R・TYPE(アールタイプ)デルタ

 シューティングゲームに興味がある人なら、「R-TYPE(アール・タイプ)」の名は知っているだろう。横スクロールシューティングというジャンルを代表するコナミの「グラディウス」を健全な「表」とするなら、その独特の世界観とグラフィックから「R-TYPE」はシューティング界の「裏」である。決していかがわしいということではなく、誉め言葉だ。ゲームセンターで大ヒットを記録、独自のアイレム的シューティングを世に認知させ、その地位を不動のものにした歴史的名作。その「R-TYPE」が、プレイステーションで3Dポリゴンになった。タイトルは「デルタ」。このCDはその楽曲を収めたサウンドトラックである。

ポニーキャニオン(サイトロンレーベル)
PCCB-00359
1999年2月17日発売
JASRAC表記:なし


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ゲーム紹介

 あの時の熱気はどこへいってしまったのか?「シューティング冬の時代」となってしまった現在では考えられないほど、かつてシューティングはコンピュータゲームを代表するジャンルであった。「映画みたいなRPG」なんてまだなかった時代、ゲームと言えばシューティングかアクションだったのだ。そして、家庭用ゲームとはまったく別の世界に、アーケードゲームがあった。今となってはアーケードゲームのコンシューマーへの移植は、ほとんど差異がないほど忠実に行われているが、かつてコンシューマーはアーケードの劣化版でしかなかった。ゲームセンターは最新技術を駆使したゲームの博覧会だったのだ。アーケードでこそ「ゼビウス」は生まれ得たし、その大ヒットがあったからこそ、たとえ劣化版とは言え「家庭でゼビウスができる!」ことの衝撃に皆こぞってファミコンを買った。ゲームセンターの文化と繁栄があったからこそ、家庭用ゲームは普及したのだ。

 しかし、皮肉なことにその家庭用ゲーム機の進化によってアーケードとコンシューマー版に大きな差がなくなり、アーケードの存在価値そのものが危ういものとなっている。ゲーセンにたむろしていたゲームキッズは、いつしか部屋にとじこもってゲームをするようになった。彼らによって発展してきたシューティングというジャンルもまた、大作RPGに占領されてしまったコンシューマー市場では「売れないもの」の扱い。いつからシューティングはこんなに冷遇されるようになったのだろう。攻略本や攻略サイトとにらめっこをしながら、手順を追うようにゲームをプレイする者たちにとって、ゲームはあくまでエンディングを見るための「手段」でしかなくなり、努力や学習を必要とするシューティングというジャンルはますます不要のものとなっていった。ゲームに達成感を求めることもなくなった。疲労することなどもってのほか。ゲームは「操作できる映画」でありさえすればいい。ゲームという娯楽のありかたそのものが変質してしまったのか?

 「R-TYPE」はそんなゲームの変遷を見続けてきた。ゲームセンターが悪ガキたちの溜まり場であった1987年、元祖「R-TYPE」は颯爽とデビューした。シューティング大盛況の時代、新しいタイトルが入荷されればとりあえずプレイしてみるのがゲーマーだ。下地は「ゼビウス」や「グラディウス」、そして東亜プランの名作たちが既に作っていたのである。「R-TYPE」をプレイした者はまずその独特のグラフィックに息を呑む。明らかに「生体」を意識した敵キャラクターに魅了され、3種類のレーザーとフォースを駆使した戦略性に惹き込まれる。「R-TYPE」の筐体はおそらく、休む間もなく稼動し続けたことだろう。次から次へと挑戦者が現れ、そして去っていく。ある者が新たな領域に突入すれば、先のステージ見たさに人垣ができたものだ。

 翌1988年には家庭用新ハード・PCエンジンの目玉ソフトとして移植された。2枚のソフトに分割はされたものの、その移植度は当時でもかなり高いものであった。逆に言えば、当時最新鋭のハードをもってしてもすべては収まりきらなかったのだから、いかにアーケードがハイスペックなものだったかがわかるだろう。1989年には、「R-TYPE II」が正統な続編としてアーケードに登場。その後もゲームボーイやスーパーファミコンへの移植・関連タイトルの発売があり、92年には再度アーケードに返り咲く。2人同時プレイが可能な外伝的タイトル「R-TYPE LEO」がそれだ。93年には初の純粋な家庭用オリジナルタイトル「R-TYPE III」をスーパーファミコンで発売。そして、1998年になって、プレイステーションにオリジナルの「I」と「II」がカップリングタイトルとして移植された。思えばこの頃から、シューティングというジャンルは斜陽の時代に入っていたのかもしれない。

