおけるカイルとの会話イベントで流れる曲です。シェルターとは……レトロウイルスとは……、なにやら恐ろしい陰謀のようなものが見えはじめてきました。核心に近付き始めたところで、ゲームはディスク2へと移ります(サントラもここで分けられたらベストだったんですが)。

この曲は後々、シェルター・ポッド整備架橋でピアースと再会し、タッチセンサーパネルの操作を教わるシーンでも使用されています。ここは新たに「シャンバラ」とそれに伴う恐ろしい計画が語られ、いよいよシナリオの核心へと迫っていく重要な場面です。また、シナリオの分岐によってはこのシーンではカイルと再会することになりますが、その場合もこの曲に乗せて、恐ろしい陰謀が語られます。

また、シェルター脱出後の米軍キャンプにおけるAyaとグラント少尉の会話シーンにも使われています。
02 Pick Up The Gauntlet 前ノリの激しいビートが叩き付ける、ハードロック調のイベント戦闘BG。ディスク2が始まってすぐ、予告なしに始まる突然のバトル、デザートチェイサーの群れとの激戦を彩ります。ゲートでバスっと切られた、歪んだスネアがカッコいい。ある意味では、「PE2」における初めての煽り系バトル音楽、といった感じです。今までのバトルって、こういうの無かったですから。
03 Abandoned Mine 廃坑のBGとしてうっすらと流れる、空間系のMEです。ドライフィールドとシェネターの狭間ということで、両方のエリアの特徴を混ぜたようなテイストになっています(よね?特に後半)。が、エリア自体が狭いので、耳にする期間は短いかも。それでも仕掛けが解けないと、えんえんと聴くことにもなりかねませんが。
04 Into the Shelter ブリザードチェイサーゾンビを倒し、やっとの思いで潜入したシェルターで流れる空間系BG。グラフィックが醸し出す雰囲気のせいか、ほとんど機械類が動作しているベース音のような、グオングオンという感じで、SEのように聞こえます。正直、シェルターはこのテのBGが多いもんで、どれがどのトラックかなかなか判別できず、苦労した覚えがあります。音量が低いのでボリュームを上げると、今度は効果音がデカいし……。

余談ですが、ゲームのオプションではBGMの音量を「大・小」切り替えられますよね。効果音もそれができたら良かったのに、と思いました。もしくは、「大・小」ではなく、スライドバーで任意に調整できるとか。
05 Wipe Out the Creatures シェルター内での、エンカウントバトルBG。シャンバラでも、一部をのぞいてこれが使用されます。シャンバラもシェルターの一部ですからね。導入はDisc1の「Stealth Assault」と似ていますが、すぐに別モノになり、不安定なボイスと刻み系のシンセベースによる、テンポ感のあるアレンジに。近未来的テクノロジーの粋であるシェルター内における、緊迫した戦闘にはこれ以上なくハマってます。

個人的に、このテのシンベが大好きなこともありますが。
06 Hold Your Breath シェルター・消毒室で消毒が始まった際に流れる曲ですが、のんびり聴いているヒマはありません!ただちにダストシュートに飛び込みましょう!本作では珍しい、焦らし系脱出音楽です。スウィープするシンセの音色が、いかにも毒素が放たれていそう(笑)。

また、Eveの育児室がゴーレム兵の襲撃を受け、ガスを投げ込まれるシーンでも使用されています。即ち、「呼吸困難のテーマ」ですな。ゴホッ、ゴホッ。
07 Crawling Waste Emperor グラトン・第一戦のBGになります。このグチョグチョしたイントロは抜群の導入になっておりますよ。コイツがどんな敵か、瞬時にわかる。要するに、「ああ、ばっちいんだ」と。

音色やテンポの激しさでただ煽るよりも、楽曲の雰囲気でバトルを演出する手法、これもアリです。この曲もさして激しいわけではないですし、単体で聴いて「ボス戦音楽」と言われてもピンとこないかもしれませんが、グラトンというクリーチャーには最高にハマっているんですよ。もうこれ以外には考えられないってぐらい。

