バウンサー ORIGINAL SOUNDTRACK
ジャケット画像  スクウェアのプレイステーション2用格闘ゲーム(公称・ロールプレイングアクション)、「バウンサー」のゲームオリジナルサウンドトラック。作品中で使用されている、松枝賀子&江口貴勅による音楽を2枚のCDに収録している。「レーシングラグーン」の流れを汲み、「FFX-2」へと繋がるサウンドはスクウェアサウンズファンなら聴いて損なし。

デジキューブ
SSCX 10049〜50
2000年
JASRAC表記:
あり

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ゲーム紹介

 時に、1999年。家庭用ゲームの主戦場が次世代機−プレイステーション2に移行した際、当然ながらスクウェアも作品発表の場を、それまでのプレイステーションプラットフォームからその後継機へと移そうとしていた。が、走り始めたばかりのプレイステーション2は「あがいていた」。ハードは飛ぶように売れていたが、ソフトが売れなかったのである。大半のオーナーにとって、PS2はDVDプレイヤーでしかなかったのだ。キラーソフトが欠如していたと言うほかないが、各ソフトメーカーにおいて新たなハードでの開発が難航していたことは想像に難くない。ともかく、ユーザーに「さすがPS2はスゴイ!」と思わせるに値する絶対的なソフトが不足していたのだ。もちろん、ナムコの「リッジレーサーV」にしろ、カプコンの「ストリートファイターEX3」だって、ハードと同発とは言えゲーマーをうならせるだけのクオリティは持っていた。が、スーパーファミコンからプレステに移行した時のような「革命的進化」には乏しく、ライトユーザーの目には「プレステと何が違うの?」という程度にしか映らなかったことは否定できまい。2001年、カプコンの「鬼武者」がPS2初のミリオンを叩き出すまで、PS2のソフト販売は低迷していたのだ。

 そんな中で、かつてプレイステーション参入で「FFVII」の衝撃を我々に与えてくれたスクウェアには、誰もが期待していたはずだ。きっと、凄いものを出してくるに違いない……ユーザーは興味津々だった。スクウェアのPS2第一弾は、予想に反したレースゲーム「DRIVING EMOTION TYPE-S」。ナムコの「リッジV」との競合も囁かれたが、フタを開けてみればそれ以前の仕上がり。「まっすぐ走ることすら難しいレースゲーム」……「TYPE-S」は、スクウェアの中でもトップランクに位置すると言っても過言ではない「クソゲー」の評価を得る。すべて外注で製作されたという事情も言い訳にはなるまい。かつての「レーシングラグーン」の一般的評価に基づく「スクウェアのレース=ダメゲー」というユーザーの認識は、「TYPE-S」の悪評によって不動のものとなった。スクウェアとしても消し去りたい過去であろうが、ユーザーというものはクソゲーのことはよく覚えているものだ。

 で、次に来るのがこの「バウンサー」である。プレイステーション2発表時からスクウェアのラインナップには載っていた本作、実際に発売されたのは「TYPE-S」からほぼ半年後。状況としては「鉄拳TAG」も「DOA2」も出揃っていた頃になるだろうか。残念ながら、この文章をお読みの方の中には「バウンサー」というタイトルを、「有名なクソゲー」として記憶にインプットしている人も少なくはないはずだ。ユーザーが10人いたら、9人が「クソ」と言い放ち、たった1人が「私はまあまあ楽しめました」と言うゲーム、それが「バウンサー」なのである。知らない方のために、作品の概要を解説しよう。

 ディレクターは時田貴司氏(「パラサイトイヴ」「チョコボレーシング」「半熟シリーズ」)、キャラクターデザインに野村哲也氏(「FFVII」「FFVIII」「パラサイトイヴ」)など、スクウェアの売れっ子クリエイターを前面に押し出したスタッフ陣は、ユーザーに大きな期待を抱かせた。そして、それとは対照的にひっそりと「ドリームファクトリー」の名が。自称「格闘通」なユーザーにとっては、時田・野村・スクウェアうんぬんよりも、「トバル」「エアガイツ」の血を継いだストイックな格闘ゲームになるのだろうという期待があった。しかし、発売にあたってスクウェアが打ち出してきたジャンルは「ロールプレイングアクション」。耳慣れない単語に戸惑いながらも、様々なユーザーがこの作品をプレイした。結果、RPGを遊びたいユーザー、アクションを遊びたいユーザー、格闘を遊びたいユーザー、そのどれもが満足できない作品であることが露呈してしまう。

 ストーリーモードにおいては、ムービーやリアルタイムポリゴンによる「人形劇」がメイン。プレイヤーが操作できる「ゲーム部分」は徹底的に「オマケ」の扱いだ。ライトユーザーに合わせて調整したのであろう難易度は、格闘ゲームファンには物足りない。役割を演じ、成長するキャラクターはRPG的要素を含みつつも、感情移入するほどには操れずRPGファンにも物足りない。満足できるのは、グラフィック&ムービー至上主義のスクウェアファンのみ。要するに「バウンサー」は、「PS2ってすげえだろ(そしてスクウェアもすげえだろ)、あんなこともこんなこともできるんだぞ」ってことを見せたいがために散漫となり、焦点の定まらなくなってしまったゲームである。スクウェア側の思惑がドリームファクトリー(以下、ドリフ)の領域を侵食したとでも言おうか、ドリフの石井精一氏が作りたかった「バウンサー」は、きっとこういう形のゲームではなかったはずだ。「バーチャ」や「鉄拳」を生み出した格闘ゲーム界の神童に「バウンサー」を作らせてしまったスクウェアの罪については、あえてここで深く触れることはしないが、その後石井氏が事実上スクウェアと縁を切ったことですべての答えは出ていると言えるだろう。「バウンサー」は、ドリフ主導で、やりたいように作らせるべきだったのだ。そうしていれば、大ヒットはせずとも「クソゲー」と呼ばれることだけはなかったはずなのだ。

 ただ、バーサスモードやサバイバルモードなど、格闘のみを切り出せば、そのシステムは決して不出来ではないことがわかる(TYPE-Sのように「すべてがダメ」なのではない)。複数の要素が組み合わさった結果として「クソゲー」の烙印を押されたのであって、個々には良いものもある。それは、本作の音楽にしてもそうだ。ドリームファクトリーと言えば中村隆之氏だが、「バウンサー」の音楽はスクウェアサウンズの松枝賀子氏、そして彼女のデビュー作からサポートを続けているアレンジャー・江口貴勅氏が担当している。様々なスタイル、ジャンルを縦横無尽に駆使する二人の作風は本作においても十二分に発揮され、作品に深みと勢いを与えている。彼らが「作曲・編曲」という分業をやめ、完全な共作スタイルをとったのも、実はこの「バウンサー」からとなる。そういった意味でも、「プレFFX-2」として興味深い内容になっているのだ。

