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ファイナルファンタジーX Piano Collections
中ジャケット  FFおなじみのピアノコレクションズは、もちろん「X」も発売。ちょうど「インターナショナル」発売されるという時期の発表だっただろうか、タイミングが実に巧妙だ。特に今回は植松伸夫氏以外に新たに二人のコンポーザーが参加し、数多くの名曲を生んだことから、「ピアコレ」への期待が高まったのも無理はないだろう。これまで、ピアノコレクションズは外部アレンジャーがアレンジを担当してきたが、今回は「X」で多くのFFファンをトリコにしたスクウェアサウンズの浜渦正志氏がアレンジしている。植松氏とは異なり、専門的に音楽を学んできた浜渦氏。特にピアノは最も好きな楽器だというから、うってつけの抜擢と言えるだろう。
 
 演奏は、RIKKIのライブでの演奏を聴いて植松氏が惚れ込んだという、黒田亜樹氏による。植松氏によれば「テクニック」よりも「血」で演奏するという黒田氏のプレイと、浜渦氏の独特のアレンジを楽しんでほしい。きっとこれまでのピアコレとはひと味もふた味も違うはずだ。


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ピアノコレクションズ FINAL FANTASY X
デジキューブ
SSCX 10064  
2002年(廃盤)
JASRAC表記:
あり
スクウェア・エニックス
SQEX-10028
2004年再発
JASRAC表記:
あり

01 ザナルカンドにて 言わずと知れた、「X」のメインテーマ。曲そのものについてはオリジナルサントラのレビューを参照してほしいが、イントロから原曲のイメージを損なわないようにしているものの、オリジナルや「イマージュ」バージョンとはまた違う力強さを感じ取れるだろう。これはアレンジというよりもピアニストの解釈、そして感情移入によるものではないか。約3分という時間をとても短く感じてしまう秀逸な演奏。メロディの美しさがより際立つ、あらゆる心象を描写した名演だ。美しくもあり、悲しくもせつなくもあり……。
02 ティーダのテーマ これは正統的ピアノアレンジと言える。イントロからメロに入るまで、原曲を想起させる演奏で、ゲーム中でもこれが鳴っていたと錯覚してしまう。それだけに、この曲がゲーム中ではいまひとつ印象が薄かったことが惜しまれる。メロの立ったテーマが複数あったので、そうとうに難しかったとは思うが……。個人的にはこの曲は、ピアノソロの方がしっくりくる。それだけ今回のアレンジが秀でているということか。
03 ビサイド島 これは……ぱっと聴いただけでは何の曲かはわかりにくいだろうな……。タイトルと曲が頭の中で一致しないこと必死。慌ててCDプレイヤーの曲数を確認してしまうことしばしば。ビサイド島の曲なのだが、こうなっちゃったか……という感じか?こうムキ出しで曲の中身を提示されると、以外とわからなかったりもするもの。原曲はどちらかというと構成で聴かせるタイプの曲だったからか、まるで別物かも。
04 祈りの歌 あの短い曲をどう料理しているか興味があったが、なるほどこうきたか、という感じ。徐々に厚くなっていくというか、ムリヤリ長くしたもんだ(笑)。結果として6分ほどの大作になっているが、原曲のイメージが大きいためかイマイチ超えきれていないかも。あの寺院の神秘さ、荘厳さ、そして温度感までも表現していた雰囲気はない。原曲のイメージを捨て、まったく異なるピアノ曲として聴くべき。。
05 旅行公司 もちろん、あのパーカッションの「ポコポコ、カコポコ」はないが、かなり原曲の雰囲気に近いと思われるアレンジ。もともとピアノメロだったからか、意識してオリジナルとは変えていこうとしているのが感じられる。ゲームのBGMとしてはあまり使われない、「間」とか「呼吸感」が加わっているのが大きな特徴と言えるだろう。
06 リュックのテーマ 弾むような演奏が楽しげな「リュックのテーマ」。こちらもゲーム中では印象の薄い曲だったが、こうしてメロディを取り出すと別の味わいがあるもの。ひとつのピアノ曲としてきちんと成立しているのはさすが。それはそうと、今回の選曲もファン人気に基づいているのだろうか?
07 グアドサラム これまた、どうアレンジしてくるかが見えなかった曲。こんな曲だったか?という感想だ。もしこれがゲーム内のグアドサラムで流れていたら、印象変わっただろうな、っていう。原曲は一歩引きまくりだったのに対し、この演奏ではかなり前に出ている。難しいところではあるが……。これが単なるマップBGMとして流れていたら、間違いなくクドいだろうし、結局は原曲の引きぐあいが正解なのだろうか……。
08 雷平原 かなりテンポが早くなっているが、紛れもなく雷平原。メトロノーム音はもちろんなし。もしゲーム内でこっちが流れていたら、雷避けの難易度はさらに上がったはず……。
09 襲撃 もともとがピアノをフィーチャーした楽曲だったとはいえ、かなり原曲の雰囲気を再現した演奏。作曲者自身のアレンジだけのことはある。黒田亜樹氏の力強い演奏は、これ以上はないというほどの圧倒的な表現力。一台のピアノの表現力というものには、毎度のことながら驚かされる。
10 浄罪の路 こちらも原曲系。ピアノアレンジとは不思議なもので、ゲームでその場面をプレイしていた時間に気持ちを引き戻す作用がある。ゲームそのものもさることながら、その頃に体験した出来事や心象までも思い起こさせる力がある。これはオーケストラアレンジなどにも言うことができるだろう。
11 素敵だね そういえば、ゲーム内ではありそうでなかった「素敵だね」の純粋なピアノソロ。どこかで流れていたように錯覚したら、それはもうこの曲のトリコになっているということ(笑)。それにしても、植松氏の曲っていうのは不思議とピアノソロ映えがする。圧倒的なメロのきわだち、美しさがそう感じさせるのか?
12 ユウナの決意 ナギ平原の曲。オリジナルバージョンで鳴っていた「イヤな音」はピアノアレンジになることで、なくなってくれました。それだけで満足。いや、もうほんと個人的に。
13 極北の民 浜渦氏作曲のセルフアレンジ。この曲もオリジナルとは別の雰囲気を楽しむべし。「極北」っぽさはなくなっているものの、ひとつのピアノ曲としてじゅうぶんに味わえます。強弱の変化が激しいので、ボリュームに注意。
14 決戦 これはもう脱帽。お見事としか言いようがない。「今までにない戦闘曲を作ろうと思った」という浜渦氏の意思は、しっかりここでも活かされている。理屈じゃない、聴けばわかる!そんな確信に満ちたアレンジに、黒田氏の演奏が呼応しているかのよう。ここまでやられてしまっては、もうスピーカーの前でじっと黙るしかアリマセン。逆に、もし浜口史郎氏がアレンジを担当していたらどうなっただろう、という興味も湧いてくる。
15 Ending Theme 基本的な構成は原曲と同じ。あとはフルオーケストラでの表現をいかにピアノソロに置き換えていくかというところだが、それはまったく問題なし。安心して聴ける、むしろより強く「X」の世界を、そしてティーダとユウナを思い出させる名アレンジになっている。しばし余韻を感じながら、「その後」の彼らに思いを馳せてみるのもいいだろう。

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