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ありす イン サイバーランド

ジャンル:ギャルベンチャー
開発:グラムス
SLPS 00636

1996年12月20日発売
定価:5800円

画像への直接リンクは禁止させていただきます。


検索などで直接いらした方、当サイトは「GAMERS EDEN」です。
プロデューサー  千葉 麗子
 黒田 志郎
    製作総指揮  吉田 直人
シナリオ  小中 千昭 キャラクターデザイン  森山 大輔
モンスターデザイン  戸部 隆一 サブキャラデザイン  Ami
プログラム  石橋 秀夫 背景  友部 剛
イベント演出  田野 雅祥 イベント作画監督  大木 良一
アニメーション監督  新房 昭之 アニメ作画監督  亀井 幹太
音楽  山本 秀樹
 赤松 智
音響監督  三間 雅文
以下の本文にはゲーム内容やストーリーについて言及する「ネタバレ」が含まれています。今後本作をプレイするつもりでおられる方は閲覧にあたり各自で御注意下さい。

電脳アイドル「チバレイ」が作ったゲームは「ギャルベンチャー」
あなたはアイドルタレント千葉麗子をご存知でしょうか?1991年にその活動をスタートさせ、92年にテレビの特撮番組「恐竜戦隊ジュウレンジャー」でメジャーに。コンピューター関係に強く、趣味はゲームという「電脳アイドル」をウリ文句に、「チバレイ」の愛称(一字しか略してない)で各種メディアを舞台に活躍しました。特にSNKの「サムスピ」ユーザーにはおなじみのはず。ですがアイドルとしては大ブレイクすることなく、95年に引退してしまいました。しかしその後、特技を活かしてインターネットビジネスを行う会社「チェリーベイブ」の社長に就任したのです。戦隊もの出身アイドルから始まって20代で女社長!筆者はアイドル出身の小娘が社長やってる会社に勤めるのは絶対にイヤですが、そんな波乱(?)の人生を送るチバレイ率いるチェリーベイブが制作に関わったのが、このプレイステーションソフト「ありす イン サイバーランド」なのです。たまに誤解されていますが、チェリーベイブが全ての開発をしたわけではなく、グラムスの開発にチェリーベイブがちょこっと顔出した、ぐらいのもんですね。

チェリーベイブ側にはグラムスの方から打診があったようです。チバレイ社長にはプロデュースをお願いしたい、と。ゲームは好きでも仕事にしたことはない社長、素直に「仕事って何をすればいいの?」と質問します。すると「プログラマーの話し相手だとか、ロゴを決めてもらったりとか……」と、つまりは形だけですよ難しいことしてもらおうなんて思ってませんよ的なことを説明され、社長はなぁんだ簡単ジャン私にもできそうジャン的なことを思ったかどうかは定かではありませんが、「プロデューサーというよりはアドバイザーだな」とグラムスの吉田社長(本作での製作総指揮)申し出を受けたそうです。つか、それ年功序列のおかげで位は高いけど仕事はない窓際族と大差ありませんぜ

で、ゲーム大好きな千葉社長、やるんだったらとことんやる!と思ったかどうかは定かではありませんが、まずはどんなゲームにするか思案します。そこで思いついたのが、従来のジャンル分けにはまらない、すべての分野をひとまとめにミックスしてみようということ。一般的にはかなりの確率で駄作化しそうなアイディアですが、千葉社長は後に「これはよかった」と述懐しています。そして、そのひとまとめミックスゲームのジャンルを、「ギャルベンチャー」と命名。おいおい、ジャンル分けできないゲーム目指したのに新ジャンル作っちゃったよ、勝手に。ちなみにその後、「ギャルベンチャー」ジャンルとして世に放たれたゲームソフトはたぶん一本もありません。

次に千葉社長がしたことは……なんだろう。本当に話し相手とかしてたのかも。結果的に本作のサウンド担当者と結婚してしまったらしく、特にその人とは仕事を超えた濃〜い話を交わしたのでは。
アニメファン受けの良いキャラクター設定とビジュアル
「ギャルベンチャー」と言うからには、魅力的なギャルが出てこなければお話になりません。プレイヤーキャラとなるメインの3人組にはそれぞれタイプの異なる女の子が用意されています。ヒロインの水無月ありすは赤い髪にリボンを配し、性格的には強烈な個性の与えられていない典型的な主役タイプ。これはプレイヤーの分身としての処置でしょう。成績は学年トップで、幼少の頃は天才ゲーマーとして名を馳せ、今ではコンピューターが大の得意というあたりはまさかチバレイをモデルにしてたりしないっスよね?そのヒロインを「力」でサポートするのがお金持ちの令嬢・鳳麗奈。スタイル抜群のお嬢様なのに男勝りで語気も荒く、格闘技ファンというあたりは新鮮な設定ですが、格闘ゲームにはいっぱいいそうですね。それと対照的にパーティのマスコットキャラとして配置されているのがロリ担当・八神樹莉。小学生体型にスーパーロングヘア、口癖は「みゅ〜」って狙いすぎ。そのくせキレるといちばん強げ。でもって彼女らは女子中学生なのです。女子中学生ってギャルなのか?というどうでもいい疑問が。

アリス3の懲りない面々。

↑三者三様、個性的なパーティキャラクター。

彼女たちは当然学校に通っていますから、たくさんの同級生たちが出てきます。陸上部に属するボーイッシュ美少女、アイドルに憧れるブリッコ、レズっ気のあるオダンゴ頭、ネクラなメガネっ娘、高飛車な生徒会長などなど……、見た目と中身に寸分のギャップもない、お約束炸裂なありがちキャラたちがプレイヤーを待っています。もちろん子供だけではオハナシが成立しませんので大人も登場しますが、ストーリーは基本的に子供を中心に展開していきます。中学生のわりにはどいつもこいつも発育が良さげなのが気になりますが(樹莉のぞく)、高校生だと何か問題があったのでしょうか?当時流行ってたアニメの影響とか受けてませんか?

絵柄とその作画クオリティは、じゅうぶんにアニメファン受けするものと思われます。筆者個人的にも嫌いなタイプではありません。世界観や舞台、キャラクター設定については単発のゲーム作品とは思えないほど大量に、細部に至るまで準備されており、設定資料だけで本が一冊できそうなほどです(実際出てます)。このあたりもオタク心をくすぐります。さらに声優には浅田葉子(ありす)・荒木香恵(麗奈)・宮村優子(樹莉)らパーティキャラを始めとして、井上喜久子・三石琴乃・丹下桜・氷上恭子・久川綾など、声優に疎い筆者でも名前を見たことのある豪華キャストを起用し、そちら方面のファンにもニーズがありそうです。「ギャルベンチャー」というナゾなジャンルと絵柄、そして声優陣から、「オタク狙いのダメゲー」という印象を持たれてしまいがちなのが本作の不幸なところではありますが、まあ実際それはあるでしょう。ゲーマーにウケるかどうか判断つきかねる場合、少なくともアニメファンが買ってくれるようなものにしておけばなんとかモトは取れます。さらに声優の歌う歌なんかも副産物としてCDにすれば、ビジネスとしてはまあまあイケそうです(実際出てます)。

もしや真のターゲットはゲーマーではなくアニメファンなのではないか、ハナからゲーマーに売る気はないのではないか……と思わせるのが、オープニングを筆頭として要所に挿入されるセルアニメーション。本気で真剣にしっかりとアニメを作っており、尺もそこそこ長いものになっています。当然かなり圧縮された映像にはなっていますが、それでもプレステCD-ROMによくこれだけ詰め込んだな、と筆者は思いました。アニメのみならず、イベントは基本的にフルボイスですから、容量を喰うものが相当入っているんですよ。開発中はディスク2枚組にすることも検討されたようですが、価格を抑えるためどうしても一枚で!ということになったもよう。いやホント、よく詰め込みました。たとえその他の要素をバッサリ切り落としてもアニメとボイスは落とせない!これをアニメファン向けと言わずに何としますか。麗奈家におけるダイブ場面のアニメが毎回使い回しで、テレビアニメで言うところの「バンク」っぽいところまでイカニモな感じ。プロデューサーの黒田氏によると「劇場アニメ一本作るよりも動画枚数がかかっているかも」とのことですが、ボツカットを含めてもそれは言い過ぎだと思います。劇場アニメをバカにしてませんか?

