GAMERS EDEN的ゲームレビュー File006.
修羅の門

ジャンル:格闘アクション
開発:ジャパンヴィステック
販売:講談社
SLPS 01202

1998年4月2日発売
定価:5800円

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検索などで直接いらした方、当サイトは「GAMERS EDEN」です。
ディレクター  遠藤 竜也     開発総指揮  谷川 高義
プログラマー  田中 裕一郎
 中村 雅也
3Dモデリング  大島 ローマンス
イメージデザイン  安藤 基久 背景  友部 剛
音楽  Harold Payne
 Rick Cowling Jr.
アクター  エンセン井上

マジっすか!?ファミ通レビューで伝説の「2点」
本当に完成品か」「演出は皆無」「ユーザーは納得するだろうか」……コレ、超メジャーゲーム誌「ファミ通」に載った、「修羅の門」に対するレビューです。メジャーゲーム誌のレビューと言えば、メーカーとは持ちつ持たれつの関係を保つためにどうしても提灯記事になるもの。本当にヒドい出来の作品であっても、そうは酷評できないものです。もしも「修羅の門」がスクウェアなんかからリリースされたソフトであったら、ヘタをすれば「殿堂入り」していたかもしれません(笑)。しかし、作品の販売元が今後の関係を気遣う必要のない「講談社」とくれば、情け容赦は無用。レビュアー乱舞吉田氏は、感じたままに正直に冒頭の罵詈雑言を書き連ねたうえ、トドメに前代未聞の2点という点数を与えました。他3名のレビュアーも3点、3点、4点。最高得点が4点!このクロスレビューを見て、「おっ、"修羅の門"買おう」と思うユーザーなんているわけありません。読者すべてが「買ってはいけないゲーム」として認識したはず。物凄い機会損失です。誌面を見た開発者及び販売元の担当者はどう思ったことでしょう。原作ものでは常套句である「原作のファンであればオススメ」すらナシ。講談社からクレームのひとつも入ったのでは。
伝説のクソ格闘ゲームを起動!
見てもいない、触れてもいないゲームをただ「クソゲー」として認識し、人に「"修羅の門"ってクソらしいよ」と伝えるのは風説の流布にあたり、最悪の場合逮捕されます(いや、たぶんされません)。それ以前にゲーマーとして正しくありませんね。ひとことに「クソゲー」と言っても、いろいろな種類の「クソゲー」があるはず。どんな部分が「クソゲー」なのか、どこが悪いのか。それを見極めることで、「本当に良く出来たゲームとは何か」が見えてくる。反面教師として「クソゲー」に触れることは意味のある行為なのです。結果が本当に「クソゲー」だったとしても、嘆くことはありません。アナタの中のゲーム経験値は確実に上がっていくのです。というわけで、手に入れてみた「クソゲー」……もとい、「修羅の門」。購入動機が「ファミ通で2点だったから」でもまあいいじゃありませんか。

「修羅の門」は同名の漫画を題材にした、「原作もの」の3D対戦格闘ゲーム。当時大ブームだった対戦格闘は出せば一定数が売れることから、ノウハウのないメーカーまで参入して混沌としていたジャンルでした。時期的には「ストリートファイターEX plus α」「鉄拳3」「エアガイツ」など、大手各社が自慢のタイトルを家庭用に移植・投入していた頃。格闘ゲーマーはどれを遊ぼうかというゼイタクな悩みを抱えていましたが、その視線が「修羅の門」に向けられることはおそらくなかったでしょう。バシバシと売れていく大作をよそに、売り場の片隅でひっそりと誰かが手に取ってくれるのを待つその姿は涙を誘います。やっと一人のお客が手に取るも、「おい見ろよー、これあのクソゲーだぜ」「ホントだアハハハー」で棚に戻される……うう、泣けてきた。

