TOBAL No.1 REMIXES ELECTRICAL INDIAN
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 スクウェアのプレイステーション参入第一弾タイトル、対戦格闘アクション「トバルNo.1」。鉄拳やバーチャを作り上げてきたスタッフたちが、スクウェア傘下から格闘ゲームをリリースするということは、当時ちょっとした話題であった。まったく新しいシステムを提案した「トバル」は、しかしその斬新さからか、または装飾を削ぎ落としたことで結果的に「見た目が地味」になったためか、大ヒットとは言い難い「隠れた名作」となってしまった。が、根強いファンはいまだに多い。

 そんな「トバル」の音楽を担当したのは、スクウェアのコンポーザー・光田康典氏。「新しいゲーム音楽」を模索して実践した本作のサウンドトラックは、好き嫌いはあれど独特のテイストを持っている。複数の作曲者たちに楽曲制作を依頼、そして上がってきた曲たちを、光田氏が「クロノ・トリガー」のアレンジ盤の頃から組んでいるユニット・GUIDOとともに再アレンジ。そうすることで、それぞれの楽曲がそれぞれの個性を放ちつつも、アルバム全体としては統一されたカラーを持っているという、以前以後を問わずあまり見られない手法が採られた。

 とは言え、それでもゲーム音楽である以上制約はある。特に格闘ものの場合、プレイヤーが初心者だったり、対戦者の実力に差があると、あっという間にラウンドが終了してしまうため、音楽にはわかりやすい、そして早い展開が求められる。いくらカッコよくても、長いイントロなどは使えないわけだ。そして、ゲームの楽曲制作の間にすでに、それらの制約を一切取り払ったリミックス盤を制作することを、光田氏とGUIDOは決めていたのだ。

 それが、このCD「ELECTRICAL INDIAN」。楽曲本来の持つカッコよさ、気持ち良さ、グルーヴを、彼らはどのようにして引き出し、再構築したのか。それによって「トバル」の楽曲はどのような変貌を遂げたのか。そして、クロノ・トバル・ゼノギアスと繋がっていく光田+GUIDOサウンドの経過点とは。リミックスはあくまでGUIDOメインで行なわれており、光田氏はアドバイザーというクレジットに留まっている。が、これらの楽曲はもともと光田氏とGUIDOが共に築き上げたものであり、それをGUIDOが再度どのように調理するか、楽しんでいただきたい。
デジキューブ
SSCX 10002
1996年 
JASRAC表記:
なし

01 CHARACTER SELECT

ONE NATION UNDER
  A NEW GROOVE MIX
まずは原曲・笹井隆司による楽曲のリミックスから。聴いた印象は「エクステンデッド・ミックス」。楽曲の印象をガラリと変えるというよりも、「本当はこうだったんだよ」と言いたげなストロークによって、いろいろな遊びが加えられてはいますが、楽曲のテイスト・音色ともにほぼ原曲のイメージのままになっています。「ボヨヨ〜ン」なんてSEが加えられていて、どことなくDOOPな雰囲気も感じさせる、気ままなファンクといった感じ。もちろん、GUIDOがやってるわけですからギターはかなり増強されております。

それにしても、繰り返されるサンプリングボイスが、「Fuckin' ・・・・・」という感じの、いわゆる放送禁止系の言葉を連呼しているように聞こえて仕方ありません。
02 YOUR NAME IS...

SUMMER RESORT GUITAR MIX
 featuring HATA
光田康典作曲の名前登録画面の曲をリミックス。イントロの印象はほとんど原曲通りで、原曲と同じバッキングをエレピがやってますし、「アー」女性ボイスも同じものを使用しています。で、タイトルにある「サマーリゾート」ですが、まさしくそれっぽい、ボッサな雰囲気の、ゴキゲンな南国系ギターインストになってます。

中盤あたりからはドラムンベース的な、軽めのブレイクビーツも顔を出します。このアルバムの制作にあたってはブレイクビーツ専門のクリエイターがいるので、各曲ともループは凝ってます、というかセンスのいいループがセレクトされてます。
03 POLTANO

ON THE CORNER 1996 MIX
浜渦正志の作曲。オリジナルバージョンの音色やサンプルを巧みに散りばめ、パートの抜き差しをして構築していくリミックスです。原曲をバラすというか、解体して再構築していくという感じでしょうか。しかし、もとの楽曲の特徴である淡々とリピートするベースが全体を貫いているため、たとえ途中にノイジーなパートが挟まれたとしても、不思議と違和感を感じません。各トラックのON・OFFもクールです。

4分35秒からのジャジーなインサートがいかにもという感じ。
04 HILLS OF JUGON

KALTECHNO MIX
リミックスなのに、しっかりと仲野順也テイストは残っている……さすがだ。ってわけで、「HILLS OF JUGON」です。透明感のある音色、そしてベースについても原曲のフレーズに忠実なため、これもエクステンドな感覚。ただひたすら、気持ちよく紡いでいくという……なぜか聴けてしまうんだなあ。陶酔感というか、溶けるように引き込まれていきます。
05 VISION ON ICE

SPACE 2003 MIX
浜渦正志の「VISION ON ICE」のリミックス。イントロを聴くと、驚くほど原曲のまま。これもエクステンドものかと思いきや、スローな印象の曲に変貌しています。原曲とテンポは変わっていませんが、リズムの当て方、乗せるループによってはここまで印象が変わるという良い見本です。後半、いろいろとループが展開しますが、それによって楽曲のテンポ感がどのように変化するか、分析すると面白いですよ。

もちろん、このグルーヴと海の中にいるような、まさにスペーシーな音の中に、ただ身を委ねるだけでもOK。せっかくの長いミックスですから、ぼけーっと「音に浸かる」ということもしてみましょう。不思議な感覚にトランスしてしまうかも。
06 DISUSED MINE

'70s UNDERGROUND FUNK MIX
川上康広による原曲をリミックス。けっこう好き放題にいじってます。ワウギターがとにかく主張しまくり。アタックのブラスは原曲とは異なるものに差し変わっているので、けっこう印象が変わってますね。

こういうタイプのミックスはメロうんぬん、ミックスうんぬんではなく、リズムにノること。それがすべてです。リズムに合わせて気の向くまま体を動かしてしまいましょう!
07 ELECTRICAL INDIAN

BON FESTIVAL DANCE MIX
 with AFRO-MARTIANS
光田康典作曲の、本CDのタイトルトラックです。「BON FESTIVAL」って何だろう……と思っていたら、「盆踊り」ですか。確か、オリジナル盤のレビューで「光田氏お得意のお祭り音楽」と書いたと思うんですが、祭りは祭りでも盆踊りになってしまいました(笑)。

最初から「BON FESTIVAL」を作ろうとしたわけじゃないんでしょうね。製作中にあのループを乗せたら「これ、盆踊りみたいやん?」と誰かが言って、「じゃ、これBON FESTIVALにしよう!」ってな感じじゃないでしょうか。ミックスのサブタイトルなんて、意外とそうやって決まるもんですから。

アルバム全体としては、リスナーを裏切るとか、原曲を破壊するとか、そういった方向でのリミックスは一切行なわれていません(と、私は感じました)。むしろ、原曲ありき。ゲームのサントラに惚れ込んだ人は、聴いて損なしのリミックスになっています。

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