 駆け足で「R-TYPE」の歴史を振り返ってきたが、ここからが本題。1998年、プレイステーションで「R-TYPE」の完全新作が発売された。家庭用オリジナルとして、である(今になって思い返せば、「R-TYPE」の新作がアーケードに供給されなかったこと自体がシューティングの衰退を示していたのかもしれない)。それが本作「R-TYPE DELTA(デルタ)」である。プレイステーションの特色を活かし3Dとなった「R-TYPE」に、発表直後は「ゲーム性そのものが変わるのではないか?」「シリーズの持ち味が損なわれるのでは?」という危惧があったが、プレイした人は口を揃えて「どこを切ってもまぎれもなくR-TYPEだ」と評した。2Dのヒット作を3Dにしたとたんに失敗作となる例は少なくないが、こと「デルタ」に関しては成功したのである。「LEO」で一度は廃したフォースの復活、初代のテイストを色濃く残す武器のバリエーション、生物的な敵キャラ、独特のグラフィック。3Dになったことで感触こそ変わったものの、受ける印象はまさしく正統な「R-TYPE」だったのだ。

 「R-TYPE DELTA」で使用されている楽曲を、オリジナルのまま収録したのがここで紹介するCDである(一説によれば、音質はソフト収録のものより上がっているらしい)。楽曲製作を担当したのは、音楽製作集団・有限会社USP(アンリミテッド・サウンド・プロジェクト)。「音に纏わることはなんでもやります」がコンセプトのUSPは、ホームページに音楽を流すサービスをしていたり、アーティストのプロデュースやマネージメントなど枠に囚われない活動を行っている。ゲームでは「どきどきポヤッチオ」「絶体絶命都市2」「バンピートロット」などの楽曲を手掛けているのだ。アイレムから「R-TYPE新作のサウンドを」と依頼された時の驚きと喜びはかなりのものだったようで、特にコンポーザーの南部栄作氏はシリーズの大ファンらしい。

 アイレム側からの注文は「今までのシリーズとは違ったアプローチで」「過去のシリーズの曲は意識せず」とのことだったようだ。特に「ステージのイメージ重視で」ということで、アイレムから送られてくる開発中のステージ映像を見ながら作曲作業を進めたとのこと。製作中も刻々と進化していく映像から制作スタッフのこだわりを感じつつも、同等のこだわりをもって楽曲も評価されたため、ボツ曲もかなりの数になったそうである(ライナーノーツによれば20数曲!)。そうして作られた楽曲は、ステージやシーンと切り離すことのできないものになっているとUSP代表・入江茂明氏は語る。「曲だけが一人歩きするようにはできてません」、この言葉は実は「デルタ」に限ったことではなく、ゲーム音楽すべてについて真理であると思うのだ。あくまでゲーム本編と一体になった時のために作られた音楽。ここをお読みになられている諸氏にはぜひ、ゲームとともに楽しんでいただきたい。そして「R-TYPE」の、そしてシューティングの熱い歴史に参加してほしいと心から願う次第である。

曲名の下に表記した()内は作曲者名(敬称略)。

01 R-TYPE DELTA
イメージテーマ Dead End
(南部栄作)
さて、アルバムのトップを飾るのは……あれ?こんな曲、ゲームで流れたかいな?ということで、南部栄作氏が本作の世界観を音で表現したイメージテーマ曲、「Dead End」です。あくまでイメージテーマであり、ゲーム中で流れる曲のモチーフが組み込まれているとか、メドレーでチラリと顔を出すとかいった仕掛けは……たぶん、ありません。もともとあまり立ったメロディがないものが多い本作の楽曲を組み込んだところで、マニアだけがニヤリとするものになってしまうでしょう。ならばいっそ、作曲者が持つ作品に対するイメージで新たな曲を作ってしまえ、と。