通常のイベント中は画面中央に登場人物のフェイスウインドウが表示され、その中のフェイスグラフィックがパクパクとアニメーションします。こう書くと単なる口パクアニメに思えるかもしれないのですが、この表情パターンやアニメーションの細かさは凄い!本当に多いんですよ。ある意味、普通のアドベントャーやギャルゲーなんか軽ぅ〜く飛び越えちゃってます。止め絵ゲーに慣れた人なら、もの凄く新鮮に感じるかもしれません。こんな表情や動作、ゲーム中に一度しか出てこないんじゃないの?というものまで、しっかりと用意してあるんです。作り込んだセルアニメとのギャップを最小限に抑えるべく、フェイスを細かく切り替えて感情を表現しています。お世辞や皮肉でなく、これは本当によくできているんですよ!PS初期のCD1枚ソフトにこんなものがあったなんて!と正直驚いてしまいました。もっともアニメに興味のない人にはどうでもいい仕様なんですけど……。

GIF動画〜

↑フェイスも会話相手のグラフィックも多彩に動く動く。

残念なのは、一枚絵を繋げてアニメのように見せるイベント。コンピューター彩色されたセルアニメ風の一枚絵を次々に切り替え、そこにセリフとBGMを乗っけて紙芝居のように見せる「擬似アニメ」シーンが随所に挿入されるのですが、画のクオリティは高いもののそれを切り替えるたびにロードが入り、やたらとブツ切りなのが気になります。少ない容量でアニメっぽく見せる手法としては良いアイディアなのですが、もうちょっとローディング自体の研究が必要でしたね。もしくは通常イベントでのフェイスウインドウでも雰囲気はじゅうぶんすぎるほど出ているので、それで貫いちゃってもよかったのかも。でもまあ、これ(一枚絵)自体もご褒美グラフィックなんだと解釈すれば、じゅうぶんに鑑賞に耐えるものではあります。ゲーマーにはテンポがタルくて受け入れられないでしょうけど。このあたりからも、本作がアニメファンに向けられたものだということがわかるでしょう。製作者が意図していなくても、結果的にはそうなってます。たぶん意図してますけどね。そもそも企画当初はキャラクターデザインを漫画家の藤島康介氏(「逮捕しちゃうぞ」「ああっ女神さまっ!」)に依頼するつもりだったようですから。そのへんの名残りがルシアとかに出てそう、っていうか声がモロにベルダンディ!

これだけ材料は揃ってるし、アニメもよくできてるのだから、ヘタにゲームにせずOVA(オリジナルビデオアニメ)かなんかで売り出せばそこそこの作品にはなりそうです(実際出てます)。あ、別にアニメファンの方々をバカにしてるんじゃないですよ。「一般的なゲームに慣れた人にはこのテンポはタルい、あまりゲームしない人なら気にならないかもしれない」→「少なくともゲーマー向けの作品ではない」→「画の雰囲気や声優から、どちらかというとアニメファン向けだよね」ということです。怒られる前に弁解しときます。
イベント中心のアドベンチャー
さて、本作は「ギャルベンチャー」を謳っておりますが、とどのつまりアドベンチャーゲームです。テキスト(ボイス)を読み、必要に応じてマップを移動し、イベントを発生させて会話を進め、そのうちに発生する事件を解決していくのが基本的な流れで、1話完結型のショートストーリー5話から成ります。舞台は21世紀の東京・渋谷。企画担当者によれば2025年頃を想定しているとのことです。インターネットはさらなる進化を見せ、「サイバーランド」という仮想空間になっているというのが柱となる世界観。あらゆる情報(放送・新聞・電話)はサイバーランドを経由して送出され、人々はNAVI(ナビ)と呼ばれる端末を一人一台持ってこれを受け取ります。今で言う携帯電話が、さらに生活に不可欠なものになった感じでしょうか、子供までNAVIを所有しています。サイバーランドにアクセスできないと生活に困ってしまうほどだということです。サイバーランドは情報の重要度に応じてレベル1〜8に区切られており、深い層に近いほど国家レベルの機密情報が格納されています。そしてそれが世界中と繋がっている……と、現実世界でも近い将来ありそうな設定。本当はそんな重要情報、ネットワークに置かない方がいいんですけどね。現在でさえ「Winny」なんかによる情報流出でパニックになっているんですから、学べよ!2025年の人たち。

人々は前述のNAVIを使ってサイバーランドにアクセスするほか、単にテレビや電話を使うこともサイバーランドへのアクセスになるんだそうです。そういった一般人のアクセスはせいぜいレベル1まで。より深い層にアクセスするにはそれなりの高価な機器と高い技術・知識が必要で、ここでありすの天才、麗奈の金持ちという設定が活きてくるわけです(樹莉は?)。現実世界での自己を投影した擬似的な身体でサイバーランドにアクセスすることを、通常のアクセスと区別して「ネットダイブ」と呼びます。制服・私服姿のありすたちが現実世界、パワードスーツのようなものに身を包んだ姿はサイバーランドでのものだと理解してかまわないでしょう。が、ここまで記してきたような説明がゲーム中ではほとんどすっ飛ばされ、ゲーム開始直後はいきなりネットダイブ中のシーンから始まります。ユーザーにしてみれば、彼女たちは何をしているのか?なんのためにネットを彷徨っているのか?サイバーランドってなに?という基本的な疑問を抱いたまま、かまわず進行していくシナリオをただ見つめることしかできません。結局、ありすたちは誰に依頼されるでもなくバグハンターを気取り、遊びの延長で厄介ごとに首を突っ込んでいるだけなのでした。そんで情報省ではナゾの勇者扱いをされているわけですが、本来ならば不正アクセスでしょっぴかれるところです。

