parasite EVE ORIGINAL SOUNDTRACK
ジャケット画像 デジキューブ
SSCX-10020
1998年
JASRAC表記:
なし

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「パラサイト・イヴ」オリジナル・サウンドトラック
 「スクウェアの超美麗CG」という言い方は、「FFVII」によって一般から与えられた、スクウェアに対する評価だろう。従来「映画的」「映像重視」と言われてきたスクウェアにとって、プレイステーションで可能となったCG表現やムービーは、まさに鬼に金棒、水を得た魚である。この頃からスクウェアは本格的にハイエンドムービーの研究に力を入れ、現在に至るハイクオリティ・ムービーはご存知の通り。明らかに、ゲームの評価がムービーの出来によって左右されていた時代だったのだ。どんなによくできたゲームも、ムービーがおろそかでは、ユーザーの手に取ってもらうことすら叶わなかったのである。

 そんな中でスクウェアが坂口博信氏プロデュースのもと、自信をもって放ってきたのが「パラサイト・イヴ」である。CG路線をさらに推し進め、その名も「シネマティック・RPG」。圧倒的なクオリティのムービーと、RPGのさらなる融合。「FFVII」の次を求めていたユーザーにとって、これ以上の期待作はなかったことだろう。事実、ビジュアル面では「FFVII」で一躍その名を知らしめた野村哲也氏によるキャラクターを前面に押し出してアピールしていた。また、ムービーについては「ハリウッド」ということを強調し、海外の映画畑のクリエイターを招き、ゲームそのものもスクウェアUSAで製作を進めた。

 ゲームは、アクション要素のあるRPGといった印象で、敵とエンカウントして戦うといった点はRPGそのものだが、コマンド入力方式ではなく、戦闘中もプレイヤーがヒロインを操作する。つまり、敵を攻撃するのも回避するにしても、すべて直接の操作を伴ったわけで、「FFVII」からやってきたユーザーにはとっつきにくかったようである。むしろ、そのホラータッチな雰囲気もあって、カプコンの「バイオハザード」と比較されることも多かった。

 この作品を要約すれば、「一本道のストーリーを、圧倒的な情報量を持つCGによって見せていくゲーム」となる。しかしながら、武器の改造や「2周目」を盛り込むことで、やり込み派を満足させる仕掛けも施されていた。改造した武器を次の周回に持ち越せることも、爽快な「強くてニューゲーム」的な面白みを持たせていたと言えるだろう。

 シナリオのたたき台になっているのは、映画化もされた瀬名秀明の小説「パラサイト・イヴ」。原作者の了承を得ての「ゲーム化」だったが、作品の根底の設定(ミトコンドリアの概念など)以外はすべてゲームオリジナルのものとなった。原作を素材としてゲームを調理したディレクターは、スクウェアの時田貴司氏である。

 音楽は、「ライブ・ア・ライブ」「フロントミッション」「聖剣伝説レジェンドオブマナ」などでおなじみの下村陽子氏が担当。ゲーム冒頭の「オペラ」にまつわる一連の楽曲、そしてヒロインのテーマとの対比による巧みな印象付けを成功させ、一部ファンの間ではゲーム本編よりもサウンドトラックの評価の方が高いことも頷ける。ある意味では、映像以上に非常に「シネマティック」なサウンドトラックなのである。全体に貫かれている刺激的なテクノサウンドは、ゲーム音楽ファン必聴の作品。

DISC 1          DISC 2

DISC 1

Introduction
01 Primal Eyes PSの電源を投入するとまず流れる、オープニングデモムービーの曲。Ayaのテーマをメインに、テンポ・アレンジを変えながら進行していきます。ムービーに完全にシンクロした編曲は秀逸のひとことで、曲に画を合わせたのではないかと思えるほど。さらに、音場内で縦横無尽に打ち鳴らされる複数のリズム音色が、本作の音楽の方向性をも決定付けています。