 「バウンサー」というゲームは音楽にかなりの部分で救われているにも関わらず、作品そのものがユーザーからここまで記してきたような扱いをされているため、楽曲もとにかく「印象に残らない」「記憶にない」と斬り捨てられてしまう傾向にある。ゲームとゲーム音楽は一心同体である以上無理もないことだが、筆者としては非常に残念に思う。少々前置きが長くなってしまったが、ここではいま一度、本作の楽曲をじっくりと聴き込んでみたい。なお、作曲期間は構想を含めると11ヶ月〜1年ほど、実際の製作は半年ぐらいとのことである。

せっかくですからゲームもプレイしてみては?
伝説の作品…… サントラです。


DISC1         DISC2


DISC1

01 前奏曲
〜The Bouncer〜
ソフトを起動すると流れる、オープニングタイトルで流れる曲です。作中のムービーから印象的な場面を使用し、怒涛のカット割りで凄まじい勢いとなっている映像に、音楽もこれでもかという疾走感で追従していきます。この疾走感の核となっているのは、言うまでもなく軽快な(決して重くはない)リズムと、所狭しと動き回るシンセ・ベース&シーケンス。そこにディストーションギターが力強さを加え、ピンポイントで挿入されるキーボードによるアクセントも期待感を盛り上げます。楽曲のすべての部分に「松枝&江口的テイスト」が満ち溢れており、「レーシングラグーン」や「FFX-2」の音楽にシビれた人には手放しでオススメできます。

ちなみにオープニングのモーションタイプには「Mikado」「Galeos」「Project Bionoid」「Solar Power Generator Satellite」など、様々なキーワードが次々に現れていきます。ゲームをクリアしてから見ると、かなりのネタバレ要素がオープニングから提示されているのがわかるとともに、ストーリーモードではなく起動直後にこれが流れるということは、「バウンサー」的にはバーサスやサバイバルといった格闘部分はオマケで、あくまでストーリーモードがメインなのだということもわかりますね。
02 序章
〜Prologue〜
DISC1は、ストーリーモードで劇伴的に使用されている楽曲を、ほぼシナリオの流れに沿って収録しています。まずはストーリーモードの幕開けで使用されている「序章」です。けっこう長いムービーなのですが、シーンの展開に合わせて作り込まれた楽曲は説得力じゅうぶん。まさに映画の導入のような雰囲気を形成しています。圧倒的な神々しさのコーラスと、生演奏のストリングスも、その雰囲気を成す大きな要素でしょう。ただ、このコーラスについてはやや大ゲサと言うか、インパクト狙いのような感じもしてしまいますが。もしかしたら歌詞にもの凄い秘密があるのかもしれませんが、不明です。

では、ブロック別に見て(聴いて)いきましょう。
0'00"〜
冒頭のコーラスは、何かのデータを調べていた女性(リアン)の「まずい、出遅れた?」をキッカケにしてスタートします。月をバックにヘリコプターが現れる場面から、そのヘリからなにかが降下して民家の一室に突き刺さる場面まで。前述のように神々しいコーラスが、ストーリーの幕開けを盛り上げます。ただし、このコーラスのメロディには「ミカドのテーマ」的な意味合いはなさそうです。
0'40"〜
突き刺さった物体が、アーマーに包まれた人間(無月)たちだとわかるシーンです。部屋を見渡す無月が、シオンとドミニクの写真を見つけます。アーマーを脱ぎ捨て、窓の外に飛び出し、屋根の上から街を見下ろす無月たち。スキマのある不安げなピアノの空白を、不気味なブラスと弦、シンセコーラスが埋めており、「良くないことが起きそうな予感」を高めています。さらに無線交信音やデジタルなピコピコ音が散りばめられており、無月ら特殊工作員どうしの索敵や通信といった「目に見えない演出」を担っています。秀逸です。
1'42"〜
街中を駆け抜けていくドミニク、バーの店先で番をしているヴォルトと会話しつつ、バーの中へ。暖かみのある弦、ピアノ、木管を主体としたパートです。すでにこれがエンディングテーマ(「終わらないもの〜Forevermore〜」)のアレンジだったりします。
2'33"〜
暖かみのある楽曲から一転、緊迫感のある弦が聞こえてくると、屋根の上の無月たちがいよいよバーへと向かいます。
2'51"〜
バー「フェイト」の店内BGM。現実音としての背景音楽ですね。ブルージーなピアノインストルメントで、ジャズが好きだという作曲者の個性が顕われています(ゲームではなかなかこういう曲は必要とされませんしね)。これをバックに、ドミニクがシオンやコウたちと会話。4'17"〜の恐怖感のあるリバースMEをキッカケに、無月らが天窓を破って突入してきます。

店内BGMのパートは、最初のバトル後のバウンサーたちの作戦会議、またはエンディングなど、フェイト店内で何度か耳にします。
03 不穏 曲名通りの「不穏」な曲で、ひたすら暗いピアノとショッキングなオケヒット、うねるような弦が、さながらホラー映画のような心理的不快感をプレイヤーに与えます。このあたりは松枝さんが得意としそうなテイストですね。それにしてもこのストリングス、演奏者の表記がないのですが、サンプリングでしょうか?もの凄く生々しいんですが……。

ゲーム中ではピアノを抜いた、弦オンリーのバージョンも用意されているようです(サントラには未収録)。そのバージョンがセントラルステーションのイベントで初出。さらに、ロケット塔でのPD-4出現シーンにも、同様に「ピアノなしバージョン」が使われています。

逆に、ドゥラガンが初登場となるクリスタルドームでの、凰VSドゥラガンのイベントでは、ピアノ+弦(オケヒットを削除)のバージョンが使用されています(こちらもサントラには未収録)。このように、本作においてはある曲の別ミックスバージョンも巧みに使い回され、多彩なイベントをフォローしつつ、関連した曲が使われたイベントを相互に補完し合っていることがわかります。

すべてのトラックが合わさった完全版(サントラ収録のバージョン)が流れるのは、ガレオス制御室でのドゥラガンとの会話イベント。これまでのドゥラガンのいくつもの謀略がこの事態に集束したように、楽曲もここですべてのパートが集結するというシビれる仕掛けになってるのです(ホメすぎ?)。衛星から人々を支配する……恐ろしい思想を持つドゥラガンとの最終戦に挑むプレイヤーの感情を盛り上げること必至です。ある意味ではドゥラガンのテーマと解釈して間違いではないでしょう。