ここでは筆者がどう思うかということではなく、ゲーム音楽ファンの皆さんに訊きたいのですが、こういう「厳密にはゲーム本編と関係ない曲」がサントラに入るのってどう思います?不要だ、という人もいれば、「アルバムのトータルコンセプトを提示する曲としてあってもいい」という人もいるでしょうね。

楽曲はギターが前面にプッシュされた、軽快なロックインストゥルメンタル。ギターは作曲の南部氏と、"超絶ギタリスト"佐藤ゆうごう氏によります。彼らのギターがギャギャギャギャギャーンと掻き鳴らすなか、シンセやオルガンといったロックンロールキーボードが……音色やフレーズのせいかどちらかというとフュージョンという感じですが……、アドリブソロを聴かせます。ゲームの世界観にリンクするかのようなコーラス、オケヒットもしばしば顔を出します。筆者はそれらに本編のBGMが隠れているのではないかと疑ったのですが、ちょっとわからないですね。

シューティングというよりはレースゲームのオープニングとかにハマりそうです。「グランツーリスモ」のオープニングムービーで流れても違和感なさそうな。テレビの「F1」でもいいですね。で、南部氏が「R-TYPEデルタ」にどのようなイメージを持ってこの曲を作ったのか、という部分についてはナゾなわけです。このままサントラを聴き進めると、構成曲が大部分を占め、かつ暗い曲の多い本作において、この「イメージテーマ」がなんだか浮いていると感じるかもしれません。でもいいんです、「イメージ」ですから。作品や世界観に対して誰がどんなイメージを持ってもかまわないんですよ。そしてそれが制作に携わった人であれば「オフィシャル」になるんです。……うーん。
02 R-TYPE DELTA
アレンジバージョン
エンディング [安らぎ]
(黒岩東彦)
本作にはエンディングに用いられる楽曲が3曲ありますが、この曲はいわば「通常(ハッピー?)エンディング」に使われている「エンディング [安らぎ]」をサントラCD向けに新規アレンジしたものです。もとは短い曲なのですが、主に導入を膨らませることによって聴き応えのあるボリュームにしてあります(原曲はこのアレンジバージョンにおける1分26秒あたりから始まります)。音色はゲームバージョンより当然向上していますが、聴いておわかりの通りオーケストラ演奏ではなく、シンセサイザーでそれっぽく演奏しているものです。

CDの構成として、エンディングのアレンジを2曲目に持ってくるってどうなのよ、という気もしますが。イメージテーマで幕を開けるのは理解できますけどね。うーん、これはやっぱりCDのケツに持っていってほしかったところですなあ。もっと言ってしまうと、別の曲をアレンジする可能性はなかったのでしょうか?ユーザーに人気のステージ音楽とか……。
<R-TYPE DELTA オリジナルバージョン>
03 オープニング
(海老原博)
ゲーム起動直後に流れる、オープニングムービーで聴くことのできる曲です。ムービー自体が長いものではないので音楽も短いものになっていますが、何かが始まろうとしている期待感、緊張感はしっかり表現されています。
04 機体セレクト
(南部栄作)
ゲーム的には、オープニングムービーの後はタイトル画面、メニューともに音楽が流れません。歴代「R-TYPE」がそうでしたから、シリーズの伝統に従ったものでしょう。まあ、シューティングというジャンル全体に「タイトル画面は無音」という傾向があるのですが。

この曲はそんなタイトルを経てゲームをスタートすると表示される、自機選択画面で流れるもの。いよいよ出撃、といったテンションをじわじわと高めていくシンセベースは左右にパンニングされています。シンセベースとともに鳴り始めるホルンの旋律が「いままさに飛び立つ勇者」を讃えるかのようで、さながらRPGの雰囲気。その後も複数の金管パートやストリングスが加わって盛り上げ、一貫してシンフォニックな曲調。控え目なリズムも、楽曲に対するそのような印象を手伝っています。非常にわかりやすくキャッチーな曲になってますが、なんでも楽曲制作における最初のプレゼンに出したうちの1曲だそうで、このツカミも納得です。