後に「パラサイト・イヴ2」でもアレンジして使われていますので、シリーズのテーマと言っても差し支えないでしょうね。
02 Waiting for Something Awakens ニューゲームをスタートすると最初に流れるムービーに流れる楽曲。NYの外観からカーネギーホールへの導入部分において、ゲームの雰囲気を印象付ける重要なポジションを務めます。SE的にいろいろな音色が組み込まれているのにお気付きでしょうか?右側ではクリスマスを連想させるベル、左側には鐘、さらに40秒あたりから、オルゴール音色がミックスされており、ムービーとシンクロしています。

この曲はAyaのモチーフが組み込まれており、すでに楽曲での印象付けは始まっているわけです。季節を冬・クリスマスと設定した本作において、導入曲の色としては成功でしょう。導入と書きましたが、エンディングでももう一度、流れます。
Resonance
03 Overture
[from opera "La mia verita"]
ゲーム冒頭の劇中劇、オペラシーンでの曲。いかにもなクラッシック・オペラ調の楽曲です。少々難解な設定であるこのゲームの導入として、わかりやすい舞台としての「オペラ」、「人体発火」という現象を持ってきたのは良いアイディアでした。余談ですが、作品中のオペラはオリジナルストーリーなんだそうです。

中には、ゲーム中にオペラを使うことを懸念していたスタッフも。若い人達はオペラを退屈と感じるのではないか、ということだったようですが、導入としてあのぐらいの長さであれば、いちイベントとしてはまったく問題ないかと。「FFVI」の前例もありますし、ゲーマーは寛容なものですから。

この曲もエンディングで再度流れます。
04 Se l| mio amore sta vincino
[Vocalise] -Eva's Aria-
ゲーム冒頭の劇中劇、オペラシーンでの楽曲。ムービーとシンクロしながら、プレイヤーをバーチャルオペラに引き込んでいくわけですが、突然の惨劇。Ayaと同様、プレイヤーも「?!」となるわけですね。実際のボーカル(Disc2のtrack19)をサンプリングしていますが、音階によってかなり細かく拾われているらしく、さまざまに表情を変化させます。唯一の難点はループですが、これもビブラートでうまくごまかせていると言えるでしょう。PSと言えど、内蔵音源で人の声を出すのは困難なことなのです。

作品中の現実音楽でありながら、そのモチーフは以後、そのまま「イヴのテーマ」として引き継がれていき、ゲーム全体を通して重要なものになっていきます。曲名はイタリア語で、「あなたがそばにいてくれたなら」という意味。

ちなみにこのシーン、発火して逃げ惑う人々の声がSEとしては入っていますが、もしリメイクされることがあるなら、フルボイスを聴きたいものですね。「シネマティック」として、このゲームに唯一足りないのが声なのです。
05 Memory I たびたびAyaの回想に現れる、病院らしき場所で繰り返し使用されている曲。ピアノにかかったディレイがパンニングし、高音のシンセ・ストリングスとともに不安・緊張を表現します。Ayaの戸惑い、と言った方が正しいかもしれません。ベッドに横たわるのは何者なのか?AyaがなぜEveに対抗し得る能力を持っているのか、ということも、ゲームにおける大きな柱。それはストーリーを進めるにつれ、徐々に解明されていきます。

Day4、病院13F研究室にて、謎の核心に迫りそうな発見をした際にも印象的に流用されています。
06 Gloom and Doom カーネギーホールの地下マップで流れる曲。持続する低音が圧倒的に「おどろおどろしい」この曲、聴きようによっては非常に「バイオハザード」してます。「P・E」と「バイオ」が比較対象となるのには、音楽も一役買っているのではないでしょうか。ところどころに挿入されるピアノのアタック、地響きのような弦が見事にホラーしてます。