さらに本作の楽曲全体を通して言えるのは、SE的な補完が上手い、ってこと。楽曲に何らかのSE的な音色を混ぜておくことで、プレイヤーにはその「空間にある何か」やクリーチャーが、何らかの音を発しているように聞こえるわけです。この曲で言えば、グラトンが体を揺する様子や、ゴミが発する音を感じられる。つまり「意味あるノイズ」ってことです。発音数の限りがあってすべてのものに音を付けることは不可能ですから、これは特に有効な手法だと思いますよ。
08 Chase グラトンを倒したと思ったのも束の間、復活したグラトンが迫ってくる第二戦の音楽です。一戦目とはうって変わって、プレイヤーを焦らせるタイプの分かり易い楽曲になっています。これはこれで、「やっと倒したのにぃ〜っ」というプレイヤーの焦燥を煽るには効果アリですね。画面の奥から「ズシン、ズシン」と巨体を引きずって接近してくるグラトンは、インパクトありましたね。それにしても、よくぞあんなデカいものを動かしたもんです。
09 A Sigh of Relief ゴミ焼却場を脱出し、カイルと再会しての会話シーンで流れる曲。短い反復になっていますが、私にはAyaのモチーフが入っているように聞こえます。
「泥んこのお嬢さん」「あなたもそうとう臭うわよ」
10 Passing Through the Sewer,
You'll Find...
シェルターの地下4階、貯水池・下水道あたりで流れる雰囲気もの。重低音が空気のようにうっすらと流れているため、BGMとして判別することすら難しいレベルですが、確実に聴覚に訴えるゲームの音場を演出しています。っていうか、ここまでくるともう音楽というより完全にSEです。最初はベースノイズかと思ったぐらいで。
11 Battle On the Waterside ダイバー系の敵と戦う際などに流れるバトル音楽。例のバトルシーケンスとともに、水を連想させる音がいい感じで散りばめられております。とは言っても、Ayaは海の中には入りません。「私は溺れてしまうだろう……」などとぬかしやがります。使用頻度としてはあまり高くないと思われる楽曲です。
12 Inner Part of the Shelter ほとんど10曲目の続きというか、またもや低音の空気ものです。シンセでメロらしきものも流れます。ボーマン・カードを入手することで、シェルター内の行動範囲がグンと広がります。このトラックは、そんな未知のエリアで流れることになります。