過去の「R-TYPE」がどちらかというとロックを感じさせる楽曲で占められていただけに(少なくとも筆者はそう思っています)、初回プレイでは今回はオケか!そうきたか!と思ってしまいましたが、ステージが始まるとそれが間違いであることにすぐ気付きます(笑)。なお、この自機選択でポリゴンの機体を見たとき「ほんとうにR-TYPEになってるのだろうか?」と、本作に対して少々の不安を抱いたことを白状します。それもステージが始まるとすぐに間違いだと気付きましたが。
05 ステージ1 [狂機]
(黒岩東彦)
ステージが始まる直前は真っ黒な画面にテロップと波形だけ、その波形に伴う心拍音が緊張感を最大限に高めます。そして風景が開け、ステージ名の表記、現れる自機……「FINAL」にも引き継がれる、映画のワンシーンのような導入はなかなか新鮮で秀逸でした。そして鳴り始める歪んだ音色、生々しいドラムのフィルイン、ヘビーな4つ打ちビート……なんだよロックじゃんテクノじゃん、シンフォニックなんて言ったの誰だよ、という1面のBGがこちら。

大きく分けるとこの曲は6つのブロックから構成されています。まずはイントロから連なり、17秒からはファットなシンセベースが導く第一部、ティンパニが煽り立てる58秒からの第二部、1分37秒からのギターソロから始まる第三部、2分17秒からはリズムがブレイクしてギターが中心となる第四部、2分33秒からはテンポ感を上げてハードロック的アプローチを見せる第五部、オケヒットが鳴り響いて完結を迎える3分22秒からの第六部、という感じ。同じ曲調がリピートされることなく、次々と表情を変えていきます。強制スクロールのシューティングならではと言えるでしょうか、ボスに到達する時間も決まっているのでループを考慮する必要もありませんしね。

こうなると音楽をレビューする者としては「ステージの変化にピッタリ合わせてあります」と言いたくなるのですが、1面って出現する敵はともかくステージ的にはそれほど大きな変化がないんですよね。かろうじて第四部の始まりがコントライトの出現にリンクしていて「おっ、曲調変わった」と思うぐらい。逆に言えばこのステージのBGMにここまで多様な変化が必要だったのかな、と。結果として印象に残りにくいものになってしまったような気がします。ゲーム制作における手法や制約がまるで異なる過去の作品と比較すべきではないかもしれませんが、昔の「R-TYPE」を超えるのは並大抵のことではないな、と感じました。なお、第五部の終盤でボスであるモリッツGが出現するため、ゲームでは完結部を聴くことはないでしょう。

さて音楽の話ではありませんが、最初にゲームをやった時の印象を。今ふう(当時)の流行りも意識して取り入れてるけど、手触りは間違いなく「R-TYPE」だと感じました。家庭用ということで難易度はハードめに調整されていましたが、こういうものをアーケードでもリリースして欲しかったなあ……と、残念にも思いましたね。
06 ステージ2 [異形] 空中
(植木啓示)
あれ、2面の曲が2つある……?ステージ分岐なんてあったの?と思われるかもしれませんが、これは2面に仕掛けられている音楽の遊び。2面は場所によっては空中を進んだりまたは水中を進んだりできますが、自機がそのどちらにいるかによって楽曲が変化するのです。これはなかなか面白いアイディアで、ユーザーの間でも評価されています。

ということで、こちらは自機が空中にいる時の曲です。ゆったりめのテンポでジワジワと、迫り来る敵を描いています。ステージの性質から生物系の敵が多数出現するためか、はたまた水中に沈んだ巨大エネルギー炉というステージ設定からか、コーラス音色も盛り込んでやや神聖な雰囲気のする曲になっています。ステージ1のように展開がコロコロと変わることはありませんが、逆にその変化はプレイヤーの操作によって付けていくことになるのです。そう、空中と水中の切り替えですね。