さっそく起動してみます。講談社のロゴが表示されます。ファミ通であんな点数付けられた後じゃ、会社ロゴなんか入れるんじゃなかったー!と後悔しておられると思われますが、このロゴのアニメーションから既にガタガタのコマ落ちっぷりで、ゲームがガタガタであることを暗示しているかのようです。企業ロゴすら満足に動かせない人たちがちゃんとした3D格闘ゲームを作れるのか、とユーザーが疑問を抱くことは間違いない出来でシビれます。それが終わると古風なBGMをバックに、おじいちゃん(龍造寺徹心)が現れます。背景は黒一色ですが、格闘ゲームではおなじみの「演舞」というやつです。一応モーションキャプチャーを使ったようなのですが、キャプチャーにミスっているのか、その後のデータ編集がうまくできていないのかはわかりませんが、他所様で見られるようなリアルで人間っぽい「演舞」ではなく、おじいちゃんが朝、健康のために庭先で体操をしているようにしか見えません。このカクカクしたブレイクダンスを「演舞」と言い張るわけですかそうですか。起動直後、タイトル画面より先にこれを見せることは、完成度が高ければ技術力のアピールにもなりますし期待感も煽りますが、本作においては早くも地雷感を漂わせています。まさかそれをアピールしておられるのでしょうか?
何が起こるのか、強気なタイトル画面。
寒いだけの演舞が終わるとタイトル画面に。音楽は流れず、無音の状態でただ「スタートを押すべし!」と命じてきます。ついつい押してやるもんか!という気持ちになりますが、ここはグッとこらえて押してさしあげましょう。何が起こるのかワクワクしますね。ポチッとな。

コン!

鳴り響く拍子木の音。決定音が拍子木で、カーソルを移動させると「ポン!ポン!ポン!」と鼓の音がします。徹底して「和の雰囲気」を強調したいのでしょうが、音が軽いので間が抜けています。せめて「ドン」とか、大太鼓系の音にした方が良かったのではないかと悔やまれます。さて、表示されたタイトルメニューには「一人」「対戦」「百人組手」「設定」と4つの項目が。「和の雰囲気」を大切にしたい本作ですからすべて漢字表記になっています。さっそく「設定」から見てみることに。「実力」「体力」「防御力」「時間」はその意味するところがわかりますが、「視点」はわかりません。もちろんゲーム中のカメラ視点であることは理解できますが、「甲・乙」の違いがわかりません。仕方ないので取扱説明書を見てみますが、「ゲーム中の視点(カメラ位置)を、甲と乙の2種類から選択することができます」としか記されておらず、甲と乙がどう違うのかは説明されておりません。切り替えてみないとわからないという素敵仕様です。ここは面倒くさいのでデフォルトの「甲」のまま始めてみましょう。

「一人」は通常の格闘ゲームで言うところのストーリーモード。CPUを相手に最後まで勝ち抜くことが目的です。ところがゲーム中ではイベントシーンなどはまったくなく、あくまでプレイヤーが原作のファンであることを前提にしているようです。人間関係や「なぜ戦うのか」といった背景はゲームでは触れられないままで、取説にも載っていません。即ち本作は「原作関連グッズ」であり、「対戦格闘ゲーム」という枠で括ることそのものが間違いなんですね。私は原作の漫画についてはまったく知らないので、残念ながらここはストーリーを気にせず、純粋に格闘ゲームとして楽しむしかありません。格闘ゲームとして楽しめるものになっているとよいのですが。
意外にも許容範囲な基礎部分
キャラ選択画面
ってことで「一人」を選ぶと使用キャラクター選択画面に。原作を知らないので誰を使っても良いのですが、ここは主人公っぽい「陸奥九十九」を使ってみましょう。原作ものでは大抵、主人公キャラは無難なバランスに調整されているものです。ここで表示されている顔グラフィックはイラストを取り込んだものでしょうか、きちんとしたものになっています。原作を知る人ならばキャラゲーとして鑑賞に耐え得るものではないでしょうか。しかし、ここまで「和の雰囲気」を重視してきた本作において、キャラクター選択画面で突然ディストーションギターが唸るロックナンバーを流すのはどうしたことでしょう。あと、キャラクターの名前を示している文字のフォント、もう少しなんとかならなかったのでしょうか。文字までポリゴンなのかと思っちゃいましたよ。ということで九十九で決定すると、突然表示される…