Ayaが研究室の端末で自分とANMCのショッキングな関係を知ってしまう場面でも流れ続けるので、印象に残っているプレイヤーも多いでしょう。個人的には、あそこに一曲、専用のイベント楽曲があっても良かったのでは、と思います。
13 Innermost of the Shelter こちらも引き続いて低音モノ。より不気味に、持続する低音がうねります。謎の巨大サナギを発見したピアースorカイルと会話した後、シェルター内の探索BGとして流れ始めます。こういうのって、どんな音色サンプリングしているんでしょう?短い波形をループしているようにも聞こえますが。
14 Negative Heritage Ayaがいよいよシャンバラへと通じるリフトを降りると、別の場面がイベントとして挿入される。そこはある人物の部屋。彼らはSDIの遺産……などと穏やかではないことを言っている。はたして何をしようとしているのか?マーチングスネアの音色が、どこか国家・軍隊といったものを連想させる音楽ですね。
15 Man Made Nature ピンポーン、「ウェルカム・トゥ・シャンバラ」。シャンバラの展望台マップで流れるBGです。神々しいチャーチオルガンに乗せて、しばしば鳥のさえずりが聞こえます。実に宗教的というか、間違った方向に向いてしまった理想郷にはピッタリです。
16 Ark シャンバラの各エンカウントエリアにて、マップBGとして流れるもの。オルガンのような持続音と鐘が鳴り響く中、ゴスペルコーラスが。これ、何語で、何と歌っているんでしょう?意味が特定できないようにしてあるとは思うんですが、実は意味があったりしても面白いですね。どこかでネタバラシしないかなあ。
17 Fool's Paradise シャンバラの一部区域(ピラミッドなど)で、マップBGとして流れるものです。空間系の持続音と、キラキラ系ウインドチャイム。鳥のさえずりも、非常に抑えたレベルで混ぜられています。ところで、曲タイトルですが「バカの楽園」ってことですか?っていうか私は誰に質問しているんですか?
18 Mitochondria Reactor ひたすら重い低音のシンセ(機械の動作音も補完しているようです)がうねる中、人のうめき声のような不気味きわまりないボイスが這う、作品中でも屈指の「おどろおどろしさ」を持つ曲。シャンバラの、ジェネレーターがいる場所で流れるBGです。このボイスはミトコンドリアたちの声と解釈して良いのでしょうか。
19 Mental Deranger 空間を埋める雰囲気音の中、18曲目と同じボイスが鳴っています。シェルターをより深くへと降り、地下6階をEveのもとへと向かうマップで流れる空間BGです。電気系ノイズのような音色も混ぜられ、機械によって精神を侵食されているような雰囲気。
20 Stalker バトルBGです。「ストーカー」というタイトルがついていますが、確認した限りゲーム中では、スティンガーなどといったパラサイト・エナジーを使いこなすクリーチャーとの闘いで使用されていました。例のバトルシーケンスと電磁波のようなノイズ、生物的・有機的なSEなど、さまざまな音で構成され、うめき声のようなボイスも低〜く混ぜられています。場面に合わせて、だんだんと楽曲も混沌としてきました。
21 Cruelty of Eve's Fate シェルターB6F・育児室において、Eveのヘルメットを取り外すムービー後のイベントで流れるピアノ・バラード。ここではEveにまつわる話がなされていますが、曲のモチーフは前作「パラサイト・イヴ」におけるAyaのものになっています。つまり、AyaとEveの関係を匂わせているわけです。前作でのEveのモチーフは、あくまでメリッサを媒体としたイヴのものですしね。
22 Killing Field シェルター・育児室がゴーレムに襲われ、なんとか脱出したAyaとEve。そこはシャンバラだった。が、なにかおかしい……クリーチャーが虫の息で横たわる、死のフィールド。まさに「Killing Field」ってわけで、この曲が流れます。さっきまで流れていた「Ark」の神々しいゴスペルとは対照的な、死を予兆させる不気味な男声ボーカリーズ……。はたして、何が起こったのか?
23 Golem Soldiers シャンバラ・海中トンネルでEveがNo.9に連れ去られるイベントの後に鳴り始める楽曲。この時から、あたりのマップにはゴーレム兵がエンカウントエネミーとして配置され、ゲームの難易度が飛躍的に跳ね上がります。例のバトルシーケンスに始まり、パンニングされたシンセベースと高音のシンセが緊張感を増幅し、ゴーレム独特の呼吸音を表わすのでしょうか、吐息の混じったボイス音色が、プレイヤーにこの上ない焦燥感を与えます。

この曲は、以後シェルターを脱出するまで(地下駐車場に辿り着くまで)、探索・戦闘の別なく鳴り続けます。再配置された敵を殲滅させようと歩き回ると、けっこう長い間聴くことになりますね。
24 Prestige of the Nation 14曲目「Negative Heritage」の別バージョンとでも言いましょうか、どこか悲壮感漂うマーチ曲。想像通り、このシーンはホワイトハウスであり、背広姿の男は大統領なのでした。彼は米国2億7千の民の命運を握っており、酷な決断をせざるを得ない立場にあります。この曲の悲壮感は、彼の心境以外のなにものでもないでしょう。