後にDay3のNYPD内、Day4の病院内でも使用されています。また、ストーリー上は行かなくてもOKな寄り道Map・Ware House(第三埠頭倉庫)のMap内でもこの曲が流れます。また、クライスラー・ビル21〜30F内のマップBGもこの曲になります。
07 Theme of Mitochondoria ミトコンドリアのテーマで、初出はカーネギーホール。ラットが変容するムービーで流れ、そのままバトルBGとして使われていました。左右で鳴るパーカッションの間を、ボイス音色が動いていきます。間奏で入る、ミトコンドリアのうごめきを思わせるシンセもアクセントになっています。

その後も、Day2のクランプ博士との会話シーンや、前田が日本での事件を語るシーンなど、ミトコンドリアに関する重要なイベントやムービーで何回か使用されます。
08 Sotto Voce カーネギーホールの楽屋で、メリッサの日記を読んだ時に流れる音楽。Eveのモチーフであるボーカリーズが使用されており、プレイヤーにメリッサとEveの関係を感じさせます。基本的に繰り返しの音楽なのですが、ゲーム序盤において「声」を印象的に使うことで、プレイヤーには多大なインパクトを与えています。
09 Arise within You 戦闘BG。センターで鳴る金属的なタッチ、左右で鳴っているハイハットの役割も兼ねていそうな軽めのスネアと、本作の音楽的傾向である「たたみかけるようなリズム」はこの楽曲でも健在。それでいてほとんどメロらしいメロはなく、あくまで空間的な音色で構成されており、音楽として主張することよりも「雰囲気」を優先しています。決して戦闘の邪魔をすることなく、緊迫感は演出しているわけです。
10 Main Theme
[Piano Solo Version]
カーネギーホールの稽古場で、メリッサ=Eveがピアノで弾いている曲。実は本作品のメイン・テーマなのです。メイン・テーマにしては、実はそれほど活躍の場がないんですが……。AyaとEveのテーマが強烈なんですね。もうそれだけで成立しているという。

全体にピアノがフィーチャーされたサントラですから、ユーザーが曲を混同することもしばしば。Ayaの象徴がピアノならば、全体にもうちょっとピアノの使い方を詰める余地はありそうですね。
11 The Surface of the Water カーネギーホールの地下下水道で流れるマップBG。これも圧倒的に「怖い系」ですね。重低音のピアノとパーカッションが響く中、さりげなくスクラッチノイズが加えられています(テレビのスピーカーでは聞こえないだろうなあ)。マップの暗さと、これ以上ない相乗効果を生み出しています。曲というか、全体がSEの塊、と言う方が合ってます。
12 Memorize of "Aya and Eve" Day1のラスト、NYの空撮をバックにしたAyaのモノローグにかかる曲。タイトル通り、ピアノはAyaのモチーフ、ボーカリーズはEveのモチーフを奏で、複雑に絡み合っています。音楽においても、二人の避けられない、そして宿命付けられたかのような運命を象徴しているのです。作曲の下村氏は「Ayaはピアノ、Eveは声」というテーマによる印象付けを、わりと早い段階から思い描いていたようです。

Day5の博物館では、Eveの作用によって発火したクランプ博士をAyaが治療しようとするシーンで流れます。ここでも、「発火させた」Eve、「助けようとする」Ayaの対比を描いているわけですね。「私は人間だもの……」Ayaの決意と言えるでしょう。
Fusion
13 Out of Phase NYPD内やソーホーで流れるほか、チュートリアルでも使用されている曲です。ゆったりとしたグラウンド・ビートに空間系のシンセ、そしてメインのシーケンスが乗ります。それにしても……スネアがいくつ鳴っているんだーっ。

「パラサイト・イヴ2」でもリミックスされて使用されています。
14 Urban Noise NY見下ろしの移動マップ画面での曲。移動中の、パトカー内での会話シーンにもそのまま流れることが多いですね。パトカーのサイレンを思わせるような音色も入っています。個人的にはベースのバランスをもっと上げて欲しかったです。
15 Mystery Notes Day2、コンサートの観客たちのミトコンドリアを覚醒させたEveを追うシーンで、セントラル・パーク内のBGとして使用された曲です。ベンドがかかったような「ブーン」という重低音が怖いですね。ダンダン、という重いパーカッションも、恐怖感を増大させます。短い繰り返しの音楽です。