そうですか、としか言えません。

そんなに威張っていうことじゃありません。多くの格闘ゲームが極力ロードのストレスを感じさせないよう尽力しているのに対し、それを強烈に主張してどうしますか?開き直ったということでよろしいでしょうか?「馬鹿」の付くほど正直なその姿勢に誠実さを感じるのは筆者だけではないでしょう。もちろん「馬鹿」だけを感じるユーザーも少なからず存在するとは思いますが……。その後、対戦相手の顔グラフィックが表示されますが、ここでもロードし続けていると見るべきでしょう。結局、実際のゲーム画面になるまで20秒ほど待たされます。せめて対戦者の顔を表示する時に短い音楽でも流せば良かったのでは。無音の20秒ってとっても長く感じるんですね!初めて知りました。で、ようやく対戦画面になります。あちこちで「完成品なのか?」と言われており、筆者もそのつもりでそうとう期待心配しておりましたが、最初の印象は「そこまでヒドいか?」というものでした。
ゲーム画面
あくまで「見た目は」ですが、プレステ初期の格闘ゲームぐらいの完成度は保っています。まあリリースが98年なので、その時点での他の作品と比較すれば明らかに劣っているのですが。もしかして制作にゴーサインが出てから完成まで、開発が延び延びになっちゃったんじゃないかなあ、と思えば耐えられるレベルです。キャラクターの造形も、原作を知っていればまあ「どのキャラか」は判別のできる出来で、どこぞの「FIST」のように、イラストとポリゴンが完全にベツモノということはないです。キャラゲーとして必要最低限の造形にはなってます。もちろんこれは筆者が原作を知らないから言えることであり、原作を愛する人々に言わせたら違うのかもしれませんが。単にポリゴンモデルの造形だけを見れば、それほどヒドくはありません。

では操作してみます。ボタンの反応は……ちゃんと押したらすぐに反応します。どこぞの「FIST」のように、ボタンを押してからワンテンポ遅れてキャラが動くなんてことはなく、それだけでマトモな格闘ゲームだと思えてしまうのはやっぱりどこぞの「FIST」のおかげだと言えます。おっと、このままではどこぞの「FIST」のレビューになってしまうので話を「修羅の門」に戻しましょう。四角・三角・丸ボタンに小・中・大の攻撃を割り振り、バツボタンがガードになっています。方向キーはもちろん移動で、二回押しでステップになります。さらにL1・L2ボタンで奥や手前への軸移動が可能です。つまりステージには左右以外に「手前・奥」という概念があり、しっかり3D格闘として成立していることに驚きました。この時点でどこぞの「FIST」よりも数段上を行ってますよ!……どこぞの「FIST」の話はもういいか。投げ技に対して投げ抜けなんかも用意してあるあたり、格闘ゲームの基本はおさえようという姿勢が窺えます。他所様の作品のいいとこどり、という気がしないでもないですが。