ちなみに、大量のゴーレム兵を米軍が圧倒的戦力で壊滅させるムービーで流れていた曲は、サントラには未収録です。カッコイイ曲なのに残念。
25 Intrusion 一度テントで態勢を整え、再度シェルターへと進入すると流れ始めるマップBG。Eveを、そしてピアースを助けなければ……そんなAyaの決意が伝わってくる楽曲です。刻み系のシンセベースとシンセ・ストリングスで、プレイヤーの進行をじわりじわりと盛り上げます。決してイケイケドンドンな楽曲にしないあたり、Ayaの覚悟がより強く伝わりますね。コントローラーを握る手にも力が入ります。
26 Brace Yourself Eveを助けなければ!この楽曲は、いよいよ最終決戦へと赴くAyaを彩ります。運命的なものすら感じさせる、盛り上げ調のカッコいい曲なんですが、寄り道せずに決戦場へ向かうとあっという間に到着するので、残念ながらこの曲の出番は短いです(ルートを外れると、「イヴを助けないと」と言われてしまいますし)。
27 Brahman リアクター戦のバトルBGです。曲調としては「Brace Yourself」を引き継ぐ感じで、基本的には「Eveを助けないと」「私(Aya)がケリをつける!」が根幹になっています。が、沢山の攻撃部位を持つリアクター相手では、ただただ焦るばかりで音楽を聴く余裕はないでしょうから、サントラでじっくりどうぞ(笑)。

ただし、ゲーム音楽ファンはきっと、戦闘中にすでにリアクターがラスボスではないことを、曲を聴いた時点で見抜いたはずです。ボスではあるんだろうけど、この曲がラスボス戦の曲かなあ?という印象を持たれることでしょう。正解です。

あと、ネタバレ的なことを書いてしまうと、リアクターはNo.9を取り込んだわけですよね。この曲のどこかにチラっとでもNo.9のモチーフを組み込んでいたら、それをプレイヤーにより強くアピールできたのでは?大半のプレイヤーが、No.9を単に「食われて死んじゃった」と思っているかもしれないですし。「ああ、コイツの中にいるんだ」と思わせる音楽的なフォローがあっても良かったんじゃないでしょうか。
28 Distorted Evolution リアクターを倒したのも束の間、セーブもできずに挑まなければならない本当のラスボス・セーバー戦のバトルBGです。途中にポーズがあるとは言え、セーブができないということは事実上の連戦です。心してかかりましょう。

この楽曲は、「そうそう、PEのラスボスはこうでなくちゃ」といった感じの正当なラスボス音楽となっています。神々しいコーラス(お約束です)の導入から、すぐさまテンポのあるリズムが打ち鳴らし始めます。そして、「ブレードランナー」を思わせる(個人的にね)、シンセによる宿命的なメロ。サントラだけ聴いた人でも、これがラスボス音楽という予想がつく、わかりやすい楽曲になってます。

ただ、個人的な感想を言ってしまうと、他のもろもろはおいといて、ラスボス戦音楽は完全に前作に軍配が上がりますね。いや、楽曲そのものっていうより、ラスボス戦そのものにも原因があるかも。前作のような「徐々に姿を変えていく」みたいな仕掛けがないので、音楽も垂れ流しに終始してしまってるような感じがするんですね……。前作は、ラスボスの変身に合わせて曲も切り替わるという凝った仕掛けがあったので、インパクトの点では前作の方が上でしたね。
29 Logic of the Superpower エンディングで映し出されるホワイトハウス。「Negative Heritage」「Prestige of the Nation」と一連になっている楽曲です。さすがにエンドだけあって、平和な響きに満ちています。なお、このシーンはピアースルートのエンディングにしかありません。分岐でカイルルートになると、見ることができないのです。
30 Aya's Diary Ayaが「その後」を解説するエンディングのワンシーンで流れる、ローズ系音色によるバラード。エンディングの安堵感に満ちています。難癖をつけるとすれば……Ayaのモチーフを使ってほしかったかも。