クライスラー・ビル11〜20F内のマップBGもこの曲になります。
16 Influence of Deep サントラではここに収録されていますが、実はDay1、カーネギーホールでのAyaとEveの対峙シーンでも使用されています。そのままバトルシーンになだれ込むわけです。対・Eveバトルのボス戦BG的な位置付けですね。ボーカリーズはもちろんEveのモチーフです。

CMバージョンに比べて、リズムセクションがだいぶ軽くなってしまっているんですが、それでもタンバリン、L・C・Rのリズムパートと、かなりの数の音が鳴っており、内蔵音源で頑張っています。
17 Phrase of Aya 「私も化け物かもしれない……」Day2でAyaがそうつぶやいた時に、印象的に流れたAyaのモチーフ曲。短いブリッジです。
Selection
18 Phrase of Mitochondoria Day3、博物館において、前田がEveの細胞にある実験を行なうシーンで短く使われた曲。ベースとピアノの低音部で構成されています。印象としては「Theme of Mitochondoria」のリズム隊のみを抜き出したようなアレンジですね。実はDay2冒頭での記者会見直後のベイカーの部屋におけるイベントシーンでも、うっすらと流されています。かなりボリューム抑え目ですが、そうすることでプレイヤーの潜在意識に音楽の擦り込みのようなことを試みているのでしょう。
19 Theme of Aya 上と同じ場面で、Eveの細胞にAyaの細胞を加えてみる実験シーンに使用された曲。細胞までもが見事にAyaのモチーフによって色付けられています。ピアノをメインに、空間を埋めるボイス音色、左右に振られたパーカッションで構成されています。
20 Under the Progress 「Out of Phase」のテンポアップアレンジ。4つ打ちの軽快なリズムが気持ちいい。「Primal Eyes」のピアノモチーフも加えられていますね。初出はDay2、かつての妻と息子の危機を知ったダニエルが、パトカーでセントラル・パークに急行するシーンにて。また、Day3のNYPDにおいてAyaがベンの危機を知る場面など、ピンチに際してプレイヤーを心理的に焦らせる時に使われるようです。「現場に急行せよ!」のテーマとでも申しましょうか。

また、クライスラー・ビル51〜60F内のマップBGがこの曲になります。
21 Plosive Attack ボス戦BGM。サントラ的にはこの位置ですが、初出はDay1の終盤、下水道でのアリゲーター戦です。ムービーから流れ始め、そのまま戦闘に突入しました。Day3では、シーバ(ケルベロス)の変身ムービーから流れ始め、その後NYPD内で流れ続けるという、イベントBGM的な使われ方もしています。通常戦闘とリズム音色などに共通性を持たせつつも、より緊迫した雰囲気を醸し出している点はお見事。スタッフの中でも人気の高い曲ということで、バトルチームとイベントチームがこの曲を取り合いしたとか。そんなこともあって、イベントからバトルへ続けて流れるケースが多いようです。

最後のEve戦の前、Ayaがヘリからパラシュートで飛び降りるムービーでは、単なる背景音楽としても使われています。まあ、このシーンはムリに音楽入れなくてもよかった気はしますが。
Conception
22 Missing Perspective 初出は、セントラル・パークのフィールドBGとして。また、Day4の病院内ですべての電源が回復すると、MapのBGがこの曲に変化します。恐怖感はなく、孤独感のある寂しげな曲調になっています。