関係ないですけど、若本規夫シビれる〜ゥ!
04 緊張 一転して、アップテンポなリズム主体の楽曲。緊迫感のあるシーケンスが、張り詰めた緊張を増幅しています。しかし楽曲全体に暗さは漂っておらず、どちらかと言うと前向きな曲調。アタッキーなブラスヒットとリードシンセが、決して後ろには退かないバウンサーたちの決意を表わしているかのようです。初めて耳にするのは、さらわれたドミニクを追ってミカド本社へ行くべくセントラルステーションに向かうシオンたちの前に、特殊工作員が立ちはだかるセントラルスクウェアでのイベントです。

続いて、MSD専用列車のブレーキが壊れたため、そのままだと駅に突っ込んで大爆発、という事態を避けるべく、燃料車両を切り離すのに必要なカードキーを捜すイベントでも使用。そしてしばらく後では、シオンがミカドビルの重役室でやっとドミニクを発見したのも束の間、背後から無月につかまってしまう場面でも使われています。しかしピンチも間もなく、ヴォルトとコウが馳せ参じて役者が揃います。

このように、一貫して危機的状況の発生時に用いられていますが、前述のように暗さはなく、バウンサー(=プレイヤー)に「しかたねえ、やってやるさ」という不退転の決意を喚起してくれます。
05 脱出 オケ楽器が主体となった、緊張感溢れる劇伴的楽曲。マーチングスネアっぽいリズムと鐘の音色が、避けられない宿命的なものを感じさせます。初出は、最初のフェイトでの戦闘後に挿入される、ドミニクが無月にさらわれるムービーになります。

その後は、MSD専用列車から飛び降りたシオンたちが、非常通路へと進むイベントで使用。ここでは、非常通路を抜けるまで戦闘中も流れ続けます。あれ?こりゃ「脱出」じゃなくてシチュエーション的には「潜入」ですが……。ま、こまかいことはいいでしょ。曲名はあとづけでしょうしね。

まさに「脱出」なのが、ロケット塔でのドミニクを連れての脱出イベント。ドミニクのHPが尽きたらゲームオーバーですから、この曲による焦らし効果もこのうえないものになっている場面です。ここで出現する敵(ロボットたち)が固くて強いんだぁ……。腕に自信のない人は「逃げるが勝ち」。敵は無視してさっさとクリアしてしまいましょう。

さて、ここまでですでに気付いている人もおられるかもしれませんが、実はここまでに挙げたイベントでは、サントラで言う28秒〜35秒あたりのショッキングなオケヒットを省かれたものが使われています。実はこの「オケヒットあり」の形で流れるのは、ゲーム中でただ1ヶ所しかありません。それは言うなれば「カルディアエンディング」とでも言うべき、レアなイベントなのです。ガレオンでドゥラガンを倒すと、分岐によってドミニクやリアンといった人物が「ガレオン後部へ退避しろ」とナビゲートしてくれますが、ある条件(ミカドビルのソロ分岐をシオン以外でクリア→カルディア、ドゥラガンをシオンで倒す)を満たすとそのナビ役がカルディアになります。カルディアとともにガレオン後部に向かって走る際に、この「オケヒットありバージョン」が流れるのです。
06 追憶の旋律
〜Aria Kaldea〜
静かなピアノバラード。シオンたちが初めてミカドのクリスタルドームを訪れた際に挿入されるイベントで、カルディアが弾いているピアノです。このイベントでは途中で演奏が中断されますが、しばらく後でもう一度この曲が流れるイベントが用意されています。それが、ガレオス通路で発生する黒豹(カルディア)とのバトル。これをシオンでクリアすると、カルディアとの会話イベントが発生し、そこでこの曲が流れるのです。

このように、ストーリーモードでは同一曲(時には別ミックス)を使い回すことで、RPGによくある「同一モチーフによる音楽的演出」も行なわれているのですが、肝心のストーリーが短いために印象を薄くしてしまっているのが残念です。もっともゲームそのものが「クソゲー」の烙印を押されているので、そこまでの分析もなされない……という面もありますが。

クリスタルドームのイベントでは、シオンが「この曲……」と言っています。すでにシオンがこの曲を知っているといった思わせぶりなセリフ。彼はきっと、過去に恋人の演奏するこの曲を聴いたことがあったのでしょうね。そのあたりも、ストーリー上ではほとんど語られておりません。
07 潜入 曲名は「潜入」ですが、ある意味すでにミカドビルには潜入済みなわけで……。「探索」という方が正しいかな。一回目のドゥラガンとのバトルの後、ミカドビルでのソロ分岐で「シオンルート」か「ヴォルトルート」を選んだ際に、バトルを通して流れるBGです。

バウンサーを迎え撃つべく迫り来る者どもを倒しながら、施設の奥へ奥へ。カツーン、カツーンという音色と、駆け上がるようなピアノの旋律が迫り来る者を象徴し、一方でストリングスが、勝手のわからぬ場所を走り回るプレイヤーの緊張を感じさせてくれます。いかにも「潜入」といった感じのハイハットの刻み、鼓動にシンクロするようなベースと、すべてがプレイヤーの緊張と焦燥に作用する動きをしているのはお見事。
08 LUKIS秘密指令 ミカドビルでのソロ分岐の「コウルート」で流れるBGです。シオンやヴォルトがバトルをしながら進んで行くのに対し、コウは敵の目を欺きながら(避けられる戦いは避けながら)、敵に紛れてズルがしこく進んでいきます。なので、楽曲もどこかコミカルな味付けになっています。「秘密指令」なんて言うから、シリアスな曲調を思い浮かべがちですけどね。

ところで「LUKIS」ってなに?と思う人もおられるでしょうが、これはコウやリアンが所属している諜報機関の名称です(読み方はルキス、とそのまんま)。このあたりの背景も、ストーリーモードではあまり表に出てこないところですね。

なお、このイベントで暗号に失敗すると発生するバトルでは、「コウ・レイフォー(DISC2-3)」が使用されます。
09 追憶 短いMEです。ミカドビルでのソロ分岐の「シオンルート」において、開発実験準備室のコンピュータでカルディアの記述を見た際に挿入されるムービーに乗せられているもの。曲名こそ「追憶」ですが、「追憶の旋律」のアレンジにはなっていないようです。
10 記憶の雨音
〜クロス兄弟〜
ピアノと、高音の持続する弦を中心にまとめられた、クリスタルドームでのドゥラガンによる幼少期の回想イベントに挿入される楽曲。鈴のようなパーカッションが混ぜられ、雨のふりしきるグラフィックにこのうえなくハマっていました。ちなみに(曲は違いますが)、ドゥラガンが衛星で病院を破壊するムービーでも雨が降っています。本作において雨は「クロス兄弟(正しくは兄妹ですが)」を象徴しているのでしょう。エンディングムービーにおける、シオンとドミニクの出会いの場面にも激しい雨が降っていましたね。