このシーンがあるのはパーフェクトエンディングのみ。途中の分岐によっては見ることができません。
31 Epilogue Eveは回復後に学校に通うようになったそうで、AyaはそんなEveを休日に自然史博物館(前作に登場しましたね)に連れていきます。目を輝かせて展示物に見入るEve……。すると、扉の開く音が。そこに立っていたのは……そんなエンディングムービーに流れる短い楽曲です。

このムービーも、パーフェクトエンディングにしかありません。エンディングにそんなムービーなかった!というアナタ、あなたが見たエンディングはベストなものではなかったのです。さあ、もう一回プレイしましょう!
32 Gentle Rays エンディングのスタッフロールに流れる、安堵感・充実感を満たしてくれる優しい曲です。特にボーカルものというわけではなく、ピアノをメインにしたインストになっています。ほぼシンセによって演奏されていますが、内蔵音源ではなく、レコーディング・ミックスしたもののCD(もしくはCDXA)再生のようです。

歌ものについては賛否あると思いますが、個人的には本作においては、エンディングがインストで正解なような気がしてます。もしここで何の前触れもないウタモノがかかったら……唐突すぎて浮いてしまうと思うんです。前作はまだゲームそのものに「声」「オペラ」という要素があったので、ボーカル曲がそれほど唐突ではなかったんですね。CDが使えるからって、やみくもにボーカルものを使えば良いというわけでは、決してありませんから。
33 Weird Man
[Delete-Core Mix]
Disc1の14曲目、No.9のテーマとでも言うべき「Weird Man」を、サウンドスタッフである中島大が大胆にリミックス。普段、リスナーとしては市場のリミックスCDに「裏切られ続けてる」と言う中島氏が、今回はあえてその「裏切る」という方向でリミックスしたとのこと。基本的には原曲の香りのあまり残っていない、純粋なテクノになっていますが、ベース音色やNo.9を象徴するボイスに名残りが見受けられます。
34 Hiding Place
[Comfortable Mix]
Disc1の21曲目「Hiding Place」のリミックス。特にリミキサーの表記がないので、おそらく水田氏みずからによるものでしょう。作曲が煮詰まった時にはブラジル音楽を聴いてリラックスしていたと言う水田氏、このリミックスもレゲエ調のハネたリズムにスティールドラムなんかも使われておりまして、どことなく南国っぽくなっております。

前作のファンには「Out of Phase」のリミックスとしても楽しめるのではないでしょうか。
35 OMAKE フリントですね。決して「バイオハザード」のケルベロスではないです(笑)。

MIST射撃場のBGMリスト
ゲーム序盤で挑戦できる、MISTでの射撃訓練。その際にピアースから「BGMは?」と訊かれて3曲の中から選ぶことになるが、実は射撃場のBGMはゲームモードによって変化するのだ。基本的にはゲーム中で使われた楽曲であるが、サントラとは曲名が違っている場合も多い。それが開発中のものなのか、それともあえてゲームとサントラで曲名を変えてあるのか、詳細は不明。サントラファンは、そのへんも交えてゲームを楽しんでみるのもいい。どのタイトルがどの曲なのか、推理してみよう。
ノーマルゲーム(1周目)
1.Crazy King
2.Ambush!
3.Pick Up The Gauntlet
リプレイモード バウンティモード サポートレスモード デッドリーモード
1.Crazy King 1.Crazy King 1.Crazy King 1.Yellow Rain
2.Eager For Blood 2.Pick Up The Gauntlet 2.Quadrumanous Leader 2.Rebel Forces
3.Heaven-sent Killer 3.Crawling Waste Emperor 3.Hunter's Moon 3.Genic Reactor
ジュークボックスのBGMリスト
ドライフィールドのサルーンG&Rにあるジュークボックスで聴ける曲も、ゲームモードによって変化。射撃場と違って落ち着いたトーンの曲が中心になっているが、こちらもタイトルがだいぶ異なるものがある。ヒマな人、そして腕に覚えのある人は全曲確認してみよう。なお、ジュークボックスは夜間しか聴くことができない。
ノーマルゲーム(1周目)
1.Tower Rendezvous
2.The Vagrants
3.Out of Phase 2
4.Lazing Away the Morning
リプレイモード バウンティモード サポートレスモード デッドリーモード
1.Ghost Town 1.L.A.Maze 1.Curse Your Fate ! 1.Man Made Nature
2.Rock And Fire 2.Lightning Operation 2.Wishwash 2.Gazeing into The Void
3.Requiem 3.Wild Hunt 3.Mental Agony 3.Fool's Paradise
4.Dark Voice Of The Heart 4.Snooper 4.Genic Reactor 4.Killing Field