また、クライスラー・ビル1〜10F内のマップBGもこの曲になります。
23 Memory II Ayaのテーマと、「Memory I」をミックスしたような、短いループ楽曲。day4で、病院を探索するAyaが「夢の中の病室」らしき場所にたどり着くと演奏されます。このように、複数のモチーフを混ぜることでプレイヤーの印象を結び付ける、ということも頻繁に行なわれており、聴覚から訴えるという点においてじゅうぶんに成功していると言えます。
24 Force Trail Day4、巡洋艦から飛び立った戦闘機が夜のマンハッタンを飛行するムービーにて使用された楽曲。テンポの速いマーチングリズムに乗せて、「Primal Eyes」の特徴的なピアノが奏でられています。メインのマーチングリズムに隠れるように鳴っているブレイクビーツは、フレーズサンプリングでしょうか?
25 Phrase of Eve 「Se l| mio amore sta vincino」から、ボーカリーズのみを抽出したもの。最も印象のある使用例はDay4、病院の屋上でEveとAyaが再度対峙する場面ですが、初出はDay3の博物館、前田がAyaとダニエルにEve細胞のミトコンドリアが持つ力を説明するイベントです。

Day5・博物館内では、T-REXの復活ムービーやクランプの登場シーンなどで、ちらっと印象付け目的で(低音量で)流されました。こうして剥き出しにされたボーカリーズを聴くと、音色のサンプリングからループポイント、強弱による表情付けなど、いかに不自然さなく聴かせられるか、という苦労のあとが伺えますね。

また、クライスラー・ビル最上階にて、Mayaの語りバックにも流されます。
26 Memory III Day5、かつてメリッサにMayaの腎臓が移植されていたことを知るAya。この曲はそのシーンで流れ、「Memory I」「Memory II」と関連付けて、発展させたようなアレンジになっています。もちろん画面はあの「夢の中の病室」です。ピアノとボーカリーズという2大モチーフ楽器が使われているのも、本作におけるお約束です。

DISC 2

Liberation
01 Matrix サントラではこの位置に収録されていますが、初出はDay3。ダニエルが、クランプ博士のコンピューターにベンとロレーンの名前を見つける場面で流れました。Day5、チャイナタウンではマップBGとして使用しています。いまひとつ、曲の狙いと使いどころがあいまいになってます。Day3の場合は、他にもっと合う曲あるだろー、という感じがしないでもないですが。

クライスラー・ビル31〜40F内では、この曲がマップBGとして使用されています。
02 The Omission of the World 初出はDay5の地下鉄線路内のマップBGとしてなのですが、マップがそれほど広くなく流用もないため、クライスラー・ビル41〜50FのマップBGとしての方が印象強いかもしれませんね。

アップテンポでノリがよく、ダッシュでガンガン進みたくなります。この曲もフレーズサンプリングのブレイクビーツが使われているようです。もしフレーズサンプルではなく、ブレイクビーツをバラして打ち直しているんだったら、かなり秀逸なリズムトラックです。どちらにしても、RPGで、しかも内蔵音源でこのリズムは、当時はほとんど無かったですからね。とっても新鮮に感じたのを覚えています。

スパークのような音色はわりとよく聴くサンプル音源で、ローランド系プリセットシンセなどにも入っています。
03 Wheel of Fortune Day5での、博物館内マップBGM。いかにも探索、といった感じで、さながら「消えたクランプを追え!」でしょうか。博物館や恐竜などの「古代っぽさ」はありません。あえてそこを曲で表現する必要もないでしょう。
04 Kyrie ミトコンドリア覚醒のテーマ?初出はDay2、セントラル・パークに集まった観客たちのミトコンドリアがEveによって覚醒させられるシーン。後にDay5において、巨大生物のテーマ的な使われ方もしています。妊娠したEveを巨人が連れていくムービー、ヘリや戦闘機を巨大生物が落とすムービーですね。