そしてR1・R2ボタンにはキャラクターごとの必殺技が設定されています。九十九であれば「虎砲」です。どんなハデな技が出るのでしょうか。……なんか拳をチョイと前に出しました。それに当たった敵は吹っ飛んでます。……モーションやエフェクトが必殺技にふさわしいものではなく、まったく凄さが伝わってきません。音も地味です。原作を知らないのでどんなイメージを再現しているのかわかりませんが、なんか「気」のようなもので吹っ飛ばした感じでしょうか?それでも当たればいいのですが、リーチが短く滅多にヒットしません。ただ発動には何ら制限はなく、簡単な操作で何度でも出せるあたり何をもって「必殺技」とするのか、ありがたみのないものになってます(ダメージもたいしたことないし)。その他コマンド技もキャラごとに用意されていますが、一人につき6〜7ほど。通常のパンチやキック、投げを含めて12〜13種類前後の攻撃手段でもってチクチクと戦うのです。とは言うものの、これは格闘ゲームとして多いわけでも特別少ないわけでもありません。次に紹介する本作独自の要素こそ、ゲームバランスに大きく影響してくるのです。
情け容赦ない?「肢体破壊技」
本作に採用されている「肢体破壊技」は、相手の腕や足をへし折る特殊攻撃です。これこそが本作のゲーム性を独特のものにしている目玉システムなのです。
右腕を折られた九十九。
写真の九十九は右腕をダラリと垂らしていますが、なにも余裕カマシているわけではありません。右腕を折られているのです。へし折られた部位はどうなるのかというと、当然使えなくなってしまいます。両腕を折られれば、以後は足を使っての攻撃しかできなくなります。それだけ攻撃手段(技)が限定されていくことになり、まさに生きるか死ぬかのサバイバル気分をご家庭で気軽に味わうことができるんですよ!どうせなら首をへし折ることもできるようにしてほしかったところです!しかし、CPU相手ならば両腕を失ったぐらいならばじゅうぶん戦えますので安心して下さい。逆にこちらが相手の部位を破壊できれば、繰り出される技を限定することができますので、対処もラクになります。ゲームとしては張り合いがなくなりますけど。

アイディアとしては面白く、格闘ゲームのシステムとしては個人的に充分「アリ」なシステムなんですが、それを活かしきれていないところは残念でした。もっとこう、肢体を破壊されることで圧倒的不利になるとか、重大なペナルティがほしかったですね。「絶対に折られるわけにはいかない」という緊張感がないんです。「腕の一本ぐらいいいか〜」というお気楽なものに留まっていて、これをプレイしたお子様たちが「腕一本ぐらいなんでもない」という気軽さからイジメをエスカレートさせやしないかと心配になってしまいます。ハラハラ。
最強キャラはレオン
本作の最強キャラクターは誰でしょう?それは文句なくレオンではないでしょうか。彼に設定された「マウントポジション」は文字通り、相手の身体に馬乗りになる技。普通ならこの体勢から腕十字(肢体破壊)に持ち込むところですが、マウントを維持したまま丸ボタンと四角ボタンを交互に連打してみましょう。

ドコドコドコドコドコドコ……

まさに絵に描いたような「タコ殴り」です。相手に反撃させず、一方的に殴り続けることができるのです。モーションも必見の出来!しかもCPUが相手ならばまさに「死ぬまで」殴ることができます。これをプレイしたお子様たちが「反撃しない相手をボコるのは気持ちいい」という気軽さからイジメをエスカレートさせやしないかと心配になってしまいます。タックルかましてマウントとったらタコ殴り、これがレオンの必勝パターン。通常技はよくわからない使い勝手の悪いものですし、必殺技に至っては何か一人でのけぞるだけ。通常なら使いにくい最弱キャラとして扱われるはずの能力しかないレオンですが、この「マウントタコ殴り」を与えられることで「修羅の門」最強キャラにまで登りつめたのです!なんと秀逸なゲームバランスでしょうか。なお、レオンを使う際は腕だけは折られないよう注意しましょう。腕が使えなくなるとまともに戦うことすらできなくなりますから。つーかグラシエーロ柔術ってこういうもんなの?
「漢」と書いて「オトコ」!萌え無用の「男の世界」
「修羅の門」は非常に男臭いゲームであります。登場キャラは全員男!マッスルでマッチョで汗臭いアドンな世界が繰り広げられております。どこの格闘ゲームでも萌え需要を満たすため、どんなに硬派な作品であっても女キャラのひとりやふたりは用意するものですが、本作においてはそんなアマッチョロい要素はバッサリと斬り捨て!「闘いとは男の世界だ!女子供は引っ込め」と言わんばかりです。かと思えば、
唯一の萌え要素?
いました!「一人モード」最後の最後に女キャラクター!取説によれば「今大会に参加した唯一の女性格闘家」だそうで、名をドルジ・アリウナーといいます。しかし!グラフィック的には萌えや色気の要素はまったくなく、長髪の男と言われたら納得してしまいそうな見てくれなうえ、声も発しない(後述)ので女っぽさは微塵も感じられません。そこかしこの格ゲーから聞こえてくる、女キャラの「キャアアアン」という軟弱な悲鳴にハラワタ煮えまくりの硬派なアナタにこそオススメしたい「漢」のゲーム、それが「修羅の門」です。