今のドゥラガンがあのような野望を抱くに至った背景には、それ相応の理由があったのです。何の力ももたぬ幼き頃に受けた屈辱と、愚民への憤り。それらを消し去るには、妹の力が不可欠だった……皮肉なものです。「わかりました……ぜひ、ご恩返しをさせていただきます」。しかし、彼は恩返しを果たさぬまま、過った方向へ向かおうとしていました。

「彼女はドゥラガンの死んだ妹だ」「な……に…?」ロケット塔で再度ドミニクが連れ去られた後、語り出すヴォルト。衝撃の事実に戸惑いを隠せないシオン。そんなイベントに挿入されたのもこの曲です。先のドゥラガン回想イベントにおいてビジュアルで展開された内容を、ヴォルトが言葉で補完していきます。同じ楽曲が乗せられることで、プレイヤーの没入感と既視感が高められているのです。
11 ミカドの謀略
〜愚かなる理想郷〜
クリスタルドームでの、初めての対ドゥラガン戦で流れる曲がこれです。理想郷の実現を邪魔するバウンサーたちをなんとしても排除する−、そして彼はドミニクに語りかけるのです。屈辱の過去を背負って……。威圧的な金管が鳴り響き、地を這うようなドロドロとしたストリングスもいかにも「謀略」といった感じ。所々に挿入されたSEが、圧倒的な強さを誇るドゥラガンの戦うさまを思い起こさせます。楽器編成自体はそれほど音数も多くなく、スキ間のある構成なのですが、その他の要素(SEやボイス)とあいまって完成するようなイメージ。少ない音で最大限の効果を生み出しています。

後にガレオス発進ムービーでも使用されています。宇宙から地上を見下ろすドゥラガンにとって、そこはまさに理想郷だったのかもしれません。
12 追撃 LUKISの戦闘機がガレオスを足止めしているのに乗じて、シオンたちもこれを追撃するべくエアキャリアで発進するムービーで流れる楽曲。ドラとティンパニ、ブ厚い管群はいかにも進軍といった雰囲気。不気味な民族色のあるコーラスは巨大なガレオスやドゥラガンの威厳を象徴しつつも、シオンらを待ち構える無月をも演出しているように聞こえます。が、楽曲的な意味で言えば、追撃するLUKIS視点の曲なんでしょうね。

ゲーム中のトラックとしてはコーラスの入っていないミックス(サントラ未収録)も使われており、一回目のエキドナ戦後に挿入されるムービー(ロケット燃料を積んだMSD専用列車を、LUKISの戦闘機が攻撃する)で使用されています。このことからも、この曲は諜報機関LUKIS側を表現した楽曲と言うことができるでしょう。
13 慈愛 優しげな、安堵感あふれるピアノ+ストリングスバラード。ベル音色がさらなる暖かさを加えます。互いに想い合うシオンとドミニクのテーマ、といったところでしょうか。ミカドビル・重役室で無月を退けたシオンがドミニクを抱き起こす場面が初出になります。「初めてだね……抱き締めてくれたの……」とドミニク。コウは「お楽しみのところ悪いが……ラブシーンはあとにしてくんねえかなぁ」。格闘ゲームを遊びたいプレイヤーも同じような心境だったことでしょう……。

RPG(ぽいもの)にラブシーンを挿入するとどうなるか……「FFVIII」の前例が手本にしろ反面教師にしろ、ユーザーからの反応だけを見る限りでは「失敗」となってしまったようです。オープニングを見る限りではドミニクに対してそっけないシオンが、いつの間にこんな「ラブラブモード」になってしまったか、ということについての説明不足。そこには、「スコールとリノア」の影が見え隠れしているのです。

ドゥラガンとのラストバトルを制したシオンが、再度ドミニクを抱き起こすエンド直前のシーンでも再度流れます(こちらでは、直後に衛星と激突しそうであることが判明し、楽曲はカットアウト)。ここまで、慣れてくるとプレイタイムは1時間台(しかも大半はイベント)……「操作できる映画」としても短かすぎて、これではどんな曲を流したところでユーザーを感動させるのは難しいかもしれません。どうしても映画っぽいものをやりたいのであれば、とことんやってしまうべきだったのではないでしょうか。
14 終わらないもの
〜Forevermore〜
音声言語を日本語にしてプレイした際のエンディング・テーマ。もちろんエンドロールで流れるものです。「格闘ゲームに歌アリのテーマ曲が必要か?」という疑問もあるのですが、公称ではこのゲームは「ロールプレイングアクション」ですし、ストーリーを締め括るものとしてテーマソングがあっても良いでしょう。歌詞の内容もストーリーと密接に絡んでいるのですから。ただまあ、「PS2だから歌ぐらい入ってないとネ」という製作側の思惑もチラッと見えているような気が。

楽曲は、2分弱のピアノ+ストリングスインストルメントの後に、一区切りあって歌が始まる形。ただし、ここには映像的な区切りはなく、なぜこのような構成になったのかは不明です……。歌が始まってからは、ポップスのアレンジも数多く手掛ける江口氏が得意としそうなR&Bテイスト。一時期流行った、解釈の幅が広いキック中心のゆったりしたリズムに、暖かみのある弦、ピアノというイントロを引き継いだ編成です。歌詞はディレクター・時田氏が担当しただけあって、シオンとドミニクのことをうまく表わしていると思います。時田氏って「チョコボレーシング」もそうなんですけど、けっこう詞つくるのウマいんですよね。作・編曲はもちろん、松枝&江口コンビが担当。ボーカリストの声の力が最大限に発揮されることを意識して作ったとか。

そのボーカリストである野田麗子さんは、当時さまざまなアーティストのレコーディングやコンサートでコーラスとして活躍していた人。「終わらないもの〜Forevermore〜」を作るにあたり、20人以上のデモテープを聞いた松枝&江口コンビが「この人しかいない!」と選出したそうです。レコーディング当日の朝、気持ちを入れるために曲を聴きまくった彼女は感情移入してしまい、思わず泣いてしまったとか。そのこともあってか、レコーディング自体は作曲側からの注文もあまりつかず、野田さんが自由に歌って3時間ほどで終了したとのこと。なお、彼女にとって初めてのソロボーカル作品となります。