USPの解説によると、この曲が本作で「最もメロディの立ってる曲」とのことです。ええっそうなの?この曲が?確かに明解なメロはあるけど……と思いながらサントラ全体を聴くと……納得。構成曲が多いんですね、「デルタ」の音楽って。「曲だけが一人歩きするようにはできてません」という言葉の意味はそういうこと。あくまでゲームありき、ステージありきの音楽として作られたからこそ、不要なメロは入れない、無理に立たせないという判断が生まれるわけです。そしてそれは家庭用オリジナルだからこそ成立するもの。アーケードでは目立つことを最優先にして、雰囲気よりも立つことを重視して曲を作りますから。
07 ステージ2 [異形] 水中
(植木啓示)
そしてこちらが、ステージ2で自機が水中に潜っている際のBG。ちょっと聞けば空中の曲と同じものであることがわかるでしょう。ただしアレンジはすっかり変えられていますけどね。ステレオ音場を包み込むように配置された水中音は、効果音ではなく楽曲の一部として加えられているんです。その他の音色も空中のようにハッキリさせず、こもったような音を使うことで水中の雰囲気をうまく出しています。

ゲームではこれら2つのバージョンを同時に流し、自機の状態(空中にいるか、水中にいるか)に合わせて切り替えているわけです。こういうことをやろうと発案したのが制作側なのか作曲サイドなのかはわかりませんが、音楽が垂れ流しになりがちなシューティングにおいて「なにか新しいことができないか」という試みは歓迎されるべきだと思います。もちろんプレステともなればグラフィックでじゅうぶん「水中っぽさ」は表現できますが、音でもプレイヤーの没入感を高めてくれているのです。意識しなくても「水の中にいる」ことが実感できると思います。
08 ステージ3 [巨襲]
(海老原博)
「R-TYPE」の3面といったら巨大戦艦!本作でもステージ名からもわかる通り、伝統(お約束)の超巨大敵を相手にすることになります。ステージ開始直後、背後からのっしのっしと歩いてくる巨大な四足歩行トレーラー「ゲイツ」がいきなりぶっといレーザーを一閃!ぶったまげました。そんなゲイツの登場に呼応したかのような、警報を思わせるイントロで始まるのが3面のBGM。ゲイツの歩くさまに合わせたのか、ゆっくりめのテンポで重々しさを強調しています。

楽曲はプログレを思わせる、変拍子ロックを豊かな楽曲構成で聴かせます。生っぽい質感のドラムスに、これも生を意識したベース、そして時おりシブいソロを聴かせるギター。クラシカルなチェンバロも使われていますが、むしろハードロックにはなくてはならない楽器ですね。そしてトドメに男声ボーカリーズが荘厳に歌い上げます。なにしろゲイツがのんびりしてますので、曲はステージに合わせるというよりも「勝手にやりまーす」という感じ。というか、作曲者が自分の好きな曲を思うままに作ったという感じかな。
09 ステージ4 [侵食]
(南部栄作)
上昇縦スクロールステージ、4面のBG。「なんか喋ってる!」というイントロはミッションの始まりを予感させ、続いて始まる宿命的な弦のフレーズは、「かつて人類のものだった宇宙要塞をバイドから取り戻す」というステージのシチュエーションにピッタリ。リズム隊(ドラム、ベース、ギター)はロック調でありつつ、上モノは金管、弦などオケ色の強いもので固めており、かっこ良さとわかりやすさは本作の楽曲においては出色。そのためかユーザー人気も高いようです。

2分53秒あたりから曲調がガラッと変化しますが、これはステージの展開に合わせてあるものだとか。USPの解説によると、「ゲーム後半のステージでは、複数の曲がステージの進行に合わせて切り替わります」とのこと。切り替わると言っても別ファイルに乗り替わるわけではなく、お聴きのようにあくまで1曲の中で変化をつけています。スクロール速度=ステージ進行が一定だからこそできるワザであることは言うまでもありません。ゲームでは「動く地形ゾーン」に差しかかったあたりでこの変化が訪れます。テンポも跳ね上がり、ロック+オケだった楽曲がテクノへと変貌。せわしないリズムと小刻みなシンセがプレイヤーを焦らせ、緊迫の度合いを高めます。サンプリングのリズムループも加えられていますね。一部ループにはフランジャーが施され、面白い効果を生んでいます(3分20秒からの4小節など)。テンションの高い曲なのですが、わりとすぐボスであるQ.T.キャットが出現してしまうのであまり長くは聴けません。