基本的なバックストーリーを理解したところで(したのか?)、ゲームシステムを見ていきましょう。ありすたちが通うミスカトニック学園、筆者は最初、
天国!
ミニスカトニックとはまた直球な……」と大いなる誤解をしてしまいましたが、上の画像を見る限りそれもやむを得ないことが理解できますよね?ねっ?!……あ、よく考えたらここ女子校じゃねえや。えー、学校名の由来はクトゥルー神話とかいう豆知識はさておき、そこではさまざまな同級生たちと会話をします。時には事件の伏線となる会話もあるわけで、とにかくどんどん会話を進めていきます。しばしば選択肢が提示されますが、何を選んでも大筋にはまったく影響ありませんので安心して好きなものをお選び下さい(笑)。シナリオの分岐や好感度の変化から派生するイベント、なんてものはありません(一部例外アリ)。アニメとボイスを重視したためそういった要素はバッサリ切り落とされた、というウワサもあります。つまり、アドベンチャーとは言うもののその実態はボタンを押してイベントを進めていくデジタルコミック、という方が適切かもしれません。ゲームに関するカンやスキルはまったく必要なく、普段ゲームをしないような一見のアニメファンでもエンディングに辿り着ける親切設計です。謎解きもないですから。唯一障害となる戦闘は……後述。
マップ画面。
そして、学校でのイベントが終わるとプレイヤー(=ありすたち)は渋谷の街に放り出されます。駅前、神社、公園、ゲーセン、ペットショップ、ファーストフード……などなどいろいろな場所がありますが、各所を訪れていろいろな人々と出会いフラグを立てていきます。とにかくイベント数とそれに伴うボイスが豊富なので、すべて堪能したいという人は最終的なフラグポイントは避けて各所を巡っていきましょう。ゲーセンに行けば、「ドカバキじゃいけん」というミニゲームがプレイできます。ジャンケンで勝ったほうが殴る、負けた方は防御。防御が間に合わず殴られたら負け……というアレです。テレビのバラエティ番組でおなじみの。専用ステージやキャラグラフィックまで用意するというこだわりに、ついつい本筋そっちのけで熱中してしまうこと間違いないかどうかは知りません
せーの、ドカバキぃ、じゃいけ〜ん!
さらに凝っているのが、本作を語る際には必ず触れられるカラオケボックス。なんとパーティメンバー3名の歌が聴けます!しかもフルサイズ。しかも専用グラフィック。歌っているキャラはもちろん聞いてるキャラも動く動く(SDチビキャラだけど)!樹莉にいたってはスポットライトが当たる隠しコマンド(左下・セレクト・スタート・R1・L2・三角・丸を同時押し)まで用意されている!聞いてられるかと中断すれば、「カーン」と鐘が鳴ってガックリ!うはは、なんでこんな本筋と何の関係もないお遊びにここまで凝るかなァ〜?!アニメファン、声優ファンをターゲットにするとこうなるのでしょうか?まあ一度は見てみて下さいよ。本作を購入してカラオケを見ないのは価格の半分をドブに捨ててるようなものです。あ、ゲーマーはスルーしていいですよ。本っ当に本筋と何の関係もありませんから。
飽きたら×ボタンで中断可。
というところで、街を練り歩いて会話を繋げていき、最終的なフラグが立つと舞台はサイバーランドへと移りますが、ここでもマップを移動してイベントを発生させていく点は同じ。唯一異なるのは、サイバーランドでは戦闘が発生するという点です。
唯一の難点か?戦闘システム
3Dポリゴンバトル!
本作では戦闘部分のみ3Dポリゴンで表現されています。これぞひとまとめミックスゲーム!最初は2Dで企画されていた戦闘をプログラマーの発案から3Dに変更、ノウハウのないままノリだけで3Dにしてしまったため、締め切り直前まで樹莉のポリゴンモデルだけがナゼか実機で表示されないというトラブルぐわ!グラムスの社長に発売の延期を申し出ようとした日になんとか表示できたようなのですが、なんだその偶然の産物は。とりあえず己れのスキルに不相応なアイディアだけをポンポンと口に出して現場を混乱に陥れるプログラマーは厄介なだけなので切った方がよさそうですね(暴言だが正論)。

で、このポリゴン戦闘なのですが、見た目はRPGもしくは対戦格闘風。しかし複雑なシステムやルール、難しいコマンドなどは一切ありません。単純明快です。唯一覚えておくべきことは、敵・味方ともに攻撃手段はS、M、Lの3種が用意されており、これらが3すくみになっているということ。SはMに強く、MはLに強く、LはSに強い。つまり、敵がL攻撃を繰り出す時にこちらがM攻撃を出せればヒットとなります。逆ならばこちらが攻撃を喰らいます。両者同種の攻撃ならエラー=おあいこ(ノーダメージ)。これを繰り返し、相手のHPをゼロにすれば勝ちです。って、ん?これって……

じゃんけん!?

メインの戦闘ルールがじゃんけんなんですよ、このゲーム。どんなに世界が壊滅の危機であろうがやることはじゃんけん。では完全に運が支配する戦闘なのかと言えば、そうではありません。何種もいる敵キャラクターにはそれぞれ、使う攻撃手段の頻度が設定されています。即ち、「この敵はS攻撃を出す確率が高いな」ということを見切れば、こちらはL攻撃を選び続けていけばまず勝てます。しかも戦闘は1対1で、特定の状況下を除いてこちらはいつでもメンバーチェンジが可能。HPを削られて負けそうになったら、別の味方と交代すればいいのです。もはや負ける要素はありません。むしろ本作の戦闘が難しくて先に進めなァ〜い、なんて人がもしいるなら、アナタにゲームという娯楽は向いていないので即刻やめた方がいいです(冷酷)。

ところで、前述のように企画当初では戦闘は2Dでした。敵と味方が同一線上で向かい合うというそれは、はっきり言ってミニゲームの「ドカバキじゃいけん」と大差ありません。つか、もとの2Dバトルもほぼ完成しちゃってたんで、ミニゲームとして残したんじゃないだろーか?と邪推しちゃいます。そんなにじゃんけんに思い入れがあるのか開発者たちは?と思うところですが、どうやら「バトルの基本は3すくみだ」と主張していたのはある一人のみだそうで、メインプログラマーの石橋氏は「そんなバトルはつまらない」と代換案まで用意して直訴したらしいのですが、聴く耳を持つ人がいなかったため製品版のような戦闘になったもよう。後に石橋氏は自身のWebサイトで「ユーザーからのアンケートで最も不評だったのが戦闘ですが、私としては"やっぱりな"という感じです」と記しています。

というわけで、例えチームにひとり賢い人がいても、その意見を理解できる別の賢い人がいないことには、ゲームというものはどんどんダメになるんだなあということがよくわかりました。まあやることはただのじゃんけんですから、本作の戦闘に手応えとかやり込み要素とか爽快感を求めてはいけません。あくまで先のイベントを発生させるための障害物……いやいや、まず負けることはないんだから、スイッチのようなものと思って下さい。別の見方をすれば、普段ゲームをあまりやらない人でもエンディングに辿り着けるよう、あえて戦闘を飾りのようなものにした可能性もなくはないでしょう。親切設計ってヤツですねっ(答:違います)。

また、味方が使用するS・M・Lそれぞれの技は、戦闘をこなすことでレベルアップするらしいのですが、戦闘回数が極端に限られた本作において、そんな要素が必要でしょうか?さらにレベルが上がったとして、そのことについてはプレイヤーに告げられません。「そういえばなんか攻撃力上がってね?」という具合に気付く人は気付くという感じで、扱いとしてはオマケ、存在は空気のようなシステムと言えます。もしも本作がランダムエンカウントバリバリで、積極的なレベル上げをしなければラスボスに太刀打ちできないというものならともかく、製品版を見る限りではこの要素まるごとなくてもよかったのではないかと。結局やることはじゃんけんですから、キャラクターの成長という方向にスポットを当てた方が、キャラへの愛着も増したんじゃないでしょうか。
樹莉だって頑張るんだから!
ついでなので、戦闘でのみ見られるポリゴンモデルについても見ておきましょう。ムービーや一枚絵と比べると当然劣ってしまいますが、キャラクターの表現としてはまあまあ成功していますし、発売時期を考慮すればじゅうぶん及第点と言える出来になっています。ひとつだけ気になるのは、ポリゴンキャラの移動。敵を吹っ飛ばしてそれを追いかける際、ブザマにピョンピョンと飛び跳ねて間合いを詰める少女たち……走れよ!
プロローグ
以上で「ありす イン サイバーランド」がどんなゲームなのか、だいたい理解していただけたと思います。ビジュアルやオマケ要素には異常なほどに力を入れているけど、ゲーム本筋はイマイチ……という理解でとりあえず問題ないと思います。さて、本作は全5話から構成されるアドベンチャーゲームでして、ここからはそれぞれの章を追いながらもう少し作品を掘り下げていきたいと思いますがよろしいでしょうか?よろしいとの声が聞こえてきましたので進めます。プレステにCD-ROMをセットして電源投入(←ここはやはり「ダイブイン」と読みたいところ)!