イントロのオルガンとボイス音色が、ある種の神々しさを醸し出しつつ、ボーカリーズが加えられます。それはもう完全に「Eve」のイメージですね。発売前のプロモーションムービーでは、この曲を前半に、後半は「Influence of Deep」という組み合わせで使用していました。
05 Across the View ヘリコプタームービーで使用される音楽。「Force Trail」の別アレンジと言っていいでしょうね。「Primal Eyes」のフレーズをピアノで鳴らしつつ、リズム隊はまさに「発進」調の軍隊色を感じさせるものになっています。この曲も、リズムだけでかなりの発音数を食っていそう。
06 Femmes Fatales 最後のイヴ戦BGM。イントロでは「Se l| mio amore sta vincino」と思わせつつ、途中からはこれまでになかったボーカリーズフレーズが現れます。個人的には「Influence of Deep」の発展形と解釈しています。

ここからは怒涛のイベント&ボスバトルの連続。あえてこの曲は一歩引いてるかのような印象ですね。ラスト付近では、あくまでEveは前座でしかないわけで。
Evolution
07 A Piece of Remain Eveを倒して、戦艦上で一時の休息。これで終わるはずがない、とすべてのプレイヤーが思っていたはずです。さあ、最後の戦闘準備をしておきましょう。
08 Musica Mundana 完全体の誕生ムービーから流れる音楽。SEにマスキングされてしまい、ムービー中ではほとんど聞こえません(笑)。うめき声のような男性ボーカリーズがミックスされており、めちゃくちゃ怖いです、この曲。

完全体は見た目は赤ん坊っぽいですが、これに本物の赤ちゃんの声を乗せたSEチームに拍手!無邪気ゆえの恐怖というものがうまく表現されています。余談ですが、完全体は両性具有なんだそうです。それもまた怖い設定ですね。
09 U.B. Ultimate Being−完全体とのバトル音楽。いわゆるラスボスBGですね。男性ボーカリーズ数パートとアップテンポのリズムで構成されており、さらにバックには「Musica Mundana」から共通するピアノの低音による「ダガダガダガダガ」が重ねられています。展開に合わせて、楽曲が発展していくような作りになっているわけですね。

完全体が第三形態(成体)になると、曲もうまいこと変化。2分38秒からのオルガンが加えられた、フルオケパートに切り替わります。プログラム上では2つの別個な曲として認識しているのでしょうか。完全体の変容に合わせてドンピシャで曲調が変化した時はトリハダものでした。プレイヤーによって、そのタイミングはバラバラなんですから。

完全体が第四形態になると、4分10秒からのボーカリーズパートに戻ります。こちらも、楽曲のチェンジをプログラムの指令で行なっているんでしょうね。
10 Escape from U.B. 「Musica Mundana」と音色に共通性を持たせ、テンポを落としたようなループ曲。巡洋艦の中を完全体に追われながら進んでいくイベントで流れます。それにしても、さっきまで対等に戦っていたのに、ここでは触れただけでゲームオーバーとは、なんだか納得がいきません。もしそうなってしまうと、ラスボス戦からやり直しになってしまいます。
11 Main Theme エンディング前半でちらっと流れます。本作のメインテーマなのですが、それにしてはちょっと扱いがあまり良くないかな?実は、この曲は2周目でクライスラー・ビルに挑んだ時にその真価を発揮するのです。とは言ってもこの曲の印象付けはあまりされていませんから、どっちにしても唐突感は否めませんが。
Symbiosis
12 Theme of Aya
[Reprise]
「Theme of Aya」とはややアレンジの異なるバージョンです。が、エンディングムービーで流れるのはほんの一瞬で、勿体無い気がします。振り返ってみると、Ayaのモチーフはいろいろな曲で使用されて印象付けられているのですが、「Theme of Aya」ということではあまり日の目を見ていないんですね。
13 目覚めよと呼ぶ声が聞こえ スタッフロール前半部に流れます。サントラでは「Somnia Memorias」と別トラックになっていますが、実際にはそのまま続けて繋がります。明確なキッカケもなく、なぜ2曲構成になっているのかがナゾなんですが……。開発途中で、エンディングの構成が変わったのかな?