本作が「漢の世界」を貫く要素はまだあります。それは「礼節」です。たとえ瀕死の状態であっても、対戦相手への礼儀を欠いてはいけません。ゆえに、倒れた状態でトドメをさされたキャラクターは、わざわざ立ち上がってからあらためてダウンします。レオンのマウントタコ殴りで葬られたキャラが、ムクリと起き上がってバタンと倒れ込む姿は涙なしには見られません。つーかね、アハハ、もうダメだ。最初見たときは腹を抱えて爆笑しましたよ。もうゲームがどうこうという以前にこんな現象すら修正できてないって、デバッグやテストプレイを一切していないとしか思えませんよ。完成したからにはテストすらせず市場に叩き出すその姿勢、まさしく我が子を谷に突き落とす獅子のよう!これを「漢」と言わずしてどうしますか。
オマケ要素を楽しもう
取扱説明書には、数人の隠しキャラの存在をほのめかす記述があります。上で紹介したドルジ・アリウナーもその一人なのですが、彼女を倒すと説明書にも載っていない「不破北斗」なるキャラクターとの対戦になります。原作を知らないのでそのありがたみがよくわからないのですが、まあ隠しだけあって強いんだろうな……と思うじゃないですか。しかし「近付いてきたところに二打撃キック」の連発でアッサリ勝てました。するとようやく「一人モード」のエンディングになります。そこでまた

またかよ。

……っておい、背景画像とテキスト、音楽を読み込むだけで13秒も待たせるのかい。エンディングが豪華なムービーとかポリゴン演舞とかならまだしも、一枚絵じゃねえか。この一枚絵も、取説やキャラクター選択画面で使われているイラストの流用で、ご褒美要素はナシ。その後スタッフクレジットが表示されますが、「和の雰囲気」へのこだわりからか英語もムリヤリ漢字にしてます。例えばモーションキャプチャーのスタッフは「動作収録機操作」、キャラクターモデルは「立体造形」、モーション作成は「動作作成」です。そのくせ「プログラマー」や「プロモーション」「マーケティングディレクター」なんかはそのまま英語です。全部漢字にしやがれよ押忍!オツムの程度が知れますよ?モーションアクターとしてエンセン井上が参加しているのにはちょっと驚きましたが、「その他実戦派格闘団体」ってなんだ。エンディングに名前も出してもらえない「団体」って……。ヤクザとかじゃないだろうな。

さてさて、格闘ゲームでは普通、ボスキャラや隠しキャラを倒すとプレイヤーキャラとして使えるようになったりしますよね。こう書くと「本作では使えませんって言うんだろ?」と思われるでしょうが、その通り!てゆーかですね、このゲーム、セーブができないんですよ。よくよく見るとパッケージの裏に「メモリーカード○ブロック」というおなじみの記述がないんです。いくら隠しキャラが出現しようが、「百人組手」をクリアしようが、電源切ったら当然初期化!記録は一切残せません。プレイタイムもクリア時間も、何から何まですべて白紙に!つまり「やり込み」とは無縁!なんという男らしい仕様なんでしょうか。自分の輝かしい記録が残せず、ご褒美要素もまったくないとなれば、いったい誰が本作をやり込む気になるでしょうか。「戦いにご褒美などない。あるのはただ、自己の鍛錬のみ。見返りなど求めるな」という主張はまさに「修羅の門」ですが、ゲームは修行ではなく娯楽ですよ?ちなみに隠しキャラはタイトル画面であるコマンドを入力することで使用可能になるそうです。アリウナーと不破を含めて全4人の隠しキャラがいます。もちろんセーブできないので、起動のたびに同じコマンドを入れなければならないのですが。