その前にちょっと予備知識を。上でも記しましたが、イベントではしばしば選択肢が提示されるものの、基本的にシナリオは一本道で、前述の通り選択肢によるストーリー分岐やキャラクターたちの相関関係に何らかの変化が訪れるようなことはありません。選択肢は気軽に選んでかまいません。ただし細かいイベントの違いは生じてきますので、しゃぶり尽くすのであれば選択肢の前でセーブをかけておくといいでしょう。本作の嬉しいところはほぼいつでもセーブが可能なことです。そのことから、なるべくマメなセーブを心掛けると漏れを回避できます。なお、本作ではメモリーカード1ブロックを使用し、その中に5つのセーブデータを記録できます。では2ブロック使えば10個記録できるかと言えばさにあらず、1枚のメモリーカードに作れる「ありす イン サイバーランド」のデータは1ブロックだけになります。6箇所以上のセーブをしたい場合は、メモリーカードが複数必要になります。
ウリのひとつである、よくできたセルアニメ。
ではいよいよ起動!まずはムービーでサイバーランドの概要をちょろっと説明した後、きました!メイン声優が歌うオリジナル主題歌に乗せてセルアニメ!まさにOVAな作りです。オープニングから早くもアニメファン、声優ファンのハートをガッチリキャッチ!その後のタイトル画面で指示に従いスタートボタンを押すと、「はじめから」「つづきから」「コンフィグ」と3つの項目が出現。当然新規にプレイする際には「はじめから」です。「コンフィグ」は適当に覗いておけばいいと思います。当然のことながら「ボイス」をOFFにしちゃいけませんぜ、ダンナ。そんなことしたら本作の面白さは半減以下に!まあ声ウゼー、って人はOFFっちゃってもかまいませんが、それほどロード重くないし、イベント中でもボイスはスキップできるんで。「サウンドテスト」ではBGMやSE(効果音)が聞けるほか、あるコマンド(←→↓←↑→×△)を入力すればイベントボイスも聞けるようになります。ま、それはゲームクリア後でいいでしょ。
シンプルなタイトル画面。
さて、「はじめから」で新規にスタートすると、いきなりセルアニメムービーが始まります。もうこれだけでプレステのCD-ROM容量いっぱいなんじゃないの?というぐらいにけっこうな長尺なんですが、ほんとよく詰め込みましたね。作画クオリティ、画質もまずまずです。舞台は情報省・中央センター。どうやらサイバーランドにウイルスが発生してしまっているらしく、ちょっとした緊急事態。開始早々、「ギャルベンチャー」とは似つかわしくない緊迫した展開です。が、むしろ緊迫しているのは情報省が某エヴァのネルフにそっくりとか、職員の制服までネルフのにそっくりとかそっちの方。まあイメージ的にはわからなくもないですがもっと似せない努力は必要だったかな。ウイルス侵食ってのもエヴァにありましたよね。
特務機関ネルフのみなさん、ではない。
すると、ウイルスに接近するものあり。それこそがパーティメンバーであるありす、麗奈、樹莉たちダイバーなのでした。「あの娘たちはどこから来たんだ、どうしてレベル6までダイビングできるんだ」……どうやらありすたちの面は情報省には割れていないようです。たいした機関じゃねーな、情報省。というよりありすたちが優れすぎなのか?中学生だというのに(笑)。すると、突然3Dポリゴンの戦闘画面に。ええっちょっと待てよ取説どこだ取説……なんて慌てなくても大丈夫です。ちょっとビックリしてしまいますが、実はここで戦うことになる敵はこちらに一切攻撃をしてきません。とにかく攻撃すればOKです。まあプロローグだからわかるものの、ちょっとヌルすぎる気も。良い機会なので、戦闘のルールと手触りはここで覚えちゃいましょう。

初めてのバトルが終わったら再度セルアニメムービー。実はここで伏線がチラッと張られていたりしますが、この伏線、結局最終的には放ったらかしというかほとんど意味不明なので、気にしなくてもいいかもしれません。あとはこのままアニメを見てれば導入は終了。ここからいよいよゲームっぽくなってきます。準備OK?

チラリ

↑伏線と思われる、意味ありげなバニーがチラッと出現。
PART.1 ジャバウォッキー
元ネタである「不思議の国のアリス」っぽさを出そうとしている副題が付けられた第一話。まず、ありすたちの登校シーンで説明的なキャラクター紹介が行われます。止め絵切り替えにセリフを乗せて流れていくイベントですが、この独特のテンポ感(の悪さ)とうすら寒さは終盤まで多用されますので、早いうちに慣れちゃって下さい。表示されるグラフィックは原画を取り込んでドット化したものですが、クオリティはそこそこ高いです。絵本のつもりで読み進めると吉。

教室に入ると(と言っても自動的にですが)、クラスメイトたちと会話イベント。ここで初めてフェイスウインドウが現れます。背景の会話相手のグラフィックパターンも多いですが、ウインドウの中のフェイスグラフィックもコロコロと表情を変えて飽きさせません。何度も言うようですが、ほんとコレよく作られてますよ。グラフィッカーグッジョブ。さて、ここで初めての選択肢が現れますが、ストーリーには影響しないのでどれでもOK。というか全編に渡って選択肢で悩む必要はないです。唯一大きく影響する選択肢があるのですが、それはその時になったら御説明いたします。とにかくここではひたすら会話を送って話を進めて下さい。途中、沙貴という娘のネコ型シムペットが出てきますが、これがネタフリです。これによって、ペットが欲しくなった樹莉が「放課後ペット屋に行こうよ」と持ちかけてきます。プレイヤーが特別な手間をかける必要はなく、自然とそうなります。問題なのはそこではなく、

「じゅり」ではなく「ぢゅり」。

「樹莉」の表記を「じゅり」にするか「ぢゅり」にするかで企画チーフとメインプログラマーが仕事を止めて半日議論したというのですから、あんたら男だよ、本物だよ。このエピソードだけで、本作をどのような人たちが作り上げたのか手に取るようにわかりそうで恐いですね。もちろん良い意味で、ですよ。さて、放課後のサッカーイベントはサクサクッと終わらせて、とっととマップ画面に出ましょう。麗奈も「飽きちゃった」とか身もフタもないこと言ってますし、プレイヤーが飽きていないことを祈るほかありません。サッカー部イベントは舞からの誘いを断ることでスルーすることもできますが、その後の会話イベントがチンプンカンプンになるかも。特に生徒会長絡みのイベントが。まあ一通りのイベントは見た方がいいっスよ。せっかくプレイし始めたんですから。

マップに出たら、樹莉が言う通りペット屋さんへ直行するのもいいですが、寄り道してももちろんOK。というか寄り道こそがこのゲームの本筋だったりしますから。星印のあるポイントではイベントが発生します。それはクラスメイトその他との出会いだったり、3人組の他愛無い会話だったり……。カラオケやゲーセンにもぜひ立ち寄ってみて下さい。グラフィック(キャラクター)萌えの人はブティックに何度も足を運ぶこと。サービス画像が見られますゾ。最終的なフラグはファーストフードに行った後、2度目のペット屋に行くと強制移動になるので、寄り道が足りない人は済ませてからペット屋へ。そこで行方不明となったペットの捜索依頼が。謝礼は5万円!賞金いただこう!と、なぜかお金持ちの麗奈が言い出しっぺとなって3人娘はペット探しに乗り出します。ここは樹莉が主導となった方が説得力が増すのでは?