原曲はバッハのKANTATE NR.140(カンタータ140番)、「Sleepers wake!loud sounds the warning(目覚めよ、と我らに呼ばわる物見らの声)」。それをオルゴール調にアレンジして使用しています。
14 Somnia Memorias オールド・ラテン語で「夢の記憶」といった意味のタイトルを持つこの曲は、もちろんスタッフロールで流れるもの。歌うはShami Rigsbee、日本語詞と作曲は下村陽子氏みずからが手掛けています。

ハードがプレステになることで、下村氏は「昔からのゲーム作曲者の憧れというか、やってみたいことのひとつ(談)」ボーカルものを、ぜひやってみたいと思ったそうです。そのことを他の製作者たちに告げたら「えー?」と難色を示されたらしいのですが、そこで下村氏は「日本人にもアメリカ人にもわからない言葉、そして言語の発祥であるオールド・ラテンの歌詞にすれば」と提案したら、OKが出たということ。下村氏はみずから詞を書き、それを通訳が英語訳したものを、さらにラテン語訳したのが本作の歌詞になりました。また、歌手の選定も下村氏が行なったようです。歌詞については、サントラのライナーノーツに掲載されています。
And Other Days
15 Consensus 本編には使用されていない曲で、クライスラー・ビル61〜70F内のマップBGとしてのみ、耳にすることができます。ボツ曲なのか、作ってみたら余っちゃったのか。淡々としたテクノ調の楽曲です。
16 Someone calls me......
Someone looks for me
......
クライズラー・ビル最上階で、AyaがMayaと会話するシーンで使用されるピアノ・バラード。会話中はイントロのピアノがループされ、バトルに突入するとボーカリーズがあらわれるという、凝った仕掛けになっているようです。この静かな曲をバックに行なわれるEve・オリジナルとのバトルは、このうえなく厳しいものになっています。
17 Main Theme
[Orchestral Version]
クライズラー・ビル編のエンディング。メインテーマのオーケストラバージョン(シンセですが)です。やっとしっかりとした形で、メインテーマが使用されたことになります。ここまで来ると、もっとメインテーマも本編中で使用されていれば……と思いますね。良くも悪くも、AyaとEveのテーマが強かったですから……。

本編のエンディングが、「どういうことなの?」と考えさせられるものだったのに対し、クライズラー・ビル編エンディングはわりときちんと完結したものと言えるでしょう。グッド・エンディングとまでは言いませんが……。ともかく、これを見ないと「パラサイト・イヴ」を味わい尽くしたとは言えません。
Bonus Track
18 Influence of Deep
-CM Version-
本物のコーラスによる、豪華バージョン。おそらく、ゲーム音源のボーカリーズ音色も、このコーラスをサンプリング、もしくは同じDivaの声を単体でサンプリングしていると思われます。見事な歌声を披露しているのはJudith Siirila。

たたみかけるリズムトラックがこの上なく気持ちいい。あまりにいくつもの音色が鳴っているため、混沌としていて判別は難しいのですが、核となっているのはドラムン・ベース調のブレイクビーツ。それに各々のハイハット、タンバリン、個別に打ち込まれたパーカッションが加えられています。所々にレートを落とした、汚し系のフィルインなんかもアクセントとして入っています。また、完全に好みの問題なのですが、ベースのレベル(音量)が低すぎる気がします。ここまでやるなら、もっと低音部の補強が欲しいです。

このトラック自体は、ゲーム発売前のCMやプロモーションムービーに使用され、また、マスコミが取り上げる機会も多かったことから、テレビなどの媒体に配布されたものです。
19 Se l| mio amore sta vincino
-CM Version-
こちらもCMや、発売前のプロモーションで流れていたもの。歌唱はおなじくJudith Siirila。ゲーム中のバージョンは「アーオー」でしたが、このバージョンはきちんと歌詞があります(ライナーノーツに掲載)。もちろん、オペラの内容に合わせた歌詞になっています。

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