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ファイナルファンタジーX ボーカルコレクション
ジャケット画像  「ファイナルファンタジーX(以下、FFX)」は、スクウェアの人気RPGシリーズ10作目にして、初のプレイステーション2の「FF」として発売された記念すべき作品である。国内ではPS2初のダブルミリオンを成し遂げたタイトルとしても、ちょっとゲーム事情に詳しい人なら記憶しているはずだ。PS2の性能をフルに使った「FFX」は、そのグラフィックもさることながら、シリーズで初めてフルボイスになったことでも、その没入感を飛躍的に高めたと言っていいだろう。結果としてその声優にスポットが当てられることもあるわけで、そういったキャラクター人気が結実して完成したのが、この「ボーカルコレクション」である。

 これまで「FF」の歌ものと言えば、サウンドトラックのアレンジものか、主題歌しかなかった。このアルバムは、各キャラクターの歌うオリジナルソング集として、それがかえって異色の存在となっている。言わば、スポットの当たり方がより「アニメ的」になってきたということだ。先行して発売されたシングル「feel/Go Dream」がサントラのアレンジソングだったのに対し、このアルバムは前述のようにオリジナル曲ばかりであるから、メインターゲットはサントラファンというよりも、キャラクターや声優に思い入れのあるファンということになるだろう。言ってしまえばサントラとしてレビューすることすら間違っているわけだが、ひとつの「ゲーム音楽の派生系」として、ここに掲載することにした。

 かと言って本編と無関係ではなく、曲間に挿入されているモノローグやミニドラマに関しては、シナリオの野島一成・渡辺大祐両氏が書き下ろしており、何らかの形で「FFX」の世界にハマった人ならば、聴く価値のあるアルバムとなっているはずだ。


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デジキューブ
SSCX-10073
2002年
JASRAC表記:
あり

01 monologue 〜ユウナ〜 ユウナ〜青木麻由子によるモノローグ。ユウナレスカを倒してから、「シン」を倒しに行くまでのユウナのひとりごとのようです。ちなみに、モノローグ・ミニドラマの場所はすべて飛空艇のブリッジと思われ、背景に流れているベース音などの効果音は、本編のサウンドエンジニアである中村栄治・嶺川千春両氏が手掛けています。また、セリフの編集についても、本編同様の菅原輝明氏が担当してます。
02 涙のあとに 青木麻由子のボーカルによるバラードナンバー。作曲は、「FFX-2」で作曲を担当している江口貴勅氏。かと言って、この曲のインストが「X-2」でBGMとして使われる、というようなことはなさそうだが……。あくまでオリジナル曲です。リズムはいろいろなテンポの解釈ができる最近のR&B調で、その上にピアノ、ストリングス、ハープ、ウインドチャイムが被さって透明感を醸し出しています。

複数のパートに渡るコーラスも青木麻由子さん本人が担当しているようで、なかなか芸達者です。やっぱり「feel」の時のように、納得いくまで何度も挑戦したのでしょうか。
03 monologue 〜ティーダ〜 ティーダ〜森田成一のモノローグ。こうして音声だけで聴くと、「〜ッス」というしゃべりのクセも、どことなくアニメキャラっぽいですね(笑)。
04 A Ray of Hope 森田成一によるオリジナル・ボーカル曲。「Go Dream」の頃に比べ、飛躍的に歌がうまくなってるティーダ君です……。コーラスもさることながら、微妙にファルセット入るところなんかナカナカの出来映え。

個人的には曲と詞の譜割りが一部気に入らない……。サビの「〜だからこーわれ・そうな」のところね。詞先なのか曲先なのかは知らないが、もっと上手くハマらなかったのかと。それから、なんで歌詞カードと実際の歌がここまで違うのか。録音現場で直しまくったのかもしれないが、印刷は上がってたとか(CDのプレスよりも印刷物は時間と手間がかかるため、修正が間に合わないことはよくある)。

作曲は松枝賀子&江口貴勅の「FFX-2」コンビですが、さて、「X-2」は「X」完成直後から製作を始めていたはず。多忙な二人がなぜ「ボーカルコレクション」を?という疑問がある。そして、なぜここまで植松伸夫氏が関わっていないのか……。

 ここからは完全に邪推の域だが、パターン1。「ボーカルコレクション」の楽曲を社内コンペ→松枝&江口が頑張った→植松「じゃあ、そのままX-2もふたりでやってみる?」
 パターン2。若手の底上げ&ネームバリューを引き上げたい植松氏が、いろいろな若手をFFに採用し、徐々に自分はフェードアウトして現場を離れる。