DISC2

01 シオン・バルザード DISC2は、キャラクターごとのバトルテーマを収録しています。ストーリーモードの戦闘においては、固定ボスのいるバトル以外では、プレイヤーが操作するキャラクターのバトルテーマ曲が流れるようになっています。たとえば、プレイヤーがバトルでシオンを選べば、流れる音楽はこの「シオン・バルザード」になるわけです。固定ボスのいる戦闘では、そのボスのバトルテーマ曲が流れます。バーサスモードやサバイバルモードでも、基本的にはプレイヤーの選択したキャラクターのバトルテーマが流れます。

シオンのバトルテーマは、主人公にふさわしくノリの良いキャッチーなもの。基本的には、ビート重視のループとワウギターでバトルを盛り上げる、テンポ感のある楽曲なのですが、彼の背景を語るものか、中盤では憂いを帯びたピアノが前面に出てきます。クラヴィやエレピなどのキーボード楽器も、松枝&江口作品らしく活躍しています。リバースやスクラッチも添えられた、凝ったリズムには自然と身体が動いてしまうことでしょう。

初期設定ではシオンはヘッドフォンをしており、聴いている音楽によって戦い方が変化するという仕掛けも考案されていたようです。結局はなくなってしまいましたが、もしそれが残っていたら、サウンドトラックもまったく違うものになっていたかもしれません。戦い方の変わる音楽的仕掛けといったら、まず思い付くのはジャンルです。ROCK、HIPHOP、TECHNO、JAZZ……そういったバリエーションに富んだものになっていたかも。
02 ヴォルト・クルーガー ディストーションギターを中心とし、ヘビーなリズムループが鳴り響くパワー重視なサウンド。ヴォルトの外見と、そのダイナミックな技にマッチしています。かと思うと、ケルティックアンセムといった感じの民族的色合いが取り入れられていたり、変拍子があったりと油断できません。ただヘビーなだけの、単純なロックナンバーではないということです。シタールの音も確認できます。
03 コウ・レイフォー どこか人を小馬鹿にしたような態度でいて、テコンドーを得意とするコウのテーマ。シオンやヴォルトよりもひときわ軽やかに見える動作、踊るような身のこなしを彩るかのように、軽快なキーボードサウンドが駆け巡ります。一部にはボイスサンプルが挿入され、バトル曲というよりはディスコチックなダンス系のサウンド。このあたりは、全身タトゥーといったコウのビジュアルからインスパイアされているものと思われます。一方ではジャジーなブレイクも挿入され、「バーの用心棒」といった雰囲気を作り出しているほか、実は良家のおぼっちゃまというコウの身の上も表わしているのではないでしょうか。

歪み系の汚しが効いたリズムサンプルは、バトル中の叩きつけるような効果を代弁しており、そこかしこで入り乱れて闘っている様子をうまく表わしています。
04 エキドナ カポエイラの使い手、エキドナとのバトルテーマ。彼女とはシナリオ上で2度バトルをすることになりますが、その両方でこの曲が流されます。ドラマ「踊る大捜査線」における、室井(ギバちゃん)登場時のテーマでおなじみのギターと同じサンプルが使用されています。ザザッザッ、ザザッザッ、ザーってやつね(これ、けっこう使いでのあるサンプリング素材で、いろんな曲で聴けます)。

途中からは、激しくなる彼女のトリッキーな動きに呼応するかのようにテンポが上がります(このあたり、FFX-2の「ミッションスタート」に通じるものが)。最も初期に登場するボスらしいボスであり、地面を転がるように足技を繰り出してくるエキドナは強敵ですが、ヤローが前面で活躍する「男臭〜い」本作において、女らしさを見せてくれる貴重なキャラクターです。ぜひヴォルトでプレイして、彼女とのやり取りを見てあげて下さい。
05 無月 その風貌がどことなく忍者っぽいからなのか、部分的に和風な色合いで味付けされた無月のテーマ。ミカドビル空中庭園、それとミカドビル重役室での戦いを盛り上げてくれる楽曲です。ドラムンベース調の、テンポの速いリズムを核にして、尺八や笛(フルートで代用)のような一発モノが鳴り響きます。中盤での情熱的なサックスのアドリブが無月らしくないところなんか、「曲は曲で勝手にやるよ」という感じでグッドです。どうしても格闘ゲームは音楽が似通ってしまいがちなところを、曲ごとにフィーチャーする楽器に変化をつけることで差別化しています。それでもキーボードやベースの音色、フレーズのおかげで「どこを切っても松枝&江口」の色になってるのはさすが。

ちなみに、クレジットによるとサックスとフルートの演奏者は同じ人です。で、1分10秒あたりの音はサックスだと思うんですが、「
バカァーバカァーバカァー……」と言ってるように聞こえません?無月の心の叫びかと思ってしまった。
06 カルディア・オーキッド ミカドビルでのシオンルートの最後、重役室前で対峙することになる黒豹とのバトル、及びガレオス内でのカルディアとのバトルで使われる曲です。一部のピアノのフレーズに「追憶の旋律(DISC1-6)」の匂いも感じますが、おそらく気のせいで、まんま使うことはしていないようです。あくまで、プレイしている上でユーザーに関連性を感じさせるに留まっています。ユーザーは既に「ピアノを弾いていた女性が黒豹に変身している」様子を見ているわけですから。他にピアノをフィーチャーしたバトル曲はありませんし。

所々に入っているコンピュータノイズっぽい音色やボコーダーボイスに、何かのメッセージはあるのでしょうか?
07 PD-4 ロケット塔での対PD-4戦に使われるバトルテーマ。ローファイなオケヒットによるワンショットが叩き付ける中、メカニカルなリズムとスイープ音が跳ね回ります。PD-4はムエタイの使い手なので、リズムもどことなくそんな雰囲気に聞こえてきます。シーケンスとベースが一体となって細かい音符を刻むさまが、いかにも命令に忠実な、冷酷無比のメカといった感じ。1分36秒〜1分52秒はSEっぽい音色中心に、「クールダウン〜再始動」といった雰囲気を構成しています。主となるメロっぽいもののない構成曲で、インパクト重視ですね。