さて!ついに(プレイヤー的には)初のダイブです!麗奈の家に集まった3人はなんかイカニモな特殊スーツに一瞬で着替え……ません。なんかゴソゴソと地味に着替える様子をセルアニメで!残念ながらヒーローもののような「発進!」みたいなノリじゃないんですねー。で、着替えたら呼び出すのが、ありすたちのダイブシステムを司るプログラムを擬人化した……ああややこしい。……出た!ベルダンディじゃなくって、ルシアです。これがまた何の説明もなくて唐突なんだよなー。ルシアが作られた経緯、ありすとルシアの出会いはOVAで!ってことなんでしょうか。どっちが原作かわかりゃしない(答:ゲーム)。本作をプレイしてOVAまで見てくれるユーザーがどれだけいるかなァ。

ルシアとの会話の後いよいよダイブ!タイムリミットは45分とか言ってますが、気にしなくていいです。設定上だけのことです。ゲームプレイ上での実時間は関係ありません。ダイブシーンは再びセルアニメで!ん、中学生が液体に浸されるってのは某エヴァからインスパイアされたものでしょうか?そう思うとありすたちが着てるのもプラグスーツに見えてきてしまう……。

やってきましたサイバーランド。マップ移動については現実世界(渋谷)と同じで、四角のあるポイントがイベント発生箇所になります。基本的にこれを辿って進みましょう。ショートカットできるものもありますが、特にペナルティはありません。サクサク進みたい人は最短ルートを選べばよし。で、現実世界との最大の違いはバトルの発生です。プロローグでのバトルは何もしてこない相手でしたが、ここで出現する敵はしっかりと攻撃してきます。堅実にいくのであれば最初は防御に徹し、相手が使ってくる技の頻度を見ます。傾向さえつかめば、あとはこちらがそれに対抗できる技を出していくだけ。実にお手軽ですねー。途中から麗奈と樹莉の二人でマップを進むことになりますが、ありすから「アーカイバ」を使うよう指示される場面があります。その際、麗奈が使うか樹莉が使うかでプチ分岐が発生。具体的には麗奈ならアッサリアーカイヴ。樹莉を選ぶと戦闘が発生。お好みの方をお選び下さい。さっさと進めたければ麗奈、戦闘経験を積むなら樹莉です。途中のマップ分岐は、右に進むと戦闘。左ならボスへ直行となります。いちおうセーブを忘れずに。

止め絵&セルアニメの後、ボス・ジャバウォッキーと戦闘。ボスとは言っても基本的にはHPが高いだけで戦い方はザコと同じです。長期戦になるかもしれませんが、まず負けないでしょう。念のため、ここはシナリオの都合で樹莉だけが戦うことになります。つまりメンバーチェンジができないので、樹莉の敗北=ゲームオーバーとなるので注意して下さい。ボスさえ倒せば第一話はクリアしたも同然、現実世界に戻って……あれ。セルアニメの後、画面真っ暗。いつまでたっても復帰しません。おいおい、バグですかい?まあ納期直前まで樹莉のポリゴンモデルが出なかったようなプログラムですから、何かバグがあっても不思議はないのですが……。もう一度、ボス戦直前のセーブデータでやり直します。ダメです。同じところで固まりますね。しかし筆者もゲーム歴短くないですから、ここでピンときました。プレステの一部のソフトは、プレステ2で正常に動作しないことがあるんです。そう、筆者はPS2でプレイしてたんですね。で、SCEのサイト行って調べてみたら、ありましたよ。「ありすインサイバーランド(SLPS-00636) 最初のステージでボス戦が終了し、ムービーが流れた後に進行が停止する場合がある。(その他にも、同様の現象が起きる所があります)」……どんなプログラム組んであるんだか。

しかたないので押入れからPS Oneを引っ張り出し、以後はこれでプレイすることにしました。今度は無事フリーズポイントを乗り越え、現実世界に帰ることができました。ペットを飼い主に引き渡してあげます。とは言ってもこの一連はイベントでオート進行。プレイヤーは見てるだけです。ここは素直に「ちびうさ」丸出しのまりあと対照的な麗奈という、荒木香恵嬢の華麗な一人二役を堪能しましょう(ぜんぜん素直じゃない見かたですが)。
役の幅が広い荒木嬢。
PART.2 マッドハッカーのお茶会
まあ、はしたない。
さてさてノッてきましたヨ、天才少女のイメージだいなしの昼食シーンから第二話は始まります。突然現れるオダンゴ頭・今井由香。こんな名前でありながら同名の声優が声を充ててないというややこしいキャラでしかも名前の由来はまさにその声優でありスタッフに熱烈なイマイファンがいたとかはどうでもよく、まあこの由香ちゃんがありすにサインを求めてきます。実はこんななんでもなさげなイベントが本作最大の分岐ポイントになっています。ここでサインをOKしてあげると、第二話終了後にエクストラパートが発生するのです(断ると当然ナシ)。本作において唯一、選択の結果がその後に大きな影響を及ぼすイベントですので、ぜひOKしてあげましょう。1分1秒でも早くこのゲームから解放されたい人は断れば?

その頃、学校近辺では生徒達のNAVIに異常が多発。さらに教室の授業用コンピュータにまで異変が。果ては駅前の巨大スクリーンにも……それぞれに共通した、気味悪く笑う「チェシャ猫」のような顔。この一連のトラブルの根源を突き止めるため、ありすたちは再びサイバーランドへダイブします。またムリヤリ「不思議の国のアリス」を引っ張り出してきたな。マップ画面のフラグコースは「駅前で舞から"公園の老人"の話を聞く」→「公園で老人に会う」→「駅前で生徒会長たちと会う」。この後に強制移動でサイバーランドへと行くことになるので、寄り道はお早めに。そうそう、ブティックで見られるサービス画像は章が進むと新しくなるので見逃さないように。

サイバーランドに着くと、ヘンな女王が通せんぼ。なんとか通してもらえないかと懇願するありすですが、

くだい。

「入れてくだい」ってなに?

天才らしからぬトンデモ発言。ありすの名誉のために記しておくと、ボイスはきちんと「ください」と言ってます。そんなどーでもいいことはおいといて、女王が出題してくる三択はどれでもOK。結果的にどれでも中に入れます。つまりこの選択自体、意味ありげで実はナシ。悩むだけ損です、とっとと先に進みましょう。とことんライトユーザーに親切な作りやね。コアゲーマーはたまらんだろなぁ。さらに、内部マップでは今回ザコ戦が一切発生しません。そのかわりムフフなサービスカットが満載なので、キャラ萌えのヒトはビデオのご用意を!トイレ行くならCMの間にね!てなこと言って謹慎くらったタレントもいましたが、ここではもちろん関係ないです、ハイ。
誰にしようかな〜?
お色気タイムの後は「オヤヂ猫」とのバトルが控えており、誰が戦うか三択が提示されます。実はここの三択は意味があり、実際に戦うことになるのはある一人だけです。他の二人を選ぶと、バトルなしでイベントのみでオヤヂ猫を撃退できちゃいます。不運にもハズレの一人を選んじゃった人は頑張ってね。あ、戦闘したい人もいると思うので書いておきますが、髪が緑色でお金持ちなんだけどガサツで男勝りな娘を選べば戦えます。というところでゲージがなくなりエキジット。

現実世界に戻り、既に犯人の目星を付けているありすはその人のところへ。ここでまたまた三択を迫られます。最も無難でキレイにまとまるものを選べばこのまま第二話は解決。ハズレの2つを選ぶと、再度オヤヂ猫とのバトルに。これに勝てばやはり第二話が終了です。戦いたい人はわざとハズレを答えること。逆に、選択肢の選び方によっては第二話って一切バトルなしで進められるんです。だったら最初からこのゲーム、戦闘そのものがやっぱり不要だったんでわ……。
EXTRA PART 下級生
どこぞのギャルゲーみたいなタイトルの章ですが、第二話で今井由香から頼まれたサインに応じてあげた場合にのみ出現するエクストラパート。もしもサインを断っていたら第三話へ直結となります。残念でした。さて、エクストラパートが出現した皆さんはおめでとうございます。あとは煮るなり焼くなり、由香ちゃんを思う存分イビろうが溺愛しようが自由です。選択肢によって関係にヒビが入ったり、結末が変化することはありません。途中のルート変化は一度だけ発生しますが、オチはどうやっても同じになります(全パターン確かめました←ヒマやなー、俺)。