とは言え、ちょっと気が早いが「FFXII」は植松氏が担当されるようなので、おそらく「半熟」も含めた氏の多忙さゆえでしょうね。
05 dialogue 〜ティーダ、ワッカ〜 ティーダ〜森田成一とワッカ〜中井和哉によるかけあいミニドラマ。動きに合わせたフォーリーがイイ雰囲気出してます。
06 And On We Go ティーダとワッカの、男どうしデュエット。中井さんがワッカではなくなっちゃってる気もするが(笑)、しっかりとティーダをサポートしています。一番と二番では受け持つパートが入れ替わるものの、コーラスにあたる部分は常にワッカの役割になっており、やっぱ主役ってのはオイシイですね。

なんか似たアレンジの曲が3曲続いたので、このへんでちょっと飽きがきてしまうかも……。
07 monologue 〜リュック〜 リュック〜松本まりかのモノローグ。ちょっと思うのは、松本まりかってリュックを「演じて」いるのだろうか?普段どんな喋り方をする娘なんでしょう。常日頃から、こんな舌っ足らずなカンジなんでしょうかね?↓の歌を聴く限り、わりとリュックの声って「ス」な感じがするのだが……。それはそれでイイことです(謎)。
08 Get Happy! あっ、またベル系のスローバラードか……と思わせつつ、「majiでkoiする5秒前」になっちゃいます(笑)。もちろん、リュックのボーカルもの。正統的アイドルポップという感じで、作曲は下村陽子氏が担当。こんな曲も作れるんですね……さすがっス。

アイドルとして日々活躍している松本まりかですが、実はまだ歌デビューしてません。つまり、このトラックが初の公的ソングなわけで、実はアイドルファンの間でも、このアルバムはけっこうな話題になっているそうです。ゲームそのものを知らないまりかファンも、このアルバムを買うとか買わないとか。実際、ゲームをまったくやらないアイドルファンも、松本まりかをきっかけにして「FFX」のためにPS2を買った、なんて話も聞きます。
09 dialogue
〜ユウナ、リュック、ルールー〜
ユウナ〜青木麻由子・リュック〜松本まりか・ルールー〜夏樹リオの3人による、恋愛ドラマ。一瞬、ティーダとワッカも出演してます。「シン」との決戦を前にして、リュックがとことんノンキです。なんかこのノリ、「ナディア」「エヴァ」のアルバムに収録されている、庵野秀明ドラマに通じるテイストを感じます。
10 All The way ユウナ・リュック・ルールーによる、オケヒットが鳴りまくる妙に力強いナンバー。3者3様なボーカルを面白く聴けます。

声優さんって、けっこう「演じてる時」と「歌う時」で声が乖離する人が多いんですよね。ここでの夏樹リオさんは完全にルールーではなくなっているし。声優ファンにはそれでもアピールしますが、作品およびキャラのファンにしたらどうなんでしょう。そういう意味では、最もキャラと歌が合致しているのは松本まりかですね。

昔の声優さんはそのへん、たとえば悟空や怪物くんのまま、ドラえもんのまま、主題歌や挿入歌を歌っておられるわけですが、それはそれでまたこういうアルバムとは意味合いが異なりますしね。
11 monologue 〜アーロン〜 アーロン〜石川英郎のモノローグ。口数の少ないアーロンですが、心の中ではこのようなことをしょっちゅう考えていそう。それで、ハタから見ると険しい顔をしているように見える、と。それにしても、アーロン(っていうか石川さん)、イイ声だ〜。
12 螺旋 歌じゃねーじゃん!そう、詞の朗読です。発売前の「アーロンの歌なんて想像できない」というファンの不安を、見事に払拭しています(笑)。バックトラックはディストーションギターが響くヘビーな曲ですが、こういうのぐらいはサントラアレンジでもよかったのでは?

このアルバムにおいて、ゲームサントラのアレンジをここまで避けたのは何故だったんでしょうか。わりとファンはそれを望んでいたように思えるんですが、やっぱりサントラのボーカル化は限界があるんでしょうかね?
13 epilogue
〜ティーダ、ユウナ、リュック、
ルールー、ワッカ、キマリ〜
全員参加によるミニドラマ。そしてキマリが初登場。「シン」を倒したらガガゼトへ帰ると言うキマリですが、「X-2」では見事にロンゾの族長になっているのです。
14 feel-Remix 先行したシングル「feel/Go Dream」から、ユウナソロの「feel」をリミックスで収録。オリジナルは浜渦正志氏によるアレンジでしたが、今回はドラムンベースのテイストを組み込んだ、一聴してアップテンポな印象になっております。

言うまでもなく唯一のサントラアレンジ(祈りの歌)なわけですが、本アルバムではボーナストラックの扱いになっています。

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