はみだしコラム:PSとPS2のはざま……

 「パラサイト・イヴ2」は、プレイステーションソフトの中でも比較的後期のものと言っていい。一方で、同じ系統として比較される「バイオハザード」シリーズは、第一作目からイベントがフルボイスだった。こういったゲームでは「声」による恐怖感の表現も非常に重要である。が、「パラサイト・イヴ2」は「喋らない」。どのような事情があるのかは知り得ないが、本作をプレイするうえで、いまだにイベント中のセリフがテキストであることに違和感を覚えたプレイヤーも多いはずだ。グラフィックがいちだんと進化していく中、音声は一歩も二歩も遅れをとっていると言っていいだろう。

 とは言うものの、本作ではそういった部分を補う努力はなされている。悲鳴やうめき声、吐息はSEとしてしばしば挿入されるし、No.9はよく笑う。イベントによっては言葉としてのボイスも挿入されることもある(ちなみに、カイルの声はスクウェア作品の海外版英訳や英語詞でおなじみの、アレクサンダー・O・スミス氏が担当している)。これによって、フルボイスではないまでも、そこにいるキャラクターたちの生命感を表現しようとしているのだ。

 「声」は他でも良い効果になっている。クリーチャーの「声」だ。前作にも登場したNMCは動物がベースであり、その声も基本的には動物の声を加工した、動物然としたものだった。それは本作のNMCもそうだが、新たに登場したANMCは人間がベース。よって、今回は多くのクリーチャーが人間の声を発する。これによって、ANMCがNMCとは根本的に異質な存在であることを示すとともに、より深い恐怖をプレイヤーに与える。人間の声、それも尋常ならざるものであれば、プレイヤーに与える恐怖(生理的嫌悪感)はより増幅されるだろう。ファッティやダイバー系のうめきに始まり、マッドチェイサーの狂気的な笑い声、クリーピングストレンジャーのうめき声、サックラーセフの赤ん坊のような声。いずれも「もともと人間だったんだ」と思わせるに充分であり、ストーリーの脅威的な背景をまざまざと実感させられるのだ。

 SEは他でも頑張りを見せており、混沌とする場面では無線のやりとりが緊迫感を煽り、時には軍隊が足並みを揃えて走っていたり、グラフィックには映り込んでいないその場の「空気」を、非常によく表現している。また、イベントでのキャラクターの動きにも、かなり細かく音が付けられている(アイテムを手渡すしぐさなど、非常に細かい!)。フォーリーとまではいかないまでも、確かにキャラクターが「そこにいる」様子を、プレイヤーに耳から訴えかけることに成功していると言ってもいいだろう。

 シリーズのシナリオとしては完結した感もあるものの、まだ秘められた謎は残されている。もしPS2、またはその後の次世代機で「パラサイト・イヴ3」がリリースされることがあるなら、その時はぜひフルボイスを実現してほしいものである。

シリーズもあわせて楽しみましょう!
「1」のゲームソフト 「2」のゲームソフト 「3」にあたる正統続編

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