最初の問いに「変だ」と答えようが、告白に対して断ろうが、遊園地でデートすることになります。そこで「サンドイッチ嫌い」と答えても何の問題もないです。唯一のルート分岐は観覧車に乗る時。「観覧車に乗りましょう」の誘いを受ければそのまま観覧車に、断るとお化け屋敷へ。そして、どちらのルートを通ってもオチは

いや〜ん。

こうなります。絶対。モザイク越しに何が行われているのかはご自身の目で確かめて下さい(注意:このゲームは18禁ではありませんので過度の期待は禁物です)。ちなみに、プログラマーの石橋氏によると、レズもしくはホモの要素を組み込むことは企画初期段階からの至上命題だったそうな。うえぇ、レズはともかくホモってのはいったい誰と誰が……?
PART.3 ヴィーナス・オーバードライヴ
とりあえず開始からしばらくイベントを淡々と進めていけばOKです。渋谷のマップではヘアサロンの舞、ファーストフードの沙貴に会ってから駅に行くと強制移動でサイバーランドへ向かうことになるので、他にいろいろ寄り道したい人はそれらを後回しに。人と会うことで別の場所に新たな人が出現することもあるので、星印の付いている場所へは何度も足を運ぶと漏れがなくていいでしょう。コンプリートしたところで何もありませんが

しかし、何かなあ。急にありすが探偵に目覚めたような感じで、なんでオマエはそう何にでも首を突っ込むの?と思ってしまうんですよねー、そろそろ。別に誰かから依頼されてるわけでもなし、セラというキッカケはあるにしても、それが「絵画泥棒をつかまえるわよ!」という動機になるとは思えません。ありすたちは以前から遊びも兼ねてそういうダイブをしていたのかもしれませんが、ゲームでは「ゲーム以前」があまり語られないので、この頃になるとプレイヤーとありすの心理に埋められない溝が出来始めてしまうんですよ。もうちょっとうまく「ありすたちが戦う理由」を示してほしかったところです。

サイバーランドでは最低2回、ガードシステム(シュトラウス)との戦闘が発生します。そろそろザコ敵がかなり強くなってくる頃ですが、必要最低限戦闘をこなしているプレイヤーキャラであれば問題ありません。まして相手は常に1体であるのに対してこちらはメンバーチェンジできますから、まず負けないでしょう。とりあえずここではマップ最奥まで辿り着けばイベントが発生します。サイバーランドでリアルに生死を操る人々との出会いに、戸惑いと怒りを隠せないありす。「サイバーランドは遊び場じゃないのよ」とミサトさん……じゃなかった、セラに諭され、「遊び場だなんて思ってない、でも、殺し合いだなんて絶対いやだ」と憤ります。ここでもちょっとシナリオの弱さが露呈してるような気がしますね。じゃあ、ありすたちが今までやってきたことは遊びじゃなければ何だったのか?という疑問です。中学生が慈善事業じゃあるまいし、彼女たちのダイブを現在でのネットサーフィンに置き換えるなら、それは間違いなく遊びのレベルなわけで。「そもそも何故、彼女たちは"潜る"のか」という動機が明確でないんですね。そこにいきなりこんな葛藤劇を持ってこられてもついていけません。
初めて出会う、敵としての人間。
ウイルスではない、生身の人間相手に危害を加えるわけにもいかず、手も足も出せずにその目の前で絵を盗まれてしまうありすたち。そもそも彼女たちにとって美術品が盗まれることによって生じる実害なんてないのですが、よっぽど悔しかったのでしょう、天才ありす様にしてみれば。ということで現実世界で作戦会議。妙案を思いついたありすは、罠を仕掛けて再度キャットと対峙します。つか、殺し合いはNGだけどキャットをハメるためならニュースデータのハッキングはOKなんだね。でもそれって犯罪じゃねーのか?

今度はキャットと戦闘になります。敵のHPは3800とかなりのツワモノ。長期戦になるかもしれません。ですがL攻撃主体で粘っていけば、特にメンバーチェンジせずとも勝てると思います。もちろん危なくなったら入れ換えましょう。キャットを倒せばあとはイベントのみで進行し、第三話が終了します。
PART.4 サイバーナキスト
だんだん観念的になってきたストーリーですが、ここでスーパーハッカーが登場。その名はトルケマダ。おーい、もうちっとマシなハンドルネームにすればいいのに、スーパーハッカーさんよぅ。なんか語源あるんでしょうけど、どことなく「しっとるけ」の顔が浮かんでくる私は古い世代ですかそうですか。緊迫の度合いを増すお話はネルフ……もとい情報省メインに進んでいきます。ブツ切れの止め絵アニメというか紙芝居が、緊迫とは程遠いマッタリ感を生み出しています。掛け合いのセリフの間隔が5秒近くも開いていては、もはや会話として成立していません。みんな独り言を好き勝手に言ってるだけです。もひとつ言うなら、つぶやき系のセリフが多いので、止め絵部分にも字幕がほしかったですなあ。これってセリフが聞き取れないのは致命的ですよ。

ということで、日本経済の破滅なんてデカいスケールの話が唐突に始まり、ありすたちの生活からますます遠いところで事件は起こっているわけですが、ありす自身も誰かに監視されているようで、平凡な中学生としては生きられそうにありません。それでもありすは、

カポーン

のんきに入浴中っていうかサービス中

しかし麗奈からの連絡を受け、我が身に降りかかる異変を察知したありすはサイバーランドレベル5へとダイブ。付き合わされる麗奈と樹莉は文句ひとつ言わず、美しい友情に涙が頬を伝います。考えて見りゃネットダイブってかなり危険な行為ですよね。タイムリミットはあるし、サイバーランド内で何かがあればリアルワールドの自分も死んじゃうし。しかもレベル5ってのはそーとー危険なわけですよ。筆者はそんなところに出入りするアブない人とは距離を置いてお付き合いしたいですね。

サイバーランドではパラサイトボムとの戦闘があります。基本的にはこちらはL攻撃で押していけばまず負けないと思われます。その後トルケマダとの戦いも発生しますが、はっきり言って絶対に勝てません。無駄な抵抗はせずにとっとと負けちゃいましょう。つまりイベント戦闘ですね。負ければそこからまた話が進みますのでご安心を。さ、樹莉を人質に獲ってありすのダイブシステム(ルシア)との交換を要求するトルケマダ。やっぱありすの親父が厄介なもん残していったのが原因じゃん!諸悪の根源という意味ではそれはトルケマダなんかではなく、ありすの父親なんじゃないの?という気がしてきました。だって、

ぐはあッ!