しかしこのステージのボスは思わず「イメージファイトかよ!」と思ってしまいました。ステージ自体も、往年のアイレムファンが思わずニヤリとしそうな作りですよね。
10 ステージ5 [邪悪]
(海老原博)
初代「R-TYPE」の敵が多数登場する、シリーズのファンには嬉しい5面のBGMがこちら。これで音楽も初代のアレンジだったりしたらかなりゾクッとくるところでしたが、本作ではそれをやっていません。制作からはあくまで「旧作を意識せず」というオーダーだったため新曲が当てられたのでしょうが、一方で「グラディウス」なんかはこういうステージでは素直に旧作の曲を持ってきますし、ファンサービスの一貫としてはやっちゃっても良かったのではないかと思います。各種インタビューを読む限り、制作側としては本作において「シリーズの約束事や縛りを破りたい」という意識があったようですが、じゃあこのステージ自体の存在って?という。こういうステージを用意するなら、ファンとしてはやっぱり旧作の曲が聴きたくなっちゃいますよ。

で、新たに当てられたこの曲なんですが、曲というよりは全体がSEのような音色で構成されており、BGMというよりは長いMEという感じになっています。キラキラアルペジオ以外はゲーム中での激しい効果音と被りまくってて、ほとんど聞こえないんですよねー。どこまでが曲の音で、どこからが効果音?という感じです。ステージの不気味さはうまく出せていると思いますけど、ちょっと寂しいかな?アーケードゲームだったらあり得ない曲ですね。こういう思わせぶりなSEが組み込まれた曲って、プレイヤーにしてみれば凄く迷惑なんですよね。ゲーム中で本当のSEに聞こえてしまい、「えっ、何か来るの?どこから?」って感じで気を散らされるんです。えっ、もしかしてそれが狙い?好みもありますけど、筆者はシューティングにおいてはこういう曲はやめてもらいたいです。

カラーは引き継ぎつつ、曲調が変化する2分10秒以降はやはりステージの進展に合わせてのもの。ゲームではちょうど、初代の6面を思わせる「鉄パイプ+ニュート+ドップ」がわらわらと襲来するあたりです。最初にここに辿り着いた時は「避けられるかこんなん!」と絶望的な気持ちになったものです(笑)。
11 ステージ6 [覚醒]
(海老原博)
本作で最も有機的かつグロテスクなステージ、6面のBG。よって楽曲もかなりドロドロしたものになっています。ショッキングなピアノのアクセントによる幕開け、続くスイープとアルペジオは古〜いホラー映画の劇伴を思わせます。1分52秒からは、ゲーム中でゆっくりと登場するノーザリー(画面中央を右に向かってゆっくり進むアレ)に呼応するかのように曲調が変化し、ショッキングなテイストは引き継ぎつつも刻み系のシンセベースとハデなオケヒットで、やっぱりホラー映画の雰囲気。

それもそのハズ、このステージは見た目もグロいのですが出現する敵も生理的嫌悪感を抱くものが多く、特に「イヴ」の気持ち悪さは特筆モノ。特に死に際がキモいです。グエーッと断末魔の雄叫びを発し血しぶきをあげてバラバラになったかと思うと、その残骸が地面にボトッ。その肉片がピクピクと動いている……よっぽどグロ好きのスタッフがいたんでしょう、ヘンなところにこだわりすぎ!

3分20秒でまた感じが変わり、一転してパワフルに。ゲームではステージ終盤、しばし縦スクロールになるところです。これもステージ展開に合わせての処理ですね。USPによると「ゾーンに合わせて3曲が切り替わります。それぞれのゾーンで中心となる敵をイメージして作曲しました」とのこと。第一部はまさしく「イヴ」、第二部はノーザリー、そして第三部は「自機に酷似した戦闘機×3(名前がわからない……)」でしょう。
12 ステージ7 [生命]
(黒岩東彦)
7面、すなわち最終面のBGです。魂を思わせる光がユラユラと漂う様子を見ながら、最終面のザコはやっぱり赤ちゃんなのね……と思いながら進んでいくと……どう見ても精子のようなモノが「ぴるぴるぴる」と音を発しながら登場!螺旋細胞も出現し、「生命の営み」を感じずにはいられないステージで流れるのは、やっぱりコーラスしかありませんよね。民族色のあるリズムもやはり「生命の起源」のようなニュアンスを感じさせます。