ゲーム中に出てきたPD-4は凶悪無比のボスなのか、ドミニクに一瞬にして葬り去られてしまうヤラレキャラなのか分別の難しい存在ですが、この曲もサントラの中ではそんな感じと言いますか……メカっぽいということ以外では、それほど特色がなく、あまり語ることはないなあ……。あ、そうそう、実は「PD」とは「プロトタイプ・ドミニク」という意味で、そのためか31秒あたりからのシンセベースには、次のトラック「ドミニク・クロス」との共通項を感じます。作曲者がそんな裏設定まで知ったうえで曲を作っているかどうかは知りませんけど。
08 ドミニク・クロス ん?ドミニクとバトルしたっけ?と思われるでしょうが、バーサスモードやサバイバルモードでドミニクを選ぶことで聴くことができます。もちろんストーリーモードでもチラっと使われておりますよ。ロケット塔で大量に現れたPD-4を前にして覚醒(?)したドミニクが、その圧倒的な強さでそれらを蹴散らすイベントがそれ。イントロのアタックをカットして、17秒のところから使用していました。

このイベントではプレイヤーも困惑気味というか驚いていて、シオン同様に「ドミニク、どうしちゃったんだよ」という感じなのですが、ストーリーモードを一通りクリアしていれば理由はわかると思います。でもプレイヤーにとっては、ドミニクはやっぱりあの「バーに遊びにくるドミニク」なのであって、サバイバルモードなどでこの曲が流れるとやっぱり違和感が……。勝ちゼリフで「障害物、排除」とか言ってるし。しかもドミニク、プレイヤーキャラとしてはシオンなんかよりずっと使い勝手が良いですしね……。どっちが本当のドミニクなんだという感じですが、シオンたちが敗北していれば、ドミニク型兵器が量産された可能性もあったわけです。

曲自体はメインは金管、弦などのオケ楽器でミカドの技術力というか、威厳みたいなものを象徴しています。一方、シーケンスとシンセ・ベースの刻みがメカニカルな「兵器」の部分を表わし、途中で挿入されるコーラスパートは衛星から送られるパワーといったイメージですかね。所々に散りばめられているスパーク音や上昇し続けるスイープが、充填される無限のパワーをうまいこと表現しています。個人的にはやはり、30秒あたりに代表されるシンベがキモ。シンベの刻み+メタルパーカッションがツボです(ハンス・ジマーっぽくて)。
09 鳳 李雲 特定の条件(ミカドビルの分岐ソロをシオン以外でクリア→ガレオスでのカルディアをシオン以外で倒す→ドゥラガンをシオンで倒す)を満たすと、シオンはエンディング前に凰とバトルをすることになります。そこで流れる、凰のバトルテーマがこの曲です。老師という称号にハマるような、しっとりとしたストリングス(どこか中華テイスト)と薄めのリズムの組み合せは、決してバトルをアオるわけではありませんが、達人の技を感じさせます。

凰ってドゥラガンにやられたんじゃないの?と誤解することなかれ。このバトルはシオンの回想ですよ!
10 リアン・コールドウェル ストーリーモードをコウでクリアすると、エンディング直前にセントラルスクウェアでリアンとのバトルが発生します。そこで流れる、リアンのバトルテーマです。戦ってみるとわかるのですが、けっこう強いんですよ、リアン。手数も多いし。そのためか、ジリジリと迫り来る緊迫感のある曲になっています。テストにしてはずいぶん本気で攻撃してくるリアン、私の操作するコウは一度、天高ぁ〜く蹴り上げられてしまいましたよ。が、「こんな上の方までバトルマップ作り込んであるのか!」という、別の発見がありましたけど(笑)。すいませんね、曲に関係なくて。なお、ジャカジャカジャ、ジャカジャカジャのディストーションギターはサンプリングです。

なお、コウでプレイしていると、ガレオン追撃ムービーに「リアンの顔出しムービー」が追加されます。ヴォルトには追加ムービーはありませんが、エキドナとのちょっとしたイベントが追加されます。
11 無月 −崩壊− ガレオス突入直前、エアキャリア上での無月とのバトル(通算3戦目)を彩る、ハイテンションな楽曲。無月のものと思われる狂ったボイス、笑い声がそこかしこに散りばめられ、「崩壊」の名に相応しいものに仕上がっています。刻み系のシンセベースとたたみかけるようなドンドコドコドコパーカッション、そしてブラスヒット。なりふり構わず突進してくる無月にはピッタリの構成でしょう。和風なテイストはなくなったなあ、と油断していると、1分50秒あたりの「越天楽」のような雅楽っぽい音(最初サイレンにも思えますが)にヤラれてしまいます。これは予想外でした。予想だにしない音が入ってるとウレシイものです。

中盤以降にはコーラスも入ってきますが、これがまた「序章(DISC1-1)」を連想させ、無月との因縁めいたものを巧みに演出しているのです。ただ、「崩壊」と言うほどゲーム中の無月は崩壊しておらず、というよりも最初からキレたキャラだったので、単に怒ってるな、というだけ。「人格崩壊」とアオるほど、無月が壊れていかなかったのが惜しいですね。表現の自主規制といったところでしょうが、プレイヤーにしてみれば無月は「勝手に怒ってるだけの人」で、もっとワケわからなくしてもよかったのでは、と思います。
12 ドゥラガン・C・ミカド ガレオスでの対ドゥラガン第一戦。「ミカドの謀略〜愚かなる理想郷〜(DISC1-11)」を思わせるイントロから、重々しいバトル曲へと変化します。関連付けという意味では、正直ウマいな、と思わされました。その後は、オルガンが前面に出たロックナンバーに。リズムにはループ等のテクノっぽいものは使わず、生っぽいドラムキットを採用してロックっぽさを出しています。それだけでも、ここまでの楽曲との差別化がはかれていますね。ドゥラガンの力強さがよく出せていると思います。

全体的に空間を埋める音数は少なめで、激しいバトルの効果音を立たせる構成になっているようです(最終戦を際立たせるため、一歩引いているとも言えます)。所々に「ミカドの謀略」のモチーフを混ぜることで、バトルの意味を因縁めいたものにしているのがわかります。
13 ドゥラガン・C・ミカド
−狂気−
ガレオスで、上着を脱いで「かなり本気(=フルパワーではない)」になったドゥラガンとのバトルで流れる曲。前の曲とは一転してテンポの早い、煽り立てる楽曲。ドラムンベース的ループとディストーションギターという無難な構成……と思いきや、スパニッシュなボイス(何と言ってるかは不明)とフラメンコチックな情熱的ギターによって、風変わりなものになっています。なお、「ミカドの謀略」のモチーフはなくなっています。1周目〜2周目までは、事実上のラスボス曲。しかし、そんなあなたは真のラスボスを見ていない……。
14 ドゥラガン・C・ミカド
−覚醒−
ストーリーモードを、普通に1〜2回クリアしただけでは聴くことができない曲です。実は、ガレオスでのドゥラガンはストーリーモードでのエクストラゲーム3周目から、さらなる秘められた力を解放してくるのです。つまり、ドゥラガン戦が3連戦になるということ。背中に竜の紋章が浮き上がったドゥラガンはかなりの強さ!そんな宿敵との死闘を盛り上げるのがこの曲です。ドゥラガンの真の姿を見ていないという人、ぜひとも彼の本気を体験してみて下さい。