樹莉ごとき小娘のパンチ一撃でヤられるヤツが諸悪の根源であるハズがありません。あんれぇ〜、なんでさっきは勝てなかったのかなあ、こんな軟弱ヤロウ相手に。というところで、サイバーランドっていったい何なの?!という強烈なヒキで第四話を締め括ります。なお、第三話まで御馴染みだった渋谷のマップは四話以降は登場しません。あの頃とはゲームの雰囲気がまったく違ってきているんですね。もう、明るく楽しく渋谷の街を練り歩くようなゲームではなくなっている。あとはラストまでシリアス路線で突き進むのみです……でもないか
PART.5 ゾーン
サイバーランドとは何なのか?レベル8のさらなる下層には何があるのか?疑問を解消するため、ありすはルシアを詰問するも、「"無い所"とはあってはならないもの」「WWWW(フォーダブリュー)」などとわけのわからない言葉を残して消えるルシアに、ありすどころかユーザーも置いてけぼり。広げたフロシキを畳まなければならない頃なのに、さらに新たなナゾを提示してどーしますか。そんなだからありすもいつになく感情的、っていうか人格変わってませんか?頭の良い人がキレるのってきっとこういう時なんだろうな。「私は頭いいのよ、その私にわからない話をしないでよ!」みたいな。
萌え狙いっスね。
説明不足はさらに続きます。ありすが道を歩いていると、リアルワールドにいるハズのない「ウサギさん」を発見。「なんで?なんでリアルワールドにウサギさんが?」と思わず追いかけるありすでしたが、ユーザーにしてみれば「えっ、てゆーかサイバーランドにはいるものなの?」と思うはずです。あ、そういえばプロローグでチラッと姿を見せてましたっけねえ。でも、ユーザーに対してはそれだけですよ。ウサギがサイバーランドにいる意味、ウサギが象徴するモノ、すべてナゾです。「お前は"不思議の国のアリス"を知らんのか」と突っ込まれそうですが、そんな予備知識を求めるようじゃいかんのですよ、ゲームってのは。制作者の「これぐらいわかるだろ」という思い込みって、傲慢でしかないんですよ。そして、たいていそれはユーザーに伝わらず作品がコケるんです。
ここまでやれば立派。
おっと、今度は場面がゼーレに。いや、ゼーレじゃないですな、そうとしか見えないとしても。まあ、サイバーランドで起こっている未曾有の危機的状況について世界各国から糾弾される日本、の図。世界中のネットワークから切り離されれば、破産するのは間違いないんだそうです。いきなりオハナシが日本滅亡になっているんですが、そんな国家レベルの危機に「あたし、やってみる!」と名乗りを挙げる現役女子中学生・水無月ありすサン。どんだけスーパー中学生なんですか。麗奈は「そんな義理はないと思うんだけどさあ……しようがないよね」って何が?なんかすべて雰囲気で片付けられちゃってる気がします。動機付けが弱いのでプレイヤーが感情移入できず、どれほど感動的な演出をして盛り上げようともイマイチ乗れないんですよね。

そしてサイバーランドレベル8へと再びやって来たアリス3の面々。その眼前に待ち受ける、おびただしい数の敵・敵・敵!さすが最終ステージ、怒涛の展開です!まずは黄金の甲冑をまとったような姿のルドルフと戦闘。見た目からして強そうでHPも3200ありますが、L攻撃で押していけばメンバーチェンジすることもなく勝てます。続けて多足砲台型のキャンサーとの戦闘ですが、敵が使う攻撃の割合が平均的で、S・M・Lをまんべんなく繰り出してきます。L攻撃一本だとだいぶ反撃を喰らうでしょう。しかしその他の攻撃でチクチクと突いていてはラチがあかないので、L攻撃でのダメージに期待しつつ反撃はあえて受け、メンバーチェンジを前提にして戦うのが無難かつ手っ取り早いと思われます。筆者の場合は一人で余裕勝ちできましたが、運もありますしね。

さてさて、イベントシーンではあれだけいた敵ども。次に戦うのはどいつだ?と思ったらセルアニメへ。樹莉が巨神兵と化して一掃しやがりました。さらにルシアとの感動の物語が繰り広げられますが、そもそもありすとルシアの関係が描写されていないため、思い入れることができずに冷ややかな目で見てしまいます。この二人の関係はしっかり描いておくべきだったなあ。

第五話は四話同様、移動も分岐もない一本道。イベント主導で終局までまっしぐら、その合間に戦闘をさせられる感じです。終局に近付くにつれ、突然子供時代のありすや偽父親が現れ、ありすが「やめてよぅっ!」と絶叫するなどますます観念的な演出になっていきます。ありす役を宮村優子嬢にしなかったのは正解でした、もしもそうなっていたらモロにアスカじゃないですか。というか、ありすが父親とずっと会ってないなんてのもゲーム中では初耳。演出やセリフに説得力がありません。あまりに前フリ(伏線)を割愛しすぎてます。なのに別の伏線は張りっ放しで放置。やたらと難解なものを作りたがるのは一部のクリエイターの悪いクセですが、本作については狙った難解さではなく、いろいろやりたかったけどできなかったために生じた単なる「わかりにくさ」でしかありません。ゾーンの正体がありすの異母妹「アリス」だなんて裏設定、わかるわけねーべ。

そしてとうとうラスボス・ゾーンとの戦闘。最初の戦闘では相手は何もせず、ひたすらM攻撃を当てていくだけで楽勝です。なぜここでゾーンが何も手出ししてこないのかは不明ですが……。そして、ラスボスらしくゾーンは次の形態へと姿を変化させます。この変身シーンはセルアニメではなく3DCGムービー!最後だから3Dのムービーやろうよ、ということでしょうか。さりげないところで大作ソフトへの対抗意識を燃やしています。で、最終戦闘。敵はL攻撃の比率が高いので、こちらはさきほど同様M中心で。しばしば敵からSの反撃を喰らいますが、攻撃力はそれほど高くないので大丈夫でしょう。ただし、敵のHPが高く、メンバーチェンジのできないタイマン勝負なので長期戦には注意(注意のしようもないですが)。なお筆者の場合、M攻撃だけ繰り出すことで、3度のあいこはあったもののノーダメージでパーフェクト勝ちでした。これじゃあバトルがつまらないと言われるのも無理ないですね……。

あとはセルアニメと止め絵でエンディングに直行。ルシアとの感動のイベントも「それ以前」の描写が足りていないため不発に終わっています……。最後にウサギさんもチラッと登場。で、コイツ何だったの?
おつかれさまでした。
サウンドはどうよ?
サウンドトラック ←サントラCDジャケット

一応サントラCDも発売されている本作のBGM。基本的には打ち込みを中心とした軽めの音楽が多いのですが、かなりギターが盛り込まれており、打ち込みオンリーが多いB級ゲームサウンドの中にあってまずまずの仕上がりとなっています。多彩なイベントシーンに対応するため楽曲数も相当の数が用意されていますが、テーマソングのインストアレンジなどを散りばめるなどで統一感を出す工夫がなされている点は好印象。ただ、サウンドプログラムに起因するのかどうかは不明ですが、その鳴らし方にやや疑問があります。演出サイドの問題もあると思いますが、あまりに細かすぎるイベントの展開にさらに細かく曲を充てているため、特に一枚絵イベントでのテンポ感を著しく損なっている点。というかこれはもうシステムの問題ですけどね。もう一点は、ちょっとした短いME(ギターやハープなどのアクセント)を挿入する際にいちいち楽曲を止めるという処理。MEが鳴り終わるとまた同じ曲が頭から流れ始めるんですが、曲は流しっぱなしにしてその上にMEを被せた方がスムーズでしたね。これもイベントのテンポを激しく損なっています。ふたつの音楽は同時に鳴らせなかったって?いやいや、MEは効果音扱いでいいじゃないですか。

主役級の声優たちによる主題歌はこのテの作品ではお約束で、良い効果を生み出していると思います。こういうゲームで歌唱力うんぬんを言っても意味がないのですが、歌まで歌わされる声優さんって大変な仕事だなあ、と思いました。筆者個人的には声優さんが出しているCDとかにお金を払う趣味はないのですが、アニメやゲーム作品に添ったうえでのテーマソングは副産物としてアリですね。みやむーのわざとヘタに歌ってるとは思えないヨレかたも、樹莉というキャラにこのうえなくハマっていてグーなのでは。