なんとそのコーラスだけで50パートぐらい重ねているとのこと。いやはや、スタジオ録音だったら大変なことになってたでしょう。マルチのトラックがぜんぜん足りません(笑)。サンプリング&電子音楽だからこそできるワザ。ああ、今はコンピューターベースのDAWならスペックさえあればトラックは無制限だから問題ないのか。ふんだんに重ねたおかげかかなり生々しいコーラスですが、歌唱のクレジットがないので声モノのサンプリング集を素材として使用したのでしょう。

しかしせっかくのコーラスも、わりとゲーム序盤の曲から頻繁にコーラス音色を使ってきたため、ややインパクトのないものになってしまっているのが悔やまれます。画面と音楽との相乗効果は確かにもの凄い説得力を持っているんですが、コーラスという要素そのものについては「また?」という印象がないでもありません。最終面や最終ボスでこういうことをしたいのなら、それ以前ではコーラスは封印すべきだったかもしれませんね。「デルタのテーマはコーラスなんだ」ということなら仕方ありませんし、全体を統一したトーンで貫くのも有効な手法ではありますが、それにしては半端ですよね……。
13 ボス [生物系]
(海老原博)
ボスBGMの使い分けがなされているのも本作の特徴でしょう。こちらは生物系という括りがなされるボス敵との戦闘音楽。ボスが現れた!というインパクト重視のアタックの後、あちらこちらで打ち鳴らすリズム楽器とスイープシンセがウネウネとのたうち、終盤ではコーラス音色が「生きているもの」の生々しさを描きます。これといったメロディがなく、かといってガチャガチャと煽り立てるでもなく、わりと淡々と「生命あるもののしぶとさ」を表現している感じ。プレイヤーにしてみれば「もういいかげんにくたばれよ、クソっ!」みたいな。

ゲーム中で使われているのは2面、5面(インスルー&ゴマンター)、6面の計3回。グログロ生命体シューティングという印象の強い「R-TYPE」シリーズですが、意外とメカ系の方が多かったんだな、という。
14 ボス [メカ系]
(南部栄作)
一方、こちらはメカ系ボスとの戦いで流れてくる、煽り立て系ロック。音符の多い刻み系ディストーションギター、タムタムを多用したリズム、お約束のオケヒットと、そしてその他もろもろのシンセという感じで、とにかく音数が多いです。これといった明確なメロを持たせずに楽曲構成でジワジワと迫る生物ボスの曲と比べてわかりやすく、シューティングのボス戦音楽としてはこちらの方が王道ですね。たいしたボスでなくても曲で焦らされてしまうという。初代「R-TYPE」のボスBGMを意識しているようにも思えます。

こちらはゲームでは1面、3面、4面、5面(ゴンドラン、巨大戦艦)の計5回、流れます。頻度もさることながらその力強さで、「デルタのボスBGM」といったら筆者はやっぱりこっちを思い出しますね。
15 ラストボス
(黒岩東彦)
7面のステージBGMから引き続き、コーラスものです。その名の通り、ラスボス戦を彩る荘厳な楽曲。レクイエム風、とのことです。ステージが「コーラス+民族音楽」だったのに対し、ボス戦は「オーケストラ+コーラス」になっています。このふたつのカブりは気になりませんし、ひとつのステージとして統一感がありグッドなのですが、ここまで最終面をコーラスでまとめるなら、やはりその他のステージ音楽ではコーラスを禁じ手にすべきでしたね。