ということで一応、本作唯一のオマケ要素である「百人組手」モードにも触れておきましょうか。これはただひたすら百連戦を勝ち抜くというもので、次々と現れる対戦相手を倒していくだけの退屈なモードです。ただしこちらの体力は一切回復されず、肢体破壊も持ち越されますので「サバイバルモード」と言っても差し支えないですね。最初の敵は一撃で倒せる程度のザコですが、徐々に強くなっていきます。ザコを一定数を倒すと固定キャラが現れますが、「一人」モードに比べて格段に弱いです。とゆーかですね、
ガードされてるのに勝っちゃった。
こちらの攻撃はガードされているのにもかかわらず、しっかりダメージを与えています(「勝負あり」に注目)。これはそういう仕様なんでしょうか?それとも不具合ってヤツですか。こんな状態では駆け引きやら緊張感などあったもんではなく、ただの作業。もう飽きたので60戦ほどこなした時点で中断しました。取扱説明書によると「100人目の相手を倒すと、イイことがあるかも……?」とのことですが、それを確認する気にもなりません。だってセーブできないんですから、何が起こっても関係ないんです。そもそも取説の「かも」は信用しちゃいけません。だいたい説明書というものは、開発サイドとは別の編集プロダクションがゲームの中身も知らずに憶測で書いていることが多いので、「かも」の付く文章というものは「書くことがなくて困った時の最後の手段」なのです。「効果を発揮するかも」「有効かも」「手に入るかも」なんかは実際には違っていることがよくあります。それでもなお困ったら必殺技「君の目で確かめよう!」「君の手で見つけてほしい」の出番です。CD-ROMになったことでゲームソフト自体の納期はギリギリまで延ばすことができるようになりましたが、印刷物である説明書は多くの場合、ゲームそのものよりも先に完成させなければならないのです。あれ、「修羅の門」と関係なくなっちゃったな。まあ業界裏事情ってことで。
サウンドはどうよ?
なぜか外人ばかりで構成されている本作「修羅の門」のサウンドチーム。音楽はもちろん効果音も外人が担当しております。となれば「外人が間違って認識しているインチキ和風サウンド」に期待したいところですが、残念ながら本作の楽曲はマトモです。カーソル選択・決定音の拍子木や鼓には多少出ている感もありますが……。

ユーザーレビューでは「静かな格闘ゲーム」「音楽がなくて寂しい」との記述をしばしば目にしますが、筆者のプレイした「修羅の門」は対戦中にも音楽が流れているのですけど、筆者が所有しているのは限定版か何かなのですか?それともレビューを書いてる人はデモ映像だけ見てゲームをプレイした気になっているのでしょうか(デモでは音楽が流れません)。もしくは聴力を失っているにもかかわらず必死に音楽を聴き取ろうとしているベートーヴェンのような人でしょうか?タクト(コントローラー)を口に咥えるがいい!