ボイスについては既に述べている通りフルボイスで、しかもバリエーションがめちゃくちゃ多く、よくぞまあここまでCD-ROMに詰め込んだな、と。イベントをフルボイスにすることでセルアニメとの整合性もとれ、キャラクターの印象付け、区別化という点に貢献していると言えます。声優には詳しくない筆者でも豪華声優陣であることは世間の評価からもわかりますし、実際それがウリになっていることも理解していますが、それって声優に興味のない人にとっては何の意味も持たない「ウリ」になってしまうんですよねえ……。それをさっ引いた時、本作の「ウリ」として何が残るだろう、と他人事ながら心配になります。

あとはゲーム中でのバランスですね。BGMは一度レベルを決めたらほとんど音量をいじらず垂れ流しになっているので、つぶやくようなセリフ、ささやくようなセリフがくると完全にマスキングされてしまっているんです。そこはもっと緻密なバランス調整をしてほしかったところ。特に一枚絵イベントでは字幕がないため、セリフが聞こえないとアウトなんですよ。それをなんとかしようと思ったのか、無理にセリフのレベルを稼いでいる傾向があり、結果としてボイスの出音が多くの場合歪んでいるんです。収録や変換の際に起こったことかもしれませんが、ビリビリと歪んだ人声って聴いていて不快なんですよね。
メディアミックス展開
ゲームを起点として様々な展開が考えられていた「ありす イン サイバーランド」。プレイステーション版と同時に発売されたWindows95版「闇夜の魔術師」では、ありすたちも「伝説のネットダイヴァー」として登場。さらにその「アリス3」に憧れる、コンピューター好きな少年・結城貴志を主人公としてPS版とはまったく異なるストーリーが展開されます。PS版をプレイした後に遊ぶとベターですね。ただ、今ほどパソコンが普及していなかった96年当時、その両方をプレイした人がどれだけいたのかはわかりません。

メディアミックスという意味では音楽CDもそうでしょう。ゲームの発売とほぼ同時に主題歌のCDシングルとサントラCDが発売されています。さらにラジオで放送された「浅田葉子のグラムスレディオナイト」内で「ありす〜」のラジオドラマを展開、それもCD化されて全3枚リリースされています(発売:weaジャパン)。3枚揃えるもよし、好きなキャラのみゲットするもよし、です。

OVAパッケージ 1997年1月にはオリジナルビデオアニメがVHSとLD(!)でリリース。ありすとルシアの出会いなど、PS版ゲームで最もストレスになった点が(ちょこっと)描かれています。OVAを見てからゲームをプレイすると、また違った楽しみ方ができるかも。このOVAはシリーズ化が予定されており予告も入っているのですが、翌2月に発売がアナウンスされていた第二弾が何故か発売中止。97年7月にはグラムスが倒産し、計画されていたであろうゲームの続編も立ち消えとなってしまいました。まあ予告を見る限り、2話で早くも作画が破綻しているようなので、1話の時点で既に厳しい状況だったのかも。

しかし……パッケージにゲーム版と同じイラストを使うというのはいかがなもんでしょう。そうすることで「あ、あのゲームがアニメになったんだぁ」と人目を惹く効果はあるでしょうが、新規OVA作品ですから新たに描き下ろした方が良かったのでは。これを見るお客さんってのはほとんどがPS版なりPC版をプレイ済みでしょうし。

OVA版にはゲーム版のオリジナルスタッフ・キャストがそのまま参加。オープニングとエンディング主題歌もゲームと同じ曲が使われていますし、ゲームで流れたBGMをアレンジした楽曲も多数使用されています。ゲームをプレイした人にはおなじみの曲をあちこちで聴くことができるわけです。

シナリオの小中氏によれば、ゲームのシリーズ化は第一作の発売前から企画されていたようです。第二作は「ありす イン サイバーランド2 第七のプロトコル」。小中氏のHPでシナリオが公開されていますので、興味ある方は読んでみて下さい(これもメディアミックスか?)。結局ゲームの続編は立ち消えになりましたが、小中氏は後に担当するアニメーション作品「serial experiments lain」においてありす、麗奈、樹莉というサブキャラクターを登場させたり、「第七のプロトコル」という副題も使用。さらに「lain」でのありすの声を浅田葉子さんに演じてもらうなど、「ありすワールド」への思い入れは制作スタッフ中いちばんではないでしょうか。

メディアミックスという意味ではグッズとしてアニメショップなどで販売されていたテレホンカードや下敷きがあり、またスパイシー風味のコーンスナックも発売されていたことを付け加えておきます。「ありす〜」にかなり力を入れていたことがわかりますね。あとは本ですか。攻略本が数種と、設定資料やスタッフ・キャストインタビューなどを満載したメモリアルブックがリリースされています。後者は作品のファンなら必携です。
総評してみます
ジャンルにはまらないものを作ろうという目論みこそが、このゲームを破綻させてしまったんだなという印象。非常に残念だと言わざるを得ません。たとえばこの作品から、最も叩かれる要素である戦闘をなくしていたら……アドベンチャーとしてはそこそこ評価される作品になっていたかもしれません。世界観やキャラクター設計にはウケる下地があるので、素直にアドベンチャーとして、もしくは最初からアニメーション作品にしておけば「ありす」のその後はまったく違うものになったでしょう。そういう意味では本作はゲームではなく、インタラクティブなデジタルコミックなんだと思えば意外によくできた作品なのかもしれません。

また、価格を抑えるためになんとかCD-ROM1枚に収めていますが、それでも5800円なわけです。その泣く泣くカットした部分にこそ重要なものがあったような気がします。本作に常に付きまとう「説明不足な感じ」を補うものは、まさにその斬り捨てたところにあったのでは?であれば、6800円になっても2枚組にした方が結果は良かったのではないでしょうか。え?7800円になっちゃう?まさか、損益分岐点はまったく異なるかもしれないですけど、「FFVII」でさえ3枚組で6800円なんですよ?

何にしてもゲームそのものや関連商品が思ったより売れなかったためかグラムスは倒産、続編も当然立ち消えになりました。作品によってはメーカーを移って続編をリリースするケースもありますが、それは「売れるゲーム」のみ。売れなかったゲームの版権を引き取る人などいないでしょう。しかし……しかしですよ。もしもPS2のDVD-ROMで作ってみれば、そこそこそれなりのゲームになりそうな気がするんですよね。そんな「if」ばかりが気になる本作ですが、うーん、惜しいとしか言えません。

まあ1プレイ4時間弱ぐらいで終わりますし、ゲームに明るい人であればまずゲームオーバーになることなく完クリできると思いますので、「ギャルゲーはやったことないけどどんなもんか見てみたい」ぐらいの動機の人であればプレイする価値はあります。あ、本作はあくまでギャルゲーではないんですよ。でもやたらとレズ要素は強調されていますが……。あとアニメ絵に耐性があることは必須条件ですね。現在新品を手に入れるのは難しいと思うので中古に頼らざるを得ないと思うのですが、筆者の地元TSUTAYAで240円でした。アマゾンでは1円だった時期もあります。オイオイ、それじゃ送料の方が高けぇぞ
どんな人に向いたゲームなのか?
このゲームをプレイすべき人
・ゲームよりもアニメや声優が好きな人
・難しい操作やコマンドがとにかく苦手な人
・とにかく一本でもゲームクリア履歴を増やしたい人
・アニメ「serial experiments lain」及びシナリオ小中氏の熱狂的なファン
・プレステで堂々とお色気を堪能したい人

このゲームをプレイすべきではない人
・手応えのあるゲームで遊びたい人
・アニメや声優といったものにまったく興味がない人
・ギャルゲーしかやったことのない人
・同性愛に理解のない人
・コンピューターとかインターネットとかチンプンカンプンな人


ゲームソフト激安… サントラです ガイドブック OVAです