「竜の紋章」というワケのわからない加護を得たせいか、楽曲も神秘的な雰囲気。どちらかと言うと、テンポ的には一戦目の「ドゥラガン・C・ミカド」と近いものに戻り、ドゥラガンの圧倒的な力をジワジワと盛り上げているようです。ストリングスとディストーションギターが入れ代わりつつ主旋律を担い、避けらない宿命付けられた激戦を彩ります。

そういや、ドゥラガンのスペルって「Dauragon」なのね……。さりげなくドラゴンじゃん。そりゃ竜の紋章が浮かんじゃうわけだヨ。ちなみに、フルネームの真ん中にある「C」が「クロス」だということも、ストーリーモードをプレイした人なら知っているでしょう。
15 シオン・バルザード
−漆黒−
すべてのエンディングパターンを見ても、すべての隠しイベントを見ても、この曲を聴くことはありませんでした……。いったいこの曲は何だ?未使用曲なのか?そして私はサバイバルモードに手を染めます。苦労の末、最終ステージへ……そこで流れてきたのが、まさにこの曲だったのです。闘いの相手は、なんとシオンでした。「漆黒」の意味するもの−、それは実際に出会って確かめて下さい(たいしたことじゃないけどネ)。

特にシオンのバトルテーマのアレンジにはなっておらず、あくまで完全に別の曲になっています。が、キャッチーでギター、といった点は共通です。ただしどこか「負の波動」を感じさせ、言わば「ブラックシオン」という感じ。荒れ果てて、フェイトで乱闘騒ぎを起こした時のシオンは、こんな近寄り難さを醸し出していたのかもしれませんね。とか思ってたら、実際にそういう設定があるのだそうで……。

ミカドに就職したカルディアが爆発事故で死亡したという報せを聞いたシオンは、とにかく荒れた……。喧嘩に明け暮れる彼を、人々は「ドッグストリートをさまよう黒いシオン」と呼んでいたらしいっす。そしてヴォルトにボコられて、フェイトのバウンサーに……って流れなのですが、その辺はゲーム中のロード画面でしか触れられておらず(しかも読んでる途中でロードが終わり、全部読めないよコノヤロ!)、いっそのことこの辺から映像化していれば、(操作できる映画としての)評価ももうちょっと違うものになったかなあ、と。
サントラ未収録曲
・ストーリーモード、オープニング冒頭のニュース番組のテーマ曲
・英語版エンディングテーマソング
・バーサス、サバイバルモードのキャラクター&ステージセレクト
・バーサスモードの勝利時ME
サウンド全般に対してひとこと……
音楽・効果音・ボイスなど、すべてのサウンドがそれぞれ激しく自己主張しすぎていて、混沌としています。しかもそれぞれの音量バランスはデタラメにも程があるのではないでしょうか。主張のない音を作るなとは言いませんが、「その場面では何を最も前に出すべきか」を考慮し、適切な音量の優劣を付けていただきたいのです。ボイスを入れるのであれば、これはボイスのないゲーム以上に繊細に行うべきです。字幕がなければ理解できない、聞こえないボイスなど不要です!ボイスを採用した以上、字幕ナシでも聴き取れなければ意味がありません。日本語ボイスに日本語の字幕を出すことほどマヌケなことはないでしょう。今回、プレイしていて一番ストレスとなったのがこの問題でした。

世間では、この作品を個々の要素はスルーして、総合的に「クソゲー」と評価しています。サウンド担当は知らぬ存ぜぬを貫いているかもしれませんが、まったく同じことは「音」にも言えるのです。豪華な声優陣を採用したボイス、単発ならば文句なくカッコイイSE、松枝&江口コンビの気合の入った音楽……個々は素晴らしい出来ですが、それが一体となってスピーカーから出力された時に、とんでもないことになっているのにお気付きでしょうか?どうもゲームのサウンドは(この作品に限らず)、個々を作ることばかりに気が向いていて、最終的なバランスについては「やっつけ仕事」になっている感が否めません。これは製作の時間的制限によるものでしょう(じゅうぶんわかってます)が、最終的なミキシングにもっと時間をかけ、ユーザーの耳に優しいゲームが増えることを願います。
関連CD
ジャケット画像 music of love
for tomorrow's children

ポリドール
UICE-1002
2000年
JASRAC表記:
あり


このCDを購入できます。
 サントラに英語版のエンディングが入ってないじゃん!とお嘆きのアナタ、それはこのアルバムに入っています。このアルバムは、「世界の子供達に愛を」という趣旨のチャリティー・アルバム(売り上げの一部をユニセフに寄附)で、ナラダ・マイケル・ウォールデンのプロデュースのもと、ゴージャスなメンツが集まっております。バウンサーの英語版エンディング「Love Is The Gift/シャニース」は、なんとこのアルバムのトップを飾っているのです。基本的には日本語版の「終わらないもの〜Forevermore〜」の英語バージョンなのですが、アレンジはナラダ・マイケル・ウォールデンがあらためて行なっています(基本路線は変わっておらず、無難なリアレンジ)。歌詞もナラダがリライトしていますが、驚くほどもとの歌詞に添っています。

 このアルバムを聴いている一般の人は、まさかこの曲がゲームのテーマソングだとは思いもしないでしょう。ついでに、Noriko Matsuedaってダレ?みたいな……。アルバムの解説では、あくまでナラダとシャニースのオリジナルナンバーみたいな書き方がされてるし、「バウンサー」についての記述はひとこともナシ……。ちょっと悔しいですね。それにしても、「Love Is The Gift」をこのチャリティーアルバムに入れるためのプロモーションには、並々ならぬ苦労があったことが推測できます。ゲーム本筋を考えると、力の注ぎどころが間違った方向に行っているような、そんな気がしないでもないですが。ただ、江口貴勅氏にとってナラダは「影響を受けたアーティスト(いわく、「偉大な尊敬するミュージシャン」)」ということですので、彼らに英語版へ参加してもらったのは願ったり叶ったりだったのではないでしょうか。