タイトル画面や対戦者表示で音楽が流れないのは確かに寂しい気もしますが、ゲーム中に挿入されるBGMはロック調の正統派あり、ワビサビを感じさせるものありとバラエティに富んでいます。それだけではなく環境音も凝っており、背景に川が流れるステージではせせらぎの音、お寺ではカラスの鳴き声と鐘の音、道場では屋外で鳴く虫のコーラスなど、格闘ゲームにしては音でステージの臨場感をうまく出してる作品だと言えるでしょう。川の音がやりすぎで雨に聞こえなくもないというところはありますが、音楽と環境音、そして打撃音などをいっぺんに発音させているあたり、こだわりのあるサウンドチームの仕事が感じられます。

一方でその打撃音ですが、エフェクトの効いたハデな音ではなくドライな単音で、流行りの路線ではありません。「安っぽい音」と言われるのも無理はないと言った感じですが、特に肢体破壊時の「ペキッ」という音はもう少しなんとかしてほしかったところ。また、動作に伴う風切り音(シュッ、ヒュッ)はこれでもかと充てられているのに対し、吹っ飛ばされたキャラクターが地に落ちる際には音がしないなど、詰めの甘さが気になりました。投げられた時の音と同じものでかまわないので、そこで「ドサッ」と音をさせていたらずいぶん印象が変わったはずです。「付くべきところに音が足りていない」んですね。ついでに言うなら、勝利時に短いジングルを鳴らしてほしかったかも。

そして、本作の「音」に最も足りてないのは「」です。いや、足りてないというよりも皆無。ゲーム中のキャラクターは一切声を発しません。セリフはもちろん、攻撃時の「はっ」「とおっ」や、ダメージをくらった際にもまったく声を出しません。骨を折られても悲鳴ひとつ発しないのです。「漢は情けない声を出してはならない、漢と漢の戦いに言葉は不要!」ということでしょうか。とは言うもののやっぱり声は欲しいですよね。スーファミの格闘ゲームですら声を出しているんですから、プレステでできないわけがありません。まさか、音楽・環境音・打撃音を鳴らしたら声が鳴らせなかった!わけでもないですよね。サウンドチームが外人ばっかりだったから日本語音声が入れられなかったとか?はたまた声優を雇うだけの予算がなかったか……。ならばスタッフの声を加工してでもやるべきでした。とは言え外人声の「Ah!」「Oh!」「Shit!」「サノバビッチ!」は勘弁ですけど。
総評してみます
「ファミ通で2点」、この強烈(不名誉)なキャッチコピーを見ると「どんなにヒドいんだろうか、ワクワク」という気持ちになってしまうのはいちゲーマーとして仕方ない(しかもそうとう性悪の)性分なのですが、一言で表せば「そこまでヒドくもない」という感じです。世間で言われているほどヒドいゲームではないというのが正直な印象。ポリゴンモデルは許容範囲で、キャラの区別がつかないほどではないですし、軸ズラシのあるステージは格闘ゲームとしてまっとうなもの。技の数は過不足なく、キャラクター数もまあまあ。原作ファンならアイテムとして持っていてもいいのでは、というレベルのゲームになっていると思います。最も失敗しているのがバランス調整ですね。モーションとそれに伴う当たり判定、ダメージ量の設定がよろしくないんです。爽快感とは無縁のものになっており、格闘ゲーマーには物足りない。さらに不幸なことに、格闘ゲームというジャンルではどうしても比較対象が「鉄拳」や「バーチャ」、「ストII」や「トバル」といった完成度の高い名作になりがち。それらに比べたら本作はどうしたって劣って見えてしまいますよ。例えば比較対象を「FIST」とか「らんま1/2」にしてみると、「修羅の門」がそんなにヒドいものには思えなくなるはずです。ってなんて後ろ向きな行為なんだ、それ。
どんな人に向いたゲームなのか?
このゲームをプレイすべき人
・漢たちが放つ汗臭さがたまらない人
・軟派な萌え路線に嫌気のさしている人
・無抵抗主義の相手を迫害することに生き甲斐を見出す人
・メモリーカードを一枚も持っていない人
・原作漫画の関連商品ならばなんでもかまわない人

このゲームをプレイすべきではない人
・手応えのある格闘ゲームで遊びたい人
・バーリトゥードのファン
・美少女格闘で萌えたい人
・骨折経験のある人
・「FIST」以上のクソゲーを求めているハンター
・原作と寸分違わないイメージをゲームに求める人