威圧感を感じさせるティンパニのリズムに悲壮感たっぷりの弦、そして力強い金管が高らかに鳴り響き、バックトラックだけでもかなり厚いことになっていますが、これでもかというほどに複数のコーラス素材を重ねています。あまりゲームに明るくない、いまだにゲームの音を「ピコピコ」と表現してしまうような人にしてみれば「エッ、コレがゲームから流れてきちゃうの?」と言うであろうインパクトは充分に持っています。さらにこれがRPGなどではなく、シューティングゲームの音楽であることにまた驚くのではないでしょうか。
16 ステージクリア 多くの面で「何か鳴ってるな?」とは思いつつも、ボスの爆発にすっかりかき消されてしまっていたステージクリアのME。7面をのぞいて、各ステージのクリア時に鳴らされています。これもなんか喋ってますねえ……。
17 エンディング [脱出] 最終ボス撃破後のエンディングは、シーンの展開に合わせて個別の楽曲が割り当てられ、前半・後半の2曲で成立しています。この曲はエンディング前半の脱出シーンで流れるアオリ音楽。これでもかという危機的な煽り立ては「脱出といったらこうでしょう!」という感じ。すべての自機4種で聴くことができます。
18 エンディング [静寂] R13を使用しているとエンディングが変化。前半の脱出シーンは同じですが、どうも様子がおかしい……というか、脱出に失敗したらしい……。コーラス音色が、ついさきほどまで激闘を繰り広げた7面と共通したイメージをプレイヤーに抱かせるとともに、脱出に失敗したんだ……という現実を突きつけます。なんとも後味の微妙な、エンディングらしくないR13専用エンディング、見たことのない人はぜひR13でのクリアを!

なおこの曲、次回作「R-TYPE FINAL」でもアレンジされて使われています。それもステージ音楽として……。どんなステージになっているかは、「FINAL」をプレイして確認しましょう!もっとも、「DELTA」をやって「FINAL」をプレイしていない「R-TYPE」ファンなんていませんよね?
19 エンディング [安らぎ]
(黒岩東彦)
なんとか脱出に成功し、ゆっくりと帰還する自機。安堵。平和。そんなエンディング後半に当てられているオケ調音楽がこちら。ゆったりと飛ぶ自機に合わせて、曲も同じくゆったりと。最後はティンパニがデンドンデンドンデン!という感じで大団円。ゲームでR9a及びRx、隠し機体Powアーマーを使用していた際に流れるエンディングです。激しい闘いに打ち勝ったプレイヤーを癒すかのような、静かで優しい楽曲。
20 コンティニュー 短いロック調のナンバーはその名の通り、コンティニュー画面での曲です。
21 ゲームオーバー クリアまでに何度となく聞かされるでしょう、ゲームオーバーのME。残念でしたまたどうぞ〜的な、クイズで不正解してしまったような「あららら〜」という音の並びが個人的にツボです。
22 S.E.コレクション ゲーム中で使用されているSE(効果音)を並べて収録したもの。シューティングゲームのサントラではおなじみのオマケです。それぞれが何の音かはわざわざ述べませんが、楽曲とは対照的に効果音は過去の「R-TYPE」を強く意識した音作りがなされているのがわかるでしょうか。フォース着脱時の音やパワーアップなんかはほぼリメイク、という感じで音から受ける印象に違和感はまったくありません。
Link : DELTAの楽曲製作を担当したUSPのサイト

USP HOMEPAGE

各曲の視聴も可能!気に入ったらCD買いましょ!
音楽制作スタッフ
サウンドプロデューサー 入江 茂明 Shigeaki Irie
コンポーザー 黒岩 東彦 Haruhiko Kuroiwa
南部 栄作 Eisaku Nambu
海老原 博 Hirosi Ebihara
植木 啓示 Keiji Ueki
アレンジバージョン 黒岩 東彦 Haruhiko Kuroiwa (Good Ending「安らぎ」担当)
南部 栄作 Eisaku Nambu (「Ded End」担当)
Guitar Solo
佐藤 ゆうごう Yuugou Satou (「Ded End」)
Guitar
南部 栄作 Eisaku Nambu (「Ded End」)
Drums
入江 茂明 Shigeaki Irie (「Ded End」)
音楽だけじゃなく、ゲームもぜひぜひプレイして!3Dだからって敬遠してるR-TYPEファンにこそ挑んでほしい作品です。「デルタ」が済んだら「FINAL」はマストです。
PSで「I」「II」を遊ぶ そして「デルタ」 とどめに「FINAL」

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