他の収録曲
・Funky Mellow Christmas/アン・ヴォーグ
・The Spirit Is Here To Lift You Up/ダイアン・ディアス
・I Love You More/キンバリー・ブリューワーfeat.スティーヴィー・ワンダー
・The Christmas Song/テイク6
・Little Drummer Boy/ナラダ・マイケル・ウォールデン
・Tonight I Remember/矢沢永吉
・Where Will You Be For Christmas/ヨランダ・アダムス&スティング
・Love、Love、Love Music Of Love/このアルバムに参加してる人々
・O Holy Night/ナラダ・マイケル・ウォールデン
・Silent Night/エンヤ


チャリティーアルバムは企画モノだけに、在庫僅少でしょう。どうしても手に入れたい人には、シャニース名義のマキシシングルをオススメ。いちおう上のアルバムからのシングルカットということになってます。ジャケもバッチリ「バウンサー」で、ゲームファンも納得です。でも、オビには……
「タイアップ:PS2用ゲームソフト『バウンサー』エンディング」
……逆だろう!いや、待て待て、タイアップありきのテーマソングだったとしたら……なんか、納得いかん。

1.Love Is The Gift(ショート・ヴァージョン)
2.Love Is The Gift(ロング・ヴァージョン)
3.トラック1のインストゥルメンタル
4.トラック2のインストゥルメンタル


ポリドール UICE-5002 2000年 JASRAC
あり

シングルCDが購入可能。
マキシシングル
関連DVD
パッケージ画像 The Bouncer Music Clip
FOREVERMORE

パイオニア
PIBW-1061
2001年
JASRAC表記:なし


1.終わらないもの -Forevermore-/野田麗子
2.序章〜Prologue〜
 (「バウンサー」オープニング/Non SE Version)
3.(Bonus Track)BGM-remix


アマゾンでDVD買えます!
バウンサー・ミュージッククリップ FOEVER MORE
 実はこんなものもリリースされていたんです。言われてみれば「ああ、あったあった!」と思い出される方もいるのではないでしょうか。PS2と言えば、発売当時はDVD再生機能もウリでした。つまり、「バウンサー」の戦略として、ゲームソフト、サウンドトラック、そしてDVDソフトと、マルチに展開していくことを狙っていたのでしょう。もちろん、スクウェアとしてはPS2でのかなり初期のタイトルということもあって、気合いが入っていたことも容易に想像できます。もしもゲームそのものが大ヒットしていれば、キャラクターや世界観、もしくは「DOG STREET」というブランドを広げて、続編のみならずグッズなど様々な展開を目論んでいたのかもしれません。

 DVDは「ミュージッククリップ」と銘打っていることからわかる通り、映像と音楽の融合を前面に押し出しています。かつ、すべてが5.1chサラウンドでのリミックスを施されております。内容は、
・主題歌「終わらないもの -Forevermore-/野田麗子」のビデオクリップ
・ゲームのOPムービー「序章〜Prologue〜」の「効果音なし」ミックス
・ボーナストラックとして、BGM(サントラDisc2-3「コウ・レイフォー」)のリミックス
以上の3つがメインコンテンツ。とは言ってもサブコンテンツはありません。

 「終わらないもの -Forevermore-」のビデオクリップでは、ゲーム中のバー「フェイト」のような雰囲気のセットに、ボーカルの野田麗子さんが訪れます。このセットはちゃんと「フェイト」っぽく階段のある構造を再現していて、なかなか凝ってます。ここには小さな映画館のようなものもあり、スクリーンにはゲームの映像が映し出されているといった寸法です。ビデオクリップとしては正統派な作りですが、実写の雰囲気に合わせてあるのか、ゲームの映像が汚い!メーカーのプロモーションや雑誌の付録DVDなど、どうしても他の媒体に録画したゲーム画面というものはクオリティが落ちるのですが、このDVDに関して言えば、自分でVHSに録った映像の方がはるかにキレイです(繰り返しますが、ゲームの映像が、ね)。5.1chサラウンドについては、一部の楽器やストリングスの残響を、リスニングポイントを包み込むように割り振っています。派手なオドカシはなく、楽曲主体のミックスと言えますが、パッケージなどで大々的に謳っている「5.1chリミックス」を、ユーザーにどれだけアピールできるかは微妙。

 続くオープニングムービー「序章」の効果音ナシバージョンは、……まあ、すでにこれがオマケじみていますね。たしかに効果音がないと、音楽がいかにムービーの展開に合わせていろいろ工夫しているかがとてもよくわかるのですが、よっぽどのマニア以外はそこに興味は湧かないはず。SEをさっ引いて、映像はゲームのオープニングのまんま……このコンテンツが誰をターゲットに、何を見せ(聴かせ)たくて企画されたのかさっぱりわかりません。まあ、このようなDVDまで買って見る人はそもそもかなりコアなゲーマーでありましょうが……。5.1chに関しては、こちらも「これぞ5.1ch!」というようなわかりやすいギミックはなく、やっぱりどうせなら効果音アリで派手にやった方がウケはいいんじゃないのかなぁ、と思ってしまいました。

 最後の「BGM-remix」は、前述の通り「コウ・レイフォー」の5.1chミックスに、ゲーム映像を加工したカッコよさげなムービーを乗せたもの。映像は、かなり「テレビから離れて見てね」という感じの編集になっているのですが、楽曲についてはなぜ「コウ・レイフォー」が選ばれたのでしょう?まあサントラの中では(レビューでも書いている通り)、ボイスサンプリングなどがふんだんに使われている「ダンス音楽っぽい」曲なのですが……。そういう点でキャッチーだと判断されたのでしょうか。アレンジはサントラそのままではなく、リミックスにあたっていろいろいじくられています。その意味では、サントラファンには最も価値のあるコンテンツかもしれません。このDVDにおいて、もっとも「5.1chってこういうものだよ」というわかりやすい「音の遊び」が仕掛けられたトラックでもあります。PS2発売時期は家電業界的にも、5.1chシステムを一般層に売り出していこうという時期でしたから、こういうわかりやすいものも求められたのです。ただ、5.1chを体験したい人にはやっぱり「映画でも見とけ」という感じですが。

 さて、この内容で1500円を出すかどうかはかなり微妙でしょう……(私は出してしまった人ですが……)。総尺にしても14分ですからね。5.1chに興味のある人、もしくは野田麗子さんのファンならゲット。ゲームのファン、サントラファンについては無用です。なお、メニュー画面ではサントラより「LUKIS秘密指令」が使われていますが、この選曲もかなりナゾ。けだる〜くしてどうする?

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